説明

回転金型支持装置

【課題】単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、追加改造を少なくすることができる回転金型支持装置を提供する。
【解決手段】射出成形機1の固定盤5と可動盤6との間に配置され、第1案内部9により型開閉方向に移動可能に設けられた第1支持ブロック12と、前記第1支持ブロック12を鉛直方向に貫通する第1回転軸13の一端に固定された第1金型取付部11と、2つの伸縮可能なアクチュエータ14a,14bから構成され、それぞれの一端が、前記第1回転軸13の回転中心線に対して対称に連結され、それぞれの他端が前記固定盤5及び前記可動盤6のいずれか一方に、前記固定盤5及び前記可動盤6の中心線に対して対称に、回転可能に連結され、且つ、2つの前記アクチュエータ14a,14bが、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置された回転金型駆動機構14と、を備えた回転金型支持装置10によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定盤と可動盤との間に配置され、これら固定盤及び可動盤の少なくとも一方に取り付けられた金型と組み合わされる回転金型を用いて多層成形品を成形する射出成形機の回転金型支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品における、異材、同材、異色、同色様々な組み合わせからなる多層成形品の成形方法として、成形装置に特徴のあるもの、あるいは成形用金型に特徴のあるもの等、種々の成形方法が知られている。固定金型、可動金型、及び、固定金型と可動金型との間で回転される回転金型からなる1組の金型を用いて多層成形品を成形する成形方法もそのひとつである。
【0003】
特許文献1には、固定型(固定金型)、可動型(可動金型)、及び、固定型と可動型との間で回動する回動型(回転金型部)からなる金型を用いて多材質成形品(多層成形品)を成形する射出成形機であって、前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置(射出ユニット)と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、前記回動型を回動自在かつ可動型の移動方向に移動自在に固定盤から支持する回動型支持装置(回転金型支持装置)と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧縮する圧縮手段(型開閉装置)とからなる多材質射出成形機が開示されている。
【0004】
特許文献2には、横型射出成形機のマシンベッド(マシンベース部)に取り付け可能に構成されたモジュールフレームと、ベースプレート(第1支持ブロック)と、ベースプレートに回転可能に支持されたターンテーブル(第1金型取付部)とを備え、該ベースプレートが、モジュールフレームに移動可能に支持されている横型射出成形機の回転装置(回転金型支持装置)が開示されている。
【0005】
尚、上記特許文献1及び特許文献2に関する記載中の括弧は、括弧直前の構成要件に相当あるいは類似すると考えられる本発明の構成要件等を、本発明の理解が容易になるように記載したものであり、括弧直前の構成要件等と括弧内構成要件とが一致することを示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−168223号公報
【特許文献2】米国特許第6824381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の多材質射出成形機においては、簡易な構成であって汎用の射出成形機を基に追加改造が容易であると記載されているが、回動型を型開閉方向に駆動させる機構、及び、回動型を垂直軸周りに回転させる機構をすべて固定盤に取り付ける構成のため、これらの機構が複雑になる上、回動型を含むこれら機構の荷重やモーメントをすべて固定盤で支持するための補強等が必要になり、汎用の射出成形機を基に追加改造が容易であるとは言い難い。
【0008】
また、特許文献2の横型射出成形機の回転装置においては、回転装置をマシンベッドに直接取り付ける場合、既存の構成部材の改造が必要になる(同”BACKGROUND OF THE INVENTION”の第2段落の末尾5行に記載)ことから、回転装置を直接マシンベッドに取り付けず、その全ての構成をモジュールフレームに支持・配置させ、このモジュールフレームを1つのユニットとしてマシンベッドに取り付ける形態(同請求項1等)としている。しかしながら、このモジュールフレーム上に、固定盤、可動盤、そして、該可動盤を型開閉方向に移動させる型開閉機構も取り付けられる(同Fig1及びFig2、同”SUMMARY OF THE INVENTION”の第2段落等に記載)ため、このモジュールフレームをマシンベースへ取り付ける場合は、これら固定盤、可動盤及びタイバーを含む型開閉機構全体をマシンベースから一度取り外す必要がある。(同”DETAILED DESCRIPTION OF PREFERRED EMBODIMENT”の第8段落等に記載)
【0009】
また、モジュールユニットの取り付け後は、モジュールユニットの高さ分だけ、固定盤、可動盤及び型開閉機構全体の位置が高くなる(同”DETAILED DESCRIPTION OF PREFERRED EMBODIMENT”の第8段落の末尾3行に記載)ことが記載されている。しかしながら、その変化により、射出位置や製品のハンドリング位置も高くなるため、既存の射出ユニット全体をスペーサ等で取り付け位置を高くする変更や、射出ユニットへの樹脂材料の供給ライン、製品の取出装置、及び、取り出した製品の後工程への搬送ライン等、既存の射出成形機の高さに制約を受ける前後の生産ラインをすべて変更する必要については、一切記載されていない。
【0010】
その結果、回転装置(モジュールフレーム)そのものの取り付けを容易にすることができたとしても、回転装置としてユニット化されたモジュールフレームの取り付けのため、固定盤、可動盤及びタイバーを含む型開閉装置等の大物部材の取り外し、また、それら大物部品に関連する配管・配線の取り外し等が必要である。そして、モジュールフレームを取り付けた後は、当然ながら、これら大物部材の再取り付け及び関連する配管・配線の復旧、及び、復旧後の型開閉装置の型開閉動作の再調整等も必要である。そして、前述したような、モジュールユニットの高さ分だけ、固定盤、可動盤及び型開閉機構全体の位置が高くなることによる、射出成形機前後の生産ラインの変更等も場合によっては必要となり、追加改造全体の物量が増加してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、単層用射出成形機への追加改造を少なくすることができる回転金型支持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、請求項1に示すように、射出成形機の固定盤と可動盤との間に配置され、第1案内部により型開閉方向に移動可能に設けられた第1支持ブロックと、
前記第1支持ブロックを鉛直方向に貫通する第1回転軸の一端に固定された第1金型取付部と、
2つの伸縮可能なアクチュエータから構成され、
それぞれの一端が、前記第1回転軸の他端に、前記第1回転軸の回転中心線に対して対称に、回転可能に連結され、
それぞれの他端が前記固定盤及び前記可動盤のいずれか一方に、前記固定盤及び前記可動盤の中心線に対して対称に、回転可能に連結され、且つ、2つの前記アクチュエータが、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置された回転金型駆動機構と、
を備えた回転金型支持装置によって達成される。
【0013】
すなわち、回転金型支持装置が、第1案内部、第1回転軸に固定された第1金型取付部を有する第1支持ブロック、及び、2つの伸縮可能なアクチュエータから構成される回転金型駆動機構、の3つの基本部材で構成されるため、改造で追加する部材が少なく、単層用射出成形機への追加改造を少なくすることができる。また、後述するように、回転金型部が取り付けられる第1金型取付部を、回転金型駆動機構の2つのアクチュエータを同方向に伸縮させて型開閉方向に移動させ、2つの前記アクチュエータを伸縮させて、任意の位置で回転させることができる。すなわち、回転金型部の型開閉方向の移動及び回転動作を回転金型駆動機構のみで行わせることができるため、移動及び回転動作用の駆動機構を別々に追加する必要がない。
【0014】
次に、請求項2に示すように、前記第1案内部が射出成形機のタイバーであって、前記第1支持ブロックが該タイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内されることを特徴とする請求項1に記載の回転金型支持装置であることが好ましい。
【0015】
第1案内部が射出成形機のタイバーであれば、型開閉方向の案内手段として十分な剛性と精度を有しており、回転金型支持装置を構成する部材の1つである第1案内部を別部材としてマシンベース等に追加する必要がない。また、第1支持ブロックがタイバー中心から上方のみで案内されるため、固定盤と可動盤との間に、それら部材や、タイバーを含む型開閉機構等を取り外すことなく、射出成形機上方から、第1支持ブロックを容易にタイバー上に配置させることができる。
【0016】
次に、請求項3に示すように、前記第1支持ブロックに対する前記第1金型取付部の位置決め機構を備えたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0017】
第1案内部により型開閉方向に案内される第1支持ブロックに対して、第1金型取付部の回転位置が、位置決め機構により正確に位置決めされれば、回転金型駆動機構の2つのアクチュエータで行われる型開閉方向の移動動作及び回転動作の制御精度が高くない場合でも、第1金型取付部に取り付けられる回転金型部の金型分割面と、固定盤及び可動盤に取り付けられる金型の金型取付面との、型開閉時に必要な平行度を確保することができる。
【0018】
次に、請求項4に示すように、前記第1支持ブロックと鉛直方向に重なるように配置された第2支持ブロックと、
前記第2支持ブロックを鉛直方向に貫通する第2回転軸の一端に固定された第2金型取付部と、
前記第1支持ブロックと前記第2支持ブロックとを、鉛直方向に一体化させる少なくとも1つの接続ブロックと、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0019】
第1支持ブロックと鉛直方向に重なるように配置された第2支持ブロックの第2金型取付部と、第1支持ブロックの第1金型取付部とで、回転金型部がその鉛直方向上方及び下方で回転支持されれば、いずれか一方のみの回転支持と比較して、回転金型部の回転動作をより安定させることができる。また、第2支持ブロックが少なくとも1つの接続ブロックにより鉛直方向に第1支持ブロックと一体化されれば、第2支持ブロックは、回転金型駆動機構により、第1支持ブロックと一体で型開閉方向に移動され、第2支持ブロックを型開閉方向に移動させる駆動手段を別部材として追加する必要がない。
【0020】
次に、請求項5に示すように、前記第2支持ブロックが射出成形機のタイバーに配置され、該タイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内され、前記第2回転軸が鉛直方向に所定量摺動可能に設けられたことを特徴とする請求項4に記載の回転金型支持装置であっても良い。
【0021】
第2支持ブロックが、第1支持ブロックの鉛直方向上方、且つ、射出成形機の上部タイバーに配置されれば、型開閉時に、第1支持ブロックに負荷される回転金型部の転倒モーメントによる型開閉方向の転倒力を低減させることができる。また、第2支持ブロックが、第1支持ブロックの鉛直方向下方、且つ、射出成形機の下部タイバーに配置されれば、型開閉時に、第1支持ブロックに負荷される回転金型部の振れモーメントによる型開閉方向の振れ力を低減させることができる。更に、第2支持ブロックがタイバー中心から上方のみで案内されるため、固定盤と可動盤との間に、それら部材やタイバーを含む型開閉機構を取り外すことなく、射出成形機上方から、第2支持ブロックを容易にタイバー上に配置させることができる。
【0022】
更に、第2回転軸が鉛直方向に所定量摺動可能に設けられているため、第2支持ブロックが第1支持ブロックの鉛直方向上方、あるいは、下方のいずれに配置される場合でも、後述するように、射出成形機上方からの金型交換が可能である。
【0023】
このような回転金型支持装置であれば、請求項6に示すように、前記第1金型取付部に取り付けられた、2つの金型分割面を有する回転金型部を、前記回転金型駆動機構の2つの前記アクチュエータを同方向に伸縮させて型開閉方向に移動させ、2つの前記アクチュエータを伸縮させて、任意の位置で回転させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置が取り付けられた射出成形機で多層成形を行うことができる。
【0024】
また、請求項7に示すように、前記第1支持ブロックの前記第1回転軸の軸心と、前記第2支持ブロックの前記第2回転軸の軸心とを鉛直方向に一致させた位置で、前記第1支持ブロック及び前記第2支持ブロックを少なくとも1つの前記接続ブロックで鉛直方向に一体化させ、前記第1金型取付部と、前記第2金型取付部とで、前記回転金型部をその鉛直方向上方及び下方で回転支持させることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の回転金型支持装置が取り付けられた射出成形機であっても良い。
【0025】
このような射出成形機であれば、多層成形時に、回転金型部の回転動作をより安定させることができると共に、型開閉時に、第1支持ブロックに負荷される回転金型部の転倒モーメントによる型開閉方向の転倒力や振れモーメントによる型開閉方向の振れ力を低減させ、回転金型部の型開閉方向の移動動作をより安定させることができる。
【0026】
また、請求項8に示すように、前記第1金型取付部に取り付けられた、2つの金型分割面を有する回転金型部を、前記回転金型駆動機構の2つの前記アクチュエータを伸縮させて、任意の位置で回転させるとき、一方の前記アクチュエータの伸縮動作が切り替えられる位置において、一方の前記アクチュエータを伸縮自在の状態にさせ、他方の前記アクチュエータの伸縮動作のみで回転させることを特徴とする請求項6から請求項7のいずれか1項に記載の射出成形機であっても良い。
【0027】
後述するように、回転金型駆動機構の2つのアクチュエータを伸縮させて、回転金型部を任意の位置で回転させるとき、2つのアクチュエータそれぞれの伸縮動作の切り替え位置は重複しない。そのため、伸縮動作の積極的な切り替え制御を行わせるよりも、一方のアクチュエータの伸縮動作が切り替えられる位置において、そのアクチュエータを伸縮自在の状態にさせ、他方のアクチュエータの伸縮動作のみで回転させた方が、回転動作をより安定させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る回転金型支持装置は、射出成形機の固定盤と可動盤との間に配置され、第1案内部により型開閉方向に移動可能に設けられた第1支持ブロックと、
前記第1支持ブロックを鉛直方向に貫通する第1回転軸の一端に固定された第1金型取付部と、
2つの伸縮可能なアクチュエータから構成され、
それぞれの一端が、前記第1回転軸の他端に、前記第1回転軸の回転中心線に対して対称に、回転可能に連結され、
それぞれの他端が前記固定盤及び前記可動盤のいずれか一方に、前記固定盤及び前記可動盤の中心線に対して対称に、回転可能に連結され、且つ、2つの前記アクチュエータが、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置された回転金型駆動機構と、
を備える構成により、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、単層用射出成形機への追加改造を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置を使用した射出成形機の概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の回転金型駆動手段の概略図である。
【図3】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図前半である。
【図4】本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図後半である。
【図5】本発明の実施例2に係る回転金型支持装置を使用した射出成形機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1から図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置を使用した射出成形機の概略図である。図1(a)が概略側面図、図1(b)が図1(a)のA−A矢視における概略正面図である。図2は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の回転金型駆動手段の概略図である。図2(a)が図1のB−B矢視における概略平面図、図2(b)が図2(a)のC−C矢視における概略側面図である。図3(a)から図3(d)は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図前半、図4(a)から図4(d)は本発明の実施例1に係る回転金型支持装置の動作説明図後半である。
【0032】
最初に、回転金型支持装置10及び回転金型支持装置10が取付けられた射出成形機1の概要について説明する。図1(a)に示すように、固定金型20が取り付けられた固定盤5がマシンベース部8に固定されている。固定盤5と対向するように、可動金型40が取付けられた可動盤6が、固定盤5の四隅から延ばされたタイバー9に案内され、型締めも可能な型開閉装置7により型開閉方向に移動可能にマシンベース部8に配置されている。また、固定金型20が取り付けられた固定盤5の背面側には、射出ユニット4が、図示しない固定盤5の貫通穴を介して固定金型5に射出可能にマシンベース部8上に配置されている。そして、対向する固定盤5と可動盤6との間に回転金型支持装置10が配置されている。回転金型支持装置10に支持される回転金型部30は、回転金型取付盤31と、固定盤5及び可動盤6に対向するように回転金型取付盤31に取り付けられた第1回転金型32及び第2回転金型33から構成されており、回転金型部30は回転金型取付盤31を介して回転金型支持装置10の第1金型取付部11に着脱自在に取り付けられている。
【0033】
これら回転金型取付盤31と、第1回転金型32及び第2回転金型33とは、固定盤5及び可動盤6に対向する2つの金型分割面を有する1つの金型(回転金型部30)として構成され、第1金型取付部11に着脱自在に取り付けられても良い。また、回転金型部30は、型開閉方向に直交する水平方向の回転軸周りに回転可能に支持される形態であっても良い。ここで、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合、一般的に、既存の射出ユニット4とは別に、新たに射出ユニットを追加する必要がある。このような追加用の射出ユニットは様々な仕様のものが市販されており、また、このような追加用の射出ユニットの仕様、射出充填させる金型、あるいは、その金型へ射出充填させるための配置形態等は、多層成形品の仕様、あるいは、多層成形方法に応じて適宜選択されるべき事項であるため、追加用の射出ユニットの説明及び図中への記載は割愛する。
【0034】
引き続き、回転金型支持装置10の構成を説明する。図1(b)に示すように、回転金型支持装置10は、射出成形機の下部2本のタイバー9を第1案内部として、それぞれのタイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内され、支持ローラ17を介して、マシンベース部8上でその荷重を支持される第1支持ブロック12を備える。支持ローラ17は、摺動抵抗を低下させる別の公知の支持構造であっても良い。そして、第1支持ブロック12を貫通するように第1回転軸13が配置され、第1回転軸13の一端、この場合、鉛直方向上方に第1金型取付部11が固定され、第1支持ブロック12に対して回転可能に支持されている。
【0035】
同様に第1回転軸13の他端、この場合、鉛直方向下方に、油圧シリンダ等、2つの伸縮可能なアクチュエータ14a及び14bから構成される回転金型駆動機構14のそれぞれのアクチュエータの一端、この場合、ロッド側が第1回転軸13の回転中心線に対して対称に、回転可能に連結されている。また、第1支持ブロック12に対する第1金型取付部11の位置決めを行う位置決め機構15が、第1回転軸13の回転中心線に対して対称に、第1支持ブロック12に配置されている。位置決め機構15は、アクチュエータの先端を伸縮させて、第1金型取付部11の下面に設けられた位置決め用穴にその先端を挿入させるよう構成されているが、必要な位置決め精度が得られれば、別の公知の機構であっても良い。
【0036】
このように、第1支持ブロック12に、回転金型部30を回転可能に支持させ、射出成形機の下部2本のタイバー9を第1案内部として、それぞれの中心から上方のみで型開閉方向に案内させるため、固定盤5と可動盤6との間に、それら部材や、タイバーを含む型開閉機構等を取り外すことなく、射出成形機上方から、第1支持ブロック12を容易に下部2本のタイバー上に配置させることができる。
【0037】
具体的には、天井クレーン等で吊り上げた第1支持ブロック12の長手方向と型開閉方向とを一致させ、上部タイバー間から固定盤5と可動盤6との間に降下させた後、第1支持ブロック12の長手方向と型開閉方向が直交するように回転させ、更に降下させれば良い。上部タイバーの内、少なくとも1本でもタイバー抜き機構を備えていれば、第1支持ブロック12の下部タイバー上への配置は更に容易となる。また、回転金型部30を含む第1支持ブロック12(回転金型支持装置10)全体の大部分の荷重は、支持ローラ17等の支持構造を介してマシンベース部8で支持されるため、下部2本のタイバー9に不要な曲げ荷重が生じる虞はない。
【0038】
ここで、第1支持ブロック12の型開閉方向の案内は、回転金型部30を含む第1支持ブロック12の荷重が十分に重いため、下部2本のタイバー9それぞれの中心から上方のみで必要な案内精度が得られるが、万一、過大な転倒モーメントが生じた場合に備えて、下部2本のタイバー9の下方に転倒防止部材18が取り付けられることが好ましい。また、本実施例1では、第1支持ブロック12を型開閉方向に案内する下部2本のタイバー9を第1案内部としたが、第1支持ブロック12の型開閉方向の案内と荷重支持とを兼用する、支持ローラ17に変わる直動ガイド部材等の公知の案内部材を、第1案内部として、タイバー9とは別に、マシンベース部8等に設ける形態も可能である。更に、本実施例1では、第1支持ブロック12が下部タイバー上に配置され、回転金型部30が第1支持ブロック12の鉛直方向上方で回転支持されるが、第1支持ブロック12が上部タイバー上に配置され、回転金型部30が第1支持ブロック12の鉛直方向下方で回転支持される形態も可能である。
【0039】
次に、前述した回転金型駆動機構14の配置を示したものが図2である。2つの伸縮可能なアクチュエータ14a及び14bから構成される回転金型駆動機構14のそれぞれのアクチュエータのロッド側が第1回転軸13の鉛直方向下方に連結されていることは先に説明したが、それぞれのアクチュエータの他端、この場合、ヘッド側が固定盤5の金型取付面の下方に、ロッド側と同様に回転可能に連結されている。この回転金型駆動機構14のこれら2つのアクチュエータ14a及び14bは、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置されている。ここで、鉛直方向上方の水平面上を摺動するアクチュエータ(図2(a)下方側、図2(b)図面手前側)をアクチュエータ14a、鉛直方向下方の水平面上を摺動するアクチュエータ(図2(a)上方側、図2(b)図面奥側)をアクチュエータ14bとする。後述するように、回転金型部30を、これら2つのアクチュエータ14a及び14bを同方向に伸縮させて型開閉方向に移動させ、また、これら2つのアクチュエータ14a及び14bを伸縮させて、任意の位置で回転させることができる。すなわち、回転金型部30の型開閉方向の移動及び回転動作を回転金型駆動機構14のみで行わせることができるため、移動及び回転動作用の駆動機構を別々に追加する必要がない。また、図示はしていないが、これら2つのアクチュエータのヘッド側を固定盤5の金型取付面の下方に回転可能に接続させるために、下部2本のタイバー9や固定盤6の金型取付面を利用して、これら2つのアクチュエータのヘッド側位置の位置決めが可能な取付ブラケットがあれば、回転金型駆動機構14の追加が容易となる。
【0040】
ここで、第1支持ブロック12は、第1案内部としての下部2本のタイバー9により可動盤6と略同程度の精度で型開閉方向に案内されるため、この第1支持ブロック12に対して、第1金型取付部11の回転位置が、位置決め機構15により所定の精度で位置決めされれば、回転金型駆動機構14の2つのアクチュエータ14a及び14bで行われる型開閉方向の移動動作及び回転動作の制御精度が高くない場合でも、第1金型取付部11に取り付けられる回転金型部30の金型分割面と、固定盤5及び可動盤6に取り付けられる金型の金型取付面との、型開閉時に必要な平行度を確保することができる。すなわち、これら2つのアクチュエータ14a及び14bと、それらの制御そのものとに高精度の動作制御は必要ないため、安価で汎用性が高い、油圧シリンダ等の汎用のアクチュエータと汎用のソレノイドバルブ等との組み合わせで、回転金型部30の型開閉方向の移動動作及び回転動作が制御可能となる。
【0041】
このように、回転金型支持装置10が、第1案内部、第1支持ブロック12、及び、回転金型駆動機構14、の3つの基本部材で構成されるため、改造で追加する部材が少なく、単層用射出成形機への追加改造を少なくすることができる。本実施例1においては、第1案内部として、下部2本のタイバー9を活用するため、実質的には更に少ない2つの基本部材で回転金型支持装置10が構成される。次に、回転金型部の型開閉方向の移動及び回転動作を回転金型駆動機構14のみで行わせることができるため、移動及び回転動作用の駆動機構を別々に追加する必要がない。また、同じ理由により、第1支持ブロック12の構造を簡略化できる。更に、これらの部材の取り付けにおいて、基本的に、射出成形機の既存の構成部材を取り外す必要がないため、既存の構成部材に関する不要な作業は発生せず、既存の構成部材の位置関係も変わらないので、特許文献2の回転装置のように、既存の射出成形機の高さ等に制約を受ける前後の生産ラインを変更する必要もない。
【0042】
次に、図3及び図4を参照しながら本発明の実施例1に係る多層成形工程に準じた回転金型支持装置10の動作を説明する。図3及び図4は平面図であり、回転金型支持装置10の動作を説明するために主要な構成部材の概略を図示しているものである。各構成部材の上下関係は図1及び図2に準ずるものとする。
【0043】
図3(a)は1次成形及び2次成形の射出充填と、金型キャビティ内の1次成形品及び2次成形品の冷却固化が完了し、型開きが開始される状態を示す。具体的には、前サイクルにおいて、固定金型20と第1回転金型32とで形成される金型キャビティにおいて、1次成形品が成形される1次成形が行われ、第2回転金型33と可動金型40とで形成される金型キャビティにおいて、第2回転金型33側に保持させた1次成形品に積層成形する2次成形が行われたものとする。
【0044】
図3(a)に示すように、図示しない第1支持ブロック12に対して、回転金型部30が取り付けられた第1金型取付部11の回転位置(以後、回転金型部30の回転位置)は、位置決め機構15により位置決めされている。図中の位置決め機構15を示す黒丸は、同機構が作動状態であることを示す。まず、図示しない型開閉装置7により、図示しない可動盤6に取り付けられた可動金型40が回転金型部30の第2回転金型33から型開きされる。図示はしていないが、第2回転金型33側には、前サイクルで2次成形された多層成形品が保持されている。
【0045】
次に、図3(b)に示すように、可動金型40の型開きと同時、あるいは、所定時間経過後、回転金型駆動機構14の2つのアクチュエータ14a及び14bを同方向に伸長させて、回転金型部30を型開きさせる。具体的には、2つのアクチュエータ14a及び14bのそれぞれのヘッド側に所定圧力で作動油等の駆動媒体を所定量供給させる。2つのアクチュエータのロッドは伸長し、同ロッド側が連結された第1回転軸13を介して、下部2本のタイバー9に案内される第1支持ブロック12を型開き側に移動させると、回転金型部30の第1回転金型32が図示しない固定盤5に取り付けられた固定金型20から型開きされる。
【0046】
位置決め機構15は作動状態にあるため、回転金型部30は第1支持ブロック12に対して固定されており、2つのアクチュエータそれぞれのロッドの伸長速度や伸長力を完全に同調させなくても第1回転軸13は回転せず、第1回転軸13の鉛直方向上方の第1金型取付部11に取り付けられた回転金型部30の金型分割面と対向する金型の金型分割面との平行度は維持されつつ型開きされ、金型間の型合わせ精度を確保するガイドピンやガイドピン用穴への不要な負荷やそのような負荷によるガイドピンやガイドピン用穴の破損等が防止できる。第1回転金型32側には、前サイクルで1次成形された1次成形品が保持されている。
【0047】
次に、図3(c)に示すように、可動金型40が最大型開き位置に、回転金型部30が金型を回転させる任意の位置に到達した後、第2回転金型33側に保持されている図示しない多層成形品が図示しない製品取出装置により金型外へ搬出される。多層成形品が金型外へ搬出されるまで、位置決め機構15は作動状態を維持する。その後、同任意の位置において、回転金型駆動機構14の2つのアクチュエータ14a及び14bを伸縮させて、第1回転金型32側に前サイクルで1次成形された1次成形品が保持された回転金型部30を反時計回りに180度回転させる。
【0048】
具体的には、位置決め機構15を解除させた後、回転金型駆動機構14のアクチュエータ14aを、そのロッド先端位置24aが、その最小ストローク点となるロッド先端位置25aに到達する直前まで収縮させる。また、アクチュエータ14bを、そのロッド先端位置24bが、アクチュエータ14aのロッド先端位置25aの回転中心対称の位置となるロッド先端位置25bに到達するまで伸長させる。これら2つのアクチュエータの収縮及び伸長を同調させて第1回転軸13を反時計回りに回転させ、第1回転軸13の鉛直方向上方の第1金型取付部11に取り付けられた回転金型部30を反時計回りに回転させる。
【0049】
これら2つのアクチュエータの収縮及び伸長は、アクチュエータ本体及び両端の連結部、あるいは、回転支持構造部材の破損防止や長寿命化のため、これらアクチュエータの速度や力の差異を所定範囲内に抑えることが好ましいが、回転金型部30の回転動作の精度は第1回転軸13の機械的回転支持構造により確保され、また、回転動作の制御精度(回転速度維持、回転加速度制御等)に高精度は必要ないため、完全に同調させる必要はない。
【0050】
次に、図3(d)に示すように、アクチュエータ14aのロッド先端位置が、その最小ストローク点となるロッド先端位置25aを通過する前に、アクチュエータ14aのロッド側への駆動媒体の供給を停止させると共に、同ロッド側及び同ヘッド側の駆動媒体の入出が自由な状態にさせる。一方、アクチュエータ14bについては、そのロッド先端位置がロッド先端位置25bを通過する前後において、その伸長を継続させる。
【0051】
これは、アクチュエータ14aのロッド先端が、アクチュエータ14aの最小ストローク点、すなわち、アクチュエータ14aの収縮から伸長への切り替え点であるロッド先端位置25aを通過する際、アクチュエータ14aを収縮から伸長へ瞬間的に切り替える制御を行うよりも、このロッド先端位置25aの通過前後で、アクチュエータ14aの伸縮を制御せず、外力により伸縮自在の状態にして、アクチュエータ14bの伸長動作による外力のみで回転金型部30の回転動作を行わせた方が、回転動作を安定させることができるためである。
【0052】
アクチュエータ14bのロッド先端位置は、ロッド先端位置25bにおいてその最大ストローク点には到達していないため、アクチュエータ14bはロッド先端位置25bの通過前後において、伸長動作の継続が可能である。アクチュエータ14aは、そのロッド先端位置がロッド先端位置25aを通過し、アクチュエータ14bの伸長動作による回転動作により、収縮動作から完全に伸長動作に切り替えられた時点で、ヘッド側へ圧力媒体を供給し積極的な伸長動作に移行させる。
【0053】
これらの収縮・伸長の切り替え制御は、アクチュエータに複数個取り付け可能なセンサ類、例えば、シリンダスイッチ等を適切な切り替え位置に複数個配置させ、その信号で制御させれば良い。また、ロータリエンコーダ等の回転位置を検出・モニタリング可能なセンサにより、回転金型部30の回転位置(状態)を常時モニタリングさせ、その回転位置情報をアクチュエータ14a及び14bの回転動作制御に活用させれば、その回転動作をより安定させることができる。
【0054】
図4(a)は回転金型部30が、図3(c)の状態から90度反時計回りに回転した状態を示す。この状態でのアクチュエータ14aのロッド先端位置26aは、その最小ストローク点となるロッド先端位置25aを既に経過しており、アクチュエータ14aはロッド先端位置26aを通過する前後における伸長動作の継続が可能である。また、この状態でのアクチュエータ14bのロッド先端位置26bは、その最大ストローク点であるロッド先端位置27bには到達しておらず、アクチュエータ14bもロッド先端位置26b通過する前後における伸長動作の継続が可能である。ロッド先端位置26aとロッド先端位置26bとは回転中心対称の位置関係にあり、アクチュエータ14bの最大ストローク点であるロッド先端位置27bに対して回転中心対称の位置関係にあるのが、アクチュエータ14aのロッド先端位置27aである。
【0055】
次に、図4(b)に示すように、アクチュエータ14bのロッド先端位置が、その最大ストローク点となるロッド先端位置27bを通過する前に、アクチュエータ14bのヘッド側への駆動媒体の供給を停止させると共に、同ヘッド側及び同ロッド側の駆動媒体の入出が自由な状態にさせる。一方、アクチュエータ14aについては、そのロッド先端位置がロッド先端位置27aを通過する前後において、その伸長を継続させる。これは、アクチュエータ14bのロッド先端が、アクチュエータ14bの最大ストローク点、すなわち、アクチュエータ14bの伸長から収縮への切り替え点であるロッド先端位置27bを通過する際、アクチュエータ14bの伸縮を制御せず、外力により伸長自在の状態にして、アクチュエータ14aの伸長動作による外力のみで回転金型部30の回転動作を行わせるものであり、先に説明した、アクチュエータ14aのロッド先端が、収縮から伸長への切り替え点であるロッド先端位置25aを通過する場合と同様の制御である。
【0056】
アクチュエータ14aのロッド先端位置は、ロッド先端位置27aにおいてその最大ストローク点には到達していないため、アクチュエータ14aはロッド先端位置27aの通過前後において、伸長動作の継続が可能である。アクチュエータ14bは、そのロッド先端位置がロッド先端位置27bを通過し、アクチュエータ14aの伸長動作による回転動作により、伸長動作から完全に収縮動作に切り替えられた時点で、ロッド側へ圧力媒体を供給し積極的な収縮動作に移行させる。
【0057】
引き続き、回転金型部30が反時計回りに回転され、図4(c)に示すように、回転金型部30が図3(c)の状態から180度回転された状態となる。具体的には、アクチュエータ14aのロッド先端位置が、ロッド先端位置28a(ロッド先端位置24bと同位置)に、アクチュエータ14bのロッド先端位置が、ロッド先端位置28b(ロッド先端位置24aと同位置)に到達する。2つのアクチュエータのロッド先端がそれぞれの位置に到達する前に、それぞれのアクチュエータの伸長速度及び伸長力を十分低下させ、最終的には、位置決め機構15を作動させて、回転金型部30の回転位置を位置決めさせる。固定金型20と対向する位置に回転された第2回転金型33側には何も保持されておらず、可動金型40と対向する位置に回転された第1回転金型32側には、図示はしていないが、前サイクルで1次成形された1次成形品が保持されている。
【0058】
次に、図4(d)に示すように、位置決め機構15を作動させて、回転金型部30の回転位置を位置決めさせた後、図示しない型開閉装置により、可動金型40が、回転金型部30の前サイクルで1次成形された1次成形品が保持されている第1回転金型32側へ型閉じされる。また、2つのアクチュエータ14a及び14bのそれぞれのロッド側に所定圧力で作動油等の駆動媒体を所定量供給させ、2つのアクチュエータのロッドを同方向に収縮させて、回転金型部30の第2回転金型33が固定金型20側へ型閉じされる。可動金型40と回転金型部30とはそれぞれ独立して型開閉方向の移動動作が可能なので、それぞれの型閉じするタイミング、型閉じ速度等、適宜、最適な型閉じ動作が選択されれば良い。
【0059】
このように、図3(a)から図4(d)の工程により、回転金型部30を型開閉方向に移動させ、任意の位置で180度反時計回りに連続して回転させることができる。そして、2つのアクチュエータ14a及び14bのそれぞれのロッド側及びヘッド側は、共に、第1回転軸13の回転中心線及び固定盤5の中心線に対して対称に連結されているため、この工程を図4(d)から図3(a)のように逆に行わせれば、回転金型部30を型開閉方向に移動させ、任意の位置で180度時計回りに連続して回転させることができる。すなわち、回転金型部30の回転動作における回転方向を、型開き毎に反時計回りと時計回りと交互に変更させることにより、多層成形品を連続して成形させることができる。2つのアクチュエータ14a及び14bは回転金型部30を回転させるため交差状態となるが、これら2つのアクチュエータは、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置されているため、回転動作に問題はない。
【実施例2】
【0060】
図5を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。図5は本発明の実施例2に係る回転金型支持装置を使用した射出成形機の概略図である。実施例2における実施例1との具体的相違点は、第2支持ブロック及び接続ブロックの追加である。それ以外の回転金型支持装置の構成や多層成形方法は実施例1と基本的に同じ為、図5において同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
【0061】
図5に示すように、第2支持ブロック112が上部2本のタイバー9上に配置されている。第2支持ブロック112は、第1支持ブロック12と同様に、それぞれのタイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内されるように構成されているため、固定盤5と可動盤6との間に、それら部材や、タイバーを含む型開閉機構等を取り外すことなく、射出成形機上方から上部タイバー上に容易に配置させることができる。そして、第2支持ブロック112を貫通するように第2回転軸113が配置され、第2回転軸113の一端、この場合、鉛直方向下方に第2金型取付部111が固定され、第2支持ブロック112に対して回転可能に支持されていると共に、鉛直方向に所定量摺動可能に設けられている。この第2回転軸113の軸心と、第1支持ブロック12の第1回転軸13の軸心とを鉛直方向に一致させるように、第2支持ブロック112が第1支持ブロック12の鉛直方向上方に配置される。
【0062】
また、第1支持ブロック12と第2支持ブロック112とは、2つの接続ブロック119a及び119bにより、それぞれの両端を鉛直方向に一体化されている。必要に応じて、これら接続ブロック119a及び119bを取り外せば、一体化を解除させることもできる。これら接続ブロック119a及び119bと、第1支持ブロック12及び第2支持ブロック112との固定部分には、第1支持ブロック12の第1回転軸13と、第2支持ブロック112の第2回転軸113の軸心とを鉛直方向に一致させることできるように、鉛直方向及び型開閉方向の位置決めが可能なインロー構造等、公知の位置決め構造が採用されることは言うまでもない。また、本実施例2では、第2支持ブロック112を上部タイバー上に配置させる形態としたが、第2支持ブロック112を接続ブロック119a及び119bのみで支持させる形態も可能である。
【0063】
図5(b)に示すような鉛直方向のインロー構造により、第2支持ブロック112の荷重が直接、上部2本のタイバーに負荷されないようにすることができる。第1支持ブロック12と同様に、万一、過大な転倒モーメントが生じた場合に備えて、上部2本のタイバー9の下方に転倒防止部材118が取り付けられることが好ましい。
【0064】
このように、第1支持ブロック12の鉛直方向上方に配置された第2支持ブロック112の第2金型取付部111と、第1支持ブロック12の第1金型取付部11とで、回転金型部30をその鉛直方向上方及び下方で回転支持されれば、回転金型部30の回転動作をより安定させることができる。また、第2支持ブロック112が接続ブロック119a及び119bにより鉛直方向に第1支持ブロック12と一体化されれば、第2支持ブロック112は、回転金型駆動機構14により、第1支持ブロック12と一体で型開閉方向に移動され、第2支持ブロック112を型開閉方向に移動させる駆動手段を別部材として追加する必要がない。
【0065】
また、第2支持ブロック112が射出成形機の上部タイバーに配置されれば、型開閉時に、第1支持ブロック12に負荷される回転金型部30の転倒モーメントによる型開閉方向の転倒力を低減させることができ、回転金型部30の型開閉方向の移動動作をより安定させることができる。ここで、実施例1において、第1支持ブロック12が上部タイバーに配置され、回転金型部30が第1支持ブロック12下方で回転支持される形態も可能であることを説明したが、この形態の場合、第2支持ブロック112は射出成形機の下部タイバーに配置されれば良く、型開閉時に、第1支持ブロック12に負荷される回転金型部30の振れモーメントによる型開閉方向の振れ力を低減させることができ、回転金型部30の型開閉方向の移動動作をより安定させることができる。
【0066】
実施例2の説明に戻る。図5に示すように、第2支持ブロック112の第2回転軸113が鉛直方向に所定量摺動可能に設けられているため、第2回転軸113の鉛直方向下方に固定された第2金型取付部111と回転金型部30との固定を解除させ、回転金型部から離間する向きに移動させた状態で固定させ、接続ブロック119a及び119bによる第1支持ブロック12と第2支持ブロック112との一体化を解除させる。予め、型閉じさせて、固定金型20及び可動金型40を回転金型部30と公知の手段で一体化しておけば、回転金型駆動手段14により、第1支持ブロック12及び回転金型部30を型開閉方向に移動させて、第2支持ブロック112の下方域から移動させ、射出成形機上方からの金型交換が可能である。このように、回転金型部30の上方に第2支持ブロック112が配置されても金型交換に問題はない。
【0067】
また、第2回転軸113が鉛直方向に所定量摺動可能に設けられていることを利用して、回転金型部30と第2金型取付部111とを固定し、回転金型部30と第1金型取付部11との固定を解除させる。その後、天井クレーン等で第2回転軸113を少し上方に吊り上げ、回転金型駆動機構14により第1支持ブロック12及び第1金型取付部11を回転金型部30の下方域から移動させれば、回転金型部30を固定盤5と可動盤6との間から取り外すことなく、第1金型取付部11の回転金型部30との図示しない着脱機構や位置決め機構15等、回転金型部30の下方域に配置された機構のメンテナンス等が可能となる。
【0068】
本実施例2においても、回転金型駆動機構14による回転金型部30の型開閉方向の移動動作と任意の位置における回転動作は実施例1と同じである。しかしながら、第2支持ブロック112と、第2支持ブロック112を第1支持ブロック12と一体化させる接続ブロック119a及び119bとの追加により、回転金型部30の回転動作及び型開閉方向の移動動作をより安定させると共に、金型交換や回転金型部30から下方に配置された回転金型支持装置10のメンテナンス等を容易にすることができる。
【0069】
また、実施例1で説明した、第1支持ブロック12が上部タイバーに配置され、回転金型部30が第1支持ブロック12下方で回転支持される別形態であっても、第2支持ブロック112が下部タイバー上に配置されれば、実施例2と同様の効果を奏することができる。また、射出成形機上方からの金型交換や回転金型支持装置10のメンテナンス容易化は同様に可能である。
【0070】
第2支持ブロック112が第1支持ブロック12の鉛直方向下方に配置される場合は、回転金型部30が第1支持ブロック12下方で回転支持されるため、先に説明したように、型開閉時に、第1支持ブロック12に負荷される回転金型部30の振れモーメントによる型開閉方向の振れ力を低減させることができる。
【0071】
金型交換については、回転金型部30と第1金型取付部11との固定を解除させ、第2金型取付部111及び回転金型部30を下降させ、接続ブロック119a及び119bによる第1支持ブロック12と第2支持ブロック112との一体化を解除すれば、回転金型駆動手段14により、第1支持ブロック12のみを型開閉方向に移動させて、回転金型部30上方域から退避させ、射出成形機上方からの金型交換が可能である。
【0072】
回転金型支持装置10のメンテナンス容易化についても、回転金型部30と第1金型取付部11との固定を解除させ、回転金型部30と第2金型取付部111を下降させた後、回転金型駆動手段14により、第1支持ブロック12を回転金型部30上方域から退避させれば、回転金型部30を固定盤5と可動盤6との間から取り外すことなく、第1金型取付部11の回転金型部30との図示しない着脱機構や位置決め機構15等、回転金型部30の上方域に配置された機構のメンテナンス等が可能となる。
【0073】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1において、回転金型駆動機構14の2つのアクチュエータ14a及び14bのロッド側を第1回転軸13側に、同ヘッド側を固定盤5側に連結させる形態としたが、ロッド側とヘッド側とが逆になる形態であっても良い。また、2つのアクチュエータ14a及び14bを第1回転軸13に対して固定盤5側に連結させる形態としたが、これらアクチュエータを第1回転軸13に対して可動盤6側に連結させる形態も可能である。
【0074】
次に、実施例2において、第1支持ブロック12と第2支持ブロック112とを鉛直方向に一体化させるために、接続ブロック119a及び119bが採用される形態としたが、第1支持ブロック12と第2支持ブロック112とを一体化させることができれば、接続ブロック119a及び119bが、第1支持ブロック12及び第2支持ブロック112の一方と一体化された形態であっても、接続ブロック119a及び119bが鉛直方向に2分割されて、第1支持ブロック12及び第2支持ブロック112にそれぞれ一体化された形態であっても良い。また、第2支持ブロック112が第1支持ブロック12の鉛直方向下方に配置される場合においても、第2支持ブロック112を下部タイバー上に配置させず、接続ブロック119a及び119bのみで支持する形態が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る回転金型支持装置により、単層成形用射出成形機を多層成形用射出成形機に転用する場合に、射出成形機への追加改造を少なくすることができることは説明したとおりである。特に、市販の追加用射出ユニットとの組み合わせにより、汎用の単層射出成形機を容易に多層射出成形機に改造できるということは、容易に単層射出成形機に戻せるという効果も有する。すなわち、高価な多層成形専用の射出成形機を導入する必要がなく、需要に応じて単層射出成形機を単層成形用と多層成形用に低コストで使い分けることが可能となり、樹脂成形品の製造業者にとって産業上利用価値が極めて高い。また、多層成形用射出成形機を新規に設計・製造する場合においても、本発明に係る回転金型支持装置の追加を前提にすれば、汎用の単層成形用射出成形からの設計変更部分は少なく、新たに追加される部材も少ないため、これらの設計・製造コストの増大を抑えることができる。そのため、樹脂成形品の製造業者だけでなく、射出成形機の製造業者にとっても産業上利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0076】
1 射出成形機
5 固定盤
6 可動盤
9 タイバー
10 回転金型支持装置
11 第1金型取付部
12 第1支持ブロック
13 第1回転軸
14 回転金型駆動機構
14a アクチュエータ
14b アクチュエータ
15 位置決め機構
20 固定金型
30 回転金型部
40 可動金型
111 第2金型取付部
112 第2支持ブロック
113 第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の固定盤と可動盤との間に配置され、第1案内部により型開閉方向に移動可能に設けられた第1支持ブロックと、
前記第1支持ブロックを鉛直方向に貫通する第1回転軸の一端に固定された第1金型取付部と、
2つの伸縮可能なアクチュエータから構成され、
それぞれの一端が、前記第1回転軸の他端に、前記第1回転軸の回転中心線に対して対称に、回転可能に連結され、
それぞれの他端が前記固定盤及び前記可動盤のいずれか一方に、前記固定盤及び前記可動盤の中心線に対して対称に、回転可能に連結され、且つ、2つの前記アクチュエータが、それぞれ異なる水平面上を摺動するように配置された回転金型駆動機構と、
を備えた回転金型支持装置。
【請求項2】
前記第1案内部が射出成形機のタイバーであって、前記第1支持ブロックが該タイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内されることを特徴とする請求項1に記載の回転金型支持装置。
【請求項3】
前記第1支持ブロックに対する前記第1金型取付部の位置決め機構を備えたことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の回転金型支持装置。
【請求項4】
前記第1支持ブロックと鉛直方向に重なるように配置された第2支持ブロックと、
前記第2支持ブロックを鉛直方向に貫通する第2回転軸の一端に固定された第2金型取付部と、
前記第1支持ブロックと前記第2支持ブロックとを、鉛直方向に一体化させる少なくとも1つの接続ブロックと、
を備えた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置。
【請求項5】
前記第2支持ブロックが射出成形機のタイバーに配置され、該タイバー中心から上方のみで型開閉方向に案内され、前記第2回転軸が鉛直方向に所定量摺動可能に設けられたことを特徴とする請求項4に記載の回転金型支持装置。
【請求項6】
前記第1金型取付部に取り付けられた、2つの金型分割面を有する回転金型部を、前記回転金型駆動機構の2つの前記アクチュエータを同方向に伸縮させて型開閉方向に移動させ、2つの前記アクチュエータを伸縮させて、任意の位置で回転させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転金型支持装置が取り付けられた射出成形機。
【請求項7】
前記第1支持ブロックの前記第1回転軸の軸心と、前記第2支持ブロックの前記第2回転軸の軸心とを鉛直方向に一致させた位置で、前記第1支持ブロック及び前記第2支持ブロックを少なくとも1つの前記接続ブロックで鉛直方向に一体化させ、前記第1金型取付部と、前記第2金型取付部とで、前記回転金型部をその鉛直方向上方及び下方で回転支持させることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の回転金型支持装置が取り付けられた射出成形機。
【請求項8】
前記第1金型取付部に取り付けられた、2つの金型分割面を有する回転金型部を、前記回転金型駆動機構の2つの前記アクチュエータを伸縮させて、任意の位置で回転させるとき、一方の前記アクチュエータの伸縮動作が切り替えられる位置において、一方の前記アクチュエータを伸縮自在の状態にさせ、他方の前記アクチュエータの伸縮動作のみで回転させることを特徴とする請求項6から請求項7のいずれか1項に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218366(P2012−218366A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88406(P2011−88406)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】