説明

回転電機

【課題】簡単な手段によって固定子鉄心のスロット外に延在するコロナシールド層の焼損を防止し得る回転電機を提供する。
【解決手段】主絶縁層の表面にコロナシールド層14を形成した固定子コイル7を固定子鉄心5のスロット6内に複数枚のスロットライナ12を介して装着し、複数の層から成るスロットライナ12に固定子コイル7から遠ざかる層ほど抵抗が高まる抵抗増加手段(12、17、18)を設ける。上記構成により、スロット6外のコア出口部7Bでスロットライナ12間に部分接触箇所が生じても、抵抗増加手段によって充電電流密度が低減されるので、充電電流の集中によるスロットライナ12の焼損を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機や発電機などの回転電機に係り、特に、高周波成分を有する電圧で駆動されるものに好適な回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回転電機は、運転効率を高めるために高周波成分を有する電圧で駆動されている。この高周波成分を有する駆動電圧は、例えばIGBT等の高速スイッチング素子で構成される高周波電源等により得ており、高周波電源はケーブルを介して回転電機に接続されている。そして、特許文献1に開示されているように、通常、回転電機の固定子コイルは、コイル導体に施された主絶縁層の表面にコロナシールド層が被覆され、この固定子コイルが、固定子鉄心の内径側に形成されたスロット内に、半導電性のスロットライナを介して装着され、ウェッジによって固定子鉄心に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−164091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の回転電機の固定子コイルにおいては、固定子鉄心のスロット内のコロナシールド層、スロットライナ、および固定子鉄心との接触は比較的良好に保持されており、それぞれがほぼ全域に亘って接触し、その結果、回転電機への入力電圧の時間変化に比例した充電電流が全域に亘って分散される。
【0005】
しかしながら、固定子鉄心のスロット端から張出した固定子コイルのコア出口部のスロットライナの終端近傍では、製作条件に起因するスロットライナの反り返りやうねりのために部分接触することがある。特にスロットライナを複数枚重ねて配置した場合には、コイル断面に対して外側に配置されたスロットライナほど巻き付けテンションが弱まり、スロットライナ間の部分接触が顕在化する傾向にある。
【0006】
スロットライナは、基材に導電コーティングを施したシート材が用いられる場合が多く、固定子コイルに対してすし巻き状に複数枚重ねて巻き付け、固定子コイルと共に固定子鉄心に取り付けられる。このとき、固定子コイルのコア出口部では、スロットライナの巻き付けに対して成型工程がないため、固定子コイルの絶縁方式の如何を問わず、コイル断面に対して外側に配置されたスロットライナほど、巻き付けテンションが弱まる。その結果、スロットライナの最外層に近づくほど部分的に微小な反り返りやうねりなどによりスロットライナ間での部分接触が生じる可能性がある。
【0007】
とりわけ、固定子コイルを固定子鉄心に組み込んだ後に固定子全体を樹脂で含浸・硬化させ、低コスト化、及び固定子の冷却効率の向上を指向した所謂全含浸絶縁方式では、スロットライナ自体にも樹脂が浸透するため、スロットライナの反り返りやうねりを助長させ、部分接触が顕著に生じる場合がある。
【0008】
したがって、これらスロットライナを介した回転電機のコア出口部においては、入力電圧の時間変化に比例した充電電流が、スロットライナ最外層近傍のスロットライナ間の部分接触箇所に集中して流れる可能性がある。
【0009】
ところで、回転電機には、一般に電源から印加される高周波成分を有する駆動電圧に、高周波電源、ケーブル、及び回転電機の特性インピーダンスの違いに伴い発生する高周波サージ電圧が重畳した電圧が入力される。その結果、回転電機には駆動電圧よりも高い入力電圧(最大で駆動電圧の2倍)が印加される。
【0010】
従来の回転電機は、高周波の駆動電圧が比較的小さいため、サージ電圧が重畳された場合であっても、入力電圧は低く抑えられていた。また、入力電圧の立ち上がり及び立下り時の過渡時間も比較的緩やかであったため、コア出口部におけるスロットライナ最外層近傍の部分接触箇所での局所的な充電電流密度は低く抑えられ、コロナシールド層やスロットライナを劣化、焼損させる問題は生じなかった。
【0011】
ところが、近年、高周波電源用のスイッチング素子の高耐圧化及び高速化に基づく回転電機の高電圧化、更には低損失化が進められるようになり、サージ電圧が重畳された高周波の過大な入力電圧が、回転電機に印加されるようになった結果、コア出口部では、短時間での急激な電圧変化により、コロナシールド層やスロットライナを流れる充電電流が高まり、特にスロットライナ終端近傍のスロットライナ最外層に近い部分接触箇所において、局所的に充電電流密度が増加し、スロットライナの劣化、焼損が懸念されるようになった。
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、高耐圧化及び高速化するスイッチング素子を用いた電源から印加される駆動電圧に、サージ電圧が重畳した高周波・高電圧が複数枚のスロットライナを有する回転電機に入力される場合であっても、簡単な手段によって固定子鉄心のスロット外に延在するスロットライナの劣化、焼損を防止し得る回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による回転電機は、上記目的を達成するために、高周波成分を有する電圧で運転され、主絶縁層の表面にコロナシールド層を形成した固定子コイルを、固定子鉄心に形成したスロット内に複数枚のスロットライナを介して装着した回転電機において、スロット外に延在した固定子コイルのコア出口部でのスロットライナ最外層近傍のスロットライナ間に生じるサージ電圧の重畳に伴った局所的な高充電電流密度を低減させるためにスロットライナの抵抗を最内層から最外層にかけて順に増加させる。
【0014】
上記のように構成することで、充電電流密度が高まる要因となるスロットライナの反り返りやうねりが生じても、スロットライナの抵抗を最内層から最外層にかけて順に増加させることによって、部分接触が存在する対向したスロットライナのうち、内層側のスロットライナに充電電流が積極的に流れるため、従来に比べて部分接触箇所の局所的な高充電電流密度を低減でき、充電電流の集中によるスロットライナの劣化、焼損が防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高耐圧化及び高速化するスイッチング素子を用いた電源から印加される駆動電圧に、サージ電圧が重畳した高周波・高電圧が回転電機に入力される場合であっても、簡単な手段によって固定子鉄心のスロット外に延在するスロットライナの劣化、焼損を防止し得る回転電機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の回転電機の第1の実施の形態を示す固定子コイルのコア出口部近傍の概略縦断面図である。
【図2】図1のスロットライナ端部を示す拡大部分斜視図である。
【図3】本発明の回転電機の第1の実施の形態におけるスロットライナの抵抗調整方法を説明するためのスロットライナ概観図の一例である。
【図4】本発明の回転電機の第1の実施の形態における部分接触箇所に発生する損失量の相対比較の一例を示す特性図である。
【図5】本発明の回転電機の第2の実施の形態を示す図1に相当する図である。
【図6】本発明の回転電機の第3の実施の形態を示す図1に相当する図である。
【図7】従来の回転電機を示す固定子コイルのコア出口部近傍の概略縦断面図である。
【図8】高周波成分を有する電圧で運転される回転電機の固定子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による回転電機の第1の実施の形態を図1及び図2に示し、従来の回転電機として図7及び図8に示す電動機との差異に基づいて説明する。尚、図1、図2、図7、図8の同一符号は、同一構成部材を示す。また、本発明は、複数枚のスロットライナ12を有する回転電機に適用できるが、本発明の第1〜第3の実施の形態、および従来例では説明を簡単にするため、スロットライナ12を二層構成とした場合を例にとる。
【0018】
図7及び図8に示すように、電動機は、回転子(図示せず)と、この回転子の外径側に所定の空隙を介して対向配置される固定子3とで概略構成されている。
【0019】
回転子は、通常、回転軸に支持された回転子鉄心と、この回転子鉄心に装着された回転子巻線とを備えている。
【0020】
一方、固定子3は、複数の電磁薄鋼板を軸方向に積層して構成された固定子鉄心5と、この固定子鉄心5の内径側に、軸方向に伸延し周方向に所定間隔をもって複数形成されたスロット6と、これら複数のスロット6内に装着された固定子コイル7と、固定子鉄心5の外径側を支持する固定子枠8と、この固定子枠8の軸方向両端部に固定される端板2と、回転軸を支承する図示しない軸受とから概略構成される。
【0021】
固定子コイル7は、コイル導体9と、このコイル導体9の表面に形成された主絶縁層10とから成り、また、固定子コイル7は、固定子鉄心5のスロット6内に装着される直線部7Aと、スロット6外に張出したコイルエンド部から構成されており、コイルエンド部は、概略、コア出口部7Bと、インボリュート部7Cとから構成されている。
【0022】
スロット6内に固定子コイル7の直線部7Aを装着する際、上下方向に隣接する固定子コイル7間に絶縁材11(図2参照)を介在し、更に、上下方向に隣接した固定子コイル7を一纏めにして複数枚のスロットライナ12ですし巻き状に覆った状態で装着し、スロット6の開口側にウェッジ13を嵌着して固定子コイル7をスロット6内に強固に支持している。
【0023】
固定子コイル7のスロット6内に装着される直線部7Aの主絶縁層10の外周には、固定子鉄心5と固定子コイル7間のコロナ放電を防止する目的で、コロナシールド層14が被覆されている。また、固定子コイル7のコア出口部7Bからインボリュート部7Cにかけては、コロナシールド層14のスロット6外に張出した端部での電界集中によって沿面放電が発生し、これによってコロナシールド層14や主絶縁層10を劣化させる虞があるので、コロナシールド層14の端部を覆って、固定子鉄心5から離れる方向に高抵抗コロナシールド層15を被覆する場合もある。
【0024】
このように構成された固定子コイル7が高周波電源16に接続されて、電動機が駆動される。
【0025】
ところで、回転電機には、一般に電源から印加される高周波成分を有する駆動電圧に、高周波電源、ケーブル、及び回転電機の特性インピーダンスの違いに伴い発生する高周波サージ電圧が重畳した電圧が入力される。その結果、回転電機には駆動電圧よりも高い入力電圧(最大で電源電圧の2倍)が印加される。
【0026】
上述のように固定子コイル7を構成することで、スロット6内においては、主絶縁層10とコロナシールド層14及びスロットライナ12が、各々ほぼ全域に亘って密着して装着されており、スロット6に十分に接触させることができる。
【0027】
そのため、サージ電圧が重畳した場合であっても入力電圧の時間変化に比例した充電電流が全域に亘って分散されるので、充電電流の集中する部分はなく、充電電流の集中によるコロナシールド層14、およびスロットライナ12の劣化、焼損は、固定子コイル7の直線部7Aには発生しにくい。
【0028】
しかしながら、固定子鉄心5のスロット6の端から張出した固定子コイル7のコア出口部7Bのコロナシールド層14やスロットライナ12では、製作条件に起因するスロットライナ12の反り返りやうねりのために部分接触することがある。特にスロットライナ12を複数枚重ねて配置した場合には、固定子コイル7断面に対して外側に配置されたスロットライナ12ほど巻き付けテンションが弱まり、スロットライナ12間の部分接触が顕在化する傾向にある。その結果、高耐圧化・高周波化スイッチング素子を用いた回転電機においては、高周波サージ電圧の重畳に起因した充電電流が、スロットライナ12最外層近傍のスロットライナ12間の部分接触箇所に集中して流れ、スロットライナ12を劣化、焼損させることが懸念される。
【0029】
そこで、本実施の形態では、図1及び図2に示す如く、固定子鉄心5のスロット6の端から張出したコア出口部7Bにおいて、従来の回転電機と同様にスロットライナ12に反り返りやうねりがある場合であっても、スロットライナ12の劣化、焼損を防止するために、スロットライナ内層12Bの抵抗よりもスロットライナ外層12Aの抵抗を高めた構成としている。
【0030】
このような構成とすることにより、コロナシールド層14から進入した充電電流がスロットライナ内層12Bを積極的に流れ、コイル直線部7Aのスロットライナ12において固定子鉄心5へ流入するため、スロットライナ12の部分接触箇所での局所電流密度を抑制し、コア出口部7Bでのスロットライナ12の劣化、焼損を阻止することができる。コイル直線部7Aでは、固定子コイル7と固定子鉄心5間がウェッジ13によって嵌着され、この間の抵抗が殆ど生じないため、コイル直線部7Aに進入した充電電流は、進入直後に接地電位である固定子鉄心5に流れ込む。
【0031】
尚、本実施の形態では、説明を簡単にするためスロットライナ12をスロットライナ内層12Bとスロットライナ外層12Aの二層構成としたが、三層以上の場合であっても同様であり、最内層から最外層へ向かうほどスロットライナ12の抵抗を高めると同様の効果が得られる。
【0032】
続いて、スロットライナ12の抵抗調整方法の一例について説明する。スロットライナ12は不織布等のシート状の基材の全面にカーボン等を主剤とする半導電性材料をコーティングすることによって製造されることが多い。そこで、最も容易な抵抗調整方法の一つとして、カーボンの塗膜厚を変えることが挙げられる。但し、この場合には工程やコストが嵩むことや見た目で抵抗の大小を判断することが難しいため、保管や製作時の管理が煩雑になる可能性がある。
【0033】
そこで、このような場合には、図3に示すように、単一の塗膜であっても基材に設けた孔19やスリットの個数を変えることによって表面積を変化させ、抵抗にバリエーションを付ける方法を用いることが望ましい。ここで、抵抗はピッチA、Bが広いほど高くなり、見た目にも抵抗の大小を把握でき作業性が高まる。
【0034】
固定子コイル7への実装に際しては、以上のようにして製造された抵抗の異なるスロットライナ12を所望の厚み分だけ抵抗順に重ね合わせ、スロット6へ固定子コイル7と共に配置すればスロットライナ12の各層で抵抗に変化をつけることが可能となり、本実施の形態が容易に実現できる。
【0035】
このようにスロットライナ12の抵抗を最内層から最外層へ向かうほど高めることにより、図4に示すスロットライナ12を二層構成とした際の抵抗比率に対する部分接触部の充電電流による損失量(損失量は充電電流の2乗に比例)の相対比較図の一例のように、スロットライナ12に反り返りやうねりが生じ、部分接触が形成された場合でも、スロットライナ12とコロナシールド層14間での部分接触に伴う充電電流を従来よりも大幅に低減でき、その結果、充電電流の集中によるスロットライナ12の劣化、焼損を防止できる。
【0036】
本実施の形態は、全ての固定子コイル7に適用することが望ましいが、特に、インバータ制御における電動機への入力波形の印加電圧及び印加電圧の立ち上がり、あるいは立下り時の電圧変化成分が極端に大きくなければ、インバータとの接続部から最初の1本或いは複数本の固定子コイル7にのみ適用してもよい。
【0037】
次に、本発明による回転電機の第2の実施の形態を、図5に示す電動機の固定子コイルのコア出口部に基づいて説明する。尚、図1、図2、図8及び図9と同一符号は、同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施の形態において、第1の実施の形態と異なる点は、スロットライナ内層12Bとスロットライナ外層12Aの間にスロットライナ内層12Bよりも高い抵抗を有する抵抗部材17を配置した点である。この抵抗部材17を用いることによってスロットライナ内層12Bとスロットライナ外層12Aの直接的な部分接触を断つことができる。
【0039】
具体的な抵抗部材17の配置方法に関しては、コア出口部7Bのスロットライナ外層12Aに予めスロットライナ内層12Bよりも抵抗が高くなるように、半導電性や絶縁性のペイントを所望の厚さ分だけ施し、その後、固定子鉄心5に、固定子コイル7と共にスロットライナ12を配置させたものである。
【0040】
尚、ペイントはテープやシート材などで代替しても良い。抵抗部材17はスロットライナ外層12Aではなくスロットライナ内層12Bに上述の如く施しても良く、さらに信頼性を向上させる観点では、スロットライナ外層12Aとスロットライナ内層12Bの何れに施しても良い。
【0041】
また、必ずしも抵抗部材17はスロットライナ12に接着させる必要はなく、固定子コイル7と共にスロットライナ12を固定子鉄心5に配置する際にシート材としてスロットライナ外層12Aとスロットライナ内層12B間に挿入しておくか、或いは固定子鉄心5に挿入後、スロットライナ外層12Aとスロットライナ内層12B間にシート材として挿入させても良い。なお、抵抗部材17は、ワニスの浸透性が良い材料で形成されていても良い。
【0042】
このような抵抗部材17を用いることで、スロットライナ12に反り返りやうねりが生じても、充電電流は、固定子コイル直線部7Aに向かってスロットライナ内層12Bを積極的に流れ、スロットライナ12における局所的な高充電電流密度を低減でき、その結果、充電電流の集中によるスロットライナ12の劣化、焼損を防止することができる。
【0043】
本実施の形態においては、特に、スロットライナ12の反り返りやうねりが顕在化する虞があるスロットライナ外層12Aの端部近傍のスロットライナ内層12Bに対向する面に抵抗部材17を施したが、コア出口部7Bに張出したスロットライナ外層12Aのスロットライナ内層12Bに対向する面全てに抵抗部材17を伸延させても良い。また、抵抗部材17は、脱落防止のためにコア出口部7B近傍の固定子コイル直線部7Aの一部にかかるように配置しても良い。
【0044】
尚、本実施の形態においては、説明を簡単にするためスロットライナ12を二層構成としたが、三層以上の場合であっても同様であり、最内層から最外層へ向かうほど配置する抵抗部材17の抵抗を高めると同様の効果が得られる。
【0045】
また、本実施の形態と、本発明による回転電機の第1の実施の形態を複合させた形態にすればさらに効果的であることは言うまでもない。
【0046】
本実施の形態は、全ての固定子コイル7に適用することが望ましいが、特に、インバータ制御における電動機への入力波形の印加電圧及び印加電圧の立ち上がり、あるいは立下り時の電圧変化成分が極端に大きくなければ、インバータとの接続部から最初の1本或いは複数本の固定子コイル7にのみ適用してもよい。
【0047】
図6は、本発明による回転電機の第3の実施の形態である電動機の固定子コイルのコア出口部を示す。本実施の形態においても、図1、図2、図5、図8及び図9と同一符号は、同一構成部材を示すので、再度の詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態は、図1に示す第1の実施の形態をさらに高信頼度化したものであり、第1の実施の形態において、スロットライナ外層12A端部のスロットライナ内層12Bに対向する面の表層を、スロットライナ外層12Aの基材部位を利用して絶縁層18としたものである。
【0049】
スロットライナ外層12Aは、図3に示したように絶縁材料の基材表面を導電コートして作られるものがあり、本実施の形態では、その絶縁材料の基材の絶縁性を利用したものである。即ち、スロットライナ外層12Aの端部近傍に、予め絶縁性の基材を最表面とする導電コートを施さない部位(絶縁層18)を設け、その絶縁層18をコア出口部7Bのスロットライナ内層12Bに対向する面に用いる。
【0050】
また、必ずしも絶縁層18はスロットライナ外層12Aに配置する必要はなく、その際はスロットライナ外層12Aに対抗するスロットライナ内層12Bの最表面に施しても良い。或いは、スロットライナ外層12Aとスロットライナ内層12Bの何れの対向面に施しても良い。
【0051】
このように構成することで、前記各実施の形態と同等の効果を奏することができる。
【0052】
本実施の形態においては、特に、スロットライナ12の反り返りやうねりが顕在化する虞があるスロットライナ外層12A端部近傍のスロットライナ内層12Bに対向する面に絶縁層18を形成したが、コア出口部7Bのスロットライナ外層12Aのスロットライナ内層12Bに対向する面全てを絶縁層18としても良い。また、絶縁層18は、スロットライナ12を固定子コイル7と共にスロット6へ配置する際の公差を許容するために、コア出口部7B近傍の固定子コイル直線部7Aの一部にかかるように配置しても良い。
【0053】
尚、本実施の形態においては、説明を簡単にするためスロットライナ外層12を二層構成としたが、三層以上の場合であっても同様の効果が得られる。
【0054】
本実施の形態においては、全ての固定子コイル7に適用することが望ましいが、特に、インバータ制御における電動機への入力波形の印加電圧及び印加電圧の立ち上がり、あるいは立下り時の電圧変化成分が極端に大きくなければ、インバータとの接続部から最初の1本或いは複数本の固定子コイル7にのみ適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上の各説明は、回転電機として電動機を一例に説明したが、電動機に限らずタービン発電機やガスタービン発電機などの発電機にも適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
2 端板
3 固定子
5 固定子鉄心
6 スロット
7 固定子コイル
7A 直線部
7B コア出口部
7C インボリュート部
8 固定子枠
9 コイル導体
10 主絶縁層
11 絶縁材
12 スロットライナ
12A スロットライナ外層
12B スロットライナ内層
13 ウェッジ
14 コロナシールド層
15 高抵抗コロナシールド層
16 高周波電源
17 抵抗部材
18 絶縁層
19 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、該回転子の外径側に所定の空隙を介して対向配置される固定子とから成り、
前記固定子は、複数の電磁薄鋼板を軸方向に積層して構成された固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に、軸方向に伸延し周方向に所定間隔をもって複数形成されたスロットと、これら複数のスロット内に装着された固定子コイルと、前記固定子鉄心の外径側を支持する固定子枠とを備え、
前記固定子コイルは、コイル導体と、該コイル導体の表面に形成された主絶縁層と、該主絶縁層の表面に設けられたコロナシールド層とから成ると共に、前記固定子鉄心のスロット内に前記コロナシールド層の表面に設けられた複数のスロットライナを介して装着される直線部と、前記スロット外に張出した前記固定子コイルのコア出口部とから構成される回転電機において、
前記スロットライナは前記コロナシールド層から遠ざかるほど抵抗が高まることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記スロット外に張り出した前記スロットライナの終端を基準とする少なくとも一部の、前記スロットライナ同士が対向する面の最表層を、前記スロットライナの基材とした絶縁層から成ることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
回転子と、該回転子の外径側に所定の空隙を介して対向配置される固定子とから成り、
前記固定子は、複数の電磁薄鋼板を軸方向に積層して構成された固定子鉄心と、該固定子鉄心の内径側に、軸方向に伸延し周方向に所定間隔をもって複数形成されたスロットと、これら複数のスロット内に装着された固定子コイルと、前記固定子鉄心の外径側を支持する固定子枠とを備え、
前記固定子コイルは、コイル導体と、該コイル導体の表面に形成された主絶縁層と、該主絶縁層の表面に設けられたコロナシールド層とから成ると共に、前記固定子鉄心のスロット内に前記コロナシールド層の表面に設けられた複数のスロットライナを介して装着される直線部と、前記スロット外に張出した前記固定子コイルのコア出口部とから構成される回転電機において、
前記スロットライナ間には抵抗部材が介在され、該抵抗部材は、前記コロナシールド層から遠ざかるほど抵抗が高まることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記抵抗部材は、ワニスの浸透性が良い材料で形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機において、
前記抵抗部材は、半導電性、或いは絶縁性ペイントで形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項3に記載の回転電機において、
前記抵抗部材は、前記スロット外に張り出した前記スロットライナの終端を基準とする少なくとも一部の、前記スロットライナ層同士が対向する面の最表層に設置されていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の回転電機において、高周波成分を有する電圧で運転されることを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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