回転霧化塗装装置
【課題】回転霧化頭の前方における負圧の発生が抑制され、塗料の良好な微粒化が得られる回転霧化塗装装置を提供する。
【解決手段】塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭3を備え、回転霧化頭3の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔13から回転霧化頭3の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置Pにおいて、各シェーピングエア噴出孔13の各々からシェーピングエアを螺旋流Sとして噴出させる。シェーピングリング5には、シェーピングエア供給路8に連通するマニホールド7と、マニホールド7と各々傾斜供給孔12を介して連通し、傾斜供給孔12から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流Sが発生する螺旋流形成室9と、各螺旋流形成室9に連通するシェーピングエア噴出孔13とが形成される。
【解決手段】塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭3を備え、回転霧化頭3の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔13から回転霧化頭3の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置Pにおいて、各シェーピングエア噴出孔13の各々からシェーピングエアを螺旋流Sとして噴出させる。シェーピングリング5には、シェーピングエア供給路8に連通するマニホールド7と、マニホールド7と各々傾斜供給孔12を介して連通し、傾斜供給孔12から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流Sが発生する螺旋流形成室9と、各螺旋流形成室9に連通するシェーピングエア噴出孔13とが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式の霧化塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転塗装装置の一例として塗装機本体の先端に回転霧化頭(ベルカップ)を回転可能に設けたものが挙げられる。塗料供給配管から回転霧化頭内に供給された塗料は、回転霧化頭の高速回転による遠心力により回転霧化頭の内面に薄膜状に広がり、回転塗装装置内に配設された高電圧ケーブルにより高電圧が印加される。塗料は前記遠心力により薄膜状から微粒状に変異して回転霧化頭の先端の塗料放出端から放出され、さらにその微粒化した塗料は前記印加された高電圧により帯電しているため、粒子同士が反発し合って塗料の微粒化が一層促進される。微粒化された塗料には前記遠心力により径方向に飛散する力が加わるが、塗装機本体のシェーピングエア噴出口から噴出されるシェーピングエアにより塗料は回転霧化頭の前方に飛散するように絞りこまれ、これにより塗装パターン形成がなされる。塗料はシェーピングエアとの衝突により一層微粒化される。
【0003】
しかしながら、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭の前方には負圧が発生することから、この負圧によりシェーピングエアが回転霧化頭の回転軸心方向に引き寄せられ、塗料の微粒化が不十分となってワークに塗着後の塗料タレが発生しやすくなる。
【0004】
このような問題に対し、シェーピングエアの噴出口を回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜させてシェーピングエアを螺旋状軌跡を描くように流し、その螺旋状軌跡による遠心力が前記負圧に基づく吸引力に勝るように設定することで、回転霧化頭の回転軸心方向への塗料微粒子の収束を抑制し、塗料の微粒化を促進する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、バンパのような複雑な形状に対応するためにバンパの格子部やモール部を塗装するときは、アシストエアを噴出して塗装パターン幅を狭小化する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−24367号公報
【特許文献2】特開平8−229445号公報
【特許文献3】特開平10−71363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載された、シェーピングエアの噴出口を回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜させる技術では、シェーピングエアの量または流速を増やしても塗装パターンを絞ることはできない。したがって、例えばバンパのような凹凸を有する複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、短時間(定められたサイクルタイム)で十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることが困難となる。このような場合、従来では作業者が後工程で別途ハンドガンにより補完作業を行うなどの措置が採られていた。
【0008】
特に、最近のバンパは、意匠性を高めるために、より狭小で奥深い凹部を採用していることも多い。このような凹部の底面まで十分な量の微粒化塗料を到達させるためには、シェーピングエアの量または流速を増加させることが必要となるが、シェーピングエアの量または流速を増加させると回転霧化頭の前方に発生する負圧も大きくなることから、シェーピングエアが回転霧化頭の回転軸心方向に引き寄せられ、塗料の微粒化が不十分となってワークに塗料タレが発生しやすくなる。この問題は特許文献3に記載の技術でも対処することは難しい。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、回転霧化頭の前方における負圧の発生が抑制され、塗料の良好な微粒化が得られる回転霧化塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭を備え、該回転霧化頭の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔から回転霧化頭の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置において、前記各シェーピングエア噴出孔の各々からシェーピングエアが螺旋流として噴出することを特徴とする。
【0011】
螺旋流は旋回成分を有する分、直進性が高い。また、この螺旋流によって回転霧化頭の前方に大きな負圧が発生することはほとんどない。たとえシェーピングエアの量または流速を増加させたとしても、螺旋流自体の径外方向への拡がりが抑制されるように作用することから、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭の前方に生ずる負圧が大きくなるという問題は生じない。したがって、シェーピングエアが回転霧化頭の軸心方向に引き寄せられ、その結果、塗料の微粒化が不十分となり、ワークに塗料タレが発生しやすくなるという不都合が解消される。
【0012】
また、本発明は、シェーピングエア供給路が形成された装置本体と、前記装置本体の前端に取り付けられるシェーピングリングと、を備え、前記シェーピングリングは、前記回転霧化頭の軸心周りに円環状に形成され、前記シェーピングエア供給路に連通するマニホールドと、前記マニホールドの前方において前記軸心周りに複数配され、前記マニホールドと各々傾斜供給孔を介して連通し、前記傾斜供給孔から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流が発生する螺旋流形成室と、前記各螺旋流形成室に連通する前記シェーピングエア噴出孔と、を有することを特徴とする。
【0013】
この回転霧化塗装装置によれば、エアはマニホールドで圧力が均一化されたうえで各螺旋流形成室に供給される。したがって、各シェーピングエア噴出孔から均一な螺旋流が噴出される。また、螺旋流形成室により簡単に螺旋流を発生させることができる。したがって、汎用の装置本体を用いて螺旋流を簡単に生成可能な回転霧化塗装装置を実現できる。
【0014】
また、本発明は、前記螺旋流形成室は、後端に前記傾斜供給孔が開設された円筒部と、前記円筒部の前端から前方に向けて縮径し、前端に前記シェーピングエア噴出孔が開設された円錐部と、から構成されることを特徴とする。
【0015】
この回転霧化塗装装置によれば、円筒部で発生した螺旋流を円錐部により高速かつ高回転にしてシェーピングエア噴出孔から噴出させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のようにシェーピングエアの量または流速を増加しなくても、例えばバンパのような複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、定められたサイクルタイムで十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることができる。したがって、後工程での作業者による補完作業を要することなく、回転霧化塗装装置のみの自動塗装が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転霧化塗装装置の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る回転霧化塗装装置の部分側面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図3におけるB−B断面図である。
【図5】図3におけるE−E断面図である。
【図6】図3における螺旋流形成室周りの拡大図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る回転霧化塗装装置の正面図である。
【図8】図7におけるF−F断面図である。
【図9】図8におけるG−G断面図である。
【図10】図8におけるH−H断面図である。
【図11】螺旋流の回転方向が回転霧化頭の回転方向と同方向である様子を示す回転霧化塗装装置の正面図である。
【図12】(a)は図4における螺旋流形成室の拡大図、(b)は(a)に対して螺旋流の回転方向を逆向きに設定した場合の螺旋流形成室の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「第1実施形態」
以降、図3における上下方向を前後方向というものとして説明する。図3において、本発明の回転霧化塗装装置Pは、内部に回転軸2が同軸上に軸支された筒形状の装置本体1を備える。回転軸2の前端周りは装置本体1の前端面から突出し、その先端には回転霧化頭(ベルカップ)3が取り付けられている。回転霧化頭3は、前方に向けて拡径する円錐台形状を呈している。回転軸2の内部には塗料供給路4が穿設されており、この塗料供給路4の前端側は回転霧化頭3に連通している。
【0019】
装置本体1の前端面にはシェーピングリング5が取り付けられている。シェーピングリング5には中央開孔6が貫通形成されており、この中央開孔6の前端側は回転霧化頭3の外周円錐面に倣った円錐状空間として形成されている。回転軸2は中央開孔6内を挿通し、回転霧化頭3は、その外周円錐面が中央開孔6の円錐面と間隔を空けるようにしてその後端周りが中央開孔6の円錐状空間内に位置する。回転霧化頭3の前端周りは、中央開孔6の円錐状空間から前方にはみ出しており、シェーピングリング5の前端面から突出している。
【0020】
シェーピングリング5の後端面(装置本体1の前端面と接する面)には、回転霧化頭3の軸心O周りに円環状で断面矩形溝状のマニホールド7が穿設されている。マニホールド7は、装置本体1に形成された複数のシェーピングエア供給路8と連通する。シェーピングリング5内においてマニホールド7の前方には図1にも示すように軸心O周りに等間隔で複数の螺旋流形成室9が形成されている。各螺旋流形成室9は、円筒状の空間をなす円筒部10と、円筒部10の前端から前方に向けて縮径する円錐状の空間をなす円錐部11とから構成されている。
【0021】
螺旋流形成室9は、例えばマニホールド7の円環中心円周線D1(図4参照)上を室中心X1(図12参照)として形成されており、室の最大径となる円筒部10の径寸法は例えばマニホールド7の径方向幅寸法と同じである。そして、円錐部11の前端からシェーピングリング5の前端面にかけて軸心Oと平行にシェーピングエア噴出孔13が開設されている。図1に示すように、シェーピングエア噴出孔13は、回転霧化頭3の前端径よりも若干大径の円周線(円環中心円周線D1)上を孔中心として、孔全体が回転霧化頭3の前端径よりも外側に位置する程度の孔径寸法で、円周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
図3において、各螺旋流形成室9の円筒部10とマニホールド7とは、軸心O周りに等間隔で形成された傾斜供給孔12により連通している。傾斜供給孔12は、図3から判るように側面視して軸心Oに対して傾斜角を形成する孔である。この傾斜供給孔12は、開孔12aによりマニホールド7の前端面に臨み、開孔12bにより円筒部10の後端面に臨む。なお、傾斜供給孔12は、図3に点線で示されるようにその孔径は開孔12aから開孔12bにかけて一定であり、図3は図1におけるA−A断面視の図であるため、開孔12aから開孔12bにかけて孔径が変化する様が実線で示されている。
【0023】
傾斜供給孔12は、この傾斜供給孔12の開孔12bから螺旋流形成室9に流れ込んだエアが螺旋流形成室9の内周面に衝突して螺旋流を発生させ得る向きに穿孔されている。図12(a)は図4における1つの螺旋流形成室9を拡大した図である。開孔12aは、円環中心円周線D1よりも小径かつマニホールド7の内周面7a(図4)よりも大径の円周線D2上を孔中心X2として形成されている。開孔12bは、円環中心円周線D1よりも大径かつマニホールド7の外周面7b(図4)よりも小径の円周線D3上を孔中心X3として形成されている。
【0024】
そして、平面視状態で、開孔12aの孔中心X2と室中心X1とを通過する線に対して一方側に開孔12bの孔中心X3を位置させた場合、開孔12bから円筒部10に流れ込んだエアは円筒部10の内周面に斜めに衝突した後、内周面に沿って図12(a)における反時計回り方向に流れる。これにより、図1に示すように回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に回転する螺旋流Sが発生する。
【0025】
もし、図11に示すように、回転霧化頭3の回転方向Kと同方向に回転する螺旋流Sを発生させる場合には、図12(b)に示すように、開孔12aの孔中心X2と室中心X1とを通過する線に対して他方側に開孔12bの孔中心X3が位置するように傾斜供給孔12を穿孔する。これにより、開孔12bから円筒部10に流れ込んだエアは円筒部10の内周面に図12(a)とは逆向きの斜めに衝突した後、内周面に沿って図12(b)における時計回り方向に流れ、図11に示すように回転霧化頭3の回転方向Kと同方向に回転する螺旋流Sが発生する。
【0026】
以上の構成からなる回転霧化塗装装置Pの作用を説明する。
シェーピングエア供給路8を介してマニホールド7に供給されたエアは、この円環状の空間であるマニホールド7において圧力が均一化される。次いでエアはマニホールド7から傾斜供給孔12を経由して各螺旋流形成室9の円筒部10に供給される。このとき、エアは、傾斜供給孔12の向きによって円筒部10の内周面に斜めに衝突する。これにより、円筒部10内ではその内周面に沿って、前方に向かい、かつ本実施形態では回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に回転する螺旋流Sが発生する。この場合の「逆方向に回転する」とは、図1に示すように一方向から見た平面視において、回転霧化頭3が例えば半時計回りに回転するときには螺旋流Sが時計回りに回転することを意味する。
【0027】
そして、円筒部10の内周面に沿って前方に向けて上昇した螺旋流Sは、図6に示すように、円錐部11により螺旋流Sの径が徐々に絞られる。これにより、シェーピングエアは、高速かつ高回転の螺旋流Sとなったうえで小径のシェーピングエア噴出孔13から回転霧化頭3の前端縁の若干外側あたりを通過するように噴出される。
【0028】
一方、回転軸2内の塗料供給路4を介して回転霧化頭3に供給された塗料は、回転霧化頭3の高速回転による遠心力により回転霧化頭3の内面に薄膜状に広がり、高電圧が印加されたうえで前記遠心力により回転霧化頭3の前端縁から霧状となって噴霧される。このとき、塗料は、回転霧化頭3の回転方向Kに、かつ前記遠心力により径外方向に飛散しようとする。
【0029】
しかし、この塗料の径外方向への飛散は螺旋流Sによって抑制される。すなわち、シェーピングエア噴出孔13は図1に示されるように平面視で、回転霧化頭3の周縁に位置し、つまり回転霧化頭3の前端径よりも若干大径の円周線上に位置し、かつ孔全体が回転霧化頭3の前端径よりも外側に位置しており、孔の向きは回転軸2の軸心と平行であることから、シェーピングエア噴出孔13から噴出する螺旋流Sは、ほぼ回転霧化頭3の前端縁の若干外側あたりを通過するように回転軸2の軸心に沿って直線状に形成される。径外方向へ飛散しようとする塗料はこの複数の螺旋流Sによって遮られて適宜な塗装パターン径に絞られ、ワークに向けて噴霧される。また、回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向の螺旋流Sの流れにより、塗料の微粒化が一層促進されることとなって良好な塗着が得られる。
【0030】
螺旋流Sは旋回成分を有する分、直進性が高い。また、この螺旋流Sによって回転霧化頭3の前方に大きな負圧が発生することはほとんどない。たとえシェーピングエアの量または流速を増加させたとしても、螺旋流S自体の径外方向への拡がりが抑制されるように作用することから、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭3の前方に生ずる負圧が大きくなるという問題は生じない。したがって、シェーピングエアが回転霧化頭3の回転軸心方向に引き寄せられ、その結果、塗料の微粒化が不十分となり、ワークに塗料タレが発生しやすくなるという不都合が解消される。
【0031】
本発明によれば、螺旋流Sからなるシェーピングエアは、回転軸2の軸心に沿う直進性が高く維持される。そのため、従来のようにシェーピングエアの量または流速を増加しなくても、例えばバンパのような複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、短時間(定められたサイクルタイム)で十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることが可能となり、後工程での作業者による補完作業を要することなく、回転霧化塗装装置Pのみの自動塗装が可能となる。
【0032】
また、装置本体1の前端に取り付けられるシェーピングリング5において、回転霧化頭3の軸心O周りに円環状に形成され、装置本体1のシェーピングエア供給路8に連通するマニホールド7と、マニホールド7の前方において軸心O周りに複数配され、マニホールド7と各々傾斜供給孔12を介して連通し、傾斜供給孔12から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流Sが発生する螺旋流形成室9と、各螺旋流形成室9に連通するシェーピングエア噴出孔13とを有する構成とすれば、エアはマニホールド7で圧力が均一化されたうえで各螺旋流形成室9に供給される。したがって、各シェーピングエア噴出孔13から均一な螺旋流Sが噴出される。また、螺旋流形成室9により簡単に螺旋流Sを発生させることができる。したがって、汎用の装置本体1を用いて螺旋流Sを簡単に生成可能な回転霧化塗装装置Pを実現できる。
【0033】
さらに、螺旋流形成室9を、後端に傾斜供給孔12が開設された円筒部10と、円筒部10の前端から前方に向けて縮径し、前端にシェーピングエア噴出孔13が開設された円錐部11と、から構成すれば、円筒部10で発生した螺旋流Sを円錐部11により高速かつ高回転にしてシェーピングエア噴出孔13から噴出させることができる。
【0034】
「第2実施形態」
次いで、図7〜10を参照して第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。この第2実施形態は、シェーピングリング5において、シェーピングエア噴出孔13と同心状であって内径側に複数の第2シェーピングエア噴出孔14を円周方向に複数開設したことを主な特徴とする。
【0035】
シェーピングリング5の後端面には円環状で断面矩形溝状の第2マニホールド15が穿設され、装置本体1には第2マニホールド15と連通するように複数の第2シェーピングエア供給路16が開設されている。シェーピングリング5の中央開孔6において円錐状空間の後端には、軸心Oと直交面をなす環状の段差面17が形成されている。第2シェーピングエア噴出孔14は、その後端が第2マニホールド15に連通し、前端は段差面17において回転霧化頭3の前端縁を指向するように開設されている。
【0036】
第2シェーピングエア噴出孔14から噴出される第2シェーピングエアは、回転する回転霧化頭3の外周円錐面に沿って回転霧化頭3の前端縁に供給される。塗料はこの第2シェーピングエアにより微粒化が一層促進される。第2シェーピングエアは回転霧化頭3の前端縁から噴霧される塗料と螺旋流Sとの間に介在することから、この第2シェーピングエアの量または流速を制御することにより、塗料の塗装パターンをより精度良く制御することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。説明した実施形態ではシェーピングリング5を単体の部材としているが、複数の部材に分割構成されたものであってもよい。また、螺旋流Sの回転方向は、回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に限定されるものではなく、図11および図12(b)で説明したように、回転霧化頭3の回転方向Kと同方向であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 装置本体
2 回転軸
3 回転霧化頭
5 シェーピングリング
7 マニホールド
8 シェーピングエア供給路
9 螺旋流形成室
10 円筒部
11 円錐部
12 傾斜供給孔
13 シェーピングエア噴出孔
P 回転霧化塗装装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式の霧化塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転塗装装置の一例として塗装機本体の先端に回転霧化頭(ベルカップ)を回転可能に設けたものが挙げられる。塗料供給配管から回転霧化頭内に供給された塗料は、回転霧化頭の高速回転による遠心力により回転霧化頭の内面に薄膜状に広がり、回転塗装装置内に配設された高電圧ケーブルにより高電圧が印加される。塗料は前記遠心力により薄膜状から微粒状に変異して回転霧化頭の先端の塗料放出端から放出され、さらにその微粒化した塗料は前記印加された高電圧により帯電しているため、粒子同士が反発し合って塗料の微粒化が一層促進される。微粒化された塗料には前記遠心力により径方向に飛散する力が加わるが、塗装機本体のシェーピングエア噴出口から噴出されるシェーピングエアにより塗料は回転霧化頭の前方に飛散するように絞りこまれ、これにより塗装パターン形成がなされる。塗料はシェーピングエアとの衝突により一層微粒化される。
【0003】
しかしながら、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭の前方には負圧が発生することから、この負圧によりシェーピングエアが回転霧化頭の回転軸心方向に引き寄せられ、塗料の微粒化が不十分となってワークに塗着後の塗料タレが発生しやすくなる。
【0004】
このような問題に対し、シェーピングエアの噴出口を回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜させてシェーピングエアを螺旋状軌跡を描くように流し、その螺旋状軌跡による遠心力が前記負圧に基づく吸引力に勝るように設定することで、回転霧化頭の回転軸心方向への塗料微粒子の収束を抑制し、塗料の微粒化を促進する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、バンパのような複雑な形状に対応するためにバンパの格子部やモール部を塗装するときは、アシストエアを噴出して塗装パターン幅を狭小化する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−24367号公報
【特許文献2】特開平8−229445号公報
【特許文献3】特開平10−71363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載された、シェーピングエアの噴出口を回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜させる技術では、シェーピングエアの量または流速を増やしても塗装パターンを絞ることはできない。したがって、例えばバンパのような凹凸を有する複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、短時間(定められたサイクルタイム)で十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることが困難となる。このような場合、従来では作業者が後工程で別途ハンドガンにより補完作業を行うなどの措置が採られていた。
【0008】
特に、最近のバンパは、意匠性を高めるために、より狭小で奥深い凹部を採用していることも多い。このような凹部の底面まで十分な量の微粒化塗料を到達させるためには、シェーピングエアの量または流速を増加させることが必要となるが、シェーピングエアの量または流速を増加させると回転霧化頭の前方に発生する負圧も大きくなることから、シェーピングエアが回転霧化頭の回転軸心方向に引き寄せられ、塗料の微粒化が不十分となってワークに塗料タレが発生しやすくなる。この問題は特許文献3に記載の技術でも対処することは難しい。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するために創作されたものであり、回転霧化頭の前方における負圧の発生が抑制され、塗料の良好な微粒化が得られる回転霧化塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭を備え、該回転霧化頭の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔から回転霧化頭の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置において、前記各シェーピングエア噴出孔の各々からシェーピングエアが螺旋流として噴出することを特徴とする。
【0011】
螺旋流は旋回成分を有する分、直進性が高い。また、この螺旋流によって回転霧化頭の前方に大きな負圧が発生することはほとんどない。たとえシェーピングエアの量または流速を増加させたとしても、螺旋流自体の径外方向への拡がりが抑制されるように作用することから、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭の前方に生ずる負圧が大きくなるという問題は生じない。したがって、シェーピングエアが回転霧化頭の軸心方向に引き寄せられ、その結果、塗料の微粒化が不十分となり、ワークに塗料タレが発生しやすくなるという不都合が解消される。
【0012】
また、本発明は、シェーピングエア供給路が形成された装置本体と、前記装置本体の前端に取り付けられるシェーピングリングと、を備え、前記シェーピングリングは、前記回転霧化頭の軸心周りに円環状に形成され、前記シェーピングエア供給路に連通するマニホールドと、前記マニホールドの前方において前記軸心周りに複数配され、前記マニホールドと各々傾斜供給孔を介して連通し、前記傾斜供給孔から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流が発生する螺旋流形成室と、前記各螺旋流形成室に連通する前記シェーピングエア噴出孔と、を有することを特徴とする。
【0013】
この回転霧化塗装装置によれば、エアはマニホールドで圧力が均一化されたうえで各螺旋流形成室に供給される。したがって、各シェーピングエア噴出孔から均一な螺旋流が噴出される。また、螺旋流形成室により簡単に螺旋流を発生させることができる。したがって、汎用の装置本体を用いて螺旋流を簡単に生成可能な回転霧化塗装装置を実現できる。
【0014】
また、本発明は、前記螺旋流形成室は、後端に前記傾斜供給孔が開設された円筒部と、前記円筒部の前端から前方に向けて縮径し、前端に前記シェーピングエア噴出孔が開設された円錐部と、から構成されることを特徴とする。
【0015】
この回転霧化塗装装置によれば、円筒部で発生した螺旋流を円錐部により高速かつ高回転にしてシェーピングエア噴出孔から噴出させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のようにシェーピングエアの量または流速を増加しなくても、例えばバンパのような複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、定められたサイクルタイムで十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることができる。したがって、後工程での作業者による補完作業を要することなく、回転霧化塗装装置のみの自動塗装が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転霧化塗装装置の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る回転霧化塗装装置の部分側面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図3におけるB−B断面図である。
【図5】図3におけるE−E断面図である。
【図6】図3における螺旋流形成室周りの拡大図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る回転霧化塗装装置の正面図である。
【図8】図7におけるF−F断面図である。
【図9】図8におけるG−G断面図である。
【図10】図8におけるH−H断面図である。
【図11】螺旋流の回転方向が回転霧化頭の回転方向と同方向である様子を示す回転霧化塗装装置の正面図である。
【図12】(a)は図4における螺旋流形成室の拡大図、(b)は(a)に対して螺旋流の回転方向を逆向きに設定した場合の螺旋流形成室の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「第1実施形態」
以降、図3における上下方向を前後方向というものとして説明する。図3において、本発明の回転霧化塗装装置Pは、内部に回転軸2が同軸上に軸支された筒形状の装置本体1を備える。回転軸2の前端周りは装置本体1の前端面から突出し、その先端には回転霧化頭(ベルカップ)3が取り付けられている。回転霧化頭3は、前方に向けて拡径する円錐台形状を呈している。回転軸2の内部には塗料供給路4が穿設されており、この塗料供給路4の前端側は回転霧化頭3に連通している。
【0019】
装置本体1の前端面にはシェーピングリング5が取り付けられている。シェーピングリング5には中央開孔6が貫通形成されており、この中央開孔6の前端側は回転霧化頭3の外周円錐面に倣った円錐状空間として形成されている。回転軸2は中央開孔6内を挿通し、回転霧化頭3は、その外周円錐面が中央開孔6の円錐面と間隔を空けるようにしてその後端周りが中央開孔6の円錐状空間内に位置する。回転霧化頭3の前端周りは、中央開孔6の円錐状空間から前方にはみ出しており、シェーピングリング5の前端面から突出している。
【0020】
シェーピングリング5の後端面(装置本体1の前端面と接する面)には、回転霧化頭3の軸心O周りに円環状で断面矩形溝状のマニホールド7が穿設されている。マニホールド7は、装置本体1に形成された複数のシェーピングエア供給路8と連通する。シェーピングリング5内においてマニホールド7の前方には図1にも示すように軸心O周りに等間隔で複数の螺旋流形成室9が形成されている。各螺旋流形成室9は、円筒状の空間をなす円筒部10と、円筒部10の前端から前方に向けて縮径する円錐状の空間をなす円錐部11とから構成されている。
【0021】
螺旋流形成室9は、例えばマニホールド7の円環中心円周線D1(図4参照)上を室中心X1(図12参照)として形成されており、室の最大径となる円筒部10の径寸法は例えばマニホールド7の径方向幅寸法と同じである。そして、円錐部11の前端からシェーピングリング5の前端面にかけて軸心Oと平行にシェーピングエア噴出孔13が開設されている。図1に示すように、シェーピングエア噴出孔13は、回転霧化頭3の前端径よりも若干大径の円周線(円環中心円周線D1)上を孔中心として、孔全体が回転霧化頭3の前端径よりも外側に位置する程度の孔径寸法で、円周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
図3において、各螺旋流形成室9の円筒部10とマニホールド7とは、軸心O周りに等間隔で形成された傾斜供給孔12により連通している。傾斜供給孔12は、図3から判るように側面視して軸心Oに対して傾斜角を形成する孔である。この傾斜供給孔12は、開孔12aによりマニホールド7の前端面に臨み、開孔12bにより円筒部10の後端面に臨む。なお、傾斜供給孔12は、図3に点線で示されるようにその孔径は開孔12aから開孔12bにかけて一定であり、図3は図1におけるA−A断面視の図であるため、開孔12aから開孔12bにかけて孔径が変化する様が実線で示されている。
【0023】
傾斜供給孔12は、この傾斜供給孔12の開孔12bから螺旋流形成室9に流れ込んだエアが螺旋流形成室9の内周面に衝突して螺旋流を発生させ得る向きに穿孔されている。図12(a)は図4における1つの螺旋流形成室9を拡大した図である。開孔12aは、円環中心円周線D1よりも小径かつマニホールド7の内周面7a(図4)よりも大径の円周線D2上を孔中心X2として形成されている。開孔12bは、円環中心円周線D1よりも大径かつマニホールド7の外周面7b(図4)よりも小径の円周線D3上を孔中心X3として形成されている。
【0024】
そして、平面視状態で、開孔12aの孔中心X2と室中心X1とを通過する線に対して一方側に開孔12bの孔中心X3を位置させた場合、開孔12bから円筒部10に流れ込んだエアは円筒部10の内周面に斜めに衝突した後、内周面に沿って図12(a)における反時計回り方向に流れる。これにより、図1に示すように回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に回転する螺旋流Sが発生する。
【0025】
もし、図11に示すように、回転霧化頭3の回転方向Kと同方向に回転する螺旋流Sを発生させる場合には、図12(b)に示すように、開孔12aの孔中心X2と室中心X1とを通過する線に対して他方側に開孔12bの孔中心X3が位置するように傾斜供給孔12を穿孔する。これにより、開孔12bから円筒部10に流れ込んだエアは円筒部10の内周面に図12(a)とは逆向きの斜めに衝突した後、内周面に沿って図12(b)における時計回り方向に流れ、図11に示すように回転霧化頭3の回転方向Kと同方向に回転する螺旋流Sが発生する。
【0026】
以上の構成からなる回転霧化塗装装置Pの作用を説明する。
シェーピングエア供給路8を介してマニホールド7に供給されたエアは、この円環状の空間であるマニホールド7において圧力が均一化される。次いでエアはマニホールド7から傾斜供給孔12を経由して各螺旋流形成室9の円筒部10に供給される。このとき、エアは、傾斜供給孔12の向きによって円筒部10の内周面に斜めに衝突する。これにより、円筒部10内ではその内周面に沿って、前方に向かい、かつ本実施形態では回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に回転する螺旋流Sが発生する。この場合の「逆方向に回転する」とは、図1に示すように一方向から見た平面視において、回転霧化頭3が例えば半時計回りに回転するときには螺旋流Sが時計回りに回転することを意味する。
【0027】
そして、円筒部10の内周面に沿って前方に向けて上昇した螺旋流Sは、図6に示すように、円錐部11により螺旋流Sの径が徐々に絞られる。これにより、シェーピングエアは、高速かつ高回転の螺旋流Sとなったうえで小径のシェーピングエア噴出孔13から回転霧化頭3の前端縁の若干外側あたりを通過するように噴出される。
【0028】
一方、回転軸2内の塗料供給路4を介して回転霧化頭3に供給された塗料は、回転霧化頭3の高速回転による遠心力により回転霧化頭3の内面に薄膜状に広がり、高電圧が印加されたうえで前記遠心力により回転霧化頭3の前端縁から霧状となって噴霧される。このとき、塗料は、回転霧化頭3の回転方向Kに、かつ前記遠心力により径外方向に飛散しようとする。
【0029】
しかし、この塗料の径外方向への飛散は螺旋流Sによって抑制される。すなわち、シェーピングエア噴出孔13は図1に示されるように平面視で、回転霧化頭3の周縁に位置し、つまり回転霧化頭3の前端径よりも若干大径の円周線上に位置し、かつ孔全体が回転霧化頭3の前端径よりも外側に位置しており、孔の向きは回転軸2の軸心と平行であることから、シェーピングエア噴出孔13から噴出する螺旋流Sは、ほぼ回転霧化頭3の前端縁の若干外側あたりを通過するように回転軸2の軸心に沿って直線状に形成される。径外方向へ飛散しようとする塗料はこの複数の螺旋流Sによって遮られて適宜な塗装パターン径に絞られ、ワークに向けて噴霧される。また、回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向の螺旋流Sの流れにより、塗料の微粒化が一層促進されることとなって良好な塗着が得られる。
【0030】
螺旋流Sは旋回成分を有する分、直進性が高い。また、この螺旋流Sによって回転霧化頭3の前方に大きな負圧が発生することはほとんどない。たとえシェーピングエアの量または流速を増加させたとしても、螺旋流S自体の径外方向への拡がりが抑制されるように作用することから、シェーピングエアの量または流速の増加に伴って回転霧化頭3の前方に生ずる負圧が大きくなるという問題は生じない。したがって、シェーピングエアが回転霧化頭3の回転軸心方向に引き寄せられ、その結果、塗料の微粒化が不十分となり、ワークに塗料タレが発生しやすくなるという不都合が解消される。
【0031】
本発明によれば、螺旋流Sからなるシェーピングエアは、回転軸2の軸心に沿う直進性が高く維持される。そのため、従来のようにシェーピングエアの量または流速を増加しなくても、例えばバンパのような複雑な形状のワークにおいて狭小で奥深い凹部が形成されている場合、短時間(定められたサイクルタイム)で十分な量の微粒化塗料をこの凹部の底面まで到達させることが可能となり、後工程での作業者による補完作業を要することなく、回転霧化塗装装置Pのみの自動塗装が可能となる。
【0032】
また、装置本体1の前端に取り付けられるシェーピングリング5において、回転霧化頭3の軸心O周りに円環状に形成され、装置本体1のシェーピングエア供給路8に連通するマニホールド7と、マニホールド7の前方において軸心O周りに複数配され、マニホールド7と各々傾斜供給孔12を介して連通し、傾斜供給孔12から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流Sが発生する螺旋流形成室9と、各螺旋流形成室9に連通するシェーピングエア噴出孔13とを有する構成とすれば、エアはマニホールド7で圧力が均一化されたうえで各螺旋流形成室9に供給される。したがって、各シェーピングエア噴出孔13から均一な螺旋流Sが噴出される。また、螺旋流形成室9により簡単に螺旋流Sを発生させることができる。したがって、汎用の装置本体1を用いて螺旋流Sを簡単に生成可能な回転霧化塗装装置Pを実現できる。
【0033】
さらに、螺旋流形成室9を、後端に傾斜供給孔12が開設された円筒部10と、円筒部10の前端から前方に向けて縮径し、前端にシェーピングエア噴出孔13が開設された円錐部11と、から構成すれば、円筒部10で発生した螺旋流Sを円錐部11により高速かつ高回転にしてシェーピングエア噴出孔13から噴出させることができる。
【0034】
「第2実施形態」
次いで、図7〜10を参照して第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。この第2実施形態は、シェーピングリング5において、シェーピングエア噴出孔13と同心状であって内径側に複数の第2シェーピングエア噴出孔14を円周方向に複数開設したことを主な特徴とする。
【0035】
シェーピングリング5の後端面には円環状で断面矩形溝状の第2マニホールド15が穿設され、装置本体1には第2マニホールド15と連通するように複数の第2シェーピングエア供給路16が開設されている。シェーピングリング5の中央開孔6において円錐状空間の後端には、軸心Oと直交面をなす環状の段差面17が形成されている。第2シェーピングエア噴出孔14は、その後端が第2マニホールド15に連通し、前端は段差面17において回転霧化頭3の前端縁を指向するように開設されている。
【0036】
第2シェーピングエア噴出孔14から噴出される第2シェーピングエアは、回転する回転霧化頭3の外周円錐面に沿って回転霧化頭3の前端縁に供給される。塗料はこの第2シェーピングエアにより微粒化が一層促進される。第2シェーピングエアは回転霧化頭3の前端縁から噴霧される塗料と螺旋流Sとの間に介在することから、この第2シェーピングエアの量または流速を制御することにより、塗料の塗装パターンをより精度良く制御することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。説明した実施形態ではシェーピングリング5を単体の部材としているが、複数の部材に分割構成されたものであってもよい。また、螺旋流Sの回転方向は、回転霧化頭3の回転方向Kと逆方向に限定されるものではなく、図11および図12(b)で説明したように、回転霧化頭3の回転方向Kと同方向であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 装置本体
2 回転軸
3 回転霧化頭
5 シェーピングリング
7 マニホールド
8 シェーピングエア供給路
9 螺旋流形成室
10 円筒部
11 円錐部
12 傾斜供給孔
13 シェーピングエア噴出孔
P 回転霧化塗装装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭を備え、該回転霧化頭の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔から回転霧化頭の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置において、
前記各シェーピングエア噴出孔の各々からシェーピングエアが螺旋流として噴出することを特徴とする回転霧化塗装装置。
【請求項2】
シェーピングエア供給路が形成された装置本体と、前記装置本体の前端に取り付けられるシェーピングリングと、を備え、
前記シェーピングリングは、
前記回転霧化頭の軸心周りに円環状に形成され、前記シェーピングエア供給路に連通するマニホールドと、
前記マニホールドの前方において前記軸心周りに複数配され、前記マニホールドと各々傾斜供給孔を介して連通し、前記傾斜供給孔から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流が発生する螺旋流形成室と、
前記各螺旋流形成室に連通する前記シェーピングエア噴出孔と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の回転霧化塗装装置。
【請求項3】
前記螺旋流形成室は、
後端に前記傾斜供給孔が開設された円筒部と、
前記円筒部の前端から前方に向けて縮径し、前端に前記シェーピングエア噴出孔が開設された円錐部と、
から構成されることを特徴とする請求項2に記載の回転霧化塗装装置。
【請求項1】
塗料を前方かつ径外方向に噴霧する回転霧化頭を備え、該回転霧化頭の後方周囲に配した複数のシェーピングエア噴出孔から回転霧化頭の前端縁近傍に向けシェーピングエアを噴出させて塗料の塗装パターンを形成する回転霧化塗装装置において、
前記各シェーピングエア噴出孔の各々からシェーピングエアが螺旋流として噴出することを特徴とする回転霧化塗装装置。
【請求項2】
シェーピングエア供給路が形成された装置本体と、前記装置本体の前端に取り付けられるシェーピングリングと、を備え、
前記シェーピングリングは、
前記回転霧化頭の軸心周りに円環状に形成され、前記シェーピングエア供給路に連通するマニホールドと、
前記マニホールドの前方において前記軸心周りに複数配され、前記マニホールドと各々傾斜供給孔を介して連通し、前記傾斜供給孔から流れ込むエアがその内周面に衝突することにより螺旋流が発生する螺旋流形成室と、
前記各螺旋流形成室に連通する前記シェーピングエア噴出孔と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の回転霧化塗装装置。
【請求項3】
前記螺旋流形成室は、
後端に前記傾斜供給孔が開設された円筒部と、
前記円筒部の前端から前方に向けて縮径し、前端に前記シェーピングエア噴出孔が開設された円錐部と、
から構成されることを特徴とする請求項2に記載の回転霧化塗装装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−232247(P2012−232247A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101513(P2011−101513)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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