説明

回転霧化頭、回転霧化塗装装置及び回転霧化塗装方法

【課題】塗装OFF時の塗料の切れを改善することで塗装効率を向上させ、作業時間を短縮するとともに、非常停止時に塗装装置が止まっても、塗料の垂れ等、仕上がり不具合の発生を防止できる回転霧化頭及び回転霧化塗装装置を提供する。
【解決手段】内周面2における底部21と先端部との途中部には、前記内周面2の円周方向に沿って円環状に形成されるとともに、前記内周面2との境界部に複数の塗料供給孔4aが円周方向に形成された、塗料及び洗浄液を堰き止めるダム部4が配設され、前記内周面2の前記ダム部4部分と、前記ダム部4における底部側の面との、回転軸方向距離が均一になるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装を行うための回転霧化頭、回転霧化塗装装置及び回転霧化塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部から先端側へ向けて拡径する形状の内周面を備えた回転霧化頭を塗装装置本体に回転自在に装着し、高速回転する回転霧化頭の前記内周面底部に供給した塗料に、回転による遠心力を付与することにより、該塗料を霧化して放出するように構成した回転霧化塗装装置が知られている。
【0003】
前記回転霧化塗装装置においては、前記回転霧化頭に静電高電圧を印加して、霧化した塗料の微粒化粒子を帯電させ、静電高電圧を印加した回転霧化頭と接地した被塗装物との間に形成される静電電界により、帯電した塗料の粒子を被塗装物へ向けて飛翔させることで、被塗装物の表面に塗装を行うようにしている。
このように構成される回転霧化塗装装置としては、例えば特許文献1に記載されるような塗装装置がある。
【0004】
また、このような回転霧化塗装装置に備えられる回転霧化頭は、本件出願人の未公知先願発明によれば、図9及び図10に示すように、底部から先端側へ向けて拡径する形状の内周面102を有した回転霧化頭101として構成される。
前記内周面102は、その底部121から先端側(図9における紙面手前側、図10における左端側)へ向けて拡径している。また、前記内周面102の先端部には塗料放出端部102cが形成されており、内周面102における、底部121と塗料放出端部102cとの途中部にはダム部104が形成されている。
【0005】
前記ダム部104は、内周面102の円周方向に沿って形成され、該内周面102から回転軸と略直交する方向に延出する円環状部材にて構成されており、その中央部には開口部104bが開口している。
また、前記内周面102における、前記ダム部104よりも底部121側に位置する部分が底部側塗料経路102aを構成し、前記ダム部104よりも先端側に位置する部分が先端側塗料経路102bを構成している。
【0006】
さらに、前記ダム部104と前記底部側塗料経路102aにて囲まれる空間は、前記底部121に供給された塗料が先端側に流動してきた際に、該塗料が溜まる塗料溜まり部122として構成されている。
また、前記ダム部104の内周面102との境界部には、複数の塗料供給孔104a・104a・・・が円周方向に形成されており、該塗料供給孔104aにより、前記底部側塗料経路102aと先端側塗料経路102bとが連通されている。
【0007】
一方、前記回転霧化頭101の内周面102の底部121には、該底部121と回転霧化頭101の基部側とを連通する連通孔103が、回転軸と軸心を同じくして形成されており、該連通孔103には、回転霧化頭101の基部側から塗料供給管110が挿入されている。
該塗料供給管110は、先端側を閉じた管状部材にて構成されており、その先端部は前記内周面102の底部121に突出している。
【0008】
また、塗料供給管110の前記底部121に突出している部分の側面には、複数のノズル孔110a・110a・・・が形成されており、該塗料供給管110の前記底部121に突出している部分により塗料供給ノズル111が構成されている。
【0009】
このように構成される回転霧化頭101において静電塗装を行う際は、まず、該回転霧化頭101が高速回転している状態で、前記塗料供給ノズル111から底部121に塗料が供給される。そして、底部121に供給された塗料は、回転により生じた遠心力により、前記底部側塗料経路102aを通じ、図10中の矢印Aの方向に向かって先端側へ流動する。
底部121から底部側塗料経路102aを通じて先端側へ流動してきた塗料は、前記ダム部104が形成されている部分まで達すると、該ダム部104に堰き止められて、前記塗料溜まり部122に貯溜される。
【0010】
塗料溜まり部122に貯溜された塗料は、前記塗料供給孔104a・104a・・・を通じて矢印Bの方向に向かって前記先端側塗料経路102bへ流出し、その後前記内周面102の塗料放出端部102cで霧化され、矢印Cの方向に向かって放出されるのである。
【特許文献1】実公平6−12836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、回転霧化頭101の内周面102にダム部104が形成される回転霧化塗装装置においては、前記底部121に供給された塗料が先端側に流動してきた際に、該塗料が貯溜される塗料溜まり部122が構成されている。
【0012】
このため、塗料溜まり部122に塗料の溜まる量が多くなると、塗装のON・OFFが必要な場合は、塗装OFF時に時間がかかっていた。具体的には、回転霧化塗装装置による塗装をONからOFFにしてからも、塗料溜まり部122に溜まった塗料が全て放出されるには数秒間かかるため、塗料の切れが悪くなっていたのである。
また、上記により作業時間の増加や塗装効率の低下が発生し、さらに、非常停止時に塗装装置が止まった場合、塗料の垂れ等が発生し、仕上がりが悪くなる問題があった。
【0013】
そこで、本発明においては、塗装OFF時の塗料の切れを改善することで塗装効率を向上させ、作業時間を短縮するとともに、非常停止時に塗装装置が止まっても、塗料の垂れ等の仕上がり不具合が発生しない回転霧化頭及び回転霧化塗装装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、底部から先端側へ向けて拡径する内周面と、前記内周面の底部に備えられた、塗料を供給するための塗料供給口と、を備え、前記塗料供給口から前記内周面の底部に供給された塗料に、回転による遠心力を付与することにより、該塗料を、該内周面に沿って先端側へ流動させ、前記内周面先端より霧化して放出する回転霧化頭であって、前記内周面における底部と先端部との途中部には、前記内周面の円周方向に沿って円環状に形成されるとともに、前記内周面との境界部に複数の塗料供給孔が円周方向に形成された、前記塗料を堰き止めるダム部が配設され、前記内周面における前記ダム部に対向する部分と、前記ダム部における底部側の面とが、近接して形成されるものである。
【0016】
請求項2においては、前記ダム部は、前記回転霧化頭の回転軸に垂直な面上に形成され、前記内周面は、該ダム部に対向する部分で回転軸方向に垂直な面を備えるように、底部から先端側に向かって湾曲して形成されるものである。
【0017】
請求項3においては、前記ダム部は、前記内周面の先端側から底部側に向けて、回転軸方向に前記内周面と同じ勾配の傾斜を備えて形成されるものである。
【0018】
請求項4においては、前記ダム部は、内周側に溝部が形成されるとともに、該溝部の外周端部に複数の塗料供給孔が円周方向に形成された円環板状部材が、前記内周面に固設して形成されるものである。
【0019】
請求項5においては、前記円環板状部材は、前記内周面に固設される底部側円環板状ピースと、外周端部に立上り部を有し、該立上り部が前記底部側円環板状ピースに接合される先端側円環板状ピースとが、端面接合で接合された2ピース接合構造で形成されるものである。
【0020】
請求項6においては、前記円環板状部材は、先端側内径が、底部側内径よりも大きく形成されるものである。
【0021】
請求項7においては、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の回転霧化頭を備える回転霧化塗装装置である。
【0022】
請求項8においては、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の回転霧化頭を使用して塗料を噴霧する回転霧化塗装方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塗装OFF時の塗料の切れを改善することで塗装効率を向上させ、作業時間を短縮するとともに、非常停止時に塗装装置が止まっても、塗料の垂れ等、仕上がり不具合の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る回転霧化頭を示す側面断面図である。
図2(a)は本発明の実施例1に係る回転霧化頭のダム部に塗料が貯溜されている時のダム部形成部分を示す側面断面図、(b)は従来の回転霧化頭のダム部に塗料が貯溜されている時のダム部形成部分を示す側面断面図である。
図3(a)は回転霧化塗装の方法を示した概略図、(b)は本発明に係る回転霧化頭の先端部分を示す側面断面図、(c)は従来の回転霧化頭の先端部分を示す側面断面図である。
図4は実施例2に係る回転霧化頭を示す側面断面図である。
図5は実施例3に係る回転霧化頭を示す側面断面図である。
図6は実施例3に係る回転霧化頭のダム部形成部分を示す側面断面図である。
図7は実施例4に係る回転霧化頭のダム部形成部分を示す側面断面図である。
図8は実施例5に係る回転霧化頭の洗浄時のダム部形成部分を示す側面断面図である。
図9は従来の回転霧化頭を示す正面図である。
図10は図9におけるA−A線側面断面図である。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0025】
以下に、本発明に係る回転霧化頭及び回転霧化塗装装置について説明する。
【0026】
[回転霧化頭1の構成・実施例1]
図1に示すように、実施例1に係る回転霧化頭1は、被塗装物に対して静電塗装を行う回転霧化塗装装置に備えられ、該回転霧化頭1の基部は、該回転霧化塗装装置の図示せぬ塗装装置本体に、回転軸Oを中心に回転自在に装着されている。
前記回転霧化頭1は、底部21から先端側(図1における左端側)へ向けて拡径する形状の内周面2を有しており、前記内周面2の先端部には塗料放出端部2cが形成されている。なお、本実施例では、図1における回転霧化頭1の右端側を基部側とし、左端側を先端側とする。
【0027】
前記回転霧化頭1の内周面2の底部21には、該底部21と回転霧化頭1の基部側とを連通する連通孔3が、前記回転軸Oと軸心を同じくして形成されており、該連通孔3には、回転霧化頭1の基部側から塗料供給管10が挿入されている。
塗料供給管10は、先端側を閉じた管状部材にて構成されており、その先端部は前記内周面2の底部21に突出している。
【0028】
また、塗料供給管10の前記底部21に突出している部分の側面には、複数のノズル孔10a・10a・・・が形成されており、該塗料供給管10の前記底部21に突出している部分により塗料供給ノズル11が構成されている。
前記塗料供給管10の基端部は塗装装置本体に接続されており、塗装装置本体に装着される塗料タンクの塗料が、前記塗料供給管10を通じて塗料供給ノズル11に供給され、さらに該塗料供給ノズル11のノズル孔10a・10a・・・から内周面2の底部21に吐出されることとなっている。前記ノズル孔10a・10a・・・から吐出された塗料は、前記底部21の中央部から半径方向外側へ向けて流出し、前記内周面2に到達することとなる。
【0029】
また、内周面2の底部21と塗料放出端部2cとの途中部にはダム部4が形成されている。
前記ダム部4は、内周面2の円周方向に沿って形成され、該内周面2から前記回転軸Oと略直交する方向に延出する円環状部材にて構成されており、その中央部には開口部4bが開口している。
また、前記内周面2の前記ダム部4よりも底部21側に位置する部分が底部側塗料経路2aを構成し、前記ダム部4よりも先端側に位置する部分が先端側塗料経路2bを構成している。
【0030】
ここで、前記内周面2における前記ダム部4に対向するダム形成部2dと、前記ダム部4における底部側の面4cとが、近接して形成される。即ち、前記ダム部4を回転軸O方向に垂直な面上に形成するのに対し、前記ダム形成部2dで回転軸O方向に略垂直面となるように、前記底部側塗料経路2aを底部21から先端側に向かって湾曲して形成するのである。換言すれば、前記底部側塗料経路2aを先端側へ向かって凸となるように湾曲させて、前記ダム部4と前記ダム形成部2dにて囲まれる空間の幅hが、半径方向に向かって略均一となるように、前記内周面2を形成するのである。
【0031】
このように、前記ダム部4と前記ダム形成部2dにて囲まれる空間は、前記底部21に供給された塗料が先端側に流動してきた際に、該塗料が溜まる塗料溜まり部22として構成されている。
また、前記ダム部4の内周面2との境界部には、複数の塗料供給孔4a・4a・・・が円周方向に形成されており、該塗料供給孔4aにより、前記底部側塗料経路2aと先端側塗料経路2bとが連通されている。
【0032】
上記のように構成される回転霧化頭1においては、塗装時に該回転霧化頭1が高速回転している状態で前記塗料供給ノズル11から底部21に塗料が供給されると、底部21に供給された塗料は、回転により生じた遠心力により、前記底部側塗料経路2aを通じて先端側へ流動する。
底部21から底部側塗料経路2aを通じて先端側へ流動してきた塗料は、前記ダム部4が形成されている部分まで達すると、該ダム部4に堰き止められて、前記塗料溜まり部22に貯溜される。
【0033】
ここで、塗料が前記回転霧化頭1のダム部4に貯溜されている時は図2(a)に示すように、図2(b)に示す従来の回転霧化頭101のダム部104に塗料が貯溜されている時と比較して、貯溜される塗料の容積を少なくすることができる。即ち、本実施例の回転霧化頭1においては、上述のように前記内周面2における前記ダム部4に対向するダム形成部2dと、前記ダム部4における底部側の面4cとが近接して形成されているため、塗料溜まり部22の容積が、内周面が断面視略直線状の傾斜面に形成されている従来の回転霧化頭101における塗料溜まり部122の容積よりも、少なくなっているのである。
【0034】
このように、塗料溜まり部22に貯溜された塗料は、前記塗料供給孔4a・4a・・・を通じて前記先端側塗料経路2bへ流出し、その後前記内周面2の塗料放出端部2cから放出される。
前記塗料放出端部2cには、多数のセレーション(溝部)が塗料の流出方向に形成されており、先端側塗料経路2bを流れてきた塗料が塗料放出端部2cを通過することで、放出される塗料が前記セレーションにより液糸状となり、放出後に霧化されることとなる。
このように、塗料は回転霧化頭1により噴霧される。
【0035】
上記のように構成することにより、塗装時に塗料のON・OFFが必要な場合でも、塗装OFF時の塗料の切れを改善することができる。即ち、回転霧化塗装装置による塗装をONからOFFにした場合でも、塗料溜まり部22に溜まった塗料が少ないため、短時間(約1秒以下)で全ての塗料を放出することができるのである。
また、これにより、塗装OFF時の時間ロスを低減することで塗装効率を向上させ、作業時間を短縮し、さらに、例えば非常停止時に塗装装置が止まっても、塗料の垂れ等、仕上がり不具合の発生を防止することができるのである。
【0036】
次に、本実施例における回転霧化頭による塗装方法について、図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、回転霧化塗装装置においては、回転霧化頭の先端より霧化された塗料が放出される。ここで、霧化塗料には回転霧化頭の回転による遠心力が働くため、回転霧化塗装装置に配設されたシェ−ピングキャップから多くのシェ−ピングエアを出して、該シェ−ピングエアによって塗料粒子を被塗装物方向に向かわせている。
【0037】
ここで、図3(c)に示すように従来の回転霧化頭101では、先端側塗料経路102bが外側に向かって傾斜して形成されているため、遠心力方向の速度V´に対する噴出速度U´のなす角度が小さくなる。即ち、霧化塗料の被塗装物方向への速度が小さくなることから、遠心力方向の速度V´と噴出速度U´との合成速度V´+U´は大きく外側に向かうことになる。これにより、霧化塗料を被塗装物方向に向かわせるためには、塗装時に多くのシェ−ピングエアを必要としていた。
また、ダム式回転霧化頭を用いて噴出速度U´を大きくしても、遠心力方向と噴出方向のなす角度は変わらないため、被塗装物方向への速度成分を効率よく上げることができなかったのである。
【0038】
本実施例に係る回転霧化頭1においては、図3(b)に示すように、先端側塗料経路2bの回転軸方向への傾斜を小さくし、先端部分で回転軸方向と略同一方向に向かうように形成している。これにより、噴出速度Uの方向を被塗装物方向に向かわせることで、遠心力方向の速度Vに対する噴出速度Uのなす角度を大きくしている。即ち、霧化塗料の被塗装物方向への速度が大きくなり、遠心力方向の速度Vと噴出速度Uとの合成速度V+Uを被塗装物方向に向かわせることができるのである。
即ち、本実施例では、ダム式回転霧化頭を用いて噴出速度Uを上げることにより、より被塗装物に向かう速度を上げることができるのであり、塗料粒子を被塗装物に向かわせるためのシェ−ピングエアを低減する構成としているのである。
なお、先端側塗料経路2bの回転軸方向への傾斜度合いは、例えば先端側塗料経路2bが回転霧化頭1の回転軸と略並行(即ち傾斜角度が略0°)となるか、前記回転軸に対して僅かに傾斜している程度とすることができる。
【0039】
[回転霧化頭41の構成・実施例2]
次に、本発明の実施例2に係る回転霧化頭41について、図4を用いて説明する。なお、以下に説明する回転霧化頭の各実施例に関して、上述の実施例と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図4に示すように、本実施例に係る回転霧化頭41は、前記実施例と同様に被塗装物に対して静電塗装を行う回転霧化塗装装置に備えられ、該回転霧化頭41には、底部21から先端側へ向けて拡径する形状の内周面42、及び、前記内周面42の先端部には塗料放出端部42cが形成されている。
【0041】
また、内周面42は略円錐状のテーパー面に形成されており、内周面42の底部21と塗料放出端部42cとの途中部にはダム部44が形成され、前記内周面42の前記ダム部44よりも底部21側に位置する部分が底部側塗料経路42aを構成し、前記ダム部44よりも先端側に位置する部分が先端側塗料経路42bを構成している。
【0042】
ここで、前記内周面42における前記ダム部44に対向する部分と、前記ダム部44における底部側の面44cとが、近接して形成される。具体的には、前記ダム部44は、前記内周面42の先端側から底部側に向けて、回転軸方向に前記内周面42と同じ勾配の傾斜を備えて形成されるのである。換言すれば、中央部に開口部44bが開口された、円環状部材であるダム部44の内周部分を底部側に膨出させて形成し、該ダム部44を前記内周面42に固設しているのである。
【0043】
ここで、前記ダム部44と前記内周面42にて囲まれる空間は、前記底部21に供給された塗料が先端側に流動してきた際に、該塗料が溜まる塗料溜まり部45として構成されている。
また、前記ダム部44の内周面42との境界部には、複数の塗料供給孔44a・44a・・・が円周方向に形成されており、該塗料供給孔44aにより、前記底部側塗料経路42aと先端側塗料経路42bとが連通されている。
【0044】
このように構成される回転霧化頭41においては、前記内周面42における前記ダム部44に対向する部分と、前記ダム部44における底部側の面44cとが近接して形成されているため、上記実施例と同様に塗料溜まり部45の容積が少なく構成されるのである。
【0045】
上記のように構成することにより、回転霧化塗装装置による塗装をONからOFFにした場合でも、塗料溜まり部45に溜まった塗料が少ないため、短時間(約1秒以下)で全ての塗料を放出することができるのである。
また、これにより、塗装OFF時の時間ロスを低減することで塗装効率を向上させ、作業時間を短縮し、さらに、例えば非常停止時に塗装装置が止まっても、塗料の垂れ等、仕上がり不具合の発生を防止することができるのである。
【0046】
[回転霧化頭51の構成・実施例3]
次に、本発明の実施例3に係る回転霧化頭51について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、本実施例に係る回転霧化頭51は、前記実施例1に記載の構成に加え、ダム部54が、内周側に溝部54cが形成されるとともに、該溝部54cの外周端部に複数の塗料供給孔54a・54a・・・が円周方向に形成された円環板状部材として、回転霧化頭51の内周面52に固設して形成される。つまり、溝部54cは、ダム部54の内周側面から半径方向外側へ向かって溝深さが形成されている。そして、該溝部54cが塗料溜まり部55を構成するのである。
【0047】
即ち、前記実施例1における塗料溜まり部22が、前記ダム部4と前記ダム形成部2dにて囲まれる空間として形成されるのに対し、本実施例における塗料溜まり部55は、前記ダム部54の内周側に溝部54cを形成することで、一体的に構成されている。そして、該ダム部54を前記内周面52に固設することにより、回転霧化頭51を構成しているのである。
【0048】
上記のように構成することにより、回転霧化頭51の回転に伴う塗料の液圧による抜け加重が、ダム部54と内周面52との間に加わらないようにすることができる。即ち、前記塗料溜まり部55に貯溜された塗料に遠心力が加わり、塗料溜まり部55に抜け加重が発生しても、前記ダム部54は一体的に構成されているため、前記抜け加重はダム部54のみで受けることができるのである。これによって、該ダム部54における抜け加重が内周面52に伝わらず、ダム部54が回転霧化頭51から先端側に離脱しない構成としているのである。
【0049】
さらに、本実施例においては図6に示すように、前記ダム部54は先端側内径D1が、底部側内径D2よりも大きく形成される。
これにより、塗料溜まり部55に貯溜された塗料が、ダム部54を前記内周面52に組付ける組付け端52eと接触することを防止できる。即ち、塗料の供給量が多くなっても、図6に示すようにダム部54の先端側から流出するため、液圧の加わった塗料が組付け端52eに至ることはないのである。
【0050】
上記のように構成することにより、回転霧化頭51の回転によって塗料溜まり部55に貯溜された塗料に遠心力が加わり、液圧が発生しても、ダム部54と内周面52との組付け端52eに液圧の加わった塗料が接触することがないため、該組付け端52eに塗料が侵入してダム部54に抜け加重を発生させることがないのである。
【0051】
また、回転霧化頭51を洗浄する際は、前記塗料供給ノズル11から底部21に供給された洗浄液を前記塗料溜まり部55に貯溜させ、ダム部54の先端側から該洗浄液を流出させて行う。この場合においても上記と同様に、貯溜された洗浄液は前記組付け端52eに至らずに先端側に流れるため、該組付け端52eに液圧の加わった洗浄液が侵入してダム部54に抜け加重を発生させることがないのである。
【0052】
[回転霧化頭61の構成・実施例4]
次に、本発明の実施例4に係る回転霧化頭61について、図7を用いて説明する。
図7に示すように、本実施例に係る回転霧化頭61においてダム部64は、前記実施例3に記載の構成に加え、内周面62に固設される底部側円環板状ピース64αと、外周端部に立上り部64eを有し、該立上り部64eが前記底部側円環板状ピース64αに接合される先端側円環板状ピース64βとが、端面接合部64dで接合された2ピース接合構造で形成される。
即ち、ダム部64は、段付きインロー部を有する立上り部64eが形成された先端側円環板状ピース64βに、底部側円環板状ピース64αをインロー嵌合させることで構成され、該ダム部64を前記内周面62に固設することにより、回転霧化頭61を構成しているのである。
【0053】
上記のように構成することにより、塗料供給孔64aの加工が容易となる。具体的には、前記底部側円環板状ピース64αを嵌合する前に、先端側円環板状ピース64βに下穴64cを加工し、その後、該下穴64cの加工部分に塗料供給孔64aを形成するのである。その後に、底部側円環板状ピース64αを嵌合してダム部64を形成することが可能となるため、ダム部64を一体的に構成してから塗料供給孔64aを加工するよりも作業を簡易に行うことができるのである。
【0054】
また、前記立上り部64eに段付きインロー部を形成し、該段付きインロー部に底部側円環板状ピース64αをインロー嵌合する構成にすることにより、ダム部64のダム幅Bを任意に設定することが可能となり、接合の精度を向上させることが可能となる。さらに、端面接合部64dで端面接合することにより、ダム部64の強度、及び塗料のシール性を確保することができるのである。
【0055】
[回転霧化頭71の構成・実施例5]
次に、本発明の実施例5に係る回転霧化頭71について、図8を用いて説明する。
図8に示すように、本実施例に係る回転霧化頭71では、前記実施例1に記載の構成に加え、内周面72において、ダム部4の内径端部近傍に対向する部分に、回転霧化頭71の外部と連通する洗浄孔72eが形成されている。なお、該洗浄孔72eは、内周面72と外部を連通する構成であればよく、その形状等は本実施例に限定するものではない。
【0056】
上記のように構成することにより、回転霧化頭71の色替え等のために洗浄を行う場合は、前記塗料供給ノズル11から底部21に供給された洗浄液を塗料溜まり部75に貯溜させる。そして、回転霧化頭71が高速で回転することで洗浄液に遠心力が作用し、液圧が生じる。これにより、塗料溜まり部75に貯溜された洗浄液は、図8に示すようにダム部4の先端側から流出するとともに、前記洗浄孔72eからも外部へと流出するのである。
【0057】
このように、洗浄孔72eを通じて前記回転霧化頭71の外部へと流出した洗浄液が、シェ-ピングキャップから出るシェ-ピングエアによって、回転霧化頭71の外周面に押し当てられることにより、該回転霧化頭71の外周面を洗浄することが可能となるのである。即ち、外部に別構成の洗浄装置を設けることなく、回転霧化頭71の外周面の洗浄を行うことが可能となり、これによって作業工程を短縮することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係る回転霧化頭を示す側面断面図。
【図2】(a)は本発明の実施例1に係る回転霧化頭のダム部に塗料が貯溜されている時のダム部形成部分を示す側面断面図、(b)は従来の回転霧化頭のダム部に塗料が貯溜されている時のダム部形成部分を示す側面断面図。
【図3】(a)は回転霧化塗装の方法を示した概略図、(b)は本発明に係る回転霧化頭の先端部分を示す側面断面図、(c)は従来の回転霧化頭の先端部分を示す側面断面図。
【図4】実施例2に係る回転霧化頭を示す側面断面図。
【図5】実施例3に係る回転霧化頭を示す側面断面図。
【図6】実施例3に係る回転霧化頭のダム部に塗料が貯溜されている時のダム部形成部分を示す側面断面図。
【図7】実施例4に係る回転霧化頭のダム部形成部分を示す側面断面図。
【図8】実施例5に係る回転霧化頭の洗浄時のダム部形成部分を示す側面断面図。
【図9】従来の回転霧化頭を示す正面図。
【図10】図9におけるA−A線側面断面図。
【符号の説明】
【0059】
1 回転霧化頭
2 内周面
2a 底部側塗料経路
2b 先端側塗料経路
2c 塗料放出端部
4 ダム部
4a 塗料供給孔
4b 開口部
10 塗料供給管
10a ノズル孔
11 塗料供給ノズル
21 底部
22 塗料溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部から先端側へ向けて拡径する内周面と、前記内周面の底部に備えられた、塗料を供給するための塗料供給口と、を備え、
前記塗料供給口から前記内周面の底部に供給された塗料に、回転による遠心力を付与することにより、
該塗料を、該内周面に沿って先端側へ流動させ、前記内周面先端より霧化して放出する回転霧化頭であって、
前記内周面における底部と先端部との途中部には、前記内周面の円周方向に沿って円環状に形成されるとともに、前記内周面との境界部に複数の塗料供給孔が円周方向に形成された、前記塗料を堰き止めるダム部が配設され、
前記内周面における前記ダム部に対向する部分と、前記ダム部における底部側の面とが、近接して形成される、
ことを特徴とする、回転霧化頭。
【請求項2】
前記ダム部は、前記回転霧化頭の回転軸に垂直な面上に形成され、
前記内周面は、該ダム部に対向する部分で回転軸方向に垂直な面を備えるように、底部から先端側に向かって湾曲して形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転霧化頭。
【請求項3】
前記ダム部は、前記内周面の先端側から底部側に向けて、回転軸方向に前記内周面と同じ勾配の傾斜を備えて形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転霧化頭。
【請求項4】
前記ダム部は、内周側に溝部が形成されるとともに、該溝部の外周端部に複数の塗料供給孔が円周方向に形成された円環板状部材が、前記内周面に固設して形成される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の回転霧化頭。
【請求項5】
前記円環板状部材は、前記内周面に固設される底部側円環板状ピースと、
外周端部に立上り部を有し、該立上り部が前記底部側円環板状ピースに接合される先端側円環板状ピースとが、
端面接合で接合された2ピース接合構造で形成される、
ことを特徴とする、請求項4に記載の回転霧化頭。
【請求項6】
前記円環板状部材は、先端側内径が、底部側内径よりも大きく形成される、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の回転霧化頭。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の回転霧化頭を備える回転霧化塗装装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の回転霧化頭を使用して塗料を噴霧する回転霧化塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−297645(P2009−297645A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154542(P2008−154542)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591274059)ランズバーグ・インダストリー株式会社 (38)
【Fターム(参考)】