回転駆動装置
【課題】回転駆動装置において、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができ、さらにその駆動力を容易に制御する。
【解決手段】回転駆動装置10は、本体ケース11に回転可能に支承され、出力軸12bおよび環状に形成された内歯12cを備え、出力軸12bの回転軸まわりに回転される出力回転体12と、出力回転体12の出力軸12bの回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に出力回転体12の内歯12cと噛合する外歯13bを備えた偏心回転体13と、偏心回転体13に出力軸12bの回転軸まわりに環状に形成された環状壁13d1に沿って当接して周回する錘21と、偏心回転体13を弾性移動可能に支持する支持装置22と、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を振動させる歪素子23と、を備えた偏心運動発生装置20と、を備えている。
【解決手段】回転駆動装置10は、本体ケース11に回転可能に支承され、出力軸12bおよび環状に形成された内歯12cを備え、出力軸12bの回転軸まわりに回転される出力回転体12と、出力回転体12の出力軸12bの回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に出力回転体12の内歯12cと噛合する外歯13bを備えた偏心回転体13と、偏心回転体13に出力軸12bの回転軸まわりに環状に形成された環状壁13d1に沿って当接して周回する錘21と、偏心回転体13を弾性移動可能に支持する支持装置22と、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を振動させる歪素子23と、を備えた偏心運動発生装置20と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1,2に示されているように、回転駆動装置は、圧電体の超音波振動を利用する表面波モータである。その表面波モータは、弾性体4aに圧電体4bが固着された固定子4と、固定子4の進行波発生面4cと相互接触している進行波受動面2aを有する回転子2とを積層した構造である。この表面波モータにおいては、圧電体4bに電圧を印加することで進行波発生面4cを波打たせてそれを進行波受動面2aで受けて回転子2が回転するようになっている。
【0003】
また、駆動装置として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2に図1に示されているように、駆動装置は、半円環状に形成されており、対称な2箇所に圧電体15を取り付け、圧電体15に電圧を印加することで、2本の脚12,13の先端を楕円状に回転運動させ、接している物体(レール21)を一方向に移動させるようになっている。
【0004】
さらに、駆動装置として、特許文献3に示されているものが知られている。特許文献3に図1,2,18に示されているように、駆動装置においては、四角柱のハウジング14の4つの外面37にそれぞれ圧電プレート18,20,22,24が取り付けられている。このような駆動装置では、活性化された変換器(たとえばプレート18、20、22および24)とハウジング14との相互作用が、ナット16の軌道運動を引き起こし、それが他方でねじ付きシャフト12の回転および平行移動を引き起こすようになっている。これにより、ハウジング14は一方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−77068号公報
【特許文献2】特開平02−266881号公報
【特許文献2】特表2008−510445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の回転駆動装置によれば、圧電体に電圧を印加することで、回転子2を回転運動させているが、その構造上、出力可能なトルクは電動モータに比べると小さいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の駆動装置によれば、楕円状に回転運動する振動部を駆動対象である物体(レール21)に押し当てて駆動させるため、その接している部分の摩擦分しか推進力を得ることができないという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の駆動装置によれば、ハウジング14側が変形すると、ハウジング14とシャフト12とのねじが擦り合い、このねじの接触面の摩擦によりシャフト12が回転する。つまりこの摩擦力のみで推進するため、推進力の増大は望めないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、回転駆動装置において、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができ、さらにその駆動力を容易に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、本体ケースと、本体ケースに回転可能に支承され、出力軸および環状に形成された内歯または外歯を備え、出力軸の回転軸まわりに回転される出力回転体と、出力回転体の出力軸の回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に出力回転体の内歯と噛合する外歯または出力回転体の外歯と噛合する内歯を備えた偏心回転体と、偏心回転体に出力軸の回転軸まわりに環状に形成された環状壁に沿って当接して周回する錘と、偏心回転体を弾性移動可能に支持する支持装置と、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を振動させる歪素子と、を備え、歪素子による押圧力と支持装置による弾性力と前記錘の遠心力との協働により錘を周回させることで偏心回転体に偏心周回運動を発生させる偏心運動発生装置と、を備えたことである。
【0011】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、支持装置は、本体ケースと偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、歪素子は、本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を押圧することである。
【0012】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、支持装置は、本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、第1支持装置と偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、歪素子は、第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置を振動させることで偏心回転体を振動させることである。
【0013】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1から請求項3の何れか一項において、歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されていることである。
【0014】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1から請求項4の何れか一項において、錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことである。
【0015】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、歪素子は、偏心回転体を環状壁の接線方向に押圧するように設けられていることである。
【0016】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、第1支持装置は、基端が本体ケースに固定され先端が自由端であり偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、歪素子は第1支持装置の基端部に取り付けられていることである。
【0017】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項7において、支持装置は、第1支持装置の先端に行くにつれて第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されていることである。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、偏心回転体に形成された環状壁に沿って錘が周回すると、支持装置によって弾性移動可能に支持されている偏心回転体は錘の遠心力と支持装置の弾性力によって出力回転体の出力軸の回転軸まわりに偏心周回運動をするような構成となっている。歪素子は、偏心回転体を振動させることで、前述した偏心周回運動を開始させたり、偏心周回運動を加速・減速させて制御したりしている。偏心回転体が偏心周回運動することにより偏心回転体の内歯と出力回転体の外歯または偏心回転体の外歯と出力回転体の内歯が噛合することで、出力回転体が回転される。
【0019】
このように、比較的変位量が小さい歪素子を使用しても、偏心周回運動の発生に必要な力を偏心回転体に付与することが可能となる。一旦偏心周回運動が開始されれば、歪素子による押圧力、錘の遠心力、支持装置による弾性力により、安定した周回運動を達成することができる。また、歪素子による押圧力のみで偏心回転体を偏心周回運動させるのではなく、支持装置による弾性力および錘の遠心力も使用して偏心回転体を偏心周回運動させることで、出力回転体を回転させることができる。
【0020】
したがって、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができる。さらに、その駆動力は錘の遠心力とよい相関関係にあるので錘の回転(周回)状態を制御することで、その駆動力を容易に制御することができる。
【0021】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、支持装置は、本体ケースと偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、歪素子は、本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を押圧する。これにより、偏心回転体を本体ケースに弾性部材を介して確実に支持することができるとともに、本体ケースに固定された歪素子により偏心回転体を確実に振動させることができる。
【0022】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1において、支持装置は、本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、第1支持装置と偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、歪素子は、第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置を振動させることで偏心回転体を振動させる。これにより、偏心回転体を弾性部材からなる第2支持装置および弾性変形可能な第1支持装置を介して本体ケースに確実に支持するとともに、偏心回転体に比較的大きな振動を付与することができる。また、歪素子が直接第1支持装置を振動させ、その振動された第1支持装置により偏心回転体が振動されるので、偏心回転体を歪素子によってより確実に振動させることができる。
【0023】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1から請求項3の何れか一項において、歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されている。これにより、供給する電気信号に応じて歪量を変化させることができ、偏心回転体ひいては回転駆動装置の回転制御を容易に行うことができる。
【0024】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項1から請求項4の何れか一項において、錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことである。これにより、錘の位置を確実に検出することで、歪素子の制御をより確実に行うことができる。
【0025】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項2において、歪素子は、偏心回転体を環状壁の接線方向に押圧するように設けられている、これにより、歪素子のエネルギーを偏心回転体ひいては錘に有効に加えることができ、効率の向上を図ることできる。
【0026】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項3において、第1支持装置は、基端が本体ケースに固定され先端が自由端であり偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、歪素子は第1支持装置の基端部に取り付けられている。これにより、第1支持装置は偏心回転体を簡単な構成で弾性変形可能に支持することできる。また、歪素子が第1支持装置の基端部に取り付けられているので、偏心回転体を効率よく振動させることができる。
【0027】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項7において、支持装置は、第1支持装置の先端に行くにつれて第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されている。これにより、第1支持装置の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、偏心回転体をより効率よく振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による回転駆動装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した回転駆動装置を2−2線に沿って示す断面図である。
【図3】図1に示した回転駆動装置を3−3線に沿って示す断面図である。
【図4】図1に示した回転駆動装置の開始時の作動を示す図である。
【図5】図1に示した回転駆動装置の開始時の作動を示す図である。
【図6】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図7】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図8】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図9】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図10】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時であって錘が所定位置にきたときの作動を示す図である。
【図11】本発明による回転駆動装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図12】図11に示した回転駆動装置を12−12線に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1)第1の実施形態
以下、本発明による回転駆動装置の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、回転駆動装置の断面図であり、図2は図1の2−2線に沿った断面図であり、図3は、図1の3−3線に沿った断面図である。
【0030】
回転駆動装置10は、本体ケース11、出力回転体12、偏心回転体13、偏心運動発生装置20を備えている。
【0031】
本体ケース11は、金属材や合成樹脂材などで箱状に形成されたものである。
出力回転体12は、金属材や合成樹脂材などで形成されたものである。出力回転体12は、円盤状に形成された本体12aを備えている。本体12aの中央には、出力軸12bが同軸的に設けられている。出力軸12bは、本体ケース11に取り付けられている軸受11aに回転可能に支承されている。よって、出力回転体12は、本体ケース11に回転可能に支承されており、出力軸12bの回転軸まわりに回転される。出力回転体12の本体12aは、本体ケース11内に収容されている。出力軸12bは、本体ケース11の外部に突出させて配置されている。
【0032】
出力回転体12には、環状に形成された内歯12cが設けられている。具体的には、本実施形態では、本体12aの外周縁部には環状の凸部12dが形成されている。その環状凸部12dの内周面には内歯12cが全周に亘って形成されている。
【0033】
偏心回転体13は、金属材や合成樹脂材などで形成されたものである。偏心回転体13は、箱状に形成された筐体である本体13aと、本体13aの一側面(下面)に設けられた外歯13bとを備えている。この偏心回転体13は、出力回転体12の出力軸12bの回転軸に対して偏心して周回運動をするものである。
【0034】
外歯13bは、本体13aの下面に円柱状(または円筒状)に凸設形成された凸部13cの外周面に全周に亘って形成されている。外歯13bの基準円直径(図2で一点破線で示す)は、内歯12cの基準円直径(図2で一点破線で示す)より小径であり、外歯13bの歯数は、内歯12cの歯数より少なく設定されている。偏心回転体13の凸部13cは、出力回転体12の環状の凸部12d内に挿入配置され、偏心回転体13が停止状態である場合に内歯12cと外歯13bが空間をおいて対向するように配置されている。偏心回転体13は、偏心周回運動をする際に、出力回転体12の内歯12cと偏心回転体13の外歯13bが噛合する。なお、偏心周回運動とは、回転体の中心が同一箇所にある回転運動(自転)でなく、回転体の中心が同一箇所にない回転運動であり、例えば回転体の中心が円周上を移動する回転運動(公転)のことである。
【0035】
偏心回転体13の本体13a内には、出力回転体12の出力軸12aの回転軸まわりに環状に形成された環状溝13dが設けられている。環状溝13dは外側環状壁13d1(環状壁)とその内側に同軸に配設された内側環状壁13d2を備えている。外側環状壁13d1および内側環状壁13d2は本体13aの底面に立設されている。なお、内側環状壁13d2がなく外側環状壁13d1のみを有する構成でもよい。また、環状溝13dは、円状でもよく、楕円状でもよい。
【0036】
環状溝13d内には、外側環状壁13d1に沿って周回する錘21が備えられている。錘21は球状に形成されている。錘21は、偏心回転体13が偏心周回運動をする際に、外側環状壁13d1に当接して周回するものである。
【0037】
なお、錘21と支持装置22のばね力(弾性力)との関係について説明する。偏心回転体13が偏心周回運動をすることで、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合する際に、回転駆動装置10が予め設定された最低トルクを出力できるように、錘21の質量と支持装置22のばね力(弾性力)が設定されている。
【0038】
また、錘21の質量は、偏心回転体13の質量に対して大きくなるように設定するのが望ましい。錘21の遠心力が比較的大きくなるようにすることで制御性を向上させるためである。具体的には、最低トルク時に下記数1を満足する錘の質量に設定すると効果的である。
【0039】
(数1)
mRω2>(回転体重さ)+(支持装置の弾性力)
mは錘21の重さであり、Rは錘21が回転する偏心回転体13の半径である。
【0040】
偏心回転体13は、支持装置22を介して弾性移動可能に支持されている。本実施形態では、支持装置22は、本体ケース11と偏心回転体13との間に介装された複数のコイルばね22aからなり、偏心回転体13を本体ケース11に対して弾性移動可能に支持するものである。
【0041】
具体的には、偏心回転体13の本体13aは、本体ケース11に対して複数(例えば4つ)のコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4により複数の方向(例えば4方向)から支持されている。各コイルばね22aは、本体13aの側面とその側面に対向する本体ケース11の内壁面との間にそれぞれ介装されている。各コイルばね22aの一端は、本体13aの各側面の長手方向中央に接続固定され、他端は、本体ケース11の内壁面の長手方向中央に接続固定されている。また、4つのコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4は同じばね定数で同じ長さに設定されている。
【0042】
このように、偏心回転体13は、支持装置22すなわち4つのコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4により宙に浮いた状態で支持されている。この偏心回転体13は、周回運動していないとき(回転駆動装置10が非駆動状態であるとき)には、偏心回転体13の中心13eが出力回転体12(出力軸12a)の回転軸と一致するように、支持されるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、偏心回転体13の中心13eは、外歯13bの中心である。また、本実施形態では、外歯13bの中心と外側環状壁13d1の中心は一致しているが、外歯13bの中心が外側環状壁13d1の内側に存在すれば一致していなくてもよい。錘21の遠心力を利用することができるからである。
【0044】
なお、弾性部材としては、コイルばね以外に、コイルばね以外のばね、ゴム、柔らかい合成樹脂でもよい。また、支持装置は、本体ケース11の天板と偏心回転体13の上面との間に介装された1つの棒状に形成された弾性部材で構成するようにしてもよい。
【0045】
また、本体ケース11内には、歪素子23が備えられている。歪素子23は、本体ケース11に固定されている。歪素子23は、圧電素子から構成されており、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を押圧して振動させるものである。すなわち、歪素子23は、細長く形成されており、一端(基端)が本体ケース11の段部11bに固定され、他端(先端)が偏心回転体13を押圧可能な位置となるように配設されている。歪素子23は、偏心回転体13を外側環状壁13d1の接線方向に押圧するように設けられている。
【0046】
歪素子23の先端部は電気信号に応じて発生する歪により振動する。先端部が内側に(偏心回転体13に近づく方向に)移動するとき、偏心回転体13を押圧し、先端部が外側に(偏心回転体13から離れる方向に)移動するとき、偏心回転体13を押圧しない。
【0047】
なお、歪素子23は、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されるようにしてもよい。
【0048】
偏心運動発生装置20は、上述した錘21、支持装置22および歪素子23を備えており、歪素子23による押圧力と支持装置22による弾性力と錘21の遠心力との協働により錘21を周回させることで偏心回転体13に偏心周回運動を発生させるものである。
【0049】
また、本体ケース11は、錘21の位置を検出する錘位置検出センサ14を備えている。錘位置検出センサ14は、錘21の軌跡(例えば環状溝13d)上のいずれかの位置に1つ又は複数設けられており、錘21が通過したことを検出することで錘21の位置を検出するようになっている。例えば、錘21が金属材で形成されている場合、錘位置検出センサ14は、金属材を検出することができるセンサで構成されるようになっている。なお、錘位置検出センサ14を金属検知センサで構成する場合、上述した偏心回転体13は非金属材(例えば合成樹脂材)で構成するのが望ましい。錘位置検出センサ14の検出能力を発揮させるためである。
【0050】
次に、上述したように構成された回転駆動装置10の作動について説明する。なお、回転駆動装置10が、偏心回転体13の周回運動の軌道面が水平面となるように、設置されている場合について説明する。
【0051】
回転駆動装置10が非駆動時にあるときは、偏心回転体13は、出力回転体12と同軸的な位置関係となるように、すなわち出力軸12bの回転軸と偏心回転体13の中心(中心軸)13eが一致するように、支持装置22によって支持されており、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cは噛合していない(図2、3参照)。
【0052】
歪素子23に電気信号(正弦波、矩形波、三角波の何れでもよい)を付与すると、歪素子23の先端部が振動を開始する。その振動によって、偏心回転体13は、押圧方向に沿って振動を開始する。
【0053】
すなわち、図4に示すように、歪素子23の先端部が矢印a1の方向(出力軸12bに近づく方向)に振れると、偏心回転体13は、歪素子23に押圧されて支持装置22の付勢力に抗して一の方向(図4の矢印b1の方向)に向かって移動する。矢印a1と矢印b1の方向は一致している。偏心回転体13の矢印b1方向への移動によって、錘21は図4の矢印c1の方向(図4の時計回り方向)に移動する。錘21は、偏心回転体13から矢印b1の方向に力が作用するが、外側環状壁13d1に沿って移動するからである。
【0054】
一方、図5に示すように、歪素子23の先端部が矢印a1と反対方向である矢印a2の方向(出力軸12bから離れる方向)に振れると、偏心回転体13に対する歪素子23による押圧が解除される。偏心回転体13は、支持装置22の付勢力により元の位置(非駆動時の位置)に戻ろうとして一の方向の反対方向(図5の矢印b2の方向)に向かって移動する。矢印a2と矢印b2の方向は一致している。偏心回転体13の矢印b2方向への移動によって、錘21は図5の矢印c2の方向(図5の反時計周りの方向)に移動する。錘21は、偏心回転体13から矢印b2の方向に力が作用するが、外側環状壁13d1に沿って移動するからである。
【0055】
このように、偏心回転体13の振動(往復動)が行われると、その振動に応じて錘21も上述のように移動することで、錘21が環状溝13dに沿った周回運動を開始する。そうすると、直線往復動していた偏心回転体13に、錘21の遠心力が加わることで、偏心回転体13は、楕円運動となり、ひいては、偏心周回運動を開始する。偏心回転体13の偏心周回運動中においては、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合している。
【0056】
また、安定した偏心周回運動中においては、図6〜図9に示すように、偏心回転体13と錘21が同期して偏心周回運動している。具体的には、図6に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cがコイルばね22a1の位置で噛合する際には、錘21はコイルばね22a1に対応する位置にある。
【0057】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a2に対応する位置に来ると、図7に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a2に対応する位置まで周回運動する。
【0058】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a3に対応する位置に来ると、図8に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a3に対応する位置まで周回運動する。
【0059】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a4に対応する位置に来ると、図9に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a4に対応する位置まで周回運動する。
【0060】
このように、偏心回転体13は、その中心13eが所定の円周Cに沿って移動する回転運動(公転)すなわち偏心周回運動を行う。このとき、偏心回転体13の回転数が大きくなると、遠心力が大きくなり回転力(トルク)も大きくなる。偏心回転体13の遠心力は、錘21の遠心力に準じているからである。錘21の遠心力FはM×r×ω2で表される。なお、Mは錘21の質量であり、rは錘21の中心の周回半径であり、ωは角速度である。角速度は回転数に比例する(角速度=2π×回転数)。また、偏心回転体13の遠心力は、錘12と偏心回転体13が同期して偏心周回運動する場合に、最も大きい値となる。また、錘12と偏心回転体13が同期して偏心周回運動する場合に、偏心回転体13の偏心周回運動を安定させることができる。
【0061】
前述したように、回転駆動装置10のトルクは、偏心回転体13の回転数(回転速度、角速度)すなわち錘21の回転数(回転速度、角速度)で調整することができるので、錘21の回転数を制御することで回転駆動装置10の出力トルクを調整することができる。
【0062】
錘21の回転数(偏心回転体13の回転数)の調整や、偏心回転体13と錘21の周回運動の同期は、歪素子23による押圧によって制御される。具体的には、錘21が環状溝13dの所定位置を通過する際に、歪素子23が偏心回転体13を図4,5で示す矢印a1の方向(押圧方向)に押圧するように制御される。所定位置は、図10に示すように、周回する錘21のその位置における接線方向d1が歪素子23による押圧方向a1と一致する位置である。本実施形態では、押圧方向a1は本体ケース11の対角線(図10で右上がりの対角線)に沿った方向である。偏心回転体13の本体13aが本体ケース11に対して各内面がそれぞれ平行移動しながら周回運動するのであれば、押圧方向a1は本体13aの対角線(図10で右上がりの対角線)に沿った方向である。
【0063】
図10で時計回り方向に回転する錘21が所定位置に来たときに、偏心回転体13を歪素子23で押圧すると、歪素子23の押圧力を最も効率よく錘21に作用させることができる。その理由を以下説明する。
【0064】
歪素子23による押圧力Fは、偏心回転体13に作用する。また、錘21は偏心回転体13から垂直抗力N(=Mg)を受けている。本実施形態では、偏心回転体13の軌跡が水平となるように回転駆動装置10が設置されているので、錘21が本体13aの底面に接触している。よって、垂直抗力Nは本体13aの底面から受ける。Mは錘21の質量であり、gは重力加速度である。
【0065】
さらに、押圧力Fにより偏心回転体13は押圧力Fによる押圧方向(図10では矢印a1の方向)に動き、偏心回転体13に引きずられて錘21も押圧方向にすべり動く。偏心回転体13と錘21との間は摩擦係数μ(運動摩擦係数)であるため、錘21は偏心回転体13から摩擦力f(=μN)を受ける。摩擦力fは押圧力Fと同じ方向である。よって、錘21は摩擦力fによって押圧力Fと同じ方向に加速度a(=μg)で運動する。すなわち、錘21が所定位置に来たとき、偏心回転体13を歪素子23で押圧すると、錘21が加速される。
【0066】
また、偏心回転体13も押圧力Fにより加速されるが、一方で支持装置22により付勢されている。すなわち、錘21が加速されるのに対して偏心回転体13は錘21に作用する加速度の方向への動きは制限されている。よって、錘21の加速度は、偏心回転体13の加速度より大きくなる。このように、歪素子23によって偏心回転体13が押圧されると、錘21が押圧方向に加速される。加速された錘21が偏心回転体13と同期して周回運動することが可能となる。
【0067】
このときの錘21の加速方向が環状溝13d(外側環状壁13d1)の接線方向以外の方向である場合、その加速方向に作用された錘21の力は外側環状壁13d1からの抗力を受けることとなる。よって、その分錘21の加速は小さくなる。一方、錘21の加速方向が環状溝13dの接線方向である場合には、錘21の加速が小さくなるのを抑制することができるので、効率よく錘21を加速させることができる。
【0068】
また、錘21が所定位置にあるか否かの判断は、錘位置検出センサ14の検出結果に基づいて行われる。具体的には、錘位置検出センサ14の検出結果すなわち今回の検出結果と前回までの検出結果に基づいて錘21の回転速度が導出される。そして、今回の検出結果と導出された錘21の回転速度から錘21の位置を導出し、その導出結果と所定位置を比較する。また、所定位置に対応する位置に錘位置検出センサ14を配設し、錘位置検出センサ14で錘21の通過を検出することで、錘21が所定位置にあることを判断するようにしてもよい。
【0069】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る回転駆動装置10においては、偏心回転体13に形成された環状壁13d1に沿って錘21が周回すると、支持装置22(コイルばね22a1〜22a4)によって弾性移動可能に支持されている偏心回転体13は、錘21の遠心力と支持装置22の弾性力によって出力回転体12の出力軸12bの回転軸まわりに偏心周回運動をするような構成となっている。歪素子23は、偏心回転体13を押圧することで、前述した偏心周回運動を開始させたり、偏心周回運動を加速・減速させて制御したりしている。偏心回転体13が偏心周回運動することにより偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合することで、出力回転体12が回転される。
【0070】
このように、比較的変位量が小さい歪素子23を使用しても、偏心周回運動の発生に必要な力を偏心回転体13に付与することが可能となる。一旦偏心周回運動が開始されれば、歪素子23による押圧力、錘21の遠心力、支持装置22による弾性力により、安定した周回運動を達成することができる。また、歪素子23による押圧力のみで偏心回転体13を偏心周回運動させるのではなく、支持装置22による弾性力および錘21の遠心力も使用して偏心回転体13を偏心周回運動させることで、出力回転体12を回転させることができる。
【0071】
したがって、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができる。さらに、その駆動力は錘21の遠心力とよい相関関係にあるので錘21の回転(周回)状態を制御することで、その駆動力を容易に制御することができる。
【0072】
また、支持装置22は、本体ケース11と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね22a1〜22a4(弾性部材)からなり偏心回転体13を本体ケース11に対して弾性移動可能に支持し、歪素子23は、本体ケース11に固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を押圧する。これにより、偏心回転体13を本体ケース11にコイルばね22a1〜22a4を介して確実に支持することができるとともに、本体ケース11に固定された歪素子23により偏心回転体13を確実に押圧することができる。
【0073】
また、歪素子23は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されている。これにより、供給する電気信号に応じて歪量を変化させることができ、偏心回転体13の回転制御ひいては回転駆動装置10の出力制御を容易に行うことができる。
【0074】
また、錘21の位置を検出する錘位置検出センサ14をさらに備えたことである。これにより、錘21の位置を確実に検出することで、歪素子23の制御をより確実に行うことができる。
【0075】
また、歪素子23は、偏心回転体13を環状壁13d1の接線方向に押圧するように設けられている、これにより、歪素子23のエネルギーを偏心回転体13ひいては錘21に有効に加えることができ、効率の向上を図ることできる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、出力回転体12に内歯12cを設けるとともに偏心回転体13に内歯12cに噛合する外歯13bを設けるようにしたが、反対に、出力回転体12に外歯を設けるとともに偏心回転体13にその外歯に噛合する内歯を設けるようにしてもよい。
【0077】
また、出力軸12bを支承する代わりに、または支承するとともに、本体12a(凸部12dも含む)を支承するようにしてもよい。さらに、偏心回転体13の本体13aは、方形状でなく、三角形状、円形状でもよい。
【0078】
また、回転駆動装置10が、偏心回転体13の周回運動の軌道面が水平面となるように、設置されるのに限定されることなく、その軌道面が垂直面となるように回転駆動装置10が設置されるようにしてもよい。この場合、回転駆動装置10が停止しているときには、錘21は自重により環状溝13dの垂直方向最下部に位置するので、起動時に錘21を最下部から最上部まで上げるのに最も効率よく押圧できるように歪素子23を配設すべきである(押圧方向も含めて考慮が必要である)。
【0079】
2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なる点について説明するとともに、同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。本第2の実施形態では、図11,12に示すように、支持装置122が異なり、歪素子23の取り付け位置が異なる。図11は、ある断面から内部を見た図であり、図12は図11の12−12線に沿った断面図である。図12では本体ケース111においては基台111aのみ示し他の部分は省略している。
【0080】
支持装置122は、本体ケース111に固定され弾性変形可能な第1支持装置31と、第1支持装置31と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなり偏心回転体13を第1支持装置31に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置32と、を備えている。
【0081】
本体ケース111は、金属材や合成樹脂材などで箱状に形成されたものである。本体ケース111は、水平に配置された基台111aと、基台111aの上面に立設された側壁111bを有している。
【0082】
第1支持装置31は、基端が本体ケース111の基台111aに固定され先端が自由端であり偏心回転体13を囲むように弾性材(例えば金属材、合成樹脂材)で形成されている。第1支持装置31は、細長い板状材をC字状に成形したものである。板状材は、弾性変形する材質であれば金属材でも合成樹脂材でもよい。第1支持装置31は、C字状でなくても、コ字状でもよく、先端に行くほどしなりが大きくなるように構成されるのが好ましい。
【0083】
第2支持装置32は、具体的には、図12に示すように、偏心回転体13の本体13aを、本体ケース11に対して複数(例えば3つ)のコイルばね122a1,122a2,122a3により複数の方向(3方向)から支持するものである。各コイルばね122aは、本体13aの3つの角部とその角部に対向する第1支持装置31の内壁面との間にそれぞれ介装されている。コイルばね122a1,122a2,122a3の各一端は、本体13aの各角部13a1,13a2,13a3に接続固定され、他端は、第1支持装置31の内壁面であって本体13aの各角部13a1,13a2,13a3に対向する位置(第1支持装置31の内壁面に所定間隔をおいた位置)に接続固定されている。また、3つのコイルばね122a1,122a2,122a3を、同じ長さ(自然長)に設定するとともに、第1支持装置31の先端に行くほどばね定数を小さく設定するようにしている。
【0084】
このように、偏心回転体13は、第2支持装置32により宙に浮いた状態で支持されている。この偏心回転体13は、周回運動していないとき(回転駆動装置10が非駆動状態であるとき)には、偏心回転体13の中心13eが出力回転体12(出力軸12a)の回転軸と一致するように、支持されるようになっている。
【0085】
なお、本実施形態では、偏心回転体13の中心13eは、外歯13bの中心である。また、本実施形態では、外歯13bの中心と外側環状壁13d1の中心は一致しているが、外歯13bの中心が外側環状壁13d1の内側に存在すれば一致していなくてもよい。錘21の遠心力を利用することができるからである。
【0086】
支持装置122は、第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されている。具体的には、上述したように、第1支持装置31を、その先端に行くほどしなりが大きくなるように構成するようにすればよい。また、第2支持装置32のコイルばね122aを、同じ長さで第1支持装置31の先端に行くほどばね定数を小さく設定すればよい。なお、第2支持装置32のコイルばね122aを、同じばね定数で第1支持装置31の先端に行くほど自然長が長くなるように設定するようにしてもよい。
【0087】
歪素子23は第1支持装置31の基端部に取り付けられている。歪素子23の先端部が図12で反時計まわり方向に振れると、支持装置122が第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されているので、第1支持装置31は内側に縮まるように変形する。一方、歪素子23の先端部が図12で時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は外側に拡がるように変形する。なお、歪素子23は1つだけでなく幅方向に複数並べて設けてもよい。より大きい力を第1支持装置31に付与できる。また、長手方向に複数並べて設けてもよい。より大きい振幅を第1支持装置31に付与できる。
【0088】
なお、側壁111bには軸受11bが設けられており、軸受11bには出力回転端12の出力軸12bが回転可能に支承されている。
【0089】
このように構成された回転駆動装置10の作動について説明する。歪素子23の先端部が図12で時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は外側に拡がるように変形する。偏心回転体13は、角部13a1付近を支点に時計回り方向に回動する。その動きに伴って錘21が時計回り方向に移動する。
【0090】
一方、歪素子23の先端部が図12で反時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は内側に縮まるように変形する。偏心回転体13は、角部13a1付近を支点に反時計回り方向に回動する。その動きに伴って錘21が反時計回り方向に移動する。
【0091】
このような動きを繰り返すうち、錘21が時計周り方向または反時計回り方向の周回運動を開始する。偏心回転体13の偏心周回運動中においては、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合している。また、安定した偏心周回運動中においては、上述した第1の実施形態と同様に、偏心回転体13と錘21が同期して偏心周回運動している。
【0092】
第1の実施形態と同様に、錘21の回転数を制御することで回転駆動装置10の出力トルクを調整することができる。歪素子23の振動を制御することで錘21の回転数を制御することができる。
【0093】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る回転駆動装置10においては、支持装置122は、本体ケース111に固定され弾性変形可能な第1支持装置31と、第1支持装置31と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなり偏心回転体13を第1支持装置31に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置32と、を備え、歪素子23は、第1支持装置31に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置31を振動させることで偏心回転体13を振動させる。これにより、偏心回転体13をコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなる第2支持装置32および弾性変形可能な第1支持装置31を介して本体ケース111に確実に支持するとともに、偏心回転体13に比較的大きな振動を付与することができる。また、歪素子23が直接第1支持装置31を振動させ、その振動された第1支持装置31により偏心回転体13が振動されるので、偏心回転体13を歪素子23によってより確実に振動させることができる。
【0094】
また、第1支持装置31は、基端が本体ケース111に固定され先端が自由端であり偏心回転体13を囲むように弾性材で形成され、歪素子23は第1支持装置31の基端部に取り付けられている。これにより、第1支持装置31は偏心回転体13を簡単な構成で弾性変形可能に支持することできる。また、歪素子23が第1支持装置31の基端部に取り付けられているので、偏心回転体13を効率よく振動させることができる。
【0095】
また、支持装置122は、第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されている。これにより、第1支持装置31の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、偏心回転体13をより効率よく振動させることができる。
【0096】
また、本第2の実施形態によれば、歪素子23の2つの異なる方向への振動速度を異ならせることで、偏心回転体13の周回運動の方向すなわち錘21の周回運動の方向を制御することができる。
【0097】
また、錘21の周回運動は歪素子23の振動により第1支持装置31が振れることで起きるため、錘21の位置などによらず錘21の回転を開始させることができ、錘21の回転速度を増幅させることができる。
【0098】
また、第1支持装置31に、コイルばね122a1〜122a3で構成された第2支持装置32を設けることで、偏心回転体13の揺れを大きくすることができ、第1支持装置31の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、歪素子23の振幅を大きくしなくても、偏心回転体13ひいては錘21の回転を増幅させることができる。
【0099】
また、歪素子23を複数設けた場合、第1支持装置31に付与する振動を異なる周波数に制御することができる。つまり、周波数を変えることによって回転数を変えることができ、また、異なったタイミングで第2支持装置32(支持装置122)を振動させることによって先端のしなり(振幅)を大きくすることができるため、偏心回転体13の偏心量を大きくすることができる。
【0100】
なお、本第2の実施形態では、偏心回転体13の周回運動の軌道面が垂直面となるように回転駆動装置10が設置されている。なお、その軌道面が水平面となるように回転駆動装置10を設置するようにしてもよい。
【0101】
また、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、錘位置検出センサ14を設けて、錘21の位置を検出することで歪素子23を制御するようにしてもよい。また、3つのコイルばね122a1,122a2,122a3は同じばね定数で同じ長さに設定されるようにしてもよい。
【0102】
また、本発明を、ハイポサイクロイドギヤを有する回転駆動装置に適用したが、遊星ギアや他のギア機構を有する回転駆動装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…回転駆動装置、11…本体ケース、12…出力回転体、12a…本体、12b…出力軸、12c…内歯、12d…環状凸部、13…偏心回転体、13a…本体、13a1,13a2,13a3…本体の各角部、13b…外歯、13c…凸部、13d…環状溝、13d1…外側環状壁(環状壁)、13d2…内側環状壁、13e…偏心回転体の中心、14…錘位置検出センサ、20…偏心運動発生装置、21…錘、22…支持装置、22a,22a1,22a2,22a3,22a4…コイルばね、23…歪素子、31…第1支持装置、32…第2支持装置、111…本体ケース、111a…基台、111b…側壁、122…支持装置、122a1〜122a3…コイルばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1,2に示されているように、回転駆動装置は、圧電体の超音波振動を利用する表面波モータである。その表面波モータは、弾性体4aに圧電体4bが固着された固定子4と、固定子4の進行波発生面4cと相互接触している進行波受動面2aを有する回転子2とを積層した構造である。この表面波モータにおいては、圧電体4bに電圧を印加することで進行波発生面4cを波打たせてそれを進行波受動面2aで受けて回転子2が回転するようになっている。
【0003】
また、駆動装置として、特許文献2に示されているものが知られている。特許文献2に図1に示されているように、駆動装置は、半円環状に形成されており、対称な2箇所に圧電体15を取り付け、圧電体15に電圧を印加することで、2本の脚12,13の先端を楕円状に回転運動させ、接している物体(レール21)を一方向に移動させるようになっている。
【0004】
さらに、駆動装置として、特許文献3に示されているものが知られている。特許文献3に図1,2,18に示されているように、駆動装置においては、四角柱のハウジング14の4つの外面37にそれぞれ圧電プレート18,20,22,24が取り付けられている。このような駆動装置では、活性化された変換器(たとえばプレート18、20、22および24)とハウジング14との相互作用が、ナット16の軌道運動を引き起こし、それが他方でねじ付きシャフト12の回転および平行移動を引き起こすようになっている。これにより、ハウジング14は一方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−77068号公報
【特許文献2】特開平02−266881号公報
【特許文献2】特表2008−510445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の回転駆動装置によれば、圧電体に電圧を印加することで、回転子2を回転運動させているが、その構造上、出力可能なトルクは電動モータに比べると小さいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の駆動装置によれば、楕円状に回転運動する振動部を駆動対象である物体(レール21)に押し当てて駆動させるため、その接している部分の摩擦分しか推進力を得ることができないという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3に記載の駆動装置によれば、ハウジング14側が変形すると、ハウジング14とシャフト12とのねじが擦り合い、このねじの接触面の摩擦によりシャフト12が回転する。つまりこの摩擦力のみで推進するため、推進力の増大は望めないという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、回転駆動装置において、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができ、さらにその駆動力を容易に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、本体ケースと、本体ケースに回転可能に支承され、出力軸および環状に形成された内歯または外歯を備え、出力軸の回転軸まわりに回転される出力回転体と、出力回転体の出力軸の回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に出力回転体の内歯と噛合する外歯または出力回転体の外歯と噛合する内歯を備えた偏心回転体と、偏心回転体に出力軸の回転軸まわりに環状に形成された環状壁に沿って当接して周回する錘と、偏心回転体を弾性移動可能に支持する支持装置と、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を振動させる歪素子と、を備え、歪素子による押圧力と支持装置による弾性力と前記錘の遠心力との協働により錘を周回させることで偏心回転体に偏心周回運動を発生させる偏心運動発生装置と、を備えたことである。
【0011】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、支持装置は、本体ケースと偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、歪素子は、本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を押圧することである。
【0012】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、支持装置は、本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、第1支持装置と偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、歪素子は、第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置を振動させることで偏心回転体を振動させることである。
【0013】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1から請求項3の何れか一項において、歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されていることである。
【0014】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1から請求項4の何れか一項において、錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことである。
【0015】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、歪素子は、偏心回転体を環状壁の接線方向に押圧するように設けられていることである。
【0016】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、第1支持装置は、基端が本体ケースに固定され先端が自由端であり偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、歪素子は第1支持装置の基端部に取り付けられていることである。
【0017】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項7において、支持装置は、第1支持装置の先端に行くにつれて第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されていることである。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、偏心回転体に形成された環状壁に沿って錘が周回すると、支持装置によって弾性移動可能に支持されている偏心回転体は錘の遠心力と支持装置の弾性力によって出力回転体の出力軸の回転軸まわりに偏心周回運動をするような構成となっている。歪素子は、偏心回転体を振動させることで、前述した偏心周回運動を開始させたり、偏心周回運動を加速・減速させて制御したりしている。偏心回転体が偏心周回運動することにより偏心回転体の内歯と出力回転体の外歯または偏心回転体の外歯と出力回転体の内歯が噛合することで、出力回転体が回転される。
【0019】
このように、比較的変位量が小さい歪素子を使用しても、偏心周回運動の発生に必要な力を偏心回転体に付与することが可能となる。一旦偏心周回運動が開始されれば、歪素子による押圧力、錘の遠心力、支持装置による弾性力により、安定した周回運動を達成することができる。また、歪素子による押圧力のみで偏心回転体を偏心周回運動させるのではなく、支持装置による弾性力および錘の遠心力も使用して偏心回転体を偏心周回運動させることで、出力回転体を回転させることができる。
【0020】
したがって、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができる。さらに、その駆動力は錘の遠心力とよい相関関係にあるので錘の回転(周回)状態を制御することで、その駆動力を容易に制御することができる。
【0021】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、支持装置は、本体ケースと偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、歪素子は、本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体を押圧する。これにより、偏心回転体を本体ケースに弾性部材を介して確実に支持することができるとともに、本体ケースに固定された歪素子により偏心回転体を確実に振動させることができる。
【0022】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1において、支持装置は、本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、第1支持装置と偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり偏心回転体を第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、歪素子は、第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置を振動させることで偏心回転体を振動させる。これにより、偏心回転体を弾性部材からなる第2支持装置および弾性変形可能な第1支持装置を介して本体ケースに確実に支持するとともに、偏心回転体に比較的大きな振動を付与することができる。また、歪素子が直接第1支持装置を振動させ、その振動された第1支持装置により偏心回転体が振動されるので、偏心回転体を歪素子によってより確実に振動させることができる。
【0023】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1から請求項3の何れか一項において、歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されている。これにより、供給する電気信号に応じて歪量を変化させることができ、偏心回転体ひいては回転駆動装置の回転制御を容易に行うことができる。
【0024】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項1から請求項4の何れか一項において、錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことである。これにより、錘の位置を確実に検出することで、歪素子の制御をより確実に行うことができる。
【0025】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項2において、歪素子は、偏心回転体を環状壁の接線方向に押圧するように設けられている、これにより、歪素子のエネルギーを偏心回転体ひいては錘に有効に加えることができ、効率の向上を図ることできる。
【0026】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項3において、第1支持装置は、基端が本体ケースに固定され先端が自由端であり偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、歪素子は第1支持装置の基端部に取り付けられている。これにより、第1支持装置は偏心回転体を簡単な構成で弾性変形可能に支持することできる。また、歪素子が第1支持装置の基端部に取り付けられているので、偏心回転体を効率よく振動させることができる。
【0027】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項7において、支持装置は、第1支持装置の先端に行くにつれて第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されている。これにより、第1支持装置の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、偏心回転体をより効率よく振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による回転駆動装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した回転駆動装置を2−2線に沿って示す断面図である。
【図3】図1に示した回転駆動装置を3−3線に沿って示す断面図である。
【図4】図1に示した回転駆動装置の開始時の作動を示す図である。
【図5】図1に示した回転駆動装置の開始時の作動を示す図である。
【図6】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図7】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図8】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図9】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時の作動を示す図である。
【図10】図1に示した回転駆動装置の偏心周回運動時であって錘が所定位置にきたときの作動を示す図である。
【図11】本発明による回転駆動装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図12】図11に示した回転駆動装置を12−12線に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1)第1の実施形態
以下、本発明による回転駆動装置の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、回転駆動装置の断面図であり、図2は図1の2−2線に沿った断面図であり、図3は、図1の3−3線に沿った断面図である。
【0030】
回転駆動装置10は、本体ケース11、出力回転体12、偏心回転体13、偏心運動発生装置20を備えている。
【0031】
本体ケース11は、金属材や合成樹脂材などで箱状に形成されたものである。
出力回転体12は、金属材や合成樹脂材などで形成されたものである。出力回転体12は、円盤状に形成された本体12aを備えている。本体12aの中央には、出力軸12bが同軸的に設けられている。出力軸12bは、本体ケース11に取り付けられている軸受11aに回転可能に支承されている。よって、出力回転体12は、本体ケース11に回転可能に支承されており、出力軸12bの回転軸まわりに回転される。出力回転体12の本体12aは、本体ケース11内に収容されている。出力軸12bは、本体ケース11の外部に突出させて配置されている。
【0032】
出力回転体12には、環状に形成された内歯12cが設けられている。具体的には、本実施形態では、本体12aの外周縁部には環状の凸部12dが形成されている。その環状凸部12dの内周面には内歯12cが全周に亘って形成されている。
【0033】
偏心回転体13は、金属材や合成樹脂材などで形成されたものである。偏心回転体13は、箱状に形成された筐体である本体13aと、本体13aの一側面(下面)に設けられた外歯13bとを備えている。この偏心回転体13は、出力回転体12の出力軸12bの回転軸に対して偏心して周回運動をするものである。
【0034】
外歯13bは、本体13aの下面に円柱状(または円筒状)に凸設形成された凸部13cの外周面に全周に亘って形成されている。外歯13bの基準円直径(図2で一点破線で示す)は、内歯12cの基準円直径(図2で一点破線で示す)より小径であり、外歯13bの歯数は、内歯12cの歯数より少なく設定されている。偏心回転体13の凸部13cは、出力回転体12の環状の凸部12d内に挿入配置され、偏心回転体13が停止状態である場合に内歯12cと外歯13bが空間をおいて対向するように配置されている。偏心回転体13は、偏心周回運動をする際に、出力回転体12の内歯12cと偏心回転体13の外歯13bが噛合する。なお、偏心周回運動とは、回転体の中心が同一箇所にある回転運動(自転)でなく、回転体の中心が同一箇所にない回転運動であり、例えば回転体の中心が円周上を移動する回転運動(公転)のことである。
【0035】
偏心回転体13の本体13a内には、出力回転体12の出力軸12aの回転軸まわりに環状に形成された環状溝13dが設けられている。環状溝13dは外側環状壁13d1(環状壁)とその内側に同軸に配設された内側環状壁13d2を備えている。外側環状壁13d1および内側環状壁13d2は本体13aの底面に立設されている。なお、内側環状壁13d2がなく外側環状壁13d1のみを有する構成でもよい。また、環状溝13dは、円状でもよく、楕円状でもよい。
【0036】
環状溝13d内には、外側環状壁13d1に沿って周回する錘21が備えられている。錘21は球状に形成されている。錘21は、偏心回転体13が偏心周回運動をする際に、外側環状壁13d1に当接して周回するものである。
【0037】
なお、錘21と支持装置22のばね力(弾性力)との関係について説明する。偏心回転体13が偏心周回運動をすることで、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合する際に、回転駆動装置10が予め設定された最低トルクを出力できるように、錘21の質量と支持装置22のばね力(弾性力)が設定されている。
【0038】
また、錘21の質量は、偏心回転体13の質量に対して大きくなるように設定するのが望ましい。錘21の遠心力が比較的大きくなるようにすることで制御性を向上させるためである。具体的には、最低トルク時に下記数1を満足する錘の質量に設定すると効果的である。
【0039】
(数1)
mRω2>(回転体重さ)+(支持装置の弾性力)
mは錘21の重さであり、Rは錘21が回転する偏心回転体13の半径である。
【0040】
偏心回転体13は、支持装置22を介して弾性移動可能に支持されている。本実施形態では、支持装置22は、本体ケース11と偏心回転体13との間に介装された複数のコイルばね22aからなり、偏心回転体13を本体ケース11に対して弾性移動可能に支持するものである。
【0041】
具体的には、偏心回転体13の本体13aは、本体ケース11に対して複数(例えば4つ)のコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4により複数の方向(例えば4方向)から支持されている。各コイルばね22aは、本体13aの側面とその側面に対向する本体ケース11の内壁面との間にそれぞれ介装されている。各コイルばね22aの一端は、本体13aの各側面の長手方向中央に接続固定され、他端は、本体ケース11の内壁面の長手方向中央に接続固定されている。また、4つのコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4は同じばね定数で同じ長さに設定されている。
【0042】
このように、偏心回転体13は、支持装置22すなわち4つのコイルばね22a1,22a2,22a3,22a4により宙に浮いた状態で支持されている。この偏心回転体13は、周回運動していないとき(回転駆動装置10が非駆動状態であるとき)には、偏心回転体13の中心13eが出力回転体12(出力軸12a)の回転軸と一致するように、支持されるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、偏心回転体13の中心13eは、外歯13bの中心である。また、本実施形態では、外歯13bの中心と外側環状壁13d1の中心は一致しているが、外歯13bの中心が外側環状壁13d1の内側に存在すれば一致していなくてもよい。錘21の遠心力を利用することができるからである。
【0044】
なお、弾性部材としては、コイルばね以外に、コイルばね以外のばね、ゴム、柔らかい合成樹脂でもよい。また、支持装置は、本体ケース11の天板と偏心回転体13の上面との間に介装された1つの棒状に形成された弾性部材で構成するようにしてもよい。
【0045】
また、本体ケース11内には、歪素子23が備えられている。歪素子23は、本体ケース11に固定されている。歪素子23は、圧電素子から構成されており、電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を押圧して振動させるものである。すなわち、歪素子23は、細長く形成されており、一端(基端)が本体ケース11の段部11bに固定され、他端(先端)が偏心回転体13を押圧可能な位置となるように配設されている。歪素子23は、偏心回転体13を外側環状壁13d1の接線方向に押圧するように設けられている。
【0046】
歪素子23の先端部は電気信号に応じて発生する歪により振動する。先端部が内側に(偏心回転体13に近づく方向に)移動するとき、偏心回転体13を押圧し、先端部が外側に(偏心回転体13から離れる方向に)移動するとき、偏心回転体13を押圧しない。
【0047】
なお、歪素子23は、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されるようにしてもよい。
【0048】
偏心運動発生装置20は、上述した錘21、支持装置22および歪素子23を備えており、歪素子23による押圧力と支持装置22による弾性力と錘21の遠心力との協働により錘21を周回させることで偏心回転体13に偏心周回運動を発生させるものである。
【0049】
また、本体ケース11は、錘21の位置を検出する錘位置検出センサ14を備えている。錘位置検出センサ14は、錘21の軌跡(例えば環状溝13d)上のいずれかの位置に1つ又は複数設けられており、錘21が通過したことを検出することで錘21の位置を検出するようになっている。例えば、錘21が金属材で形成されている場合、錘位置検出センサ14は、金属材を検出することができるセンサで構成されるようになっている。なお、錘位置検出センサ14を金属検知センサで構成する場合、上述した偏心回転体13は非金属材(例えば合成樹脂材)で構成するのが望ましい。錘位置検出センサ14の検出能力を発揮させるためである。
【0050】
次に、上述したように構成された回転駆動装置10の作動について説明する。なお、回転駆動装置10が、偏心回転体13の周回運動の軌道面が水平面となるように、設置されている場合について説明する。
【0051】
回転駆動装置10が非駆動時にあるときは、偏心回転体13は、出力回転体12と同軸的な位置関係となるように、すなわち出力軸12bの回転軸と偏心回転体13の中心(中心軸)13eが一致するように、支持装置22によって支持されており、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cは噛合していない(図2、3参照)。
【0052】
歪素子23に電気信号(正弦波、矩形波、三角波の何れでもよい)を付与すると、歪素子23の先端部が振動を開始する。その振動によって、偏心回転体13は、押圧方向に沿って振動を開始する。
【0053】
すなわち、図4に示すように、歪素子23の先端部が矢印a1の方向(出力軸12bに近づく方向)に振れると、偏心回転体13は、歪素子23に押圧されて支持装置22の付勢力に抗して一の方向(図4の矢印b1の方向)に向かって移動する。矢印a1と矢印b1の方向は一致している。偏心回転体13の矢印b1方向への移動によって、錘21は図4の矢印c1の方向(図4の時計回り方向)に移動する。錘21は、偏心回転体13から矢印b1の方向に力が作用するが、外側環状壁13d1に沿って移動するからである。
【0054】
一方、図5に示すように、歪素子23の先端部が矢印a1と反対方向である矢印a2の方向(出力軸12bから離れる方向)に振れると、偏心回転体13に対する歪素子23による押圧が解除される。偏心回転体13は、支持装置22の付勢力により元の位置(非駆動時の位置)に戻ろうとして一の方向の反対方向(図5の矢印b2の方向)に向かって移動する。矢印a2と矢印b2の方向は一致している。偏心回転体13の矢印b2方向への移動によって、錘21は図5の矢印c2の方向(図5の反時計周りの方向)に移動する。錘21は、偏心回転体13から矢印b2の方向に力が作用するが、外側環状壁13d1に沿って移動するからである。
【0055】
このように、偏心回転体13の振動(往復動)が行われると、その振動に応じて錘21も上述のように移動することで、錘21が環状溝13dに沿った周回運動を開始する。そうすると、直線往復動していた偏心回転体13に、錘21の遠心力が加わることで、偏心回転体13は、楕円運動となり、ひいては、偏心周回運動を開始する。偏心回転体13の偏心周回運動中においては、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合している。
【0056】
また、安定した偏心周回運動中においては、図6〜図9に示すように、偏心回転体13と錘21が同期して偏心周回運動している。具体的には、図6に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cがコイルばね22a1の位置で噛合する際には、錘21はコイルばね22a1に対応する位置にある。
【0057】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a2に対応する位置に来ると、図7に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a2に対応する位置まで周回運動する。
【0058】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a3に対応する位置に来ると、図8に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a3に対応する位置まで周回運動する。
【0059】
さらに、錘21が時計回りに周回運動して、コイルばね22a4に対応する位置に来ると、図9に示すように、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合しながら、偏心回転体13がコイルばね22a4に対応する位置まで周回運動する。
【0060】
このように、偏心回転体13は、その中心13eが所定の円周Cに沿って移動する回転運動(公転)すなわち偏心周回運動を行う。このとき、偏心回転体13の回転数が大きくなると、遠心力が大きくなり回転力(トルク)も大きくなる。偏心回転体13の遠心力は、錘21の遠心力に準じているからである。錘21の遠心力FはM×r×ω2で表される。なお、Mは錘21の質量であり、rは錘21の中心の周回半径であり、ωは角速度である。角速度は回転数に比例する(角速度=2π×回転数)。また、偏心回転体13の遠心力は、錘12と偏心回転体13が同期して偏心周回運動する場合に、最も大きい値となる。また、錘12と偏心回転体13が同期して偏心周回運動する場合に、偏心回転体13の偏心周回運動を安定させることができる。
【0061】
前述したように、回転駆動装置10のトルクは、偏心回転体13の回転数(回転速度、角速度)すなわち錘21の回転数(回転速度、角速度)で調整することができるので、錘21の回転数を制御することで回転駆動装置10の出力トルクを調整することができる。
【0062】
錘21の回転数(偏心回転体13の回転数)の調整や、偏心回転体13と錘21の周回運動の同期は、歪素子23による押圧によって制御される。具体的には、錘21が環状溝13dの所定位置を通過する際に、歪素子23が偏心回転体13を図4,5で示す矢印a1の方向(押圧方向)に押圧するように制御される。所定位置は、図10に示すように、周回する錘21のその位置における接線方向d1が歪素子23による押圧方向a1と一致する位置である。本実施形態では、押圧方向a1は本体ケース11の対角線(図10で右上がりの対角線)に沿った方向である。偏心回転体13の本体13aが本体ケース11に対して各内面がそれぞれ平行移動しながら周回運動するのであれば、押圧方向a1は本体13aの対角線(図10で右上がりの対角線)に沿った方向である。
【0063】
図10で時計回り方向に回転する錘21が所定位置に来たときに、偏心回転体13を歪素子23で押圧すると、歪素子23の押圧力を最も効率よく錘21に作用させることができる。その理由を以下説明する。
【0064】
歪素子23による押圧力Fは、偏心回転体13に作用する。また、錘21は偏心回転体13から垂直抗力N(=Mg)を受けている。本実施形態では、偏心回転体13の軌跡が水平となるように回転駆動装置10が設置されているので、錘21が本体13aの底面に接触している。よって、垂直抗力Nは本体13aの底面から受ける。Mは錘21の質量であり、gは重力加速度である。
【0065】
さらに、押圧力Fにより偏心回転体13は押圧力Fによる押圧方向(図10では矢印a1の方向)に動き、偏心回転体13に引きずられて錘21も押圧方向にすべり動く。偏心回転体13と錘21との間は摩擦係数μ(運動摩擦係数)であるため、錘21は偏心回転体13から摩擦力f(=μN)を受ける。摩擦力fは押圧力Fと同じ方向である。よって、錘21は摩擦力fによって押圧力Fと同じ方向に加速度a(=μg)で運動する。すなわち、錘21が所定位置に来たとき、偏心回転体13を歪素子23で押圧すると、錘21が加速される。
【0066】
また、偏心回転体13も押圧力Fにより加速されるが、一方で支持装置22により付勢されている。すなわち、錘21が加速されるのに対して偏心回転体13は錘21に作用する加速度の方向への動きは制限されている。よって、錘21の加速度は、偏心回転体13の加速度より大きくなる。このように、歪素子23によって偏心回転体13が押圧されると、錘21が押圧方向に加速される。加速された錘21が偏心回転体13と同期して周回運動することが可能となる。
【0067】
このときの錘21の加速方向が環状溝13d(外側環状壁13d1)の接線方向以外の方向である場合、その加速方向に作用された錘21の力は外側環状壁13d1からの抗力を受けることとなる。よって、その分錘21の加速は小さくなる。一方、錘21の加速方向が環状溝13dの接線方向である場合には、錘21の加速が小さくなるのを抑制することができるので、効率よく錘21を加速させることができる。
【0068】
また、錘21が所定位置にあるか否かの判断は、錘位置検出センサ14の検出結果に基づいて行われる。具体的には、錘位置検出センサ14の検出結果すなわち今回の検出結果と前回までの検出結果に基づいて錘21の回転速度が導出される。そして、今回の検出結果と導出された錘21の回転速度から錘21の位置を導出し、その導出結果と所定位置を比較する。また、所定位置に対応する位置に錘位置検出センサ14を配設し、錘位置検出センサ14で錘21の通過を検出することで、錘21が所定位置にあることを判断するようにしてもよい。
【0069】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る回転駆動装置10においては、偏心回転体13に形成された環状壁13d1に沿って錘21が周回すると、支持装置22(コイルばね22a1〜22a4)によって弾性移動可能に支持されている偏心回転体13は、錘21の遠心力と支持装置22の弾性力によって出力回転体12の出力軸12bの回転軸まわりに偏心周回運動をするような構成となっている。歪素子23は、偏心回転体13を押圧することで、前述した偏心周回運動を開始させたり、偏心周回運動を加速・減速させて制御したりしている。偏心回転体13が偏心周回運動することにより偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合することで、出力回転体12が回転される。
【0070】
このように、比較的変位量が小さい歪素子23を使用しても、偏心周回運動の発生に必要な力を偏心回転体13に付与することが可能となる。一旦偏心周回運動が開始されれば、歪素子23による押圧力、錘21の遠心力、支持装置22による弾性力により、安定した周回運動を達成することができる。また、歪素子23による押圧力のみで偏心回転体13を偏心周回運動させるのではなく、支持装置22による弾性力および錘21の遠心力も使用して偏心回転体13を偏心周回運動させることで、出力回転体12を回転させることができる。
【0071】
したがって、簡単な構成で比較的大きな駆動力を得ることができる。さらに、その駆動力は錘21の遠心力とよい相関関係にあるので錘21の回転(周回)状態を制御することで、その駆動力を容易に制御することができる。
【0072】
また、支持装置22は、本体ケース11と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね22a1〜22a4(弾性部材)からなり偏心回転体13を本体ケース11に対して弾性移動可能に支持し、歪素子23は、本体ケース11に固定され電気信号に応じて発生する歪により偏心回転体13を押圧する。これにより、偏心回転体13を本体ケース11にコイルばね22a1〜22a4を介して確実に支持することができるとともに、本体ケース11に固定された歪素子23により偏心回転体13を確実に押圧することができる。
【0073】
また、歪素子23は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されている。これにより、供給する電気信号に応じて歪量を変化させることができ、偏心回転体13の回転制御ひいては回転駆動装置10の出力制御を容易に行うことができる。
【0074】
また、錘21の位置を検出する錘位置検出センサ14をさらに備えたことである。これにより、錘21の位置を確実に検出することで、歪素子23の制御をより確実に行うことができる。
【0075】
また、歪素子23は、偏心回転体13を環状壁13d1の接線方向に押圧するように設けられている、これにより、歪素子23のエネルギーを偏心回転体13ひいては錘21に有効に加えることができ、効率の向上を図ることできる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、出力回転体12に内歯12cを設けるとともに偏心回転体13に内歯12cに噛合する外歯13bを設けるようにしたが、反対に、出力回転体12に外歯を設けるとともに偏心回転体13にその外歯に噛合する内歯を設けるようにしてもよい。
【0077】
また、出力軸12bを支承する代わりに、または支承するとともに、本体12a(凸部12dも含む)を支承するようにしてもよい。さらに、偏心回転体13の本体13aは、方形状でなく、三角形状、円形状でもよい。
【0078】
また、回転駆動装置10が、偏心回転体13の周回運動の軌道面が水平面となるように、設置されるのに限定されることなく、その軌道面が垂直面となるように回転駆動装置10が設置されるようにしてもよい。この場合、回転駆動装置10が停止しているときには、錘21は自重により環状溝13dの垂直方向最下部に位置するので、起動時に錘21を最下部から最上部まで上げるのに最も効率よく押圧できるように歪素子23を配設すべきである(押圧方向も含めて考慮が必要である)。
【0079】
2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なる点について説明するとともに、同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。本第2の実施形態では、図11,12に示すように、支持装置122が異なり、歪素子23の取り付け位置が異なる。図11は、ある断面から内部を見た図であり、図12は図11の12−12線に沿った断面図である。図12では本体ケース111においては基台111aのみ示し他の部分は省略している。
【0080】
支持装置122は、本体ケース111に固定され弾性変形可能な第1支持装置31と、第1支持装置31と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなり偏心回転体13を第1支持装置31に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置32と、を備えている。
【0081】
本体ケース111は、金属材や合成樹脂材などで箱状に形成されたものである。本体ケース111は、水平に配置された基台111aと、基台111aの上面に立設された側壁111bを有している。
【0082】
第1支持装置31は、基端が本体ケース111の基台111aに固定され先端が自由端であり偏心回転体13を囲むように弾性材(例えば金属材、合成樹脂材)で形成されている。第1支持装置31は、細長い板状材をC字状に成形したものである。板状材は、弾性変形する材質であれば金属材でも合成樹脂材でもよい。第1支持装置31は、C字状でなくても、コ字状でもよく、先端に行くほどしなりが大きくなるように構成されるのが好ましい。
【0083】
第2支持装置32は、具体的には、図12に示すように、偏心回転体13の本体13aを、本体ケース11に対して複数(例えば3つ)のコイルばね122a1,122a2,122a3により複数の方向(3方向)から支持するものである。各コイルばね122aは、本体13aの3つの角部とその角部に対向する第1支持装置31の内壁面との間にそれぞれ介装されている。コイルばね122a1,122a2,122a3の各一端は、本体13aの各角部13a1,13a2,13a3に接続固定され、他端は、第1支持装置31の内壁面であって本体13aの各角部13a1,13a2,13a3に対向する位置(第1支持装置31の内壁面に所定間隔をおいた位置)に接続固定されている。また、3つのコイルばね122a1,122a2,122a3を、同じ長さ(自然長)に設定するとともに、第1支持装置31の先端に行くほどばね定数を小さく設定するようにしている。
【0084】
このように、偏心回転体13は、第2支持装置32により宙に浮いた状態で支持されている。この偏心回転体13は、周回運動していないとき(回転駆動装置10が非駆動状態であるとき)には、偏心回転体13の中心13eが出力回転体12(出力軸12a)の回転軸と一致するように、支持されるようになっている。
【0085】
なお、本実施形態では、偏心回転体13の中心13eは、外歯13bの中心である。また、本実施形態では、外歯13bの中心と外側環状壁13d1の中心は一致しているが、外歯13bの中心が外側環状壁13d1の内側に存在すれば一致していなくてもよい。錘21の遠心力を利用することができるからである。
【0086】
支持装置122は、第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されている。具体的には、上述したように、第1支持装置31を、その先端に行くほどしなりが大きくなるように構成するようにすればよい。また、第2支持装置32のコイルばね122aを、同じ長さで第1支持装置31の先端に行くほどばね定数を小さく設定すればよい。なお、第2支持装置32のコイルばね122aを、同じばね定数で第1支持装置31の先端に行くほど自然長が長くなるように設定するようにしてもよい。
【0087】
歪素子23は第1支持装置31の基端部に取り付けられている。歪素子23の先端部が図12で反時計まわり方向に振れると、支持装置122が第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されているので、第1支持装置31は内側に縮まるように変形する。一方、歪素子23の先端部が図12で時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は外側に拡がるように変形する。なお、歪素子23は1つだけでなく幅方向に複数並べて設けてもよい。より大きい力を第1支持装置31に付与できる。また、長手方向に複数並べて設けてもよい。より大きい振幅を第1支持装置31に付与できる。
【0088】
なお、側壁111bには軸受11bが設けられており、軸受11bには出力回転端12の出力軸12bが回転可能に支承されている。
【0089】
このように構成された回転駆動装置10の作動について説明する。歪素子23の先端部が図12で時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は外側に拡がるように変形する。偏心回転体13は、角部13a1付近を支点に時計回り方向に回動する。その動きに伴って錘21が時計回り方向に移動する。
【0090】
一方、歪素子23の先端部が図12で反時計まわり方向に振れると、第1支持装置31は内側に縮まるように変形する。偏心回転体13は、角部13a1付近を支点に反時計回り方向に回動する。その動きに伴って錘21が反時計回り方向に移動する。
【0091】
このような動きを繰り返すうち、錘21が時計周り方向または反時計回り方向の周回運動を開始する。偏心回転体13の偏心周回運動中においては、偏心回転体13の外歯13bと出力回転体12の内歯12cが噛合している。また、安定した偏心周回運動中においては、上述した第1の実施形態と同様に、偏心回転体13と錘21が同期して偏心周回運動している。
【0092】
第1の実施形態と同様に、錘21の回転数を制御することで回転駆動装置10の出力トルクを調整することができる。歪素子23の振動を制御することで錘21の回転数を制御することができる。
【0093】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る回転駆動装置10においては、支持装置122は、本体ケース111に固定され弾性変形可能な第1支持装置31と、第1支持装置31と偏心回転体13との間に介装されたコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなり偏心回転体13を第1支持装置31に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置32と、を備え、歪素子23は、第1支持装置31に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により第1支持装置31を振動させることで偏心回転体13を振動させる。これにより、偏心回転体13をコイルばね122a1〜122a3(弾性部材)からなる第2支持装置32および弾性変形可能な第1支持装置31を介して本体ケース111に確実に支持するとともに、偏心回転体13に比較的大きな振動を付与することができる。また、歪素子23が直接第1支持装置31を振動させ、その振動された第1支持装置31により偏心回転体13が振動されるので、偏心回転体13を歪素子23によってより確実に振動させることができる。
【0094】
また、第1支持装置31は、基端が本体ケース111に固定され先端が自由端であり偏心回転体13を囲むように弾性材で形成され、歪素子23は第1支持装置31の基端部に取り付けられている。これにより、第1支持装置31は偏心回転体13を簡単な構成で弾性変形可能に支持することできる。また、歪素子23が第1支持装置31の基端部に取り付けられているので、偏心回転体13を効率よく振動させることができる。
【0095】
また、支持装置122は、第1支持装置31の先端に行くにつれて第1支持装置31の振幅が大きくなるように構成されている。これにより、第1支持装置31の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、偏心回転体13をより効率よく振動させることができる。
【0096】
また、本第2の実施形態によれば、歪素子23の2つの異なる方向への振動速度を異ならせることで、偏心回転体13の周回運動の方向すなわち錘21の周回運動の方向を制御することができる。
【0097】
また、錘21の周回運動は歪素子23の振動により第1支持装置31が振れることで起きるため、錘21の位置などによらず錘21の回転を開始させることができ、錘21の回転速度を増幅させることができる。
【0098】
また、第1支持装置31に、コイルばね122a1〜122a3で構成された第2支持装置32を設けることで、偏心回転体13の揺れを大きくすることができ、第1支持装置31の基端部の振動が小さくても先端に行けば大きい振幅を確保することができるので、歪素子23の振幅を大きくしなくても、偏心回転体13ひいては錘21の回転を増幅させることができる。
【0099】
また、歪素子23を複数設けた場合、第1支持装置31に付与する振動を異なる周波数に制御することができる。つまり、周波数を変えることによって回転数を変えることができ、また、異なったタイミングで第2支持装置32(支持装置122)を振動させることによって先端のしなり(振幅)を大きくすることができるため、偏心回転体13の偏心量を大きくすることができる。
【0100】
なお、本第2の実施形態では、偏心回転体13の周回運動の軌道面が垂直面となるように回転駆動装置10が設置されている。なお、その軌道面が水平面となるように回転駆動装置10を設置するようにしてもよい。
【0101】
また、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、錘位置検出センサ14を設けて、錘21の位置を検出することで歪素子23を制御するようにしてもよい。また、3つのコイルばね122a1,122a2,122a3は同じばね定数で同じ長さに設定されるようにしてもよい。
【0102】
また、本発明を、ハイポサイクロイドギヤを有する回転駆動装置に適用したが、遊星ギアや他のギア機構を有する回転駆動装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…回転駆動装置、11…本体ケース、12…出力回転体、12a…本体、12b…出力軸、12c…内歯、12d…環状凸部、13…偏心回転体、13a…本体、13a1,13a2,13a3…本体の各角部、13b…外歯、13c…凸部、13d…環状溝、13d1…外側環状壁(環状壁)、13d2…内側環状壁、13e…偏心回転体の中心、14…錘位置検出センサ、20…偏心運動発生装置、21…錘、22…支持装置、22a,22a1,22a2,22a3,22a4…コイルばね、23…歪素子、31…第1支持装置、32…第2支持装置、111…本体ケース、111a…基台、111b…側壁、122…支持装置、122a1〜122a3…コイルばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースに回転可能に支承され、出力軸および環状に形成された内歯または外歯を備え、前記出力軸の回転軸まわりに回転される出力回転体と、
前記出力回転体の前記出力軸の回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に前記出力回転体の前記内歯と噛合する外歯または前記出力回転体の前記外歯と噛合する内歯を備えた偏心回転体と、
前記偏心回転体に前記出力軸の回転軸まわりに環状に形成された環状壁に沿って当接して周回する錘と、前記偏心回転体を弾性移動可能に支持する支持装置と、電気信号に応じて発生する歪により前記偏心回転体を振動させる歪素子と、を備え、前記歪素子による押圧力と前記支持装置による弾性力と前記錘の遠心力との協働により前記錘を周回させることで前記偏心回転体に前記偏心周回運動を発生させる偏心運動発生装置と、を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記支持装置は、前記本体ケースと前記偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり前記偏心回転体を前記本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、
前記歪素子は、前記本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により前記偏心回転体を押圧することを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項1において、前記支持装置は、前記本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、前記第1支持装置と前記偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり前記偏心回転体を前記第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、
前記歪素子は、前記第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により前記第1支持装置を振動させることで前記偏心回転体を振動させることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項において、前記歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項において、前記錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項6】
請求項2において、前記歪素子は、前記偏心回転体を前記環状壁の接線方向に押圧するように設けられていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項7】
請求項3において、前記第1支持装置は、基端が前記本体ケースに固定され先端が自由端であり前記偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、前記歪素子は前記第1支持装置の基端部に取り付けられていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項8】
請求項7において、前記支持装置は、前記第1支持装置の先端に行くにつれて前記第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースに回転可能に支承され、出力軸および環状に形成された内歯または外歯を備え、前記出力軸の回転軸まわりに回転される出力回転体と、
前記出力回転体の前記出力軸の回転軸に対して偏心して周回運動をし、その偏心周回運動をする際に前記出力回転体の前記内歯と噛合する外歯または前記出力回転体の前記外歯と噛合する内歯を備えた偏心回転体と、
前記偏心回転体に前記出力軸の回転軸まわりに環状に形成された環状壁に沿って当接して周回する錘と、前記偏心回転体を弾性移動可能に支持する支持装置と、電気信号に応じて発生する歪により前記偏心回転体を振動させる歪素子と、を備え、前記歪素子による押圧力と前記支持装置による弾性力と前記錘の遠心力との協働により前記錘を周回させることで前記偏心回転体に前記偏心周回運動を発生させる偏心運動発生装置と、を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記支持装置は、前記本体ケースと前記偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり前記偏心回転体を前記本体ケースに対して弾性移動可能に支持し、
前記歪素子は、前記本体ケースに固定され電気信号に応じて発生する歪により前記偏心回転体を押圧することを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項1において、前記支持装置は、前記本体ケースに固定され弾性変形可能な第1支持装置と、前記第1支持装置と前記偏心回転体との間に介装された弾性部材からなり前記偏心回転体を前記第1支持装置に対して弾性移動可能に支持する第2支持装置と、を備え、
前記歪素子は、前記第1支持装置に取り付けられ電気信号に応じて発生する歪により前記第1支持装置を振動させることで前記偏心回転体を振動させることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項において、前記歪素子は、圧電素子、磁歪素子、電歪素子、形状記憶素子のうちのいずれかにより構成されていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項において、前記錘の位置を検出する錘位置検出センサをさらに備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項6】
請求項2において、前記歪素子は、前記偏心回転体を前記環状壁の接線方向に押圧するように設けられていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項7】
請求項3において、前記第1支持装置は、基端が前記本体ケースに固定され先端が自由端であり前記偏心回転体を囲むように弾性材で形成され、前記歪素子は前記第1支持装置の基端部に取り付けられていることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項8】
請求項7において、前記支持装置は、前記第1支持装置の先端に行くにつれて前記第1支持装置の振幅が大きくなるように構成されていることを特徴とする回転駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−161410(P2011−161410A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29707(P2010−29707)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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