固体インクを阻止し熔融インクを通過させるインク熔融器
【課題】インクの熔融/供給速度を高めて高速印刷を可能にする。
【解決手段】個々の固体インク送給チャネルに対応する固体インク熔融アセンブリを、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口160がある囲い154、受け口・出口間160に位置するよう囲い154の内側に配置されたストッパ168、受け口・出口160間に位置するよう囲い154又はストッパ168若しくはその縁に形成された複数個の開口(例えば182)、並びにその囲い154を相変化インク熔融温度まで加熱するヒータを備える構成にする。対応する固体インク送給チャネルの装填端から熔融端へと案内又は移送されてくる固体インクスティックは囲い154内で熔融し、受け口付近から受け口・出口160間の開口を経て出口160へと、囲い154の内側又は外側を伝って流れていく。
【解決手段】個々の固体インク送給チャネルに対応する固体インク熔融アセンブリを、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口160がある囲い154、受け口・出口間160に位置するよう囲い154の内側に配置されたストッパ168、受け口・出口160間に位置するよう囲い154又はストッパ168若しくはその縁に形成された複数個の開口(例えば182)、並びにその囲い154を相変化インク熔融温度まで加熱するヒータを備える構成にする。対応する固体インク送給チャネルの装填端から熔融端へと案内又は移送されてくる固体インクスティックは囲い154内で熔融し、受け口付近から受け口・出口160間の開口を経て出口160へと、囲い154の内側又は外側を伝って流れていく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式等の相変化インク成像装置、特にその固体インク熔融アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクプリンタ、相変化インクプリンタ等と呼ばれるプリンタでは、従来から、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)各色の相変化インクで形成された固形のペレット又はスティックを送給チャネルに装填し、重力又は機械動力の作用でそれをそのプリンタ内の固体インク熔融アセンブリに送り込む構成を採っている。各送給チャネルには、例えば、ある特定の形状をした固体インクスティックだけを通すように装填口が形成されているので、その装填口を通れる形状のスティックだけが、対応する送給チャネルを介し固体インク熔融アセンブリへと送られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4771920号明細書
【特許文献2】米国特許第5657904号明細書
【特許文献3】米国特許第6175101号明細書
【特許文献4】米国特許第7210773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その固体インク熔融アセンブリとしては、略平坦な高温メルトプレートを完全に又は半ば立てた状態で使用するのが普通である。ただ、この仕組みではメルトプレートと固体インクスティックとの接触面積が制約されるため、そのプレートでのスティック熔融速度、ひいてはプリントヘッドへのインク送給速度を十分に高くすることができない。高速印刷を実現するには、これより多量のインクを所与時間内に熔融させうるようにする必要がある。また、メルトプレート温度を高めて熔融/供給速度を高めることも可能だが、相変化インクが過熱により損傷しかねないので、この策は現実的でない。
【0005】
また、メルトプレートを若干であれ立てた状態で使用するのは、そのプレート伝いに滴下点へと流れるよう、熔融したインクの動きを制御するためである。その際、メルトプレートを立てた分は送給チャネルを寝かさないと、そのチャネルでそのプレートへと運ばれてくる固体インクスティックを、そのプレートにうまく当接させることができなくなる。相変化インク成像装置のなかには、重力の作用で固体インクスティックを駆動し送給チャネル沿いにメルトプレートまで運んで当接させるため、そのチャネルを(部分的に)鉛直方向に延ばした構成のものもあるが、そうした装置構成では、略平坦なメルトプレートを寝かせた状態で使用することになるため、熔融したインクをどこかに向けて狙い通りに流すことが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、本発明の一実施形態に係る相変化インク送給システムは、それぞれその装填端から熔融端へと固体インクスティックを案内乃至移送する1本又は複数本の固体インク送給チャネルと、固体インク送給チャネル毎に設けられた固体インク熔融アセンブリと、を備える。その固体インク熔融アセンブリは、それぞれ、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口が1個又は複数個ある(インク熔融部用の)囲いと、その囲いを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度にするヒータと、囲いの出口から流れてくる熔融インクを受け入れる(ヒータ付の)リザーバと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】相変化インク成像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した装置で使用される固体インクスティックの一例形状を示す斜視図である。
【図3】図1に示した装置に備わる相変化インク送給システムの一例構成を示す模式図である。
【図4】鍵的凹凸を有するインクスティック及びそれと番う鍵孔的凹凸を有する装填口を複数組示す頂面図である。
【図5】図1に示した装置で使用される固体インク熔融アセンブリ、そのインク熔融部囲い及び熔融インクリザーバの一例構成を示す模式図である。
【図6】図5に示したアセンブリにおけるインク熔融部囲いの上部側壁断面形状の一例を示すインク熔融部囲い頂面図である。
【図7A】図5に示したアセンブリに送給チャネル鉛直部分を連ねる構成を示す模式図である。
【図7B】図5に示したアセンブリに送給チャネル水平部分を連ねる構成を示す模式図である。
【図8A】インク熔融部囲い内に配置される固体インクストッパの別例構成を示す模式図である。
【図8B】インク熔融部囲い内に配置される固体インクストッパの更なる別例構成を示す模式図である。
【図9】図1に示した装置で使用される固体インク熔融アセンブリの別例構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明の好適な実施形態に関し別紙図面を参照しながらより詳細に説明する。図中、同様の部材には同一の参照符号を付してある。
【0009】
また、本願における「プリンタ」及び「成像装置」は“印刷媒体上に像を形成する装置”のことである。従って、ディジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、いわゆる多機能機等、その用途を問わず印刷出力機能を有する種々の装置が含まれる。印刷出力以外の機能、例えば仕上げ、印刷媒体送給等の機能を備えていてもかまわない。典型例は複写機、プリンタ、多機能機等である。更に、「印刷媒体」は“像を担持しうる有形のシート状又は板状物体”のことである。従って、紙シート、プラスチックシート等様々な素材のものが含まれ、またプレカット、ウェブ等様々な形態のものが含まれる。また、「文書」は“関連性のある印刷済媒体の集まり”例えば“関連性のある一組の原稿を印刷媒体上に複製しそれらの媒体を頁順に並べて調製した一組又は複数組の印刷済媒体”のことであり、「印刷ジョブ」はその「文書」を作成するジョブのことである。「関連性」のある一組の「原稿」とは、例えば“ある同じユーザから取得した印刷済媒体又は電子文書内頁画像の集まり”のことである。「画像」は“印刷媒体上に成像装置で発現させうる電子情報”のことであり、テキスト、グラフィクス、写真等がこれに該当する。「インク送給システム」「インクローダ」「ローダ」等の語はいずれも“インクを送給するシステム”という意味であり、本願では特に区別せずに使用されている。
【0010】
図1に、本発明の一実施形態に係る成像装置10の構成を示す。この装置10は相変化インクを用い高速で成像することができるプリンタであり、図示の通り、種々の機能サブシステム乃至部材をフレーム11上に直に又は他部材を介し実装した構成を有している。それらのサブシステム乃至部材のうち成像先部材12は、懸架式エンドレスベルト等の他種部材としても何ら問題はないが、本実施形態ではドラム状の構成となっている。その表面は成像面14、即ち相変化インク像を形成可能な面となっており、ドラム12を回転させることで方向16沿いに動かすことができる。また、面14上には加熱転写ローラ19が装荷されている。このローラ19は方向17沿いに回転させうるよう構成されており、その表面とドラム12側の面14との間には転写用の接触間隙即ちニップ18が形成されている。従って、面14上に相変化インク像を形成しておき、ニップ18に予熱済のシート状媒体49を送り込むことで、面14上の相変化インク像を媒体49に転写することができる。
【0011】
本プリンタ10は、更に、相変化インク送給システムたる相変化インクローダ20を備えている。このローダ20は、固形状の相変化インク即ち固体インクスティックを装填できるように構成された固体インク送給チャネルと、そのスティックを熔融させる固体インク熔融アセンブリとを有している(図3参照)。相変化インクは室温にて一般に固相であるが、固体インク熔融アセンブリで相応の熔融温度まで加熱することで、熔融させて固相から液相にすることができる。現在よく用いられているタイプの相変化インクなら、通常は、約100〜140℃まで加熱することで熔融し、プリントヘッド32,34等に送給可能な液相の状態になる。ローダ20は、こうして熔融させた相変化インクを、プリントヘッドシステム30を構成しているヘッド32,34等のうち1個又は複数個に送給する。なお、図1におけるプリントヘッドシステムの個数は1個(30)、それを構成するヘッドの個数は2個(32及び34)であるが、これらの個数は実施に当たり任意に定めることができる。
【0012】
本プリンタ10は、更に媒体送給システム40を備えている。これは、シート状媒体送給源42、44、46及び48や予熱アセンブリ52からなるシステムである。送給源42〜48、例えば大容量フィーダ48は、その内部にセットされている(又は外部から取り込んだ)シート状媒体49を媒体経路50経由でアセンブリ52に送り込み、そのアセンブリ52はその媒体49を予熱する。本プリンタ10は、このほかに、図示の通り原稿トレイ72、シート原稿送給回送装置74、光学的原稿走査システム76等からなる原稿フィーダ70も備えている。
【0013】
更に、本プリンタ10は多色成像が可能な装置であり、そのローダ20は互いに色が異なる複数種類の固体インクスティック、具体的にはCMYKの四色を扱えるように構成されている。また、本実施形態で使用される固体インクスティック100は、図2に示すようにその底面104と頂面108がほぼ平行な形状であるが、本発明の実施に当たっては、底面と頂面の形状及び関係が本実施形態と違うタイプの固体インクスティックを使用することもできる。
【0014】
図3に、そのローダ20の一例構成を示す。このローダ20は、図示の通り固体インク送給チャネル130を備えている。固体インク送給チャネルは、固体インクスティックを固体インク熔融アセンブリに届けるためのシュートであり、図3には1本(130)しか図示されていないが複数本になるのが普通である。本実施形態では、CMYKの各色を使用しているので、図1に示すように各色1本都合4本の固体インク送給チャネル22〜28を使用する。また、このチャネル130の一端(装填端)には装填口134があり、他端(熔融端)には固体インク熔融アセンブリ128がある。装填口134は、方向L沿いに差し込まれてくるスティック100をチャネル130内に受け入れるための開口である。図示の通り方向Lは略鉛直であるので、チャネル130にスティック100を装填する際重力を利用することができる。そのチャネル130は、装填されたスティック100を方向F沿いに装填端から熔融端へと案内又は移送するよう構成及び配置されている。図示例では方向Lと方向Fが違い、略鉛直上方から装填されたスティック100が暫く略水平方向に進んでから熔融端に達するようになっているが、装填方向と送給方向がほぼ平行になるよう固体インクチャネル及びその装填口を構成・形成することも可能である。
【0015】
また、本プリンタ10では、個々のチャネル130に間違った種類のスティック100が装填されないよう、スティック100の表面に鍵的凹凸138を設けると共に、その受入先となる装填口134の内縁に鍵孔的凹凸140を設けてある。図2及び図4に示す例では、ローダ20への装填方向Lに対し略平行になるようスティック100の側面110,114のうち一方(110)に形成した縦長の窪み乃至ノッチを凹凸138として使用する一方、その凹凸138に対し相補的な形状及び位置を有する突起(図4参照)を凹凸140としてローダ20側に形成することで、対応する種類のスティック100しか各チャネル130に通せないようにしてある。なお、本実施形態では凹凸138,140の個数が各1個であるが、鍵的凹凸及び鍵孔的凹凸の個数は複数個にすることもできる。突起、ノッチ等といった表面起伏を適当な位置に適当な個数設ければよい。同じく、その形状は丸みのある形状でも角張った形状でも段差のある形状でもよい。更に、本実施形態では凹凸138と凹凸140がほぼ同じ形状であるが、これはわかりやすさを優先した結果であり、鍵的な機能が実現されるのであれば両者を同じ形状にする必要もない。
【0016】
それら、スティック100の外面における凹凸138の個数及び配置、ひいてはスティック100の断面形状は、本プリンタ10で使用されるスティック100の色毎に違っている。他方で、プリンタ10側の装填口134(例えばキープレート上の開口)の開口形状も、このプリンタ10で使用されるスティック100の色毎に違っている。そのため、個々のチャネル130に装填可能なスティック100がそのチャネル130に係る特定の色のものに限定され、且つ個々のスティック100を装填可能なチャネル100がそのスティック100の色に係るものに限定される、という一対一の対応関係が成り立つ。図4に、凹凸138を用いスティック100を色選別する仕組みを示す。この仕組みでは、本プリンタ10で使用されるCMYK各色の固体インクスティック100A〜100D間の色の違いを、図示の通り、スティック100A〜100D上の鍵的凹凸138A〜138D及び装填口134A〜134D内の鍵孔的凹凸140A〜140Dを利用し識別する(符号同順)。各スティック100A〜100Dの凹凸138A〜138Dは互いにほぼ同じサイズ及び形状だが、そのスティック外面沿い位置がインク色毎に異なっている。即ち、同じ側に位置する側面110A〜110D上の互いに異なる位置に、色識別用の凹凸138A〜138Dが形成されている。そのため、その側面110上のどの位置に凹凸138があるかで、そのスティック100を色選別することができる。なお、色識別用の鍵的凹凸は固体インクスティックのどの面に設けてもかまわない。色識別以外の目的、例えばプリンタモデル、使用グラフィクス領域、インク組成等を識別するといった目的で、別の形状乃至サイズの凹凸を設けることもできる。
【0017】
更に、チャネル130はそれぞれ細長い延長形状を有しているので、対応する色のスティック100複数個をその内部に縦列的に装填することができる。固体インク送給チャネルの役目は、その内部に装填された固体インクスティックを保持及び案内し所要経路沿いに装填口から固体インク熔融アセンブリへと前進させることであるので、本発明を実施するに当たっては、その延長形状を直線型及び非直線型のいずれにしてもよいし鉛直型及び水平型のいずれにしてもよい。本実施形態の場合は、スティック100をアセンブリ128内に上から送り込めるよう、装填端寄り略水平部分を湾曲部分経由で熔融端寄り略鉛直部分に連通させた構成にしてある。チャネル130の熔融端寄り部分が略鉛直に延びているので、スティック100をアセンブリ128に送り込むための主又は従たる動力として、そのスティック100に作用する重力を活用することができる。また、チャネル130の全長に占める装填端寄り略水平部分の割合、湾曲部分の割合及び熔融端寄り略鉛直部分の割合は任意に定めることができる。そのチャネル130のほぼ全体を湾曲部分にしてもかまわない。その曲率半径が異なる複数通りの湾曲部分を設けてもよい。
【0018】
チャネル130には、更に、図3に示す如く駆動部材144が設けられている。この部材144は、チャネル130内に装填されている1個又は複数個のスティック100を所要送給経路沿いに移動させるための部材であり、個々のチャネル130毎に設けられている。本発明の実施に当たっては、送給経路の全区間又は一部区間で固体インクスティックを輸送、支持及び案内する主又は従たる手段、という役目を担える限り、この駆動部材のサイズ及び形状を任意に設定することができる。本実施形態の場合、この部材144として用いられているのは平形又は丸形断面のベルトであり、そのベルトは送給経路の大部分に亘りチャネル130に随伴している。また、このベルト144は、図示の通り互いに間隔を置いて設けられている複数個のプーリによって、ぴんと張るように懸架支持されている。それらのプーリのうち1個はモータアセンブリ等の部材によって回転駆動されるドライブプーリ148であり、ほかの何個かはアイドルプーリ150である。プーリ148を駆動するモータとして双方向駆動型のモータを使用すれば、スティック100を、その送給経路沿いに前進させるだけでなく、その送給経路沿いに後退させることもできる。
【0019】
アセンブリ128は、対応するチャネル130を介しスティック100を受け入れて熔融させ、システム30を構成しているヘッド32,34等のうち1個又は複数個に熔融インクを供給する。従来であれば、固体インクを熔融させるに当たり、略平坦な高温メルトプレートを立てた状態で使用することが多かった。ただ、そうした仕組みでは、メルトプレートと固体インクスティックとの接触面積が制約されるため、そのプレートでのスティック熔融速度ひいてはプリントヘッドへのインク送給速度もある限度以上には高くならず、所与時間内に熔融するインクの量が少ないので高速印刷を行うのが難しかった。無論、メルトプレートの温度を高めることで熔融/供給速度を高めることもできるが、相変化インクが過熱されて損傷するのでこの策は現実的でない。また、メルトプレートを立てた状態で使用していたのは、熔融したインクをそのプレート伝いに滴下点まで流れるようにするためであったが、プレートを立てる分はそのプレートまで固体インクスティックを運んでくる送給チャネルを寝かせねばならず、そうしないとそのスティックをそのプレートにうまく当接させることができなかった。他方、従来既知の相変化インク成像装置のなかには鉛直な(部分を有する)送給チャネルを備えるものもあり、そうした装置では重力で固体インクスティックを駆動しチャネル沿いにメルトプレートまで運んで当接させることが可能であったが、略平坦なメルトプレートを寝かせた状態で使用することになるため、熔融したインクをどこかに向けて狙い通りに流すことが難しかった。
【0020】
そこで、本願では、略平坦な高温メルトプレートを立てた状態で使用するのに代えて、次のようなインク熔融器を使用する新たな固体インク熔融アセンブリを提案する。このインク熔融器は、供給される固体インクの高温への曝露面積が従来の略平坦なプレートでのそれに比べて顕著に大きくなるよう、ひいてはそのインクがより高速で熔融するよう、熔融面を1個又は複数個設けた囲いである。この囲いは、熔融工程に供される固体インクの動きを制約するが、完全に包み込んでインクの抜け出しを阻止するわけではない。寧ろ、後述の如く、その頂部乃至頂部付近に発しその全長又は有意長に亘り流れて熔融インク出口に至る熔融インク流が複数本生じるよう、その頂部乃至頂部付近に孔、スロット、ギャップ等の開口を配した構成を採る。そうした熔融インク流を複数本形成できればよいので、円形、卵形等のようにいくらか丸みを帯びた断面でも、正方形、長方形等のように角張った断面でもかまわないが、全体として、その固体インク受け口から底部の熔融インク出口にかけて窄まっていくテーパの付いた形状の方がよい。その熔融インク流としては、囲いの内面に沿った内部流と、囲いの側部や隅部に設けられた開口例えばパーフォレーション(目打ち)を経て囲いの外面に出る1本又は複数本の外部流と、囲いの内法にある諸点で開口付の固体インクストッパから滴る内部流とが発生する。囲いの外面に出た熔融インクは、囲いの外面又は辺縁部によって吸着され、熔融インク出口へと流れていく。囲いの外面はそうした流れが生じるように傾斜させておく。外面沿いの流れを好適に制御するには、鉛直方向に対し60°以上の傾斜を付けておけばよい。
【0021】
こうして複数本の熔融インク流を形成する構成では、固体インクスティックの表面が熔融面に当接している個所から熔融インクがより迅速に引き離されるので、熔融インクが膜を形成して流れを妨げる効果も発生しにくい。即ち、固体インク・熔融面間界面に形成されるこのインク膜には、熔融面温度を上限としインク熔融温度近辺の温度を下限とする温度勾配が生じるので、その界面から熔融インクを素早く流出させてこの層を薄くすることで、その界面に存する熔融インクの代表温度を熔融面温度に近づけ熔融速度を高めることができる。
【0022】
図5に、本実施形態のアセンブリ128で使用している熱伝導性のインク熔融部囲い154を示す。この囲い154は、図示の通り傾斜した側壁で他方向から熔融室を囲んだ構成を有しているが、側壁枚数は単複いずれでもよくまた熔融室の囲み方は若干不完全でもよい。その熔融室は、その内部にスティック100を受け入れることができるよう、またそのスティック100を従来の高温メルトプレートで一般に実現可能な曝露面積に比べ顕著に広い面積に亘り高温に曝露させうるよう形成されている。また、この囲い154の頂部にはスティック100を受け入れうるサイズの固体インク受け口158があり、スティック100はこの受け口158を通って下方に送られていく。更に、囲い154の底部には熔融インク出口160があり、熔融インクはこの出口160(複数個にしてもよい)を介して熔融インクリザーバ164に送られる。それら受け口158・出口160間に位置するよう囲い154の内部に配置されているのは固体インクストッパ168であり、その囲い154の内部空間を横切るように延設されているので、囲い154の内部に入ってきた未熔融で固相のスティック100はこのストッパ168に当接して制止されることになる。そのストッパ168には、更に、囲い154の内部に送り込まれてきたスティック100の高温への曝露面積、即ち熔融面面積を拡げる機能がある。加えて、このストッパ168にはパーフォレーション、ギャップ、スロット、スペーシング等といった開口170が複数個形成されている。熔融インクの一部はこの開口170を通ってストッパ168を乗り越え出口160の方へ向かっていく。
【0023】
スティック100は、図示の通り、受け口158を介し囲い154の内部に送給されてくる。その送給方向Fは重力の作用方向と同方向である。受け口158を位置基準にして規制面174(図では複数あるが単数でもよい)が配置されているので、方向Fと交差する方向にスティック100が動くことはなく、方向Fと逆の方向への動きも生じにくくなっている。その面174は囲い154から熱的に絶縁されているので、面174によって案内されつつ動いているスティック100が、その面174との接触で熔融することはない。また、面174は対応するチャネル130の熔融端と一体に形成されているが、本発明を実施するに当たっては、この種の面を、対応する固体インク送給チャネルとは別体にすることもできる。例えば、当接してくる固体インクスティックよりも大きい、当接してくる固体インクスティックの上端より上方まで延びている、熔融工程で固体インクスティックに発生する不正常な傾き乃至動きを吸収できる傾きがある等、インク熔融部囲いのサイズ及び形状が固体インクスティックの収容に適するサイズ及び形状である場合は、規制面で固体インクスティックを熔融させる必要がないので、規制面がインク熔融部囲いと一体でない方がよいが、これとは逆に、両者を一体にした方がよい場合もあろう。
【0024】
その固体インクスティックをインク熔融部囲いに当接させるための変位力は、そのスティックの質量のみで発生させることが可能であるが、何か機械的な加圧装置を用いて増力してもよいし、固体インク送給チャネルの鉛直部分から囲いへとスティックを縦列的に送り込むことで増力してもよい。図7Aに、チャネル130の鉛直部分から囲い154へと複数個のスティック100を縦列的に送り込めるようにした例を示す。この例では、送り込まれたスティック100が先頭の固体インクスティック100’の上に積み重なっていくので、その重量でスティック100’をストッパ168に押しつけることができるが、スティック100が積まれる高さが十分でないと十分な力が発生しない。図7Bに、チャネル130の水平部分から囲い154へとスティック100を送り込めるようにした例を示す。この例では、チャネル130に設けた加圧器乃至プランジャ178によって、スティック100’の後端面120を押下するようにしている。また、プランジャ178が伸びている状態では、囲い154の受け口158より上方に隙間184が発生する。チャネル130の水平部分に沿って送られてくるスティック100がその隙間184に押し込まれることを防ぐため、この例では、そのスティック100をチャネル130内の随時張出ストッパ180で制止するようにしている。それらストッパ180及びプランジャ178の動作はセンサシステム190からの入力に基づきコントローラ188が制御している。システム190の出力からは、囲い154の上方に十分な隙間184が生じたことを検知することができる。コントローラ188では、それに応じ次のスティック100を前進させるようにすればよい。
【0025】
囲い154の側壁は、ストッパ168付近を境に上下二部分に区別することができる。そのうち囲い上部側壁194は受け口158を形成している部分であり、この部分は概ね鉛直な壁にすることも可能であるが、本実施形態では図5に示すようにフレア、即ち囲い154の中心線に対して外向きの傾斜を付けてある。これは、スティック100を囲い154のなかに好適に送り込めるようにするためである。ストッパ168より上方にあるので、この部分の側壁194は固体インク熔融域として使用することができる。即ち、この側壁194で、囲い154のなかに送られてくるスティックを不完全ながら閉じこめると共に、熔融したインクが出口160に向かわず囲い154から漏れ出すことを防ぐことができる。また、側壁194の断面形状、例えば囲い154内へのスティック100の送給方向Fに対して直交する平面における断面形状は、使用する予定があるスティック100の定格断面形状とほぼ同じ形状になるよう設定されている。即ち、図2に例示したスティック100の先端面118が正方形であるので、図6に示すように囲い154の側壁194の断面形状も正方形にしてある。側壁194のサイズについては、その囲い154のうちスティック100と最初に接触する部分がストッパ168になるよう設定されている。なお、固体インクスティックの先端面の縁が囲い上部側壁に接触して熔融が始まり、固体インクストッパに達するまでに熔融がある程度進行するよう、囲い上部側壁の上部を(若干)絞った形状にすることも可能である。
【0026】
他方、囲い154のうちストッパ168より下方の部分、即ち囲い下部側壁198は、熔融インク収集域が形成されるよう先細り形状となっており、その収集域の一端にはリザーバ164へと熔融インクを供給できるように出口160が形成されている。出口160に至る側壁198の細らせ方は、軸対称な細らせ方にしてもよいし非対称な細らせ方にしてもよい。また、本実施形態では、出口160が1個、そこからインクを受け取るリザーバ164も1個であるが、1個の熔融インク出口から複数個の熔融インクリザーバへと熔融インクを送る構成にしてもよい。複数個の熔融インク出口それぞれから1個又は複数個の熔融インクリザーバへと熔融インクを送る構成にすることもできる。本実施形態では、側壁198を少なくとも囲い154の底部近傍で細めて出口160を形成し、そこからインク流を送り出すようにしている。
【0027】
ストッパ168には、そこに当接してくるスティック100をこうして支持し熔融工程に供する機能のほかに、前述の通り、囲い154内でスティック100を高温に曝露させる部分の面積(熔融面積)を増やす機能がある。即ち、このストッパ168を貫き又はその縁を巡るパーフォレーション、スロット、ギャップ、スペーシング等を経るよう複数本の流路が形成されるので、ストッパ168越しにその流路を辿り出口160に至る熔融インク流が発生する。その際、スティック100はストッパ168の上方に留置されるので、熔融工程を好適に実行することができる。なお、固体インクストッパの位置は、固体インク受け口と熔融インク出口の間で任意に定めることができる。1個のインク熔融部囲いに複数個の固体インクストッパを入れてもよい。例えば、上述した固体インクストッパの下方、熔融インク出口の付近に別の固体インクストッパを配置するようにすれば、固相のままインクの粒子が出て行くことがないようより完全に、相変化インクを熔融させることができる。
【0028】
ストッパ168は、更に、図5及び図6に示す如く複数個の突起172を有している。突起172は囲い154の内部に張り出していて、この例では複数本のリブによって形成されている。本発明の実施に当たっては、突起をプレート、ウェブ、フィン等で形成することも、その個数を1個にすることもできる。突起172を有するストッパ168を囲い154の内側に配置する手法としては、ほかにも様々な手法を使用可能であるが、ここでは、囲い154の内部空間を横切るように複数本のリブを差し渡して(架けて)ストッパ168を形成する手法を使用している。即ち、図5及び図6に示すように、囲い154の内部空間を横切るよう多方向から都合複数本のリブを差し渡して升目状のグリッドを形成している。リブの役割は、スティック100の熔融速度を高めることや、そのスティック100の向きを正しく保って熔融中の突っかかり(ジャミング)を抑えることであるので、囲い154の内面を形成する面ならどの面からどのような角度でリブを渡してもよい。また、図5に示す如く、リブの端部のうちスティック100と最初に接触する側の端(上端)は幅狭に、またそれとは逆の側の端(下端)は幅広になっている。これは、リブ近傍域に達した固体インクの熔融を促進し、リブ付近を通過しきるまでにその大部分又は全部が熔融しきるようにするためである。
【0029】
こうしてリブを何本か差し渡す手法以外で固体インクストッパの形成が可能な手法としては、熔融インクの通り口となる開口が何個か形成された金属プレートを使用する手法がある。金属プレートにスロット、ギャップ、スペーシング等の開口を形成する処理には既存のシート素材加工技術を利用できるので、金属プレートを使用すると固体インクストッパを比較的簡便に製作することができる。また、その開口は、パンチ孔等の孔、柵型又は格子型のスロット、或いはスロット又は非円形孔のグリッド状配列というように、様々な形態で金属プレート上に形成することができる。特に、パーフォレーションならば、パンチ加工やドリル加工を実行せずに、即ち固体インクストッパ形成素材を除去せずに、固体インクストッパを貫く熔融インク流路を形成することができる。固体インクストッパ形成素材を除去しなければ、固体インクと接触してそれを熔融させる部分の面積が広めになる。更に、金属プレートの非開口部分は、例えば平坦にすることも、或いはスティック送給方向に対して0°をなすようにすることもできる。その金属プレート非開口部分の全体又は一部を、0°超90°以下の範囲内でスティック送給方向に対し傾斜させることもできる。そして、プレート状の金属素材を用いた場合より若干面倒になるが、非金属素材で固体インクストッパを形成すること、例えば樹脂化合物の成形で固体インクストッパを形成することもできる。
【0030】
図8A及び図8Bに別例に係るストッパ168の断面を示す。これらの例のストッパ168は、その形成素材が除去されないようプレート状部材にパーフォレーションを形成した構造である。まず、図8Aに示す例では、ストッパ168を形成しているプレート上に、開口170たる斜行切れ込み型パーフォレーションが複数本形成されている。ここでいう斜行切れ込み型パーフォレーションとは、プレート形成素材の一部を熔融インク出口方向に折り下げることで、そのプレート上に形成される細長い切れ込み乃至スリットのことである。融済インク流の通り道を作れればよいので、図示の通り開口170の片縁だけを折り下げて形成してもよいし、両縁を押し下げて形成してもよい。この種のストッパ168はルーバ(鎧戸)等に似た構造になる。次に、図8Bに示す別の例では、ストッパ168を形成しているプレート上に、開口170として複数本の互いに平行なランススロット型パーフォレーションが形成されている。ここでいうランススロット型パーフォレーションとは、端部剪断面がその金属プレートの平坦部分よりも下方に位置することとなるようプレート形成素材の一部を押し下げることで、そのプレート上に形成される端部開口付スリットのことである。プレート形成素材のうちスリット内の部分は、図示例ではそのプレートから下方に延びる略U字突起176となっている。
【0031】
これら、固体インクストッパに形成されるパーフォレーション、スロット、ギャップ、スペーシング等の開口は、インク熔融部囲いの側壁と固体インクストッパの狭間に形成されるものや、インク熔融部囲いの側壁に形成されるもの(後述)と共に、熔融インク流の通り道として機能する。これらの開口は例えば1mm程度といった狭い幅でもかまわない。そうした幅狭な開口でも、熔融工程実行時には、保持している固体インクスティックの熔融域から熔融インクを好適に流出させることができる。他方、開口幅が狭いと熔融インクがその開口の縁に付着しやすくなるので、下方に滴り流れる熔融インクの分量が減ることとなる。最良効率が得られるスロット幅、ギャップ幅等の実値は、その形状及び角度、熔融インクの流動性、ヒータ電力制御の立ち上がり及び立ち下がり等によって変動する。
【0032】
更に、これまで述べてきた熔融インク流用の開口はいずれもインク熔融部囲いの内部に形成されていたが、その囲い自体に熔融インク流用の開口を設けること、即ちその囲いの内面から外面へと一部の熔融インクが流出するように開口を設けることもできる。この外面流出用開口は、パーフォレーション、パンチ孔、ドリル孔、スリット等様々な形態で設けることができる。インク熔融部囲い上におけるその位置及び個数も随意に定めうる。この外面流出用開口を介しインク熔融部囲い外面に出た熔融インクは、インクの表面張力や囲い外面の表面エネルギにもよるが、通常は、囲い外面伝いに熔融インク出口へと流れていく。インク熔融部囲いには、こうした外面経由流路を、固体インクストッパを貫き又はその縁を巡る流路と並んで又はそれに代えて発生させることが可能である。もしそのインク熔融部囲いで外面経由流路が発生するなら、必要な流路全てをその囲い内の固体インクストッパで発生させる必要はない。
【0033】
図9に囲い154の別例を模式的に示す。この囲い154では、熔融インク流路として内部流路及び外部流路が発生する。内部流路は囲い154内のストッパ168を貫き又はその縁を巡る流路であり、外部流路は外面流出用開口182、例えば囲い154の側壁を貫通するパーフォレーションを通る流路である。内部流路経由の熔融インク流も外部流路経由の熔融インク流も、囲い154の出口160を経てリザーバ164へと送られる。リザーバ164に送られた熔融インクは、そのリザーバ164から分離又は独立して設けられているヘッド32,34等のうち1個又は複数個へと、そのリザーバ164から随時送られていく。熔融インクリザーバに代え、プリントヘッドと一体又は密接な熔融インクレセプタクルを設け、熔融インク出口からの熔融インクをそのレセプタクルで受け止めてほぼ直に、供給先となるべき1個又は複数個のプリントヘッドに供給するようにしてもよい。
【0034】
なお、インク熔融部囲い及び固体インクストッパは、互いに同一の素材で形成することも、互いに異種の素材で形成することもよい。これらの素材に対しては、熱伝導性が良好であること、相変化インク熔融温度に耐えうること、送給されてくる固体インクスティックから作用する下向きの力乃至衝撃に耐えうること等が求められる。金属、セラミクス、耐熱性樹脂その他の素材から該当する素材を選べばよい。インク熔融部囲いは、例えば、複数個のテーパ付成形プレートを連結して下端部以外の部分を形成し、熔融インク出口になる部分を含む下端部をその先端に連結することで形成する。プレート間連結は溶接、締結タブ等の工法乃至装置で行える。また、インク熔融部囲いを単体部品として形成することもできる。そうしたインク熔融部囲いを形成できる手法は複数ある。例えば、全形状を(深絞り)成形で形成してもよいし、プレート状部材の一端を他端に突合乃至継合させて形成してもよい。
【0035】
また、アセンブリ128は、囲い154を加熱しその温度を固相の相変化インクの熔融温度以上に高める加熱システムを備えている。具体的には、ヒータ200,204を使用し囲い154、その内部にある開口(パーフォレーション)170及び突起(リブ)172付のストッパ168、並びにリザーバ164を加熱している。使用するヒータの個数は1個でも複数個でもよい。加熱手法、生産性、ユニット集積度、コスト効率等を勘案し、目標とする構成及び性能に相応しい種類及び個数のヒータを使用すればよい。使用できる加熱手法としては、厚膜抵抗配線、シリコーン、ポリアミド膜の接合型ヒータを被着させる、インク熔融部囲い、固体インクストッパ、その上の突起乃至リブ等にヒータ素子をモールドで組み込んでおく、セラミクスPTC等の導電性ヒータ素材で固体インク熔融アセンブリを形成する、その表面に導電性ヒータ素材をスパッタリングする等の手法がある。ヒータ配線の被着や膜型ヒータの形成に先立ち導電性素材上にその被覆又は層を形成する等、電気絶縁性素材又は電気抵抗性素材を電気絶縁用のオーバコートとして使用することで、部材間絶縁による安全性の向上を図ることができる。正温度係数(PTC)素材や外付けの配線乃至被覆も利用することができる。
【0036】
その固体インク熔融アセンブリを何度まで加熱すればよいかは、そのアセンブリで使用される固体インクの組成によって左右される。例えば、固体インク熔融アセンブリ128内に存するインクの温度が約100〜140℃の温度域内に保たれるようヒータ200を発熱させる、というように、熔融させるべき素材に相応しい温度域に応じ加熱システムのヒータを発熱させればよい。更に、本実施形態では、囲い154、ストッパ168又はその上の突起乃至リブ172、リザーバ164等の諸部材を、その加熱性能や回路が異なる別々のヒータ200,204で加熱しているので、それらの部材の加熱先温度を互いに違えることができる。
【0037】
こうして発生する熔融インクは、図5に示すように、囲い154の出口160から出た後、その出口160に対し整列しているリザーバ164によって受け止められ、そこからプリントヘッド32,34等のうち1個又は複数個へと必要に応じ送られていく。前述の通り、こうした熔融インクリザーバに代え、熔融インクレセプタクルで熔融インクを受け止めるようにしてもよい。
【0038】
また、通電等によってヒータ200を作動させてから固体インク熔融温度に達するまでの時間や、通電停止等によってヒータ200の作動を停止させてから熔融インク流が止まるまでの時間は、いずれもアセンブリ128又はその囲い154の合計熱容量によって左右される。即ち、種々の状況下での暖機時間及びレディ状態移行時間はアセンブリ128乃至囲い154の熱容量が大きいと長くなってしまう。同様に、ヒータ200の作動を停止させた瞬間に熔融インク流が止まるのが理想であるが、アセンブリ128に熱容量があり固体インクへの熱エネルギ移転が続くため、ヒータ200作動停止後も暫くは熔融が続いてしまう。従って、熔融工程における熔融量制御を踏まえ、給電停止後に熔融されるインクを受け入れうるようリザーバ164のサイズを十分大きくする必要がある。
【0039】
更に、本実施形態のアセンブリ128及びその囲い154には、熔融インク流を素早く止めるため、熔融面のうち出口160近傍部分の厚み寸法を抑える等してその個所の除熱を促進する、という工夫も施されている。具体的には、囲い154の上部側壁194に比べ下部側壁198のうち出口160近傍部分を、熔融インクの固化による薄膜形成が進行しやすいよう肉薄にしてある(図示省略)。出口160近傍部分の上方に位置する熔融域、特にストッパ168上にありその熱容量が比較的大きなリブ172又はグリッドにてヒータ200の作動停止後暫くの間固体インクの熔融が続いても、肉薄部分上のインク薄膜によって熔融インクの流出は阻止されることとなる。加えて、その肉薄部分の熱容量は小さいので、再び熔融インク流を発生させる必要が生じて加熱を再開したときに、その部分にある固体インクが素早く熔融するのでインク補充が早期に再開されることとなる。なお、下部側壁198の出口160近傍部分を肉薄にするのではなく、その部分に設けるパーフォレーションの個数、開口面積乃至合計面積を大きくすることや、インク流阻止機能を担う可動弁乃至ストッパ(図示せず)付の槽をインク熔融部囲いに設けることでも、熔融インク流を素早く止める機能を実現することができる。例えば、可動弁乃至ストッパ付の槽がインク熔融部囲いに備わっていると、熔融インク流を直ちに再開/停止させるようアプリケーション側から要求されたときに、その可動弁乃至ストッパを開閉させることで、熔融インク流を素早く再開/停止させることができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態についてその構成部材及び機能を説明したが、本発明は、様々なシステム乃至用途に適用可能な発明であるし、またその適用先システム乃至用途に応じその構成部材乃至機能を別の部材乃至機能に置換し又は別の部材乃至機能と組み合わせることが可能な発明である。上掲の構成に限られるわけではないのでその点についてご理解頂きたい。また、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が、今後、本願の記載に基づき上掲の諸実施形態の代替、変形、変種乃至改良に相当する構成を想到することもあろう。別紙特許請求の範囲に係る発明にはそれらも包含されることとする。
【符号の説明】
【0041】
10 高速相変化インク成像装置/プリンタ、11 フレーム、12 成像先部材/ドラム、14 成像面/ドラム表面、16 ドラム回転方向、17 ローラ回転方向、18 ニップ、19 加熱転写ローラ、20 相変化インク送給システム/相変化インクローダ、22〜28,130 固体インク送給チャネル、30 プリントヘッドシステム、32,34 プリントヘッド、40 媒体送給システム、42〜48 シート状媒体送給源、49 シート状媒体、50 媒体経路、52 予熱アセンブリ、70 原稿フィーダ、72 原稿トレイ、74 シート原稿送給回送装置、76 光学的原稿走査システム、100,100A〜100D,100’ 固体インクスティック、104,108,110,110A〜110D,114,118,120 スティック表面、128 固体インク熔融アセンブリ、134,134A〜134D 装填口、138,138A〜138D 鍵的凹凸、140,140A〜140D 鍵孔的凹凸、144 駆動部材/ベルト、148 ドライブプーリ、150 アイドルプーリ、154 インク熔融部囲い、158 固体インク受け口、160 熔融インク出口、164 熔融インクリザーバ、168 固体インクストッパ、170 開口、172 突起、174 規制面、176 略U字突起、178 加圧器/プランジャ、180 随時張出ストッパ、182 外面流出用開口、184 隙間、188 コントローラ、190 センサシステム、194 囲い上部側壁、198 囲い下部側壁、200,204 ヒータ、F 送給方向、L 装填方向。
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式等の相変化インク成像装置、特にその固体インク熔融アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
固体インクプリンタ、相変化インクプリンタ等と呼ばれるプリンタでは、従来から、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)各色の相変化インクで形成された固形のペレット又はスティックを送給チャネルに装填し、重力又は機械動力の作用でそれをそのプリンタ内の固体インク熔融アセンブリに送り込む構成を採っている。各送給チャネルには、例えば、ある特定の形状をした固体インクスティックだけを通すように装填口が形成されているので、その装填口を通れる形状のスティックだけが、対応する送給チャネルを介し固体インク熔融アセンブリへと送られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4771920号明細書
【特許文献2】米国特許第5657904号明細書
【特許文献3】米国特許第6175101号明細書
【特許文献4】米国特許第7210773号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その固体インク熔融アセンブリとしては、略平坦な高温メルトプレートを完全に又は半ば立てた状態で使用するのが普通である。ただ、この仕組みではメルトプレートと固体インクスティックとの接触面積が制約されるため、そのプレートでのスティック熔融速度、ひいてはプリントヘッドへのインク送給速度を十分に高くすることができない。高速印刷を実現するには、これより多量のインクを所与時間内に熔融させうるようにする必要がある。また、メルトプレート温度を高めて熔融/供給速度を高めることも可能だが、相変化インクが過熱により損傷しかねないので、この策は現実的でない。
【0005】
また、メルトプレートを若干であれ立てた状態で使用するのは、そのプレート伝いに滴下点へと流れるよう、熔融したインクの動きを制御するためである。その際、メルトプレートを立てた分は送給チャネルを寝かさないと、そのチャネルでそのプレートへと運ばれてくる固体インクスティックを、そのプレートにうまく当接させることができなくなる。相変化インク成像装置のなかには、重力の作用で固体インクスティックを駆動し送給チャネル沿いにメルトプレートまで運んで当接させるため、そのチャネルを(部分的に)鉛直方向に延ばした構成のものもあるが、そうした装置構成では、略平坦なメルトプレートを寝かせた状態で使用することになるため、熔融したインクをどこかに向けて狙い通りに流すことが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、本発明の一実施形態に係る相変化インク送給システムは、それぞれその装填端から熔融端へと固体インクスティックを案内乃至移送する1本又は複数本の固体インク送給チャネルと、固体インク送給チャネル毎に設けられた固体インク熔融アセンブリと、を備える。その固体インク熔融アセンブリは、それぞれ、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口が1個又は複数個ある(インク熔融部用の)囲いと、その囲いを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度にするヒータと、囲いの出口から流れてくる熔融インクを受け入れる(ヒータ付の)リザーバと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】相変化インク成像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した装置で使用される固体インクスティックの一例形状を示す斜視図である。
【図3】図1に示した装置に備わる相変化インク送給システムの一例構成を示す模式図である。
【図4】鍵的凹凸を有するインクスティック及びそれと番う鍵孔的凹凸を有する装填口を複数組示す頂面図である。
【図5】図1に示した装置で使用される固体インク熔融アセンブリ、そのインク熔融部囲い及び熔融インクリザーバの一例構成を示す模式図である。
【図6】図5に示したアセンブリにおけるインク熔融部囲いの上部側壁断面形状の一例を示すインク熔融部囲い頂面図である。
【図7A】図5に示したアセンブリに送給チャネル鉛直部分を連ねる構成を示す模式図である。
【図7B】図5に示したアセンブリに送給チャネル水平部分を連ねる構成を示す模式図である。
【図8A】インク熔融部囲い内に配置される固体インクストッパの別例構成を示す模式図である。
【図8B】インク熔融部囲い内に配置される固体インクストッパの更なる別例構成を示す模式図である。
【図9】図1に示した装置で使用される固体インク熔融アセンブリの別例構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明の好適な実施形態に関し別紙図面を参照しながらより詳細に説明する。図中、同様の部材には同一の参照符号を付してある。
【0009】
また、本願における「プリンタ」及び「成像装置」は“印刷媒体上に像を形成する装置”のことである。従って、ディジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、いわゆる多機能機等、その用途を問わず印刷出力機能を有する種々の装置が含まれる。印刷出力以外の機能、例えば仕上げ、印刷媒体送給等の機能を備えていてもかまわない。典型例は複写機、プリンタ、多機能機等である。更に、「印刷媒体」は“像を担持しうる有形のシート状又は板状物体”のことである。従って、紙シート、プラスチックシート等様々な素材のものが含まれ、またプレカット、ウェブ等様々な形態のものが含まれる。また、「文書」は“関連性のある印刷済媒体の集まり”例えば“関連性のある一組の原稿を印刷媒体上に複製しそれらの媒体を頁順に並べて調製した一組又は複数組の印刷済媒体”のことであり、「印刷ジョブ」はその「文書」を作成するジョブのことである。「関連性」のある一組の「原稿」とは、例えば“ある同じユーザから取得した印刷済媒体又は電子文書内頁画像の集まり”のことである。「画像」は“印刷媒体上に成像装置で発現させうる電子情報”のことであり、テキスト、グラフィクス、写真等がこれに該当する。「インク送給システム」「インクローダ」「ローダ」等の語はいずれも“インクを送給するシステム”という意味であり、本願では特に区別せずに使用されている。
【0010】
図1に、本発明の一実施形態に係る成像装置10の構成を示す。この装置10は相変化インクを用い高速で成像することができるプリンタであり、図示の通り、種々の機能サブシステム乃至部材をフレーム11上に直に又は他部材を介し実装した構成を有している。それらのサブシステム乃至部材のうち成像先部材12は、懸架式エンドレスベルト等の他種部材としても何ら問題はないが、本実施形態ではドラム状の構成となっている。その表面は成像面14、即ち相変化インク像を形成可能な面となっており、ドラム12を回転させることで方向16沿いに動かすことができる。また、面14上には加熱転写ローラ19が装荷されている。このローラ19は方向17沿いに回転させうるよう構成されており、その表面とドラム12側の面14との間には転写用の接触間隙即ちニップ18が形成されている。従って、面14上に相変化インク像を形成しておき、ニップ18に予熱済のシート状媒体49を送り込むことで、面14上の相変化インク像を媒体49に転写することができる。
【0011】
本プリンタ10は、更に、相変化インク送給システムたる相変化インクローダ20を備えている。このローダ20は、固形状の相変化インク即ち固体インクスティックを装填できるように構成された固体インク送給チャネルと、そのスティックを熔融させる固体インク熔融アセンブリとを有している(図3参照)。相変化インクは室温にて一般に固相であるが、固体インク熔融アセンブリで相応の熔融温度まで加熱することで、熔融させて固相から液相にすることができる。現在よく用いられているタイプの相変化インクなら、通常は、約100〜140℃まで加熱することで熔融し、プリントヘッド32,34等に送給可能な液相の状態になる。ローダ20は、こうして熔融させた相変化インクを、プリントヘッドシステム30を構成しているヘッド32,34等のうち1個又は複数個に送給する。なお、図1におけるプリントヘッドシステムの個数は1個(30)、それを構成するヘッドの個数は2個(32及び34)であるが、これらの個数は実施に当たり任意に定めることができる。
【0012】
本プリンタ10は、更に媒体送給システム40を備えている。これは、シート状媒体送給源42、44、46及び48や予熱アセンブリ52からなるシステムである。送給源42〜48、例えば大容量フィーダ48は、その内部にセットされている(又は外部から取り込んだ)シート状媒体49を媒体経路50経由でアセンブリ52に送り込み、そのアセンブリ52はその媒体49を予熱する。本プリンタ10は、このほかに、図示の通り原稿トレイ72、シート原稿送給回送装置74、光学的原稿走査システム76等からなる原稿フィーダ70も備えている。
【0013】
更に、本プリンタ10は多色成像が可能な装置であり、そのローダ20は互いに色が異なる複数種類の固体インクスティック、具体的にはCMYKの四色を扱えるように構成されている。また、本実施形態で使用される固体インクスティック100は、図2に示すようにその底面104と頂面108がほぼ平行な形状であるが、本発明の実施に当たっては、底面と頂面の形状及び関係が本実施形態と違うタイプの固体インクスティックを使用することもできる。
【0014】
図3に、そのローダ20の一例構成を示す。このローダ20は、図示の通り固体インク送給チャネル130を備えている。固体インク送給チャネルは、固体インクスティックを固体インク熔融アセンブリに届けるためのシュートであり、図3には1本(130)しか図示されていないが複数本になるのが普通である。本実施形態では、CMYKの各色を使用しているので、図1に示すように各色1本都合4本の固体インク送給チャネル22〜28を使用する。また、このチャネル130の一端(装填端)には装填口134があり、他端(熔融端)には固体インク熔融アセンブリ128がある。装填口134は、方向L沿いに差し込まれてくるスティック100をチャネル130内に受け入れるための開口である。図示の通り方向Lは略鉛直であるので、チャネル130にスティック100を装填する際重力を利用することができる。そのチャネル130は、装填されたスティック100を方向F沿いに装填端から熔融端へと案内又は移送するよう構成及び配置されている。図示例では方向Lと方向Fが違い、略鉛直上方から装填されたスティック100が暫く略水平方向に進んでから熔融端に達するようになっているが、装填方向と送給方向がほぼ平行になるよう固体インクチャネル及びその装填口を構成・形成することも可能である。
【0015】
また、本プリンタ10では、個々のチャネル130に間違った種類のスティック100が装填されないよう、スティック100の表面に鍵的凹凸138を設けると共に、その受入先となる装填口134の内縁に鍵孔的凹凸140を設けてある。図2及び図4に示す例では、ローダ20への装填方向Lに対し略平行になるようスティック100の側面110,114のうち一方(110)に形成した縦長の窪み乃至ノッチを凹凸138として使用する一方、その凹凸138に対し相補的な形状及び位置を有する突起(図4参照)を凹凸140としてローダ20側に形成することで、対応する種類のスティック100しか各チャネル130に通せないようにしてある。なお、本実施形態では凹凸138,140の個数が各1個であるが、鍵的凹凸及び鍵孔的凹凸の個数は複数個にすることもできる。突起、ノッチ等といった表面起伏を適当な位置に適当な個数設ければよい。同じく、その形状は丸みのある形状でも角張った形状でも段差のある形状でもよい。更に、本実施形態では凹凸138と凹凸140がほぼ同じ形状であるが、これはわかりやすさを優先した結果であり、鍵的な機能が実現されるのであれば両者を同じ形状にする必要もない。
【0016】
それら、スティック100の外面における凹凸138の個数及び配置、ひいてはスティック100の断面形状は、本プリンタ10で使用されるスティック100の色毎に違っている。他方で、プリンタ10側の装填口134(例えばキープレート上の開口)の開口形状も、このプリンタ10で使用されるスティック100の色毎に違っている。そのため、個々のチャネル130に装填可能なスティック100がそのチャネル130に係る特定の色のものに限定され、且つ個々のスティック100を装填可能なチャネル100がそのスティック100の色に係るものに限定される、という一対一の対応関係が成り立つ。図4に、凹凸138を用いスティック100を色選別する仕組みを示す。この仕組みでは、本プリンタ10で使用されるCMYK各色の固体インクスティック100A〜100D間の色の違いを、図示の通り、スティック100A〜100D上の鍵的凹凸138A〜138D及び装填口134A〜134D内の鍵孔的凹凸140A〜140Dを利用し識別する(符号同順)。各スティック100A〜100Dの凹凸138A〜138Dは互いにほぼ同じサイズ及び形状だが、そのスティック外面沿い位置がインク色毎に異なっている。即ち、同じ側に位置する側面110A〜110D上の互いに異なる位置に、色識別用の凹凸138A〜138Dが形成されている。そのため、その側面110上のどの位置に凹凸138があるかで、そのスティック100を色選別することができる。なお、色識別用の鍵的凹凸は固体インクスティックのどの面に設けてもかまわない。色識別以外の目的、例えばプリンタモデル、使用グラフィクス領域、インク組成等を識別するといった目的で、別の形状乃至サイズの凹凸を設けることもできる。
【0017】
更に、チャネル130はそれぞれ細長い延長形状を有しているので、対応する色のスティック100複数個をその内部に縦列的に装填することができる。固体インク送給チャネルの役目は、その内部に装填された固体インクスティックを保持及び案内し所要経路沿いに装填口から固体インク熔融アセンブリへと前進させることであるので、本発明を実施するに当たっては、その延長形状を直線型及び非直線型のいずれにしてもよいし鉛直型及び水平型のいずれにしてもよい。本実施形態の場合は、スティック100をアセンブリ128内に上から送り込めるよう、装填端寄り略水平部分を湾曲部分経由で熔融端寄り略鉛直部分に連通させた構成にしてある。チャネル130の熔融端寄り部分が略鉛直に延びているので、スティック100をアセンブリ128に送り込むための主又は従たる動力として、そのスティック100に作用する重力を活用することができる。また、チャネル130の全長に占める装填端寄り略水平部分の割合、湾曲部分の割合及び熔融端寄り略鉛直部分の割合は任意に定めることができる。そのチャネル130のほぼ全体を湾曲部分にしてもかまわない。その曲率半径が異なる複数通りの湾曲部分を設けてもよい。
【0018】
チャネル130には、更に、図3に示す如く駆動部材144が設けられている。この部材144は、チャネル130内に装填されている1個又は複数個のスティック100を所要送給経路沿いに移動させるための部材であり、個々のチャネル130毎に設けられている。本発明の実施に当たっては、送給経路の全区間又は一部区間で固体インクスティックを輸送、支持及び案内する主又は従たる手段、という役目を担える限り、この駆動部材のサイズ及び形状を任意に設定することができる。本実施形態の場合、この部材144として用いられているのは平形又は丸形断面のベルトであり、そのベルトは送給経路の大部分に亘りチャネル130に随伴している。また、このベルト144は、図示の通り互いに間隔を置いて設けられている複数個のプーリによって、ぴんと張るように懸架支持されている。それらのプーリのうち1個はモータアセンブリ等の部材によって回転駆動されるドライブプーリ148であり、ほかの何個かはアイドルプーリ150である。プーリ148を駆動するモータとして双方向駆動型のモータを使用すれば、スティック100を、その送給経路沿いに前進させるだけでなく、その送給経路沿いに後退させることもできる。
【0019】
アセンブリ128は、対応するチャネル130を介しスティック100を受け入れて熔融させ、システム30を構成しているヘッド32,34等のうち1個又は複数個に熔融インクを供給する。従来であれば、固体インクを熔融させるに当たり、略平坦な高温メルトプレートを立てた状態で使用することが多かった。ただ、そうした仕組みでは、メルトプレートと固体インクスティックとの接触面積が制約されるため、そのプレートでのスティック熔融速度ひいてはプリントヘッドへのインク送給速度もある限度以上には高くならず、所与時間内に熔融するインクの量が少ないので高速印刷を行うのが難しかった。無論、メルトプレートの温度を高めることで熔融/供給速度を高めることもできるが、相変化インクが過熱されて損傷するのでこの策は現実的でない。また、メルトプレートを立てた状態で使用していたのは、熔融したインクをそのプレート伝いに滴下点まで流れるようにするためであったが、プレートを立てる分はそのプレートまで固体インクスティックを運んでくる送給チャネルを寝かせねばならず、そうしないとそのスティックをそのプレートにうまく当接させることができなかった。他方、従来既知の相変化インク成像装置のなかには鉛直な(部分を有する)送給チャネルを備えるものもあり、そうした装置では重力で固体インクスティックを駆動しチャネル沿いにメルトプレートまで運んで当接させることが可能であったが、略平坦なメルトプレートを寝かせた状態で使用することになるため、熔融したインクをどこかに向けて狙い通りに流すことが難しかった。
【0020】
そこで、本願では、略平坦な高温メルトプレートを立てた状態で使用するのに代えて、次のようなインク熔融器を使用する新たな固体インク熔融アセンブリを提案する。このインク熔融器は、供給される固体インクの高温への曝露面積が従来の略平坦なプレートでのそれに比べて顕著に大きくなるよう、ひいてはそのインクがより高速で熔融するよう、熔融面を1個又は複数個設けた囲いである。この囲いは、熔融工程に供される固体インクの動きを制約するが、完全に包み込んでインクの抜け出しを阻止するわけではない。寧ろ、後述の如く、その頂部乃至頂部付近に発しその全長又は有意長に亘り流れて熔融インク出口に至る熔融インク流が複数本生じるよう、その頂部乃至頂部付近に孔、スロット、ギャップ等の開口を配した構成を採る。そうした熔融インク流を複数本形成できればよいので、円形、卵形等のようにいくらか丸みを帯びた断面でも、正方形、長方形等のように角張った断面でもかまわないが、全体として、その固体インク受け口から底部の熔融インク出口にかけて窄まっていくテーパの付いた形状の方がよい。その熔融インク流としては、囲いの内面に沿った内部流と、囲いの側部や隅部に設けられた開口例えばパーフォレーション(目打ち)を経て囲いの外面に出る1本又は複数本の外部流と、囲いの内法にある諸点で開口付の固体インクストッパから滴る内部流とが発生する。囲いの外面に出た熔融インクは、囲いの外面又は辺縁部によって吸着され、熔融インク出口へと流れていく。囲いの外面はそうした流れが生じるように傾斜させておく。外面沿いの流れを好適に制御するには、鉛直方向に対し60°以上の傾斜を付けておけばよい。
【0021】
こうして複数本の熔融インク流を形成する構成では、固体インクスティックの表面が熔融面に当接している個所から熔融インクがより迅速に引き離されるので、熔融インクが膜を形成して流れを妨げる効果も発生しにくい。即ち、固体インク・熔融面間界面に形成されるこのインク膜には、熔融面温度を上限としインク熔融温度近辺の温度を下限とする温度勾配が生じるので、その界面から熔融インクを素早く流出させてこの層を薄くすることで、その界面に存する熔融インクの代表温度を熔融面温度に近づけ熔融速度を高めることができる。
【0022】
図5に、本実施形態のアセンブリ128で使用している熱伝導性のインク熔融部囲い154を示す。この囲い154は、図示の通り傾斜した側壁で他方向から熔融室を囲んだ構成を有しているが、側壁枚数は単複いずれでもよくまた熔融室の囲み方は若干不完全でもよい。その熔融室は、その内部にスティック100を受け入れることができるよう、またそのスティック100を従来の高温メルトプレートで一般に実現可能な曝露面積に比べ顕著に広い面積に亘り高温に曝露させうるよう形成されている。また、この囲い154の頂部にはスティック100を受け入れうるサイズの固体インク受け口158があり、スティック100はこの受け口158を通って下方に送られていく。更に、囲い154の底部には熔融インク出口160があり、熔融インクはこの出口160(複数個にしてもよい)を介して熔融インクリザーバ164に送られる。それら受け口158・出口160間に位置するよう囲い154の内部に配置されているのは固体インクストッパ168であり、その囲い154の内部空間を横切るように延設されているので、囲い154の内部に入ってきた未熔融で固相のスティック100はこのストッパ168に当接して制止されることになる。そのストッパ168には、更に、囲い154の内部に送り込まれてきたスティック100の高温への曝露面積、即ち熔融面面積を拡げる機能がある。加えて、このストッパ168にはパーフォレーション、ギャップ、スロット、スペーシング等といった開口170が複数個形成されている。熔融インクの一部はこの開口170を通ってストッパ168を乗り越え出口160の方へ向かっていく。
【0023】
スティック100は、図示の通り、受け口158を介し囲い154の内部に送給されてくる。その送給方向Fは重力の作用方向と同方向である。受け口158を位置基準にして規制面174(図では複数あるが単数でもよい)が配置されているので、方向Fと交差する方向にスティック100が動くことはなく、方向Fと逆の方向への動きも生じにくくなっている。その面174は囲い154から熱的に絶縁されているので、面174によって案内されつつ動いているスティック100が、その面174との接触で熔融することはない。また、面174は対応するチャネル130の熔融端と一体に形成されているが、本発明を実施するに当たっては、この種の面を、対応する固体インク送給チャネルとは別体にすることもできる。例えば、当接してくる固体インクスティックよりも大きい、当接してくる固体インクスティックの上端より上方まで延びている、熔融工程で固体インクスティックに発生する不正常な傾き乃至動きを吸収できる傾きがある等、インク熔融部囲いのサイズ及び形状が固体インクスティックの収容に適するサイズ及び形状である場合は、規制面で固体インクスティックを熔融させる必要がないので、規制面がインク熔融部囲いと一体でない方がよいが、これとは逆に、両者を一体にした方がよい場合もあろう。
【0024】
その固体インクスティックをインク熔融部囲いに当接させるための変位力は、そのスティックの質量のみで発生させることが可能であるが、何か機械的な加圧装置を用いて増力してもよいし、固体インク送給チャネルの鉛直部分から囲いへとスティックを縦列的に送り込むことで増力してもよい。図7Aに、チャネル130の鉛直部分から囲い154へと複数個のスティック100を縦列的に送り込めるようにした例を示す。この例では、送り込まれたスティック100が先頭の固体インクスティック100’の上に積み重なっていくので、その重量でスティック100’をストッパ168に押しつけることができるが、スティック100が積まれる高さが十分でないと十分な力が発生しない。図7Bに、チャネル130の水平部分から囲い154へとスティック100を送り込めるようにした例を示す。この例では、チャネル130に設けた加圧器乃至プランジャ178によって、スティック100’の後端面120を押下するようにしている。また、プランジャ178が伸びている状態では、囲い154の受け口158より上方に隙間184が発生する。チャネル130の水平部分に沿って送られてくるスティック100がその隙間184に押し込まれることを防ぐため、この例では、そのスティック100をチャネル130内の随時張出ストッパ180で制止するようにしている。それらストッパ180及びプランジャ178の動作はセンサシステム190からの入力に基づきコントローラ188が制御している。システム190の出力からは、囲い154の上方に十分な隙間184が生じたことを検知することができる。コントローラ188では、それに応じ次のスティック100を前進させるようにすればよい。
【0025】
囲い154の側壁は、ストッパ168付近を境に上下二部分に区別することができる。そのうち囲い上部側壁194は受け口158を形成している部分であり、この部分は概ね鉛直な壁にすることも可能であるが、本実施形態では図5に示すようにフレア、即ち囲い154の中心線に対して外向きの傾斜を付けてある。これは、スティック100を囲い154のなかに好適に送り込めるようにするためである。ストッパ168より上方にあるので、この部分の側壁194は固体インク熔融域として使用することができる。即ち、この側壁194で、囲い154のなかに送られてくるスティックを不完全ながら閉じこめると共に、熔融したインクが出口160に向かわず囲い154から漏れ出すことを防ぐことができる。また、側壁194の断面形状、例えば囲い154内へのスティック100の送給方向Fに対して直交する平面における断面形状は、使用する予定があるスティック100の定格断面形状とほぼ同じ形状になるよう設定されている。即ち、図2に例示したスティック100の先端面118が正方形であるので、図6に示すように囲い154の側壁194の断面形状も正方形にしてある。側壁194のサイズについては、その囲い154のうちスティック100と最初に接触する部分がストッパ168になるよう設定されている。なお、固体インクスティックの先端面の縁が囲い上部側壁に接触して熔融が始まり、固体インクストッパに達するまでに熔融がある程度進行するよう、囲い上部側壁の上部を(若干)絞った形状にすることも可能である。
【0026】
他方、囲い154のうちストッパ168より下方の部分、即ち囲い下部側壁198は、熔融インク収集域が形成されるよう先細り形状となっており、その収集域の一端にはリザーバ164へと熔融インクを供給できるように出口160が形成されている。出口160に至る側壁198の細らせ方は、軸対称な細らせ方にしてもよいし非対称な細らせ方にしてもよい。また、本実施形態では、出口160が1個、そこからインクを受け取るリザーバ164も1個であるが、1個の熔融インク出口から複数個の熔融インクリザーバへと熔融インクを送る構成にしてもよい。複数個の熔融インク出口それぞれから1個又は複数個の熔融インクリザーバへと熔融インクを送る構成にすることもできる。本実施形態では、側壁198を少なくとも囲い154の底部近傍で細めて出口160を形成し、そこからインク流を送り出すようにしている。
【0027】
ストッパ168には、そこに当接してくるスティック100をこうして支持し熔融工程に供する機能のほかに、前述の通り、囲い154内でスティック100を高温に曝露させる部分の面積(熔融面積)を増やす機能がある。即ち、このストッパ168を貫き又はその縁を巡るパーフォレーション、スロット、ギャップ、スペーシング等を経るよう複数本の流路が形成されるので、ストッパ168越しにその流路を辿り出口160に至る熔融インク流が発生する。その際、スティック100はストッパ168の上方に留置されるので、熔融工程を好適に実行することができる。なお、固体インクストッパの位置は、固体インク受け口と熔融インク出口の間で任意に定めることができる。1個のインク熔融部囲いに複数個の固体インクストッパを入れてもよい。例えば、上述した固体インクストッパの下方、熔融インク出口の付近に別の固体インクストッパを配置するようにすれば、固相のままインクの粒子が出て行くことがないようより完全に、相変化インクを熔融させることができる。
【0028】
ストッパ168は、更に、図5及び図6に示す如く複数個の突起172を有している。突起172は囲い154の内部に張り出していて、この例では複数本のリブによって形成されている。本発明の実施に当たっては、突起をプレート、ウェブ、フィン等で形成することも、その個数を1個にすることもできる。突起172を有するストッパ168を囲い154の内側に配置する手法としては、ほかにも様々な手法を使用可能であるが、ここでは、囲い154の内部空間を横切るように複数本のリブを差し渡して(架けて)ストッパ168を形成する手法を使用している。即ち、図5及び図6に示すように、囲い154の内部空間を横切るよう多方向から都合複数本のリブを差し渡して升目状のグリッドを形成している。リブの役割は、スティック100の熔融速度を高めることや、そのスティック100の向きを正しく保って熔融中の突っかかり(ジャミング)を抑えることであるので、囲い154の内面を形成する面ならどの面からどのような角度でリブを渡してもよい。また、図5に示す如く、リブの端部のうちスティック100と最初に接触する側の端(上端)は幅狭に、またそれとは逆の側の端(下端)は幅広になっている。これは、リブ近傍域に達した固体インクの熔融を促進し、リブ付近を通過しきるまでにその大部分又は全部が熔融しきるようにするためである。
【0029】
こうしてリブを何本か差し渡す手法以外で固体インクストッパの形成が可能な手法としては、熔融インクの通り口となる開口が何個か形成された金属プレートを使用する手法がある。金属プレートにスロット、ギャップ、スペーシング等の開口を形成する処理には既存のシート素材加工技術を利用できるので、金属プレートを使用すると固体インクストッパを比較的簡便に製作することができる。また、その開口は、パンチ孔等の孔、柵型又は格子型のスロット、或いはスロット又は非円形孔のグリッド状配列というように、様々な形態で金属プレート上に形成することができる。特に、パーフォレーションならば、パンチ加工やドリル加工を実行せずに、即ち固体インクストッパ形成素材を除去せずに、固体インクストッパを貫く熔融インク流路を形成することができる。固体インクストッパ形成素材を除去しなければ、固体インクと接触してそれを熔融させる部分の面積が広めになる。更に、金属プレートの非開口部分は、例えば平坦にすることも、或いはスティック送給方向に対して0°をなすようにすることもできる。その金属プレート非開口部分の全体又は一部を、0°超90°以下の範囲内でスティック送給方向に対し傾斜させることもできる。そして、プレート状の金属素材を用いた場合より若干面倒になるが、非金属素材で固体インクストッパを形成すること、例えば樹脂化合物の成形で固体インクストッパを形成することもできる。
【0030】
図8A及び図8Bに別例に係るストッパ168の断面を示す。これらの例のストッパ168は、その形成素材が除去されないようプレート状部材にパーフォレーションを形成した構造である。まず、図8Aに示す例では、ストッパ168を形成しているプレート上に、開口170たる斜行切れ込み型パーフォレーションが複数本形成されている。ここでいう斜行切れ込み型パーフォレーションとは、プレート形成素材の一部を熔融インク出口方向に折り下げることで、そのプレート上に形成される細長い切れ込み乃至スリットのことである。融済インク流の通り道を作れればよいので、図示の通り開口170の片縁だけを折り下げて形成してもよいし、両縁を押し下げて形成してもよい。この種のストッパ168はルーバ(鎧戸)等に似た構造になる。次に、図8Bに示す別の例では、ストッパ168を形成しているプレート上に、開口170として複数本の互いに平行なランススロット型パーフォレーションが形成されている。ここでいうランススロット型パーフォレーションとは、端部剪断面がその金属プレートの平坦部分よりも下方に位置することとなるようプレート形成素材の一部を押し下げることで、そのプレート上に形成される端部開口付スリットのことである。プレート形成素材のうちスリット内の部分は、図示例ではそのプレートから下方に延びる略U字突起176となっている。
【0031】
これら、固体インクストッパに形成されるパーフォレーション、スロット、ギャップ、スペーシング等の開口は、インク熔融部囲いの側壁と固体インクストッパの狭間に形成されるものや、インク熔融部囲いの側壁に形成されるもの(後述)と共に、熔融インク流の通り道として機能する。これらの開口は例えば1mm程度といった狭い幅でもかまわない。そうした幅狭な開口でも、熔融工程実行時には、保持している固体インクスティックの熔融域から熔融インクを好適に流出させることができる。他方、開口幅が狭いと熔融インクがその開口の縁に付着しやすくなるので、下方に滴り流れる熔融インクの分量が減ることとなる。最良効率が得られるスロット幅、ギャップ幅等の実値は、その形状及び角度、熔融インクの流動性、ヒータ電力制御の立ち上がり及び立ち下がり等によって変動する。
【0032】
更に、これまで述べてきた熔融インク流用の開口はいずれもインク熔融部囲いの内部に形成されていたが、その囲い自体に熔融インク流用の開口を設けること、即ちその囲いの内面から外面へと一部の熔融インクが流出するように開口を設けることもできる。この外面流出用開口は、パーフォレーション、パンチ孔、ドリル孔、スリット等様々な形態で設けることができる。インク熔融部囲い上におけるその位置及び個数も随意に定めうる。この外面流出用開口を介しインク熔融部囲い外面に出た熔融インクは、インクの表面張力や囲い外面の表面エネルギにもよるが、通常は、囲い外面伝いに熔融インク出口へと流れていく。インク熔融部囲いには、こうした外面経由流路を、固体インクストッパを貫き又はその縁を巡る流路と並んで又はそれに代えて発生させることが可能である。もしそのインク熔融部囲いで外面経由流路が発生するなら、必要な流路全てをその囲い内の固体インクストッパで発生させる必要はない。
【0033】
図9に囲い154の別例を模式的に示す。この囲い154では、熔融インク流路として内部流路及び外部流路が発生する。内部流路は囲い154内のストッパ168を貫き又はその縁を巡る流路であり、外部流路は外面流出用開口182、例えば囲い154の側壁を貫通するパーフォレーションを通る流路である。内部流路経由の熔融インク流も外部流路経由の熔融インク流も、囲い154の出口160を経てリザーバ164へと送られる。リザーバ164に送られた熔融インクは、そのリザーバ164から分離又は独立して設けられているヘッド32,34等のうち1個又は複数個へと、そのリザーバ164から随時送られていく。熔融インクリザーバに代え、プリントヘッドと一体又は密接な熔融インクレセプタクルを設け、熔融インク出口からの熔融インクをそのレセプタクルで受け止めてほぼ直に、供給先となるべき1個又は複数個のプリントヘッドに供給するようにしてもよい。
【0034】
なお、インク熔融部囲い及び固体インクストッパは、互いに同一の素材で形成することも、互いに異種の素材で形成することもよい。これらの素材に対しては、熱伝導性が良好であること、相変化インク熔融温度に耐えうること、送給されてくる固体インクスティックから作用する下向きの力乃至衝撃に耐えうること等が求められる。金属、セラミクス、耐熱性樹脂その他の素材から該当する素材を選べばよい。インク熔融部囲いは、例えば、複数個のテーパ付成形プレートを連結して下端部以外の部分を形成し、熔融インク出口になる部分を含む下端部をその先端に連結することで形成する。プレート間連結は溶接、締結タブ等の工法乃至装置で行える。また、インク熔融部囲いを単体部品として形成することもできる。そうしたインク熔融部囲いを形成できる手法は複数ある。例えば、全形状を(深絞り)成形で形成してもよいし、プレート状部材の一端を他端に突合乃至継合させて形成してもよい。
【0035】
また、アセンブリ128は、囲い154を加熱しその温度を固相の相変化インクの熔融温度以上に高める加熱システムを備えている。具体的には、ヒータ200,204を使用し囲い154、その内部にある開口(パーフォレーション)170及び突起(リブ)172付のストッパ168、並びにリザーバ164を加熱している。使用するヒータの個数は1個でも複数個でもよい。加熱手法、生産性、ユニット集積度、コスト効率等を勘案し、目標とする構成及び性能に相応しい種類及び個数のヒータを使用すればよい。使用できる加熱手法としては、厚膜抵抗配線、シリコーン、ポリアミド膜の接合型ヒータを被着させる、インク熔融部囲い、固体インクストッパ、その上の突起乃至リブ等にヒータ素子をモールドで組み込んでおく、セラミクスPTC等の導電性ヒータ素材で固体インク熔融アセンブリを形成する、その表面に導電性ヒータ素材をスパッタリングする等の手法がある。ヒータ配線の被着や膜型ヒータの形成に先立ち導電性素材上にその被覆又は層を形成する等、電気絶縁性素材又は電気抵抗性素材を電気絶縁用のオーバコートとして使用することで、部材間絶縁による安全性の向上を図ることができる。正温度係数(PTC)素材や外付けの配線乃至被覆も利用することができる。
【0036】
その固体インク熔融アセンブリを何度まで加熱すればよいかは、そのアセンブリで使用される固体インクの組成によって左右される。例えば、固体インク熔融アセンブリ128内に存するインクの温度が約100〜140℃の温度域内に保たれるようヒータ200を発熱させる、というように、熔融させるべき素材に相応しい温度域に応じ加熱システムのヒータを発熱させればよい。更に、本実施形態では、囲い154、ストッパ168又はその上の突起乃至リブ172、リザーバ164等の諸部材を、その加熱性能や回路が異なる別々のヒータ200,204で加熱しているので、それらの部材の加熱先温度を互いに違えることができる。
【0037】
こうして発生する熔融インクは、図5に示すように、囲い154の出口160から出た後、その出口160に対し整列しているリザーバ164によって受け止められ、そこからプリントヘッド32,34等のうち1個又は複数個へと必要に応じ送られていく。前述の通り、こうした熔融インクリザーバに代え、熔融インクレセプタクルで熔融インクを受け止めるようにしてもよい。
【0038】
また、通電等によってヒータ200を作動させてから固体インク熔融温度に達するまでの時間や、通電停止等によってヒータ200の作動を停止させてから熔融インク流が止まるまでの時間は、いずれもアセンブリ128又はその囲い154の合計熱容量によって左右される。即ち、種々の状況下での暖機時間及びレディ状態移行時間はアセンブリ128乃至囲い154の熱容量が大きいと長くなってしまう。同様に、ヒータ200の作動を停止させた瞬間に熔融インク流が止まるのが理想であるが、アセンブリ128に熱容量があり固体インクへの熱エネルギ移転が続くため、ヒータ200作動停止後も暫くは熔融が続いてしまう。従って、熔融工程における熔融量制御を踏まえ、給電停止後に熔融されるインクを受け入れうるようリザーバ164のサイズを十分大きくする必要がある。
【0039】
更に、本実施形態のアセンブリ128及びその囲い154には、熔融インク流を素早く止めるため、熔融面のうち出口160近傍部分の厚み寸法を抑える等してその個所の除熱を促進する、という工夫も施されている。具体的には、囲い154の上部側壁194に比べ下部側壁198のうち出口160近傍部分を、熔融インクの固化による薄膜形成が進行しやすいよう肉薄にしてある(図示省略)。出口160近傍部分の上方に位置する熔融域、特にストッパ168上にありその熱容量が比較的大きなリブ172又はグリッドにてヒータ200の作動停止後暫くの間固体インクの熔融が続いても、肉薄部分上のインク薄膜によって熔融インクの流出は阻止されることとなる。加えて、その肉薄部分の熱容量は小さいので、再び熔融インク流を発生させる必要が生じて加熱を再開したときに、その部分にある固体インクが素早く熔融するのでインク補充が早期に再開されることとなる。なお、下部側壁198の出口160近傍部分を肉薄にするのではなく、その部分に設けるパーフォレーションの個数、開口面積乃至合計面積を大きくすることや、インク流阻止機能を担う可動弁乃至ストッパ(図示せず)付の槽をインク熔融部囲いに設けることでも、熔融インク流を素早く止める機能を実現することができる。例えば、可動弁乃至ストッパ付の槽がインク熔融部囲いに備わっていると、熔融インク流を直ちに再開/停止させるようアプリケーション側から要求されたときに、その可動弁乃至ストッパを開閉させることで、熔融インク流を素早く再開/停止させることができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態についてその構成部材及び機能を説明したが、本発明は、様々なシステム乃至用途に適用可能な発明であるし、またその適用先システム乃至用途に応じその構成部材乃至機能を別の部材乃至機能に置換し又は別の部材乃至機能と組み合わせることが可能な発明である。上掲の構成に限られるわけではないのでその点についてご理解頂きたい。また、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が、今後、本願の記載に基づき上掲の諸実施形態の代替、変形、変種乃至改良に相当する構成を想到することもあろう。別紙特許請求の範囲に係る発明にはそれらも包含されることとする。
【符号の説明】
【0041】
10 高速相変化インク成像装置/プリンタ、11 フレーム、12 成像先部材/ドラム、14 成像面/ドラム表面、16 ドラム回転方向、17 ローラ回転方向、18 ニップ、19 加熱転写ローラ、20 相変化インク送給システム/相変化インクローダ、22〜28,130 固体インク送給チャネル、30 プリントヘッドシステム、32,34 プリントヘッド、40 媒体送給システム、42〜48 シート状媒体送給源、49 シート状媒体、50 媒体経路、52 予熱アセンブリ、70 原稿フィーダ、72 原稿トレイ、74 シート原稿送給回送装置、76 光学的原稿走査システム、100,100A〜100D,100’ 固体インクスティック、104,108,110,110A〜110D,114,118,120 スティック表面、128 固体インク熔融アセンブリ、134,134A〜134D 装填口、138,138A〜138D 鍵的凹凸、140,140A〜140D 鍵孔的凹凸、144 駆動部材/ベルト、148 ドライブプーリ、150 アイドルプーリ、154 インク熔融部囲い、158 固体インク受け口、160 熔融インク出口、164 熔融インクリザーバ、168 固体インクストッパ、170 開口、172 突起、174 規制面、176 略U字突起、178 加圧器/プランジャ、180 随時張出ストッパ、182 外面流出用開口、184 隙間、188 コントローラ、190 センサシステム、194 囲い上部側壁、198 囲い下部側壁、200,204 ヒータ、F 送給方向、L 装填方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれその装填端から熔融端へと固体インクスティックを案内又は移送する1本又は複数本の固体インク送給チャネルと、固体インク送給チャネル毎に設けられた固体インク熔融アセンブリと、を備え、
各固体インク熔融アセンブリが、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口がある囲いと、受け口・出口間に位置するよう囲いの内側に配置されたストッパと、受け口・出口間に位置するよう囲い又はストッパ若しくはその縁に形成された複数個の開口と、囲いを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度にするヒータと、を有し、
囲いの受け口付近からその囲いの受け口・出口間に位置する開口のうちいずれかを経て出口に至る熔融インク流として、囲いの内側を通る内部流及び囲いの外側を通る少なくとも1本の外部流を含め都合複数本の熔融インク流が発生する相変化インク送給システム。
【請求項2】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、各固体インク熔融アセンブリが、囲いの出口からその内側又は外側を通り流れてくるインクを受け入れるリザーバと、その設置先のリザーバを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度に保つヒータと、を有する相変化インク送給システム。
【請求項3】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、固体インク送給チャネルのうち少なくとも4本が、互いに異なるインク色に係る固体インク送給チャネルであり、当該異なるインク色に係る固体インク送給チャネルが、対応する色の固体インクスティックを受け入れうるよう、その色の固体インクスティックの形状に対し少なくとも部分的に相補的な形状の装填口を有する相変化インク送給システム。
【請求項4】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、受け口・出口間に位置するストッパ上の開口が、固体インク送給方向に対し0〜90°傾斜した柵又は格子状の開口である相変化インク送給システム。
【請求項1】
それぞれその装填端から熔融端へと固体インクスティックを案内又は移送する1本又は複数本の固体インク送給チャネルと、固体インク送給チャネル毎に設けられた固体インク熔融アセンブリと、を備え、
各固体インク熔融アセンブリが、その頂部に固体インクの受け口があり底部に熔融インクの出口がある囲いと、受け口・出口間に位置するよう囲いの内側に配置されたストッパと、受け口・出口間に位置するよう囲い又はストッパ若しくはその縁に形成された複数個の開口と、囲いを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度にするヒータと、を有し、
囲いの受け口付近からその囲いの受け口・出口間に位置する開口のうちいずれかを経て出口に至る熔融インク流として、囲いの内側を通る内部流及び囲いの外側を通る少なくとも1本の外部流を含め都合複数本の熔融インク流が発生する相変化インク送給システム。
【請求項2】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、各固体インク熔融アセンブリが、囲いの出口からその内側又は外側を通り流れてくるインクを受け入れるリザーバと、その設置先のリザーバを加熱して相変化インク熔融温度以上の温度に保つヒータと、を有する相変化インク送給システム。
【請求項3】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、固体インク送給チャネルのうち少なくとも4本が、互いに異なるインク色に係る固体インク送給チャネルであり、当該異なるインク色に係る固体インク送給チャネルが、対応する色の固体インクスティックを受け入れうるよう、その色の固体インクスティックの形状に対し少なくとも部分的に相補的な形状の装填口を有する相変化インク送給システム。
【請求項4】
請求項1記載の相変化インク送給システムであって、受け口・出口間に位置するストッパ上の開口が、固体インク送給方向に対し0〜90°傾斜した柵又は格子状の開口である相変化インク送給システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2010−173322(P2010−173322A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13902(P2010−13902)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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