説明

固体ポリマー中への抗生物質の埋込み

本発明は、ポリマー材料とその中に埋め込まれた抗菌性化合物とのみからなる抗菌性組成物を提供することを目的とする。この抗菌性化合物は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基と、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素鎖と、その第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンとを含む。本発明はまた、ポリマー材料中に埋め込まれた抗菌性化合物を含む抗菌性組成物の製造方法を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固体ポリマー中への抗生物質の埋込み。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年5月30日に出願した米国仮出願第60/940,827及び2007年6月4日に出願した同第60/941,822の利益を主張し、これらを本願に参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
抗生物質耐性の菌及びその他の微生物並びにバイオテロに対する現在の懸念は、人々を細菌感染から守る新しい方法を開発することの重要性をますます高めている。例えば、耐性菌を作り出すことのない抗菌保護をもたらす新しい固体組成物を開発することは重要である。そのような組成物は、例えば、細菌汚染が発生したか又は発生することが予測される場合に、病院で、並びに軍事作戦及び民間活動時に有用である。
【0004】
新しい抗菌性組成物の開発においては、さらなる抗生物質抵抗性を抑えることが重要である。したがって、新規な抗菌性組成物は、非特異的な非代謝的機構によって作用するのが理想的である。
【0005】
例えば、ポリカチオン性(第四級アンモニウム)繊維が、Robert Engelの研究室で開発された(Fabianら, Syn. Lett., 1007 (1997);Strekasら, Arch. Biochem. and Biophys. 364, 129-131 (1999)を参照されたい)。これらの繊維は抗菌活性を有することが報告されている。Cohenら, Heteroat. Chem. 11, 546-555 (2000)を参照されたい。
【0006】
表面に抗菌剤をコーティングすることは公知である。しかし、このコーティングは、洗い流されあるいは摩耗して、その表面が細菌から保護されなくなることが起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,376,802号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fabianら, Syn. Lett., 1007 (1997)
【非特許文献2】Strekasら, Arch. Biochem. and Biophys. 364, 129-131 (1999)
【非特許文献3】Heteroat. Chem. 11, 546-555 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
明らかに、従来公知のものよりさらに安定な、改良された新規な固体抗菌性組成物及び製品が必要である。理想的には、その組成物及び製品は、細菌に耐性を誘導させることなく、且つ長期間不変である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、室温で固体であり且つ昇温時に溶融するポリマー材料と、その中に埋め込まれた、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子をもつ少なくとも1つの炭化水素鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基及びその第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンを含む化合物とを含む、固体抗菌性組成物に関する。
【0011】
好ましい態様では、このポリマー材料は、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ナイロン、及びレーヨンからなる群から選択される。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート又はポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートであることが好ましい。このポリマー材料は、天然又は合成ゴムであることが好ましい。
【0012】
上記第四級アンモニウム基は、好ましくは以下のものである。
【0013】
【化1】

【0014】
好ましい態様では、固体抗菌性組成物は下記式(I)で表される。
-Y-X-Z-(X-Y-R) aB-c (I)
【0015】
式(I)中、Zは、修飾していない状態で1つより多い一級ヒドロキシル基を有し、その一級ヒドロキシル基の少なくとも2つがR-Y-X又はR-Y-X基によって置換されている、修飾されたポリオールを表す。Xは、1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンを表す。Y及びYは独立に、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表す。R及びRは独立に、H(水素)、ハロ(ハロゲン)、又はORを表す。Rは、H又はRを表す。Rは、-C(O)R又はRを表す。Rは、H又は最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表す。Rは、最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表す。文字nは、m−1以下の数を表し、mは上記の非修飾ポリオールの一級ヒドロキシル基の数を表す。Bはアニオンを表す。文字aは整数を表し、cは1〜3を表し、a×c=2n+2である。
【0016】
一つの好ましい態様では、上記の少なくとも1つの第四級アンモニウム基は、5又は6員環の一部であり、この環は縮合しているものではないか又は1つ又は2つの追加の縮合環を含む縮合環システムであり、この環又は縮合環システムは置換基をもたないか又は1つ以上の低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノもしくはジ低級アルキルアミノ基、又はニトロ基で置換されている。別の好ましい態様では、第四級アンモニウム基はトリメチルアンモニウム基を含む。
【0017】
本発明は、固体抗菌性組成物の製造方法にも関し、その方法は以下の工程を含む。
i)室温で固体状態にあるポリマー材料を準備する工程;
ii)そのポリマー材料を約400℃以下の温度で溶融して、溶融したポリマー材料を形成させる工程;
iii)その溶融したポリマー材料に抗菌性化合物を添加して、ポリマー材料に埋め込まれた抗菌性化合物の混合物を形成させ、
この抗菌性化合物は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、最少10個且つ最大24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素鎖、並びにその第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンとを含む、工程;並びに、
iv)上記の混合物を、それが固化するまで冷却する工程。
【0018】
ポリマー材料は、約500°F(約260℃)以下の温度に加熱して、溶融したポリマー材料を形成させることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、ポリマー材料を抗菌性組成物に変換する方法にも関し、その方法は以下の工程を含む。
i)ポリマー材料を、約400℃以下の温度で溶融して溶融したポリマー材料を形成させる工程;
ii)その溶融したポリマー材料に抗菌性化合物を添加して、ポリマー材料に埋め込まれた抗菌性化合物の混合物を形成させ、
この抗菌性化合物は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、最少10個及び最大24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素鎖、並びにその第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンとを含む、工程;並びに、
iv)上記の混合物を、それが固化するまで冷却する工程。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[詳細な説明]
本発明は、ポリマー材料とそれに埋め込まれた抗菌性化合物とのみからなる新規な抗菌性組成物に関する。
【0021】
室温で固体であり、約400℃以下の温度で溶融し且つ安定である任意のポリマー材料を、本発明で用いることができる。このポリマー材料は、溶融した場合に、約500°F(約260℃)以下の温度で安定であることが好ましい。ポリマー材料の例には、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ナイロン、及びレーヨンが含まれるが、これらに限定されない。ポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレート及びポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートが含まれるが、これらに限定されない。その他のポリマー材料には天然ゴム及び合成ゴムが含まれる。
【0022】
上記の抗菌性化合物は、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基と、その第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとる1つ以上のアニオンとを含む。
【0023】
この第四級アンモニウム基は、炭素環式鎖の一部であることができる。この鎖は直鎖状又は分枝していることができる。例えば、炭素環式鎖の一部である第四級アンモニウム基には、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、又はトリエチルアンモニウム基が含まれていてよい。例には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリエチルアンモニウム、ジ(ドデシル)ジメチルアンモニウム、ジ(プロピルデシル)ジエチルアンモニウム(例えば、5,6-ジ-n-プロピルデシルジエチルアンモニウム)、及びジ(ヘプタデシル)ジプロピルアンモニウムが含まれる。
【0024】
1つの窒素原子を含む非環状化合物の例は、(Y)-N-(Y-R)(式中、p及びrは、p+r=4となる1〜3の整数を表す)である。Yは、最少1個の炭素原子及び最大6個の炭素原子をもつ炭化水素基を表す。Yは、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表す。Rは独立に、H、ハロ、又はORを表す。ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを表す。RはH又はRを表す。Rは、-C(O)R又はRを表す。RはH又は炭化水素基を表し、Rは最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表す。
【0025】
本明細書では、炭化水素基と炭化水素鎖との間を区別する。炭化水素基はただ一つの末端で別の化学基と結合している。炭化水素鎖は各末端で独立に別の化学基、例えば、基と又は原子と結合している。
【0026】
基又は鎖の炭素原子は全て飽和であるか、又は全て不飽和であることができる。あるいは、鎖は、飽和及び不飽和の炭素原子を混合して含むことができる。不飽和炭化水素鎖は、1以上の二重結合及び/又は三重結合を含む。
【0027】
飽和C10〜C24炭化水素鎖のいくつかの例には、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシル鎖が含まれる。不飽和C10〜C24炭化水素のいくつかの例には、オレイル、リノレイル、及びリノレニル、特に、シス-オレイル、シス,シス-リノレイル、及びシス,シス,シス-リノレニル鎖が含まれる。
【0028】
2個の窒素原子を含む非環状化合物の例を以下に示す。
【0029】
【化2】

【0030】
式中、Y、R、及びYは上述したとおりである。
【0031】
第四級アンモニウム基は、環、例えば、5又は6員環の一部であってもよい。この環は、縮合していないか、又は1又は2つの追加の縮合環を含む縮合環システムの一部であることができる。この環又は縮合環システムは、非置換であるか、又は1つ以上の、低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノもしくはジ(低級アルキル)アミノ、又はニトロ基で置換されていることができる。任意の環が芳香族又は非芳香族であってよい。
【0032】
非縮合環システム中の5又は6員環の例には、ピリジニウム、ピロリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、又はジピペラジニウムカチオンが含まれるが、これらに限定されない。縮合環システム中の5又は6員環の例には、インドリニウム、キノリニウム、又はイソキノリニウムカチオンが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
1個の窒素原子を含む環状化合物の例は以下のものである。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、sは独立に0又は1を表し、tはs+t=2となるように1又は2を独立に表す。
【0036】
2個の窒素原子を含む環状化合物の例を以下に示す。
【0037】
【化4】

【0038】
Yは、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表す。Yは上述したとおりである。Rは、H、ハロ、又はORを表す。Rは上述したとおりである。
【0039】
好ましくは、第四級アンモニウム基は、架橋環システム、例えば、以下に示す1-アザニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(II)又は1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン(III)、の一部である。
【0040】
【化5】

【0041】
加えて、この抗菌性化合物は、第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンを含む。このアニオンは一価、二価、又は三価に帯電していてよい。アニオンのいくつかの例には、一価アニオン、例えば、ハロゲンイオン(例えば、F、Cl、Br、及びI)、OH、NO、及びH;より好ましくはハロゲンイオン及びOH;二価アニオン、例えば、S−2、CO−2、SO−2;及び三価アニオン、例えば、PO−3及びPO−3、が含まれる。
【0042】
文字aB−cは、電荷が中性の化合物を保つために必要なアニオンの数及び特性を表す。Bは、1〜3の価数(c)を有する任意のアニオンを表す。
【0043】
文字aは、この化合物の全体の電荷が中性となる整数を表す。例えば、この化合物が2価のカチオンを含み、且つBがClである場合は、aは2であり、cは1である。別の例では、この化合物が2価のカチオンを含み、且つBがS−2である場合は、aは1であり、cは2である。
【0044】
好ましい態様では、抗菌性化合物は下記式(I)で表される。
-Y-X-Z-(X-Y-R) aB−c (I)
【0045】
Zは、修飾されていない状態において1つより多い一級ヒドロキシル基を有する、修飾されたポリオールを表し、その一級ヒドロキシル基の少なくとも2つがR-Y-X又はR-Y-X基によって置き換えられている。この修飾されていないポリオールは、1つより多い一級水酸基を有する任意の分子であることができる。この修飾されていないポリオールは、例えば、アルカンポリオール、ポリエーテル、炭水化物、又はタンパク質であってよい。
【0046】
本発明のアルカンポリオールは、最少2個の炭素原子且つ最大12個の炭素原子と少なくとも2つの一級ヒドロキシル基とをもつアルカンである。アルカンポリオールのいくつかの例には、グリセロール;マンニトール;エチレングリコール;1,5-ペンタンジオール;1,2,3,4,5,6,7,8-オクタンオクトール;1,6,12-ドデカントリオール;及び3-メタノールイル-1,6-ヘキサンヘキソールが含まれる。
【0047】
修飾されていないポリオールはポリエーテルであることができる。本明細書では、ポリエーテルとは、少なくとも2つの一級ヒドロキシル基を有し、最少1個且つ最大で約10000、好ましくは約1000、より好ましくは約100、最も好ましくは約10のエーテル基を有する分子をいう。ポリエーテルのいくつかの例には、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが含まれる。
【0048】
炭水化物には、糖類、例えば、単糖類、オリゴ糖類、及び多糖類が含まれる。オリゴ糖類中の糖単位の最小値は2である。オリゴ糖類中の糖単位の最大数は、典型的には12、好ましくは10である。
【0049】
多糖類は12より多い糖を有し、数千単位、例えば、最大約10000の単位を有していてもよい。本明細書では、多糖類とは、(+)-グルコースのポリマーをいい、セルロース、澱粉、及びグリコーゲンが含まれる。糖類は、D又はL配置のいずれかであることができ、糖単位はアルドース又はケトースであることができる。
【0050】
糖単位中の炭素の数は、3炭素〜約6炭素であることができる。三炭糖の例は、グリセルアルデヒドである。四炭糖の例には、エリスロース及びトレオースが含まれる。五炭糖の例には、リボース、アラビノース、キシロース、及びリキソースが含まれる。六炭糖の例には、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、及びタロースが含まれる。これらの糖類の全てには、対応する2’-デオキシ誘導体がさらに含まれる。
【0051】
ポリオールは、一級ヒドロキシル基をもつ少なくとも2つのアミノ酸を有するポリアミノ酸であることができる。ポリアミノ酸にはオリゴペプチド及びタンパク質が含まれる。オリゴペプチドは2〜12のアミノ酸残基を有する。典型的には、タンパク質は、12アミノ酸残基よりも多く、約1000以下のアミノ酸残基を有する。
【0052】
式I中の文字Xは、1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンを表す。
【0053】
及びYは独立に、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表す。Y及びYは、炭化水素鎖(複数)の混合を表すことが好ましい。
【0054】
及びYの好ましい鎖長は、12、14、16、又は18個の炭素原子である。一つの例示の態様では、炭化水素鎖の混合したものは、12個の炭素原子を有する鎖と、16個の炭素原子を有する鎖とを含む。例えば、少なくとも25%の炭化水素鎖が12個の炭素原子を有してもよく、且つ少なくとも25%の炭化水素鎖が16個の炭素原子を有していてもよい。別の例では、少なくとも75%の炭化水素鎖が12個の炭素原子又は16個の炭素原子を有していてもよい。同様にして、少なくとも90%の炭化水素鎖が12個の炭素原子又は16個の炭素原子を有していてもよい。
【0055】
及びRは独立して、H、ハロ、又はORを表す。ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを表す。RはH又はRを表す。Rは-C(O)R又はRを表す。RはH又は炭化水素基を表し、Rは最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表す。
【0056】
式I中の文字nは、R-Y-X又はR-Y-Xによって置き換えられた水酸基の数を表し、0より大きく且つm−1以下であってよく、mは修飾されていないポリオールZにおける一級ヒドロキシル基の数を表す。mの最小値は2、好ましくは4、より好ましくは6である。mの最大値はポリオールの種類に左右される。
【0057】
炭水化物は、数千の糖単位を含むことができる。各糖単位は、典型的には、1つの一級ヒドロキシル基を含む。典型的には、炭水化物については、mは10000を超えるべきではない。
【0058】
タンパク質は1000アミノ酸残基、しばしばそれより多いアミノ酸残基を含むことができる。典型的なタンパク質は約300アミノ酸残基を含む。20種の天然アミノ酸のうち、セリンだけが一級ヒドロキシル基を含む。典型的には、mはタンパク質については200以下である。
【0059】
本発明のアルカンポリオールは最少2個の炭素原子且つ最大12個の炭素原子と、少なくとも2つの一級ヒドロキシル基とを含む。典型的には、mは、本発明のアルカンポリオールに対しては8以下である。
【0060】
例えば、Zが2,3-ヒドロキシメチル-1,4-ブタンジオールである場合、このアルカンポリオールは4つのヒドロキシル基を含む。そのmの値は4であり、nは3以下のいずれかの数であってよい。2,3-ヒドロキシメチル-1,4-ブタンジオールに対する抗菌性組成物は、例えば、nが2の値を有する。
【0061】
材料の表面の利用可能な一級ヒドロキシル部位の全てが活性化される必要はない。例えば、表面の利用可能なヒドロキシル基の約10%未満が活性化されて、それによって充分な抗菌活性をもたらすことができる。利用可能なヒドロキシル基の約25%が活性化されることが好ましく、利用可能なヒドロキシル基のより好ましくは約50%、最も好ましくは約75%が活性化されてよい。
【0062】
例えば、Zが2000のグルコース単位を含む炭水化物である場合、mは2000であり、nは1999以下の任意の数であってよい。2000単位の炭水化物に対する抗菌性組成物は、例えば、nの値が1500であってよい。
【0063】
別の例では、Zが300のアミノ酸残基を含むタンパク質であり、そのうちの15がセリンである場合、mは15であり、nは14以下の任意の数であってよい。300残基のタンパク質に対する抗菌性組成物は、例えば、nの値が7であってよい。
【0064】
a、B、及びcの文字は上述したとおりである。式Iにおいては、電荷が中性の化合物を維持するために、a×c=2n+2である。
【0065】
[ヒドロキシル基の置換]
本発明の化合物の合成において有用な、修飾されていないポリオール中のヒドロキシル基は、上述した第四級アンモニウム基のいずれかを形成するため、第三級アミンによって置換するために活性化されることができる。いくつかの好適な第三級アミンには、Y-N(CH)又はY-N(CH)-Y(式中Yは、Y、Y、又はYである)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、あるいは1-アゾニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタンが含まれる。
【0066】
ヒドロキシル基の活性化は、当分野で公知の方法によって行なうことができる。好適な方法には、例えば、ヒドロキシル基を求電子性脱離基に変換することが含まれる。好適な求電子性脱離基には、例えば、ハロ基(ハロゲン基)又は活性エステル基が含まれる。
【0067】
いくつかの好適なハロゲン基には、クロロ及びブロモが含まれる。ヒドロキシル基は、例えば、塩化チオニル又は三臭化リンでの処理によってそれぞれクロロ又はブロモに変換できる。
【0068】
好適なエステル脱離基にはスルホン酸エステル類が含まれる。ヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を、好適な試薬、例えば、スルホニルクロライドで、好適な媒体中で処理することによってスルホン酸エステルに変換できる。好適なスルホニルクロライドには、例えば、ベンゼンスルホニルクロライド、p-トルエンスルホニルクロライド、及びメタンスルホニルクロライドが含まれる。この反応のために好適な媒体には、ピリジン、ヘキサン、ヘプタン、エーテル、トルエン、酢酸エチル、及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0069】
上述した試薬の量、好適な媒体の体積、及びその他の反応条件は、当業者には公知である。
【0070】
活性化されたポリオールは、次に、脱離基が第三級アミンの窒素原子によって置換されることを引き起こす条件下で、好適な第三級アミンで処理される。そのような条件は当分野で周知である。
【0071】
得られたポリオールは、本発明の修飾されたポリオールである。
【0072】
[抗菌活性]
本発明の埋込型ポリマー材料は、抗菌性を示す。この明細書では、抗菌性とは、単細胞生物、例えば、細菌、菌類、藻類、及び酵母、並びにカビの増殖を抑える能力をいう。
【0073】
細菌には、グラム陽性及びグラム陰性菌の両方が含まれる。グラム陽性菌のいくつかの例には、例えば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococus aureus)が含まれる。グラム陰性菌のいくつかの例には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター・アエロゲンス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、及びプロテウス・バルガリス(Proteus vulgaris)が含まれる。酵母株には、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0074】
そのような作用の特に有利な点は、抗菌剤の消費がないことである。さらに、この抗菌性は非特異的且つ非代謝性である。したがって、微生物の耐性株を促すおそれが低い。
【0075】
[抗菌性製品]
本発明のポリマー組成物は、抗菌活性を有することによって利益のある多数の製品を作るために用いることができる。そのような抗菌性製品は、抗菌活性によって利益のありうる任意の有用な表面に埋め込むことができる。有用な製品のいくつかの例には、作業面、例えば、車両の、公共及び私用の設備の、商取引場所の、家庭の、工場の、オフィスの、及びその他の設備の作業面を含み、また、壁、床、家具、及び備品、並びに冷暖房空調設備(HVAC)、配管、及びその他の設備を含み、布地及び織物の作業面、建材、セルロース及び紙製品、また、医療物品及び私用物品の作業面が含まれ、個人医療のための、及び衣料の様々な物品のための、及びその他の用途のための製品が含まれるがこれらに限定されない。
【0076】
抗菌性化合物がその中に埋め込まれることができるポリマー材料から作られた製品のさらに特定の例には、家具、ペトリ皿、衣類、カウンター甲板(カウンタートップ)、コンドーム、テント、シャワーカーテン、ブラシ、おもちゃ、床材、体操器具(マットを含む)、温水浴槽、食品及び飲料の容器、プラスチックバッグ、まな板、便座、動物運搬具、猫用トイレ、ドアマット、プールの裏打ち、粘着救急絆、電話、キーボード、靴、及びインソールが含まれるがこれらに限定されない。
【0077】
好ましい態様では、上記抗菌性化合物は、ファイバー、ヤーン、又は布帛(ファブリック)に埋め込まれる。好ましくは、ファイバー、ヤーン、又は布帛は、繊維の形態において埋め込まれる。ファイバー、ヤーン、及び布帛は、天然、合成、又はそれらの混合であってよい。天然のファイバー、ヤーン、及び布帛のいくつかの例には、綿、絹、及びウール、又はそれらのブレンドが含まれる。合成のファイバー、ヤーン、及び布帛のいくつかの例には、ポリオレフィン、レーヨン、ナイロン、アクリレート、及びメタクリレート、又はそれらのブレンド物が含まれる。基材は、織物、ニット、又は加工した「繊維」(web)、すなわち、形成した不織布であってよい。
【0078】
[埋込の方法]
抗菌性化合物は、当分野で公知の方法によってポリマー材料に埋め込むことができる。一つの態様では、本発明は、室温で固体状態のポリマー材料(例えば、上述したもの)を準備する工程;そのポリマー材料を約400℃以下の温度で溶融して溶融ポリマー材料を形成させる工程;その溶融したポリマー材料に上述した抗菌性化合物を添加して、そのポリマー材料中にその化合物が埋め込まれた混合物を形成させる工程;及び、その混合物をそれが固化するまで冷却する工程、による抗菌性組成物の製造方法に関する。ポリマー材料は約500°F(約260℃)以下の温度に加熱することが好ましい。抗菌性化合物は、任意の好適な方法によって、溶融したポリマー材料に添加することができる。例えば、抗菌性化合物は、ポリマー材料を溶融する前又は後にそのポリマー材料の表面に適用しても、あるいは抗菌性化合物を溶融ポリマー材料中に注入してもよい。全てのその他の工程は上述したとおりである。
【0079】
ポリマー材料は、任意に公知の方法で加熱してよい。好ましい方法には、対流式加熱、マイクロ波加熱、及び接触加熱が含まれる。
【0080】
ポリマー材料及び埋め込まれる化合物は上述したとおりである。ポリマー材料は溶融し、その時、化合物をその中に分散できるように充分に流動性である。
【0081】
上記化合物は、ポリマー材料中に均一に分散してよい。あるいは上記化合物は、ポリマー材料の表面を覆う領域に濃縮されていてもよい。
【0082】
例えば、固体ポリマー材料の加熱は、例えばオーブン中で制御でき、それによってその材料の外側部の5%以下、10%以下、25%以下、又は50%以下だけが溶かされる。次に、抗菌性化合物がその溶融材料に添加される。ひとたびポリマー材料が冷却され且つ固化されたら、その材料の表面及びその材料の表面を覆う領域が抗菌性になる。
【0083】
抗菌性化合物は、当分野で公知の方法によって溶融される前又は後に、ポリマー材料に適用されてもよい。例えば、抗菌性化合物は、ポリマー材料に適用される溶液中に存在することができる。この溶液を、公知の方法、例えば、塗布、スプレー、ヘラによる適用、洗濯用機器による適用、染色機械上での排出、又は浸漬によってポリマー材料に適用することができる。
【0084】
上記抗菌性の溶液は、処理した製品の価値すなわち性能を高めるために、バインダーシステム又はその他の補助化学物質を任意選択によって含んでいてもよい。バインダーシステムの例には、アクリル類及びウレタン類が含まれる。補助化学物質の例には、光、洗濯、又は製品の後処理に対する耐久性を高めるために利用される化合物;並びに、撥水性、難燃性及び防火性、静電防止、及びその他の特性を製品に付与するために利用される化合物、が含まれる。そのような化合物には、シリカ、カーボン、及びガラスファイバーが含まれる。
【0085】
上記の抗菌性化合物は、当分野で公知の方法による布帛形成工程の間のいつでもポリマー材料に適用できる。特に、抗菌性化合物は、ヤーン、すなわち、ポリマー材料に、それがペレット形態にある時あるいは押出工程時に導入してよい。抗菌性化合物は、ヤーンから織物が形成されるとき、あるいは布帛が完全に形成された後に導入することもできる。
【0086】
一つの態様では、抗菌性化合物は、当分野で公知に方法によって、ファイバー、ヤーン、又は布帛形成工程時に布帛に導入される。例えば米国特許第4,376,802号明細書に記載された方法では、ヤーンは、硬化剤含有ファイバー仕上剤で処理され、コードにより合わされ、次に織られて、その処理されたコードを利用した布帛が作られる。織られた布帛は、有効な時間、好ましくは1〜1.5分間、組成物が、ファイバーに損傷を与えることなく布帛を固めることを引き起こす温度に曝される。この温度は、好ましくは、少なくとも約171℃(340°F)から最高約240℃(464°F)である。米国特許第4,376,802号明細書の第1欄31行〜第3欄12行に記載された布帛形成方法を参照により本願に援用する。
【0087】
本発明の抗菌性組成物は、米国特許第4,376,802号明細書に記載された布帛形成工程において、その加熱工程の直前又は直後のいずれかに適用してよい。布帛は、ポリマー繊維が溶融して溶融したポリマー材料を作るために充分に高い温度に加熱される必要がある。布帛は次に冷却されてポリマー材料が固化する。
【0088】
抗菌性化合物は、染色工程で布帛又は生地に導入されてもよい。例えば、この抗菌剤は、米国特許第4,376,802号明細書に記載されたサーマゾルプロセス(Thermasol Process)時に添加してもよい。このサーマゾルプロセスの工程は、米国特許第4,376,802号明細書の第2欄54行〜第3欄12行に列挙されており、以下を含む:
1)140°F(60℃)以下の温度で、分散染料に押しつける(pad)。
2)染料を含浸させた生地を赤外線予備乾燥器に通す。
3)エアー式乾燥機内で230〜250°F(110℃〜130℃)で乾燥させる。
4)374〜430°F(190〜221℃)で2分間、サーマゾル・オーブン(Thermasol oven)を通す。
5)2gplの水酸化ナトリウム及び2gplのハイドロサルファイトナトリウム80°F(27℃)に押しつける。
6)2〜8分間スチームに当てる。
7)205〜212°F(96〜100℃)にて合成洗剤を用いて2ボックス以上洗浄する。
8)熱水濯ぎ205〜212°F。
9)5gpl酢酸(56%)の冷たい溶液中で濯ぐ。
10)ホットエアーオーブン及び/又はスチーム缶250°F(130℃)中で乾燥させる。
【0089】
サーマゾル法において、本発明の抗菌性組成物は、工程4)の直前又は直後に添加してよく、布帛又は生地は374〜430℃である。
【0090】
最終製品の価値は、埋め込まれた抗菌分子を有することによって高められる。好ましい態様では、最終製品は布帛又は織物である。例えば、最終製品は、織ったもの、織っていないもの、ニット、又はそれらのブレンド物であってよい。最終製品は、合成繊維、天然繊維、またはそれらのブレンド物を含むことができる。例えば、最終製品は、衣類、例えば綿/ポリエステルブレンドで作られた、シャツ、ズボン、スカート、ジャケット、又はコート、例えば、実験室用上着であってよい。別の態様では、製品には、熱可塑性ヤーン、天然ヤーン、又はそれらの組み合わせが含まれうる。
【0091】
この明細書において、複数の要素を含む様々なパラメータのグループを記載している。一群のパラメータ内で、各要素はいずれか1つ以上のその他の要素と組み合わせて追加のサブグループを作ることができる。例えば、グループの要素がa、b、c、d、及びeである場合、具体的に考えられる追加のサブグループは、前記の要素のいずれか2つ、3つ、又は4つ、例えば、a及びc;a、d、及びe;b、c、d、及びe;などを含む。
【0092】
いくつかの場合には、パラメータの第一のグループの要素、例えば、a、b、c、d、及びeは、パラメータの第二のグループの要素、例えば、A、B、C、D、及びEと組み合わせることができる。第一のグループ又はそのサブグループのいずれかの要素は、第二のグループ又はそのサブグループのいずれかの要素と組み合わせて、追加のグループ、すなわち、bとC;a及びcとB、D、及びE、などを構成することができる。
【0093】
例えば、本発明においては、様々なパラメータのグループが定義されている(例えば、R、R、R、R、R、R、Y、及びY)。各グループは複数の要素を含んでいる。例えば、Rは、H、ハロ、又はORを表す。各要素は、それぞれ別の要素と組み合わされて、追加のサブグループ、例えば、H及びハロ、H及びOR、並びにハロ及びORを構成することができる。
【0094】
本発明は、1つのグループのもとで列挙された各要素が、いずれか別のグループのもとで列挙されたそれぞれの及び全ての要素と組み合わされることができる態様をさらに意図している。例えば、Y及びYは独立して、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表すものとして上で特定されている。R及びRは独立して、H、ハロ、又はORを表すものとして上で特定されている。Y及びYの各要素(最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖)は、R及びR(H、ハロ、又はOR)のそれぞれの及び全ての要素と組み合わせることができる。例えば、1つの態様では、Yは16個の炭素原子の鎖であってよく;Yは12個の炭素原子の鎖であってよく;RはClであってよく;且つ、RはHであってよい。あるいは、Yは18個の炭素原子の鎖であってよく;Yは24個の炭素原子の鎖であってよく;RはORであってよく;且つ、RはBrであってよい、等。同様に、第三のグループはRであり、Rでは要素はH又はRとして定義されている。上の態様のそれぞれは、Rのそれぞれ及び全ての要素と組み合わせることができる。例えば、Yが14個の炭素原子の鎖であり;Yが20個の炭素原子の鎖であり;RがHであり;且つRがORである態様では、RはH(又はRの要素のうちのいずれかの別の化学基)であることができる。
【0095】
本発明の化合物は、化学的に実施可能且つ安定であるものに限定される。したがって、上述した化合物における置換基又は変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な又は化学的に実施可能な化合物をもたらす場合にのみ許容される。安定な化合物又は化学的に実施可能な化合物とは、その化学構造が、少なくとも1週間、湿気又はその他の化学的に反応性の条件の非存在下で、40℃以下に保った場合に、実質的に変わらない化合物である。
【0096】
「含む」の文言に続く列挙は、包含的又は限定のないものであり、すなわち、その列挙は追加の記載されていない要素を含んでも、含まなくてもよい。「のみからなる」の文言に続く列挙は、包含的又は限定されており、すなわち、その列挙はその列挙で特定されていない全ての要素を排除する。
【0097】
本明細書中の全ての数は、他に示されていない限り概略値である。
【0098】
化合物又は化学組成物を用いる、状態、疾患、又は病気の治療方法には、その状態、疾患、又は病気の治療のための医薬の製造におけるその化合物又は化学組成物の使用が含まれる。状態、疾患、又は病気の治療において有効であるといわれた化合物又は化合物群には、その状態、疾患、又は病気の治療において用いるための化合物又は化合物群が含まれる。
【実施例】
【0099】
[実施例1 ポリエステル布帛への、修飾したDABCO洗浄剤の適用]
薬剤としてビス-1’,3’-(1-ヘキサデシル)-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-2’-プロパノールテトラクロライドを水溶液にし(10質量%の薬剤)、処理するポリエステルをこの溶液で飽和させた。このポリエステル布帛をローラーで加圧して過剰の液体を除去し、次に400°F(204℃)で30秒間加熱してポリエステル材料の溶解を起こさせ、次に常温まで冷却した。
【0100】
[実施例2 PVC中のDABCOの調製]
仕上げのために調製し且つ350°Fに加熱したPVCの製剤に、仕上げた表面1平方メートル当たり10gの量で薬剤としてビス-1’,3’-(1-ヘキサデシル)-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-2’-プロパノールテトラクロライドを添加する。試料を加圧し、冷却した後、その表面は抗菌性だった。
【0101】
[実施例3 埋込みされたポリエステルの抗菌性評価]
3種のポリエステル布帛に、ビス-1’,3’-(1-ヘキサデシル)-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-2’-プロパノールテトラクロライドを埋め込む。Gar社によって供給された3種のポリエステルサンプル〔a)「144×90」、b)ポリエステルと5%のライクラである「スパンデックス」、及びc)「ダーリントン(Darlington)」〕を試験した。各布帛サンプルを、無機塩寒天培地の上に置き、次に、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococus aureus)又は大腸菌(Escherichia coli)のいずれかを植菌した。植菌した試験体を、細菌増殖に充分な時間を可能にするために、次に28℃で28日間インキュベートする。この布帛サンプルは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococus aureus)及び大腸菌(Escherichia coli)の両方の完全な殺菌を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)室温で固体であり且つ昇温時に溶融するポリマー材料と、その中に埋め込まれた、
b)最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子をもつ少なくとも1つの炭化水素鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基及びその第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンを含む化合物、
とを含む、固体抗菌性組成物。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ナイロン、及びレーヨンからなる群から選択される、請求項1記載の固体抗菌性組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート及びポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートからなる群から選択される、請求項2に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項4】
前記ポリマー材料が天然又は合成ゴムである、請求項1に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項5】
前記第四級アンモニウム基が、
【化1】

である、請求項1に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項6】
前記化合物が下記式(I):
-Y-X-Z-(X-Y-R) aB-c (I)
〔式(I)中、Zは、修飾していない状態で1つより多い一級ヒドロキシル基を有し、前記一級ヒドロキシル基の少なくとも2つがR-Y-X又はR-Y-X基によって置換されている、修飾されたポリオールを表し;
Xは、1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンを表し;
及びYは独立に、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表し;
及びRは独立に、H(水素)、ハロ(ハロゲン)、又はORを表し;
は、H又はRを表し;
は、-C(O)R又はRを表し;
は、H、又は最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表し;Rは、最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表し;
nは、m−1以下の数を表し、mは前記非修飾ポリオールの一級ヒドロキシル基の数を表し;
Bはアニオンを表し;
aは整数を表し;且つ
cは1〜3を表し;a×c=2n+2である。〕
で表される、請求項1に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項7】
前記ポリオールがアルカンポリオールである、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項8】
前記アルカンポリオールが、グリセロール、マンニトール、又はエチレングリコールである、請求項7に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項9】
前記ポリオールがポリエーテルである、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項10】
前記ポリエーテルがポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである、請求項9に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項11】
前記ポリオールが炭水化物である、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項12】
前記ポリオールがタンパク質である、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項13】
及びYが、12、14、16、又は18個の炭素原子を有する炭化水素鎖を含む、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項14】
及びYが炭化水素鎖(複数)の混合を表す、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項15】
前記の炭化水素鎖の混合したものが、12個の炭素原子を有する炭化水素鎖と、16個の炭素原子を有する炭化水素鎖とを含む、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項16】
少なくとも25%の前記炭化水素鎖が12個の炭素原子を有し、且つ少なくとも25%の前記炭化水素鎖が16個の炭素原子を有する、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項17】
少なくとも75%の前記炭化水素鎖が12個の炭素原子又は16個の炭素原子を有する、請求項6記載の固体抗菌性組成物。
【請求項18】
少なくとも90%の前記炭化水素鎖が12個の炭素原子又は16個の炭素原子を有する、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項19】
及びRが独立して、H、Cl、又はOHを表す、請求項6に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項20】
及びRがHを表す、請求項19に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの第四級アンモニウム基が5又は6員環の一部であり、前記環は縮合しているものではないか又は1つ又は2つの追加の縮合環を含む縮合環システムであり、且つ前記環又は縮合環システムが置換基をもたないか又は1つ以上の低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノもしくはジ低級アルキルアミノ基、又はニトロ基で置換されている、請求項1に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項22】
前記5又は6員環が、ピリジニウム、ピロリウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、及びジピペラジニウムカチオンからなる群から選択された非縮合環システムである、請求項21に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項23】
前記5又は6員環が、インドリニウム、キノリニウム、及びイソキノリニウムカチオンからなる群から選択された縮合環システムである、請求項21に記載の固体抗菌性組成物。
【請求項24】
前記第四級アンモニウム基がトリメチルアンモニウム基を含む、請求項1記載の固体抗菌性組成物。
【請求項25】
i)室温で固体状態にあるポリマー材料を準備する工程;
ii)前記ポリマー材料を約400℃以下の温度で溶融して、溶融したポリマー材料を形成させる工程;
iii)前記の溶融したポリマー材料に抗菌性化合物を添加して、前記ポリマー材料に埋め込まれた前記抗菌性化合物の混合物を形成させ、
前記抗菌性化合物が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、最少10個且つ最大24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素鎖、並びに前記第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンとを含む、工程;並びに、
iv)前記混合物を、それが固化するまで冷却する工程、
を含む、固体抗菌性組成物の製造方法。
【請求項26】
前記抗菌性化合物が下記式(I)で表される、請求項25に記載の製造方法。
-Y-X-Z-(X-Y-R) aB−c (I)
(式中、
Zは、修飾されていない状態において1つより多い一級ヒドロキシル基を有する、修飾されたポリオールを表し、前記一級ヒドロキシル基の少なくとも2つがR-Y-X又はR-Y-X基によって置き換えられており;
Xは、1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンを表し;
及びYは独立に、最少10個の炭素原子且つ最大24個の炭素原子を含む炭化水素鎖を表し;
及びRは独立して、H、ハロ、又はORを表し;
はH又はRを表し;
は-C(O)R又はRを表し;
はH、又は最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表し;
は最少1個の炭素原子且つ最大4個の炭素原子を含む炭化水素基を表し;
nはm−1以下の数を表し、mは前記の修飾されていないポリオールの一級ヒドロキシル基の数を表し;
Bはアニオンを表し;
aは整数を表し;且つ
cは1〜3を表し、a×c=2n+2である。)
【請求項27】
前記の少なくとも1つの第四級アンモニウム基が5又は6員環の一部であり、前記環は縮合していないか又は1又は2つの追加の縮合環を含む縮合環システムの一部であり、前記環又は縮合環システムは非置換であるか、又は1つ以上の、低級アルキル、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、低級アルキルアミノもしくはジ(低級アルキル)アミノ、又はニトロ基で置換されている、請求項25に記載の製造方法。
【請求項28】
前記の少なくとも1つの第四級アンモニウム基が非環式鎖の一部である、請求項25に記載の製造方法。
【請求項29】
i)ポリマー材料を、約400℃以下の温度で溶融して、溶融したポリマー材料を形成させる工程;
ii)前記の溶融したポリマー材料に抗菌性化合物を添加して、前記ポリマー材料に埋め込まれた前記抗菌性化合物の混合物を形成させ、
前記抗菌性化合物が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基と、最少10個及び最大24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素鎖と、前記第四級アンモニウム基の電荷と釣り合いをとるための1つ以上のアニオンとを含む、工程;並びに、
iv)前記の混合物を、それが固化するまで冷却する工程、
を含む、ポリマー材料を抗菌性組成物に変換する方法。
【請求項30】
前記ポリマー材料を加熱して溶融されたポリマー材料を形成させる前に、前記抗菌性化合物を前記ポリマー材料の表面に適用する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマー材料を加熱して溶融されたポリマー材料を形成させた後に、前記抗菌性化合物を前記ポリマー材料の表面に適用する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記抗菌性化合物を前記の溶融したポリマー材料中に注入する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリマー材料を約500°F(約260℃)以下の温度で溶融させて、溶融したポリマー材料を形成させる、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー材料を加熱して溶融されたポリマー材料を形成させる前に、前記ポリマー材料の表面に前記抗菌性化合物を適用する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマー材料を加熱して溶融されたポリマー材料を形成させた後に、前記ポリマー材料の表面に前記抗菌性化合物を適用する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記の溶融されたポリマー材料中に前記抗菌性化合物を注入する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリマー材料を約500°F(約260℃)以下の温度で溶融して、溶融されたポリマー材料を形成させる、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2010−529228(P2010−529228A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510357(P2010−510357)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/006874
【国際公開番号】WO2008/150460
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【出願人】(509330275)ペース・ユニヴァーシティー (1)
【出願人】(504373657)ロング アイランド ユニヴァーシティ (2)
【出願人】(509330286)
【Fターム(参考)】