説明

固体酸化物型燃料電池及びその製造方法

【課題】炭化水素系ガスの水素ガスへの改質効率に優れた内部改質型の固体酸化物型燃料電池、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の固体酸化物型燃料電池は、酸素イオン導電性を有する固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の主面側に形成された、第1の金属粒子を分散担持してなる第1の酸化物セラミック粒子を含む燃料極と、前記固体電解質層の他方の主面側に形成された空気極と、前記燃料極の、前記固体電解質と反対側に位置する主面上において、集電体を介して形成された、第2の金属粒子を分散担持してなる第2の酸化物セラミック粒子を含む改質層と、を具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固体酸化物型燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、その高い作動温度(700〜1000℃)に起因してセル内部に働く抵抗を小さくでき、高い発電効率と少ないCO発生量を実現できる次世代のクリーンな発電システムとして期待されている。
【0003】
SOFCの燃料としては一般に水素ガスと酸素ガスとが用いられるが、水素ガスを直接燃料として用いた場合、実用レベルのSOFCにおいては巨大な水素ガスタンクが必要となることから、近年では、炭化水素系ガスを水素ガスに改質し、このように改質して得た水素ガスをSOFCの燃料として供給することが行われている。
【0004】
炭化水素系ガスの改質は、従来、外部改質器を用いて行われていたが、近年においては、SOFCの燃料極に改質機能を付加し、SOFC自体で改質を行う試みがなされている。このような内部改質型SOFCでは、吸熱反応である炭化水素系ガスの改質反応に発電時の発熱を有効に利用できる。しかしながら、一般的に使用されるサーメット燃料極では電極触媒となる金属が電極内の電子導電パスにもなるため金属粒子はある程度の大きさが必要であり、電極中の金属体積に比較して表面積は小さくなり、燃料極自体に十分な燃料改質触媒能を持たせることが困難である。
【0005】
また、燃料ガス入口付近と出口付近で温度勾配やガス組成が大きく異なることにより燃料極に使用されている金属が酸化されて改質活性および電極触媒活性が急激に低下するといった問題もある。このため、炭化水素系燃料を用いるSOFCでは、現状においても、外部改質器で炭化水素系ガスの大部分を改質し、残りを内部で改質するように設計されたものが多い。
【0006】
また、炭化水素系燃料の改質に有効な別の金属を燃料極中に添加するなどの方法も取られている。例えば、燃料極の骨格を構成する電子・イオン導電性の酸化物粒子の表面にニッケル粒子を分散担持させる方法や、還元析出触媒を用いて、複合酸化物から電極として機能する金属粒子を析出させる方法などが開示されている。
【0007】
しかしながら、前者の方法では、ニッケル粒子が凝集してしまい、燃料改質触媒能を有するような小径のニッケル粒子を得ることが困難であり、後者の方法では、改質に十分な量の触媒を電極内に含有させると還元析出後に形成する酸化物に起因してオーム抵抗が増加してしまい、SOFC自体の機能を劣化させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−64640号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Electrochem.Soc.,141,[2],342−346,1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、炭化水素系ガスの水素ガスへの改質効率に優れた内部改質型の固体酸化物型燃料電池及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸素イオン導電性を有する固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の主面側に形成された、第1の金属粒子を分散担持してなる第1の酸化物セラミック粒子を含む燃料極と、前記固体電解質層の他方の主面側に形成された空気極と、前記燃料極の、前記固体電解質と反対側に位置する主面上において、集電体を介して形成された、第2の金属粒子を分散担持してなる第2の酸化物セラミック粒子を含む改質層と、を具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭化水素系ガスの水素ガスへの改質効率に優れた内部改質型の固体酸化物型燃料電池及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における固体酸化物型燃料電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す固体酸化物型燃料電池の一部を拡大して示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(固体酸化物型燃料電池)
図1は、本実施形態における固体酸化物型燃料電池の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1に示す固体酸化物型燃料電池の一部を拡大して示す概略構成図である。
【0016】
図1に示す固体酸化物型燃料電池10は、酸素イオン導電性を呈する固体電解質層11と、この固体電解質層11の主面11A側に形成された燃料極12と、固体電解質層11の、主面11Aと相対する主面11B側に形成された空気極13とを有する。また、燃料極12及び空気極13それぞれの、固体電解質層11と反対側の主面12A及び13A側には、それぞれ集電体15及び16が形成されている。さらに、集電体15の、固体電解質11と反対側の主面15A上には改質層17が形成されている。したがって、固体酸化物型燃料電池10は、いわゆる内部改質型の燃料電池を構成する。
【0017】
固体電解質層11は、例えば安定化ジルコニアから構成することができる。この場合、安定化剤としては、Y、Sc、Yb、Gd、Nd、CaO、MgOなどを挙げることができる。これらの安定化剤はジルコニア中に固溶させて使用する。また、安定化ジルコニアに代えて、LaSrGaMg酸化物、LaSrGaMgCo酸化物、LaSrGaMgCoFe酸化物などのペロブスカイト型酸化物から構成することもできる。さらに、CeOにSm、Gd、Y、Laなどをドープしたセリア系電解質を用いることもできる。但し、固体電解質層11は、これらの材料に限定されるものではなく、これら以外の材料から構成してもかまわない。
【0018】
なお、固体電解質層11の厚さは、目的に応じて任意に設定することができるが、例えば0.01mm〜0.5mmの範囲とすることができる。
【0019】
一例として、厚さ0.3mmの8mol%Y安定化ジルコニアを用いることができる。
【0020】
燃料極12は、図2に示すように、第1の金属粒子122が表面に析出し、分散担持した第1の酸化物セラミック粒子121と、イオン及び電子の混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123とから構成されている。なお、第1の金属粒子122は、水素と酸素との電気化学反応に寄与する触媒として機能するものであり、以下に説明する改質層から漏れ出た炭化水素系ガスに対する触媒としても補助的に機能し、その表面において炭化水素系ガスと水蒸気とを反応させて、水素ガス及び一酸化炭素を生成する。なお、一酸化炭素は水蒸気と反応することにより、水素ガスと二酸化炭素とを生成する。
【0021】
第1の酸化物セラミック粒子121は、好ましくはアルミニウム酸化物又はマグネシウム酸化物から構成する。これによって、以下に説明する製造方法において、アルミニウム又はマグネシウムを含む複合酸化物からの還元作用により、第1の金属粒子122が表面に析出したような構成の第1の酸化物セラミック粒子121を簡易に形成することができる。
【0022】
第1の金属粒子122は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、白金、ルビジウム及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属から構成することが好ましい。これらの金属は電気化学反応、すなわち水素ガスと酸素ガスとを反応させるための触媒として十分に機能するとともに、炭化水素系ガスに対する触媒としても十分に機能し、その表面において炭化水素系ガスと水蒸気とを反応させて、水素ガス、一酸化炭素及び二酸化炭素を効率よく生成することができる。
【0023】
第1の金属粒子122は、数nm〜200nm程度の大きさであって、第1の酸化物セラミック粒子121に分散担持されている。すなわち、数nm〜200nm程度の微細な金属粒子122が第1の酸化物セラミック粒子121に担持されて固定されているので、後に、金属粒子122に対する凝集・シンタリングが起こりにくく、粒子サイズも不均一になるという問題を生じることがない。
【0024】
すなわち、数nm〜200nmという微細な金属粒子122が安定して存在し、触媒として機能するようになるので、触媒の実質的な表面積の増大に伴って、燃料極12での電気化学反応が促進され、結果として、固体酸化物型燃料電池10の出力特性を向上させることができる。また、炭化水素系ガスの改質反応も促進されるので、上記電気化学反応の燃料となる水素ガスを高効率で生成することができる。
【0025】
また、第1の酸化物セラミック粒子121における第1の金属粒子122の分散密度は、例えば10個/μm〜10,000個/μmとする。これによって、金属粒子122の触媒効果をより効果的に発揮させることができる。
【0026】
混合導電性粒子123は、例えば、SmドープCeO,GdドープCeO,及びYドープCeOからなる群より選ばれる少なくとも一種から構成することができる。この場合、混合導電性粒子123の表面が電子導電体及び酸化物イオン導電体の界面となるので、図2に示す固体酸化物型燃料電池10における水素ガス等の燃料ガス、電子導電体、及び酸化物イオン導電体の界面、すなわち三相界面の量が増大することとなる。したがって、燃料極12における電気化学反応が促進され、固体酸化物型燃料電池10の出力特性を向上させることができる。
【0027】
イオン導電性粒子123は、例えば、Y、Sc、およびYbからなる群より選ばれる少なくとも一種で安定化した、酸素イオン導電性のジルコニウム酸化物から構成することができる。この場合、イオン導電性粒子123の表面が酸化物イオン導電体の界面となるので、図2に示す固体酸化物型燃料電池10における水素ガス等の燃料ガス、電子導電体、及び酸化物イオン導電体の界面、すなわち三相界面の量が増大することとなる。したがって、燃料極12における電気化学反応が促進され、固体酸化物型燃料電池10の出力特性を向上させることができる。
【0028】
第1の酸化物セラミック粒子121及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123の大きさは、それぞれ0.1μm〜10.0μmの範囲とすることができる。また、混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123は多孔質とすることができる。これによって、多孔質構造における空孔が上述のような三相界面あるいは酸化物イオン導電体の界面となり、これら界面の量が実質的に増大することになり、電気化学反応が促進されて、固体酸化物型燃料電池10の出力特性をさらに向上させることができる。
【0029】
また、燃料極12における第1の酸化物セラミック粒子121の含有量は、混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123を含む全粒子に対して10体積%〜50体積%であることが好ましい。第1の酸化物セラミック粒子の含有量が10体積%より小さい場合には、触媒である金属粒子122の量が少なすぎて十分な電気化学反応や改質反応を起こすことができない場合がある。一方、第1の酸化物セラミック粒子の含有量が50体積%を超えると、この第1の酸化物セラミック粒子121自体が抵抗となり、十分な酸素イオン及び電子の伝導ができなくなる可能性がある。したがって、固体酸化物型燃料電池10の特性を劣化させてしまう場合がある。
【0030】
燃料極12の厚さは、例えば5μm〜50μmとすることができる。ただし、電解質層を薄くし空気極を支持材とする場合にはこの限りではない。
【0031】
空気極13は、従前より電気化学セルの酸素極として用いられている任意の材料から構成することができるが、好ましくは、一般式Ln1−xBO3−δ(Ln=希土類元素;A=Sr、Ca、Ba;B=Cr、Mn、Fe、Co、Niのうち少なくとも1種)で表される複合酸化物粒子131から構成することができる。このような複合酸化物は酸素を効率よく解離すると同時に電子電導性を有している。したがって、燃料極12における触媒を介した酸素イオンと、水素ガスなどとの電気化学反応を促進することができ、固体酸化物型燃料電池10の高出力化に寄与することとなる。
【0032】
なお、空気極13の厚さは、例えば5μm〜100μmとすることができる。ただし、電解質層を薄くし空気極を支持材とする場合にはこの限りではない。
【0033】
集電体15及び16は、通常の運転条件で酸化しないような材料から構成することが必要であり、例えば金、銀、白金などの貴金属の他、他の母材となる金属等を銀などでコーティングしたものを用いることができる。また、導電性を有するセラミック材料を用いることもできる。さらには、酸化被膜が導電性を有するようなクロム系合金も用いることができる。
【0034】
改質層17は、図2に示すように、改質反応に寄与する第2の金属粒子132が表面に析出し、分散担持した第2の酸化物セラミック粒子131と、以下に説明する製造方法において、焼結の際の燃料極12及び集電体15に対する熱膨張の度合いを調整し、集電体15から改質層17が剥離しないようにするための酸化物粒子134とから構成されている。
【0035】
酸化物粒子134は、燃料極12を構成する混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123と同じ材料から構成することができる。但し、上述した熱膨張の度合いを調整する必要がないような場合は、酸化物粒子134は改質反応に寄与しないので、改質層17中に含有させない方が好ましい。
【0036】
第2の金属粒子132は、改質層17に供給される炭化水素系ガスに対する触媒として機能し、その表面において炭化水素系ガスと水蒸気とを反応させて、水素ガス及び一酸化炭素を生成する。なお、一酸化炭素は水蒸気と反応することにより、水素ガスと二酸化炭素とを生成する。
【0037】
第2の酸化物セラミック粒子131は、第1の酸化物セラミック粒子121と同様に、好ましくはアルミニウム酸化物又はマグネシウム酸化物から構成する。これによって、以下に説明する製造方法において、アルミニウム又はマグネシウムを含む複合酸化物からの還元作用により、第2の金属粒子132が表面に析出したような構成の第2の酸化物セラミック粒子131を簡易に形成することができる。
【0038】
第2の金属粒子132は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、白金、ルビジウム及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属から構成することが好ましい。上述のように、これらの金属は炭化水素系ガスに対する触媒として十分に機能し、その表面において炭化水素系ガスと水蒸気とを反応させて、水素ガス及び一酸化炭素を効率よく生成することができる。
【0039】
第2の金属粒子132は、数nm〜200nm程度の大きさであって、第2の酸化物セラミック粒子131に分散担持されている。すなわち、数nm〜200nm程度の微細な金属粒子132が第2の酸化物セラミック粒子131に担持されて固定されているので、後に、金属粒子132に対する凝集・シンタリングが起こりにくく、粒子サイズも不均一になるという問題を生じることがない。
【0040】
すなわち、数nm〜200nmという微細な金属粒子132が安定して存在し、触媒として機能するようになるので、触媒の実質的な表面積の増大に伴って、改質層17での改質反応が促進され、電気化学反応の燃料となる水素ガスを高効率で生成することができる。
【0041】
また、第2の酸化物セラミック粒子131における第1の金属粒子132の分散密度は、例えば10個/μm〜10,000個/μmとする。これによって、金属粒子132の触媒効果をより効果的に発揮させることができる。
【0042】
第2の酸化物セラミック粒子131及び酸化物粒子134の大きさは、それぞれ0.1μm〜10.0μmの範囲とすることができる。
【0043】
また、改質層17は、炭化水素系ガスを水素ガス等に改質するための層であるので、その機能を有する第2の酸化物セラミック粒子131の含有量は100体積%であることが好ましい。一方、熱膨張の度合いを調整する場合に酸化物粒子134を含有させた場合においても、第2の酸化物セラミック粒子131の含有量は50体積%以上であることが好ましい。第2の酸化物セラミック粒子の含有量が50体積%より小さい場合には、触媒である金属粒子132の量が少なすぎて十分な改質反応を起こすことができない場合がある。
【0044】
改質層17の厚さは、例えば5μm〜50μmとすることができる。ただし、電解質層を薄くし改質層17を支持材とする場合にはこの限りではない。
【0045】
なお、燃料極12における第1の金属粒子122及び改質層17における第2の金属粒子132は同じ金属から構成することが好ましい。また、燃料極12における第1の酸化物セラミック粒子121及び改質層17における第2の酸化物セラミック粒子131は同じ酸化物から構成することが好ましい。これによって、以下に説明する製造方法において、燃料極12(の前駆体)、集電体15及び改質層17(の前駆体)を同時かつ一体的に焼結して結合する際の焼結温度の調整が容易となり、固体酸化物型燃料電池10の製造を簡易に行うことができる。
【0046】
また、改質層17の気孔率は、燃料極12への改質ガス、すなわち水素ガス等の供給を阻害しないような大きさとする。具体的には、30%〜80%とすることができる。
【0047】
(固体酸化物型燃料電池の製造方法)
次に、実施形態における固体酸化物型燃料電池の製造方法について説明する。本実施形態では、図1及び図2に示す固体電解質型燃料電池の製造方法について説明する。
【0048】
最初に、第1の金属粒子を構成する第1の金属を含む第1の複合酸化物粒子を準備する。例えばNiO粉末及びAl粉末を混合焼成することによって得たNiAlなるニッケルアルミニウム複合酸化物を作製し、これを粉砕して上記第1の複合酸化物粒子とする。この第1の複合酸化物粒子の粒子径は、例えば0.1μm〜数μmとする。なお、Al粉末の代わりに、MgO粉末を用い、NiMgOなるニッケルマグネシウム複合酸化物を作製することもできる。
【0049】
次いで、上記第1の複合酸化物粒子と混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123とを所定の割合で混合し、さらに溶媒を加えることによってペースト化する。次いで、得られたペーストを、酸素イオン導電性を有する固体電解質層11の主面11A上にスクリーン印刷し、当該主面11A上にペースト状の上記第1の複合酸化物粒子及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123を積層配置する。
【0050】
なお、一回のスクリーン印刷で所定の厚さにセラミック粒子を積層配置できない場合は、上述したスクリーン印刷を複数回実施してもよい。なお、このようなスクリーン印刷に代えて、シート成形、塗布、ディッピングなどの方法で代用することができる。
【0051】
次いで、固体電解質層11の主面11A上に積層配置したペースト状の上記第1の複合酸化物粒子等の上に、集電体15を積層配置する。なお、集電体15の積層配置は、上記第1の複合酸化物粒子等の全面若しくは一部を覆うようにして行う。
【0052】
次いで、第2の金属粒子を構成する第2の金属を含む第2の複合酸化物粒子を準備する。例えば、第1の複合酸化物粒子と同様に、NiO粉末及びAl粉末を混合焼成することによって得たNiAlなるニッケルアルミニウム複合酸化物を作製し、これを粉砕して上記第2の複合酸化物粒子とする。この第2の複合酸化物粒子の粒子径は、例えば0.1μm〜数μmとする。
【0053】
なお、第1の複合酸化物粒子及び第2の複合酸化物粒子を同じ材料成分とすることにより、燃料極12(具体的には前駆体としての第1の複合酸化物粒子及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123)、集電体15及び改質層17(具体的には前駆体としての第2の複合酸化物粒子及び酸化物粒子134)を同時かつ一体的に焼結して結合する際の焼結温度の調整が容易となり、固体酸化物型燃料電池10の製造を簡易に行うことができる。
【0054】
次いで、上記第2の複合酸化物粒子と必要に応じて、熱膨張度合い調節のための酸化物粒子134とを所定の割合で混合し、さらに溶媒を加えることによってペースト化する。次いで、得られたペーストを、集電体15の主面15A上にスクリーン印刷し、当該主面15A上にペースト状の上記第2の複合酸化物粒子及び酸化物粒子134を積層配置する。
【0055】
なお、一回のスクリーン印刷で所定の厚さにセラミック粒子を積層配置できない場合は、上述したスクリーン印刷を複数回実施してもよい。なお、このようなスクリーン印刷に代えて、シート成形、塗布、ディッピングなどの方法で代用することができる。
【0056】
次いで、燃料極12(具体的には前駆体としての第1の複合酸化物粒子及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123)、集電体15及び改質層17(具体的には前駆体としての第2の複合酸化物粒子及び酸化物粒子134)を、大気中、1000℃〜1400℃で焼結し、これらを互いに結合させる。
【0057】
次いで、空気極を構成するセラミック粒子を含んだペーストを作製し、固体酸化物層11の主面11Bに対してペーストをスクリーン印刷し、焼成することによって空気極13を形成する。さらに、集電体15と同様にして空気極13の主面13A上に集電体16を形成する。
【0058】
次いで、第1の複合酸化物粒子及び第2の複合酸化物粒子に対して、800℃〜1000℃の温度かつ還元性雰囲気下にて還元処理を行い、第1の複合酸化物粒子及び第2の複合酸化物粒子からそれぞれ第1の金属粒子及び第2の金属粒子を析出させ、第1の金属粒子を分散担持してなる第1の酸化物セラミック粒子及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123を含む燃料極を形成し、第2の金属粒子を分散担持してなる第2の酸化物セラミック粒子及び必要に応じて酸化物粒子134を含む改質層17を形成する。
【0059】
以上のような操作を経ることによって、図1及図2に示すような、炭化水素系ガスの水素ガスへの改質効率に優れた固体酸化物型燃料電池10を得ることができる。
【0060】
なお、上記例では、燃料極12(具体的には前駆体としての第1の複合酸化物粒子及び混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子123)、集電体15及び改質層17(具体的には前駆体としての第2の複合酸化物粒子及び酸化物粒子134)を同時かつ一体的に焼結して結合したが、それぞれを独立に焼結して層化し、この層化する際に隣接する部材、例えば集電体15及び改質層17等を結合することもできる。
【実施例】
【0061】
(実施例)
<複合酸化物の調製>
平均粒径約1μmのNiO粉末と平均粒径約0.4μmのAl粉末をモル比で1:1になるように混合し、混合粉末をプレス成形して空気中、1500℃で10時間焼結することでNiAl複合酸化物を作製した。遊星型ボールミルを用いてこの複合酸化物を、比表面積が20〜23m/gになるまで粉砕し、NiAl燃料極触媒前駆体とした。
【0062】
<ペースト化溶媒の調製>
イオン導電性を有する焼結体であるSDC(Sm0.2Ce0.8)と同組成になるように、CeおよびSmの硝酸塩をCe:Sm=1:4で混合し、SDCとして0.8Mになるように硝酸塩水溶液を調製した。
【0063】
<燃料極反応層用ペーストの調製>
<複合酸化物の調製>で調製したNiAl燃料極触媒前駆体と、電子・イオン混合導電性酸化物として平均粒径0.3μmのSDC(Sm0.2Ce0.8)粒子とを、粉砕粒子の質量比で20:80になるようにそれぞれ混合粉を秤量した。この混合粉に<ペースト化溶媒の調整>で調整したCe,Sm硝酸塩水溶液を混合粉末に対して約30質量%加えて高速回転混合機により混合することで、燃料極反応層用ペーストとした。
【0064】
<燃料極改質層用ペーストの調製>
<複合酸化物の調製>で調製したNiAl燃料極触媒前駆体と、熱膨張係数を調整するための酸化物として平均粒径0.3μmのSDC(Sm0.2Ce0.8)粒子とを、粉砕粒子の質量比で80:20になるようにそれぞれ混合粉を秤量した。この混合粉に純水を混合粉末に対して約35質量%加えて高速回転混合機により混合することで、燃料極改質層用ペーストとした。
【0065】
<空気極ペーストの調整>
平均粒径0.6μmのLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83−d)粒子と、平均粒径0.3μmのSDC(Sm0.2Ce0.8)粒子とを質量比で60:40になるようにそれぞれ混合粉を秤量した。この混合粉にn−ペンタノールを混合粉末に対して約35質量%加えて高速回転混合機により混合することで、空気極改質層用ペーストとした。
【0066】
<固体酸化物電気化学セルの作製>
固体酸化物電解質にはφ18mm、厚さ500μmに加工したYSZ(8mol%Yで安定化させたZrO)を用いた。初めに<燃料極反応層用ペーストの調製>で調製したNiAl:SDC=20:80のペーストをスクリーン印刷機でYSZ電解質の中央にφ6mmの大きさで印刷した。印刷後、大気炉に入れ、400℃にて30分間の仮焼成を行った。その後、仮焼きした燃料極表面にNiからなる集電体を積層し、さらにその表面に<燃料極改質用ペーストの調製>で調製したNiAl:SDC=80:20のペーストを先に形成した燃料極ペーストの形成位置と合致するようにして印刷した。このように形成した燃料極を大気炉に入れ1300℃にて2時間焼成を行った。
【0067】
次に、YSZ電解質の反対面に<空気極ペーストの調整>で調整したペーストを印刷し、1000℃で2時間焼成を行い、さらに、空気極の下方にAgからなる集電体を積層した。
【0068】
<セル特性評価試験>
実施例で作製した平板型固体酸化物電気化学セルを出力特性評価装置にセットし、燃料極側をパイレックス(登録商標)ガラス材によりシールした。電解質側面にφ0.5mmのPt線を付け参照極とした。N雰囲気中で昇温し、900℃に到達後、上記電気化学セルの改質層に対して、加湿したCHガスを供給し、30分間保持した。その結果、CHガスは水素ガス、COガス及びCOガスに改質された。なお、それぞれの生成割合(改質率)は、それぞれ66.3%、19.2%及び8.8%であった。
【0069】
(比較例)
改質層を形成しない以外は、実施例と同様にして平板型固体酸化物電気化学セルを作製し、加湿したCHガスの改質率を評価した。なお、本比較例では、改質層が存在しないので、加湿したCHガスは、電気化学セルの燃料極に供給した。その結果、水素ガス、COガス及びCOガスの生成割合(改質率)は、それぞれ10.7%、1.9%及び2.8%であり、上記改質層を有する電気化学セルと比較して改質率が極めて低いことが判明した。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10 固体酸化物型燃料電池
11 固体電解質層
12 燃料極
121 第1の酸化物セラミック粒子
122 第1の金属粒子
123 混合導電性粒子あるいはイオン導電性粒子
13 空気極
15,16 集電体
17 改質層
131 第2の酸化物セラミック粒子
132 第2の金属粒子
134 酸化物粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン導電性を有する固体電解質層と、
前記固体電解質層の一方の主面側に形成された、第1の金属粒子を分散担持してなる第1の酸化物セラミック粒子を含む燃料極と、
前記固体電解質層の他方の主面側に形成された空気極と、
前記燃料極の、前記固体電解質と反対側に位置する主面上において、集電体を介して形成された、第2の金属粒子を分散担持してなる第2の酸化物セラミック粒子を含む改質層と、
を具えることを特徴とする、固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記第2の金属粒子は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、白金、ルビジウム及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記第2の酸化物セラミック粒子は、アルミニウム酸化物及びマグネシウム酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記改質層における前記第2の酸化物セラミック粒子の含有量が50体積%〜100体積%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記第1の金属粒子及び前記第2の金属粒子は同一の金属からなり、前記第1の酸化物セラミック粒子及び前記第2の酸化物セラミック粒子は同一の酸化物からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
酸素イオン導電性を有する固体電解質層の一方の主面上に、第1の金属粒子を構成する第1の金属を含む第1の複合酸化物粒子を積層配置する工程と、
前記第1の複合酸化物粒子上に、集電体を介して第2の金属粒子を構成する第2の金属を含む第2の複合酸化物粒子を積層配置する工程と、
前記第1の複合酸化物粒子、前記集電体及び前記第2の複合酸化物粒子を同時かつ一体的に焼結して、互いに接合させる工程と、
前記固体電解質層の他方の主面側に空気極を形成する工程と、
前記第1の複合酸化物粒子及び前記第2の複合酸化物粒子に対して還元処理を行い、前記第1の複合酸化物粒子及び前記第2の複合酸化物粒子からそれぞれ前記第1の金属粒子及び前記第2の金属粒子を析出させ、前記第1の金属粒子を分散担持してなる第1の酸化物セラミック粒子を含む燃料極と、前記第2の金属粒子を分散担持してなる第2の酸化物セラミック粒子を含む改質層とを形成する工程と、
を具えることを特徴とする、固体酸化物型燃料電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1の複合酸化物粒子と前記第2の複合酸化物粒子は、互いに同じ材料成分を有することを特徴とする、請求項6に記載の固体酸化物型電量電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89371(P2013−89371A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227167(P2011−227167)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】