説明

固体酸化物形燃料電池セルと固体酸化物形燃料電池セルユニット、及びそれを備える燃料電池モジュール

【課題】 集電部と空気極の密着性がなく、初期発電性能が低いという不具合があった。
【解決手段】 固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池セルと固体酸化物形燃料電池セルユニット、及びそれを備える燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、管状の燃料電池セルを有する燃料電池セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。まず、特許文献1に記載された従来の固体酸化物形燃料電池セルの一例を説明する。特許文献1に記載された固体酸化物形燃料電池セルユニットは、空気極に銀ペーストが塗布されている。銀は、空気に露出している。
【0003】
また、特許文献2には、平板状の固体酸化物形燃料電池セルが記載され、この固体酸化物形燃料電池セルの内側の空気極集電体は、セパレーターと空気極に挟まれている。空気極集電体は、銀の多孔質体、表面に酸化物層を形成した銀の多孔質体、銀の素地中に酸化物が分散した分散強化形銀の多孔質体、または銀よりも高温強度の優れた合金の多孔質体の少なくとも片面に銀メッキした多孔質体の何れかからなる固体酸化物形燃料電池の空気極集電体である。
【0004】
また、特許文献3には、扁平状の固体酸化物形燃料電池セルが記載され、この固体酸化物形燃料電池セルの酸素極は、Ag又はAgを含有する合金が分散された導電性セラミックスからなっている。
【特許文献1】特開2007−95442号公報
【特許文献2】特許3924772号公報
【特許文献3】特開2006−100007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3にあるように集電部にAgやAg/Pd合金を用いることが知られていた。しかし、集電部としての機能は良いが、空気極に対して集電部が密着する性能が不十分であり、密着性を向上した集電部が望まれていた。
【0006】
そこで本発明者らは、集電部が空気極と密着性が確保でき、かつ発電性能が良好な固体酸化物形燃料電池セルを提供するために検討を行なった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、集電部と空気極の密着性が良好な固体酸化物形燃料電池セルと固体酸化物形燃料電池セルユニット、及びそれを備える燃料電池モジュールを提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を説明するに先立って、本発明の作用効果について説明する。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【0011】
本発明によれば、セルの表面側に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用するので、集電部と空気極の密着性が確保される。さらに第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用するので、発電性能が良好である固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次にAg100重量%である溶液を適用し、焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【0013】
本発明によれば、Ag/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次にAg100重量%である溶液を適用し、焼成するので、集電部と空気極の密着性を確保できる。特に、抵抗の低いAg100重量%が表層にあるため、Ag/Pd合金より電気を多く流す通り道が表層にでき発電性能が良好である固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。
【0014】
更に、本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルは、燃料極と、前記燃料極に配置される電解質と、前記電解質に配置される空気極と、を備える固体酸化物形燃料電池セルであって、前記空気極に配置される集電部を備え、前記集電部はAg/Pd合金であり、前記Ag/PdのAg割合が前記集電部の表側の方が高いことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【0015】
本発明によれば、集電部はAg/Pd合金であり、Ag/PdのAg割合が前記集電部の表側の方が高い。従って、集電部と空気極の密着性を確保でき、抵抗の低いAgの割合が表層に多くあるため、電気を流す通り道が表層に確保でき発電性能が良好である固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。
【0016】
更に、本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルは、燃料極と、前記燃料極に配置される電解質と、前記電解質に配置される空気極と、を備える固体酸化物形燃料電池セルであって、前記空気極に配置される集電部を備え、前記集電部はAg/Pd合金であり、また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出していることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【0017】
本発明によれば、空気極側の集電部はAg/Pd合金であり、表側にはPdが露出せず、Agのみが露出している。従って、集電部と空気極の密着性を確保でき、Ag/Pd合金より抵抗の低いAgが露出しているため、Ag/Pd合金に比べAgにより多くの電気が流れ、発電性能が良好である固体酸化物形燃料電池セルを提供することができる。
【0018】
更に、本発明に係る固体酸化物形燃料電池セルユニットは、空気極に配置される集電部を備え、集電部はAg/Pd合金であり、Ag/PdのAg割合が集電部の表側の方が高いことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルと、空気極に配置される集電部と、集電部と電気的に接続され、固体酸化物形燃料電池セルの軸方向から電流を取り出すための端子と、を備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルユニットを提供する。本発明によれば、集電部にAg/Pd合金を用いた固体酸化物形燃料電池セルユニットを提供するので、集電部と空気極の密着性を確保し、かつ発電性能が良好である固体酸化物形燃料電池セルユニットを提供することができる。
【0019】
更に、本発明の一形態は、固体酸化物形燃料電池セルユニットを備えた燃料電池モジュールを提供する。本発明によれば、固体酸化物形燃料電池セルユニットの集電部にAg/Pd合金を用いた燃料電池モジュールを提供するので、集電部と空気極の密着性を確保し、かつ発電性能が良好である燃料電池モジュールを提供することができる。
【0020】
更に、本発明の一形態は、空気極に配置される集電部を備え、集電部はAg/Pd合金であり、Ag/PdのAg割合が集電部の表側の方が高いことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルを備えた燃料電池モジュールを提供する。本発明によれば、固体酸化物形燃料電池セルの集電部にAg/Pd合金を用いた燃料電池モジュールを提供するので、集電部と空気極の密着性を確保し、かつ発電性能が良好である燃料電池モジュールを提供することができる。
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明による固体酸化物形燃料電池セルユニットの実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池セルユニットの断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池セルユニット1は、1本の管状の固体酸化物形燃料電池セルを有している。本実施形態では、固体酸化物形燃料電池セルは、1本の固体酸化物形燃料電池セル6(管状体)からなり、固体酸化物形燃料電池セル6は、円筒形である。
【0024】
固体酸化物形燃料電池セル6は、酸化剤ガスにさらされている面から集電部44a、空気極20、電解質18、燃料極16の積層構造になっており、燃料極16の内側に構成される燃料ガスの通路となる貫通流路15を有している。集電部44aは固体酸化物形燃料電池セル6の他方の端部6bに固定された空気極端子26に接続されいる。空気極20全体又は一部は、集電部44aで覆われており、空気極で発生した電気は、集電部44aのセルの軸方向に流れ、空気極端子26から電気を取り出す。
なおセルの軸方向とは、貫通流路15に流れる燃料ガスの方向と同一方向を示す。即ち、図中の矢印Aの方向を示す。
【0025】
一方、固体酸化物形燃料電池セル6の一方の端部6aに固定された燃料極端子24は、燃料極16と接しており、燃料極16で発生した電気を燃料極端子24から取り出す。
【0026】
集電部44aは、導電性膜であって、より具体的には、AgとPdを備えている。集電部44aの厚さは、0.1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜30μmであることが好ましい。集電部44aは、空気極20が薄くて電気を通しにくい場合や導電率の低い材料で構成されている場合に電気の通路として機能している。
【0027】
燃料極16は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0028】
電解質18は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0029】
空気極20は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたサマリウムコバルト、銀、などの少なくとも一種から形成される。燃料極16の厚さは、例えば、1mmであり、電解質18の厚さは、例えば、30μmであり、空気極20の厚さは、例えば、30μmである。
【0030】
固体酸化物形燃料電池セル6の一方の端部6aに、燃料極16が電解質18及び空気極20に対して突出した燃料極突出周面16aと、電解質18が空気極20に対して突出した電解質突出周面18aとが設けられ、燃料極突出周面16a及び電解質突出周面18aは、固体酸化物形燃料電池セル6の外周面を構成している。固体酸化物形燃料電池セル6の他方の端部6bを含む残部の外周面は、空気極20が集電部44aで覆われている。本実施形態では、燃料極突出周面16aは、燃料極16と電気的に通じる燃料極外周面21でもある。
【0031】
燃料極端子24は、燃料極外周面21を全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分24aと、固体酸化物形燃料電池セル6から遠ざかるように固体酸化物形燃料電池セル6の長手方向に延びる管状部分24bとを有している。好ましくは、本体部分24a及び管状部分24bは、円筒形であり且つ同心に配置され、管状部分24bの管径は、本体部分24aの管径よりも細い。本体部分24a及び管状部分24bは、貫通流路15と連通し且つ外部と通じる接続流路24cを有している。本体部分24aと管状部分24bとの間の段部24dは、燃料極16の端面16bと当接している。
【0032】
尚、本発明の一形態に用いる空気極端子26は、空気極外周面22を全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分26aと、固体酸化物形燃料電池セル6から遠ざかるように固体酸化物形燃料電池セル6の長手方向に延びる管状部分26bとを有している。好ましくは、本体部分26a及び管状部分26bは、円筒形であり且つ同心であり、管状部分26bの管径は、本体部分26aの管径よりも細い。本体部分26a及び管状部分26bは、貫通流路15と連通し且つ外部と通じる接続流路26cを有している。本体部分26aと管状部分26bとの間の段部26dは、環状の絶縁部材28を介して集電部44a、空気極20、電解質18及び燃料極16の端面16cと当接している。
【0033】
燃料極端子24及び空気極端子26の管状部分24b、26bは、好ましくは、それらの外輪郭断面形状が同一である。更に好ましくは、燃料極端子24及び空気極端子26の全体形状が同一である。燃料極端子24及び空気極端子26は、例えばAg、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属である。
【0034】
燃料極端子24と固体酸化物形燃料電池セル6、及び、空気極端子26と燃料電池セル6とは、その全周にわたって導電性のシール材32によってシールされ且つ固定されている。
【0035】
一方の端部6aにおいて、燃料極突出周面16a及び電解質突出周面18aは、固体酸化物形燃料電池セル6の全周にわたって延び、互いに長手方向Aに隣接している。また、燃料極突出周面16aは、固体酸化物形燃料電池セル6の先端部6cに位置している。燃料極突出周面16aと電解質突出周面18aとの間の境界34は、燃料極端子24の本体部分24aの内部にあり、電解質突出周面18と集電部突出周面44との間の境界36は、本体部分24aの外側に位置している。また、電解質突出周面18aは、燃料極突出周面16aに向かって薄肉となるテーパ部18bを有している。
【0036】
一方の端部6aにおいて、シール材32は、燃料極突出周面16a及び電解質突出周面18aに跨がって全周にわたって延び、燃料極端子24の本体部分24aに充填され、電解質突出周面18aを介して空気極20と間隔をおいている。また、他方の端部6bにおいて、シール材32は、空気極突出周面20aの上を全周にわたって延び、空気極端子26の本体部分26aと絶縁部材28との間の空間に充填されている。シール材32は、燃料極16と作用するガスの領域、即ち、貫通流路15及び接続流路24c、26cと、空気極20と作用するガスの領域とを仕切るように設けられている。シール材32は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0037】
ここで固体酸化物形燃料電池の作動原理を以下に記す。空気極側に酸化剤ガスを流し、燃料極側に燃料ガス(H2、COなど)を流すと酸化剤ガス中の酸素が、空気極と固体電解質との界面近傍で酸素イオンに変わり、この酸素イオンが固体電解質を通って燃料極に達する。そして燃料ガスと酸素イオンが反応して水および二酸化炭素になる。これらの反応は(1)、(2)および(3)式で表される。発生した電子は、空気極または燃料極へと移動し、端子に集電されるので、電流は管状セルの長軸方向を流れることになる。空気極と燃料極を外部回路で接続することによって、外部に電気を取り出すことが出来る。
H 2 + O 2 - → H 2 O+ 2 e - (1)
C O+ O 2 - → C O 2 + 2 e - (2)
1 / 2 O + 2 e - → O 2 - (3)
【0038】
より具体的には、図1において燃料極16と作用するガス(燃料ガス)を、貫通流路15及び接続流路24c、26cに通す。また、空気極20と作用するガス(酸化剤ガス)を、空気極20の周りに流す。それにより、燃料電池セルユニット1が作動する。また、燃料極16の電気をシール材32及び燃料極端子24を介して取出し、空気極20の電気をシール材32及び空気極端子26を介して取出す。
【0039】
図2は、固体酸化物形燃料電池セルユニットの変形例である。このセルユニット2はセル7と2つの端子からなっている。セルの構成は、内部に貫通流路を有する燃料極支持体の外側に配置された固体電解質と、該固体電解質の外側に配置された空気極とから構成され、空気極の更に外側には集電部が配置されたものである。固体酸化物形燃料電池セル7には一方の端部56aと他方の端部56bを備え、他方の端部56bの内側に燃料極端子104、および外側に空気極端子106の2つの端子が設けられている。図3は、内側の燃料極端子104を示す。燃料極端子104は、燃料極の貫通流路に挿入され、燃料極と接する。燃料極端子104は、中心部に固体酸化物形燃料電池セル7との接触面積を増やすため略円筒形をしている。図4は、外側の空気極端子106を示す。空気極端子106は、空気極の外側に覆われた集電部144aと接する。空気極端子106は、中心部に固体酸化物形燃料電池セル7を挿入できるように略円筒形をしている。それぞれの端子は、Ag、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属からなり、金属の持つバネ力により端子とセルが固定される。図1の仕様と同様に空気極側に酸化剤ガスを流し、燃料極側に燃料ガス(H2、COなど)を流した時、空気極と燃料極で電気が発生し、それぞれの端子に集電されるので、電流は管状セルの長軸方向を流れることになる。
【0040】
更に、図5は、別の変形例である固体酸化物形燃料電池セルユニット3である。セルの構成は、内部に貫通流路を有する燃料極支持体の外側に配置された固体電解質と、該固体電解質の外側に配置された空気極とから構成され、空気極の更に外側には集電部が配置されたものである。固体酸化物形燃料電池セル8には一方の端部66aと他方の端部66bをもち、一方の端部66aには電解質が空気極に対して突出した電解質突出部214を備える。空気極端子206であるAgワイヤは、集電部244aの外周に巻きつけられ、固体酸化物形燃料電池セル8の中心付近に形成した。外周に巻きつける位置は、中心付近に限定されず、固体酸化物形燃料電池セル8の他方の端部66bでも良い。燃料極端子204は、貫通流路の内径より大きな円筒状のAgメッシュを備えている。燃料極端子204は、固体酸化物形燃料電池セル8に一方の端部66aから10〜100mmの深さまで挿入し、Agメッシュのバネ力により燃料極と接している。図1の仕様と同様に空気極側に酸化剤ガスを流し、燃料極側に燃料ガス(H2、COなど)を流した時、空気極と燃料極で電気が発生し、それぞれの端子に集電されるので、電流は管状セルの長軸方向を流れることになる。
【0041】
これまで説明してきたのは固体酸化物形燃料電池セルユニットであるが、端子を除くと本発明の固体酸化物形燃料電池セルに相当する。
【0042】
また、これまで説明してきた固体酸化物形燃料電池セルユニットまたは固体酸化物形燃料電池セルの周囲を覆う断熱容器を備えた燃料電池モジュールに適用されても良い。
【0043】
また、これまで説明した固体酸化物形燃料電池セルは円筒形状であるが、本発明の実施形態は円筒形状に限定されず、扁平形状などに適用されても良い。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
燃料極支持体の外側に配置された固体電解質と、該固体電解質の外側に配置された空気極とから構成され、空気極の更に外側には集電部が配置されたものである。以下に作製手順について示した。
【0045】
(実施例1)
N i O粉末と、(ZrO2)0.90(Y2O3)0.10(以下YSZと略称する)粉末の混合物を湿式混合法で作製後、熱処理、粉砕を行い燃料極支持体原料粉末を得た。NiO粉末とYSZ粉末の混合比は重量比で65/35とした。該粉末を押出し成形法によって円筒状成形体を作製した。成形体を900℃で熱処理して仮焼体とした。仮焼体の表面に、スラリーコート法により固体電解質を成形した。この支持体を1300℃で焼成した。次に、固体電解質の表面にスラリーコート法により空気極を形成し、1100℃で焼成した。なお、燃料極支持体は、焼成後の寸法で、外径10.4mm、肉厚1.5mm、有効セル長100mmとした。空気極の面積は、25.2cm2になるようにした。
【0046】
表1に示すように空気極としてLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(略称:LSCF)を用い、その上に集電部を塗布した。
本実施例での集電部の溶液として、次に挙げる樹脂と溶剤と金属粉を備えている。樹脂としてアクリル樹脂を用い、溶剤としてα-テルピネオールを用い、金属粉としてAgおよびPdを用いた。表1に示す割合、すなわち第一溶液の金属粉としてAg90.0重量% 、Pd10.0重量%で秤量し、第一溶液が塗布された表面に塗布する第二溶液として、第一溶液に混合されている同種類の樹脂と溶剤、Ag99.5重量% とPd0.5重量%を秤量した。樹脂、溶剤、金属粉を調合したコーティング液は、混合攪拌した。尚、ここでいう金属粉の割合とは、集電部を100重量%としたときに含まれる金属粉(Ag、Pd)の割合を示す。
空気極上への集電部の形成方法としては、本発明における固体電解質の作製方法については、特に制限はなく、スラリーコート法、テープキャスティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法ならびにこれらの併用など、既知の塗布手段を適宜採用することができる。
固体酸化物形燃料電池セルにスクリーン印刷法でコーティング液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を形成した固体酸化物形燃料電池セルを得た。よって、集電部は、AgとPdを備える合金となった。
なお、得られた集電部のAgとPdを含有する合金の割合は、このセル集電部表面または断面をEPMA分析により定量値を求めることができる。この割合は、後述する表1に示す割合と等しいものであった。即ち、第一溶液を塗布された箇所は、Ag90.0重量% 、Pd10.0重量%のAg/Pd合金になり、第二溶液を塗布された箇所は、Ag99.5重量% 、Pd0.5重量%のAg/Pd合金になった。
【0047】
(実施例2)
表1に示すように集電部の第一溶液 にAg90.0重量% 、Pd10.0重量%、集電部第二溶液にAg99.0重量%、 Pd1.0重量%、集電部第三溶液にAg99.5重量% 、Pd0.5重量%を用い、塗り回数を3回にした以外は、実施例1と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0048】
(実施例3)
表1に示すように集電部の第一溶液に Ag97.0重量%、 Pd3.0重量%、集電部第二溶液にAg99.0重量%、 Pd1.0重量%、集電部第三溶液にAg99.5重量% 、Pd0.5重量%を用い、塗り回数を3回にした以外は、実施例1と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0049】
(比較例1)
表1に示すように集電部のAg100重量%溶液、集電部第二溶液にAg99.8重量% 、Pd0.2重量%を用いた以外は、実施例1と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0050】
(比較例2)
表1に示すように集電部の第一溶液 にAg99.5重量% 、Pd0.5重量%、集電部第二溶液にAg90.0重量% 、Pd10.0重量%を用いた以外は、実施例1と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0051】
(比較例3)
表1に示すように集電部の第一溶液に Ag99.5重量%、 Pd0.5重量%、集電部第二溶液にAg99.0重量%、 Pd1.0重量%、集電部第三溶液にAg90.0重量% 、Pd10.0重量%を用いた以外は、実施例1と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0052】
次に表2に関する説明を行なう。
【0053】
(実施例4)
N i O粉末と、(ZrO2)0.90(Y2O3)0.10(以下YSZと略称する)粉末の混合物を湿式混合法で作製後、熱処理、粉砕を行い燃料極支持体原料粉末を得た。NiO粉末とYSZ粉末の混合比は重量比で65/35とした。該粉末を押出し成形法によって円筒状成形体を作製した。成形体を900℃で熱処理して仮焼体とした。仮焼体の表面に、スラリーコート法により固体電解質を成形した。この支持体を1300℃で焼成した。次に、固体電解質の表面にスラリーコート法により空気極を形成し、1100℃で焼成した。なお、燃料極支持体は、焼成後の寸法で、外径10.4mm、肉厚1.5mm、有効セル長100mmとした。空気極の面積は、25.2cm2になるようにした。
【0054】
表2に示すように空気極としてLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(略称:LSCF)を用い、その上に集電部を塗布した。
本実施例での集電部の溶液として、次に挙げる樹脂と溶剤と金属粉を備えている。
樹脂としてアクリル樹脂を用い、溶剤としてα-テルピネオールを用い、金属粉としてAgおよびPdを用いた。表2に示す割合、すなわち第一溶液の金属粉としてAg99.8重量%、 Pd0.2重量%で秤量し、第一溶液の上に塗布する溶液としてAg100重量%溶液を準備し、第一溶液に混合されている同種類の樹脂と溶剤とAg100重量%を秤量した。樹脂、溶剤、金属粉を調合したコーティング液は、混合攪拌した。尚、ここでいう金属粉の割合とは、集電部を100重量%としたときに含まれる金属粉(Ag、Pd)の割合を示す。
空気極上への集電部の形成方法としては、スラリーコート法、テープキャスティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法ならびにこれらの併用など、既知の塗布手段を適宜採用することができる。
固体酸化物形燃料電池セルにスクリーン印刷法でコーティング液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
固体酸化物形燃料電池セルの空気極に第一溶液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、集電部Ag100重量%溶液を塗布し、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。前記集電部は、AgとPdを備える合金である。前記集電部は、Ag/Pd合金であり、また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出している固体酸化物形燃料電池セルを得た。
なお、得られた集電部のAgとPdを含有する合金の割合は、このセル集電部表面または断面をEPMA分析により定量値を求めることができる。この割合は、後述する表2に示す割合と等しいものであった。即ち、第一溶液を塗布された箇所は、Ag99.8重量% 、Pd0.2重量%のAg/Pd合金になり、Ag100重量%溶液を塗布された箇所は、Ag100重量%になった。
【0055】
(実施例5)
表2に示すように集電部の第一溶液をAg99.5重量% 、Pd0.5重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0056】
(実施例6)
表2に示すように集電部の第一溶液をAg99.0重量% 、Pd1.0重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0057】
(実施例7)
表2に示すように集電部の第一溶液をAg98.5重量% 、Pd1.5重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0058】
(実施例8)
表2に示すように集電部の第一溶液をAg98.0重量% 、Pd2.0重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0059】
(実施例9)
表2に示すように集電部の第一溶液をAg95.0重量% 、Pd5.0重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0060】
(比較例4)
表2に示すように集電部第一溶液をAg100重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag100重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag100重量%溶液を塗布した。
【0061】
(比較例5)
表2に示すように集電部の第一溶液及び第二溶液をAg99.9重量%、 Pd0.1重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag99.9重量%、 Pd0.1重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag99.9重量%、 Pd0.1重量%溶液を塗布した。
【0062】
(比較例6)
表2に示すように集電部の第一溶液及び第二溶液をAg90.0重量% 、Pd10.0 重量%にした以外は、実施例4と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag90.0重量%、 Pd10.0重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag90.0重量%、 Pd10.0重量%溶液を塗布した。
【0063】
次に表3に関する説明を行なう。
【0064】
(実施例10)
N i O粉末と、(ZrO2)0.90(Y2O3)0.10(以下YSZと略称する)粉末の混合物を湿式混合法で作製後、熱処理、粉砕を行い燃料極支持体原料粉末を得た。NiO粉末とYSZ粉末の混合比は重量比で65/35とした。該粉末を押出し成形法によって円筒状成形体を作製した。成形体を900℃で熱処理して仮焼体とした。仮焼体の表面に、スラリーコート法により固体電解質を成形した。この支持体を1300℃で焼成した。次に、固体電解質の表面にスラリーコート法により空気極を形成し、1100℃で焼成した。なお、燃料極支持体は、焼成後の寸法で、外径10.4mm、肉厚1.5mm、有効セル長100mmとした。空気極の面積は、25.2cm2になるようにした。
【0065】
表3に示すように空気極としてSm0.5Sr0.5CoO3 (略称:SSC)を用い、その上に集電部を塗布した。
本実施例での集電部の溶液として、次に挙げる樹脂と溶剤と金属粉を備えている。
樹脂としてアクリル樹脂を用い、溶剤としてα-テルピネオールを用い、金属粉としてAgおよびPdを用いた。表3に示す割合、すなわち第一溶液の金属粉としてAg90.0重量% 、Pd10.0重量%で秤量し、第一溶液の上に塗布する第二溶液として、第一溶液に混合されている同種類の樹脂と溶剤とAg99.5重量% とPd0.5重量%を秤量した。樹脂、溶剤、金属粉を調合したコーティング液は、混合攪拌した。尚、ここでいう金属粉の割合とは、集電部を100重量%としたときに含まれる金属粉(Ag、Pd)の割合を示す。
空気極上への集電部の形成方法としては、スラリーコート法、テープキャスティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法ならびにこれらの併用など、既知の塗布手段を適宜採用することができる。
固体酸化物形燃料電池セルにスクリーン印刷法でコーティング液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
固体酸化物形燃料電池セルの空気極に第一溶液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、第二溶液を塗布し、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。集電部は、AgとPdを備える合金である。すなわち Ag/Pd合金であり、Ag/PdのAg割合が集電部の表側の方が高い固体酸化物形燃料電池セルを得た。
なお、得られた集電部のAgとPdを含有する合金の割合は、このセル集電部表面または断面をEPMA分析により定量値を求めることができる。この割合は、後述する表3に示す割合と等しいものであった。即ち、第一溶液を塗布された箇所は、Ag90.0重量% 、Pd10.0重量%のAg/Pd合金になり、第二溶液を塗布された箇所は、Ag99.5重量% 、Pd0.5重量%のAg/Pd合金になった。
【0066】
(実施例11)
表3に示すように集電部の第一溶液 にAg90.0重量% 、Pd10.0重量%、集電部第二溶液にAg99.0重量%、 Pd1.0重量%、集電部第三溶液にAg99.5重量% 、Pd0.5重量%を用い、塗り回数を3回にした以外は、実施例10と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0067】
(実施例12)
表3に示すように集電部の第一溶液に Ag97.0重量%、 Pd3.0重量%、集電部第二溶液にAg99.0重量%、 Pd1.0重量%、集電部第三溶液にAg99.5重量% 、Pd0.5重量%を用い、塗り回数を3回にした以外は、実施例10と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0068】
(比較例7)
表3に示すように集電部にAg100重量%溶液、集電部第二溶液にAg99.8重量% 、Pd0.2重量%を用いた以外は、実施例10と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0069】
次に表4に関する説明を行なう。
【0070】
(実施例13)
N i O粉末と、(ZrO2)0.90(Y2O3)0.10(以下YSZと略称する)粉末の混合物を湿式混合法で作製後、熱処理、粉砕を行い燃料極支持体原料粉末を得た。NiO粉末とYSZ粉末の混合比は重量比で65/35とした。該粉末を押出し成形法によって円筒状成形体を作製した。成形体を900℃で熱処理して仮焼体とした。仮焼体の表面に、スラリーコート法により固体電解質を成形した。この支持体を1300℃で焼成した。次に、固体電解質の表面にスラリーコート法により空気極を形成し、1100℃で焼成した。なお、燃料極支持体は、焼成後の寸法で、外径10.4mm、肉厚1.5mm、有効セル長100mmとした。空気極の面積は、25.2cm2になるようにした。
【0071】
表4に示すように空気極としてSm0.5Sr0.5CoO3 (略称:SSC)を用い、その上に集電部を塗布した。
本実施例での集電部の溶液として、次に挙げる樹脂と溶剤と金属粉を備えている。
樹脂としてアクリル樹脂を用い、溶剤としてα-テルピネオールを用い、金属粉としてAgおよびPdを用いた。表4に示す割合、すなわち第一溶液の金属粉としてAg99.8重量%、 Pd0.2重量%で秤量し、第一溶液の上に塗布する溶液としてAg100重量%溶液を準備し、第一溶液に混合されている同種類の樹脂と溶剤とAg100重量%を秤量した。樹脂、溶剤、金属粉を調合したコーティング液は、混合攪拌した。尚、ここでいう金属粉の割合とは、集電部を100重量%としたときに含まれる金属粉(Ag、Pd)の割合を示す。
空気極上への集電部の形成方法としては、スラリーコート法、テープキャスティング法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法ならびにこれらの併用など、既知の塗布手段を適宜採用することができる。
固体酸化物形燃料電池セルにスクリーン印刷法でコーティング液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
固体酸化物形燃料電池セルの空気極に第一溶液を塗布後、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、集電部Ag100重量%溶液を塗布し、80℃30分乾燥し、室温にて冷却後、700℃1時間焼成し、空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。前記集電部は、AgとPdを備える合金である。前記集電部は、Ag/Pd合金であり、また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出している固体酸化物形燃料電池セルを得た。
なお、得られた集電部のAgとPdを含有する合金の割合は、このセル集電部表面または断面をEPMA分析により定量値を求めることができる。この割合は、後述する表4に示す割合と等しいものであった。即ち、第一溶液を塗布された箇所は、Ag99.8重量% 、Pd0.2重量%のAg/Pd合金になり、Ag100重量%溶液を塗布された箇所は、Ag100重量%になった。
【0072】
(実施例14)
表4に示すように集電部の第一溶液をAg99.5重量% 、Pd0.5重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0073】
(実施例15)
表4に示すように集電部の第一溶液をAg99.0重量% 、Pd1.0重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0074】
(実施例16)
表4に示すように集電部の第一溶液をAg98.5重量% 、Pd1.5重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0075】
(実施例17)
表4に示すように集電部の第一溶液をAg98.0重量% 、Pd2.0重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0076】
(実施例18)
表4に示すように集電部の第一溶液をAg95.0重量% 、Pd5.0重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。
【0077】
(比較例8)
表4に示すように集電部第一溶液をAg100重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag100重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag100重量%溶液を塗布した。
【0078】
(比較例9)
表4に示すように集電部の第一溶液及び第二溶液をAg99.9重量%、 Pd0.1重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag99.9重量%、 Pd0.1重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag99.9重量%、 Pd0.1重量%溶液を塗布した。
【0079】
(比較例10)
表4に示すように集電部の第一溶液及び第二溶液をAg90.0重量% 、Pd10.0 重量%にした以外は、実施例13と同様にして空気極の外側に集電部を配置した固体酸化物形燃料電池セルを得た。即ち、Ag90.0重量%、 Pd10.0重量%溶液を塗布した後に乾燥させ、再度Ag90.0重量%、 Pd10.0重量%溶液を塗布した。
【0080】
(評価方法)
集電部の密着性試験
コーティング液を塗布し、焼成した後、固体酸化物形燃料電池セルの半周に市販のセロハンテープを気泡が入らないように貼り付け、剥離させた。その際に、セル表面に集電部が残っているか否かを目視で判定した。
2. 固体酸化物形燃料電池セルユニットの発電試験
得られた固体酸化物形燃料電池セルユニット(電極有効面積:25.2cm2 )を用いて発電試験を行った。燃料極側の集電は、図1に示す燃料極端子24にAg線を外周に巻きつけ行った。空気極側の集電も、空気極端子26にAg線を外周に巻きつけ行った。発電条件としては、燃料は( H2 + 3%H2O)とN2の混合ガスとした。燃料利用率は80%とした。酸化剤ガスは空気とした。測定温度は700℃ とし、電流密度0.2A/cm2での発電電位を測定した。
【0081】
表1〜4に本発明の実施例および比較例を示し、以下に説明する。
【0082】
【表1】

【0083】
表1を用い、空気極にLSCFを用い、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。より詳しくは、集電部はAg/Pd合金であり、前記Ag/PdのAg割合が前記集電部の表側の方が高い固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。実施例1〜3は集電部と空気極の密着性評価が良好であった。それに対して、比較例1はAg100重量%溶液を用い、第二溶液にAgにPdを少量加えたAg99.8重量%、Pd0.2重量%を用いたが、空気極と集電部との密着性が確保できなかった。比較例2は第一溶液にAg99.5重量%、Pd0.5重量%溶液を用い、第二溶液にAgにPdを少量加えたAg90.0重量%、Pd10.0重量%を用いたが、空気極と集電部との密着性が確保できず、初期発電電位も低い値になった。比較例3は第一溶液にAg99.5重量%、Pd0.5重量%溶液を用い、第二溶液にAg99.0重量%、Pd1.0重量%を用い、第三溶液にAg90.0重量%、Pd10.0重量%を用いたが、空気極と集電部との密着性が確保できず、初期発電電位も低い値になった。
【0084】
【表2】

【0085】
表2を用い、空気極がLSCFであり、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次にAg100重量%である溶液を適用し、焼成する固体酸化物形燃料電池セルに関する。集電部はAg/Pd合金であり、また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出している固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。実施例4〜9は集電部と空気極の密着性評価が良好であり、初期発電電位を高くすることができた。それに対して比較例4は、空気極LSCFに配置する集電部にAg100重量%溶液を用いたところ、空気極と集電部との密着性が確保できなかった。比較例5は、第一溶液、第二溶液ともにAgにPd を少量加えたAg99.9重量%、Pd0.1重量%を用いたが、空気極と集電部との密着性が確保できなかった。比較例6は、第一溶液、第二溶液ともにAgに更に多くのPdを加えたAg90.0重量%、Pd10.0重量%を用いたところ、空気極と集電部との密着性は確保したが、セルの発電電位が低い結果となり燃料電池としての性能を満たさないものとなった。
【0086】
【表3】

【0087】
表3を用い、空気極がSSCであり、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、焼成する固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。より詳しくは、集電部はAg/Pd合金であり、前記Ag/PdのAg割合が前記集電部の表側の方が高い固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。実施例10〜12は集電部と空気極の密着性評価が良好であった。それに対して比較例5は、比較例1と同様に集電部にAg100重量%溶液を用い、第二溶液にAgと少量のPdを加えたAg99.8重量%、Pd0.2重量%を用いたが、空気極と集電部との密着性が確保できなかった。
【0088】
【表4】

【0089】
表4を用い、空気極がSSCであり、固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、次にAg100重量%である溶液を適用し、焼成する固体酸化物形燃料電池セルに関して説明する。より詳しくは集電部はAg/Pd合金であり、また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出している固体酸化物形燃料電池セルについて説明する。実施例13〜18は集電部と空気極の密着性評価が良好であった。それに対して比較例8は、比較例4と同様に溶液にAg100重量%を用いたところ空気極と集電部との密着性が確保できなかった。比較例9は、比較例5と同様に第一溶液、第二溶液ともにAg99.9重量%、Pd0.1重量%を用いたところ空気極と集電部との密着性が確保できなかった。比較例10は、比較例6と同様に第一溶液、第二溶液ともにAg90.0重量%、Pd10.0重量%を用いたところ、空気極SSCと集電部の密着性が確保できたが、発電電位が低い結果となり、使用には適さない結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池セルユニットを示す図である。
【図2】本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池セルユニットの変形例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る燃料極端子の変形例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る空気極端子の変形例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池セルユニットの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1…燃料電池セルユニット、6…固体酸化物形燃料電池セル(固体酸化物形燃料電池セル体)、6a…一方の端部、6b…他方の端部、15…貫通流路、16…燃料極、16a…燃料極突出周面、18…電解質、20…空気極、21…燃料極外周面、22…空気極外周面、24…燃料極端子、24b…管状部分、24c…接続流路、26…空気極端子、26b…管状部分、26c…接続流路、32…シール材、44a…集電部、 2…燃料電池セルユニット、7…固体酸化物形燃料電池セル、56a…一方の端部、56b…他方の端部、144a…集電部、104…燃料極端子、106…空気極端子、 3…燃料電池セルユニット、8…固体酸化物形燃料電池セル、66a…一方の端部、66b…他方の端部、244a…集電部、204…燃料極端子、206…空気極端子、214…電解質突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、
次に第一溶液よりもAg量が多いAg/Pd合金を含む第二溶液を適用し、
焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項2】
固体酸化物形燃料電池セルにAg/Pd合金を含む第一溶液を適用し、
次にAg100重量%である溶液を適用し、
焼成することを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項3】
燃料極と、
前記燃料極に配置される電解質と、
前記電解質に配置される空気極と、
を備える固体酸化物形燃料電池セルであって、
前記空気極に配置される集電部を備え、
前記集電部はAg/Pd合金であり、
前記Ag/PdのAg割合が前記集電部の表側の方が高いことを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項4】
燃料極と、
前記燃料極に配置される電解質と、
前記電解質に配置される空気極と、
を備える固体酸化物形燃料電池セルであって、
前記空気極に配置される集電部を備え、
前記集電部はAg/Pd合金であり、
また表側にはPdが露出せず、Agのみが露出していることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
【請求項5】
請求項3乃至4いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池セルと、
前記空気極に配置される集電部と、
前記集電部と電気的に接続され、
前記固体酸化物形燃料電池セルの軸方向から電流を取り出すための端子と、
を備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セルユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池セルユニットを備えた燃料電池モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池セルを備えた燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−15807(P2010−15807A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174397(P2008−174397)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】