説明

固体酸触媒

【課題】α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造時の副生成物が少なく、繰り返し使用しても触媒活性が低下しにくい固体酸触媒を提供する。
【解決手段】シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機多孔体にスルホン酸基を担持させたスルホン酸基担持無機多孔体を、150〜250℃で加熱処理してなる固体酸触媒であって、前記無機多孔体をスルホン酸前駆体基含有化合物と反応させてスルホン酸前駆体基担持無機多孔体を得た後、スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換して得られるスルホン酸基担持無機多孔体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸触媒に関する。更に詳しくは、α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造に用いる固体酸触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコールとα,β−不飽和カルボン酸又はその低級エステルとを反応せしめてα,β−不飽和カルボン酸エステルを製造するための酸触媒としては、鉱酸(硫酸及びリン酸等)及びスルホン酸化合物(p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等)等のブレンステッド酸が一般的に用いられている。しかし、ブレンステッド酸を触媒として用いた場合には、反応終了後に酸触媒を中和し、水洗又は吸着処理等で中和した酸触媒を除去する工程が必要になり、多量の廃棄物が発生するとともに、得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルに触媒残さが残存し、その用途によっては接触する金属を腐食するという問題があった。
そこで、これらの問題を解決するものとして、種々の固体酸触媒を用いるα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法が提案されている。これらは不均一系触媒である固体酸を用いることで容易に反応生成物と触媒が分離でき、酸触媒の中和、水洗等による廃棄物の発生を抑えるものである。
前記固体酸触媒としては、イオン交換樹脂(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のスルホン化物)を触媒とするもの(特許文献1、2)、スルホン酸含有フッ素樹脂(Du−Pont社「ナフィオン」等)を触媒とするもの(特許文献3)、リンタングステン酸等の固体超強酸を触媒とするもの(特許文献4)等が提案されている。
しかしながら、これらの固体酸触媒は、いずれもα,β−不飽和カルボン酸エステル合成のための触媒として触媒活性が満足できるものではなく、かつ副生成物が生成し易く、また触媒の分解によって溶出した硫黄酸化物等の酸成分が残存するため、得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルの純度が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−9956号公報
【特許文献2】特開平10−81647号公報
【特許文献3】特開平11−319574号公報
【特許文献4】特開平11−152248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造時の副生成物が少なく、繰り返し使用しても触媒活性が低下しにくい固体酸触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記問題を解決するため鋭意検討し、本発明に到達した。すなわち本発明は、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機多孔体にスルホン酸基を担持させたスルホン酸基担持無機多孔体(a)を150〜250℃で加熱処理してなる固体酸触媒(A)並びに前記固体酸触媒(A)の存在下に、アルコール(B)とα,β−不飽和カルボン酸又はその低級アルキルエステル(C)とを反応させることを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸エステル(D)の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固体酸触媒は、α,β−不飽和カルボン酸エステルの製造時の副生成物が少なく、繰り返し使用しても触媒活性が低下しにくい、といった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の固体酸触媒(A)[以下、単に(A)と表記する場合がある。]は、シリカ、ア
ルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機多孔体にスルホン酸基含有化合物を固定化して担持させたスルホン酸基担持無機多孔体(a)を、150〜250℃で加熱処理してなるものである。
【0008】
前記シリカとしては、ガラス状シリカ、石英、珪藻土、無定型シリカ、シリカゲル、シリカ粉末、シリカゾルや、シリカ表面をアルミ等で被覆した各種被覆シリカ微粒子(ゼオライト等)、樹脂粒子や金属酸化物ゾル等の表面をシリカで被覆したシリカ被覆微粒子、球状シリカ微粒子、棒状シリカ微粒子及び球状シリカが連結したネックレス状シリカ微粒子等が挙げられる。
【0009】
前記アルミナとしては、様々な結晶構造を有する粒子が使用でき、例えば、α−アルミナ、ギブサイト、バイアライト、ベーマイト、β−アルミナ、γ−アルミナ、アモルファスアルミナ等が挙げられる。
【0010】
前記チタニアとしては、ルチル型チタニア及びアナターゼ型チタニア等が挙げられる。
これらは、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解及び脱水縮合を行い、次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0011】
前記マグネシアとしては、水酸化マグネシウムや天然鉱物としての炭酸マグネシウム(マグネサイト)又は海水より抽出した炭酸マグネシウムを溶融又は焼成した溶融マグネシア、焼結マグネシア、軽焼マグネシア及び仮焼マグネシア等が挙げられる。
【0012】
前記ジルコニアとしては、ZrOを主成分とし、CaO、MgO、Y等の安定化剤を1種以上含む部分安定化ジルコニア等が挙げられ、例えば、3〜9モル%のイットリア(Y)で部分安定化したジルコニア(ZrO)や、9〜26モル%のマグネシア(MgO)で部分安定化したジルコニア(ZrO)、8〜12モル%のカルシア(CaO)で部分安定化したジルコニア(ZrO)、8〜16モル%のセリア(CeO)で部分安定化したジルコニア(ZrO)等が挙げられる。
【0013】
無機多孔体のうち、触媒活性の観点から好ましいのは、シリカ及びアルミナであり、更に好ましいのはシリカであり、特に好ましいのはシリカゲル及びゼオライトである。
【0014】
スルホン酸基担持無機多孔体(a)を得る方法としては、無機多孔体をスルホン酸基に
変換可能なスルホン酸前駆体基含有化合物(s)[以下、単に(s)と表記する場合がある]と反応させ、その後(s)が有するスルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換する方法等が挙げられる。
【0015】
前記(s)としては、その分子中に、無機多孔体の表面に存在する官能基と反応する基及びスルホン酸基に変換可能な基を有する化合物である。無機多孔体の表面に存在する官能基としては水酸基、アミノ基及びカルボキシル基等が挙げられる。これらのうち、無機多孔体の表面を修飾し易いという観点から好ましいのは水酸基である。
(s)が含有する、無機多孔体の表面の官能基と反応する基としては、無機多孔体の表面に存在する官能基が水酸基又はアミノ基の場合は、トリアルコキシシリル基、グリシジル基及びカルボキシル基等が挙げられ、無機多孔体の表面に存在する官能基がカルボキシル基の場合は、トリアルコキシシリル基、グリシジル基及びアミノ基等が挙げられる。これらのうち、無機多孔体の表面に存在する官能基との反応が進行し易いという観点から好ましいのは、トリアルコキシシリル基及びグリシジル基であり、更に好ましいのはトリアルコキシシリル基である。
(s)が含有するスルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基としては、メルカプト基(酸化してスルホン酸基に変換)及びフェニル基(スルホン化してスルホフェニル基に変換)等が挙げられる。
【0016】
(s)の具体例としては、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメルカプトプロピルトリエトキシシラン等)、フェニル基含有シランカップリング剤(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びジフェニルジメトキシシラン等)及びフェニル基含有グリシジル化合物(フェニルグリシジルエーテル及びノニルフェニルグリシジルエーテル等)が挙げられる。これらのうち好ましいのは、メルカプト基含有シランカップリング剤である。
【0017】
(s)と無機多孔体との反応は、種々の反応条件で行うことができる。例えば、(s)を無機多孔体の重量に基づいて30〜60重量%の割合で仕込み、溶媒の存在下に加熱撹拌し、シランカップリング剤中のトリアルコキシシリル基と無機多孔体の表面に存在する官能基(水酸基、アミノ基及びカルボキシル基等)を反応させた後、精製して得ることができる。溶媒としては有機溶媒(トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン及び/又は低級アルコール等)を使用することができ、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒でもよい。水は無機多孔体表面に存在する官能基及び(s)の活性を促進させるため少量使用するのが好ましく、水の割合は、(s)1モルに対して3倍モル以下が好ましい。
溶媒の使用量は、無機多孔体の重量に基づいて、好ましくは80〜300重量%であり、更に好ましくは100〜250重量%である。反応温度は、好ましくは60〜150℃であり、(s)がシランカップリング剤の場合は、無機多孔体との反応で副生するアルコキシ基由来物質(例えばメタノール及びエタノール等の低級アルコール)を除去しながら反応してもよい。
反応後は、粒状物をろ過又は遠心分離機等を用いて分離・回収し、未反応の(s)を除去するために、前記有機溶剤で粒状物を数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、−0.099〜−0.097MPaで3〜5時間)することができる。
【0018】
無機多孔体に(s)としてメルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換してスルホン酸基担持無機多孔体(a)を得る方法としては、溶媒の存在下に酸化反応を行う方法が挙げられる。用いる酸化剤としては種々の酸化剤、例えば硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸及び過酸化物等が挙げられ、これらのうち好ましいのは過酸化水素である。溶媒としてはアセトン、低級アルコール、アセトニトリル、ピリジン、クロロホルム及び/又はジクロロメタン等が挙げられる。反応温度は通常0〜100℃である。過酸化水素による酸化反応は、米国特許5912385号明細書記載の反応条件でも行うことができる。
【0019】
無機多孔体に(s)としてフェニル基含有シランカップリング剤を反応させた後、フェニル基にスルホン基を導入してスルホン酸基担持無機多孔体(a)を得る方法としては、溶媒の存在下に種々のスルホン化剤でフェニル基にスルホン酸基を導入する方法が挙げられる。スルホン化剤としては、例えば濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸及びアミド硫酸等が挙げられる。この場合の溶媒としては酢酸、無水酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロエタン及び/又は四塩化炭素等が挙げられる。反応温度は通常−10〜180℃である。
【0020】
(a)を得る方法のうち好ましいのは、無機多孔体に(s)としてメルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換する方法である。
【0021】
メルカプト基をスルホン酸基に変換してスルホン酸基担持無機多孔体(a)を得る方法又はフェニル基にスルホン基を導入してスルホン酸基担持無機多孔体(a)を得る方法のいずれの場合でも、反応後は(a)をろ過又は遠心分離機等を用いて分離・回収し、前記有機溶媒で(a)を数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、−0.099〜−0.097MPaで3〜5時間)することができる。
【0022】
本発明の固体酸触媒(A)は、スルホン酸基担持無機多孔体(a)を150〜250℃で加熱処理することを必須要件とする。加熱処理の温度は、触媒活性及びα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造時の副生成物が生成し難いという観点から好ましくは160〜220℃であり、更に好ましくは180〜200℃である。加熱処理時間は、触媒活性及びα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造時の副生成物が生成し難いという観点から好ましくは0.5〜48時間であり、更に好ましくは1〜35時間である。加熱処理は、空気又は窒素雰囲気下で行うのが好ましく、また、加熱媒体の存在下に行うことができ、加熱媒体としては有機溶媒(n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、エチルトルエン及び1,2,4−トリメチルベンゼン等)、鉱物油(石油、鉱物油、パラフィン及びシリコンオイル等)及び合成油(PAO油等)が挙げられる。加熱処理後は、粒状物をろ過又は遠心分離機等を用いて分離・回収し、前記有機溶媒で粒状物を数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、−0.099〜−0.097MPaで3〜5時間)することができる。
【0023】
本発明の固体酸触媒(A)の酸価は、好ましくは20〜200mgKOH/gであり、
更に好ましくは10〜150mgKOH/g、特に好ましくは15〜100mgKOH/gである。酸価が20mgKOH/g以上であれば触媒活性が向上し、少量の触媒でエステル化反応が進行し易くなる。酸価が200mgKOH/g以下であれば副反応が起こり難くくなる。なお、(A)の酸価は、イオン交換水に(A)を浸し、過剰の水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、0.1N塩酸水溶液で中和滴定するという方法で測定することができる。
【0024】
(A)は、スルホン酸基を担持する前の無機多孔体と実質的に同じ形状であり、そのd50、BET比表面積及びアスペクト比の好ましい範囲も同様である。
【0025】
(A)の平均粒子径は、好ましくは1〜8,000μmであり、更に好ましくは10〜6,000μm、特に好ましくは40〜500μmである。1μm以上であれば取り扱いが容易になり、8,000μm以下であれば触媒活性の観点から好ましい。なお、(A)の平均粒子径は、JIS K1150の粒度分布測定法で測定することができる。
【0026】
(A)のBET比表面積は、好ましくは30〜1500m2/gであり、更に好ましくは50〜1,500m2/g、特に好ましくは100〜800m2/gである。30m2/g以上であれば、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。なお、(A)のBET比表面積は、JIS K1150の比表面積測定法で測定することができる。
【0027】
(A)のアスペクト比は、好ましくは1.0〜1.25であり、更に好ましくは1.0〜1.18、特に好ましくは1.0〜1.11である。アスペクト比が1.25以下であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。なお、(A)のアスペクト比は、(A)の粒子100個を顕微鏡観察し、最長直径と最短直径をそれぞれ計測し、以下の計算式から算出することができる。
アスペクト比=[100個の(A)の最長直径の平均値/100個の(A)の最短直径の平均値]
【0028】
本発明の固体酸触媒(A)は、繰り返し使用しても触媒活性が低下し難いため、再使用することができる。原料が同じ反応で再使用する際には洗浄等をせずそのまま使用することができるが、原料が異なる反応で再使用する際には、使用後の(A)をろ過、デカンテーション又は遠心分離機等を用いて分離・回収し、前記有機溶媒で(A)を数回洗浄した後、減圧乾燥(通常100〜120℃、−0.099〜−0.097MPaで3〜5時間)することが好ましい。
【0029】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステル(D)[以下、単に(D)と表記する場合
がある。]の製造方法におけるアルコール([以下、単に(B)と表記する場合がある。]としては、1価アルコール(B1)及び2価以上の多価アルコール(B2)が挙げられる。
【0030】
(B1)としては以下のものが挙げられる。
(B11)飽和脂肪族1価アルコール[炭素数1〜36の直鎖又は分岐のアルコール;例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、2−デシルテトラデシルアルコール及び2−テトラデシルオクタデシルアルコール等];
(B12)不飽和脂肪族1価アルコール[炭素数2〜36の直鎖又は分岐のアルコール;例えばビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、オクテニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール及びリノレイルアルコール等];
(B13)脂環式1価アルコール[脂環基を有する総炭素数6〜36のアルコール;例えばエチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール及びアダマンチルアルコール等];
(B14)1価フェノール類[フェノール環を有する総炭素数6〜36のフェノール類;例えばフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール及びブロモフェノール等];
(B15)窒素原子、硫黄原子及び/又はハロゲン原子を有する1価アルコール[前記(B11)〜(B14)の一部を窒素原子、硫黄原子及び/又はハロゲン原子含有基で置換したアルコール;例えばジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、モルホリノエタノール及び2−クロロエタノール等];
(B16)前記アルコール(B11)〜(B15)のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)[炭素数2〜8のアルキレンオキサイド;例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記する。)、1,2−又は2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン及びスチレンオキサイド等]付加物(付加モル数1〜50)
【0031】
(B2)としては以下のものが挙げられる。
(B21)2価アルコール[炭素数2〜12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及び1,12−ドデカメチレングリコール塔)、重合度2〜1,000のポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコール等)、脂環式ジオール(脂環基を有する総炭素数6〜36のジオール;例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、2価アルコールのAO付加物(付加モル数1〜50)及びビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)のAO付加物(付加モル数2〜30)
(B22)3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール[アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等)、糖類及びその誘導体(蔗糖及びメチルグルコシド等)、及び前記脂肪族多価アルコールのAO付加物(付加モル数1〜50)];
(B23)3〜8価又はそれ以上の芳香環含有多価アルコール[トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のAO付加物(付加モル数2〜50)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等)のAO付加物(付加モル数2〜50)等]
【0032】
(B)のうち好ましいのは、1価アルコール(B1)、2価アルコール(B2)及びそれらのAO付加物であり、更に好ましいのは(B1)である。
(B1)のうち好ましいのは、(B11)、(B12)、(B15)それらのAO付加物であり、更に好ましいのは、高純度の生成物が得られ易いという観点から(B11)のうちの炭素数8〜32の飽和脂肪族1価アルコール及びそのAO(特にEO)付加物である。
(B)に含まれる水酸基としては1級水酸基及び2級水酸基が挙げられるが、好ましい
のは1級水酸基である。
【0033】
本発明におけるα,β−不飽和カルボン酸又はその低級アルキルエステル(C)[以下、単に(C)と表記する場合がある。]としては、α,β−不飽和カルボン酸(C1)及びα,β−不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル(C2)が挙げられる。
【0034】
α,β−不飽和カルボン酸(C1)としては、脂肪族α,β−不飽和モノカルボン酸[ア
クリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸等]及び脂肪族α,β−不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等)が挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル(C2)としては、(C1)と炭素数
1〜4のアルキル基を有するアルコールから得られるエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル及びn−ブチルエステル等)が挙げられる。
【0035】
(C)のうち、純度の高いエステルが得られるという観点から好ましいのは(C1)であり、更に好ましいのは脂肪族α,β−不飽和モノカルボン酸であり、特に好ましいのはアクリル酸及びメタクリル酸である。
【0036】
本発明の(D)の製造方法において、(B)と(C)の仕込み当量比は、好ましくは1:
3〜3:1であり、更に好ましくは1:2〜2:1、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1、最も好ましくは1:1.5〜1:1.02である。(B)又は(C)のうち除去が容易な方を過剰に用い、反応完了後、過剰の(B)又は(C)を除去するのが反応率向上の観点から好ましい。
【0037】
本発明の(D)の製造方法において、不飽和基の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤としては、フェノール系重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、クレゾール、ジ−t−ブチルクレゾール、ジ−t−ブチルフェノール及びトリ−t−ブチルフェノール等)、及びアミン系重合禁止剤(フェノチアジン、ジフェニルアミン及びアルキル化ジフェニルアミン等)等が挙げられる。これらのうち好ましいのはフェノール系重合禁止剤である。重合禁止剤の添加量は、(B)及び(C)の総重量に基づいて、好ましくは0.001〜2重量%であり、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%、最も好ましくは0.01〜0.2重量%である。
【0038】
本発明の(A)の使用量は、(B)及び(C)の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜70重量%であり、更に好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは2〜50重量%、最も好ましくは3〜40重量%である。0.1重量%以上用いることでエステル化反応が進行し易くなり、70重量%以下であれば経済面から好ましい。
(A)の使用量は、(B)の仕込み当量に対する(A)中のスルホン酸基の当量の比が、好ましくは0.005〜0.3、更に好ましくは0.01〜0.2となる添加量である。0.005以上であれば反応速度の観点から好ましく、0.3以下であれば副反応が抑制されるという観点から好ましい。
【0039】
(B)と(C)とを反応させるときの反応の形態としては、バッチ法及び流通法等が挙げられる。
【0040】
バッチ法の場合は、(A)、(B)、(C)及び必要により反応溶媒を反応槽に仕込み、加熱撹拌し、生成する水又は低級アルコールを除去しながら反応を進行させる。反応完了後、生成した(D)と(A)をデカンテーション、ろ過又は遠心分離等によって分離する。(B)又は(C)を過剰に用いた場合は、(A)を分離する前又は分離後に過剰の原料を減圧留去することで(D)を得ることができる。
【0041】
バッチ法における反応温度は、反応速度及び副反応を抑制するという観点から好ましくは60〜180℃であり、更に好ましくは80〜160℃、特に好ましくは100〜140℃である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間であり、更に好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
反応溶媒としては、炭化水素系溶媒(トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)及びエーテル系溶媒(テトラヒドロフラン等)等が挙げられる。これらの反応溶媒のうち、反応生成水を分離して除去し易いという観点から好ましいのは炭化水素系溶媒である。
(B)と(C)の反応で生成する水又は低級アルコールを除去する方法としては、常圧又は減圧下に留去させる方法、分液又は遠心分離する方法、モレキュラシーブス及び硫酸マグネシウム等の脱水剤と接触させる方法、水分離膜等の選択膜により膜分離する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、バッチ法の場合は、常圧又は減圧下に水又は低級アルコールを留去させる方法が好ましい。
【0042】
流通法の場合は、(A)を充填したカラム、固定床又は流動床等に、所定の温度に温調した(B)と(C)の混合物を通液することで(D)を得ることができる。
(A)に(B)と(C)の混合物を一回通液(1パス)した後、反応混合物を蒸留することにより(D)を得ることもできるが、反応率を高くすることができるという観点から、(A)の存在下に(B)と(C)とを反応させる工程(1)と、(B)と(C)との反応によって生成した水又は低級アルコールを反応混合物から除去する工程(2)とからなる製造方法が好ましい。特に、工程(1)と工程(2)とを繰り返すことで反応率を更に高めることができる。 工程(1)において通液する(B)と(C)の温度は、好ましくは60〜180℃であり、更に好ましくは80〜160℃、特に好ましくは100〜140℃である。60℃以上であれば反応速度の観点から好ましく、180℃以下であれば副反応を抑制する観点から好ましい。
工程(1)における1パスあたりの平均通液時間[(A)と、(B)及び(C)の平均接触時間]は、好ましくは0.1〜60分であり、更に好ましくは0.2〜10分、特に好ましくは0.5〜5分である。
工程(2)における水又は低級アルコールを除去する方法としては、連続式エバポレーターで留去する方法、コンデンサーを付した反応槽等を用いて常圧又は減圧下に留去させる方法、及び水分離膜、遠心分離又は脱水剤によって脱水する方法等が挙げられる。これらのうち、生産効率の観点から好ましいのは、連続式エバポレーター、コンデンサーを付した反応槽及びそれらの併用である。
工程(1)と工程(2)の繰り返し回数は、好ましくは1〜500回、更に好ましくは3〜200回、特に好ましくは5〜100回である。
【0043】
本発明の製造方法において、(C)及び生成した(D)の重合を禁止する目的で、反応液中に酸素を溶存させることもできる。酸素の供給源としては、酸素ガス、空気及び空気と窒素の混合気[以下、「混合気」と略記する場合がある。]等が挙げられ、これらを反応液中に通気することで酸素を溶存させることができる。これらのうち、安全性の観点から好ましいのは、空気及び混合気であり、更に好ましいのは混合気である。
【0044】
混合気中の空気と窒素の混合体積比率は、好ましくは1:9〜9:1であり、更に好ましくは1:9〜5:5、特に好ましくは2:8〜4:6である。空気の比率を高めることで重合禁止効果が高まり、窒素の比率を高めることで生成物の着色が少なくなる点で好ましい。
空気又は混合気の通気量は、(B)と(C)の総重量1kgあたり、好ましくは1〜5,000mL/分であり、更に好ましくは20〜1,000mL/分、特に好ましくは30〜500mL/分である。
空気又は混合気を通気する方法としては、バッチ法の場合は反応槽下部から反応中に常時通気する方法が挙げられる。
流通法の場合は、工程(1)、工程(2)又はそれらの途中の配管中に通気する方法が挙げられるが、工程(2)において通気することが反応速度と重合禁止の両立の観点から好ましい。
【0045】
本発明の製造方法で得られた(D)の純度は、好ましくは95モル%以上であり、更に好ましくは98モル%以上である。(D)以外の不純物としては、未反応の(B)、(C)及び(D)の重合物(以下、「重合物」と略記する。)、脱離反応生成物[1分子の(B)から水が脱離して生成するオレフィン等]、副生エーテル化合物[2分子の(B)から脱水縮合して生成するエーテル]、副生付加生成物[(C)が有するα,β−不飽和基にアルコールが付加して生成する付加物等]及び硫黄原子含有化合物[(A)の分解によって溶出した硫黄酸化物等)等が挙げられる。また、不純物ではないが添加物としての重合禁止剤が含まれる。
【0046】
(D)中の硫黄原子含有化合物の含有量は、(D)の重量に基づいて、硫黄原子含量(以下、S含量と略記する。)として、好ましくは50ppm以下であり、更に好ましくは20ppm(検出限界)以下である。
【0047】
本発明の製造方法で得られた(D)の純度、(D)中の未反応の(B)、脱離反応生成物、副生エーテル化物及び副生付加生成物のそれぞれの含有率は、生成した(D)のH1−NMRを測定して解析することにより定量できる。
【0048】
(D)中の重合物の含有率は、以下の方法で測定することができる。
<α,β−不飽和カルボン酸エステル(D)中の重合物の含有率の測定方法>
(D)10gを冷却管つき三角フラスコに秤量し、メタノール100gを加え、60℃で3時間撹拌した。No.5のろ紙を敷いたガラスフィルターを秤量後、メタノール溶液を吸引ろ過し、更にガラスフィルター中のろ過残渣を新たなメタノール50gで洗浄する。ろ過残渣の入ったガラスフィルターを80℃の減圧乾燥器で3時間乾燥した後デシケーター中で冷却後秤量し、下記式から重合物(モル%)を算出する。
重合物(モル%)=[(W−W)/W/M]×100
:ろ過後のガラスフィルターの重量(g)
0 :ろ過前のガラスフィルターの重量(g)
:三角フラスコに秤量した(D)の重量(g)
M:(D)の分子量
【0049】
(D)中のS含量は、ICP測定装置「ICPS−8000」[(株)島津製作所製]により定量できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。以下において特に定めない限り、%は重量%、部は質量部を示す。
【0051】
<実施例1> 固体酸触媒(A−1)の製造;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び還流管を備えた反応容器に、あらかじめイオン交換水で洗浄後乾燥させたシリカゲル「CARiACT Q−6」[平均粒子径:75〜500μm、富士シリシア化学(株)製]200部、溶媒としてのトルエン400部及び水10部を仕込んだ後、100〜110℃に昇温した。次いで3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン100部加え、環流下に8時間撹拌反応させた。その後更に水15部を加えて8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、トルエン400部で3回、イソプロピルアルコール400部で3回の順で洗浄した後、120℃で5時間減圧(−0.097Mpa)乾燥し、シランカップリング剤担持無機多孔体220部を得た。
シランカップリング剤担持無機多孔体150部、溶媒としての水450部及び30%過酸化水素水150部を上記と同様の反応容器に仕込み、80℃で8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、メタノール400部で3回、0.1N−硫酸400部で1回、イオン交換水400部で3回の順で洗浄した後、120℃で5時間減圧乾燥し、スルホン酸基担持無機多孔体を140部得た。
スルホン酸基担持無機多孔体100部を上記と同様の反応容器に仕込み、180℃で24時間加熱処理した。室温まで冷却後スルホン酸基担持無機多孔体をメタノール250部で3回洗浄し、120℃で3時間減圧(−0.097Mpa)乾燥し、固体酸触媒(A−1)190部を得た。
【0052】
<実施例2> 固体酸触媒(A−2)の製造;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン100部をフェニルトリエトキシシラン200部に変更した以外は実施例1と同様にして、シランカップリング剤担持無機多孔体190部を得た。
シランカップリング剤担持無機多孔体150部、溶媒としてのジクロロエタン180部を実施例1と同様の反応容器に仕込み、水冷下、17〜23℃で三酸化硫黄10部を5時間かけて滴下し、その後40〜50℃で3時間撹拌してスルホン化を行った。イオン交換水4部を加えて未反応の三酸化硫黄を硫酸に変換した後、反応混合物から固形分をろ別し、イソプロピルアルコール400部で3回、イオン交換水400部で3回洗浄した後、120℃で5時間減圧(−0.097Mpa)乾燥してスルホン酸基担持無機多孔体140部を得た。
スルホン酸基担持無機多孔体100部を実施例1と同様の容器に仕込み、180℃で24時間加熱処理した。室温まで冷却後スルホン酸基担持無機多孔体をメタノール250部で3回洗浄し、120℃で3時間減圧(−0.097Mpa)乾燥し、固体酸触媒(A−2)90部を得た。
【0053】
<実施例3> 固体酸触媒(A−3)の製造;
シリカゲル「CARiACT Q−6」[平均粒子径:75〜500μm、富士シリシア化学(株)製]200部をアルミナ「活性アルミナ200」[ナカライテスク(株)製]200部に変更した以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A−3)70部を得た。
【0054】
<実施例4> 固体酸触媒(A−4)の製造;
シリカゲル「CARiACT Q−6」[平均粒子径:75〜500μm、富士シリシア化学(株)製]200部をシリカ−アルミナ系多孔体「キョーワード700SN」[協和化学工業(株)製]200部に変更した以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A−4)140部を得た。
【0055】
<実施例5> 固体酸触媒(A−5)の製造;
加熱処理温度を150℃に変更する以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A−5)140部を得た。
【0056】
<実施例6> 固体酸触媒(A−6)の製造;
加熱処理温度を250℃に変更する以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A−6)140部を得た。
【0057】
<比較例1> 固体酸触媒(A’−1)の製造;
加熱処理温度を100℃に変更する以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A’−1)140部を得た。
【0058】
<比較例2> 固体酸触媒(A’−2)の製造;
加熱処理温度を300℃に変更する以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A’−2)140部を得た。
【0059】
<比較例3> 固体酸触媒(A’−3)の製造;
加熱処理を行わない以外は実施例1と同様にして、固体酸触媒(A’−3)140部を得た。
【0060】
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた固体酸触媒(A−1)〜(A−6)、(A’−1)〜(A’−3)の平均粒子径、BET比表面積、酸価及びアスペクト比を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
<実施例7> α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−1)の製造;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び分水管を備えた反応容器に、ラウリルアルコール
1,800部、メタクリル酸1,100部を仕込み(モル比1:1.3)、これに固体酸触媒(A−1)580部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.3部を加えた。撹拌下、反応温度115〜125℃で生成水を分水管により連続的に系外へ除去しながら2時間エステル化反応させた。更に減圧下(−0.039〜−0.033MPa)、115〜125℃で1時間反応させ、次いで120〜130℃で過剰のメタクリル酸を減圧(−0.099〜−0.097MPa)留去した後室温まで冷却し、固体酸触媒(A−1)をデカンテーションで除去することで、α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−1)2,500部を得た。
【0063】
<実施例8〜12、比較例4〜6> α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−2)〜(D−6)、(D’−1)〜(D’−3)の製造;
固体酸触媒(A−1)580部を、それぞれ固体酸触媒(A−2)〜(A−6)、(A’−1)〜(A’−3)に変更した以外は実施例7と同様にして、α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−2)〜(D−6)、(D’−1)〜(D’−3)を製造した。
【0064】
<実施例13>
実施例7で回収した固体酸触媒(A−1)を再度実施例7の固体酸触媒(A−1)として使用し、実施例7のエステル化反応を行い、(A−1)を回収した。
上記操作を9回繰り返して行い、9回再使用した固体酸触媒(A−1)580部を使用した以外は実施例7と同様にして、α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−7)を製造した。
【0065】
<実施例14〜18、比較例7〜9>
固体酸触媒(A−1)を、それぞれ固体酸触媒(A−2)〜(A−6)、(A’−1)
〜(A’−3)に変更した以外は実施例13と同様にして、α,β−不飽和カルボン酸エ
ステル(D−8)〜(D−12)、(D’−4)〜(D’−6)を製造した。
【0066】
<実施例19>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、気体吹き込み口、コンデンサー及びピットを付した
ステンレス製反応槽に、炭素数12及び13のアルキルアルコールの混合物「ドバノール
23」[三菱化学(株)製]5700部、メタクリル酸3300部(モル比1:1.3)、
重合禁止剤としてハイドロキノン1部を仕込み、空気−窒素の混合気(1:2)を50
0ml/分で通気した。115〜125℃まで昇温した後、ダイヤフラムポンプで反応槽
内の反応液を、固体酸触媒(A−1)1800部を充填したステンレス製固定床へ流速1.
1L/分で連続的に通液し、吐出液を元の反応槽へと循環させ、反応槽では、常圧下11
5〜125℃で脱水することで、反応工程と脱水工程を連続的に1時間繰り返した。
その後、反応槽内を減圧(−0.039〜−0.033MPa)にして、更に2時間、
反応工程と脱水工程を連続的に繰り返し、エステル化反応を完結させた。次いで、反応液
の全量を反応槽に戻し、減圧下(−0.099〜−0.097MPa)、120〜130℃
で過剰のメタクリル酸を留去し、α,β−不飽和カルボン酸エステル(D−13)770
0部を得た。なお、固定床での1パスあたりの反応液の平均滞留時間は2.5分であった。
また、エステル化反応における反応液全量の循環繰り返し回数は、固定床での流速から約
18回であった。
【0067】
実施例7〜19、比較例4〜9で得られたα,β−不飽和カルボン酸エステル(D−1)
〜(D−13)、(D’−1)〜(D’−6)の純度、未反応の(B)及び重合物の含有
率を前記方法で測定した。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

N.D.:検出されず(検出限界以下)
【0069】
表2から明らかなように、本発明の固体酸触媒(A)を使用してα,β−不飽和カルボ
ン酸エステル(D)を製造すると、得られた(D)の純度が高く、(D)中の重合物が少ない。また、本発明の(A)は、繰り返し再使用しても触媒活性がほとんど低下しない。一方、比較例の固体酸触媒を使用した場合には、得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルの純度が低く、重合物が多い。また、比較例の固体酸触媒は、繰り返し再使用すると触媒活性が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の固体酸触媒は、触媒活性が高く、繰り返し再使用しても触媒活性が低下し難いため、各種反応の酸触媒として有用である。特に、アルコールとα,β−不飽和カルボン酸又はその低級アルキルエステルとのエステル化反応の際に使用すると、得られたα,β−不飽和カルボン酸エステルの純度が高く、副生成物が少ないため、本発明の固体酸触媒を使用したα,β−不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、高純度のα,β−不飽和カルボン酸エステルを得る方法として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる1種以上の無機多孔体にスルホン酸基を担持させたスルホン酸基担持無機多孔体(a)を、150〜250℃で加熱処理してなる固体酸触媒(A)。
【請求項2】
前期無機多孔体をスルホン酸前駆体基含有化合物(s)と反応させてスルホン酸前駆体
基担持無機多孔体を得た後、スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換して得られるスルホン酸基担持無機多孔体である請求項1記載の固体酸触媒(A)。
【請求項3】
1〜8,000μmの平均粒子径を有する粒状物である請求項1又は2記載の固体酸触媒(A)。
【請求項4】
30〜1500m2/gのBET比表面積を有する請求項1〜3いずれか記載の固体酸触媒(A)。
【請求項5】
20〜200mgKOH/gの酸価を有する請求項1〜4いずれか記載の固体酸触媒(A)。
【請求項6】
1.0〜1.25のアスペクト比を有する球状粒子である請求項1〜5いずれか記載の固体酸触媒(A)。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の固体酸触媒(A)の存在下に、アルコール(B)とα,β−不飽和カルボン酸又はその低級アルキルエステル(C)とを反応させることを特徴とするα,β−不飽和カルボン酸エステル(D)の製造方法。
【請求項8】
アルコール(B)が、1価アルコール若しくは2〜8価の多価アルコール又はそれらの
アルキレンオキサイド付加物である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記(C)が、アクリル酸又はメタクリル酸である請求項7又は8記載の製造方法。


【公開番号】特開2011−131180(P2011−131180A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294425(P2009−294425)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】