説明

固体電解コンデンサの製造方法、重合液付着装置、及び導電ペースト付着装置

【課題】厚さ均一性が良好で特性ばらつきの少ない固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】液槽26、および一対の移動部材27を有する液槽ユニット100を用意する。液槽26には固体高分子電解質層となる重合液P1が貯留されている。一対の移動部材27は、重合液P1の液面に接するとともに、互いに接近離間が自在となっている。一対の移動部材27の間から液槽26に浸漬された素子中間体M1を引き抜くとき、一対の移動部材27は接近移動しており、その間隔d2は非常に狭くなっている。よって、一対の移動部材27の間における重合液P1の液面の面積は小さくなり、これに伴い一対の移動部材27の間における重合液P1の表面張力は大きくなる。その結果、素子中間体M1に付着しようとする余剰な重合液P1をその表面張力により液槽26内に引き戻すことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサの製造方法、重合液付着装置、及び導電ペースト付着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電解コンデンサの製造方法として、例えば特許文献1に記載されているように、弁作用金属(弁金属基体)、化成被膜(誘電体層)、固体電界質層、およびカーボン層からなる中間体を銀ペーストに浸漬して引き上げる際に、当該中間体に対して振動を与えるものが知られている。この方法では、振動を与えることによって、中間体に付着した余剰な銀ペーストを振り落としている。
【特許文献1】特開2005−109317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この固体電解コンデンサの製造方法では、銀ペーストの粘度が大きいと、余剰な銀ペーストを十分に振り落とすことができない場合がある。この場合には、振り落としきれなかった銀ペーストが重力にしたがって中間体の先端部に偏るため、いわゆる液溜まりが発生しやすくなる。これにより、銀ペーストからなる層(導電体層)の厚さが不均一になってしまう。層の厚さが不均一になると、特にESR特性といったコンデンサ特性にばらつきが生じてしまう。
【0004】
そこで、本発明は、厚さ均一性が良好な固体電解コンデンサの製造方法、重合液付着装置、及び導電ペースト付着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は、弁金属基体上に誘電体層を形成して中間体を得る工程と、中間体の誘電体層上に固体電解質層を形成する工程と、固体電解質層上に導電体層を形成する工程と、を有し、固体電解質層を形成する工程は、固体電解質層となる重合液を貯留した液槽と、当該液槽に貯留された重合液の液面に接するとともに、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを用意するステップと、一対の移動部材の間を離間した第1の間隔とし、中間体を一対の移動部材の間に挿入して、当該中間体を液槽内の重合液に浸漬させるステップと、一対の移動部材を移動させて一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とし、重合液に浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜くステップと、を含んでおり、第2の間隔は、中間体を重合液から引き抜く際に中間体に付着しようとする余剰な重合液がその表面張力によって液槽内に引き戻されるように設定されることを特徴とする。
【0006】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法では、まず、液槽と一対の移動部材とを有する液槽ユニットを用意する。液槽には重合液が貯留されており、一対の移動部材は重合液の液面と接している。次に、中間体を一対の移動部材の間に挿入して、液槽内の重合液に浸漬させる。このとき、一対の移動部材の間は離間した第1の間隔となっている。そのため、例えば第1の間隔を中間体の挿入が容易となるような間隔とすれば、中間体を液槽内の重合液に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。続いて、重合液に浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜く。このとき、一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とすることで、中間体に付着しようとする余剰な重合液をその表面張力によって液槽内に引き戻すことができる。例えば、第2の間隔を、中間体の厚さよりも僅かに大きい程度の間隔とした場合を考える。この場合、一対の移動部材の間における液面の面積は小さくなる。一対の移動部材の間における液面の面積が小さくなると、一対の移動部材の間における重合液の表面張力が大きくなる。かかる表面張力が大きくなると、一対の移動部材の間から中間体を引き抜く際、中間体に付着しようとする重合液は液面に強く引っ張られることとなる。その結果、液面から中間体を引き抜きつつ、中間体に付着しようとする余剰な重合液をその表面張力により液槽内に引き戻すことが可能となる。
【0007】
このように、接近離間が自在な一対の移動部材を液槽に取り付け、この一対の移動部材の間から中間体を挿抜することにより、挿抜方向に沿った中間体の側部に重合液が過度に付着することを抑制でき、且つ中間体の先端に液溜まりが生じることを抑制できる。その結果、固体電解質層の厚さが全体的に均一な固体電解コンデンサを製造することができる。厚さ均一性が向上すると固体電解質層表面の凹凸が減少するため、層間ばらつきを抑制することができる。よって、ESR特性といったコンデンサ特性のばらつきが低減された固体電解コンデンサを得ることができる。
【0008】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は、弁金属基体上に誘電体層を形成する工程と、誘電体層上に固体電解質層を形成して中間体を得る工程と、中間体の固体電解質層上に導電体層を形成する工程と、を有し、導電体層を形成する工程は、導電体層となる導電ペーストを貯留した液槽と、当該液槽に貯留された導電ペーストの液面に接するとともに、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを用意するステップと、一対の移動部材の間を離間した第1の間隔とし、中間体を一対の移動部材の間に挿入して、当該中間体を液槽内の導電ペーストに浸漬させるステップと、一対の移動部材を移動させて一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とし、導電ペーストに浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜くステップと、を含んでおり、第2の間隔は、中間体を導電ペーストから引き抜く際に中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストがその表面張力によって液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法では、液槽と一対の移動部材とを備える液槽ユニットを用意する。液槽には導電ペーストが貯留されており、一対の移動部材は導電ペーストの液面と接している。次に、中間体を一対の移動部材の間に挿入して、液槽内の導電ペーストに浸漬させる。このとき、一対の移動部材の間は離間した第1の間隔となっている。そのため、例えば第1の間隔を中間体の挿入が容易となるような間隔とすれば、中間体を液槽内の導電ペーストに浸漬する作業をスムーズに行うことができる。続いて、導電ペーストに浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜く。このとき、一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とすることで、中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストをその表面張力によって液槽内に引き戻すことができる。例えば、第2の間隔を中間体の厚さよりも僅かに大きい程度とした場合には、一対の移動部材の間における導電ペーストの表面張力が大きくなるため、引き抜き時に中間体に付着しようとする導電ペーストは液面に強く引っ張られることとなる。その結果、液面から中間体を引き抜きつつ、中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストをその表面張力により液槽内に引き戻すことが可能となる。
【0010】
このように、接近離間が自在な一対の移動部材を液槽に取り付け、この一対の移動部材の間から中間体を挿抜することにより、挿抜方向に沿った中間体の側部に導電ペーストが過度に付着することを抑制でき、且つ中間体の先端に液溜まりが生じることを抑制できる。その結果、導電体層の厚さが全体的に均一な固体電解コンデンサを製造することが可能となる。厚さ均一性が向上することにより、導電体層表面の凹凸が減少するため、層間ばらつきが抑制されることとなる。よって、ESR特性といったコンデンサ特性のばらつきが低減された固体電解コンデンサを得ることができる。
【0011】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法では、液槽には、重合液を供給する供給手段が接続されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法では、液槽には、導電ペーストを供給する供給手段が接続されていることが好ましい。
【0013】
重合液(導電ペースト)の供給手段を接続することにより、液槽内に重合液(導電ペースト)を適宜供給することが可能となる。そのため、液槽内における重合液(導電ペースト)の液量を一定とし、液面の位置を一定に保つことができるので、中間体における重合液(導電ペースト)の付着位置や付着量を安定したものとすることができる。その結果、特性ばらつきのより少ない固体電解コンデンサを製造することが可能となる。
【0014】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法では、一対の移動部材は、それぞれ表面に溝が形成された円柱体であるとともに、一方の移動部材の軸線と他方の移動部材の軸線とが互いに沿うように配置されており、各移動部材に形成された溝は、周方向に沿っていることが好ましい。
【0015】
この場合には、バーコーターを用いて重合液(導電ペースト)を塗布した場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、中間体を一対の移動部材から引き抜いた直後にこの中間体に付着した重合液(導電ペースト)をみると、表面に移動部材の溝による凹凸が認められるが、かかる凹凸は徐々に消え、やがて重合液(導電ペースト)の表面は非常に平滑なものとなる。このように、溝が形成された円柱体を移動部材として用いることにより、固体電解質層(導電体層)の厚さがより均一な固体電解コンデンサを製造することが可能となる。
【0016】
本発明に係る重合液付着装置は、弁金属基体を含む中間体の表面に重合液を付着させる重合液付着装置であって、重合液を貯留する液槽と、液槽に配置され、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを備え、一対の移動部材は、当該一対の移動部材の間が第1の間隔となるように離間移動するとともに、当該一対の移動部材の間が第2の間隔となるように接近移動し、第2の間隔は、液槽に貯留されて一対の移動部材と接する重合液に浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜く際に、当該中間体に付着しようとする余剰な重合液がその表面張力によって液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の重合液付着装置は液槽ユニットを備えており、かかる液槽ユニットは液槽と液槽に設置された一対の移動部材とを有している。一対の移動部材は、当該一対の移動部材の間が第1の間隔となるように離間移動するとともに、当該一対の移動部材の間が第2の間隔となるように接近移動する。ここで、中間体を一対の移動部材の間から挿入して、液槽に貯留された重合液に浸漬する場合を考える。この場合には、一対の移動部材の間隔を離間した第1の間隔とすることにより、中間体を重合液に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。また、重合液に浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜くとき、一対の移動部材の間隔を接近した第2の間隔とすることで、中間体に付着しようとする余剰な重合液をその表面張力によって液槽内に引き戻すことが可能となる。その結果、挿抜方向に沿った中間体の側部に重合液が過度に付着することを抑制でき、且つ中間体の先端に液溜まりが生じることを抑制できる。よって、重合液からなる固体電解質層の厚さが全体的に均一な固体電解コンデンサを製造することができる。
【0018】
本発明に係る導電ペースト付着装置は、弁金属基体を含む中間体の表面に導電ペーストを付着させる導電ペースト付着装置であって、導電ペーストを貯留する液槽と、液槽に配置され、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを備え、一対の移動部材は、当該一対の移動部材の間が第1の間隔となるように離間移動するとともに、当該一対の移動部材の間が第2の間隔となるように接近移動し、第2の間隔は、液槽に貯留されて一対の移動部材と接する導電ペーストに浸漬された中間体を一対の移動部材の間から引き抜く際に、当該中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストがその表面張力によって液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の導電ペースト付着装置は、液槽ユニットを備えている。この液槽ユニットは、先に述べた重合液付着装置の液槽ユニットと同様の構成を有している。したがって、挿抜方向に沿った中間体の側部に導電ペーストが過度に付着することを抑制でき、且つ中間体の先端に液溜まりが生じることを抑制できる。よって、導電ペーストからなる層の厚さが全体的に均一な固体電解コンデンサを製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、厚さ均一性が良好な固体電解コンデンサの製造方法、重合液付着装置、及び導電ペースト付着装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の一実施形態により製造される固体電解コンデンサを示す断面図である。図1に示されるように、固体電解コンデンサ1は、プリント基板2を備えている。プリント基板2は、エポキシ樹脂等からなる基板3と、陽極配線4と、陰極配線5と、陽極端子6と、陰極端子7とを有している。陽極配線4及び陰極配線5は、基板3の上面に銅(Cu)等によってパターン形成されている。陽極端子6及び陰極端子7は、基板3の下面に銅(Cu)等によってパターン形成されている。基板3にはスルーホール8が設けられており、陽極配線4と陽極端子6、および陰極配線5と陰極端子7は、スルーホール8の内壁面に形成されたメッキ層9により電気的に接続されている。
【0023】
プリント基板2上には、コンデンサ素子積層体10が固定されている。コンデンサ素子積層体10は、4層のコンデンサ素子11が積層されて構成されている。コンデンサ素子積層体10においては、隣り合うコンデンサ素子11の陰極部14同士が導電性接着剤21により接着されており、最下層のコンデンサ素子11の陰極部14がプリント基板2の陰極配線5に導電性接着剤21により接着されている。プリント基板2上に固定されたコンデンサ素子積層体10は、樹脂モールド22により覆われている。
【0024】
コンデンサ素子11は、アルミニウム等の弁金属からなる箔状の弁金属基体16を含んでいる。図2は、コンデンサ素子11の厚さ方向の拡大断面図である。弁金属基体16は長方形板状を呈しており、その厚さは約110μmとなっている。弁金属基体16の一端部16aは、プリント基板2の陰極配線5上に位置しており、弁金属基体16の他端部16bは、プリント基板2の陽極配線4上に位置している。弁金属基体16の他端部16bは、プリント基板2の陽極配線4上に積層されて、陽極配線4に溶接されている。
【0025】
図2に示されるように、弁金属基体16の表面16cは、表面積を増やすためにエッチングが施されることにより粗面化(拡面化)されてポーラス状になっている。弁金属基体16の表面16cには、陽極酸化処理によって絶縁性の極めて薄い酸化皮膜18(誘電体層)が形成されている。
【0026】
弁金属基体16の一端部16aには、固体高分子電解質層14a(固体電解質層)、内側導電体層14b、及び外側導電体層14c(導電体層)が形成されている。固体高分子電解質層14aは、酸化皮膜18上に、弁金属基体16の凹部に含浸するように形成されている。固体高分子電解質層14aは、導電性高分子化合物を含んでいる。
【0027】
この固体高分子電解質層14a上には、内側導電体層14b及び外側導電体層14cが順次形成されている。内側導電体層14bはカーボンを含む導電性材料からなっており、外側導電体層14cは銀を含む導電性材料からなっている。固体高分子電解質層14a、内側導電体層14b、及び外側導電体層14cは、コンデンサ素子11の陰極部14として機能する。
【0028】
弁金属基体16の所定の領域には、レジスト層19が設けられている。レジスト層19は、固体高分子電解質層14a、内側導電体層14b、及び外側導電体層14cを形成するために弁金属基体16の一端部16aを溶液に浸漬させているときに、ポーラス状になっている弁金属基体16の表面における毛細管現象により、溶液が弁金属基体16の他端部16b側へ上がってくることを防止するためのものである。レジスト層19は、絶縁性を有するエポキシ系樹脂等からなっている。弁金属基体16のうち、レジスト層19よりも他端部16b側に位置する領域は、コンデンサ素子11の陽極部12として機能する。
【0029】
次に、上述した固体電解コンデンサ1の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の、一部工程を示す図である。図4は、図3に示されるIV−IV線に沿った断面図である。
【0030】
固体電解コンデンサ1を製造するにあたって、まず、アルミニウム等の弁金属からなる箔を準備する。この弁金属箔に対し、化学的又は電気化学的なエッチングを施して、表面を粗面化する。そして、粗面化された弁金属箔を櫛歯状に打ち抜く。これにより、帯状体23の一端に所定の間隔をもって配置された複数の弁金属基体16が得られることとなる。
【0031】
続いて、スクリーン印刷によって、各弁金属基体16の外側表面における所定の領域に、エポキシ系樹脂等からなるレジスト層19を形成する。レジスト層19を形成した後、陽極酸化処理によって、酸化皮膜18を形成する。陽極酸化処理は、例えば、各弁金属基体16をアジピン酸アンモニウム水溶液などの化成溶液に浸漬させた状態で電圧を印加して行われる。このとき、化成溶液がレジスト層19を超えて付着しないようにする。これにより、弁金属基体16上に酸化皮膜18が形成されてなる素子中間体M1(中間体)を得ることができる。
【0032】
得られた各素子中間体M1の酸化皮膜18上に固体高分子電解質層14aを形成する。固体高分子電解質層14aを形成するにあたって、図3に示されるような液槽ユニット100を備える重合液付着装置を用意する。
【0033】
液槽ユニット100は、液槽26と一対の移動部材27とを有している。液槽26には、固体高分子電解質層14aとなる重合液P1が貯留されている。重合液P1は、導電性高分子化合物としての3,4−エチレンジオキシチオフェン(Bayel社製、BAYTRONM)、パラトルエンスルホン酸鉄溶液(Bayel社製、BAYTRON C−B 50)、およびブタノールを含む混合溶液である。
【0034】
図4に示されるように、液槽26には、供給管30を介して補充容器32(供給手段)が接続されている。補充容器32は重合液P1の貯蔵タンクであり、補充容器32に貯蔵された重合液P1が供給管30を介して液槽26内に供給されるようになっている。補充容器32からの重合液P1の供給は、液槽26内における重合液P1の貯留量が基準量よりも少なくなった場合に行われるとしてもよいし、液槽26内から各素子中間体M1が引き上げられる毎に行われるとしてもよい。このように、液槽26内に重合液P1を適宜補充することが可能となるため、液槽26内における重合液P1の液量を一定とし、液面の位置を一定に保つことができる。よって、素子中間体M1における重合液P1の付着位置や付着量を安定したものとすることができ、サイズばらつきや特性ばらつきがより少ないコンデンサ素子11を得ることができる。このようなコンデンサ素子11を備える固体電解コンデンサ1もまた、サイズばらつきや特性ばらつきがより小さいものとなる。また、液槽26内に重合液P1を適宜補充することにより、液槽26内における重合液P1の粘度を一定に保てるといった効果も期待できる。
【0035】
一対の移動部材27は、円柱体を呈しており、軸方向が互いに沿うように対向配置されている。一対の移動部材27の表面には溝28が形成されており、かかる溝28は移動部材27の周方向に沿っている。移動部材27としては、ステンレス等からなるシャフトに、ステンレス等からなるワイヤを密に巻き付けてなるバーコーターを用いることができる。バーコーターを用いた場合、ワイヤ間のくぼみが溝28に相当する。
【0036】
一対の移動部材27は、互いに接近離間する方向に移動可能となっている。移動部材27の軸方向から見ると、移動部材27の約半分は液面下に位置している。このように移動部材27を液面と接するように配置することにより、移動部材27の表面を常に重合液P1で濡れた状態にすることができ、移動部材27の表面に重合液P1の乾燥物が固着するのを抑制できる。その結果、移動部材27と移動部材27との間隔が制御できなくなることを未然に防げる。
【0037】
各素子中間体M1を液槽26内の重合液P1に浸漬させる前に、上述した一対の移動部材27を離間移動させて、一対の移動部材27の間隔をd1とする。ここで、間隔d1(第1の間隔)は、各素子中間体M1の挿入が容易となるような間隔であり、換言すれば、各素子中間体M1の厚さよりも十分に大きな間隔である。
【0038】
間隔d1だけ隔てられた一対の移動部材27の間から、図4(a)に示されるように、各素子中間体M1を挿入する。このとき、各素子中間体M1の両主面が一対の移動部材27と対向するようにする。そして、液槽26内に貯留された重合液P1に各素子中間体M1を浸漬させる。この場合、十分な距離が保たれた一対の移動部材27の間に各素子中間体M1を挿入することとなるため、各素子中間体M1を重合液P1に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。なお、各素子中間体M1を重合液P1に浸漬させる際には、重合液P1がレジスト層19を超えて付着しないようにする。
【0039】
各素子中間体M1を重合液P1に浸漬させた後、一対の移動部材27を互いに接近移動させて、一対の移動部材27の間隔がd2となるようにする。間隔d2(第2の間隔)は、各素子中間体M1を重合液P1から引き抜く際に各素子中間体M1に付着しようとする余剰な重合液P1をその表面張力によって液槽26内に引き戻すことができるような間隔である。より具体的には、間隔d2は、各素子中間体M1の厚さよりも僅かに大きい程度となっている。更に具体的にいうと、間隔d2は、弁金属基体16の厚さの約8倍〜50倍、すなわち約0.8mm〜5mmとなっている。
【0040】
一対の移動部材27の間隔をd2とした後、図4(b)に示されるように、重合液P1に浸漬された各素子中間体M1を、一対の移動部材27の間から引き抜く。各素子中間体M1を引き抜く際には、各素子中間体M1が一対の移動部材27と当接しないようにする。これにより、各素子中間体M1に薄く付着した重合液P1が、移動部材27の周面で擦り落とされるということがなくなる。よって、各素子中間体M1に重合液P1が薄く付着した状態を維持することができる。
【0041】
本工程では、素子中間体M1を重合液P1の液面から引き上げつつ、素子中間体M1に付着しようとする重合液P1をその表面張力で液槽26内に引き戻している。先述したように、一対の移動部材27の間は、約0.8mm〜5mmと非常に狭くなっている。そのため、一対の移動部材27の間における重合液P1の液面の面積は、非常に小さなものとなる。液面の面積が小さくなると、重合液P1の表面張力は大きくなる。一対の移動部材27の間における重合液P1の表面張力が大きくなると、一対の移動部材27の間から素子中間体M1を引き抜く際、素子中間体M1に付着しようとする重合液P1は液面側に強く引っ張られることとなる。このように、一対の移動部材27の間隔を狭めることによって重合液P1の表面張力を増加させ、表面張力を増加させることによって、素子中間体M1を重合液P1の液面から引き抜くときの液切れ性を向上させている。
【0042】
各移動部材27には溝28が設けられている。そのため、一対の移動部材27の間から各素子中間体M1を引き抜いた直後に、各素子中間体M1に付着している重合液P1を見ると、溝28の跡が認められる。しかしながら、この溝28の跡は表面張力等により徐々に消え、やがて重合液P1の表面は非常に平滑なものとなる。このように、溝28が形成された一対の移動部材27の間から各素子中間体M1を引き抜くことにより、バーコーターを用いて各素子中間体M1の表面に重合液P1を塗布した場合と同様の効果を得ることができる。よって、固体高分子電解質層14aの厚さがより均一なコンデンサ素子11を製造することが可能となる。このようなコンデンサ素子11を備える固体電解コンデンサ1もまた、固体高分子電解質層14aの厚さ均一性がより良好なものとなる。
【0043】
一対の移動部材27の間から引き抜いた各素子中間体M1に対して、150℃の炉内で約5分の熱処理を行った後、水洗・乾燥を行う。重合液P1への浸漬、引き抜き、熱処理、水洗・乾燥といった一連の工程を数回繰り返すことにより、素子中間体M1上に固体高分子電解質層14aが形成されてなる素子中間体M2(中間体)を得ることができる。
【0044】
得られた各素子中間体M2の表面上に、第1の導電ペーストを付着させて内側導電体層14bを形成した後、内側導電体層14b上に第2の導電ペーストP2を付着させて外側導電体層14cを形成する。
【0045】
第1の導電ペーストの付着は、例えば、第1の導電ペースト中に各素子中間体M2を浸漬することにより行うことができる。このとき、第1の導電ペーストがレジスト層19を超えて付着しないようにする。第1の導電ペーストとしては、カーボン粒子、樹脂材料及び溶媒を含む混合物が挙げられる。第1の導電ペーストに浸漬して引き抜いた後、各素子中間体M2の表面に付着した当該第1の導電ペーストを加熱乾燥することによって、第1の導電ペースト中に含まれる溶媒を揮発しながら、内側導電体層14bを形成する。これにより、素子中間体M2の表面に内側導電体層14bが形成されてなる素子中間体M3が得られる。
【0046】
続いて、各素子中間体M3の内側導電体層14b上に外側導電体層14cを形成する。外側導電体層14cを形成するにあたって、図3に示されるような液槽ユニット200を備える導電ペースト付着装置を用意する。
【0047】
液槽ユニット200は、液槽36と一対の移動部材37とを有している。液槽36には、外側導電体層14cとなる第2の導電ペーストP2が貯留されている。第2の導電ペーストP2は、銀粒子および樹脂材料を含む溶液である。なお、第2の導電ペーストP2には、銀粒子を均一に分散させるための溶媒が含まれていてもよい。
【0048】
図4に示されるように、液槽36には、供給管40を介して補充容器42(供給手段)が接続されている。補充容器42は第2の導電ペーストP2の貯蔵タンクであり、補充容器42内の第2の導電ペーストP2が供給管40を介して液槽36内に供給されるようになっている。補充容器42からの第2の導電ペーストP2の供給は、液槽36内における第2の導電ペーストP2の貯留量が基準量よりも少なくなった場合に行われるとしてもよいし、液槽36内から各素子中間体M3が引き上げられる毎に行われるとしてもよい。このように、液槽36に第2の導電ペーストP2を適宜補充することが可能となるため、液槽36内における導電性ペーストP2の液量を一定とし、液面の位置を一定に保つことができる。よって、素子中間体M3における導電性ペーストP2の付着位置や付着量を安定したものとすることができ、サイズばらつきや特性ばらつきがより少ないコンデンサ素子11を得ることができる。また、液槽36に導電性ペーストP2を適宜補充することにより、液槽36内における第2の導電性ペーストP2の粘度をほぼ一定に保てるといった効果も期待できる。
【0049】
一対の移動部材37は、固体高分子電解質層14aを形成する際に用いた一対の移動部材27と同様の構成を有している。すなわち、一対の移動部材37は円柱体を呈しており、軸方向が互いに沿うように対向配置されている。一対の移動部材37の表面には溝38が形成されており、かかる溝38は移動部材37の周方向に沿っている。移動部材37としてバーコーターを用いた場合には、ワイヤ間のくぼみが溝38に相当する。
【0050】
一対の移動部材37は、互いに接近離間する方向に移動可能となっている。移動部材37の軸方向から見ると、移動部材37の約半分は液面下に位置している。このように移動部材37を液面と接するように配置することにより、移動部材37の表面を常に第2の導電ペーストP2で濡れた状態とすることができる。その結果、移動部材37の表面に第2の導電ペーストP21の乾燥物が固着して移動部材37と移動部材37との間隔が制御できなくなることを防止できる。
【0051】
各素子中間体M3を第2の導電ペーストP2に浸漬させる前に、上述した一対の移動部材37を離間移動させて、一対の移動部材37の間隔をd3とする。ここで、間隔d3(第1の間隔)は、各素子中間体M3の挿入が容易となるような間隔であり、換言すれば、各素子中間体M3の厚さよりも十分に大きな間隔である。
【0052】
間隔d3だけ隔てられた一対の移動部材37の間から、図4(a)に示されるように、各素子中間体M3を挿入する。このとき、各素子中間体M3の両主面が一対の移動部材37と対向するようにする。そして、液槽36内に貯留された第2の導電ペーストP2に各素子中間体M3を浸漬させる。この場合、十分な距離が保たれた一対の移動部材37の間に各素子中間体M3を挿入することとなるため、各素子中間体M3を第2の導電ペーストP2に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。なお、各素子中間体M3を第2の導電ペーストP2に浸漬させる際には、第2の導電ペーストP2がレジスト層19を超えて付着しないようにする。
【0053】
各素子中間体M3を第2の導電ペーストP2に浸漬させた後、一対の移動部材37を互いに接近移動させて、一対の移動部材37の間隔がd4となるようにする。間隔d4(第2の間隔)は、各素子中間体M3を第2の導電ペーストP2から引き抜く際に各素子中間体M3に付着しようとする余剰な第2の導電ペーストP2をその表面張力によって液槽36内に引き戻すことができるような間隔である。より具体的には、間隔d4は、各素子中間体M3の厚さよりも僅かに大きい程度となっている。更に具体的にいうと、間隔d4は、弁金属基体16の厚さの約8倍〜50倍、すなわち約0.8mm〜5mmとなっている。
【0054】
一対の移動部材37の間隔をd4とした後、図4(b)に示されるように、第2の導電ペーストP2に浸漬された各素子中間体M3を、一対の移動部材37の間から引き抜く。引き抜く際には、各素子中間体M3が一対の移動部材37と当接しないようにする。これにより、各素子中間体M3に第2の導電ペーストP2が薄く付着した状態を維持することができる。
【0055】
本工程では、素子中間体M3を第2の導電ペーストP2の液面から引き上げつつ、素子中間体M3に付着しようとする第2の導電ペーストP2をその表面張力で液槽36内に引き戻している。先述したように、一対の移動部材37の間は、約0.8mm〜5mmと非常に狭くなっている。よって、一対の移動部材27の間における重合液P1の表面張力と同様、一対の移動部材37の間における第2の導電ペーストP2の表面張力は、非常に大きなものとなる。その結果、一対の移動部材37の間から素子中間体M3を引き抜く際、素子中間体M3に付着しようとする第2の導電ペーストP2は液面側に強く引っ張られることとなる。このように、一対の移動部材37の間隔を狭めることによって第2の導電ペーストP2の表面張力を増加させ、表面張力を増加させることによって、素子中間体M3を第2の導電ペーストP2の液面から引き抜くときの液切れ性を向上させている。
【0056】
ところで、各移動部材37には溝38が設けられている。そのため、一対の移動部材37の間から各素子中間体M3を引き抜いた直後に、各素子中間体M3に付着している第2の導電ペーストP2を見ると、溝38の跡が認められる。しかしながら、この溝38の跡は表面張力等により徐々に消え、やがて第2の導電ペーストP2の表面は非常に平滑なものとなる。よって、バーコーターを用いて各素子中間体M3の表面に第2の導電ペーストP2を塗布した場合と同様の効果を得ることができるので、外側導電体層14cの厚さがより均一なコンデンサ素子11を製造することが可能となる。このようなコンデンサ素子11を備える固体電解コンデンサ1もまた、外側導電体層14cの厚さ均一性がより良好なものとなる。
【0057】
一対の移動部材27の間から各素子中間体M3を引き抜いた後、各素子中間体M3に付着した第2の導電ペーストP2を乾燥させることによって、外側導電体層14cを形成する。これにより、素子中間体M3上に外側導電体層14cが形成されてなるコンデンサ素子11を得ることができる。
【0058】
続いて、各コンデンサ素子11を帯状体23から切り離す。そして、コンデンサ素子11を積層してコンデンサ素子積層体10を形成し、このコンデンサ素子積層体10をプリント基板2上に固定する。これにより、固体電解コンデンサ1が完成する。
【0059】
上述した固体電解コンデンサ1の製造方法においては、液槽ユニット100を備える重合液付着装置を用意する。液槽ユニット100は、液槽26と一対の移動部材27とを有している。液槽26には重合液P1が貯留されており、一対の移動部材27は重合液P1の液面と接している。この一対の移動部材27の間に素子中間体M1を挿入して、液槽26内の重合液P1に浸漬させる。このとき、一対の移動部材27の間は離間した間隔d1となっている。間隔d1は素子中間体M1の挿入が容易となるような間隔であるため、素子中間体M1を重合液P1に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。続いて、重合液P1に浸漬された素子中間体M1を一対の移動部材27の間から引き抜く。このとき、一対の移動部材27は、接近した間隔d2となっている。間隔d2は、素子中間体M1の厚さよりも僅かに大きい程度の間隔である。一対の移動部材27の間隔がこのように非常に狭くなると、一対の移動部材27の間における重合液P1の液面の面積が非常に小さくなり、これに伴って一対の移動部材27の間における重合液P1の表面張力が大きくなる。一対の移動部材27の間における重合液P1の表面張力が大きくなると、一対の移動部材27の間から素子中間体M1を引き抜く際、素子中間体M1に付着しようとする重合液P1は液面に強く引っ張られることとなる。その結果、液面から素子中間体M1を引き抜きつつ、素子中間体M1に付着しようとする余剰な重合液P1をその表面張力により液槽26内に引き戻すことが可能となる。
【0060】
また、上述した固体電解コンデンサ1の製造方法においては、液槽ユニット200を備える導電ペースト付着装置を用意する。液槽ユニット200は、液槽36と一対の移動部材37とを有している。液槽36には第2の導電ペーストP2が貯留されており、一対の移動部材37は第2の導電ペーストP2の液面と接している。この一対の移動部材37の間に素子中間体M3を挿入して、液槽36内の第2の導電ペーストP2に浸漬させる。このとき、一対の移動部材37は、素子中間体M3の挿入が容易となるような間隔で離間しているため、素子中間体M3を第2の導電ペーストP2に浸漬する作業をスムーズに行うことができる。続いて、第2の導電ペーストP2に浸漬された素子中間体M3を一対の移動部材37の間から引き抜く。このとき、一対の移動部材37は、接近した間隔d4となっている。間隔d4は素子中間体M3の厚さよりも僅かに大きい程度の間隔であるため、一対の移動部材37の間における第2の導電ペーストP2の表面張力を、非常に大きなものとすることができる。その結果、素子中間体M3に付着しようとする余剰な第2の導電ペーストP2を、その表面張力によって液槽36内に引き戻すことが可能となる。
【0061】
このように、接近離間が自在な一対の移動部材27,37を液槽26,36に取り付け、かかる一対の移動部材27,37の間から素子中間体M1,M3を挿抜することにより、素子中間体M1,M3に余剰な重合液P1あるいは第2の導電ペーストP2が付着するのを抑制することができる。その結果、素子中間体M1,M3の両主面に重合液P1あるいは第2の導電ペーストP2が過度に付着することを抑制でき、且つ素子中間体M1,M3の先端に液溜まりが生じることを抑制できる。したがって、固体高分子電解質層14aおよび外側導電体層14cの厚さが全体的に均一なコンデンサ素子11を製造することが可能となり、ひいては固体高分子電解質層14aおよび外側導電体層14cの厚さ均一性が良好な固体電解コンデンサ1を得ることが可能となる。厚さ均一性の向上に伴って固体高分子電解質層14aおよび外側導電体層14c表面の凹凸が減少するため、層間ばらつきが抑制される。これにより、ESR特性といったコンデンサ特性のばらつきが低減されたコンデンサ素子11を得ることができる。
【0062】
ここで、素子中間体M1を引き抜く際に一対の移動部材27の間隔d2を素子中間体M1の厚さよりも僅かに大きい程度とすれば、厚さ均一性が良好な固体高分子電解質層14aが得られることを確認するために、以下のような実験を行った。また、素子中間体M3を引き抜く際に一対の移動部材37の間隔d4を素子中間体M3の厚さよりも僅かに大きい程度とすれば、厚さ均一性が良好な外側導電体層14cが得られることを確認するために、以下のような実験を行った。
【0063】
すなわち、素子中間体M1を一対の移動部材27の間から液槽26内に挿入し、重合液P1に浸漬させた。その後、一対の移動部材27を互いに接近する方向に移動させ、一対の移動部材27の間隔d2を1mmとした。このような間隔となった一対の移動部材27の間から素子中間体M1を引き抜き、熱処理した後に水洗・乾燥させた。重合液P1への浸漬、一対の移動部材37の移動、引き抜き、熱処理、水洗・乾燥といった一連の工程を数回繰り返した後、素子中間体M1に形成された固体高分子電解質層14aの厚さを調べた。
【0064】
また、素子中間体M3を一対の移動部材37の間から液槽36内に挿入し、第2の導電ペーストP2に浸漬させた。その後、一対の移動部材37を互いに接近させ、一対の移動部材37の間隔d4を5mmあるいは1mmとした。このような間隔となった一対の移動部材37の間から素子中間体M3を引き抜き、熱処理した後に水冷・乾燥させて、素子中間体M3に形成された外側導電体層14cの厚さを調べた。
【0065】
これらの結果を図5に示す。なお、弁金属基体16としては、厚さが約110μmのものを用いた。
【0066】
実施例1は、一対の移動部材27の間隔d2を1mmとしたときの、固体高分子電解質層14aの厚さを示している。これに対して、比較例1は、実施例1とほぼ同じ工程であるが、素子中間体M1を引き抜く際に一対の移動部材27の間隔d2を10mmとしたときの、固体高分子電解質層14aの厚さを示している。
【0067】
実験の結果、比較例1では、素子中間体M1のレジスト層19側における固体高分子電解質層14aの厚さは4μmであり、素子中間体M1の先端側における固体高分子電解質層14aの厚さは23μmであった。素子中間体M1のレジスト層19側と先端側とで、厚さに19μmの差が生じた。これに対して、実施例1では、素子中間体M1のレジスト層19側における固体高分子電解質層14aの厚さは5μmであり、素子中間体M1の先端側における固体高分子電解質層14aの厚さは8μmであった。素子中間体M1のレジスト層19側と先端側とで、厚さの差はわずか3μmであった。以上のことから、素子中間体M1を引き抜く際に、一対の移動部材27の間隔d2を素子中間体M1の厚さよりも僅かに大きい程度とすることで、厚さ均一性が良好な固体高分子電解質層14aを得られることが確認された。また、このようにすることで、固体高分子電解質層14aの厚さを薄くできることも確認された。
【0068】
実施例2は、一対の移動部材37の間隔d4を5mmとしたときの、外側導電体層14cの厚さを示している。実施例3は、一対の移動部材37の間隔d4を1mmとしたときの、外側導電体層14cの厚さを示している。これに対して、比較例2は、実施例2,3とほぼ同じ工程であるが、素子中間体M1を引き抜く際に一対の移動部材37の間隔d4を10mmとしたときの、外側導電体層14cの厚さを示している。
【0069】
実験の結果、比較例2では、素子中間体M3のレジスト層19側における外側導電体層14cの厚さは16μmであり、素子中間体M3の先端側における外側導電体層14cの厚さは25μmであった。素子中間体M3のレジスト層19側と先端側とで、厚さに9μmの差が生じた。これに対して、実施例2では、素子中間体M3のレジスト層19側における外側導電体層14cの厚さは12μm、素子中間体M3の先端側における外側導電体層14cの厚さは16μmであり、素子中間体M1のレジスト層19側と先端側とで、厚さの差はわずか4μmであった。また、実施例3では、素子中間体M3のレジスト層19側における外側導電体層14cの厚さは9μm、素子中間体M3の先端側における外側導電体層14cの厚さは12μmであり、素子中間体M3のレジスト層19側と先端側とで、厚さの差はわずか3μmであった。以上のことから、素子中間体M3を引き抜く際に、一対の移動部材37の間隔d4を素子中間体M3の厚さよりも僅かに大きい程度とすることで、厚さ均一性が良好な外側導電体層14cを得られることが確認された。また、このようにすることで、外側導電体層14cの厚さを薄くできることも確認された。
【0070】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、本実施形態では、液槽ユニット100を備える重合液付着装置を用いて固体高分子電解質層14aを形成し、液槽ユニット200を備える導電ペースト付着装置を用いて外側導電体層14cを形成するとした。これを、固体高分子電解質層14aは重合液付着装置を用いて形成し、外側導電体層14cは導電ペースト付着装置を用いずに従来の方法で形成するとしてもよい。逆に、外側導電体層14cは導電ペースト付着装置を用いて形成し、固体高分子電解質層14aは重合液付着装置を用いずに従来の方法で形成するとしてもよい。また、内側導電体層14bを、重合液付着装置および導電ペースト付着装置と同様の構成を有する装置を用いて形成するとしてもよい。この場合には、素子中間体M2に余剰な第1の導電ペーストが付着することを抑制できるため、内側導電体層14bの厚さ均一性が良好な固体電解コンデンサ1を製造することができる。
【0072】
また、本実施形態では、一対の移動部材27,37は円柱体を呈しているとしたが、移動部材27,37の形状はこれに限られない。例えば、図6(a)に示されるように、一対の移動部材27,37は、略平板状であって、互いに対向する部分のみが丸みを帯びた形状を呈しているとしてもよい。また、図6(b)に示されるように、一対の移動部材27,37は、略平板状であって、互いに対向する部分が尖った形状を呈しているとしてもよい。そのほか、三角柱といった形状を呈していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の一実施形態により製造される固体電解コンデンサを示す断面図である。
【図2】コンデンサ素子の拡大断面図である。
【図3】本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の、一部工程を示す図である。
【図4】図3に示されるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】厚さ均一性を調べる実験の結果を示す図表である。
【図6】移動部材の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1…固体電解コンデンサ、11…コンデンサ素子、14a…固体高分子電解質層、14b…内側導電体層、14c…外側導電体層、16…弁金属基体、18…酸化皮膜、19…レジスト層、26,36…液槽、27,37…移動部材、28,38…溝、30,40…供給管、32,42…補充容器、100,200…液槽ユニット、M1,M2,M3…素子中間体、P1…重合液、P2…導電ペースト。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属基体上に誘電体層を形成して中間体を得る工程と、
前記中間体の前記誘電体層上に固体電解質層を形成する工程と、
前記固体電解質層上に導電体層を形成する工程と、
を有し、
前記固体電解質層を形成する工程は、
前記固体電解質層となる重合液を貯留した液槽と、当該液槽に貯留された前記重合液の液面に接するとともに、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを用意するステップと、
前記一対の移動部材の間を離間した第1の間隔とし、前記中間体を前記一対の移動部材の間に挿入して、当該中間体を前記液槽内の前記重合液に浸漬させるステップと、
前記一対の移動部材を移動させて前記一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とし、前記重合液に浸漬された前記中間体を前記一対の移動部材の間から引き抜くステップと、
を含んでおり、
前記第2の間隔は、前記中間体を前記重合液から引き抜く際に前記中間体に付着しようとする余剰な重合液がその表面張力によって前記液槽内に引き戻されるように設定されることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
弁金属基体上に誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に固体電解質層を形成して中間体を得る工程と、
前記中間体の前記固体電解質層上に導電体層を形成する工程と、
を有し、
前記導電体層を形成する工程は、
前記導電体層となる導電ペーストを貯留した液槽と、当該液槽に貯留された前記導電ペーストの液面に接するとともに、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、を有する液槽ユニットを用意するステップと、
前記一対の移動部材の間を離間した第1の間隔とし、前記中間体を前記一対の移動部材の間に挿入して、当該中間体を前記液槽内の前記導電ペーストに浸漬させるステップと、
前記一対の移動部材を移動させて前記一対の移動部材の間を接近した第2の間隔とし、前記導電ペーストに浸漬された前記中間体を前記一対の移動部材の間から引き抜くステップと、
を含んでおり、
前記第2の間隔は、前記中間体を前記導電ペーストから引き抜く際に前記中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストがその表面張力によって前記液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記液槽には、前記重合液を供給する供給手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記液槽には、前記導電ペーストを供給する供給手段が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記一対の移動部材は、それぞれ表面に溝が形成された円柱体であるとともに、一方の前記移動部材の軸線と他方の前記移動部材の軸線とが互いに沿うように配置されており、
前記各移動部材に形成された溝は、周方向に沿っていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
弁金属基体を含む中間体の表面に重合液を付着させる重合液付着装置であって、
前記重合液を貯留する液槽と、
前記液槽に配置され、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、
を有する液槽ユニットを備え、
前記一対の移動部材は、当該一対の移動部材の間が第1の間隔となるように離間移動するとともに、当該一対の移動部材の間が第2の間隔となるように接近移動し、
前記第2の間隔は、前記液槽に貯留されて前記一対の移動部材と接する前記重合液に浸漬された前記中間体を前記一対の移動部材の間から引き抜く際に、当該中間体に付着しようとする余剰な重合液がその表面張力によって前記液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする重合液付着装置。
【請求項7】
弁金属基体を含む中間体の表面に導電ペーストを付着させる導電ペースト付着装置であって、
前記導電ペーストを貯留する液槽と、
前記液槽に配置され、互いに接近離間する方向に移動可能な一対の移動部材と、
を有する液槽ユニットを備え、
前記一対の移動部材は、当該一対の移動部材の間が第1の間隔となるように離間移動するとともに、当該一対の移動部材の間が第2の間隔となるように接近移動し、
前記第2の間隔は、前記液槽に貯留されて前記一対の移動部材と接する前記導電ペーストに浸漬された前記中間体を前記一対の移動部材の間から引き抜く際に、当該中間体に付着しようとする余剰な導電ペーストがその表面張力によって前記液槽内に引き戻されるように設定されていることを特徴とする導電ペースト付着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−78224(P2008−78224A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253212(P2006−253212)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】