説明

固体電解質を用いたセンサプローブ

【課題】 使い勝手が良く、製作が容易である固体電解質を用いたセンサプローブを提供する。
【解決手段】 水素酸素センサプローブ11は、単位センサプローブとしての水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29のうち同種又は異種の2つのセンサプローブが組み込まれて構成されている。具体的には、水素酸素センサプローブ11は水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29の2つのセンサプローブが組み込まれて構成されている。或は、水素酸素センサプローブ11は同種のセンサプローブが2つ組み込まれて構成される。そして、測定対象媒体中に置かれて水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧を測定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅等の溶湯中の水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧を測定するために用いられる固体電解質を用いたセンサプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から我が国では銅が電線や伸銅品として使用されているが、それらの電線や伸銅品は溶解、鋳造操作を経て製造される。この溶解、鋳造操作において、気孔などの凝固欠陥が生じた場合には再溶解が強いられ、それがエネルギー原単位を押し上げる要因になる。溶融銅には水素と酸素とが共に溶解することが知られている。特に、溶融銅中に溶解する水素は、凝固時のガス発生による鋳造欠陥の原因となるほか、材料中に残存して諸特性の劣化を招くことから、溶解プロセスにおいてその量をモニターすることが望まれてきた。
【0003】
一方、溶融金属中の酸素については、安定化ジルコニアを固体電解質とした電池型の酸素センサプローブにより、溶解量をリアルタイムでインライン測定する技術が確立されており、銅の溶解プロセスでも有効に利用されている。溶融金属中の水素についても、酸化物プロトン導電体を用いた溶融銅用の水素センサプローブの開発が進められている(例えば、非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】資源・素材‘99(秋季大会)、素材プロセシング、D4−10、124頁、(平成11年11月1日〜3日、社団法人 資源・素材学会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の従来技術においては、水素センサプローブは水素の測定のみであり、酸素センサプローブは酸素の測定のみであって、いずれかの専用品であるため、使い勝手の悪いものであった。つまり、水素濃度と酸素濃度を同時に測定したい場合、或は水素濃度又は酸素濃度の測定の信頼性を上げたい場合には、水素センサプローブと酸素センサプローブとを用意したり、水素センサプローブ又は酸素センサプローブをそれぞれ2本用意したりする必要があった。しかも、水素センサプローブと酸素センサプローブとをそれぞれ独立の製品として別個に作製する必要があり、製作が面倒であった。加えて、その他のセンサプローブ、例えばシリコンセンサプローブ、硫黄センサプローブ等を用いる場合にも同様の問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、使い勝手が良く、製作が容易である固体電解質を用いたセンサプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブは、測定対象媒体中に置かれる固体電解質管内に基準物質が収容された単位センサプローブが複数組み込まれて構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブは、請求項1に係る発明において、前記複数の単位センサプローブは、異種の単位センサプローブ又は同種の単位センサプローブが複数組合せて構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブは、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記複数の単位センサプローブは、水素センサプローブ及び酸素センサプローブであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブは、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記複数の単位センサプローブは、複数の水素センサプローブ又は複数の酸素センサプローブであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブは、測定対象媒体中に置かれる固体電解質管内に基準物質が収容された単位センサプローブが複数組み込まれて構成されている。このため、測定対象媒体中で、複数の単位センサプローブにより同時に測定することができ、使い勝手が良い。更に、複数の単位センサプローブを各々別個に作製する必要がなく、プローブ以外の部分を共用できるため、製作が容易である。
【0011】
請求項2に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブにおいては、複数の単位センサプローブは異種の単位センサプローブ又は同種の単位センサプローブが複数組合せて構成されている。このため、請求項1に係る発明の効果に加え、異種の単位センサプローブにより異種の成分を同時に測定したり、同種のセンサプローブにより測定の信頼性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブでは、複数の単位センサプローブは、水素センサプローブ及び酸素センサプローブであることから、測定対象媒体中の水素濃度又は水素分圧と酸素濃度又は酸素分圧とを同時に測定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明の固体電解質を用いたセンサプローブにおいては、複数の単位センサプローブは、複数の水素センサプローブ又は複数の酸素センサプローブであることから、水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧の測定の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2(a)は本実施形態における水素酸素センサプローブを示す概略正面図、(b)はプローブとホルダーとを分解して示す概略正面図、(c)は演算器を示す概略背面図である。これらの図に示すように、水素酸素センサは、円柱状の水素酸素センサプローブ11と、該水素酸素センサプローブ11を収容保持する有底円筒状のホルダー12と、一端が水素酸素センサプローブ11に接続された接続ケーブル13と、該接続ケーブル13の他端にコネクター14を介して接続された演算器15とにより構成されている。
【0015】
水素酸素センサプローブ11は、銅、銅合金、鉄、アルミニウム等の金属の溶湯等の測定対象媒体中に浸漬されて水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧を測定するようになっている。この水素酸素センサプローブ11には、単位センサプローブとしての水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29のうち同種又は異種の2つのセンサプローブが組み込まれている。すなわち、水素酸素センサプローブ11には、同種のセンサプローブが2つ組み込まれて構成されるか、又は水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29の2つのセンサプローブが組み込まれて構成される。そして、水素酸素センサプローブ11の使用時には、2つの水素センサプローブ26で水素濃度若しくは水素分圧を測定するか又は2つの酸素センサプローブ29で酸素濃度若しくは酸素分圧を測定するか或は水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29で水素濃度又は水素分圧と酸素濃度又は酸素分圧とを同時に測定するように構成されている。
【0016】
演算器15は四角箱状に形成され、その表面には温度表示部16及び濃度又は分圧表示部17が設けられている。演算器15の裏面には濃度、分圧表示切換部18及び電源スイッチ19が設けられている。そして、演算器15は、水素酸素センサプローブ11からの信号に基づいて水素濃度又は酸素濃度を演算し又は水素分圧又は酸素分圧とを演算して表示するようになっている。
【0017】
次に、水素酸素センサプローブ11について詳細に説明する。まず、センサプローブに水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えている場合について説明する。図2(a)は水素酸素センサプローブの要部を破断して示す正面図、(b)は(a)の状態でキャップを取り外したときの側面図である。これらの図に示すように、センサプローブの先端部には円筒状のセラミックベース20が配設され、そのセラミックベース20のほぼ中心部には導線よりなる+側素線21と−側素線22とが先端部で接合されることにより円弧状に形成された熱電対23が配設されている。この熱電対23は石英管24内に配設され、保護されている。+側素線21は白金にロジウム13質量%が含有された合金で形成され、−側素線22は白金で形成されている。
【0018】
該熱電対23の側方位置には水素センサプローブ26とモリブデン電極25とが熱電対23とほぼ同じ高さになるように突設されている。水素センサプローブ26には保護スリーブ30が被せられて保護されている。熱電対23を挟んで水素センサプローブ26と反対側の位置には、酸素センサプローブ29が水素センサプローブ26及びモリブデン電極25とほぼ同じ高さになるように突設されている。
【0019】
図3に示すように、水素センサプローブ26は、測定対象媒体中に置かれる有底円筒状の固体電解質管31内に基準電極として機能する基準物質32が収容されて構成されている。固体電解質管31を形成する固体電解質としては0.03モル%のマグネシア(MgO)がドープされたα−アルミナ(Al23)が用いられ、基準物質32としてはペロブスカイト型酸化物(La0.4Sr0.6CoO3)が用いられる。尚、ペロブスカイト型構造は、特定の立方晶系の結晶構造を表す。また、測定対象媒体である銅が測定電極となり、その測定電極に外部電極としてのモリブデン電極25から電気信号が送られるようになっている。
【0020】
一方、酸素センサプローブ29は、上記の水素センサプローブ26と基本的に同じ構造を有している。固体電解質としては9モル%のマグネシア(MgO)がドープされたジルコニア(ZrO2)が用いられ、基準物質としてはクロム(Cr)と酸化クロム(Cr23)との9:1の質量比の合金が用いられる。
【0021】
これらの熱電対23、水素センサプローブ26、モリブデン電極25及び酸素センサプローブ29を覆うように有蓋円筒状をなす銅製のキャップ27がセラミックベース20に取付け固定されている。該キャップ27先端部の中心には貫通孔28が透設され、測定対象媒体を構成する溶融銅中で貫通孔28を介してキャップ27の外部と内部とが連通されている。
【0022】
次に、センサプローブとして、水素センサプローブ26を2本備える場合について説明すると、図4(a)に示すように、前記水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えたセンサプローブの構造において、酸素センサプローブ29が水素センサプローブ26に変更される。それ以外の部分は基本的に水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えたセンサプローブと同じ構造を有している。
【0023】
続いて、センサプローブとして、酸素センサプローブ29を2本備える場合について説明すると、図4(b)に示すように、前記水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えたセンサプローブの構造において、水素センサプローブ26が酸素センサプローブ29に変更される。それ以外の部分は基本的に水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えたセンサプローブと同じ構造を有している。
【0024】
次に、水素酸素センサプローブ11の原理について説明する。
前記のように、水素センサプローブ26中の固体電解質としては0.03モル%のマグネシアがドープされたプロトン導電性のα−アルミナが用いられており、その内側にペロブスカイト酸化物よりなる基準電極が設けられている。一方、測定電極は溶融液を構成する銅である。そして、固体電解質の両側に存在する媒体中における水素濃度又は水素分圧が異なる場合、基準電極と測定電極との間に発生する起電力Eは下記に示すネルンストの式に基づいて算出される。
【0025】
【数1】

但し、Eは理論起電力、Rは気体定数、Fはファラデー定数及びTは絶対温度を表す。また、
【0026】
【数2】

は基準電極側における水素ガス濃度又は水素ガス分圧を表す。
【0027】
【数3】

は測定電極側における水素ガス濃度又は水素ガス分圧を表す。
【0028】
更に、Aの値は次式で表される値である。
【0029】
【数4】

基準物質として、前述のペロブスカイト型酸化物(La0.4Sr0.6CoO3)を用いると、
【0030】
【数5】

となり、水素ガスのような基準ガスが不要となる。
【0031】
このネルンストの式を用いることにより、一方の水素ガス濃度又は水素ガス分圧と温度が既知の場合には、発生した起電力から他方の水素ガス濃度又は水素ガス分圧を演算することができる。従って、水素センサプローブ26としての機能を果たすことができる。
【0032】
また、酸素センサプローブ29の原理も基本的には水素センサプローブ26の原理と同じである。前記ネルンストの式において、水素ガス濃度又は水素ガス分圧を酸素ガス濃度又は酸素ガス分圧とすればよい。
【0033】
さて、例えば溶融銅中の水素濃度及び酸素濃度を同時に測定する場合には、水素酸素センサプローブ11として水素センサプローブ26と酸素センサプローブ29とを備えた構造のものを用意する。そして、水素酸素センサプローブ11を溶融銅の方へ向け、そのキャップ27部分を溶融銅中へ漬ける。このとき、水素センサプローブ26において起電力(E)が測定されると共に、熱電対23によって溶融銅の温度(T)が測定される。また、固体電解質の一方の側における水素ガス濃度は既知である。従って、水素酸素センサの演算器15において、前記ネルンストの式に基づき溶融銅中の水素濃度が演算され、濃度又は分圧表示部17に表示される。溶融銅中の水素分圧についても同様にして測定され、演算器15で演算されて濃度又は分圧表示部17に表示される。また、溶融銅の温度は熱電対23によって測定され、演算器15で演算されて温度表示部16に表示される。
【0034】
一方、酸素センサプローブ29において起電力(E)が測定されると共に、熱電対23によって溶融銅の温度(T)が測定される。また、固体電解質管31の内側における酸素ガス濃度は既知である。従って、水素酸素センサの演算器15において、前記ネルンストの式に基づき溶融銅中の酸素濃度が演算され、濃度又は分圧表示部17に表示される。酸素分圧についても同様にして測定され、演算器15で演算されて濃度又は分圧表示部17に表示される。
【0035】
具体的に、溶融銅中の水素濃度及び温度を測定した結果を図5(a)に示す。水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから10秒後に水素濃度が上昇し、20秒後には水素濃度が下降し、水素濃度1.3ppmでほぼ一定値を示し、35秒後には再び水素濃度が下降した〔図5(a)中の○印〕。一方、溶融銅の温度は水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから10秒後に上昇し、35秒後まで約1150℃を示し、その後下降を示した〔図5(a)中の□印〕。従って、溶融銅中の水素濃度が約1.3ppmで一定値を示しているとき、溶融銅の温度は約1150℃であった。
【0036】
また、溶融銅中の酸素濃度及び温度を測定した結果を図5(b)に示す。水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから5秒後に酸素濃度が上昇し、9秒後には酸素濃度が下降し、20〜28秒後に酸素濃度2.3ppmでほぼ一定値を示した〔図5(b)中の○印〕。一方、溶融銅の温度は水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから5秒後に上昇し、28秒後まで約1100℃を示し、その後下降を示した〔図5(b)中の□印〕。従って、溶融銅中の酸素濃度が約2.3ppmで一定値を示しているとき、溶融銅の温度は約1100℃であった。
【0037】
このように、本実施形態の水素酸素センサプローブ11では、1本のプローブで溶融銅中の水素濃度に加えて酸素濃度を同時に測定することができる。従って、溶融銅から鋳造品を製造するときに鋳造品の欠陥発生の可能性をより精度良く判断することができる。
【0038】
次に、水素センサプローブ26を2本備えた図4(a)に示すセンサプローブを用い、前記と同様にして溶融銅中で起電力及び温度を測定した結果を図6に示す。この図6に示すように、水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから24秒後までは、2本の水素センサプローブ26で測定された起電力(図6中の○印と△印)が共に一旦上昇してから下降し、24秒〜32秒の間では起電力が約0.22Vというほぼ一定値を示し、その後一方の水素センサプローブ26では起電力の値が下降した。2本の水素センサプローブ26はほぼ同じ一定値を示し、信頼性を向上させることができた。一方、溶融銅の温度は水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから12秒後に上昇し、34秒後まで約1170℃を示した(図6中の□印)。従って、起電力が約0.22Vで安定しているとき、溶融銅の温度が約1170℃であった。
【0039】
次に、酸素センサプローブ29を2本備えた図4(b)に示すセンサプローブを用い、前記と同様にして溶融銅中で起電力及び温度を測定した結果を図7に示す。この図7に示すように、1本の酸素センサプローブ29で測定された起電力(図7中の○印)については、水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから約16秒後までは起電力が徐々に上昇し、その後起電力が約0.7Vでほぼ一定値を示した。このように、2本の酸素センサプローブ29はほぼ同じ一定値を示し、信頼性を向上させることができた。他の1本の酸素センサプローブ29で測定された起電力(図7中の△印)については、水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから10秒後までは起電力が徐々に上昇し、その後起電力が約0.7Vでほぼ一定値を示した。一方、溶融銅の温度は水素酸素センサプローブ11を溶融銅中に漬けてから約7秒後まで次第に上昇し、その後約1170℃で一定値を示した(図7中の□印)。従って、起電力が約0.7Vで安定しているとき、溶融銅の温度が約1170℃であった。
【0040】
以上詳述した第1実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 第1実施形態の水素酸素センサプローブ11には、水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29のうち同種又は異種の2つのセンサプローブが組み込まれている。このため、水素酸素センサプローブ11に組み込まれた2つのセンサプローブにより、測定対象媒体である溶融銅中の水素濃度又は水素分圧と酸素濃度又は酸素分圧とを同時に測定したり、水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧の測定の信頼性を向上させたりすることができ、使い勝手が良い。更に、水素センサと酸素センサとを各々別個に作製する必要がなく、プローブ以外の部分を共有できるため、製作が容易である。
【0041】
・ また、水素酸素センサプローブ11には、同種のセンサプローブとして水素センサプローブ26が2つ又は酸素センサプローブ29が2つ組み込まれている。このため、それぞれ2つのセンサプローブから得られる測定結果に基づいて判断することができると共に、いずれか一方のセンサプローブが測定不能に陥ったときでも残りのセンサプローブで測定結果を得ることができる。従って、水素濃度若しくは酸素濃度又は水素分圧若しくは酸素分圧の測定の信頼性を向上させることができる。
【0042】
・ 更には、水素酸素センサプローブ11には、水素センサプローブ26及び酸素センサプローブ29の2つのセンサプローブが組み込まれていることから、測定対象媒体である溶融銅中の水素濃度と酸素濃度とを同時に測定することができる。
(第2実施形態)
次に、酸素センサプローブ29とマンガン(Mn)センサプローブとを組合せたセンサプローブについて説明する。酸素センサプローブ29は第1実施形態における酸素センサプローブ29の構成と同じである。図8に示すように、単位センサプローブとしてのマンガンセンサプローブ33は、有底円筒状をなす固体電解質管31内に基準物質32が収容されると共に、固体電解質管31の下部外周部に副電極34が設けられて構成されている。固体電解質管31を構成する固体電解質及び基準物質32の組成は、第1実施形態の固体電解質と同じである。副電極34は酸化マンガン(MnO)により構成され、マンガンの測定精度を向上させるために設けられる。
【0043】
そして、このセンサプローブを鉄の溶湯中に浸漬して測定を行うことにより、酸素センサプローブ29により溶湯中の酸素濃度又は酸素分圧を、マンガンセンサプローブ33により溶湯中のマンガン濃度又はマンガン分圧を同時に測定できるようになっている。
【0044】
また、センサプローブとして、水素センサプローブ26とマンガンセンサプローブ33とを組合せて備えることにより、溶湯中の水素とマンガンの双方を同時に測定することができる。更に、センサプローブとしてマンガンセンサプローブ33を複数備えることにより、溶湯中のマンガンの測定精度を向上させることができる。
【0045】
尚、前記各実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 図1(a)において、酸素センサプローブ29を熱電対23より水素センサプローブ26側の近接位置に対向して配置することができ、図4(a)において、一方の水素センサプローブ26を熱電対23より他方の水素センサプローブ26側の近接位置に対向して配置することができる。更に、図4(b)において、一方の酸素センサプローブ29を熱電対23より他方の酸素センサプローブ29側の近接位置に対向して配置することができる。
【0046】
・ 図1(a)において、モリブデン電極25を熱電対23より酸素センサプローブ29側に配置することができ、図4(a)において、モリブデン電極25を熱電対23より水素センサプローブ26側に配置することができ、更に図4(b)において、モリブデン電極25を熱電対23より酸素センサプローブ29側に配置することができる。
【0047】
・ 熱電対23として、JIS C1602(1981)に規定されたBタイプ等を用いることができる。このBタイプは、+側素線21が白金にロジウム30質量%を含む合金で形成され、−側素線22が白金にロジウム6質量%を含む合金で形成されている。
【0048】
・ 前記測定対象媒体としては、例えば溶融金属の上方空間中に存在する気体であってもよい。
・ 酸素センサプローブ29を構成する基準物質として、ニッケル(Ni)と酸化ニッケル(NiO)との9:1の質量比の合金、銅(Cu)と酸化銅(CuO)との9:1の質量比の合金等を用いることができる。
【0049】
・ 前記演算器15に表示された数値を保持するスイッチを設けたり、充電用の端子を設けたりすることもできる。
・ センサプローブとして、クロム(Cr)センサプローブ、シリコン(Si)センサプローブ、マグネシウム(Mg)センサプローブ、アルミニウム(Al)センサプローブ、硫黄(S)センサプローブ、銅(Cu)センサプローブ等を用いることができる。そして、これらのセンサプローブ、前記水素センサプローブ26、酸素センサプローブ29及びマンガンセンサプローブ33から選ばれる2種以上のセンサプローブを組合せて用いることができる。
【0050】
・ センサプローブとして、3種以上のセンサプローブを組合せて構成したり、複数の同種のセンサプローブと異種のセンサプローブとを組合せて構成したりすることも可能である。
【0051】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記測定対象媒体が金属の溶融物であり、該金属の溶融物が測定電極となり、同測定電極に電気信号を送る外部電極が水素センサと酸素センサとで共用されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。このように構成した場合、センサプローブの構成を簡略化することができる。
【0052】
・ 前記複数のセンサプローブが近接位置で対向して配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。このように構成した場合、各センサプローブによる測定精度を一層向上させることができる。
【0053】
・ 前記センサプローブには、熱電対による温度測定部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。このように構成した場合、各センサプローブによる測定に加え、測定対象媒体の温度を測定することができる。
【0054】
・ 前記センサプローブの先端部には、貫通孔を有するキャップが被せられ、該キャップの部分を測定対象媒体中に浸すように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。このように構成した場合、キャップによりセンサプローブを保護することができると共に、各センサプローブによる測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は実施形態における水素酸素センサプローブの要部を破断して示す正面図、(b)は(a)の状態でキャップを取り外したときの側面図。
【図2】(a)は実施形態における水素酸素センサを示す概略正面図、(b)はプローブとホルダーとを分解して示す概略正面図、(c)は演算器を示す概略正面図。
【図3】水素センサプローブ又は酸素センサプローブを拡大して示す断面図。
【図4】(a)は水素センサプローブ2本を備えた水素酸素センサプローブでキャップを取り外した状態での側面図、(b)は酸素センサプローブ2本を備えた水素酸素センサプローブでキャップを取り外した状態での側面図。
【図5】(a)は溶融銅中への水素酸素センサプローブの浸漬時間と水素濃度及び温度との関係を示すグラフ、(b)は溶融銅中への水素酸素センサプローブの浸漬時間と酸素濃度及び温度との関係を示すグラフ。
【図6】溶融銅中への水素センサプローブ2本を備えた水素酸素センサプローブの浸漬時間と起電力及び温度との関係を示すグラフ。
【図7】溶融銅中への酸素センサプローブ2本を備えた水素酸素センサプローブの浸漬時間と起電力及び温度との関係を示すグラフ。
【図8】マンガンセンサプローブを拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0056】
11…水素酸素センサプローブ、26…単位センサプローブとしての水素センサプローブ、29…単位センサプローブとしての酸素センサプローブ、31…固体電解質管、32…基準物質、33…単位センサプローブとしてのマンガンセンサプローブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象媒体中に置かれる固体電解質管内に基準物質が収容された単位センサプローブが複数組み込まれて構成されていることを特徴とする固体電解質を用いたセンサプローブ。
【請求項2】
前記複数の単位センサプローブは、異種の単位センサプローブ又は同種の単位センサプローブが複数組合せて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。
【請求項3】
前記複数の単位センサプローブは、水素センサプローブ及び酸素センサプローブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。
【請求項4】
前記複数の単位センサプローブは、複数の水素センサプローブ又は複数の酸素センサプローブであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固体電解質を用いたセンサプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−53112(P2006−53112A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236659(P2004−236659)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【出願人】(393025002)株式会社ニッサブ (2)
【Fターム(参考)】