説明

固体電解質型燃料電池

【課題】断水時でもフェールセーフ運転に移行して水蒸気改質反応(SR)運転を経て安全に運転停止を行うことができる固体電解質型燃料電池(SOFC)を提供する。
【解決手段】本発明は、改質器20に供給する水を貯水するための貯水タンク26a,26b、この貯水タンク内の水量を検出する水量検出手段136a,136b,136c,136d、及び、貯水タンクに水を供給する給水手段152を備えた水供給手段28と、制御手段110と、を有し、この制御手段は、水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる通常停止運転モードと、水供給手段の給水側の異常時に貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっているように給水手段152,154,158を制御すると共に、この貯水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させるフェールセーフ運転へ移行させる第1のフェールセーフ運転モードと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、燃料ガスと空気を反応させて発電する固体電解質型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で動作する燃料電池である。
【0003】
このSOFCにおいては、酸化物イオン導電性固体電解質を通過した酸素イオンと燃料との反応によって水蒸気又は二酸化炭素を生成し、電気エネルギー及び熱エネルギーが発生する。電気エネルギーは、SOFC外部に取り出されて、各種電気的用途に使用される。一方、熱エネルギーは、燃料、SOFC及び酸化剤等に伝達され、これらの温度上昇に使用される。
【0004】
ここで、従来の燃料電池の一つとして、外部から水補給を行わない、いわゆる水自立を可能とする燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムは、燃料電池の排ガス及び燃料改質装置の排ガスの中に含まれる水蒸気から水を回収する凝縮器と、この凝縮器によって得られた凝縮水を一旦溜める回収水タンクとを備え、この回収水タンク内の水を改質用の水蒸気として再利用することができるようになっている。
しかしながら、このような燃料電池システムでは、起動直後等の水自立が困難な状態において断水が生じたような場合には、凝縮器による凝縮水も十分に得られず、水自立を可能とすることが極めて難しいという問題がある。
【0005】
さらに、従来の燃料電池として、燃料電池で発生した熱を回収して貯湯槽に蓄熱する燃料電池発電システムについても知られている(例えば、特許文献2参照)。この燃料電池発電システムは、発電中に断水が発生した場合、発電運転を停止すると共に、貯湯槽の低温水が加熱されて無くなるまで貯湯水循環ポンプによって熱交換手段と貯湯槽との間で循環させることによって、燃料電池を急速冷却することができるようになっている。
しかしながら、このような燃料電池発電システムは、断水が起こると、貯湯槽の低温水も少なくなるため、冷却効果も低下してしまうという問題がある。また、この燃料電池発電システムは、発電運転を停止する際に水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させることで固体電解質型燃料電池のセル等に悪影響を与えることなく安定的にかつ安全に運転停止させるという技術の基本構成が根本的に異なっているものである。
【0006】
さらに、従来の燃料電池として、断水時に貯水タンクから水供給手段に水を継続的に供給することにより、発電を安定して継続的に行うことができる燃料電池装置についても知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−234869号公報
【特許文献2】特開2008−152999号公報
【特許文献3】特開2008−53209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、詳細は後述するが、従来の固体電解質型燃料電池(SOFC)においては、まず、起動時に、改質器内に燃料ガスと改質用空気を供給して部分酸化改質反応(POX)運転を行い、次に、改質器内に燃料と水を供給して水蒸気改質反応(SR)運転を行い、燃料電池モジュールによる発電運転を行う。
一方、この燃料電池モジュールの運転を停止する際には、燃料ガス及び水蒸気の改質器への供給量を減少させると同時に、発電用空気の燃料電池モジュール内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体及び改質器を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室の温度が所定温度まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器への供給を停止し、改質器における水蒸気改質反応(SR)運転を終了して燃料電池モジュールの運転を停止する。
【0009】
しかしながら、このような固体電解質型燃料電池(SOFC)において、改質器への水の供給が瞬時停止された場合には、改質器における水蒸気改質反応(SR)運転が行うことができない状態となるため、高温状態で緊急停止が行われると、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けるという問題がある。
また、断水時にも水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転停止が可能となるためには、この水蒸気改質反応(SR)運転に要する水の量を常に一定量以上確保しておく工夫が必要であるが、上述した特許文献1〜3に記載された燃料電池を含め、従来の燃料電池には、このような工夫について何ら開示も示唆もされていない。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、断水時でもフェールセーフ運転に移行して水蒸気改質反応(SR)運転を経て安全に運転停止を行うことができる固体電解質型燃料電池(SOFC)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、燃料ガスと空気を反応させて発電する固体電解質型燃料電池であって、複数の固体電解質型の燃料電池セルを備えた燃料電池セル集合体と、燃料ガスを水蒸気改質して上記燃料電池セル集合体に供給する改質器と、上記改質器に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、純水を生成して上記改質器に供給する水供給手段であって、上記改質器に供給する水を貯水するための貯水タンク、この貯水タンク内の水量を検出する水量検出手段、及び、上記貯水タンクに水を供給する給水手段を備えた上記水供給手段と、上記改質器に改質用空気を供給する改質用空気供給手段と、上記燃料電池セル集合体に発電用空気を供給する発電用空気供給手段と、起動時に、改質器内に燃料ガスと改質用空気を供給して部分酸化改質反応(POX)運転を行い、次に、改質器内に燃料と水を供給して水蒸気改質反応(SR)運転を行い、その後上記燃料電池セル集合体による発電運転を行う制御手段と、を有し、上記制御手段は、上記水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる通常停止運転モードと、上記水供給手段の給水側の異常時に上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっているように上記給水手段を制御すると共に、この貯水された水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させるフェールセーフ運転へ移行させる第1のフェールセーフ運転モードと、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、水自立が困難な状態(起動時等)において水供給手段の給水側の異常(断水等)が生じたとしても、制御手段が第1のフェールセーフ運転モードを実行し、水供給手段の貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっているように給水手段を制御すると共に、この貯水された水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させるフェールセーフ運転へ移行させることができるため、水蒸気改質反応(SR)運転を経て安全に運転停止を行うことができる。また、断水時でもこの貯水された水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転によって安定した冷却状態を維持しながら運転を停止させることができるため、水の供給が瞬時停止して水蒸気改質反応(SR)運転を行えずに高温状態で緊急停止させることにより、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けるのを防ぐことができ、燃料電池セルの耐久性の低下を確実に防止できる。
【0012】
上記制御手段は、更に、上記水供給手段の給水側の異常時に上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっていない、もしくは給水側の異常によって上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水できないと判断した場合に燃料ガスの供給を停止するように上記燃料ガス供給手段を制御してフェールセーフ運転へ移行させる第2のフェールセーフ運転モードを備え、上記第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間が上記第2のフェールセーフ運転モードによる運転期間よりも長くなるように制御する。
このように構成された本発明においては、高い頻度で生ずる可能性のある断水等の給水異常に対して、第1のフェールセーフ運転モードによる運転が、貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっていない、もしくは給水側の異常によって上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水できないと判断した場合に瞬時停止(緊急停止)を図る第2のフェールセーフ運転モードよりも長い期間行われるため、安定した冷却状態を維持しながらフェールセーフ運転を行うことができ、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐことができ、燃料電池セルの耐久性の低下を確実に防止できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間が上記通常停止運転モードによる運転期間よりも短くなるように制御する。
このように構成された本発明においては、制御手段が第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間が通常停止運転モードによる運転期間よりも短くなるように制御しているため、断水等の給水異常時に備えて貯水タンクの容量を大きくすることなく、燃料電池セルにも酸化によるダメージを与えずに安定的に第1のフェールセーフ運転モードによってフェールセーフ運転へ移行させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モード及び上記通常停止運転モードにおいて、燃料ガスの供給を維持した状態で水蒸気改質反応(SR)運転を行った後に運転を停止させるように上記燃料ガス供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、瞬時停止が必要な異常時には第2のフェールセーフ運転モードによってフェールセーフ運転へ移行させて燃料ガスの供給を瞬時停止させることができるが、断水等の給水異常時や通常停止時には、第1のフェールセーフ運転モードや通常停止運転モードによって、燃料ガスの供給を瞬時停止させることなく、燃料ガス供給手段による燃料供給を維持した状態でフェールセーフ運転へ移行させることができ、水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させることができる。したがって、断水等の給水異常時や通常停止時に、燃料ガスの供給が瞬時停止して水蒸気改質反応(SR)運転を行えずに高温状態で緊急停止し、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐことができ、燃料電池セルの耐久性の低下を確実に防止できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記水供給手段は、その貯水タンクが第1の貯水タンクと第2の貯水タンクとを備え、上記制御手段は、これらの第1の貯水タンクの貯水量と第2の貯水タンクの貯水量の合計量が所定量以上になるように上記給水手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第1の貯水タンクの貯水量と第2の貯水タンクの貯水量の合計量が所定量以上になるように水量を確保することにより、第1の貯水タンク及び第2の貯水タンクの水管理を一元化して簡易にすることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記水供給手段は、上記第1の貯水タンクが上記第2の貯水タンクの上流側に配置されると共に上記給水手段の下流側に配置され、上記制御手段は、上記第1の貯水タンクから上記第2の貯水タンクに上記給水手段による給水が行われた後、上記第1の貯水タンクが満水になるように上記給水手段による給水を制御する。
このように構成された本発明においては、第2の貯水タンクの上流側に配置された第1の貯水タンクが満水になるように給水手段による給水を行う簡単な制御により、給水異常時にも第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を確実に保持しておくことができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、上記水供給手段は、その水量検出手段が上記第1の貯水タンクの所定の上限貯水量を検出する第1の水量検出手段と、上記第2の貯水タンクの所定の下限貯水量を検出する第2の水量検出手段と、を備え、上記制御手段は、上記第2の水量検出手段が上記第2の貯水タンクの所定の下限貯水量を検出したとき、上記第1の貯水タンクから上記第2の貯水タンクに給水が行われ、上記第1の貯水タンクの所定の上限貯水量まで給水が行われるように上記給水手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第2の水量検出手段が第2の貯水タンクの所定の下限貯水量を検出したとき、第1の貯水タンクから第2の貯水タンクに給水が行われ、第1の貯水タンクが所定の上限貯水量(満水)になるように給水手段による給水を行う簡単な制御により、水供給手段の給水側の異常時にも第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を確実に保持しておくことができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転が上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転とは異なるように制御する。
このように構成された本発明においては、水供給手段の給水側の異常時に、通常停止運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を貯蓄しておくことは大変であるが、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転とは異なるように制御しているため、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐと共に、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水量を節約することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも低下させるように上記燃料ガス供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも低下させることにより、燃料電池セルの温度低下が図られ、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから燃料ガスが消費されて停止するまでの時間を通常停止運転モードよりも短縮することができる。したがって、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水量を節約することができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、更に、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量よりも低下させるように上記水供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも低下させると共に、水の量も通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量よりも積極的に減らしているため、断水等の異常があっても貯水の備蓄量で安全に運転を停止させることができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、更に、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる発電用空気の量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる発電用空気の量よりも低下させるように上記発電用空気供給手段を制御する。
このように構成された本発明においては、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも低下させることにより、燃料電池セルの温度低下が図られるが、このような燃料電池セルの温度低下が急速に行われた場合には、セル自身にも影響を与えてしまうため、第1のフェールセーフ運転モードによるフェールセーフ運転へ移行させて水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、発電用空気の量を低下させることにより、燃料電池セルの温度低下を抑制し、セル自身への影響を緩和することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、断水時でもフェールセーフ運転に移行して水蒸気改質反応(SR)運転を経て安全に運転停止を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常停止運転モードによる通常停止運転時の動作を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の水流量調整ユニットを示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)のフェールセーフ運転モードによる運転を行う際に燃料流量、水流量、及び、発電用空気流量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)のフェールセーフ運転モードによる運転を行う際に第1の貯水タンク及び第2の貯水タンクのそれぞれの貯水量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0025】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0026】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0027】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水する第1の貯水タンク26aと、この第1の貯水タンク26aから供給される水をフィルターにより純水とする第2の貯水タンク(純水タンク)26bとを含む水流量調整ユニット28(詳細は後述する)を備え、この水流量調整ユニット28がこの第2の貯水タンク(純水タンク)26bから供給される純水の流量を調整して改質器20に純水を供給するようになっている。
また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0028】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0029】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0030】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0031】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0032】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0033】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
【0034】
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
【0035】
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0036】
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0037】
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0038】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0039】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0040】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0041】
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0042】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0043】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0044】
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0045】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0046】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0047】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136(詳細は後述する)は、第1の貯水タンク26aと第2の貯水タンク(純水タンク)26bのそれぞれの水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0048】
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0049】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0050】
次に図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0051】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0052】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0053】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0054】
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
【0055】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0056】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
【0057】
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
【0058】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0059】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
【0060】
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0061】
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常停止運転モードによる通常停止運転時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常停止運転モードによる通常停止運転時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、制御部110が通常停止運転モードを選択し、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
【0062】
また、通常停止運転モードによる燃料電池モジュール2の通常停止運転を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、発電用空気流量調整ユニット45による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後(例えば、通常停止運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから5時間後)、発電室の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応(SR)運転が終了することにより、通常停止運転モードによる運転期間が終了する。また、発電用空気の供給は、通常停止運転モードによる運転期間が終了後においても改質器20の温度(発電室の温度でも可)が所定温度、例えば、200℃に低下するまで継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
【0063】
一方、水道等の水供給源24から水流量調整ユニット28に供給される水の供給が所定の水量を下回るか、或いは、水が供給されず、いわゆる断水状態となった場合には、以下に詳細に説明する、通常停止運転モードによる運転とは異なる運転(以下「フェールセーフ運転モードによる運転」)を行う。
【0064】
つぎに、図9により、上述した本実施形態による水流量調整ユニット28について詳細に説明する。図9は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の水流量調整ユニットを示す概略図である。
図9に示すように、純水を生成して改質器20に供給する水供給手段である水流量調整ユニット28は、上流側から順に、水供給源24からの水道水の流量を調整する流量調整弁152と、水供給源24からの水道水を一時的に貯蔵する第1の貯水タンク26aと、この第1の貯水タンク26a内の水を供給するポンプ154と、この供給された水を浄化して純水を生成するためのRO膜(逆浸透膜)156と、生成された純水を一時的に貯蔵する第2の貯水タンク(純水タンク)26bと、この純水を燃料電池モジュール2の改質器20にパルス制御により間欠的に供給するパルスポンプ158とを備えている。
また、熱交換器160や、水及び純水が凍結するのを防止するためのヒーター162も備えている。
【0065】
さらに、第1の貯水タンク26aは、その所定の上限水位と下限水位をそれぞれ検出する水位センサ136a,136bをそれぞれ備え、各水位センサ136a,136bがそれぞれの水位を検出することによって、これらの水位に相当する貯水量(例えば、第1の貯水タンク26aの満水量等)を検出することができるようになっている。
なお、第1の貯水タンク26aの貯水量については、少なくとも満水時の貯水量を検出することができればよく、第1の貯水タンク26aの所定の下限水位を検出する水位センサ136bについては、省略してもよい。
同様に、第2の貯水タンク26bについても、その所定の上限水位と下限水位をそれぞれ検出する水位センサ136c,136dをそれぞれ備え、各水位センサ136c,136dがそれぞれの水位を検出することによって、これらの水位に相当する貯水量(例えば、第2の貯水タンク26bの下限貯水量等)を検出することができるようになっている。
なお、第2の貯水タンク26bの貯水量については、少なくとも下限の貯水量を検出することができればよく、第2の貯水タンク26bの所定の上限水位を検出する水位センサ136cについては、省略してもよい。
【0066】
つぎに、図10及び図11により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)のフェールセーフ運転モードによる運転を行うための制御内容を説明する。図10は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)のフェールセーフ運転モードによる運転を行う際に燃料流量、水流量、及び、発電用空気流量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。図11は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)のフェールセーフ運転モードによる運転を行う際に第1の貯水タンク及び第2の貯水タンクのそれぞれの貯水量を制御するための制御内容を示すフローチャートである。なお、図10及び図11において、Sは各ステップを示している。
【0067】
まず、図10に示すように、S1において、水道等の水供給源24から水流量調整ユニット28に供給される水の供給が所定の水量を下回るか、或いは、水が供給されず、いわゆる断水状態となっている等、水の供給に異常が起きているか否かを判定する。水の供給に異常が起きていると判定した場合には、S2に進み、制御部110が第1のフェールセーフ運転モードを選択する。
つぎに、S3において、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの両貯水量の合計量が所定量以上(例えば、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの少なくともいずれか一方が満水となる水量以上)であるか否かを判定する。そして、両貯水タンク26a,26bの両貯水量の合計量が所定量以上であれば、S4に進む。
【0068】
つぎに、S4においては、制御部110が、第1のフェールセーフ運転モードにおいて行われる水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる燃料ガスの流量について、通常停止運転モードにおける水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる燃料ガスの流量の30%減量した値に設定するように燃料流量調整ユニット38を制御する。
同時に、第1のフェールセーフ運転モードにおいて行われる水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる水の流量について、通常停止運転モードにおける水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる水の流量の30%減量した値に設定するように水流量調整ユニット28を制御する。
さらに、同時に、発電用空気の流量について、通常停止運転モードにおける発電用空気の流量の15%減量した値に設定するように発電用空気流量調整ユニット45を制御する。
【0069】
S4において、燃料ガスの流量、水の流量、及び、発電用空気の流量が設定されると、S5に進み、異常停止制御が実行され、第1のフェールセーフ運転モードによる運転が行われる。
ここで、第1のフェールセーフ運転モードによる運転ついては、通常停止運転モードよりも少ない流量の燃料ガスと水の供給を所定時間維持した状態で水蒸気改質反応(SR)運転を行った後に、燃料ガスと水の供給を停止することにより運転を停止するが、この第1のフェールセーフ運転モードによる運転が開始されてから停止するまでの運転期間(第1のフェールセーフ運転モードによる水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから停止するまでの時間に相当)は、通常停止運転モードによる運転期間(通常停止運転モードによる水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから停止するまでの時間に相当)よりも短くなる。
【0070】
一方、S3において、両貯水タンク26a,26bの両貯水量の合計量が所定量未満であり、両貯水タンク26a,26bに所定量以上の水が貯水された状態になっていない、もしくは、水供給源24等の給水側の異常によって両貯水タンク26a,26bに所定量以上の水が貯水できないと判断した場合には、S6に進み、制御部110が第2のフェールセーフ運転モードを選択する。
つぎに、S7において、制御部110が、第2のフェールセーフ運転モードによる運転で用いられる燃料ガスの流量について、通常停止運転モードにおける水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる燃料ガスの流量の100%減量した値(流量0)に設定するように燃料流量調整ユニット38を制御する。
同時に、第2のフェールセーフ運転モードによる運転で用いられる水の流量について、通常停止運転モードにおける水蒸気改質反応(SR)運転で用いられる水の流量の100%減量した値(流量0)に設定するように水流量調整ユニット28を制御する。
さらに、同時に、発電用空気の流量について、通常停止運転モードにおける発電用空気の流量の100%減量した値(流量0)に設定するように発電用空気流量調整ユニット45を制御する。
S7において、燃料ガスの流量、水の流量、及び、発電用空気の流量がすべて零に設定されると、S5に進み、異常停止制御が実行され、第2のフェールセーフ運転モードによる運転が行われる。
【0071】
すなわち、第2のフェールセーフ運転モードによる運転については、水の供給に関する異常時に、両貯水タンク26a,26bの両貯水量の合計量が所定量未満の場合には、燃料ガス、水、及び、発電用空気の供給を瞬時停止し、水蒸気改質反応(SR)運転は行われない。したがって、上述した通常停止運転モードや第1のフェールセーフ運転モードによる運転とは異なっており、第2のフェールセーフ運転モードによる運転期間についても、他の運転モードによる運転期間に比べて最も短くなっている。
【0072】
つぎに、上述した第1のフェールセーフ運転モードにおいては、図11に示す制御内容によって第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bのそれぞれの貯水量を制御し、水蒸気改質反応(SR)運転を経由して安全な運転停止を可能にする。
まず、図11に示すように、S101において、制御部110が第2の貯水タンク(純水タンク)26bの水位センサ136dが検出した情報に基づいて、第2の貯水タンク(純水タンク)26bが所定の下限の貯水量以下であるか否かを判定する。第2の貯水タンク(純水タンク)26bが所定の下限の貯水量以下であると判定した場合には、S102に進む。
【0073】
つぎに、S102において、制御部110が第1の貯水タンク26aの水位センサ136aが検出した情報に基づいて、第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量(例えば、満水量)に達しているか否かを判定する。第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量(例えば、満水量)に達していないと判定した場合には、S103に進み、水供給源24から第1の貯水タンク26aにさらなる給水が行われるように流量調整弁152を制御する。
【0074】
つぎに、S104に進み、制御部110が第1の貯水タンク26aの水位センサ136aが検出した情報に基づいて、第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量に達しているか否かを再び判定する。第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量(例えば、満水量)に達していると判定した場合には、S105に進み、ポンプ154を作動し、第1の貯水タンク26a内の水をRO膜(逆浸透膜)156に供給して純水を生成し、この純水を第2の貯水タンク(純水タンク)26bに供給する。
【0075】
つぎに、S106に進み、制御部110が第2の貯水タンク(純水タンク)26bの水位センサ136cが検出した情報に基づいて、第2の貯水タンク(純水タンク)26bが所定の上限の貯水量に達しているか否かを判定する。第2の貯水タンク(純水タンク)26bが所定の上限の貯水量に達していると判定した場合には、S107に進み、水供給源24から第1の貯水タンク26aにさらなる給水が行われるように流量調整弁152を制御する。同時に、ポンプ154を停止し、第1の貯水タンク26aから第2の貯水タンク(純水タンク)26bへの水の供給を停止する。
【0076】
つぎに、S108に進み、制御部110が第1の貯水タンク26aの水位センサ136aが検出した情報に基づいて、第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量(例えば、満水量)に達しているか否かを再び判定する。第1の貯水タンク26aが所定の上限の貯水量(例えば、満水量)に達していると判定した場合には、S109に進み、流量調整弁152を閉弁し、第1の貯水タンク26aへの給水を停止する。
【0077】
上述した本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、例えば、起動時等の水自立が困難な状態において、水道等の水供給源24から水流量調整ユニット28に供給される水の供給が所定の水量を下回るか、或いは、水が供給されず、いわゆる断水状態となっている等、水の供給に異常が起きていても、制御部110が第1のフェールセーフ運転モードを実行し、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの両貯水量の合計量が所定量以上(例えば、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの少なくともいずれか一方が満水となる水量以上)貯水された状態になっているように流量調整弁152を制御しているため、この貯水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経由して安全に運転停止を行うことができる。
また、断水時でもこの貯水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転によって安定した冷却状態を維持しながらフェールセーフ運転を行うことができるため、水の供給が瞬時停止して水蒸気改質反応(SR)運転を行えずに高温状態で緊急停止させることにより、燃料電池セルユニット16が酸化して大きなダメージを受けるのを防ぐことができ、燃料電池セルユニット16の耐久性の低下を確実に防止できる。
【0078】
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、高い頻度で生ずる可能性のある断水等の水供給異常に対して、第1のフェールセーフ運転モードによる運転が、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの両貯水量の合計量が所定量以上貯水された状態になっていない、もしくは水供給源24等の給水側の異常によって第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bに所定量以上の水が貯水できないと判断した場合には、緊急停止(瞬時停止)を図る第2のフェールセーフ運転モードよりも長い期間行われるため、安定した冷却状態を維持しながらフェールセーフ運転を行うことができ、燃料電池セルユニット16が酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐことができ、燃料電池セルユニット16の耐久性の低下を確実に防止できる。
【0079】
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第1のフェールセーフ運転モードにおける貯水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経由した運転停止により、通常停止運転モードよりも短い期間で運転を停止させることができるため、断水異常時に備えて第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク26bの容量を大きくすることなく、且つ、燃料電池セルユニット16にも酸化によるダメージを与えずに安定的に第1のフェールセーフ運転モードによるフェールセーフ運転に移行させて運転を停止することができる。
【0080】
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、瞬時停止が必要な異常時には第2のフェールセーフ運転モードによって燃料ガスの供給を瞬時停止させることができるが、断水等の水供給の異常時や通常停止時には、第1のフェールセーフ運転モードや通常停止運転モードによって、燃料ガスの供給を瞬時停止させることなく、燃料流量調整ユニット38による燃料供給を維持した状態で水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させることができる。したがって、断水等の水供給の異常時や通常停止時に、燃料ガスの供給が瞬時停止して水蒸気改質反応(SR)運転を行えずに高温状態で緊急停止し、燃料電池セルが酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐことができ、燃料電池セルの耐久性の低下を確実に防止できる。
【0081】
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第1の貯水タンク26aの貯水量と第2の貯水タンク(純水タンク)26bの貯水量の合計量が所定量以上(例えば、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの少なくともいずれか一方が満水となる水量以上)になるように水量を確保することにより、第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク(純水タンク)26bの水管理を一元化して簡易にすることができる。
【0082】
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第2の貯水タンク(純水タンク)26bの上流側に配置された第1の貯水タンク26aが満水になるように流量調整弁152による給水を行う簡単な制御により、水道等の水供給源24から水流量調整ユニット28に供給される水の供給が所定の水量を下回るか、或いは、水が供給されず、いわゆる断水状態となっている等、水の供給に異常が起きていても、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を確実に保持しておくことができる。
【0083】
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、水位センサ136dが第2の貯水タンク26bの所定の下限貯水量を検出したとき、第1の貯水タンク26aから第2の貯水タンク26bに給水が行われ、第1の貯水タンク26aが所定の上限貯水量(満水)になるように流量調整弁152による給水を行う簡単な制御により、水道等の水供給源24から水流量調整ユニット28に供給される水の供給が所定の水量を下回るか、或いは、水が供給されず、いわゆる断水状態となっている等、水の供給に異常が起きていても、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を確実に保持しておくことができる。
【0084】
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、水の供給の異常時に通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に必要な水量を貯蓄しておくことは大変であるが、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転とは異なるように制御しているため、燃料電池セルユニット16が酸化して大きなダメージを受けてしまうのを防ぐと共に、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水量を節約することができる。
【0085】
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止する際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも減量することにより、燃料電池セルユニット16の温度低下が図られ、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転が開始されてから燃料ガスが消費されて停止するまでの時間(第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間)を通常停止運転モードによる運転期間よりも短縮することができる。したがって、第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水量を節約することができる。
【0086】
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも減量すると共に、水の量も通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量よりも積極的に減量しているため、断水等の異常があっても第1の貯水タンク26a及び第2の貯水タンク26bの貯水の備蓄量で安全に運転を停止させることができる。
【0087】
さらに、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、燃料ガスの量を通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも減量することにより、燃料電池セルユニット16の温度低下が図られるが、このような燃料電池セルユニット16の温度低下が急速に行われた場合には、セル自身にも影響を与えてしまうため、第1のフェールセーフ運転モードの水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる際、発電用空気の量を減量することにより、燃料電池セルユニット16の温度低下を抑制し、セル自身への影響を緩和することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26a 第1の貯水タンク
26b 第2の貯水タンク(純水タンク)
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
112 操作装置
114 表示装置
116 警報装置
126 電力状態検出センサ
136a,136b,136c,136d 水位センサ
142 発電室温度センサ
150 外気温度センサ
152 流量調整弁
154 ポンプ
156 RO膜(逆浸透膜)
158 パルスポンプ
160 熱交換器
162 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気を反応させて発電する固体電解質型燃料電池であって、
複数の固体電解質型の燃料電池セルを備えた燃料電池セル集合体と、
燃料ガスを水蒸気改質して上記燃料電池セル集合体に供給する改質器と、
上記改質器に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
純水を生成して上記改質器に供給する水供給手段であって、上記改質器に供給する水を貯水するための貯水タンク、この貯水タンク内の水量を検出する水量検出手段、及び、上記貯水タンクに水を供給する給水手段を備えた上記水供給手段と、
上記改質器に改質用空気を供給する改質用空気供給手段と、
上記燃料電池セル集合体に発電用空気を供給する発電用空気供給手段と、
起動時に、改質器内に燃料ガスと改質用空気を供給して部分酸化改質反応(POX)運転を行い、改質器内に燃料と水を供給して水蒸気改質反応(SR)運転を行い、その後上記燃料電池セル集合体による発電運転を行う制御手段と、を有し、
上記制御手段は、上記水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させる通常停止運転モードと、上記水供給手段の給水側の異常時に上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっているように上記給水手段を制御すると共に、この貯水された水を用いた水蒸気改質反応(SR)運転を経て運転を停止させるフェールセーフ運転へ移行させる第1のフェールセーフ運転モードと、を備えていることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項2】
上記制御手段は、更に、上記水供給手段の給水側の異常時に上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水された状態になっていない、もしくは給水側の異常によって上記貯水タンクに所定量以上の水が貯水できないと判断した場合に燃料ガスの供給を停止するように上記燃料ガス供給手段を制御してフェールセーフ運転へ移行させる第2のフェールセーフ運転モードを備え、上記第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間が上記第2のフェールセーフ運転モードによる運転期間よりも長くなるように制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項3】
上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードによる運転期間が上記通常停止運転モードによる運転期間よりも短くなるように制御する請求項2記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モード及び上記通常停止運転モードにおいて、燃料ガスの供給を維持した状態で水蒸気改質反応(SR)運転を行った後に運転を停止させるように上記燃料ガス供給手段を制御する請求項3記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項5】
上記水供給手段は、その貯水タンクが第1の貯水タンクと第2の貯水タンクとを備え、
上記制御手段は、これらの第1の貯水タンクの貯水量と第2の貯水タンクの貯水量の合計量が所定量以上になるように上記給水手段を制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項6】
上記水供給手段は、上記第1の貯水タンクが上記第2の貯水タンクの上流側に配置されると共に上記給水手段の下流側に配置され、上記制御手段は、上記第1の貯水タンクから上記第2の貯水タンクに上記給水手段による給水が行われた後、上記第1の貯水タンクが満水になるように上記給水手段による給水を制御する請求項5記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項7】
上記水供給手段は、その水量検出手段が上記第1の貯水タンクの所定の上限貯水量を検出する第1の水量検出手段と、上記第2の貯水タンクの所定の下限貯水量を検出する第2の水量検出手段と、を備え、上記制御手段は、上記第2の水量検出手段が上記第2の貯水タンクの所定の下限貯水量を検出したとき、上記第1の貯水タンクから上記第2の貯水タンクに給水が行われ、上記第1の貯水タンクの所定の上限貯水量まで給水が行われるように上記給水手段を制御する請求項6記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項8】
上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転が上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転とは異なるように制御する請求項1記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項9】
上記制御手段は、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる燃料ガスの量よりも低下させるように上記燃料ガス供給手段を制御する請求項8記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項10】
上記制御手段は、更に、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる水の量よりも低下させるように上記水供給手段を制御する請求項9記載の固体電解質型燃料電池。
【請求項11】
上記制御手段は、更に、上記第1のフェールセーフ運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる発電用空気の量を上記通常停止運転モードで行われる水蒸気改質反応(SR)運転に用いられる発電用空気の量よりも低下させるように上記発電用空気供給手段を制御する請求項9又は10に記載の固体電解質型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−9136(P2011−9136A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153536(P2009−153536)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】