説明

固体高分子電解質材料、製造方法及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体

ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方が環構造を構成している脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含んでおり、当該繰り返し単位にはスルホン酸基等の強酸性基が含まれるポリマー、好ましくはペルフルオロ化されているポリマーからなる固体高分子電解質材料を提供する。この電解質材料は軟化温度が高く、この電解質材料を用いた固体高分子型燃料電池は、従来よりも高い温度で運転可能である。また、この電解質材料を固体高分子型燃料電池のカソードの触媒層に使用すると、電池の出力電圧を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、たとえば、食塩電解や固体高分子型燃料電池用の電解質膜、燃料電池の触媒層に用いる電解質、リチウム電池用電解質等として有用な、イオン性基を有するポリマーからなる固体高分子電解質材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来、食塩電解用膜、固体高分子型燃料電池の膜又は触媒層には、CF=CF−(OCFCFY)−O−(CF−SOFで表される含フッ素モノマー(ただし、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、nは1〜12の整数であり、mは0〜3の整数であり、pは0又は1であり、m+p>0である。)とテトラフルオロエチレンとの共重合体を加水分解して得られるポリマー、又はさらに酸型化して得られるスルホン酸基を有するポリマー(以下、スルホン酸基を有するポリマーをスルホン酸ポリマーという)が用いられている。
上記スルホン酸ポリマーは、軟化温度が80℃付近であるため、このポリマーを使用した燃料電池の運転温度は通常80℃以下である。しかし、メタノール、天然ガス、ガソリン等の炭素原子と水素原子、又は炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる有機化合物を改質して得られる水素を燃料電池の燃料ガスとして使用する場合、一酸化炭素が微量でも含まれると電極触媒が被毒して燃料電池の出力が低下しやすくなる。したがって、これを防止するため運転温度を高めることが要望されている。また、燃料電池の冷却装置を小型化するためにも運転温度を高めることが要望されている。しかし、従来の上記ポリマーは軟化温度が低いためこれらの要望に対応できなかった。
特許第2675548号公報には、側鎖が短く軟化温度の高いスルホン酸ポリマーを燃料電池の電解質として使用することが提案されている。しかし、このようなスルホン酸ポリマーは製造が困難であり高コストであるため、実際には製造されていない。
ポリマーが環構造を有していると、一般に軟化温度が高くなり、現状よりも高い温度での発電が可能となると考えられる。しかし、従来は、ポリマーにスルホン酸基等のイオン性基を含有させるために、当該イオン性基を有しビニルエーテルを重合部位とするモノマーを共重合していたため、ポリマーとして軟化温度が充分に高くならない問題があった。
一方、スルホン酸基等のイオン性基又はその前駆体基を有し、環構造を有し、かつペルフルオロビニルエーテルよりも重合反応性の高い重合部位を有するモノマーは、これまでに合成された例がない。特表2001−522376号公報には、下記(A)〜(E)のモノマーが例示されているが、実際には合成困難であり、合成法や合成例の記載はない。また当該モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーについても記載がない。なお下式中M’は水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を示し、Xはフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメチル基であり、nは0〜10、Qは水素原子、フッ素原子、シアノ基、アルキル基、SOR(Rはアルキル基等)等を表す。


米国特許第4973714号には下記式(F)で表わされるモノマーが開示されており、式中XはF、Cl、−OC、−CN、−COF、−COOR(Rは−CH、−C、−CHCF)、−SOF、−SOCl等の種々の官能基を示すとされている。しかし、Xが−SOF又は−SOClである化合物(Rf1はフッ素原子又はペルフルオロアルキル基であり、Rf2はエーテル結合性酸素原子を含有してもよいペルフルオロアルケニル基である)は合成困難であり、その合成例は記載されていない。

また、環構造を有する固体高分子電解質は、ポリマーの軟化温度が高いだけでなく、燃料電池のカソードに含有させる電解質として適用することにより出力を高められることが特開2002−260705号公報に記載されている。この文献においては、スルホン酸基又はスルホン酸基に変換可能な官能基(以下、本明細書ではこれらをまとめてスルホン酸型官能基という)を有するが、スルホン酸型官能基を有し環構造を有しないペルフルオロビニルエーテルモノマーと、スルホン酸型官能基を有さず環構造含有又は環化重合性のモノマーとを共重合することにより、環構造とスルホン酸基とを有するポリマーを得ている。しかし、このポリマーでは、ポリマー全体に対する環構造の割合を充分には高められない。また、上記ペルフルオロビニルエーテルモノマーを用いると、高分子量のポリマーを得るのが困難であった。
【発明の開示】
そこで本発明は、従来よりも軟化温度が高く、固体高分子型燃料電池の電解質として使用した場合に従来よりも高温における燃料電池の運転を可能とする固体高分子電解質材料を提供することを目的とする。さらに、高温での運転だけではなく燃料電池の高出力化にも寄与しうる固体高分子電解質材料を提供することを目的とする。
本発明は、ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーであって、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーからなることを特徴とする固体高分子電解質材料を提供する。
上記イオン性基(以下、本イオン性基という)は例えばスルホン酸基等の強酸性基又はその塩であり、電解質材料のイオン性基として好適である。脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は本イオン性基を2以上含んでいてもよい。本発明の固体高分子電解質材料を構成するポリマーは環構造を有するため軟化温度が高く、従来の含フッ素ポリマーからなる電解質材料に比べ、高温での使用が可能である。
また、本発明は、上記電解質材料からなる膜からなることを特徴とする固体高分子電解質膜を提供する。このような膜は例えば固体高分子型燃料電池の電解質膜として好適である。
また、本発明は、上記電解質材料が水酸基を有する溶媒及び/又は水中に溶解又は分散していることを特徴とする液状組成物を提供する。当該液状組成物を使用することにより、電解質膜を作製することが可能である。また、例えば固体高分子型燃料電池の触媒層を作製する際にも有用である。
さらに本発明は、ラジカル開始源の存在下で、フルオロスルホニル基とラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合とを有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーを、ラジカル重合した後、前記フルオロスルホニル基をスルホン酸基に変換することを特徴とする固体高分子電解質材料の製造方法を提供する。
さらに本発明は、触媒と固体高分子電解質とを含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを備える膜電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜は、上述の固体高分子電解質材料からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
また本発明は、触媒と固体高分子電解質とを含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを備える膜電極接合体であって、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方の触媒層には上述の固体高分子電解質材料が含まれることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1:例7と比較例2で得られたフィルムの、含水率とイオン交換水に浸漬する温度との関係を示す図である。
図2:例8と比較例2で得られたフィルムの、含水率とイオン交換水に浸漬する温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書においては、式(X)で表される化合物を化合物(X)と記す。同様に式(Y)で表される繰り返し単位を繰り返し単位(Y)と記す。
本発明の製造方法では、固体高分子電解質材料を構成するポリマーの主鎖に環構造を導入するため、重合部位に環構造を有し、かつイオン性基又は当該イオン性基に変換しうる基を有する含フッ素モノマー、好ましくはペルフルオロ化されたモノマーが使用される。
本発明者は、高い軟化温度を有する固体高分子電解質膜や酸素溶解性又は酸素透過性の大きい固体高分子電解質を得るためには、環構造の導入が好ましく、下記式(F)又は(G)の構造を有するモノマーを重合することが好適であると考えたが、従来の技術の項で述べたように式(F)の化合物の合成は困難である。合成上の観点から、下記式(G)の構造を有するモノマーが好適である。

ただし、式(G)において、R〜Rは、それぞれ独立に、本イオン性基又はその前駆体基及びエーテル結合性酸素原子の少なくとも一つを含有してもよい1価のペルフルオロ有機基並びにフッ素原子からなる群から選ばれるが、R〜Rの2つが互いに連結された、本イオン性基又はその前駆体基及びエーテル結合性酸素原子の少なくとも一つを含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であってもよい。ここで、R〜Rの少なくとも1つは本イオン性基又はその前駆体基を含む。R、Rはそれぞれ独立に、エーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子である。
ここで本イオン性基の前駆体基とは、加水分解や酸型化処理等の公知の処理により本イオン性基となる基であり、例えば−SOF基等である。重合後に本イオン性基に変換すれば高分子電解質材料が得られる。また、上記ペルフルオロ有機基としては具体的にはエーテル結合性酸素原子を含んでもよいペルフルオロカーボン基が好ましい。式(G)で表わされる化合物のなかでも、特に式(3)で表わされる化合物が好ましい。

ただし、式(3)において、Rはエーテル性酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にフッ素原子又はエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基である。なお、ここで有機基とは、炭素原子を1以上含む基をいい、1価のペルフルオロ有機基としては特に直鎖又は分岐状のペルフルオロアルキル基(アルキル鎖の内部や片末端にエーテル性酸素原子を含有していてもよい)が好ましい。
化合物(3)において、高い重合反応性を有するためには、R、Rの少なくとも一方はフッ素原子であることが好ましい。R、Rの一方がフッ素原子のとき、他方は、フッ素原子又はペルフルオロアルコキシ基であることがより好ましく、さらにはR、Rともにフッ素原子である下記式(3’)の構造を有することが好ましい。化合物(3’)のR12〜R14はそれぞれ独立にフッ素原子又はペルフルオロアルキル基(アルキル鎖の内部や片末端にエーテル性酸素原子を含有していてもよい)を表し、Rはエーテル性酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり環と結合する原子は酸素原子であってもよい。

化合物(3’)のなかでも、化合物(4)は、重合反応性が高く、合成も容易であるので特に好ましい。

化合物(4)は、国際出願番号PCT/JP02/11310号に記載されている幾つかの方法によって合成される。例えば、下記の合成スキームによって合成することができる。ただし、合成スキームの中のR’は直鎖又は分岐状のエーテル結合性の酸素原子を含有してもよいペルフルオロアルキル基を表す。

上記合成スキームにおいてエピブロモヒドリンやヒドロキシアセトンのペルフルオロアルキルエステルのかわりに、置換基を導入したエピブロモヒドリンや置換基を導入したヒドロキシアセトンのペルフルオロアルキルエステルを使用することもできる。この場合、化合物(4)に当該置換基がペルフルオロ化されて導入された化合物を合成することができる。
化合物(3)は重合性の高い二重結合、環構造及びフルオロスルホニル基(−SOF基)をすべて有する化合物である。該化合物を重合させたポリマーを加水分解してなるポリマーは、食塩電解、燃料電池、リチウム電池やその他の電解質材料として有用に用いうる。
例えば、化合物(3)を単独重合して得られるフルオロスルホニル基含有ポリマーは、高分子量とすることができるし、そのポリマーのフルオロスルホニル基を加水分解して得られるスルホン酸ポリマーはイオン交換容量が高い。また、化合物(3)を、化合物(3)と共重合しうる他の重合性単量体(以下、コモノマーと記載する。)と共重合させて得られるフルオロスルホニル基含有ポリマーは、コモノマーの選択によりさらに新たな特性を付与することもできる。コモノマーは、1種であっても2種以上であってもよい。
コモノマーとしては、通常非イオン性のモノマーが選択される。ここで非イオン性とは、イオン性基又はその前駆体基を有しないことを意味する。上記コモノマーの例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、ペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(3,5−ジオキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。また、下記モノマー(式中pは2〜6の整数である。)も好適に使用され得る。なかでもテトラフルオロエチレンは、その共重合体が化学的な安定性、耐熱性に優れているだけでなく、高い機械強度を有し、軟化温度も従来のスルホン酸ポリマーより高いので好ましい。

また、上記に例示したコモノマーとともにさらに共重合できるコモノマーとして、プロペン、ヘキサフルオロプロペン等のペルフルオロα−オレフィン類、(ペルフルオロブチル)エチレン等の(ペルフルオロアルキル)エチレン類、3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等の(ペルフルオロアルキル)プロペン類、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)やペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等のペルフルオロビニルエーテル類等を用いてもよい。
ペルフルオロビニルエーテル類のコモノマーとしては、CF=CF−(OCFCFZ)−O−Rで表わされる化合物が好ましい。ただし、tは0〜3の整数であり、Zはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rは直鎖構造であっても分岐構造であってもよい炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基である。なかでも、下記化合物(5)〜(7)が好ましい。ただし、式中、vは1〜9の整数であり、wは1〜9の整数であり、xは2又は3である。

高い軟化温度を有する固体高分子電解質膜や酸素溶解性又は酸素透過性の大きい固体高分子電解質を得るためには、環構造を多く固体高分子電解質の中に導入することが好適であり、環構造を含有するコモノマー又は環化重合性のコモノマーを選択することが好ましい。環構造を含有するコモノマーとしては、具体的にはペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)が例示される。環化重合性のコモノマーとしては、具体的にはペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(3,5−ジオキサ−1,6−ヘプタジエン)が例示される。
重合反応は、ラジカルが生起する条件のもとで行われるものであれば特に限定されない。例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、液体又は超臨界の二酸化炭素中の重合等により行ってもよい。
ラジカルを生起させる方法は特に限定されず、例えば、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法を用いることもできるし、通常のラジカル重合で用いられるラジカル開始剤を使用する方法も使用できる。重合反応の反応温度は特に限定されず、例えば、通常は15〜150℃程度である。ラジカル開始剤を使用する場合、ラジカル開始剤としては、例えば、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられる。
溶液重合を行う場合には、使用する溶媒は取り扱い性の観点から、通常は20〜350℃の沸点を有していることが好ましく、40〜150℃の沸点を有していることがより好ましい。そして、溶媒中に1種又は2種以上の上記含フッ素モノマーを所定量投入し、ラジカル開始剤等を添加してラジカルを生起させて重合を行う。ガスモノマーの場合は、一括添加でも逐次添加でも連続添加でもよい。
ここで、使用可能な溶媒としては、例えば、下記(i)〜(ix)の各溶媒が挙げられる。
(i)ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロトリプロピルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物。
(ii)ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロドデカン、ペルフルオロ(2,7−ジメチルオクタン)、2H,3H−ペルフルオロペンタン、1H−ペルフルオロヘキサン、1H−ペルフルオロオクタン、1H−ペルフルオロデカン、1H,4H−ペルフルオロブタン、1H,1H,1H,2H,2H−ペルフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクタン、1H,1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデカン、3H,4H−ペルフルオロ(2−メチルペンタン)、2H,3H−ペルフルオロ(2−メチルペンタン)等のフルオロアルカン。
(iii)3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロアルカン。
(iv)ヘキサフルオロプロペンの2量体、ヘキサフルオロプロペンの3量体等の分子鎖末端に二重結合を有しないフルオロオレフィン。
(v)ペルフルオロデカリン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロ(1,2−ジメチルシクロヘキサン)、ペルフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、ペルフルオロ(1,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、ペルフルオロジメチルシクロブタン(構造異性を問わない)等のポリフルオロシクロアルカン。
(vi)ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物。
(vii)n−COCH、n−COCHCF、n−COCHFCF、n−COC、n−COCH、iso−COCH、n−COC、iso−COC、n−COCHCF、n−C11OCH、n−C13OCH、n−C11OC、CFOCF(CF)CFOCH、CFOCHFCHOCH、CFOCHFCHOC、n−COCFCF(CF)OCHFCF等のヒドロフルオロエーテル類。
(viii)フッ素含有低分子量ポリエーテル。
(ix)tert−ブタノール等。
なお、これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、溶液重合を行う場合に使用する溶媒として他にも、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1,3−テトラクロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパン、1,1,3,4−テトラクロロ−1,2,2,3,4,4−ヘキサフルオロブタン等のクロロフルオロカーボン類を挙げることができる。ただし、これらのクロロフルオロカーボン類は、技術的には使用できるが、地球環境に与える影響を考慮すると、その使用は好ましくない。
懸濁重合は、水を分散媒として用いて、重合させるモノマーを添加し、ラジカル開始剤としてビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類等の非イオン性の開始剤を用いることにより行うことができる。溶液重合の項で述べた溶媒を助剤として添加することもできる。また、懸濁粒子の凝集を防ぐために、適宜界面活性剤を分散安定剤として添加してもよい。
本発明において、本イオン性基とラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合を構成する炭素原子の少なくとも一方が環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーは、単独重合反応性が高い。特に化合物(3)はペルフルオロビニルエーテルモノマーよりも単独重合反応性が大きく分子量を大きくできるので好ましい。2つのモノマーの単独重合反応性の大小の比較は、同一の重合条件で重合を行ったとき、ポリマー収率及び重合度がいずれも大きい場合にその大きい方のモノマーを単独重合反応性が大きいと判断する。ここでいう同一の重合条件とは、同一のラジカル開始剤をモノマーに対して質量比で同じ濃度になる量を添加し、脱気後、同一の温度、同一の時間重合を行うことを指す。例えば本明細書の実施例に記載されている方法によって評価される。
化合物(3)を用いて重合し、さらに加水分解や酸型化を行うことにより、繰り返し単位(1)を含むポリマーが得られる。このようなポリマーは、高分子電解質材料として好適である。式(1)中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。またR〜Rは化合物(3)におけるR〜Rとは同義である。

繰り返し単位(1)を含むポリマーのなかでも、式(1)中R、Rがいずれもフッ素原子である繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。R、Rともにフッ素原子である場合は重合反応性の高いモノマーにより合成できるため高分子量とすることができるためである。さらには、繰り返し単位(2)を含むポリマーが、同様の理由で特に好ましい。

本発明の固体高分子電解質材料であるポリマーは、軟化温度が90℃以上であることが好ましく、100℃以上であるとさらに好ましい。ここで、ポリマーの軟化温度とは、ポリマーの動的粘弾性の評価試験において、ポリマーの温度を室温付近から徐々に昇温させながらその弾性率を測定した場合に、ポリマーの弾性率が急激に低下しはじめるときの温度をいう。したがって本発明における軟化温度は、通常tanδの値より求めるガラス転移温度とは異なり、一般にガラス転移温度よりも低い温度領域で観測される。
軟化温度は、動的粘弾性測定装置(DMA)により測定できるが、熱的機械分析装置(TMA)を用い、直径1mmの石英プローブによるペネトレーション法により測定することもできる。すなわち、測定するポリマーの溶液を作製し、該溶液からキャスト製膜してフィルムとし、このフィルムに対して石英プローブを当該フィルムの面の法線方向から接触させ、1〜10℃/minの昇温速度で温度を上昇させてフィルムに対するプローブのめり込みによりフィルムの厚さが急激に減少しはじめる温度を軟化温度として計測する。なお、本発明者は、この方法により得られる軟化温度の値が、先に述べたポリマーの弾性率の温度依存性のプロフィールに現れる急激な弾性率の低下が観測されはじめる温度と一致することを予め確認している。
また、フィルムにかかるプローブの荷重が小さすぎる場合にはフィルムの熱膨張が観測されるが、荷重を最適化することにより支障なくフィルムの軟化温度におけるプローブのめり込みの度合いを計測することができる。フィルムは、前駆体ポリマーを溶融押し出し成形や熱プレスによって得たフィルムを加水分解又は加水分解した後酸型化処理したものを用いてもよい。
固体高分子型燃料電池の作動温度は一般に80℃以下であるが、90℃以上、さらには100℃以上とすることが望まれている。燃料電池の作動温度を100℃以上とすれば、電池の排熱をより有効に利用することが可能となるとともに、電池の除熱が容易となるため作動中の電池の温度制御がより容易となる。また、この場合には、アノード反応ガス中に含まれる一酸化炭素等による触媒被毒を軽減することが可能となり、その結果電池寿命を向上させることが可能となり電池出力も高められる。
したがって、触媒層に含有される固体高分子電解質材料及び電解質膜を構成する電解質材料の軟化温度が90℃以上、より好ましくは100℃以上であると、固体高分子電解質材料の耐久性が向上するため、電池の作動中において固体高分子電解質材料の膨潤度等の物性の経時的な変化や変形を抑制することが可能となる。その結果、電池寿命を向上させることができる。特に電池の反応により水が生成するカソードの触媒層に、軟化温度が100℃以上の本発明の固体高分子電解質材料を使用すると耐久性向上の効果が高く好ましく、さらに電池の出力電圧を高めることもできる。本発明の固体高分子電解質材料は環構造を含有しているので、酸素溶解性や透過性が高くなるためと考えられる。
また、固体高分子型高分子電解質材料となるポリマーに架橋構造を導入することによっても、架橋により過膨潤が抑制され、強度の低下を防ぐことができ、軟化温度が必ずしも高くなくても従来よりも高温での使用に耐えうる。軟化温度の高いポリマーに架橋構造を導入すると、より耐久性の効果が高まる。架橋されたポリマーは軟化温度以上でも形状を保持できるので、特に高分子電解質膜を得る場合は信頼性の高い膜が得られ好ましい。
また、本発明の固体高分子電解質材料は固体酸触媒としても使用できるが、この場合には、その軟化温度が高ければ反応温度を高くできるので、所望の反応をより高い温度領域において進行させることが可能となる。
本発明の固体高分子電解質材料は、イオン交換容量(以下、Aという)が0.5〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂(以下、meq/gとする)であることが好ましい。固体高分子電解質材料のAが0.5meq/g未満となると、固体高分子電解質材料は含水率が低下してイオン伝導性が低くなるので、固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜又は触媒層の構成材料として使用すると、十分な電池出力を得ることが困難になりやすい。一方、固体高分子電解質材料のAが2.5meq/gを超えると、固体高分子電解質材料中のイオン交換基の密度が増大し、固体高分子電解質材料の強度が低くなりやすい。また、固体高分子型燃料電池の触媒層の構成材料として使用すると、含水率が高くて触媒層におけるガス拡散性又は排水性が低下してフラッディングが発生しやすくなり、膨潤による寸法変化も大きくなりやすい。
上記と同様の観点から本発明の固体高分子電解質材料のAは、0.7〜2.0meq/gであるとより好ましく、0.9〜1.5meq/gであるとさらに好ましい。ただし、後述するように本発明の固体高分子電解質材料は架橋構造を有することもできる。この場合は、Aの好ましい下限値は上記と同様であるが、架橋構造を有すると含水率が抑制されるため、Aの好ましい上限値は、用いるモノマーの分子量と後述する架橋用モノマーの分子量及び架橋密度により異なり、架橋していない場合より高いA値を有することができる。
また、本発明の固体高分子電解質材料の数平均分子量は特に限定されず、用途に応じて共重合体の重合度を変化させることにより適宜設定できる。本実施形態のように固体高分子型燃料電池の触媒層の構成材料として使用する場合には、5000〜5000000であることが好ましく、10000〜3000000であることがより好ましい。固体高分子電解質材料の数平均分子量が5000未満であると、膨潤度等の物性が経時的に変化するため耐久性が不十分になるおそれがある。一方、数平均分子量が5000000を超えると、溶液の調製が困難になるおそれがある。
さらに、非架橋の固体高分子電解質材料を膜として使用する場合には、数平均分子量は10000〜10000000が好ましく、特に50000〜5000000、さらには100000〜3000000であることが好ましい。分子量が低すぎると膜としての強度が不足し、分子量が高すぎると成膜が困難になる傾向があるためである。
本発明の電解質材料は、架橋されていてもよい。ラジカル開始源の存在下、本イオン性基又は本イオン性基に変換しうる基(例えば−SOF基)を有し、かつラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方が環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーを、分子内に2以上のラジカル重合性の二重結合を有する含フッ素モノマーと共重合することにより、架橋した電解質材料を得ることができる。上記分子内に2以上のラジカル重合性の二重結合を持つ含フッ素モノマーとしては特にペルフルオロ化されたモノマーが好ましく、なかでも下式で表されるモノマー(QF1は、単結合、酸素原子、またはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキレン基を示す。)や、CF=CFORf3OCF=CFで表されるペルフルオロジビニルエーテル(Rf3は、直鎖又は分岐構造を有するエーテル結合性酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基。)が特に好ましい。

前者のモノマーの具体例としては、下記モノマーが挙げられる。

後者のモノマーの具体例としては下記モノマーが挙げられる。ただし、式中h、kは2〜8の整数であり、iとjはそれぞれ独立に0〜5の整数でi+j≧1である。
CF=CFOCF=CF
CF=CFO(CFOCF=CF
CF=CF[OCFCF(CF)]O(CF[OCF(CF)CFOCF=CF
さらに、前述のコモノマーを加えて共重合した、架橋構造を有するポリマーとしてもよい。この場合、好適なA値は前述した通りである。分子量は3次元網目構造が生成するため大きな値となり、特定困難である。
架橋した電解質材料を合成する場合には、使用するモノマーは常圧下、重合温度で液体のものが取り扱い性が良好なので好ましい。架橋した電解質膜は、重合と同時に膜状に成形するのが好ましい。
本発明の電解質材料は、ホモポリマーやランダム共重合体に限定されず、グラフト共重合体又はブロック共重合体であってもよい。グラフト共重合体の場合には、ポリエチレンやテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等の基材に、γ線や電子線等の放射線を照射してラジカルを発生させ、本イオン性基又は本イオン性基に変換しうる基を有しかつラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方が環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーの1種以上と接触させることにより該モノマーを重合して、グラフトポリマーを得ることができる。グラフト重合時には、前述のコモノマーを加えて共重合してもよい。また、分子内に複数のラジカル重合反応性を有する不飽和結合を持つモノマーと共重合して架橋してもよい。
ブロック共重合体は、例えばF(CFI、I(CFI等のヨウ素化合物とラジカル開始源の存在下で上述の脂環式含フッ素モノマーの1種以上を重合し、次いで他のモノマーを重合することにより得ることができる。他のモノマーとしては前述の官能基を有しないコモノマーを例示することができる。重合の順番は逆であってもよい。それぞれのセグメントの重合は単独重合でも共重合でもよい。本発明で用いられるイオン性基又は当該イオン性基に変換しうる基と環構造を有するモノマーの重合は、これらの基を有しない他のコモノマーとの共重合であってもよい。
本発明の固体高分子電解質材料における本イオン性基は、−(SOX(SOで表わされるが、Xとaの定義から具体的には、スルホン酸基等の−SO基、スルホンイミド基(−SOSO)又はスルホンメチド基(−SO(SO)が好ましい。ここでMはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐状のペルフルオロアルキル基であり、スルホンメチド基の場合2つのRは同じであっても異なっていてもよい。ここでRはエーテル結合性酸素原子を含んでもよい直鎖状又は分岐のペルフルオロアルキル基であるが、その炭素数は1〜8であることが好ましく特に1〜6であることが好ましい。具体的にはペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
本発明の固体高分子電解質材料にスルホンイミド基を含有させることは比較的容易である。化合物(3)の不飽和結合に塩素を付加し、−SOF基をスルホンイミド基に変換した後、脱塩素反応を行うことにより、スルホンイミド基含有のモノマーを合成できる。したがってこのモノマーを用いて重合すればよい。
−SOF基は、RSONHM(Mはアルカリ金属、又は1〜4級のアンモニウム)との反応、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、MF(Mは前記と同様)、アンモニア又は1〜3級アミンの存在下でのRSONHとの反応、又はRSONMSi(CH(Mは前記と同様)との反応により、スルホンイミド基に変換することができる。これらの反応では、スルホンイミド基は使用した塩基由来の塩型で得られる。化合物(4)を用いた場合の反応例を以下に示す。

塩型のスルホンイミド基は、硫酸、硝酸、塩酸などの酸で処理することにより、酸型に変換することが可能である。
この反応は、前述のように化合物(4)の塩素付加物に対して適用可能であるが、化合物(4)を重合してフルオロスルホニル基(−SOF基)を有するポリマーを作製し、このポリマーの−SOF基に対して同様の処理を行うことによってもスルホンイミド基を有するポリマーを得ることができる。
また、本発明においては、−SOF基を有する共重合体を塩基の存在下で加水分解、又は加水分解後酸型化処理することにより、スルホン酸塩基又はスルホン酸基を含有するポリマーを製造することができる。
さらに、耐久性改善等のため、本発明の固体高分子電解質材料を構成するポリマーは、重合した後にフッ素ガスでフッ素化したり、空気及び/又は水の存在下で加熱処理することにより、ポリマー末端等の不安定部位を安定化してもよい。
上記の加水分解においては、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩を用いるのが好ましい。酸処理においては、塩酸、硝酸又は硫酸を用いるのが好ましい。これにより、フルオロスルホニル基はスルホン酸塩基(−SO基:ここで、Mは対イオンを示す。)に変換されうる。ここでMとしては、アルカリ金属イオン又はN15161718(ただし、R15〜R18はそれぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1〜5のアルキル基。)であるのが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はリチウムイオンが好ましい。また、N15161718はN(CH、N(CHCH、N(CHCHCH、N(CHCHCHCHも好ましい。
スルホン酸塩基におけるMがアルカリ金属イオンである場合のポリマーは、フルオロスルホニル基含有重合体にアルカリ金属水酸化物を反応させることにより得ることが好ましい。またスルホン酸塩基におけるMがN15161718である場合のポリマーは、フルオロスルホニル基含有重合体にN15161718(OH)を反応させることにより得ることもできるが、スルホン酸基含有重合体にN15161718(OH)を反応させて得るのが好ましい。
さらに、スルホン酸塩基を含有するポリマーは、Mとは異なりかつ対イオンとなりうるイオンを含む水溶液に浸漬することにより、当該対イオンに変換することができる。
また、スルホン酸塩基(−SO基)は、塩酸、硝酸又は硫酸等の酸で処理することによりスルホン酸基(−SOH基)に変換することができる。このようにして得られるイオン性基含有ポリマーは、必要に応じて過酸化水素水で処理してもよい。
これらの基の変換方法やポリマー処理は、公知の方法及び条件にしたがって実施できる。
本発明の固体高分子電解質材料は、膜状に成形して固体高分子電解質膜として使用できる。膜状にする成形方法は特に限定されず、固体高分子電解質材料を溶媒に溶解又は分散させて得られる液を用いてキャスト製膜してもよいし、押し出し成形、延伸等の操作を経て得てもよい。押し出し成形には、溶融流動性に優れる点から、固体高分子電解質材料の前駆体である−SOF基を有するポリマーを用い、成形後加水分解により固体高分子電解質膜に変換することが好ましい。
また、固体高分子電解質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルコキシビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔体、繊維、織布、不織布等で補強されていてもよい。
電解質膜が架橋されたポリマーからなる場合には、例えば以下のようにして作製できる。まず、本イオン性基又はその前駆体基を有する脂環式含フッ素モノマーの1種以上、分子内に2以上のラジカル重合性の二重結合を有する含フッ素モノマーの1種以上及び必要に応じて前述のコモノマーを混合し、これに重合開始剤を添加した液状組成物を調製する。次に、これを必要に応じて短時間加熱して適度に粘度を上昇させる。該液状組成物を基材上に塗布して液膜状にした後、加熱、重合することにより製膜する。塗布して製膜する際に、上述の補強材と複合化することもできる。
本発明の固体高分子電解質材料は、水酸基を有する有機溶媒に良好に溶解又は分散することができる。水酸基を有する有機溶媒は特に限定されないが、アルコール性の水酸基を有する有機溶媒が好ましい。
アルコール性の水酸基を有する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。また、アルコール以外の有機溶媒としては、酢酸等のカルボキシル基を有する有機溶媒も使用できる。
ここで、水酸基を有する有機溶媒としては上記の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、さらに、水又は他の含フッ素溶媒等と混合して用いてもよい。他の含フッ素溶媒としては、先に述べた固体高分子電解質材料の製造における溶液重合反応において、好ましい含フッ素溶媒として例示した含フッ素溶媒が挙げられる。なお、水酸基を有する有機溶媒を水又は他の含フッ素溶媒との混合溶媒として使用する場合、水酸基を有する有機溶媒の含有量は溶媒全質量に対して10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
また、この場合、はじめから固体高分子電解質材料を混合溶媒中に溶解又は分散させてもよいが、固体高分子電解質材料を先ず水酸基を有する有機溶媒に溶解又は分散させた後、水又は他の含フッ素溶媒を混合してもよい。さらに、このような溶媒に対する固体高分子電解質材料の溶解又は分散は、大気圧下又はオートクレーブなどで密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲で行うことが好ましく、20〜150℃の範囲で行うことがより好ましい。水よりも沸点が低い有機溶媒を含有する場合には、溶媒を留去した後に、又は留去しながら水添加を行うことにより溶媒を水へ置換することも可能である。
このような溶媒を用いて得られる本発明の液状組成物は、固体高分子電解質材料からなるキャスト膜を作製したり、固体高分子型燃料電池の触媒層を作製する際に有用である。触媒層を作製する場合は、液状組成物に触媒を混合し得られた液を塗工すればよい。このような目的に使用される液体組成物中の固体高分子電解質材料の含有量は、液状組成物全質量に対して1〜50%であることが好ましく、3〜30%であることがより好ましい。1%未満であると、膜や触媒層を作製する際に所望の厚さとするためには塗工回数を多くする必要が生じ、また溶媒の除去にも時間が長くなる等、製造作業を効率よく行いにくい。一方、50%を超えると液状組成物の粘度が高くなりすぎて取扱いにくくなりやすい。
さらに、液状組成物には本発明の固体高分子電解質材料に加え、これとは別の固体高分子電解質材料となる樹脂を含有させることもできる。この場合、液状組成物を原料として得られる触媒層のガス拡散性及び撥水性を十分に確保する観点から、液状組成物中の本発明の固体高分子電解質材料の含有量は液状組成物中の全ての固体高分子電解質材料の総質量に対して20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
本発明の固体高分子電解質材料を固体高分子型燃料電池の材料として膜や触媒層に適用する場合、通常イオン性基は強酸性基、すなわちイオン性基の対イオンがHの状態で使用される。
本発明の固体高分子電解質材料を固体高分子型燃料電池のアノード又はカソードの触媒層に電解質として使用する場合について、触媒層の作製方法と当該触媒層を有する膜電極接合体の作製方法の一例を説明する。例えば、触媒層は、−SOH基を有する本発明の固体高分子電解質材料を、分子中に水酸基を有する溶媒に溶解又は分散させた液状組成物に、触媒を混合して調製した触媒層形成用の塗工液を用いて形成することができる。ここで触媒は白金又は白金合金が担持されたカーボンブラック等の微粒子が好ましい。塗工液は高分子電解質膜、ガス拡散層、又は別途用意した支持板上に厚さが均一になるように塗工し、溶媒を乾燥除去後、必要に応じてホットプレスを施すなどして触媒層を作製できる。
このようにして得られる触媒層はガス拡散性及び撥水性に優れ、特にカソードに好適である。特に、ポリマー自体の軟化温度が100℃以上である固体高分子電解質材料を含む液状組成物を用いて触媒層を作製すると、触媒層のガス拡散性が向上する。固体高分子電解質材料の軟化温度が100℃以上であると、塗工液から溶媒が徐々に揮発する際に固体高分子電解質材料が収縮しにくいため、固体高分子電解質材料の内部又は固体高分子電解質材料により被覆された触媒粒子の凝集体間に適度な大きさの細孔が形成されるためと考えられる。
本発明の固体高分子電解質材料はカソード、アノード両方の触媒層に含まれてもよいが、一方のみに含有させ、他方は従来の固体高分子電解質材料を所定の溶媒に溶解又は分散させた液を用いて作製してもよい。
カソードの触媒層及びアノードの触媒層は、高分子電解質膜とガス拡散層との間に配置されることにより、固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を作製できる。ここで、触媒層を高分子電解質膜上に形成した場合には、例えば、別途用意したガス拡散層を触媒層上に隣接して配置又は接合すればよい。また、触媒層をガス拡散層上に形成した場合には、別途用意した高分子電解質膜をカソードの触媒層とアノードの触媒層の間に配置し好ましくは接合する。また、触媒層を支持板(支持フィルム)上に形成した場合には、例えば、別途用意した高分子電解質膜に転写し、その後支持板を剥離して別途用意したガス拡散層を触媒層上に隣接して配置する。ここでガス拡散層は、カーボンペーパー等の導電性多孔質体を用い、触媒層にガスを均一に供給する機能と集電体としての機能の両方を備える。
高分子電解質膜と触媒層、触媒層とガス拡散層の接合は、例えば、ホットプレスやロールプレスにより行ってもよい。
本発明の固体高分子電解質材料は、水素/酸素、水素/空気型の燃料電池のみならず、直接メタノール型燃料電池(DMFC)にも使用することができる。DMFCの燃料に用いるメタノールやメタノール水溶液は、液フィードであってもガスフィードであってもよい。
また本発明の固体高分子電解質材料は、食塩電解や燃料電池用途に限定されず、種々の用途に使用できる。本発明において固体高分子電解質材料とは、イオン性基の機能を活かして使用される固体高分子材料のことをいい、イオン性基はイオン伝導機能、イオン交換機能、吸水機能等を有し、強酸基を含有する場合には酸触媒作用を有する。水電解、過酸化水素製造、オゾン製造、廃酸回収等に使用するプロトン選択透過膜、レドックスフロー電池の隔膜、脱塩又は製塩に使用する電気透析用陽イオン交換膜等にも使用できる。また、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池のポリマー電解質、固体酸触媒、陽イオン交換樹脂、修飾電極を用いたセンサー、空気中の微量イオンを除去するためのイオン交換フィルタやアクチュエーター、エレクトロクロミック表示素子等にも使用できる。すなわち、各種の電気化学プロセスの材料として使用できる。
また、本発明の固体高分子電解質材料は、酸、塩基、及び塩類の分離精製に用いる拡散透析用の膜、蛋白質分離のための荷電型多孔膜(荷電型逆浸透膜、荷電型限外ろ過膜、荷電型ミクロろ過膜等)、除湿膜、加湿膜等にも使用できる。
本発明の固体高分子電解質材料は、含フッ素ポリマーからなるため屈折率が小さい。そのため、イオン性基を有し、イオン交換容量の大きい本発明の高分子電解質材料が溶解又は分散した液を塗工、乾燥して薄膜を形成させると、水やアルカリ水溶液で除去可能な反射防止膜として活用することもできる。この場合該液の溶媒は水及び/又は有機溶媒が使用できるが水が好ましい。半導体デバイス等の製造工程におけるレジスト上に塗布する反射防止膜への活用も可能である。さらに、PTFE多孔体からなるフィルターへの親水性付与剤として使用することもできる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下において1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンをR−113と記し、CClFCFCHClFをHCFC225cbと記し、ガスクロマトグラフィーをGCと、サイズ排除クロマトグラフィーをGPCと、数平均分子量をMと、重量平均分子量をMと記す。
19F−NMRを用いた定量は、ペルフルオロベンゼンを内部標準とした。GCによる定量値はピーク面積比から求めた値である。GPCは東ソー社製、装置名:SEC HLC−8020を用い、移動相はHCFC225cb/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(99/1体積比)を、カラムはポリマーラボラトリー社製のPlgel 5μ MIXED−Cを2本、分子量換算用標準試料はポリメタクリル酸メチルを用いた。
[化合物(4)の合成]
先に示した合成スキームに基づき、化合物(A1)〜(A5)の合成を経て化合物(4)を合成した。化合物(A1)は、J.Fluorine Chem.,46,39(1990)に記載される方法で合成した。

<化合物(A2)の合成>
CHCOCHOH(150.0g)とトリエチルアミン(225.4g)をフラスコに入れ、氷浴下で撹拌した。窒素ガスで希釈したCFCFCOF(377.5g)を、内温を10℃以下に保ちながら4時間かけて吹き込んだ。次に、室温で2時間撹拌して、氷水500mLに加えた。
得られた粗液を分液し、フルオロカーボン層を得た。さらにフルオロカーボン層を水(250mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、ろ過して粗液を得た。ろ液を減圧蒸留して化合物(A2)(167.3g)を47.1〜47.9℃/0.7kPa(絶対圧)の留分として得た。留分のGCによる純度は、99%であった。
<化合物(A3)の合成>
乾燥雰囲気下で三フッ化ホウ素エーテラート(32.01g)と脱水アセトン(4.5L)を混合し、化合物(A1)(1198.1g)を脱水アセトン(1.2L)で希釈して上記混合物に滴下し、1時間加熱還流した。アセトンを約半分留去した後、化合物(A2)(1031.41g)をトルエン(2L)で希釈して反応系に加え、65℃以下で加熱しながら減圧下で残りのアセトンを留去した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の混合物に注ぎ、t−ブチルメチルエーテル(2.9L)で3回に分けて抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を減圧濾過で除去し、濾液を濃縮した。残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:HCFC225cb/n−ヘキサン1:1(体積比)の後、HCFC225cbのみ)で精製して化合物(A3)(1478.95g)を得た。GC純度は99%であった。
<化合物(A4)の合成>
500mLのニッケル製オートクレーブに、R−113(312g)を加えて撹拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、及び−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。
窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、希釈フッ素ガスと記す。)を、流速12.72L/hで1時間吹き込んだ。つぎに、フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、化合物(A3)(20.0g)をR−113(200g)に溶解した溶液を7.6時間かけて注入した。
次に、希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込み、かつ、反応器圧力を0.15MPaに保ちながら、ベンゼン濃度が0.01g/mLのR−113溶液を25℃から40℃にまで昇温しながら23mL注入した。さらに、オートクレーブのベンゼン注入口を閉め、反応器圧力を0.15MPaに、反応器内温度を40℃に保ち、1.0時間撹拌を続けた。ベンゼンの注入総量は0.22g、R−113の注入総量は23mLであった。さらに、窒素ガスを1.0時間吹き込んだ。生成物を19F−NMRで分析した結果、化合物(A4)の生成が認められ、収率は98%であった。
<化合物(A5)の合成>
化合物(A4)(10.6g)を、充分に乾燥させたKF粉末(0.18g)と共にフラスコに仕込み、室温で24時間撹拌した。冷却後、フラスコより回収したサンプル(8.8g)をろ過し、液状サンプルを回収した。NMR、及びGC−MSにより、主生成物が化合物(A5)であることを確認した。収率は77.8%であった。
上記と同様にして化合物(A4)706gから化合物(A5)を主成分とする反応液531gを得た。減圧蒸留により純度99%の化合物(A5)481gを得た。留出温度は71−73℃/5.3kPaであった。
<化合物(4)の合成>
ガラスビーズが充填された内径1/2インチのステンレス反応管(流動層型)を350℃に加熱し、加熱された化合物(A5)と窒素の混合ガス(モル比1:9)を流通させた。滞留時間は10秒、線速度は2.5cm/秒であった。化合物(A5)の使用量は68.1gであった。反応管から出てきたガスを冷却することにより化合物(4)を主成分とする液を得た。反応収率は52%であった。
次に反応液にメタノールを加え、未反応の化合物(A5)をメチルエステル化した。水洗後、蒸留により化合物(4)を精製した。沸点は48℃/2.7kPaであった。
[ポリマーの合成]
[例1]
化合物(4)の単独重合体を以下のとおり得た。
化合物(4)(1.25g)とペルフルオロ過酸化ベンゾイル(4.5mg)をガラス管に入れ、液体窒素で固めた後真空下で封管した。70℃で45時間保持した後、生成したポリマーを取り出し、n−C13Hに溶解してヘキサンで再沈殿させ、ろ過後ヘキサンで洗浄し、80℃で16時間減圧乾燥した。化合物(4)の単独重合体の収量は0.823g(収率66%)であった。GPCによるMは6.5×10、Mは9.8×10であった。DSCで測定したガラス転移温度は92℃であった。屈折率は1.35であった。
さらに、ろ液を減圧下濃縮した後、再沈殿及び洗浄して、低沸点成分を減圧下で留去した。さらに80℃で16時間減圧乾燥した結果、化合物(4)の単独重合体からなる粉状ポリマー(0.072g)を回収した。先に得たポリマーと合わせた収率は71%であった。
先に得たポリマーを10%KOH水溶液中で一晩加水分解したところ、ポリマーはこの水溶液中に溶解していた。
[比較例1]
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF(1.25g)とペルフルオロ過酸化ベンゾイル(4.5mg)をガラス管に入れて、液体窒素で固めた後、真空下で封管した。70℃で45時間反応させた後も、無色透明の液体のままであった。反応液を丸底フラスコに移し、HCFC225cbでガラス管壁を洗浄して、洗液を前記丸底フラスコに添加した。減圧下で低沸点成分を留去して、80℃で16時間減圧乾燥した。水飴状のオリゴマー(0.328g)を得た。ポリマー収率は26%。GPCによるMは3.7×10、Mは4.7×10であった。この結果から、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOFに比べ化合物(4)は重合反応性が高いことが確認された。
[例2]
化合物(4)とペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)とを以下のとおり共重合した後、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)7.90g、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)9.60g、HCFC225cb109.7g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル255mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃で5時間反応させた後、ヘキサンに投入することでポリマーを沈殿させた。ヘキサンで洗浄した後、100℃で真空乾燥することにより、白色のポリマー14.0gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られた上記ポリマーのイオン交換容量Aは、1.13meq/gであった。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.16dl/gであった。
このポリマー10gにメタノール40g、10%KOH水溶液160gを添加し、1週間60℃に保持することによりポリマー中のフルオロスルホニル基を−SOK基に変換した。ろ過後、イオン交換水に浸漬し、60℃で一晩保持した。このろ過・水浸漬の操作を3回行った。ろ過後、1mol/Lの塩酸に60℃で一晩浸漬した。このろ過・塩酸浸漬の操作を4回行った。次いで、前記と同様のろ過・水浸漬の操作を3回行った。ろ液が中性であることを確認し、共重合体を空気下80℃のオーブン中で一晩乾燥した後、さらに80℃で一晩真空乾燥し、−SOK基をスルホン酸基に変換した。
得られたポリマー10質量部に対して、エタノール90質量部を添加し、60℃に加熱し、孔径5μのPVdFフィルターでろ過して、濃度10質量%の無色透明のエタノール溶液を得た。
[例3]
化合物(4)とペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)とを以下のとおり共重合した後、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)4.36g、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)7.31g、HCFC225cb72.59g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル170mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃で5時間反応した後、例2と同様にポリマー凝集、洗浄及び乾燥を行い、白色のポリマー9.35gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーのイオン交換容量Aは、0.97meq/gであった。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.16dl/gであった。
このポリマーを例2と同様に加水分解、酸型化した後、10質量%の無色透明のエタノール溶液を調製した。
上記ポリマーのエタノール溶液を使用してキャスト膜を作製し、先に述べた1mmφ石英プローブによるペネトレーション法によりポリマーの軟化温度を測定した。先ず、上記共重合体のエタノール溶液10質量部とブタノール2質量部を混合し、得られた溶液を用いて室温でキャスト製膜し、160℃において30分乾燥させることにより厚さ約200μmのキャスト膜を得た。次に、得られたキャスト膜をTMA(マックサイエンス社製)にセットした。そして昇温速度5℃/minでキャスト膜の温度を昇温させながら、キャスト膜と1mmφ石英プローブとの接触部に対して10gの荷重をかけて、キャスト膜の厚みの変化を測定した。そして、キャスト膜に対するプローブのめり込みにより膜の厚みが急激に減少しはじめる温度を軟化点として計測した。このポリマーの軟化温度は150℃であった。
[例4]
化合物(4)とペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)とを以下のとおり共重合した後、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)5.44g、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)6.23g、HCFC225cb72.65g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル170mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃で5時間反応した後、例2と同様にポリマー凝集、洗浄及び乾燥を行い、白色のポリマー9.11gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーのイオン交換容量Aは、1.27meq/gであった。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.14dl/gであった。
このポリマーを例2と同様に加水分解、酸型化した後10質量%の無色透明のエタノール溶液を調製した。
例3と同様にしてキャストフィルムを作製し、軟化温度を測定したところ155℃であった。
[例5]
化合物(4)とペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)とを以下のとおり共重合した後、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)9.99g、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)11.44g、HCFC225cb28.58g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル100mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃で5時間反応した後、例2と同様にポリマー凝集、洗浄及び乾燥を行い、白色のポリマー14.15gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーのイオン交換容量Aは、1.25meq/gであった。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.46dl/gであった。
このポリマーを例2と同様に加水分解、酸型化した後10質量%の無色透明のエタノール溶液を調製した。
[例6]
化合物(4)とペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とを以下のとおり共重合した後、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)6.18g、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)14.23g、HCFC225cb29.61g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル100mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。65℃で5時間反応した後、例2と同様にポリマー凝集、洗浄及び乾燥を行い、白色のポリマー7.45gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーのイオン交換容量Aは、1.48meq/gであった。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.23dl/gであった。
このポリマーを例2と同様に加水分解、酸型化した後10質量%の無色透明のエタノール溶液を調製した。
[例7]
化合物(4)とテトラフルオロエチレンとを以下のとおり共重合、加水分解、酸型化した。
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(4)8.48g、17mgのメタノールを含有するHCFC225cb76.3g、ペルフルオロ過酸化ベンゾイル170mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。テトラフルオロエチレン11.3gを導入した後、70℃で50分反応を行った。この間ゲージ圧力は0.97MPaから0.43MPaに低下した。冷却後、系内のガスをパージし、ヘキサンに投入することでポリマーを沈殿させた。ヘキサンで洗浄した後、100℃で真空乾燥することにより、白色のポリマー14.1gを得た。
元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーのイオン交換容量Aは、1.12meq/gであった。
次に、このポリマーの容量流速を測定した。本発明において容量流速とは、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、30kg/cmの押出し圧力の条件で樹脂の溶融押出しを行った際の押出し量であって、単位はmm/秒で表される。このポリマーの300℃における容量流速をフローテスタCFT−500A(島津製作所製)を用いて測定したところ34mm/秒であった。
このポリマーを300℃で加圧プレスし、厚さ約100μmのフィルムを作製した。このフィルムをDMSO30%、KOH11%、水59%からなる液に90℃で16時間浸漬してフルオロスルホニル基を−SOK基に変換した。水洗後、1mol/L硫酸に浸漬し、水洗することにより、−SOK基をスルホン酸基に変換し、さらに乾燥した。
このフィルムに対し、アイティー計測社製動的粘弾性測定装置DVA200を用いて、試料幅0.5cm、つかみ間長2cm、測定周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の測定を行った。弾性率が急激に低下し始める温度から得られた軟化温度は104℃であった。
25℃、相対湿度50%において上記フィルムの機械強度を測定したところ、破断強度は19.8MPa、破断伸度は116%であり、膜として十分な強度を有していることが確認された。なお、フィルムの機械強度は、フィルムを長さ100mm、幅10mm、標線間距離50mmに切り出し、チャック間初期距離50mm、引張速度50mm/min、25℃、相対湿度50%において引張試験を行って測定した。
[例8]
化合物(4)90質量部とCF=CFOCFCFCFCFOCF(CF)CFOCF=CFで表されるジビニルエーテル10質量部の混合液にペルフルオロ過酸化ベンゾイル3質量部を溶解し、60℃にて数分加熱して少し粘度の高い溶液Aを調製した。
ガラス板上にポリイミドフィルムを配置し、その上にポリテトラフルオロエチレン多孔体(商品名:Fluoropore FP−100、日東電工製、孔径1μm)を配置した。この多孔体上に溶液Aを塗布した後、その上にポリイミドフィルムを重ね、さらにガラス板を重ねた。こうしてガラス板及びポリイミドフィルムで挟まれた溶液Aを含浸したポリテトラフルオロエチレン多孔体を、オーブン中で16時間70℃にて加熱し、次いで、90℃で4時間加熱した。ガラス板とポリイミドフィルムを取り除くことにより、化合物(4)の架橋ポリマーがポリテトラフルオロエチレン多孔体で補強された膜を作製した。
HCFC225cbに40℃で一晩浸漬し、40℃で一晩真空乾燥した。DMSO30%、KOH11%及び水59%(質量比)からなる液に90℃で16時間浸漬してフルオロスルホニル基を−SOK基に変換した。水洗後、1mol/L硫酸に浸漬し、水洗することにより、−SOK基をスルホン酸基に変換し、スルホン酸基を有する共重合体からなるフィルムを得た。
[比較例2]
固体高分子型燃料電池の電極の触媒層の材料又は高分子電解質膜の材料として従来より用いられている、テトラフルオロエチレン/CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF共重合体を公知の方法により製造した。得られたポリマーの元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたイオン交換容量Aは、1.1meq/gであった。例7と同様に、加水分解、酸型化処理してフルオロスルホニル基をスルホン酸基に変換して得られたポリマーの軟化温度は79℃であった。
次に、加水分解、酸型化する前のフルオロスルホニル基を有するポリマーを用い、例7と同様に熱プレスにより厚さ約100μmのフィルムを作製し、例7と同様に加水分解、酸型化処理を施して、スルホン酸基を有する共重合体からなるフィルムを得た。
[含水率の測定]
例2〜4で得られたポリマーのエタノール溶液からそれぞれキャスト膜を作製し、160℃で30分熱処理を行った。このキャスト膜を90℃のイオン交換水に16時間浸漬した後、室温にて測定した含水率は、それぞれ62%、40%、146%であった。
なお、含水率は以下のとおり算出した。すなわち、90℃のイオン交換水に浸漬後の室温における質量をW1とし、その後80℃で16時間真空乾燥してから測定した質量をW2として、含水率△W%を式△W(%)=(W1−W2)/W2×100により求めた。
次に例7、比較例2でそれぞれ得られたスルホン酸基を有するポリマーからなるフィルムを、90℃のイオン交換水に16時間浸漬し、上記同様に含水率を求めたところ、それぞれ70%、59%であった。
また、例7と比較例2で得られたフィルムについて、含水率とイオン交換水に浸漬する温度との関係を調べた結果を図1に示す。また、例8で得られたフィルムについても同様に、含水率とイオン交換水に浸漬する温度との関係を比較例2と比較した結果を図2に示す。なお、例8の含水率の計算では、膜重量から多孔体重量を差し引いた値を用いた。図1、2からわかるように、本発明の固体高分子電解質材料は、高温においても含水率の温度依存性が小さく、従来ポリマーに比べて高温特性に優れている。
[酸素ガス溶解性の測定]
含水率の測定で使用したフィルムと同様の例7と比較例2のフィルム(酸型)に対し、高真空圧力法(ASTM D1434−75M法)により酸素ガス透過性を評価した。使用した装置は理化精機工業社製、ガス透過装置である。
例7は、酸素ガス透過係数Pは0.69×10−13cm(STP)・cm・cm−2・s−1・Pa−1、酸素ガス拡散係数Dは0.030×10−6cm・s−1、酸素ガス溶解係数Sは2.3×10−6cm(STP)・cm−3・Pa−1であった。これに対して比較例2は、酸素ガス透過係数Pは0.40×10−13cm(STP)・cm・cm−2・s−1・Pa−1、酸素ガス拡散係数Dは0.026×10−6cm・s−1、酸素ガス溶解係数Sは1.5×10−6cm(STP)・cm−3・Pa−1であった。
[固体高分子型燃料電池の作製(実施例)]
例4で得られたポリマーのエタノール溶液と、白金をカーボンに55質量%担持させた担持触媒と水を混合し、上記ポリマーと担持触媒(ポリマーとカーボンとの質量比4:5)がエタノールと水の混合分散媒(質量比で1:1)に分散した固形分濃度12質量%の分散液を得て、これをカソード触媒層形成用塗工液とした。この塗工液を、シリコーン系離型剤で表面を処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にダイコート法で塗工し、80℃で乾燥して厚さ約10μm、白金担持量約0.5mg/cmのカソード触媒層を形成した。
CF=CFに基づく繰り返し単位とCF=CF−OCFCF(CF)−OCFCFSOHに基づく繰り返し単位とからなるA1.1meq/gのポリマーのエタノール溶液、白金/ルテニウム合金(質量比5:4)をカーボンに担持させた担持触媒と水を混合し、上記ポリマーと担持触媒(質量比27:73)がエタノールと水の混合分散媒(質量比で1:1)に分散した固形分濃度12質量%の分散液を得て、これをアノード触媒層形成用塗工液とした。この塗工液を用いてカソード触媒層同様にPETフィルム上にダイコート法で塗工し、厚さ約10μm、白金担持量約0.5mg/cmのアノード触媒層を形成した。
CF=CFに基づく繰り返し単位とCF=CF−OCFCF(CF)−OCFCFSOHに基づく繰り返し単位とからなる厚さ30μmのイオン交換膜(イオン交換容量:1.1meq/g)の一方の面に、上記カソード触媒層を、他方の面に上記アノード触媒層を配置し、転写法により膜の両面にカソード触媒層とアノード触媒層をそれぞれ転写し、PETフィルムをはく離して、有効電極面積25cmの膜・触媒層接合体を作製した。転写は温度130℃で3MPaの圧力で行った。
次にカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン粒子とからなる厚さ約10μmの導電層が表面に形成された、厚さ約300μmのカーボンクロスを2枚用意してガス拡散層とし、上記膜・触媒層接合体の両面に配置しガス拡散層つきの膜電極接合体を得た。これを反応ガス供給流路を備えたセパレータにガスケットを周囲につけて挟み込み、電池性能測定用セルを得た。このセルのアノードに水素ガス、カソードに空気をそれぞれ供給した。セル温度70℃、水素ガスの利用率70%、空気の利用率40%とし、水素及び空気は加湿して露点70℃のガスとして供給した。このサンプルを2つ作製し、発電試験を行った。電流密度とセル電圧の関係の結果を表1に示す。
[固体高分子型燃料電池の作製(比較例)]
例4で得られたポリマーのかわりにCF=CFに基づく繰り返し単位とCF=CF−OCFCF(CF)−OCFCFSOHに基づく繰り返し単位とからなるAR1.1meq/gのポリマーを用いた以外は上記実施例と同様にしてカソード触媒層を作製した。このカソード触媒層を用いた以外は上記実施例と同様にして膜電極接合体を作製し、発電試験を行った。電流密度とセル電圧の関係の結果を表1に示す。

【産業上の利用の可能性】
本発明の固体高分子電解質材料は、従来のものに比べ軟化温度が高く、また高温での含水率の温度依存性が低いので、例えば固体高分子型燃料電池に使用した場合においては、当該燃料電池を従来より高温で作動させることが可能となる。
また、本発明の固体高分子電解質材料は環構造を有しているため、酸素ガス透過性に優れている。したがって、特に固体高分子型燃料電池のカソードの触媒層に電解質として含有させると、ガス拡散性に優れる。さらに、固体高分子電解質材料を構成するポリマーにおける1つのモノマー単位が環構造とスルホン酸基とを同時に有しているため、固体高分子電解質材料のイオン交換容量を高くして導電性を高めることもできる。したがって、当該電解質材料を使用した燃料電池は高出力となり得る。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーであって、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーからなることを特徴とする固体高分子電解質材料。
【請求項2】
前記ポリマーは、非イオン性で環構造を有しラジカル重合性を有する含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、非イオン性の環化重合性含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上を含む共重合体である請求の範囲1に記載の固体高分子電解質材料。
【請求項3】
前記ポリマーは、ペルフルオロ化されたポリマーである請求の範囲1又は2に記載の固体高分子電解質材料。
【請求項4】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(1)で表わされる繰り返し単位である(ただし、Rはエーテル結合性の酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子。)請求の範囲3に記載の固体高分子電解質材料。

【請求項5】
式(1)において、R及びRがフッ素原子である請求の範囲4に記載の固体高分子電解質材料。
【請求項6】
前記イオン性基は、−(SOX(SOで表わされ、かつ軟化温度が90℃以上である請求の範囲1〜5のいずれかに記載の固体高分子電解質材料。
【請求項7】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(2)で表わされる請求の範囲5又は6に記載の固体高分子電解質材料。

【請求項8】
ラジカル開始源の存在下で、フルオロスルホニル基とラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合とを有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーを、ラジカル重合した後、前記フルオロスルホニル基をスルホン酸基に変換することを特徴とする固体高分子電解質材料の製造方法。
【請求項9】
非イオン性で環構造を有しラジカル重合性を有する含フッ素モノマー、非イオン性の環化重合性含フッ素モノマー、及びテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる1種以上と、前記脂環式含フッ素モノマーとをラジカル重合する請求の範囲8に記載の固体高分子電解質材料の製造方法。
【請求項10】
前記脂環式含フッ素モノマーが下式(3)で表わされる(ただし、Rはエーテル性酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子。)請求の範囲8又は9に記載の固体高分子電解質材料の製造方法。

【請求項11】
前記脂環式含フッ素モノマーが下式(4)で表わされる請求の範囲10に記載の固体高分子電解質材料の製造方法。

【請求項12】
前記脂環式モノマーとともに、分子内に2以上のラジカル重合性の二重結合を有する含フッ素モノマーを共重合することにより、架橋させる請求の範囲8〜11のいずれかに記載の固体高分子電解質材料の製造方法。
【請求項13】
ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーであって、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーからなる膜であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項14】
前記ポリマーは、非イオン性で環構造を有しラジカル重合性を有する含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、非イオン性の環化重合性含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上を含む共重合体である請求の範囲13に記載の固体高分子電解質膜。
【請求項15】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(1)で表わされる繰り返し単位である(ただし、Rはエーテル結合性の酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子。)請求の範囲14に記載の固体高分子電解質膜。

【請求項16】
前記イオン性基は、−(SOX(SOで表わされ、かつ軟化温度が90℃以上である請求の範囲13〜15のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
【請求項17】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(2)で表わされる請求の範囲15又は16に記載の固体高分子電解質材料。

【請求項18】
分子内に2以上のラジカル重合性の二重結合を有する含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含み、当該繰り返し単位により架橋されている請求の範囲13〜17のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
【請求項19】
固体高分子電解質材料が水酸基を有する溶媒及び水からなる群から選ばれる1種以上の溶媒中に溶解又は分散した液状組成物であって、前記固体高分子電解質材料は、ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーであって、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーからなることを特徴とする液状組成物。
【請求項20】
前記ポリマーは、非イオン性で環構造を有しラジカル重合性を有する含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、非イオン性の環化重合性含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上を含む共重合体である請求の範囲19に記載の液状組成物。
【請求項21】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(1)で表わされる繰り返し単位である(ただし、Rはエーテル結合性の酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子。)請求の範囲20に記載の液状組成物。

【請求項22】
触媒と固体高分子電解質とを含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを備える膜電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜は、ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含むポリマーであって、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーからなる膜であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【請求項23】
触媒と固体高分子電解質とを含む触媒層を有するカソード及びアノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置される固体高分子電解質膜とを備える膜電極接合体であって、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方の触媒層には、ラジカル重合反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合の両端の炭素原子の一方は環構造を構成する脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位を含み、前記含フッ素モノマーは−(SOX(SOで表されるイオン性基(式中、MはH、一価の金属カチオン、又は1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンであり、Rは、エーテル結合性酸素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基であり、Xは酸素原子、窒素原子又は炭素原子であって、Xが酸素原子の場合a=0であり、Xが窒素原子の場合a=1であり、Xが炭素原子の場合a=2である。)を有するポリマーが含まれることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【請求項24】
前記ポリマーは、非イオン性で環構造を有しラジカル重合性を有する含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、非イオン性の環化重合性含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上を含む共重合体である請求の範囲22又は23に記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【請求項25】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(1)で表わされる繰り返し単位である(ただし、Rはエーテル結合性の酸素原子を含有してもよい2価のペルフルオロ有機基であり、R〜Rはそれぞれ独立にエーテル結合性酸素原子を含有してもよい1価のペルフルオロ有機基又はフッ素原子。)請求の範囲24に記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。

【請求項26】
前記イオン性基は、−(SOX(SOで表わされ、かつ前記固体高分子電解質材料の軟化温度が90℃以上である請求の範囲23〜25のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【請求項27】
前記脂環式含フッ素モノマーに基づく繰り返し単位は、下式(2)で表わされる請求の範囲25又は26に記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。


【国際公開番号】WO2004/097851
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505925(P2005−505925)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006127
【国際出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】