説明

固定具と固定具の取り外し方法

【課題】 一緒に固定されて構成される部品から容易に切り離して部品の交換をすることができるようにした固定具と固定具の取り外し方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、部品の交換をする際、図示しない特殊スパナを固定具1の切り欠き部7,8に引っ掛けて固定具1を90度回転させる。それによって、固定具のかしめ部が穴11の外径R11から外径S11に移動され、かしめ部がかしめている板金10,20から外れる。そこで、固定具1は簡単に板金10,20から抜き去ることができて板金10と板金20とが離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話機等に用いられるステンレス鋼等の板金を固定する固定具と固定具の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引張荷重とトルク負荷に耐えて薄板(板金)との接合を確実に行って圧入するファスナーとも呼ばれるナット状の金属製固着具が実用化されている。このようなナット状の金属製固着具を取り付けると緩んだり落ちたりする心配がなくなる。
このような固着具が薄板の予め設けられた孔に圧入されて充分な強度で固定されるよう、固着具に設けられる突出部(実際に薄板に圧入される部分)の外側周面にローレット状その他の凹凸を設けて薄板に圧入する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、最近の電子機器は、高性能及び多機能化され、これに伴って多くの回路を必要とし、使用されている基板の枚数も多くなっている。このようなとき親基板に子基板を固定する基板固定具が提案されている(例えば特許文献2)。
近年、例えば携帯電話機等においては、ますます高性能化、多機能化が進んできている。携帯電話機における多機能化に伴い、多機能を構成する各構成部品の寿命にばらつきがある。例えば、折り畳み式携帯電話機に設けられるヒンジなどの可動部はユーザの扱いにもよるが壊れ易い部分で修理依頼が多く、部品交換して対応している。
【0004】
しかしながら、このように故障した部分の部品交換の際、同時に一緒に構成されている部品も交換することから、修理代金が高額になってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平8−291815号公報
【特許文献2】 特開2008−192805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、携帯電話機等において、故障した部分の部品交換の際、同時に一緒に構成されている部品も交換することから修理代金が高額になってしまうという問題があった。
この発明の目的は、一緒に固定されて構成される部品から容易に切り離して部品の交換をすることができるようにした固定具と固定具の取り外し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、2枚の板金に設けられた固定具が固定できる第1の穴径と該固定具が取り外せる第2の穴径とを備えた穴に挿入してかしめることにより、該2枚の板金を固定する固定具であって、上記固定具は、該固定具を回転させるための嵌合手段が設けられた底部と、前記2枚の板金を固定するかしめ部とを備え、上記2枚の板金の穴に挿入された上記固定具が、前記かしめ部によりかしめられて上記第1の穴径により固定されている状態で、前記嵌合手段を用いて前記固定具が回転されることにより、該固定具のかしめ部が第1の穴径から第2の穴径に移動されて上記2枚の板金の穴から取り外せるようにしたものである。
また、本発明は、2枚の板金に設けられた穴に挿入してかしめることにより、該2枚の板金を固定する固定具の取り外し方法であって、上記2枚の板金の穴に挿入された上記固定具がかしめられ、該2枚の板金が固定されている状態で、予め該固定具に設けられた嵌合手段を用いて該固定具が回転されることにより、該固定具が上記2枚の板金の穴から取り外せるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、一緒に構成される部品から切り離すと共に容易に部品交換をすることができるようにした固定具と固定具の取り外し方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態が適用可能な固定具の一例を示す正面図。
【図2】固定具を上から見た上面図。
【図3】固定具を板金に固定した状態を示す図。
【図4】板金に固定された固定具を底部側から見た状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、この発明に係るファスナーとも呼ばれる固定具1を示す正面図である。すなわち、この固定具1は、底部2の上に本体3が設けられ、本体3の上に左のかしめ部4と右のかしめ部5とが設けられている。さらに、かしめ時の応力を分散させるための貫通穴6が設けられている。
【0011】
図2は、固定具1を上から見た図で、底部2は円形であり、本体3は略小判形に成形されている。底部2には切り欠き部7,8とが設けられている。切り欠き部7,8とは、詳しくは後述するが特殊スパナ(図示しない)で固定具1を90度回転させる際の引っ掛け部となる。なお、切り欠き部7,8の代わりにマイナスドライバで固定部1を回転させることのできる溝を設けるようにしても良い。プラスドライバで固定具1を回転させることのできる十字溝を設けるようにしても良く、要は固定具1を90度回転させることが出来れば良いのである。
例えば、固定具1の寸法は、底部2の外径が2.8mm、本体3の幅が最大部が1.8mmで最小部が1.2mm、かしめ部4,5の最大幅が0.3mmで本体3からの高さが0.7mmである。
なお、本実施の形態における固定具1の材質はステンレス鋼である。
【0012】
図3は、親側の薄板の板金10に子側の薄板の板金20を固定具1で固定した状態を示す図である。板金10,20は、固定具1の本体3の最大部における断面として表している。板金10と板金20には固定具1が挿入される後述する穴がそれぞれ予め設けられている。この板金10,20の後述する穴に固定具1が挿入され、かしめ部4が左側にかしめられ、かしめ部5が右側にかしめられて板金10と板金20とが密着固定されている。
例えば、板金10の板厚は0.5mm、板金20の板厚は0.3mmである。板金10,20の穴については後述する。
【0013】
本実施の形態における板金10と板金20の材質はステンレス鋼であるが、本発明はこれに限るものではなく、金属だけでなく基板等の非金属のようなものでも応用可能である。
なお、固定具1は、本実施の形態ではステンレス鋼を用いているが、板金(軟鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等、あるいは基板等)の材質に対応して炭素鋼、黄銅、軟鋼、アルミニウム、亜鉛等の金属を用いても良い。
【0014】
図4は、板金10と板金20とを固定している固定具1を底部2側から見た図である。図4は、板金10,20に設けられた穴11は、固定具1がかしめられる外径R11と固定具1を取り外す際に利用される外径S11とから構成されている。
穴11の外径と固定具1のかしめ後の寸法の関係は下記の通りである。
外径S11>かしめ部4の先端からかしめ部5の先端までの寸法>外径R11
図4に示すように固定具1は、かしめ部4が穴11の左側の外径R11の部分にかしめられ、かしめ部5が右側の外径R11の部分にかしめられて固定されている。
【0015】
ここで、部品の交換をする際、図示しない特殊スパナを固定具1の切り欠き部7,8に引っ掛けて固定具1を90度回転(例えば、時計回り)させる。それにより、図4に示すかしめ部4が左側の外径R11から上方の外径S11の部分に移動され、かしめ部5が右側の外径R11から下方の外径S11の部分に移動される。その結果、かしめ部4とかしめ部5とが穴11から外れる。そこで固定具1は簡単に板金10,20から抜き去ることができ、板金10と板金20とが離される。これで、例えば、子側の板金20の部品だけを交換することが可能となる。取り付けは、再度、新しい固定具1を用いてかしめることにより板金10と新しい板金20とが固定される。
【0016】
以上説明したように上記発明の実施の形態によれば、親側の板金と子側の板金とを固定している固定具を図示しない特殊スパナで90度回転させることにより容易に取り外すことが可能となる固定具と固定具の取り外し方法を提供することができる。
【0017】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0018】
1…固定具、2…底部、3…本体、4,5…かしめ部、6…貫通穴、7,8…切り欠き部(嵌合手段)、10,20…板金、11…穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板金に設けられた固定具が固定できる第1の穴径と該固定具が取り外せる第2の穴径とを備えた穴に挿入してかしめることにより、該2枚の板金を固定する固定具であって、
上記固定具は、該固定具を回転させるための嵌合手段が設けられた底部と、前記2枚の板金を固定するかしめ部とを備え、
上記2枚の板金の穴に挿入された上記固定具が、前記かしめ部によりかしめられて上記第1の穴径により固定されている状態で、前記嵌合手段を用いて前記固定具が回転されることにより、該固定具のかしめ部が第1の穴径から第2の穴径に移動されて上記2枚の板金の穴から取り外せることを特徴とする固定具。
【請求項2】
2枚の板金に設けられた穴に挿入してかしめることにより、該2枚の板金を固定する固定具の取り外し方法であって、
上記2枚の板金の穴に挿入された上記固定具がかしめられ、該2枚の板金が固定されている状態で、予め該固定具に設けられた嵌合手段を用いて該固定具が回転されることにより、該固定具が上記2枚の板金の穴から取り外せるようにしたことを特徴とする固定具の取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261578(P2010−261578A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131395(P2009−131395)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(506037009)
【Fターム(参考)】