説明

固定具

【課題】スプリンクラーの取り付けに使用する角バーと取り付けフレームとを固定する固定具において、作業性が優れた固定具を提供することを目的とする。
【解決手段】平行に配置される2つの側面部11、11とそれらの端部を接続する上面部12とを備え、側面部11には、横方向に延び一端が開口した溝部15と、溝部15の開口15a側に上側から延びる延長部16とを有し、延長部16は、溝部15に取付フレーム130の側部131を配置した際、延長部16の下端16aが取付フレーム130の側部131の上面より下側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関し、特に、スプリンクラーの取り付けに使用する角バーと取付フレームとを固定する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用のスプリンクラーは、火災発生時の初期消火を図る設備として有効な手段であると広く認識されている。スプリンクラーは、水源と加圧送水装置、配管、制御弁、流水検知装置(アラーム弁)、スプリンクラー配管、スプリンクラーヘッドから構成されている。スプリンクラー配管は送水本管から分岐されたスプリンクラー配管が天井裏に配管され、天井に設置されるスプリンクラーヘッドに接続される。スプリンクラーヘッドがねじ込み固定されるスプリンクラー配管端は、圧力試験を済ませた後、天井板支持フレームに固定された取付フレームに水平に固定される角バーと呼ばれる肉厚0.6mm程度の断面16mm×16mmの矩形パイプを介して固定される。この際に固定に使用される金具はサイド金具と呼ばれる固定具が使用されている。
【0003】
図7は、従来の固定具の例を示す側面図であり、図8は同じく正面図である。従来の固定具100は、全体としてコの字状の形状をしており、2つの側面部101、101と上部には上面部102より構成されている。側面部101にはそれぞれ、取付溝103を有しており、取付溝103は、側面部101の側端から横方向(上面部102と平行)にストレート状に延びる切り込みで形成されている溝である。また、上面部102には、雌ねじ部104を有し、蝶ボルト110の雄ねじ部111が螺合して貫通する。
【0004】
この取付溝103に取付フレーム(具体例は後述する)の一側面を通し、その上に角バー120を配置し、角バー120の上側から蝶ボルト110を締め込むことで、角バー120と取付フレームを固定する。
【0005】
また、特許文献1には、溝形鋼と固定材を固定する取付金具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−38641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固定具により、通常、角バーは取付フレームに対して直角に固定されるのが基本であるが、角バーを通そうとする位置にダクト類等、他の配管部材が設置される場合があり、その配管材を避けて角バーを固定する場合は、固定フレームに対して角バーを斜めに固定する必要がある。その場合に固定具が角バーに角度を付けて固定できることが必要である。
【0008】
図7、8に示した従来例では、断面16mm×16mmの矩形パイプの角バー120に対して、固定具100の内側の幅寸法は17mm程度であり、角度の調節が難しかった。
【0009】
さらに、角バーを固定具で固定する際に、固定具を固定フレームに自立的に、安定的に仮置き出来れば、作業効率の向上に有効と考えられるので、固定具が固定フレームから脱落しにくい構造を有するとよい。
【0010】
さらに、スプリンクラーヘッド・配管が施工された後のメンテナンス作業として、スプリンクラーヘッドの水抜き作業やヘッドの交換作業が行われることがある。その際、作業コスト低減のため、天井下からのスプリンクラーヘッドの脱着作業ができるように、スプリンクラー配管の供回り防止対策が講じられる必要がある。その際にスプリンクラー配管が固定されている角バーを固定する固定具にも大きなねじりトルクがかかるので、固定具にも角バーと固定フレームを強固に固定できる機能を有することが必要である。
【0011】
さらに、機能を追加してもコストを抑えた固定具が求められている。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて、スプリンクラーの取り付けに使用する角バーと取り付けフレームとを固定する固定具において、作業性が優れた固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の固定具は、スプリンクラーの取り付けに使用する矩形の角バーと、2つの側部と中央部で形成されるコの字形状の取付フレームとを固定する固定具において、平行に配置される2つの側面部とそれらの端部を接続する上面部とを備え、前記側面部には、横方向に延び一端が開口した溝部と、前記溝部の開口側に上側から延びる延長部とを有し、前記延長部は、前記溝部に前記取付フレームの側部を配置した際、当該延長部の下端が前記取付フレームの側部の上面より下側に位置していることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の固定具は、前記溝部の下側は、折り曲げ部が形成されていることを特徴とする。
さらに本発明の固定具は、前記2つの側面部間の内幅寸法は、前記角バーの外幅寸法より一定以上大きくとっていることを特徴とする。
さらに本発明の固定具は、前記側面部の中央付近には、内側に膨らむ突起部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スプリンクラーの取り付けに使用する角バーと取り付けフレームとを固定する固定具において、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の固定具の一実施形態を示す側面図である。
【図2】本発明の固定具の一実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明の固定具の一実施形態を示す上面図である。
【図4】本発明の固定具に取付けフレームを設置するときの状態の一例を示す図である。
【図5】本発明の固定具と取付けフレームの第1の状態を示す図である。
【図6】本発明の固定具と取付けフレームの第2の状態を示す図である。
【図7】従来の固定具の例を示す側面図である。
【図8】従来の固定具の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の固定具10の一実施形態を示す側面図であり、同じく図2は、正面図、図3は上面図である。
【0019】
固定具10は、平行に配置される2つの側面部11、11とそれらの端部を接続する上面部12とを有するコの字形状である。上面部12の中央部分の近傍には、雌ねじ部14を有している。また、側面部11、11には、それぞれ、溝部15と、溝部15の下側に設けられる折り曲げ部17と、内側に膨らんだ突起部19を有している。固定具10は、例えば、1.2〜1.6mm厚程度の金属製の薄板をプレス加工することにより作成可能となる。
【0020】
溝部15は、側面部11の側端から横方向に延びる切欠きであり、一方に入口15aを有して開口しており、他方が奥側面15bとなっている。そして、後述するように、取付フレーム130の側部131を挿入するのにふさわしい大きさに形成されている。さらに、溝部15の入口側には、延長部16を有しており、取付フレーム130の落下を防止する。
【0021】
延長部16は、一定の厚みで、溝部15の入口側の側面に上部から延びるように形成されている。延長部16の下端16aは、取付フレーム130の側部131を溝部15の下面(折り曲げ部17の上面17a)に設置した際に、側部131の上面よりも下側に位置するように、形成されている。例えば、寸法例を挙げれば、側部131の厚みが1.0mmであれば、側部131の上面よりも、延長部16の下端16aが0.3mm程度下に延長されるようになっている。これにより、取付フレーム130の溝部15からの落下を防止する。
【0022】
溝部15の奥側面15bから延長部16の内側側面までの横幅は、取付フレーム130の側部131の全長よりよりやや大きい寸法なっている。また、溝部15の高さ(折り曲げ部17の上面17aから溝部15の上側面15cまでの寸法)は、側部131を挿入する際に、側部131を斜めに入れられる余裕を有している。すなわち、側部131を溝部15の下側に設置しても上部に隙間を有する寸法となっている。そして、溝部15の入口15aは、延長部16の下面端部と、折り曲げ部17の側部の間に形成され、取付フレーム130の厚みより広い寸法となっている。
【0023】
折り曲げ部17は、一定幅を90°外側に折り曲げて溝部15の下側に形成されている。これにより、取付フレーム130の側部131を受ける面積を広くすることができる。なお、折り曲げ方向は内側でもよい。そして、折り曲げ部17はプレス加工により行える。このようにすることで、角バー120と取付フレーム130を圧着固定する際に固定具10と取付フレーム130の接触面積が折り曲げ部17の接触面積分増大することで、取付フレーム130の長手方向への滑り抵抗が増えることが見込める。
【0024】
突起部19は、側面部11、11の中央付近に縦長に設けられ、ちょうど、角バー120の設置高さに合わせて形成されている。固定具10の側面部11、11間の内幅寸法は、角バー120の外幅寸法よりも一定以上の余裕をもって大きいものとなっている。そして、側面部11、11に設けられた突起部19、19間の寸法は、角バー120の幅寸法よりわずか大きい程度になっており、角バー120の幅方向の位置決めを行える。このようにすることで、図3に示すように、角バー120を一定角度の範囲内で振れるようにでき、障害物を避けることができる。例えば、寸法例として、角バー120の寸法を16mm×16mmとすれば、固定具10のコの字形状の内幅寸法を20mmとして、左右に10°ずつ、合計20°程度、角バー120を振れるようにして、設置の際の角度調整を可能とすることができる。
【0025】
雌ねじ部14は、溶接ナットの取付や直接のネジ加工等により形成可能である。蝶ボルト110を螺合させて貫通する。
【0026】
また、角バー120は、上述したように矩形のバーであり、例えば、断面16mm×16mmで、厚さ0.6mm程度の矩形パイプが使用される。
【0027】
また、取付フレーム130も、上述したように2つの側部131、131と、それらを接続する中央部132によって構成されるコの字上のフレームである。
【0028】
次に実際の固定具10による固定を説明する。
【0029】
図4は、本発明の固定具10に取付けフレーム130を設置するときの状態の一例を示す図である。延長部16があるため、取付フレーム130の側部131を横から平行に溝部15に入れることができない。そのため、図4に示すように、取付フレーム130の側部131の端部を、溝部15の入口15aから斜め上に向けて入れていく。これは、溝部15内の高さ方向の空間に余裕を持たせているため可能となる。そして、図1に示す位置に配置される。
【0030】
図5は、本発明の固定具と取付けフレームの第1の状態を示す図である。取付フレーム130の側部131を溝部15内に配置した状態で、溝部15内で側部131が上側に動いても図5の二つの円で示す2箇所(溝部15の上側面15cと、折り曲げ部17の入口15a側の側面)で接触するため安定し、さらに、延長部16により取付フレーム130の脱落が防止される。
【0031】
図6は、本発明の固定具と取付けフレームの第2の状態を示す図である。取付フレーム130の側部131を溝部15内に配置した状態で、固定具10が右側に一定角度(α度(例えば10°程度))延長部16側に傾いても、図6の二つの円で示す2箇所(延長部16の内側の側面と、折り曲げ部17の上面17a)で引っかかり取付フレーム130の脱落が防止される。
【0032】
このように、実際に固定具10を使用する際、取付フレーム130を溝部15にあらかじめ設置しておけば、容易に脱落しないため、天井などでの狭い場所での作業がかなりやり易くなる。
【0033】
そして、図1等に示すように、取付フレーム130(側部131)の上部には、角バー120を配置し、さらに、雌ねじ部14に蝶ボルト110の雄ねじ部111を螺合させて貫通する。そして蝶ボルト110の頭部112を回転させると蝶ボルト110の先端が角バー120の上部に当接して角バー120を押す。さらに、角バー120の下側が、取付フレーム130の側部131の上側に当接して、側部131を押す。さらに、側部131の下側が、折り曲げ部17の上面17aに当接する。このようにして、取付フレーム130と角バー120が固定具10により固定される。
【符号の説明】
【0034】
10 固定具
11 側面部
12 中面部
14 雌ねじ部
15 溝部
15a 入口
15b 奥側面
15c 上側面
16 延長部
16a 下端
17 折り曲げ部
17a 上面
19 突起部
110 蝶ボルト
111 雄ねじ部
112 頭部
120 角バー
130 取付フレーム
131 側部
132 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーの取り付けに使用する矩形の角バーと、2つの側部と中央部で形成されるコの字形状の取付フレームとを固定する固定具において、
平行に配置される2つの側面部とそれらの端部を接続する上面部とを備え、
前記側面部には、横方向に延び一端が開口した溝部と、前記溝部の開口側に上側から延びる延長部とを有し、
前記延長部は、前記溝部に前記取付フレームの側部を配置した際、当該延長部の下端が前記取付フレームの側部の上面より下側に位置していることを特徴とする固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の固定具において、
前記溝部の下側は、折り曲げ部が形成されていることを特徴とする固定具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の固定具において、
前記2つの側面部間の内幅寸法は、前記角バーの外幅寸法より一定以上大きくとっていることを特徴とする固定具。
【請求項4】
請求項3に記載の固定具において、
前記側面部の中央付近には、内側に膨らむ突起部を有することを特徴とする固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−19816(P2012−19816A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157699(P2010−157699)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(593000971)株式会社テクノフレックス (12)
【Fターム(参考)】