説明

固定化ゲノムDNAのハイブリダイゼーション方法

本発明は、固定化ゲノムDNAおよび/またはRNAにプローブを効率的にハイブリダイズする新規方法であって、(a) 無傷ゲノムDNAを用意し、このゲノムDNAを変性させる;(b) 前記の変性無傷ゲノムDNAをマトリックスに固定する、このマトリックスは外側限界を含めて、0.6μm〜2μmの範囲内の孔径を含む;(c) 一組のプローブを用意し、このプローブが前記無傷ゲノムDNA中の相補配列にハイブリダイゼーションするのに有利な条件下で、このプローブを前記マトリックスに通過させる;(d) ハイブリダイズしなかったプローブを前記マトリックスから洗い出し、形成されたハイブリッド済み無傷ゲノムDNA/プローブ複合体を残留し、以後の分析用に供する、の諸工程を含む方法に関する。本発明は、さらに、ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する新規方法であって:(a) 無傷ゲノムDNAを用意し、この無傷ゲノムDNAを変性させる;(b) 上記の方法に従ってハイブリダイゼーションを実施する;(c) ハイブリダイズしたプローブを回収し;単一プライマーペアを使って回収したプローブを基本的に同時に増幅させる、このプライマーペアの各プライマーは前記プローブの各隣接プライマー結合配列上で回収プローブに結合する;(d) 工程(c)の回収した増幅プローブを定性的、定量的に分析する、の諸工程を含む方法に関する。本発明はその使用、並びに、前記の本発明方法を実施するための装置、機器およびキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無傷(intact)ゲノム核酸材料のハイブリダイゼーションおよびゲノムDNAサンプル中の標的核酸の検出および定量の方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、ゲノムDNAへの自動化した多重増幅プローブハイブリダイゼーションの方法に関する。
【0003】
本発明の方法は、ゲノムDNAのコピー数およびコピー数の変化を検出するスクリーニング方法に特に有用である。
【背景技術】
【0004】
DNAコピー数の異常は、多くのヒトの遺伝的障害を含む生物における多くの遺伝病の原因である。これらの異常の大半は、全染色体、例えば、モノソミーおよびトリソミーのコピー数の変化に関与し(例えば、21トリソミーの結果としてダウン症候群);並びに、ネコなき症候群における5p欠失などの部分的異常に関与する。あるいは、遺伝子疾患、例えばDMD(デュシェーヌ筋ジストロフィー)、BRCA1(乳癌)またはMSH2/MLH1(遺伝性非ポリポーシス大腸癌、即ち、HNPCC)は、ゲノムDNAのコピー数の小さい変化から起こる可能性があり、このコピー数の変化が非常に小さいために通常の細胞遺伝学的手法では検出できない。さらに、個々の遺伝子レベルでは、特定の遺伝病は、個々のエクソンまたは全遺伝子に関与する欠失や重複から起こり得る。
【0005】
複合ゲノムにおけるコピー数の変化の検出は、簡単ではない。コピー数変化による遺伝病に広く利用される診断法には、例えば、定量的な多重PCR、サザンブロッティングおよび比較ゲノムハイブリダイゼーションがある。しかし、これらの技術は、広く実践され、信頼性が十分に認識されているにもかかわらず、多数の短所がある。サザンブロッティングは、時間がかかり、重複を検出するのが困難な場合がある。多重PCRの短所は、例えば、同時に分析できる遺伝子座数に限界がある点である。比較ゲノムハイブリダイゼーションは、一回の検査でゲノムをそのまま分析できるが、分解能が比較的低いことが判明した。複合ゲノムのコピー数の検出が技術的に大きな挑戦であることは明らかである。
【0006】
特定の遺伝子座のコピー数を評価し、あるいは、未知の位置の極く微小な欠失について無傷ゲノムDNAを検討するために系統的な研究が展開されたのは、根本的に重要であるにもかかわらず、ようやく最近になってからである。新しい研究には、例えば、WO 00/53804 (Armour)(特許文献1)に記載されているような多重増幅プローブハイブリダイゼーション(multiplex amplifiable probe hybridisation)がある。多重増幅可能プローブハイブリダイゼーションの能力と特異性は、大量のヒト遺伝子座でのコピー数を一斉に評価することにより証明されているが、この技術は、特に非結合プローブ除去のための処理工程にかなり時間がかかる、という一般的な難点がある。
【0007】
研究活動および診断法開発の指数的増大によって、ハイブリダイゼーション手法の改良を求める要求は必然的なものであり、当業者は、非常に効率的で、経済的な診断ツールが入手可能であれば、診断法の研究に極めて有利で、診断技術の商業化に極めて有益であろう、と認識している。
【0008】
技術上既知のフロースルーハイブリダイゼーション(flow-through hybridisation)法が、ここ数年で、多数の分析技術を実施するという効率のよさで評価されてきたが、この方法では、プローブのハイブリダイゼーションが4タイプの核酸プローブ、すなわちDNAの大型切片、小DNA(cDNAを含む)、RNAおよびペプチド核酸に限定される。
【特許文献1】国際公開第WO 00/53804号
【発明の開示】
【0009】
本発明では、固定された未消化または無傷のゲノムDNAのための特異なフロースルーハイブリダイゼーション法の原理およびその目的のための装置、並びにそれによってハイブリダイゼーション時間とハイブリダイゼーションに使用する試薬の量が何分の一にも削減できることが記載される。特に、本発明は、未消化または無傷のゲノムDNAの分析を可能にし、したがって、時間のかかるプレハイブリダイゼーションの手作業工程、例えば断片化による作業に必要な工程を、必要としない。
【0010】
本発明の目的は、ゲノムサンプル中の核酸を高い分解能をもって定量的に検出するための改良法の提供である。
【0011】
本発明のさらなる目的は、ゲノムサンプル中の核酸をはるかに向上した感度レベルで定量的に検出するための方法の提供である。
【0012】
本発明のさらなる目的は、サンプル中の核酸を定量的に検出するための時間管理を改善した方法の提供である。
【0013】
さらなる目的は、前記方法を実施するための装置、機器およびキットの提供である。
【0014】
(発明の概要)
本発明は、ゲノム核酸サンプル内の核酸を正確に定量するために、 (a) 無傷ゲノムDNAを用意し、この無傷ゲノムDNAを変性させる;(b) この変性した無傷ゲノムDNAをマトリックスに固定する、このマトリックスには外側限界を含めて0.6μm〜2μmの範囲内の孔サイズが含まれる;(c) 一セットのプローブを用意し、前記の無傷ゲノムDNA中の相補的配列にプローブをハイブリダイゼーションさせるのに有利な条件下で、前記マトリックスに前記プローブを通過させる;(d) ハイブリダイズしなかったプローブを前記マトリックスから洗い出し、ハイブリダイズして形成された無傷ゲノムDNA/プローブ複合体を以後の分析に供するために残留させる、という諸工程を含む固定化無傷ゲノムDNAにプローブをハイブリダイゼーションする方法を提供する。
【0015】
本発明は、迅速(高速)、高感度、高特異的で小型化したフロースルーゲノムハイブリダイゼーション方法を提供する。
【0016】
本発明は、未消化または未消化または無傷または未組み換えゲノムDNAの使用とフロースルーハイブリダイゼーション技術を併用することによって、分析時間の大幅な削減が可能である。本明細書内で例証するように、格別なる実験の結果、特定のパラメーターを有するマトリックスのみが、前記プローブに前記マトリックスを通過させ前記の無傷ゲノムDNA中のプローブの相補配列に到達させる要件を満足し、その間に最も好ましいハイブリダイゼーションの反応動態が確保される、という驚くべき所見が得られた。
【0017】
本発明が提供するハイブリダイゼーション方法の概略を図1に示す。
【0018】
(発明の詳細な説明)
本方法および本方法で使用する解決方法を述べる前に、本発明は記載する特定の方法、構成要素または解決方法に限定されるものではなく、方法、構成要素、解決方法自体は、当然、変更可能であることを理解すべきである。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文中で他に明確に規定しない限り、複数の意味を含む。
【0020】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみに限定されるため、本明細書で使用する用語が限定的であることを意図していない点も理解しなければならない。
【0021】
従って、定義が本発明の範囲を限定すると理解してはならない。むしろ、該定義は、説明の言葉および、適宜、請求項の言葉の解釈に使用すべきである。これらの用語は、本発明の説明の文脈中でさらに十分に理解できる。本説明の中でそれ以上の定義がなく、あるいは、その文脈上解釈できない用語が説明または請求項に載っている場合には、当業者が理解するものと同一の意味を持つとみなすこととする。
【0022】
本発明は、特に配列コピー数のスクリーニング、並びに、ゲノムまたはゲノムサンプル中の複数の核酸配列のコピー数変化のスクリーニングに関する。
【0023】
用語「ゲノム」、「ゲノム成分」、「ゲノムサンプル」、「ゲノムDNA」、「ゲノム核酸材料」および「遺伝子材料」は、本明細書全体を通して、互換的に使用し、生物の究極の遺伝情報源である生物または細胞中の核酸分子を意味する。大半の生物において、ゲノムは、主に染色体DNAから成るが、プラスミド、ミトコンドリアDNAなども含む。RNAウイルスなどの一部の生物では、1個のゲノムは、RNAから成る。本明細書で使用する場合、ゲノムDNAは、他に規定がない限り、未消化または無傷である。用語「未消化ゲノムDNA」および「無傷ゲノムDNA」は、本明細書全体を通して、互換的に使用する。
【0024】
「核酸」は、DNA、RNAまたは他の関連物質組成物を意味し、類似部分の置換を含むことができる。例えば、核酸は、キサンチン、イノシン、DNA中ウラシル、RNA中チミン、ハイポキサンチンなどを含めて、DNAまたはRNAに認められない塩基を含むことができるが、それらに限定されない。核酸は、安定性、酵素的分解への耐性、あるいは何らかの他の有用な性質を改良するために導入可能なリン酸塩または糖部分の化学修飾を含むこともできる。
【0025】
遺伝子配列の正常なコピー数の喪失または減少(欠失)もしくはコピー数の増加(増幅)は、広く、普遍的に重要である。前記の遺伝子変化は、体細胞および生殖細胞系列の両方に表現型の特徴について基礎となっていることが既知である。前記の遺伝子変化の部位および性質の証明は、原因となる遺伝子の識別および適切で有効な処置および治療法の開発に不可欠である。
【0026】
本発明は、ゲノム成分を含有する、あるいは、含有する可能性のあるサンプルからの遺伝情報を入手する方法を提供する。それは、ゲノム障害を識別する上で医学的および/または環境的および/または社会的に重要である。感染症または汚染の至適治療および公衆衛生の維持のために、前記サンプルから例えば感染菌を識別、定量することもできる点は、十分に評価されることになる。
【0027】
本発明に記載の方法は、特に、固定化ゲノム核酸材料へのプローブハイブリダイゼーション用として設計されている。本発明に記載のハイブリダイゼーション方法は、未消化または無傷のゲノム成分を固定化し、フロースループローブハイブリダイゼーション技術に供することを特徴とする。
【0028】
これに関連して、無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション用として、本明細書に従って、本明細書に記載するとおりの方法の使用を提供することが、本発明の別の目的である。
【0029】
本発明内の固定化遺伝子材料は、ゲノム異常の存在/不存在を分析するためのサンプルに由来する。
【0030】
用語「ゲノム異常」は、正常なゲノム成分状態からの逸脱を意味する。ゲノム成分状態は、サンプルの状態または状態の一部、あるいは、対応する全体を特徴付けるもので、そこから前記ゲノム成分を特定、定量した。ゲノム異常は、例えば、欠失および重複を含めた染色体全体レベルでの変異、部分異常、個々のエクソンまたは遺伝子全体に関連する個々の遺伝子レベルのゲノムDNA欠失および重複が主流であると思われる。
内来性ならびに外来性の異常または不規則性はゲノム異常を招くと思われる。
【0031】
従って、ゲノム異常は、次に例示する外来性核酸の存在が同様に主流となることもあるが、それらに限定されない:例えばプラスミドおよびウィロイドを含む裸の自律複製核酸;病原体、寄生虫、汚染物質などの体形化した自律複製核酸である。前記病原体、寄生虫および汚染物質は、藻類、古細菌、細菌;ウイルス;酵母、カビ、菌根を含む真菌;線虫;原虫およびコウ虫であることができる。
【0032】
ゲノム成分を含有するまたは含有すると疑われるサンプルは、生物材料または生物材料を含む材料であることができ、それらから核酸を調製し、特定の核酸配列の有無について定性および定量分析できる。本発明の方法において使用するゲノム核酸材料は、直接分析用のサンプルフォーマットであることができる。しかし、本発明の分析で使用する前にサンプルを何らかの調製工程に供して、特定の有用なフォーマットが得られる場合もある。前記調製には、核酸ではない残渣の除去、および純粋な、または単離された核酸材料の水もしくは適当な緩衝液での懸濁/希釈を含むことができる。
【0033】
ゲノム材料は、事実上どんなサンプルからも単離できる。しかし、通常、サンプルは、生物学的または生化学的サンプルである。用語「生物学的サンプル」は、本明細書で使用する場合、生物または生物の構成部分(例、細胞)から得られるサンプルを指す。サンプルは生体組織または体液であることができる。多くは、サンプルは、患者に由来するサンプルである「臨床サンプル」になる。前記サンプルは、喀痰、脳脊髄液、血液、胎児血清(例SFC)を含む血清や血漿や血球(例、白血球)などの血液分画、組織または細針穿刺生検サンプル、尿、腹腔内液、胸膜液、またはそれらから得られる細胞を含むが、それらに限定されない。生物学的サンプルは、組織切片も含むことができる。
【0034】
本発明に記載のハイブリダイゼーション方法は、単離無傷ゲノムDNAを使用する。各種サンプルからのゲノムDNAの単離法は、従来技術でよく知られている。
【0035】
典型的には、固定前に無傷ゲノムDNAを変性させる。DNAは、沸騰や技術上周知の他の方法で変性させることができる。
その後、変性DNAをマトリックス内に固定する。
【0036】
用語「マトリックス」は、遺伝子材料を封入または埋設できる(研究用としての)材料を指す。マトリックスという用語は、無傷ゲノムDNAの固定に使用できる多様な、可能な基体を含む。
一般に、マトリックスは、無傷ゲノムDNAまたは核酸の固定が可能な、および、前記のゲノム材料の固定に使用する条件下で融解せず、あるいは、その他、実質的に分解せず、フロースルーハイブリダイゼーションによる前記固定化ゲノム材料のプローブとのハイブリダイゼーションが可能な、どのような材料からでも構成することができる。
【0037】
本発明でのマトリックスとしての使用に適した多数の材料は、本技術分野において記載されている。多孔マトリックスの場合の孔径またはマトリックス網の場合のメッシュサイズが無傷ゲノム核酸材料の透過を可能にするのであれば、本発明のマトリックスとして特に適した材料は、どんなタイプの透過性合成材料または天然材料でも含まれる。適切なマトリックス材料は、孔サイズが外側限界を含めて、0.6μm〜2.0μmの範囲内である;例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、および2.0μmである。特に、適切な孔サイズは、外側限界を含めて、0.6μm〜2.0μmの範囲内である;例えば、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1および1.2μmである。本明細書内で例示する適切な材料の1つは、Whatman 3MM Chr濾紙である。しかし、いずれにしても、この例示した材料に限定されると解してはならない。マトリックスの厚さはマトリックスの強度の関数として変動し得る点は、当業者の認識するところである。即ち、マトリックスが薄いほど、材料は強くなり、この場合、薄い材料も、やはり、フロースルーハイブリダイゼーションおよび/または反応成分のフロースルーを支えることができる。特に、適切なマトリックスは、細孔マトリックスである。前記の特に適切なマトリックスの特別な長所は、ゲノムDNA材料の必要量に制限がある点である。特に、適切なマトリックスの厚さは、外側限界を含めて0.1 mm〜1 mmの範囲内である。さらに特に、適切なマトリックスの厚さは、外側限界を含めて0.3 mm〜0.5 mmの範囲内である。
【0038】
所望の孔サイズと強度を特徴とする所望のマトリックスフォーマットを得る上でマトリックス材料の組み合わせが想定できるのは、十分に評価される。
【0039】
従って、本発明のある実施態様では、前記変性無傷ゲノムDNAを前記マトリックスに透過させるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0040】
マトリックスは、シート状、フィルム状または膜状であることができ、透過性がある。例えば、マトリックスは、ガラスウールまたは他のガラスなどの繊維、あるいは、プラスチック繊維やポリアミド繊維(例、ナイロン)などの合成繊維から成ることができる。マトリックスは、同様に、絹やウールなどの動物繊維、あるいは、木綿などの植物繊維、セルロース繊維およびニトロセルロース繊維または例えばアセテートおよびトリアセテートを含むセルロース系繊維から成ることができる。
【0041】
マトリックスは、平面であることも、単純な、もしくは、複雑な形をしていることもできる。特に、有用なマトリックスは3D網目構造を含む膜であり、ゲノム核酸が接着するその面はマトリックスの外面、並びに、内面である。しかし、本技術分野で認識されるように、ゲノムDNAを接着させるのは、主に内面になる。
【0042】
従って、本発明のある実施態様では、マトリックスが膜であるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0043】
本発明のさらなる実施態様では、前記膜が3D網目構造を含むハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0044】
本発明のなおもさらなる実施態様では、前記網目構造が繊維網目構造であるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0045】
本発明のなおもさらなる実施態様では、前記繊維が植物由来であるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0046】
本発明のなおもさらなる実施態様では、前記繊維がセルロースであるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0047】
本発明の原理は、プローブが膜構造を通過し、これらのプローブを固定化ゲノム核酸内の対応する相補配列に密着させ、その結果、高感度、高特異性を持って標的配列を効率的に検出できるフロースルーメカニズムの利用である。
【0048】
従って、本発明のある実施態様では、前記網目構造がフロースルー構造であるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0049】
基体またはマトリックス材料が何であれ、核酸を接着または固定できる方法が多数存在する。最も一般的なのは、紫外線(UV)法または共有結合法を含めた物理的吸着法または化学結合法である。
【0050】
活性化膜、即ち、その表面上で直接反応化学を実施可能にする膜の生産に、多大な関心が示されている。該膜への水性サンプルの直接適用および結合保持能は、試薬の必要がなく、自然に生じ、大きな長所となるが、これらは、特にマイクロアレイの生産で知られている。数種の異なる活性化化学が技術上周知である。
【0051】
従って、本発明のある実施態様では、マトリックスをアフィニティー共役体で活性化するハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0052】
本発明のさらなる実施態様では、前記アフィニティー共役体をポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、ポリ-アルギニン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびヘキサメチレンジアミンを含む群から選択する。
【0053】
本発明のなおもさらなる実施態様では、前記アフィニティー共役体がポリ-L-リジンであるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0054】
マトリックスの取り扱いは、PCT/EP02/02446に記載されるものなどの前記マトリックス保持装置によって著しく改良され、それを参照することによって本明細書に組み込む。
【0055】
多数のサンプルの同時高処理分析は、欧州特許出願No.02076728. 1.に記載されているものなどのシステムで調節してもよく、参照により本明細書に組み入れる。これは、多数のウェルを備えた基体プレートと、該プレート保持用インキュベーション装置を含むバイオアッセイ実施システムについて開示している。この既知の分析試験器は、プラスチック支持具から成り、該プラスチック支持具の開口部によって、ウェルは一定の直径に規定され、前記ウェルの上部はサンプルまたはプローブを適用するために開口しており、各ウェルの底部を規定する基体を有する。前記基体は、本明細書に記載のマトリックスであることができる。
【0056】
上述のシステムは、多数のゲノム核酸サンプルの並行処理が可能で、自動ロボットプラットフォームに適用できる。前記システムは、通常、横の列と縦の列に配したウェルの配列を備えたマイクロプレートを含み、各ウェルの底部は、フロースルー繊維網を有するマトリックスになっている。例えば、96個のウェルを持つマイクロプレートを使用すると、多数のハイブリダイゼーションの並行処理が可能で、その結果非常に効率的な高処理分析となる。
【0057】
従って、ウェルホルダーを含む、固定化無傷ゲノムDNAへのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション装置を提供するのが本発明の目的であり、このウェルホルダーには、一定の直径の円形ウェルが1個以上含まれ、このウェルは繊維網目マトリックスを露出し、このマトリックスには、外側限界を含む0.6μm〜2μmの範囲内の孔サイズが含まれ;この場合、このマトリックスは、無傷ゲノムDNAを固定し、フロースルーハイブリダイゼーションによって前記の固定化無傷ゲノム材料のプローブとのハイブリダイゼーションを可能にする。
【0058】
本発明のある実施態様では、前記マトリックスが無傷ゲノムDNAの透過を可能にする固定化ゲノムDNAへのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用装置が提供される。
【0059】
マトリックスにかかる圧力差を利用して、強制的にプローブにマトリックス3D網目構造を通過させ、それによって、ウェル内に低圧を作り出す。前記低圧を排除することによって、プローブは、自動的に該マトリックス網から強制的に戻される。圧力が高いほど、マトリックス構造を通過するプローブの流れが速まる。マトリックスの低圧化とその低圧の排除を交互に行うことによって、プローブは、何回もマトリックス網を強制的に通過させられる。
【0060】
従って、以下の(a)から(c)を含む、固定化無傷ゲノムDNAにプローブをフロースルーハイブリダイゼーションさせる機器を提供するのが本発明の別の目的である:
即ち、
(a) 固定化無傷ゲノムDNAへのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用装置であって、ウェルホルダーを含み、このウェルホルダーには一定の直径を有する円形ウェルが1個以上含まれ、このウェルが繊維網目マトリックスを露出している装置;
(b) (a)で述べた装置のウェルの少なくとも1個に、制御した量の液体を添加する手段;
(c) 各ウェルのマトリックスに制御した圧力差をかけおよび/または維持するための手段。
【0061】
至適流速は、固定化標的配列付近でのプローブ分子の滞留時間が、できるだけ短い時間でハイブリダイゼーション事象が起こるのに十分な時間となる流速である。
【0062】
ハイブリダイゼーションは、通常、外側限界を含めて50 mm/30分〜250 mm/30分から成る流速で実施する。特に適切な流速は、外側限界を含めて75 mm/30分〜200 mm/30分である。さらに特定した適切な流速は、外側限界を含めて100 mm/30分〜150 mm/30分である。通常、特に適切な流速は、外側限界を含めて130 mm/30分である。
【0063】
従って、本発明のある実施態様では、マトリックスが外側限界を含めて50 mm/30分〜250 mm/30分の流速を可能にするハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0064】
フロースルーインキュベーションは、本明細書で述べる方法で使用する場合、ハイブリダイゼーション時間を大幅に削減する。プローブ溶液をマトリックス孔またはマトリックス網から勢いよくくみ上げ、または、くみ出すために、マトリックスに陽圧または陰圧をかけることができ、これが、固定化ゲノム材料内の標的配列への該プローブの拡散を増強できる。
【0065】
マトリックス膜を通過するプローブ溶液の流れの前進、後退の1サイクル時間は、10分〜1秒の間に含まれることができる。通常、1回のサイクル時間は、5分〜10秒である。さらに通常では、1回のサイクル時間は、5分〜10秒である。なおもさらに通常では、1回のサイクルの時間は、1分〜45秒である。特に適切な液流の前進後退の1回サイクルの時間の例は30秒である。
【0066】
本発明の別の実施態様では、流れを交互に上下させる少なくとも1回のサイクルで、前記プローブを前記マトリックスに通すハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0067】
一定温度で分析を実施するのが一般的である;好ましい温度は、想定するハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによって異なってくる。ハイブリダイゼーション温度の調整は、マトリックスを保持装置を経て水浴や伝導熱プレートなどの加熱器に連結することによって達成できる。別法として、1個以上のマトリックスを含む前記保持装置を収納できる温度制御システム付きインキュベーターシステムを提供できる。前記インキュベーターシステムは、例えばPCT/EP02/02448に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れる。
【0068】
いったん、十分な時間が経過し、あるいは十分な液流サイクルが経過し、ハイブリダイゼーションを行うと、ハイブリダイゼーション後のフロースルー洗浄工程によって、非結合プローブを完全に流し出す。動力ポンピングにより、わずか1回の下方への流れによって非結合プローブを直ちに、非常に効率よく除去することができる。一般に、サイクル回数および流速に関する流れの条件は、想定するストリンジェンシーに応じて変えることができる。
【0069】
本発明のある実施態様では、少なくとも1回の下向きの流れのサイクルで、洗浄液をマトリックスに通すことによって、洗浄工程を実施するハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0070】
結合プローブは、後で、回収され、増幅される。この回収および増幅は、基本的に同時に行えばよい。即ち、プローブ回収工程は、核酸の増幅環境で実施できる。例えば、膜に固定され、かつ識別子プローブに結合した核酸を、増幅成分を含む核酸増幅緩衝液に浸漬してもよい。変性条件を設定することにより、結合した識別子プローブを遊離させて、これを基本的に同時に増幅させることができる。
【0071】
プローブ増幅には、固定されたサンプルゲノム核酸に結合した識別子プローブ配列の増幅(即ち、複製)が含まれ、その結果識別子プローブ分子の数が著しく増加する。
【0072】
多数の増幅技術が技術上既知であるが、特に適した増幅技術は、単一のプライマーペアを使用する。その場合、このプライマーペアのそれぞれはプライマー結合配列に相補的で、それは各識別子プローブに5'または3'で隣接して(flank)配置され;この5'および3'で隣接するプライマー結合配列は、各プローブに対して同一または実質的に同一である。
【0073】
従って、本発明のある実施態様では、プローブがプライマー結合配列によって隣接された固定化無傷ゲノムDNAへのプローブのハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0074】
「増幅」は、本明細書で使用する場合、対象となる特定の核酸のコピー数の増加を指し、前記コピーを、「アンプリコン」または「増幅産物」とも呼ぶ。特に、増幅は、核酸分子のコピー数を直線的または指数的に増加させる技術を意味する。
【0075】
本発明のある実施態様では、回収したハイブリダイゼーション済みプローブの増幅が定量的増幅であるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0076】
高感度(即ち、低検出限界)の必要性は、研究者らが特定の核酸配列を指数的に増幅させることが可能な分析前のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および他の増幅技術の開発で著しく軽減された。適切な増幅法には、例えばPCR、定量PCR(Q-PCR)、ビオチン捕捉PCRなどの指数的増幅法、並びに、例えばin vitro転写TYRASおよびNASBAによる直線的増幅などの直線的増幅法がある。
【0077】
本発明のさらなる実施態様では、前記増幅がポリメラーゼ連鎖反応によるハイブリダイゼーション方法が提供される。
【0078】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、広く、利用および記載されており、標的配列の増幅に、熱サイクルを併用したプライマー伸長法の使用が関与する;US 4,683,195およびUS 4,683,202およびPCR Essential Data, J. W.Wiley & sons, Ed. C. R. Newton, 1995参照。これらをすべては引用により本明細書に組み入れられる。
【0079】
適切なPCRによる増幅戦略は、技術上周知であり、一例を挙げると、常用定量PCR(QC-PCR)、逆転写酵素PCR即ちRT-PCR、ビオチン捕捉PCR、核酸配列ベースの増幅法(NASBA)およびTYRASであることができるが、それらに限定されない。
【0080】
引用により本明細書に組み入れるWO 99/43850に記載されているTYRAS増幅法は、非選択的ポリ-A mRNA増幅法であって、これはcDNA合成を包含しない。本方法は、オリゴ-Tストレッチを含むオリゴヌクレオチドのmRNAポリ-A尾部へのハイブリダイゼーションとそれに続くオリゴヌクレオチドとは反対側のRNase H消化と、新たに形成されたmRNAの3'末端の逆転写酵素による伸長である。このように、オリゴ-Tストレッチを含むオリゴヌクレオチドの一部であるT7 RNAポリメラーゼ認識配列(即ち、T7プロモーター)は、二本鎖になる。該プロモーターへのT7 RNAポリメラーゼの結合時、元のmRNA分子は、反対の極性の多重RNAコピーに転写される。
【0081】
RNAは、US特許No. 5,545,522(Van Gelder)に記載されている方法に従っても増幅できる。前記特許を引用することにより本明細書に組み入れる。この場合、RNAポリメラーゼプロモーター領域相補体に結合した相補的プライマーを使って、cDNAをRNA配列から合成し、その後、プロモーター領域に結合できるRNAポリメラーゼを導入することによってcDNAからアンチセンスRNA(aRNA)を転写する。
【0082】
核酸配列による増幅(NASBA)は、全体が、US 5,409,818および「Profiting from Gene-based Diagnostics」、CTB International Publishing Inc., N.J., 1996に記載されており、両者は引用により、本明細書に組み入れる。NASBAは、3種類の酵素の同時活性に依存する;AMV-RT(トリ筋芽細胞症ウイルス-逆転写酵素)、RNase HおよびT7 RNAポリメラーゼである。NASBAは、3SR増幅反応または自立配列複製反応(self-sustained sequence replication-reaction)の特殊例である。
【0083】
3SR反応は、in vitroにおいて、非常に効率的な、標的DNAまたはRNA配列の等温増幅法である。この方法は、3種類の酵素活性を必要とする:逆転写酵素、DNA-依存性RNAポリメラーゼおよび大腸菌リボヌクレアーゼHである。
【0084】
プライマーは、多重PCRで使用するには、予測するハイブリダイゼーションの反応速度が同じ多重反応で使用する他のプライマーの場合と同様となるようにデザインするのが望ましい。アニーリング温度とプライマー濃度は、ある程度計算できるが、条件は、一般に、多重反応毎に経験的に決定しなければならない。非特異的プライミングの可能性は、プライマーペアが追加されるごとに増加するので、個々のプライマーセットを添加する必要に応じて、条件を変更しなければならない。さらに、資材の奪い合いから起こる人為的結果(例、プライマーの枯渇)が多重PCRでは増強される。その理由は、不均等に増幅された断片の収量差が、サイクルが進むごとに増強されるからである。
【0085】
当業者に周知のように、多重PCR用にデザインしたプローブは、上述の欠点を克服するために、標的配列にハイブリダイズしない隣接するプライマー結合配列を含んでもよい。
【0086】
従って、本発明のある実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、各プローブがプライマー結合領域によって5'および3'で隣接され、この5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブに対し同一または実質的に同一である方法が提供される。
【0087】
標的配列または標的核酸とは、それを検出するようにプローブをデザインした核酸配列を意味する;例えば、「識別」-プローブの場合、標的配列が識別配列であることもある。識別配列とは、その配列がゲノムまたは適当な融点基準を使ったハイブリダイゼーションによって濃縮されたゲノム中に存在することが測定された場合には、特定の生物または生物群の診断となり、あるいは、特定の遺伝病の状態の診断となる核酸配列を意味する。濃縮ゲノムまたは濃縮ゲノム画分とは、濃縮操作を受けて元のゲノムのある選択された画分が生成されたゲノムまたはゲノム画分を意味する。例えば、ゲノムプロファイリングの目的で、ゲノムを濃縮することにより、ハイブリダイゼーション系の頑丈な診断剤が得られる。
【0088】
一連の識別子または識別プローブまたはポリヌクレオチドのセットは、既知配列中で識別すべき特定の突然変異に対応させることができる。そのように、数種の識別可能な突然変異体のいずれかを含有できる既知遺伝子の場合、前記の一セットのものは、ありうる各種突然変異に対応するポリヌクレオチドを含むことができる。これは、例えば、様々な位置での既知突然変異を多様に有することの多いオンコジーン(癌遺伝子)や腫瘍サプレッサーのような遺伝子にとって有用である。
【0089】
本発明のある実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、増幅されたプローブにラベルが付いている方法が提供される。
【0090】
ラベルという用語は、本明細書で使用する場合、検出および定量に役立つシグナルを伝える分子を指す。前記シグナルは、可視的に(例えば、シグナルが着色産物を有する、もしくは、蛍光を発するため)、または、レポーター分子の性質(例、放射能、磁場など)を検出する検出器を使って検出することができる。本明細書では、ラベルによって、無傷ゲノムサンプル内の標的配列の検出、識別および定量が可能である。本発明での使用に適した検出可能ラベルは、分光測光、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な組成物であるが、それに限定されない。
【0091】
従って、事実上、検出可能、定量可能なシグナルを生じ、ヌクレオチドに接着可能、生成アプリコンに取り込み可能などんなラベルでも、本発明の方法と合わせて使用できる。適切なラベルは、放射性同位体、発蛍光団、発色団、化学発光成分、ULS標識(Universal Linkage sysytem; Kreatech)およびASAP(Accurate, Sensitive and Precise; Perkin Elmer)などの化学標識があるが、これらは、一例であって、これに限定されない。適切なラベルは、呈色反応を誘発でき、および/または、生物発光、化学発光または光発光できるのがよい。
【0092】
上記のラベルの検出手段は当業者に周知である。そのため、例えば、放射性ラベルは、写真フィルムやシンチレーションカウンターを使って検出でき、蛍光マーカーは、放射照度を検出する光検出器を使って検出できる。酵素ラベルは、酵素に酵素基質を与え、基質への酵素作用で生じる反応産物を検出することによって検出するのが典型的である;比色ラベルは、単純に呈色ラベルを可視化して検出し、化学ラベル、例えばプラチナ基は、標識標的と配位結合し、標的にラベルを強固にカップリングさせる。
【0093】
ラベルの位置は、標識ポリヌクレオチドの生成、ハイブリダイゼーション、検出または他のハイブリダイゼーション後の修飾を妨害しないのが好ましい。当分野で既知のとおり、多様な各種プロトコルを使用して、標識核酸を生成でき、その場合、前記方法は、標識プライマー、即ち、標識ヌクレオチドを使った標識核酸の酵素的生成に依存するのが一般的である。例えば、標識アンプリコンを生じるために、増幅工程中にラベルを核酸に取り込むことができる。別法として、生成したアンプリコンを増幅後に標識できる。
【0094】
多様なラベルを利用でき、前記ラベルには蛍光ラベル、同位体ラベル、酵素ラベル、化学ラベル、電子密度試薬、微粒子ラベルなどがある。例えば、適切な同位体ラベルには、放射能ラベル、例えば32P、33P、35S、3H、125I、14Cがある。例えば、適切な酵素ラベルには、グルコースオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、ウリカーゼ、アルカリフォスファターゼなどがある。他の適切なラベルには、光散乱を起こすサイズの粒子がある。
【0095】
蛍光ラベルは、非常に強いシグナルを発し、背景のノイズが少ないので、特に適している。蛍光ラベルも、高分解能および高速スキャニング操作で光学的に検出可能である。蛍光ラベルは、蛍光ラベルの光照射で大量に発光するという別の長所を示す。そのため、ただ1つのラベルで、多数の測定可能な事象を提供できる。
【0096】
従って、本発明のさらなる実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、増幅プローブに蛍光ラベルが付いている方法が提供される。
【0097】
望ましくは、蛍光ラベルは、約300 nm以上、通常では約350 nm以上、さらに通常では約400 nm以上の光を吸収し、通常、吸収する光の波長よりも約10 nm以上の波長で発光することが必要である。
【0098】
特定の有用な蛍光ラベルには、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、マラカイトグリーン、オレゴングリーン、テキサスレッド、コンゴレッド、サイバーグリーン、フィコエリスリン、アロフィコシアニン、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2',7'-ジメトキシ-4',5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、シアニン染料(例、Cy5、Cy3)、BODIPY染料(例、BODIPY 630/650、Alexa 542など)、緑色蛍光タンパク(GFP)、青色蛍光タンパク(BFP)、黄色蛍光タンパク(YFP)、赤色蛍光タンパク(RFP)などがあるが、これらは一例であり、これらに限定されない(例えば、Molecular Probes, Eugene,Oregon, USA参照)。
【0099】
ある実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量するために本発明による本明細書に記載の方法の使用が提供される。
【0100】
本発明のなおも別の目的は、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって:(a) 無傷ゲノムDNAを用意し、前記無傷ゲノムDNAを変性させる;
(b) 本明細書内に記載の方法に従ってハイブリダイゼーションを実施する;
(c) ハイブリダイズしたプローブを回収し;単一プライマーペアを使って回収したプローブを基本的に同時に増幅させ、前記プライマーペアのそれぞれのプライマーは前記プローブのそれぞれの隣接プライマー結合配列上で、回収プローブに結合する;および
(d) 工程(c)の回収した増幅プローブを定性的、定量的に分析する;
という諸工程を含む方法の提供である。
【0101】
回収した増幅プローブは、ゲル電気泳動で分析できる。しかし、手法の再現性および精度を向上させるために、ゲノムプロファイルを決定する自動システムを企画する。特に、本発明は、本発明方法によって提供されたハイブリダイズし増幅した識別子プローブに対応するプローブアレイまたはマイクロアレイの使用を別途想定している。用語「プローブアレイ」は、特異的認識試薬が高密度マトリックスパターンの規定位置に配置されている基体に関する。本発明方法によって提供された多重プローブコピーは、特定の相手、即ち、特異的認識試薬とアレイ上で相互作用、例えばハイブリダイズすることができる。特異的認識試薬は、位置が確定しているので、相互作用部位は、各相互作用の特異性を規定することになる。特異的認識試薬は、典型的には、デオキシリボヌクレオチド(DNA)プローブとし、この場合、前記プローブアレイは、オリゴヌクレオチドまたはcDNAアレイとして既知である。様々なアレイ製造法が技術上既知である。
【0102】
従って、本発明のさらなる実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、回収した増幅プローブの分析がマイクロアレイ分析による方法が提供される。
【0103】
用語「核酸」は、本明細書で使用する場合、ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから成るポリマーを意味する。用語「デオキシリボ核酸」および「DNA」は、本明細書で使用する場合、デオキシリボヌクレオチドから成るポリマーを意味する。用語「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、長さが約10〜約100個のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチド多量体を示す。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、長さが約10〜約5000個のヌクレオチド、通常、長さが約100ヌクレオチド以上約1000以下のヌクレオチドのヌクレオチドモノマーから成る一本鎖または二本鎖ヌクレオチドポリマーを指す。
【0104】
一定の基体サイズに対する上限は、アレイ中のスポットを生成および検出することが可能かによってのみ、決定される。アレイ上の好ましいスポット数は、アレイを供する特定の用途によって一般的に異なる。例えば、突然変異の検出は、小型アレイのみを必要とすることができる。一般に、アレイは、2〜約106個のスポット、または、約4〜約105個のスポット、または、約8〜約104個のスポット、または、約10〜約2000個のスポット、または、約20〜約200個のスポットを含有する。
【0105】
適切なアレイは、スポット2〜106個またはそれ以上の所望のどんなサイズであることもできる。基体サイズの上下限は、極端に小さなまたは大きな基体を使った作業を実際に考慮することによってのみ決定される。
【0106】
固定化ポリヌクレオチドは、長さがヌクレオチド4個程度、または、100個程度、またはそれ以上であることができる。本発明に記載のポリヌクレオチドとして意図するのは、当該技術分野で典型的にオリゴヌクレオチドとして言及される核酸であり、核酸として言及されるものでもある。従って、本発明のアレイは、生成された識別子プローブコピーを、比較的短い(例えば、ヌクレオチド約6、8、10、20、40、60、80または100個の長さを持つものなど)検出プローブの固定化アレイにハイブリダイズする用途に有用である。
【0107】
ディテクターポリヌクレオチドは多様な技術を使って基体に固定できる。例えば、ポリヌクレオチドを、基体に吸着、あるいは、その他、非共有的に基体に結合できる(例、標準技術を使ってナイロンまたはニトロセルロースフィルターに固定);それらは、基体に共有結合で付着できる;あるいは、それらの結合にビオチンおよびストレプトアビジンなどの特異的結合ペアを介在させることができる。
【0108】
本発明におけるマイクロアレイ分析を目的として、基体としての使用に適した多数の材料が当該技術分野で記載されている。適切な典型的材料には、例えば、アクリル、スチレン-メチルメタクリレートコポリマー、エチレン/アクリル酸、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、ABS/ポリカーボネート、ABS/ポリスルフォン、ABS/ポリビニルクロライド、エチレンプロピレン、エチレンビニルアセテート(EVA)、ニトロセルロース、ナイロン(ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/6-6、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン11およびナイロン12を含む)、ポリカリロニトリル(PAN)、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(低密度、線状低密度、高密度、架橋および超高分子量級を含む)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリスチレン(汎用品および耐衝撃性品を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレン-クロロトリフルオロ-エチレン(ECTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、シリコンスチレンアクリロニトリル(SAN)、スチレン無水マレイン酸(SMA)およびガラスがある。
【0109】
本発明のアレイ中の基体として使用する他の典型的な、適切な材料は、金属酸化物である。金属酸化物は、高チャンネル密度および高多孔度を有する基体を提供するので、サンプル投入用単位表面積当たりに各種特異的試薬を高密度に含むアレイが可能である。さらに、金属酸化物は、可視光に対する高い透明性がある。金属酸化物は、比較的安価で、通例の微細加工技術を使用する必要がなく、電気化学的に製造された金属酸化物膜など、基体表面全体への液体分布の調節が改良されている。貫通する配向チャンネルを備えた金属酸化物膜は、金属シートの電気化学エッチングによって製造できる。考慮される金属酸化物は、とりわけ、タンタル、チタニウムおよびアルミニウムの酸化物、並びに、2種類以上の金属酸化物とドープ金属酸化物の合金および金属酸化物を含有する合金である。金属酸化物膜は、特に吸湿している場合、透明であり、様々な光学技術を使ったアッセイが可能である。前記膜は、適切に調節された直径の配向貫通チャンネルと、有用な化学的表面特性を有する。特許出願EP-A-O 975 427は、この点の典型であり、これを、特に本発明に取り入れる。
【0110】
本発明に記載の方法は、ゲノムスクリーニング法および遺伝子発現の研究で特定使用できる。例えば、無傷ゲノムDNAまたはRNAを本明細書の記載どおりのマトリックスに固定し、例えば2種類のアンチセンスオリゴヌクレオチドでフロースルーハイブリダイズできる。該オリゴヌクレオチドは標的配列へのハイブリダイゼーションに際して、それらの間に塩基10個分の間隙を残す。必要なdNTPの存在下、DNAポリメラーゼを使用して前記間隙を充填し、その後、それを連結できる。次に、非ハイブリダイズプローブをフロースルー洗浄、マトリックスから除去し、その後、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを溶出し、定量的に増幅させ、マイクロアレイで分析する。別の例として、無傷ゲノムDNAまたはRNAを本明細書に記載のマトリックスに固定し、例えば短いPCR-増幅プローブでフロースルーハイブリダイズできる。
【0111】
ゲノムスクリーニング用として、本明細書に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供することが、本発明の別の目的である。
【0112】
用語「ゲノムスクリーニング」は、例えば遺伝子座内の遺伝的変異性のスクリーニングを意味する。突然変異は、多様なシナリオに基づいて、遺伝子内に発見することができる:そのシナリオとは、例えば、耐薬性を生じるHIV突然変異体の配列変化の検出、並びに、発癌に関連する遺伝子の配列変化の検出である。前記の配列変化は、例えば、配列欠失および配列重複を含むことができる。
【0113】
従って、さらなる実施態様では、ゲノムDNA中の欠失または重複の検出を目的に、本発明に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供する。
【0114】
さらなる実施態様では、ゲノムプロファイリングを目的に、本発明に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供する。
【0115】
用語「ゲノムプロファイリング」は、例えばヒトと霊長類の間など、非常に近い種のゲノム間のゲノムの相違または変異の有り/無しの識別を意味する。ゲノムプロファイリングは、遺伝子型を使った種の識別を包含する(ジェノタイピング)。
【0116】
さらなる実施態様では、サンプル中の病原性、疾患または汚染の程度の識別および定量的検出を目的に、本発明に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供する。
【0117】
さらなる実施態様では、サンプル中の感染因子の存在の識別および検出を目的に、本発明に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供する。
【0118】
さらなる実施態様では、サンプル中に存在する病原体のジェノタイピングを目的に、本発明に従った、また、本明細書に記載の方法の使用を提供する。
【0119】
本発明は、また、対象フロースルーハイブリダイゼーション法を実施するためのキットも提供する。対象キットは、少なくとも、固定化無傷ゲノムDNAへのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用装置で、ウェルホルダーを含み、前記ウェルホルダーが一定の直径の円形ウェルを1個以上含み、前記ウェルが繊維網目マトリックスを露出している装置を含む。
【0120】
従って、固定化無傷ゲノムDNAへのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用キットで、本明細書に従った、また、本明細書に記載のフロースルーハイブリダイゼーション用装置、および、本明細書の記載どおりに、本明細書に記載の方法を実施するための説明書を含むキットを提供するのが、本発明のさらなる目的である。
【0121】
キットは、さらに、ハイブリダイズ済み識別子プローブのアンプリコン生成用増幅プライマーなど、各種方法で採用される1種類以上の試薬、並びに、増幅成分を含む。本明細書で使用する場合、用語「増幅成分」は、ハイブリダイズ済み識別子プローブのアンプリコンまたは増幅産物の形成用の増幅反応を実施するのに必要な酵素、緩衝液、およびヌクレオチドを含めた核酸などの反応試薬を指す。プライマーは3'末端を有する核酸分子であり、その3'末端は「ブロックされて」別の核酸と共有結合できないか、あるいは、ブロックされておらず、その3'末端に化学基が保有され、その化学基により核酸鎖の伸長、例えばDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素によって触媒された伸長が可能になる。
【0122】
従って、本発明のある実施態様では、無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出するキットであって、 (a) プローブセットであって、その各プローブはプライマー結合領域によって5'および3'で隣接し、前記5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブに対し同一または実質的に同一であるプローブセット;(b) 単一プライマーペアであって、これの個々のプライマーはプライマー結合領域に相補的である単一プライマーペア;(c) 任意ではあるが、ハイブリダイズし回収された任意のプローブの増幅を可能にする増幅成分;(d) 任意ではあるが、マイクロアレイであって、このマイクロアレイにより本明細書に記載の方法によって得られるハイブリダイゼーション結果が分析可能となるマイクロアレイを追加として含むキットが提供される。
【0123】
(図面の簡単な説明)
図1は、本発明のハイブリダイゼーション方法の工程経路を示す。無傷ゲノム材料を、初めに、適切なマトリックスに固定し、それによって、このゲノム材料を前記マトリックス材料内に透過させる(工程1)。その後、識別子プローブセットをフロースルーによって固定化無傷ゲノム材料にハイブリダイズし(工程2)、ハイブリダイズ済み無傷ゲノムDNA/プローブ複合体を形成させる(工程3)。非結合プローブをフロースルー洗浄によって洗い流し(工程4)、前記の形成されたハイブリダイズ済み無傷ゲノムDNA/プローブ複合体を残し(工程5)、以後の分析に供する(工程6)。
図2は、実施例1、段落1.1.1の記載に従って調製した対照プローブ12に相当するPCR生成物の電気泳動結果を示す。プローブ番号、プローブの名称、プローブのサイズおよびゲノムの位置は、表1に挙げたとおりである。
M,100bp DNAラダー(Cat(カタログ)No. 15628-050;Invitrogen)
図3は、実施例1、段落1.1.2の記載どおりにPZAおよびPZBと同一の配列を隣接させた特異的プライマーペアー18種類を使ってヒトゲノムDNAの直接増幅から調製したMSH2プローブに相当するPCR生成物の電気泳動結果を示す。PCR増幅に特異的なMSH2プライマーペアー18種類の配列は、表2に挙げたとおりである。
M,100bp DNAラダー;Q、陰性対照
図3Aは、DMSO不在下でのPCR混合物中のPCR後の前記結果を示す。
図3Bは、DMSO存在下でのPCR混合物中のPCR後の前記結果を示す。
図4は、実施例1、段落1.3の記載どおりにホルムアミドハイブリダイゼーション溶液中、対照プローブ混合物での健康対照者1からの固定化無傷ゲノムDNA 1μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の電気泳動結果を示す。
a. 初回PCR;b. 同一多重増幅プローブハイブリダイゼーション溶液からの反復PCR反応;M, 100bp DNAラダー;P, 対照プローブ混合物からのPCR;Q, PCR用陰性対照;W, ハイブリダイゼーション用水対照;1, 健康な対照者1からの無傷ゲノムDNA。陰性対照からPCRおよびハイブリダイゼーションによるPCR生成物は得られなかった。
図5は、健康な対照者3名(対照者1、4および5)からの固定化無傷ゲノムDNA 250ngのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の電気泳動結果を示す。
M,100bp DNAラダー;P, 対照プローブ混合物からのPCR;Q, PCR用陰性対照;W, ハイブリダイゼーション用水対照。陰性対照からPCRおよびハイブリダイゼーションによるPCR生成物は得られなかった。
図6は、実施例1および2で述べたとおりの増幅プローブの品質管理を示す。
図6A〜Cは、対照プローブ12種類、MSH2プローブ18種類およびMLH1プローブ19種類の品質管理のゲル電気泳動結果を示す。
図7は、実施例2で述べたように、健康な対照者5からの固定化無傷ゲノムDNA 1μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の品質を示す。
M、100bp DNAラダー;Q、ハイブリダイゼーション非適用のPCR用陰性対照;W、ナイロン膜上フロースルーハイブリダイゼーション後および後洗浄後の水対照物から得たPCR生成物;5、ナイロン膜上フロースルーハイブリダイゼーション後および後洗浄後の対照者5の無傷ゲノムDNAから得たPCR生成物。
図8は、実施例3で述べたように、健康な対照者5からの固定化無傷ゲノムDNA 1μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の品質を示す。
M、100bp DNAラダー;Q、ハイブリダイゼーション非適用のPCR用陰性対照;5a、ハイブリダイゼーション非適用の対照者5の無傷ゲノムDNAから直接得たPCR生成物;W、Anodisc25膜上フロースルーハイブリダイゼーションおよび後洗浄後、水対照物から得たPCR生成物;5b、Anodisc25膜上フロースルーハイブリダイゼーションおよび後洗浄後、対照者5の無傷ゲノムDNAから得たPCR生成物;P、ハイブリダイゼーション非適用のPMPPプローブ混合物から得たPCR生成物。
【実施例】
【0124】
以下の本発明の実施例は、例示であって、いずれにおいても、限定するものであると解釈してはならない。
実施例1:Whatman 3MM濾紙上の無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション
1.1 プローブの調製
1.1.1 プローブの調製−対照プローブ
プラスミド(100ng/μl)をInstitute of Genetics,University of Nottingham, Queen's Medical Centre, Nottingham NG7 2UH, UK (Dr.John Armour)から入手した。プローブDNAをフランキングベクタープライマーPZA (AGTAACGGCCGCCAGTGTGCTG;配列番号1)およびPZB (CGAGCGGCCGCCAGTGTGATG;配列番号2)(イソ遺伝子)を使ってこれらのプラスミドから増幅した。
【0125】
10×PCR金緩衝液5μl(PE)(Cat(カタログ) No.4311816;Applied Biosystem)、MgCl2 2.5μl (25mM)、dNTP 1.25μl (10mM;Amersham Pharmacia Biotech)、AmpliTaq Gold(登録商標)(5 U/μl) 0.125μl(Cat. No.4311816;Applied Biosystem)、PZAフォワードプライマー1μl(10pM)、PZBリバースプライマー1μl(10pM)、プラスミドDNA 1μlおよびHLPC-水38.125μlを含む反応混合液中でPCR反応を実施した(PTC-200 Peltier Thermal Cycler;MJ Research INC;Massachusetts, USA)。以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で3分;サイクル2〜35、94℃で1分、60℃で1分、72℃で1分;最後に、72℃で10分。
得られたPCR生成物をQiaquick PCR精製キット(Cat. No.28106、QIAGEN、Germany)を使って精製し、EB緩衝液300μl(10mM Tris-Cl、pH 8.5)に溶解した。
【0126】
SpectramaxPlus 384リーダー(Molecular Device;Sunyvale, CA, USA)を使ったDNA濃度測定用として、精製PCR生成物を40倍希釈した(PCR生成物5μl+水195μl)。以下の濃度が得られた:プローブ1、27ng/μl;プローブ2、26 ng/μl;プローブ3、23 ng/μl;プローブ4、11 ng/μl;プローブ5、5 ng/μl;プローブ6、12 ng/μl;プローブ7、13 ng/μl;プローブ8、13 ng/μl;プローブ9、19 ng/μl;プローブ10、6 ng/μl;プローブ11、22 ng/μl;プローブ12、12.5 ng/μl。
【0127】
その後、PCR生成物10μlを400mM Tris-アセテート/10mM EDTA(TAE) (0.5 ×;Cat. No.15558-042;GIBCOBRL)中2%アガロースゲルにかけた。電気泳動を100Vで40分間実施した(図2)。
プローブの名称、サイズおよび配列を表1に示す。
【0128】
1.1.2 プローブの調製−MSH2プローブ
オランダ、ライデン大学病院の血液バンクを介して健康な対照者からゲノムDNA 1を得た。MSH2プローブは、ゲノムDNA 1に対するPCRによって調製した。使用したMSH2プライマーを表2に示す。
PCRは、PCR金緩衝液5μl(10 ×)、MgCl2 2.5μl(25mM)、dNTP 1.25μl(10mM)、AmpliTaq Gold 0.125μl(5U/μl)、MSH2フォワードプライマー1μl(10pM)、MSH2リバースプライマー1μl(10pM)、ゲノムDNA 1μl(100ng/μl)およびHLPC-水38.125μlを含む反応混合液中で実施した。
さらに、DMSO 5μlを含む第2PCR混合液を調製した。
【0129】
以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で3分;サイクル2〜5、94℃で1分、56℃で1分、72℃で1分;サイクル6〜10、94℃で1分、53℃で1分、72℃で1分;サイクル11〜35、94℃で1分、50℃で1分、72℃で1分;最後に、72℃で10分。
【0130】
得られたPCR生成物をQiaquick PCR精製キットを使って精製し、EB緩衝液300μl(10mM Tris-Cl、pH 8.5)に溶解した。SpectramaxPlusリーダーを使ったDNA濃度測定用として、精製PCR生成物を40倍希釈した(PCR生成物5μl+水195μl)。その後、PCR生成物10μlをTAE中2%アガロースゲル(0.5 ×)にかけた。電気泳動を100Vで40分間実施した(図3)。
【0131】
1.2 Whatman 3MM Chr濾紙のポリ-L-リジン(PLL)コーティング
Whatman 3MM Chr濾紙(cat. No.3030 917)を切断し、小片とし、その50枚をテフロンホルダーに置いた(前記ホルダーの詳細については、WO 02/072268参照)。0.01% ポリ-L-リジン溶液を、ポリ-L-リジン35ml(0.1%、Sigma;Cat.No. P 8920)、PBS 35ml(1 ×)および濾過済みHLPC水280mlで調製した。その後、このPLL溶液350mlを600mlのビーカーに注ぎ、これをプレートシェーカーに置いた。ホルダーとWhatman濾紙の間に気泡が入りこまないように、ホルダーを穏やかに上下に動かした。ビーカーをパラフィルムで密閉し、プレートシェーカー上、室温で、100rpmで震盪させながら1時間インキュベートした。その後、Whatman濾紙を、HLPC-水350mlを満たした第2のビーカーに移した;ホルダーを再度2、3回上下に動かした。この移行を少なくとももう1回繰り返した。次に、濾紙をアルミホイル皿に移し、真空オーブン中、真空下、37℃で2時間放置した。真空ポンプ停止後、濾紙を室温まで冷却し、その後、乾燥した暗所に保存した。
【0132】
1.3 洗浄液量を減らして洗浄を行う場合のPLLコートしたWhatman 3MM Chr濾紙上での無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
1.3.3 溶液
50%脱イオンホルムアミドハイブリダイゼーション溶液を、ホルムアミド5ml(100%脱イオン化)、SSC 1.5ml(20 ×)、SDS(20%)0.5ml、Denhardts溶液(100 ×) 1ml、Tween-20 20μlおよびHLPC-水1.8mlを混合して調製した。プレハイブリダイゼーション緩衝液は、SpeedVacでニシン精子DNA 10μl(10μg/μl)を15分間乾燥し、この乾燥ニシン精子DNAにハイブリダイゼーション緩衝液50μlを添加して調製した。
【0133】
プローブ混合液は、対照プローブ混合物(10ng/各プローブ)4μl、Cot-1 DNA 20μlおよびPZAX(AGTAACGGCCGCCAGTGTGCTGGAATTCTGCAGAT;配列番号3)/PZBX(CGAGCGGCCGCCAGTGTGATGGA;配列番号4)のブロッカー1μl(50 pmol/μl)を混合して調製した。特異的ハイブリダイゼーション用のヒトゲノムDNAの反復配列をブロックするために、Cot-1 DNA(Cat. No.1581074;Roche)を使用した。SC110A-240 SpeedVac Plus (Savant Instrument INC:New York, USA)を使ってプローブ混合物を15分間乾燥し、その後、ハイブリダイゼーション緩衝液50μlを添加した。
【0134】
1.3.2 PLLコートWhatman 3MM Chr濾紙上での無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
PLLコートWhatman濾紙スライドを作成し、その上に、対照1の変性無傷ゲノムDNA 1μgをスポットした。対照として水を個々の濾紙上にスポットした。該DNAを室温で10分間乾燥した。その後、該DNAをWhatman濾紙の両側に50mJでUV架橋した (UV Stratalinker 1800;Cat. No.400072;Stratagene;California, USA)。ホルムアミド5ml(100%脱イオン化)、SSC 1.5ml(20 ×)、SDS(20%)0.5ml、Denhardts溶液(100 ×) 1ml、Tween-20 20μlおよびHLPC-水1.8mlを混合して、50%脱イオン化ホルムアミドハイブリダイゼーション溶液を調製した。ハイブリダイゼーション溶液中ニシン精子DNA 100μg(10μg/μl;Cat. No. D1816;Promega) から成るプレハイブリダイゼーション溶液を5分間沸騰させ、氷上に置いた。Whatman濾紙を、フロースルー装置(圧力0.2バール、42℃で2時間、2サイクル/分)を使って、プレハイブリダイゼーション溶液50μl 中42℃で2時間プレハイブリダイズした。プレハイブリダイゼーション溶液を除去した後、ハイブリダイゼーション緩衝液で洗浄工程を1回実施した。
【0135】
ハイブリダイゼーションプローブ混合物を5分間沸騰し、氷上に置いた。フロースルーシステムを使って、ハイブリダイゼーションプローブ混合物溶液50μlを添加し、42℃で4時間インキュベートした。
【0136】
1.3.3 ハイブリダイゼーション後の洗浄
ハイブリダイゼーション混合物をピペットで取り出し、Whatman濾紙を、25mlの溶液1を使って2.5分間、25mlの溶液2を使って2.5分間、42℃で、フロースルー装置によって洗浄した。洗浄液1は、1%SSC(20 × SSC、3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム)および1%SDSから成り、洗浄液2は、0.1%SSCおよび0.1%SDSから成った。
【0137】
個々のWhatman濾紙を1.5mlチューブ中PCR緩衝液(1 ×)50μlに移し、それぞれ5分間沸騰させた。沸騰した溶液5μlを、PCR金緩衝液5μl(10 ×)、MgCl2 2.5μl(25mM)、dNTP 1.25μl(10mM)、AmpliTaq Gold 0.125μl(5U/μl) 、PZAフォワードプライマー1μl(10pM)、PZBリバースプライマー1μl(10pM)、サンプル溶液5μlおよびHLPC-水34.125μlを含むPCR混合液チューブに移した。
【0138】
以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で3分;サイクル2〜35、94℃で1分、60℃で1分、72℃で2分;最後に、72℃で10分。PCR生成物10μlをTAE(0.5 ×)中2%アガロースにかけた。100Vで40分間電気泳動を実施した。結果を図4に示す。
【0139】
結論として、上記実験により、マトリックスまたは膜構造内に固定した無傷ゲノムDNAへのフロースルーハイブリダイゼーションによって多重増幅プローブハイブリダイゼーションが実施可能であることが証明される。
【0140】
1.4 PLLコートWhatman 3MM Chr濾紙での対照プローブを使った無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
1.4.1 溶液
50%脱イオン化ホルムアミドハイブリダイゼーション溶液を、ホルムアミド5ml(100%脱イオン化)、SSC 1.5ml(20 ×)、SDS(20%)0.5ml、Denhardts溶液(100 ×) 1ml、Tween-20 20μlおよびHLPC-水1.8mlを混合して調製した。SpeedVacでニシン精子DNA 10μl(10μg/μl)を15分間乾燥し、この乾燥ニシン精子DNAにハイブリダイゼーション緩衝液30μlを添加して、プレハイブリダイゼーション緩衝液を調製した。PMP22対照プローブ混合物4μl(10ng/各プローブ、表1参照)、Cot-1 DNA(1mg/ml)20μlおよびPZAX/PZBXブロッカー(50 pmol/μl)1μlを混合してプローブ混合物を調製した。実施例1、段落1.3に記載の末端ブロッキングプライマーPZAXおよびPZBX(イソ遺伝子)を添加して、同混合液中で使用する各種プローブ間の交叉ハイブリダイゼーションを防止した。SpeedVacを使って該プローブ混合物を15分間乾燥し、その後、ハイブリダイゼーション緩衝液30μlを添加した。
【0141】
1.4.2 PLLコートWhatman 3MM Chr濾紙での無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
対照者1、4および5の変性無傷ゲノムDNA 250 ngを個々のPLLコート濾紙にスポットした。水は、個々の濾紙に対照としてスポットした。
【0142】
該DNAを室温で10分間乾燥した。その後、該DNAをWhatman濾紙の両側に50mJでUV架橋した。プレハイブリダイゼーション溶液を5分間沸騰させ、氷上に置いた。Whatman濾紙を、フロースルー装置(圧力0.2バール、2時間、2サイクル/分)を使って、プレハイブリダイゼーション溶液30μl 中、42℃で2時間プレハイブリダイズした。プレハイブリダイゼーション溶液を除去した後、ハイブリダイゼーション緩衝液で洗浄工程を1回実施した。
【0143】
ハイブリダイゼーションプローブ混合物を5分間沸騰させ、氷上に置いた。ハイブリダイゼーションプローブ混合物溶液30μlを添加し、フロースルーシステムを使って42℃で4時間インキュベートした。
【0144】
1.4.3 ハイブリダイゼーション後の洗浄
洗浄液を前述のとおりに調製した。
ハイブリダイゼーション混合物をピペットで取り去り、Whatman濾紙を、50mlの溶液1と、50mlの溶液2を使って、65℃でフロースルーシステムによって10分間洗浄した。個々のWhatman濾紙を1.5mlチューブ中PCR緩衝液(1 ×)50μlに移し、それぞれ5分間沸騰させた。沸騰した溶液5μlを、PCR金緩衝液5μl(10 ×)、MgCl2 3μl(25mM)、dNTP 5μl(2.5mM)、AmpliTaq Gold 0.125μl(5U/μl) 、PZAフォワードプライマー1μl(10pM)、PZBリバースプライマー1μl(10pM)、サンプル溶液5μlおよびHLPC-水22.375μlを含むPCR混合液チューブに移した。以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で3分;サイクル2〜35、94℃で1分、60℃で1分、72℃で2分;最後に、72℃で10分。PCR生成物10μlをTAE(0.5 ×)中 2%アガロースにかけた。100Vで40分間電気泳動を実施した。結果を図5に示す。
【0145】
結論として、上記実験により、対照プローブ保有者1、4および5からの少量無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション後、PCR生成物の電気泳動によって鮮明なPCRバンドが得られたことが証明される。
【0146】
実施例2:ナイロン膜−孔径0.45μm−上での無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション
この実験では、孔径0.45μmのナイロン膜(Amersham Bioscience、Cat. No. RPN303B)を使って、無傷ゲノムDNAフロースルーハイブリダイゼーションにおける該膜の使用を検討した。
【0147】
2.1 ナイロン膜上での無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション
2.1.1 ハイブリダイゼーション
対照者5の無傷ゲノムDNA 1μgと水を個々のナイロン膜にスポットした。DNAスポットを室温で10分間乾燥した。その後、DNAを膜の両側、50mJでフィルターに架橋させた。280μlの1 M NaH2PO4、720μlのNa2HPO4、700μlの20%SDS、276μlのHLPC-水、20μlのニシン精子DNAおよび4μlの0.5M EDTAを合わせて添加し、プレハイブリダイゼーション溶液2mlを調製した。US 6,383,748 B1の記載どおり(圧力0.2バール、42℃、2時間、2サイクル/分)、フロースルーシステムを使って、ナイロンフィルターをプレハイブリダイゼーション溶液50μl中、65℃で2時間プレハイブリダイズした。プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、Cot-1 DNA溶液50μlで置換し、65℃で30分間フロースルーした。その後、Cot-1溶液を除去し、PMP22対照プローブ(表1参照)を含むハイブリダイゼーション溶液50μlを添加した。フロースルーハイブリダイゼーションは、65℃で4時間実施した。
【0148】
2.1.2 ハイブリダイゼーション後の洗浄
ハイブリダイゼーション後の洗浄用として、洗浄液1および2を調製し、65℃でインキュベートした。洗浄液1は、20%SSC 25mlおよび20XSDS 25mlをHLPC-水で希釈し500mlとして調製した。洗浄液2は、20%SSC 2.5mlおよび20XSDS 2.5mlをHLPC-水で希釈し500mlとして調製した。ハイブリダイゼーション混合物をピペットでナイロン膜から取り去り、それに続いて、これらの膜を、その後、US 6,383,748 B1の記載どおりに、フロースルー装置を使って、65℃で50mlの洗浄液1と50mlの洗浄液2により洗浄した。
【0149】
2.1.3 PCR
個々のナイロン膜を1.5mlチューブ中HLPC-水50μlに移し、5分間沸騰させた。次に、沸騰した溶液2μlを、5μl の10 × PE緩衝液、2.5μl の25mM MgCl2、1.25μlの10mM dNTP、0.125μlのPE Taq(5U/μl)、1μlのPZAフォワードプライマー(50pM:実施例1参照)、1μlのPZBリバースプライマー(50pM:同じく実施例1参照))および37.125μlのHLPC-水を含む別のPCR試薬含有チューブに移した。以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で5分;サイクル2〜35、94℃で45秒、57℃で1分、68℃で1分;最後に、68℃で10分。PCR生成物10μlをTAE(0.5 ×)中 2%アガロースにかけた。100Vで35分間電気泳動を実施した。結果を図7に示す。水と対照者5のサンプルからの弱いPCR結果のみが得られ、ハイブリダイゼーションが非特異的で非効率的であることを表していた。
【0150】
結論として、実施例2は、孔サイズ0.45μmの膜が、多孔膜によるプローブのハイブリダイゼーションの効率的なフロースルーを行えないことを示している。
【0151】
実施例3:Anodisc 25上での無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション
この実施例では、Anodisc 25膜に固定した無傷ゲノムDNAに多重増幅プローブハイブリダイゼーション(MAPH)を実施した。
【0152】
3.1 Anodisc 25(孔サイズ0.2μm)上での無傷ゲノムDNAのハイブリダイゼーション
3.1.1 ゲノムハイブリダイゼーション
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)でシラン化した個々のAnodisc 25膜に対照者5からの変性無傷ゲノムDNA 1μgと水をそれぞれスポットした。DNAを膜に50mJのUV架橋で両側に架橋した。PamGeneのフロースルーシステム(圧力0.2バール、42℃、2時間、2サイクル/分)を使って、プレハイブリダイゼーション溶液20μl(実施例3参照)中、65℃で30分間プレハイブリダイゼーションを実施した。プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、Cot-1 DNA溶液20μlで置換し、65℃で20分間フロースルーを行った。Cot-1溶液を除去し、PMP22プローブを含むハイブリダイゼーション溶液20μlを添加した。フロースルーハイブリダイゼーションは、65℃で1時間実施した。
【0153】
3.1.2 ハイブリダイゼーション後の洗浄
ハイブリダイゼーション後の洗浄用として、洗浄液1および2を調製し、65℃でインキュベートした。洗浄液1は、20%SSC 25mlおよび20XSDS 25mlをHLPC-水で希釈し500mlとして調製した。洗浄液2は、20%SSC 2.5mlおよび20XSDS 2.5mlをHLPC-水で希釈し500mlとして調製した。ハイブリダイゼーション混合物をピペットでAnodisc 25-MPS膜からピペットして取り出し、その後、これらの膜をDNA サンプル用と水対照用の2本の1.5mlチューブに移した。その後、膜を、65℃で、洗浄液1で30分間、洗浄液2で45分間洗浄した。
【0154】
3.1.3 PCRおよび結果
個々の洗浄済みの膜を1.5mlチューブ中1×PCR緩衝液50μlに移し、5分間沸騰させた。その後、沸騰した溶液5μlを0.5 PCR肉薄チューブに移した。以下のPCR混合液を添加した:、5μl の10 × PE緩衝液(Perkin Elmer)、2.5μl の25mM MgCl2、1.25μlの10mM dNTP、0.125μlのPE Taq(5U/μl)、1μlのPZAフォワードプライマー(50pM)、1μlのPZBリバースプライマー(50pM)および34.125μlのHLPC-水。以下のサイクル順のPCRプログラムを完了した:サイクル1、94℃で5分;サイクル2〜35、94℃で45秒、57℃で1分、68℃で1分;最後に、68℃で10分。PCR生成物5μlをTAE(0.5 ×)中 2%アガロースゲルにかけた。100Vで45分間電気泳動を実施した。結果を図8に示す。水および対照者5から弱いPCR結果のみが得られ、ハイブリダイゼーションが非特異的で非効率的であることを表していた。これは、小さな孔サイズでは、プローブを通過させることができないことによるもので、効率的なポストハイブリダイゼーション洗浄を確立できなかった。
【0155】
実施例4:Anodisc 25膜-孔径0.2μm(Whatman PIc.)での無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーション
この実験では、Anodisc 25膜(Whatman)を、最初に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)でのシラン化によって正電荷させた。本実験の目的は、無傷ゲノムDNAのフロースルーハイブリダイゼーションでの使用に供する0.2μm-孔サイズ-膜を評価することであった。ハイブリダイゼーション前に、シラン化した膜をニシン精子DNAか無水酢酸およびN,N-ジイソプロピルエチルアミンでブロックした。
【0156】
4.1 材料および試薬
1. Anodisc 25、0.2μm膜(Whatman)
2. 3-アミノプロピルトリエトキシシラン(Acros、APS)
3. 無水酢酸、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DMSO、ジオキサン、アセトニトリルおよびジクロロメタン
4. PMP22プローブ混合物(表1参照)
5. 対照者5からのゲノムDNA
6. 陰性対照用HLPC-水
7. ハイブリダイゼーション試薬
【0157】
4.2 APSによるWhatman Anodisc 25膜のシラン化
3mlのAPSを濾過し、その後、2.5mlの濾過済みAPSを247.5mlのHLPC-水に添加して、1%APS溶液を調製した。600mlビーカーを250mlの1%APS溶液で満たし、プレートシェーカー上に置いた。Anodisc 25膜50個中の多数をテフロンホルダー(前記ホルダーの詳細については、WO 02/072268参照)に置いた後、前記ホルダーを1%APS溶液含有ビーカーに置いた。ホルダーとWhatman濾紙の間に気泡が入りこまないように、該ホルダーをゆっくりと上下に動かした。該ビーカーをパラフィルムで密閉し、100 rpmで1時間震盪させながら、プレートシェーカー上、室温でインキュベートした。その後、Anodisc膜をHLPC-水250mlで満たした第2のビーカーに移した;ホルダーを、再度、ゆっくりと2、3回上下に動かし、最後に、HPLC溶液中でさらに3分間維持した。この移行を、少なくとももう1回繰り返した。次に、テフロンホルダーを96%エタノール250mlに3分間の間に2回移した。次に、膜をアルミホイル皿に移し、120℃の真空オーブン中に2時間置いた。真空ポンプを停止させた後、膜を室温まで冷却し、その後、乾燥した暗所で保存した。
【0158】
4.3 ニシン精子DNAでブロックしたAnodisc 25-APS膜上での無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
対照者5の変性無傷ゲノムDNA1μgおよび水対照を、UV架橋せずに、個々のAnodisc 25-APS膜にスポットした。該DNAを室温で10分間乾燥した。280μlの1 M NaH2PO4、720μlのNa2HPO4、700μlの20%SDS、276μlのHLPC-水、20μlのニシン精子DNAおよび4μlの0.5M EDTAを合わせて添加し、プレハイブリダイゼーション溶液2mlを調製した。PamGeneのフロースルーシステム(圧力0.2バール、42℃、2時間、2サイクル/分)を使って、スポットしたAnodisc-APS膜をプレハイブリダイゼーション溶液50μl中、65℃で1時間プレハイブリダイズした。プレハイブリダイゼーション溶液を除去し、Cot-1 DNA溶液50μlで置換し、65℃で30分間フロースルーした。その後、Cot-1溶液を除去し、PMP22プローブを含むハイブリダイゼーション溶液50μlを添加した。インキュベーションを、フロースルーを使って、65℃で2時間実施した。ハイブリダイゼーションは、困難だが、不可能ではないようだった。
【0159】
4.4 0.5M無水酢酸および0.125M N,N-ジイソプロピルエチルアミンでブロックしたAnodisc 25-APS膜上での無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーション
4.4.1 溶液
0.5M無水酢酸0.47ml、0.125M N,N-ジイソプロピルエチルアミン0.2175mlおよびジクロロメタン9.3mlを合わせて添加し、ブロッキング溶液10mlを調製した。
【0160】
25mlの20%SSCおよび25mlの20×SDSをHLPC-水で希釈し500mlとすることによって500mlのハイブリダイゼーション後の溶液1を調製した。
【0161】
2.5mlの20%SSCおよび2.5mlの20×SDSをHLPC-水で希釈し500mlとすることによって500mlのハイブリダイゼーション後の溶液2を調製した。
【0162】
4.4.2 ハイブリダイゼーション手順
対照者5の変性無傷ゲノムDNA 1μgおよび水対照をUV架橋せずに、個々のAnodisc 25-APSにスポットした。該DNAを室温で10分間乾燥した。
スポット済みの膜を、真空洗浄システム(フロースルーシステム)上に層状ブロックを使って置いた。ブロッキング溶液20μlを各サンプルに添加し、この工程をさらに3回繰り返した。サンプルを、96%エタノール250μlで4回洗浄した。この実験工程中、膜が破損し、そのため、その後の無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーションは、無水酢酸およびN,N-ジイソプロピルエチルアミンでブロックしたAnodisc 25-APS膜について実施できなかった。該膜は、フロースルーを使って洗浄することもできなかった。
【0163】
結論として、実施例3は、孔径0.2μm のAnodisc 膜に固定した無傷ゲノムDNAのフロースルーを使ったハイブリダイゼーションが、ハイブリダイゼーション困難または膜破損をきたしたことを示している。フロースルーハイブリダイゼーション後洗浄は、水対照でのみ可能であるが、無傷ゲノムDNAサンプルでは不可能であった。
【0164】
全体の結論
実施例1〜4から、驚くべきことに、直径0.45μm以上のマトリックス孔サイズのみが無傷ゲノムDNAの非常に効率的なフロースルー分析を可能にすることが判明した。
【0165】
孔サイズ0.2μm(実施例4)および孔サイズ0.45μm(実施例3)の膜は、無傷未操作ゲノムDNAがそれらの膜を通過しにくいことを示しており、小さな孔サイズのため、それらの膜を通る非ハイブリダイズプローブの洗い流しが明らかに不可能であった。
【0166】
実験は、非ハイブリダイズプローブの洗い流し、それによる高度に特異的なハイブリダイゼーションを確保するには、孔サイズ>0.45μmが必要であることを示した。
【0167】
実施例5:遺伝性非ポリポーシス大腸癌についての無傷ゲノムDNAサンプル分析における本発明の応用
大腸癌は、男女の最も一般的な癌の1種である。遺伝性大腸癌の大半は、遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)である。HNPCCは、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子の突然変異が引き起こす常染色体優性遺伝病である。HNPCCの家族に検出される生殖系列変異の大半は、MSH2およびMLH1遺伝子に起こる。MSH2およびMLH1遺伝子に認められる生殖系列変異の約25%が、広範囲なゲノム欠失である。
【0168】
本発明は、MMR遺伝子の生殖系列変異の識別を可能にし、したがってこれにより罹病家族の構成員の発症前診断の可能性が開かれる。遺伝子スクリーニングの結果は、患者または家族の構成員の医療管理に影響を与えることになる。
【0169】
5.1 マイクロアレイ生成用プローブの調製および品質管理
実施例1に述べたとおりに調製したヒトゲノムDNAの直接増幅からMSH2 P1およびP2のプローブを生成した。実施例1で述べたとおりに、隣接(フランキング)ベクタープライマーのPZAおよびPZBを使って、プラスミドの増幅からプローブ(対照プローブ12種類、MSH2プローブ16種類およびMLH1プローブ19種類)を生成した。これらのプラスミドは、the Institute of Genetics,University of Nottingham, Queen's Medical Centre, Nottingham NG7, 2UH, UKから入手した。PCR生成物をpZero2 (Invitrogene)のEcoRV部位にクローン化することによって、プローブ(対照12種類、16種類のMSH2、19種類のMLH1)を調製した。プラスミドにクローン化した対照プローブの配列は、表1に見ることができる。プラスミドにクローン化したMSH2およびMLH1の配列は、それぞれ、表3および4に見ることができる。TAE(0.5×)中2%アガロースゲル上、100Vでの40分間のゲル電気泳動によって、プローブの品質をモニターし、その結果を図6A〜Cに示す。
【0170】
マイクロアレイデータの標準化およびPCR汚染の検査に、対照プローブを使用する。ヒトMSH2は染色体2p21に位置し、16個のエクソンを有する。18種類のMSH2プローブは、16個のエクソンと2個のMSH2プロモーター領域(P1およびP2)を表す。ヒトMLH1は染色体3p21に位置し、19個のエクソンを有する。19個のMLH1プローブは、19個のエクソンを表す。
【0171】
本発明によるフロースルーハイブリダイゼーションおよび、上記のとおりのハイブリダイゼーション後洗浄後、個々のWhatman濾紙を1.5mlチューブ中PCR緩衝液(1 ×)50μlに移し、それぞれ5分間沸騰させることができる。沸騰した溶液5μlを、PCR金緩衝液5μl(10 ×)、MgCl2 3μl(25mM)、dNTP 5μl(2.5mM)、AmpliTaq Gold 0.125μl(5U/μl) 、PZAフォワードプライマー1μl(10pM)、PZBリバースプライマー1μl(10pM)、サンプル溶液5μlおよびHLPC-水22.375μlを含むPCR混合液チューブに移す。以下のサイクル順のPCRプログラムを完了できる:サイクル1、94℃で3分;サイクル2〜35、94℃で1分、60℃で1分、72℃で2分;最後に、72℃で10分。
【0172】
PCR増幅中、標識プライマーまたは標識核酸の酵素的生成を使って、標識核酸を生成してよい。次に、得られた標識PCR生成物は、Qiaquick精製キットで精製し、EB緩衝液(10 mM Tris-Cl、pH 8.5)50μlに溶解して、マイクロアレイを使う次の検出に供する。
【0173】
別法として、化学ラベルを使用でき(Kreatech)、それによって、例えば、プラチナ基が標識標的と配位結合を形成し、標的に該ラベルを強固に結合させる。
【0174】
HNPCC患者の分析を目的に、マイクロアレイ生成のために、40%〜50%GC含量を有する60量体オリゴDNA49種類(12種類の対照、18種類のMSH2、19種類のMLH1)を選択した。オリゴDNAの配列を表5に見ることができる。HNPCCマイクロアレイ製造時にHNPCC患者からの臨床サンプルを分析できる。
【0175】
【表1−1】

【0176】
【表1−2】

【0177】
【表2−1】

【0178】
【表2−2】

【0179】
【表3−1】

【0180】
【表3−2】

【0181】
【表4−1】

【0182】
【表4−2】

【0183】
【表5−1】

【0184】
【表5−2】

【0185】
【表5−3】

【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明のハイブリダイゼーション方法の工程経路を示す。
【図2】実施例1、段落1.1.1の記載に従って調製した対照プローブ12に相当するPCR生成物の電気泳動結果を示す。
【図3】実施例1、段落1.1.2の記載どおりにPZAおよびPZBと同一の配列を隣接させた特異的プライマー18種類を使ってヒトゲノムDNAの直接増幅から調製したMSH2プローブに相当するPCR生成物の電気泳動結果を示す。
【図4】実施例1、段落1.3の記載どおりにホルムアミドハイブリダイゼーション溶液中、対照プローブ混合物での健康対照者1からの固定化無傷ゲノムDNA 1 μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の電気泳動結果を示す。
【図5】健康な対照者3名(対照者1、4および5)からの固定化無傷ゲノムDNA 250ngのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の電気泳動結果を示す。
【図6】実施例1および2で述べたとおりの増幅プローブの品質管理を示す。
【図7】実施例2で述べたように、健康な対照者5からの固定化無傷ゲノムDNA 1μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の品質を示す。
【図8】実施例3で述べたように、健康な対照者5からの固定化無傷ゲノムDNA 1μgのフロースルーハイブリダイゼーション後のPCR生成物の品質を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化ゲノムDNA上にプローブをハイブリダイゼーションする方法であって、下記工程を含む方法:
(a) 無傷(intact)ゲノムDNAを用意し、無傷ゲノムDNAを変性させる;
(b) 前記変性した無傷ゲノムDNAをマトリックス上に固定する;このマトリックスに含まれる孔のサイズは外側限界を含めて0.6μm〜2μmの範囲内にある;
(c) 一セットのプローブを用意し、プローブが前記無傷ゲノムDNA中の相補配列にハイブリダイゼーションするのに有利な条件下で、プローブを前記マトリックスに通過させる;および、
(d) ハイブリダイズしなかったプローブを前記マトリックスから洗い出し、ハイブリダイズして形成された無傷ゲノムDNA/プローブ複合体を更なる分析に供するために残留させる。
【請求項2】
前記変性した無傷ゲノムDNAを前記マトリックス内に透過させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下向きの流れと上向きの流れを交互させる少なくとも1回のサイクルで、前記プローブを前記マトリックスに通過させる請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
下向きの流れの少なくとも1回のサイクルにより洗浄液を前記マトリックスに通過させて、前記洗浄工程を実施する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスが膜である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記膜が3D網目構造を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記網目構造がフロースルー構造である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記網目構造が繊維網目構造である請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維が植物由来である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維がセルロースである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マトリックスが可能にする流速が外側限界を含めて50 mm/30分〜250 mm/30分に含まれる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックスがアフィニティー共役体により活性化される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記アフィニティー共役体がポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、ポリ-アルギニン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびヘキサメチレンジアミンを含む群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アフィニティー共役体がポリ-L-リジンである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブがプライマー結合配列によって隣接される請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーションのための請求項1〜15のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項17】
無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸の検出および定量のための請求項1〜15のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、下記工程を含む方法:
(a) 無傷ゲノムDNAを用意し、無傷ゲノムDNAを変性させる;
(b) 請求項1〜15のいずれかに記載の方法に従ってハイブリダイゼーションを行う;
(c) ハイブリダイズしたプローブを回収し;任意の回収プローブを単一のプライマーペアによって基本的に同時に増幅させる、プライマーペアの各プライマーは、前記プローブのそれぞれの隣接(flanking)プライマー結合配列上で各回収プローブに結合する;および、
(d) 工程(c)の回収された増幅プローブを定性的、定量的に分析する。
【請求項19】
工程(d)の分析がマイクロアレイ分析による請求項18に記載の方法。
【請求項20】
各プローブがプライマー結合領域によって5'および3'で隣接し、この5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブに対し同一または実質的に同一である請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)の前記増幅が定量的増幅である請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記増幅がポリメラーゼ連鎖反応による請求項21に記載の方法。
【請求項23】
増幅したプローブにラベルを付すことを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記ラベルが蛍光ラベルである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ゲノムスクリーニングのための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項26】
ゲノムDNA中の欠失または重複を検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項27】
ゲノムプロファイリングのための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項28】
サンプル中の病原性、疾患または汚染の程度を識別および定量的に検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項29】
サンプル中の感染因子の存在を識別および定量的に検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項30】
サンプル中に存在する病原体の遺伝子型を決定するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項31】
固定化無傷ゲノムDNAの上へのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用装置であって、ウェルホルダー、前記ウェルホルダーには直径が一定の1以上の円形ウェルが含まれること、前記ウェルは繊維網目マトリックスを露出すること、このマトリックスには外側限界を含む0.6〜2μmの範囲内の孔サイズが含まれること、前記マトリックスにより無傷ゲノムDNAの固定が可能となり、したがって固定化無傷ゲノム材料とプローブとはフロースルーハイブリダイゼーションによりハイブリダイズすることが可能となる、装置。
【請求項32】
前記マトリックスにより無傷ゲノムDNAの透過が可能となる請求項31に記載の装置。
【請求項33】
固定化ゲノムDNA上にプローブをフロースルーハイブリダイゼーションする機器であって、下記を含む機器:
(a) 請求項31または32に記載の装置;
(b) (a)に記載の装置の少なくとも1個のウェルに、量を制御した液体を添加する手段;
(c) 各ウェルのマトリックスに制御した圧力差をかけ、および/または維持するための手段。
【請求項34】
固定化無傷ゲノムDNA上にプローブをフロースルーハイブリダイゼーションするキットであって、下記を含むキット:
(a) 請求項31または32に記載の装置;および
(b) 請求項1〜15または18〜24のいずれかに記載の方法を実施するための説明書。
【請求項35】
請求項34に記載のキットであって、追加として下記を含むキット。
(a) プローブセット、ただし各プローブはプライマー結合領域によって5'および3'で隣接し、この5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブ対し同一または実質的に同一である;
(b) 単一プライマーペア、ペアの各プライマーはプライマー結合領域に相補的である;
(c) 任意ではあるが、増幅成分、この成分によりハイブリダイズし回収された任意のプローブを増幅することができる;および
(d) 任意ではあるが、マイクロアレイ、マイクロアレイにより請求項1〜15および18〜24のいずれかに記載の方法によって得られたハイブリダイゼーション結果を分析することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定化ゲノムDNA上にプローブをハイブリダイゼーションする方法であって、下記工程を含む方法:
(a) ゲノム成分を含有する、または、含有する可能性のあるサンプルを用意する、前記ゲノム成分は未消化または無傷(intact)の染色体DNAまたはRNAである;
(b) 前記無傷のゲノム成分を変性させる;
(c) 前記変性した無傷ゲノム成分をマトリックス内に固定する;ただしこのマトリックスに含まれる孔のサイズは外側限界を含めて0.6μm〜2μmの範囲内にある;
(d) 一セットのプローブを用意し、プローブが前記無傷ゲノム成分中の相補配列にハイブリダイゼーションするのに有利な条件下で、プローブを前記マトリックスに通過させる;および、
(e) ハイブリダイズしなかったプローブを前記マトリックスから洗い出し、ハイブリダイズして形成された無傷ゲノム成分/プローブ複合体を更なる分析に供するために残留させる。
【請求項2】
前記変性した無傷ゲノムDNAを前記マトリックス内に透過させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下向きの流れと上向きの流れを交互させる少なくとも1回のサイクルで、前記プローブを前記マトリックスに通過させる請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
下向きの流れの少なくとも1回のサイクルにより洗浄液を前記マトリックスに通過させて、前記洗浄工程を実施する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスが膜である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記膜が3D網目構造を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記網目構造がフロースルー構造である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記網目構造が繊維網目構造である請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維が植物由来である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維がセルロースである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マトリックスが可能にする流速が外側限界を含めて50 mm/30分〜250 mm/30分に含まれる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックスがアフィニティー共役体により活性化される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記アフィニティー共役体がポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、ポリ-アルギニン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびヘキサメチレンジアミンを含む群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アフィニティー共役体がポリ-L-リジンである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブがプライマー結合配列によって隣接される請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
無傷ゲノムDNAハイブリダイゼーションのための請求項1〜15のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項17】
無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸の検出および定量のための請求項1〜15のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
無傷ゲノムDNAサンプル中の標的核酸を検出および定量する方法であって、下記工程を含む方法:
(a) 無傷ゲノムDNAを用意し、無傷ゲノムDNAを変性させる;
(b) 請求項1〜15のいずれかに記載の方法に従ってハイブリダイゼーションを行う;
(c) ハイブリダイズしたプローブを回収し;回収した任意のプローブを単一のプライマーペアによって基本的に同時に増幅させる、プライマーペアの各プライマーは、前記プローブのそれぞれの隣接(flanking)プライマー結合配列上にて各回収プローブに結合する;および
(d) 工程(c)の回収された増幅プローブを定性的、定量的に分析する。
【請求項19】
工程(d)の分析がマイクロアレイ分析による請求項18に記載の方法。
【請求項20】
各プローブがプライマー結合領域によって5'および3'で隣接し、この5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブに対し同一または実質的に同一である請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)の前記増幅が定量的増幅である請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記増幅がポリメラーゼ連鎖反応による請求項21に記載の方法。
【請求項23】
増幅したプローブにラベルを付すことを特徴とする請求項18〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記ラベルが蛍光ラベルである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ゲノムスクリーニングのための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項26】
ゲノムDNA中の欠失または重複を検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項27】
ゲノムプロファイリングのための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項28】
サンプル中の病原性、疾患または汚染の程度を識別および定量的に検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項29】
サンプル中の感染因子の存在を識別および定量的に検出するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項30】
サンプル中に存在する病原体の遺伝子型を決定するための請求項18〜24のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項31】
固定化無傷ゲノムDNAの上へのプローブのフロースルーハイブリダイゼーション用装置であって、ウェルホルダー、前記ウェルホルダーには直径が一定の1以上の円形ウェルが含まれること、前記ウェルは繊維網目マトリックスを露出すること、このマトリックスには外側限界を含む0.6〜2μmの範囲内の孔サイズが含まれること、前記マトリックスにより無傷ゲノムDNAの固定が可能となり、したがって固定化無傷ゲノム材料とプローブとはフロースルーハイブリダイゼーションによりハイブリダイズすることが可能となる、装置。
【請求項32】
前記マトリックスにより無傷ゲノムDNAの透過が可能となる請求項31に記載の装置。
【請求項33】
固定化ゲノムDNA上にプローブをフロースルーハイブリダイゼーションする機器であって、下記を含む機器:
(a) 請求項31または32に記載の装置;
(b) (a)に記載の装置の少なくとも1個のウェルに、量を制御した液体を添加する手段;
(c) 各ウェルのマトリックスに制御した圧力差をかけ、および/または維持するための手段。
【請求項34】
固定化無傷ゲノムDNA上にプローブをフロースルーハイブリダイゼーションするキットであって、下記を含むキット:
(a) 請求項31または32に記載の装置;および
(b) 請求項1〜15または18〜24のいずれかに記載の方法を実施するための説明書。
【請求項35】
請求項34に記載のキットであって、追加として下記を含むキット。
(a) プローブセット、ただし各プローブはプライマー結合領域によって5'および3'で隣接し、この5'および3'で隣接するプライマー結合配列が各プローブ対し同一または実質的に同一である;
(b) 単一のプライマーペア、ペアの各プライマーはプライマー結合領域に相補的である;
(c) 任意ではあるが、増幅成分、この成分によりハイブリダイズし回収された任意のプローブを増幅することができる;および
(d) 任意ではあるが、マイクロアレイ、マイクロアレイにより請求項1〜15および18〜24のいずれかに記載の方法によって得られたハイブリダイゼーション結果を分析することができる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−508687(P2006−508687A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570686(P2004−570686)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013601
【国際公開番号】WO2004/050910
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505207610)
【Fターム(参考)】