説明

固定構造

【課題】ゴム状弾性材等による成形品の固定構造において、組み付け時の位置合わせが容易で、セットし易く、しかも、固定対象物の周りに大きスペースを必要としないようにすること。
【解決手段】第1の部材10の底部22には貫通孔24が貫通形成され、当該底部22の一方の面がなす部材固定面とは反対の面(下底面)には引っ掛け部(係止突起26)が形成されており、第2の部材30には可撓性を有する係止片36が形成されており、係止片36は、貫通孔24を貫通し、下底面に沿う方向に屈曲されて引っ掛け部に引っ掛り、当該引っ掛りによって第1の部材10の底部22の第2の部材30が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造に関し、特に、ゴム状弾性材による成形品を含む樹脂成形品のクリップ式の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム状弾性材等による成形品の固定構造として、図7(a)、(b)に例示されているように、成形品(取付物本体)100に一体成形された矢じり形状(逆止形状)の係合突起ピン101を固定対象物102に形成された係合孔103に押し込み、係合突起ピン101を固定対象物102に逆止係合させることにより、成形品100を固定対象物102に固定したものが知られており、各種成形品の固定に広く用いられている。なお、図7(a)は、仮置き状態を、図7(b)は固定完了状態を各々示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した矢じり形状の係合突起ピン101による固定構造では、以下のような問題がある。
(1)固定対象物102に形成された係合孔103の口径が係合突起ピン101の外径に応じて小さいため、係合孔103に対する係合突起ピン101の位置合わせが難しい。
(2)係合突起ピン101が立っていることにより、図7(a)に示されているような仮置き時に、成形品100の配置状態が安定せず、成形品100のセットがしづらい。
(3)固定完了状態では、係合突起ピン101が固定対象物102の裏面側に突出するため、固定対象物102の周りに大きスペースを確保しなくしてはならず、設計自由度が低減する。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ゴム状弾性材等による成形品の固定構造において、組み付け時の位置合わせが容易で、セットし易く、しかも、固定対象物の周りに大きスペースを必要としないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による固定構造は、第1の部材の部材固定面部に第2の部材を固定するための固定構造であって、前記部材固定面部には貫通孔が貫通形成され、当該部材固定面部の一方の面がなす部材固定面とは反対の面には引っ掛け部が形成されており、前記第2の部材には可撓性を有する係止片が形成されており、前記第2の部材が前記第1の部材の前記部材固定面上に設置され、前記係止片は前記貫通孔を貫通し、前記部材固定面とは反対の面に沿う方向に屈曲されて前記引っ掛け部に引っ掛り、当該引っ掛りによって第1の部材の部材固定面部に第2の部材が固定される。
【0006】
本発明による固定構造は、好ましくは、前記引っ掛け部は前記反対の面に突出形成された鈎形の係止突起であり、前記係止片は、前記係止突起が貫通する開口を有し、当該開口に前記係止突起を通した状態で、前記反対の面に沿う方向に屈曲されて前記係止突起に引っ掛り係合している。
【0007】
本発明による固定構造は、好ましくは、前記開口の左右両側は、くの字形の折曲形状をした左右一対の弾性脚部により画定されている。
【0008】
本発明による固定構造は、好ましくは、前記第2の部材は樹脂成形品であり、前記係止片はゴム状弾性材により構成されていて前記第2の部材と一体成形されている。
【0009】
本発明による固定構造は、好ましくは、前記第2の部材はカップ収容部を備えたゴム状弾性材製のカップ受け部材であり、前記第1の部材は、前記カップ受け部材を保持し、車体に取り付けられる剛体製の筐体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による固定構造によれば、第2の部材(例えば、成形品であるカップ受け部材)に形成された可撓性の係止片を第1の部材(例えば、固定対象物である筐体)に形成された貫通孔に通し、当該係止片を第1の部材の部材固定面とは反対の面に沿う方向に屈曲させて第1の部材の引っ掛け部に引っ掛けることにより、第2の部材が第1の部材に固定されるから、係止片の大きさに対して貫通孔を大きくでき、組み付け時の位置合わせが容易で、セットし易くなる。しかも、係止片は反対面に沿う方向に屈曲されて引っ掛け部に引っ掛るから、係止片が外方へ突出せず、第1の部材の周りに大きスペースを必要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による固定構造を車載用カップホルダのカップ受け部材の筐体に対する固定に適用した実施形態を、図1〜図6を参照して説明する。
【0012】
車載用カップホルダは、ポリプロピレン等の硬質プラスチックスによる剛体製の上部開口の筐体10と、筐体10に枢軸12周りに回動可能に取り付けられて筐体10の上部開口を開閉する蓋体14と、カップ収容部32を備えたカップ受け部材30によって構成されている。筐体10は、自動車の車体にボルト等によって取り付けられるものであり、取付片部16を一体に有する。
【0013】
カップ受け部材30は、全体を、ゴム状弾性材、例えば熱可塑性エラストマ、好ましくはオレフィン系熱可塑性エラストマにより構成された射出成形品である。カップ受け部材20は、筐体10の上部開口より筐体10のカップ受け部材収容部18内に入れられ、上部4箇所に設けられた係止片34と、底部2箇所に設けられた係止片36によって筐体10に固定されている。
【0014】
係止片34、係止片36は、ともに、カップ受け部材30のカップ収容部32を含む本体部分と一体成形され、当該本体部分と同じゴム状弾性材によって構成されている。これにより、係止片34、係止片36は、可撓性、ゴム状弾性を有する。
【0015】
係止片34は、係止孔34Aを貫通開口形成されており、係止孔34Aを筐体10の上縁部に一体成形されている係止爪部20に引っ掛けられることにより、カップ受け部材30の上部を筐体10の上部に固定する。このように、係止片34が係止爪部20に引っ掛けられるだけで、工具を必要とすることなく、ワンタッチで、カップ受け部材30の上部が筐体10の上部に固定される。
【0016】
つぎに、本実施形態の要部である係止片36によるカップ受け部材30の筐体10に対する固定について詳細の説明する。
【0017】
筐体10のカップ受け部材固定面部であるカップ受け部材収容部18の底部22には矩形の比較的大きい貫通孔(開口)24が貫通形成されている。底部22の上面22Aがなす部材固定面とは反対の面、つまり下底面22Bには、引っ掛け部として、鈎形の係止突起26が突出形成(一体成形)されている。
【0018】
本実施形態では、係止突起26は貫通孔24の一つの縁部に一致する位置に設けられている。また、係止突起26が設けられている下底面22Bは、他の部分の下底面22Cより一段低くなっている。
【0019】
係止片36は、カップ受け部材30のカップ収容部32の下底面32Aより下方に突出形成(一体成形)された薄い舌片状をなしている。係止片36は、根元側に係止用の開口36Aを有し、開口36Aより先端側が作業者の指先で摘まれる摘み片部36Bになっている。開口36Aの左右両側は、くの字形の折曲形状をした伸縮性を有する左右一対の弾性脚部36Cにより画定されている。
【0020】
カップ受け部材30の底部が筐体10のカップ受け部材収容部18の底部22上に設置されると、係止片36は貫通孔24を貫通する。そして、摘み片部36Bを指先で摘み、係止片36の開口36Aに係止突起26を通し、係止片36を筐体10の下底面22Bに沿う方向に90度屈曲させ、弾性脚部36Cの伸長変形のもとに、係止片36を係止突起26に引っ掛り係合させる。
【0021】
これにより、カップ受け部材30の底部が、工具を必要とすることなく、ワンタッチで、筐体10のカップ受け部材収容部18の底部22に固定される。係止片36が筐体10の下底面22Bに沿う方向に屈曲された状態は、係止片36が係止突起26の鈎形のオーバハング26Aに係合することで、確実に維持される。
【0022】
上述の固定構造によれば、係止片36の係止突起26に対する引っ掛け係合に関して、貫通孔24の大きさの影響を受けないので、係止片36の大きさに対して貫通孔24を十分大きくできる。このことにより、カップ受け部材30の組み付け時の位置合わせが容易になり、セットし易くなる。
【0023】
しかも、係止片36は筐体10の下底面22Bに沿う方向に屈曲されて係止突起26に引っ掛るから、固定完了状態で、係止片36が外方へ突出せず、筐体10の周りに大きスペースを必要しない。このことは、スペース的な制約が多い車載のカップホルダにおいて、特に有用である。
【0024】
なお、本発明による固定構造は、カップ受け部材30の固定に限られるものではなく、種々の部品の固定に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による固定構造を車載用カップホルダに適用した一つの実施形態を示す鳥瞰斜視図である。
【図2】本発明による固定構造を車載用カップホルダに適用した一つの実施形態を示す蛙瞰斜視図である。
【図3】本発明による固定構造を適用した車載用カップホルダのカップ受け部材の一つの実施形態を示す蛙瞰斜視図である。
【図4】本実施形態による固定構造の係止片の拡大図である。
【図5】(a)、(b)は本実施形態による固定構造の要部の仮置き状態、固定完了状態の拡大斜視図である。
【図6】本実施形態による固定構造の要部の拡大断面図である。
【図7】(a)、(b)は固定構造の従来例の仮置き状態、固定完了状態の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 筐体
14 蓋体
18 カップ受け部材収容部
20 係止爪部
24 貫通孔
26 係止突起
30 カップ受け部材
32 カップ収容部
34、36 係止片
36A 開口
36C 弾性脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の部材固定面部に第2の部材を固定するための固定構造であって、
前記部材固定面部には貫通孔が貫通形成され、当該部材固定面部の一方の面がなす部材固定面とは反対の面には引っ掛け部が形成されており、
前記第2の部材には可撓性を有する係止片が形成されており、
前記第2の部材が前記第1の部材の前記部材固定面上に設置され、前記係止片は前記貫通孔を貫通し、前記部材固定面とは反対の面に沿う方向に屈曲されて前記引っ掛け部に引っ掛り、当該引っ掛りによって第1の部材の部材固定面部に第2の部材が固定される固定構造。
【請求項2】
前記引っ掛け部は前記反対の面に突出形成された鈎形の係止突起であり、前記係止片は、前記係止突起が貫通する開口を有し、当該開口に前記係止突起を通した状態で、前記反対の面に沿う方向に屈曲されて前記係止突起に引っ掛り係合している請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記開口の左右両側は、くの字形の折曲形状をした左右一対の弾性脚部により画定されている請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記第2の部材は樹脂成形品であり、前記係止片はゴム状弾性材により構成されていて前記第2の部材と一体成形されている請求項1から3の何れか一項に記載の固定構造。
【請求項5】
前記第2の部材はカップ収容部を備えたゴム状弾性材製のカップ受け部材であり、前記第1の部材は、前記カップ受け部材を保持し、車体に取り付けられる剛体製の筐体である請求項1から4の何れか一項に記載の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216119(P2009−216119A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57907(P2008−57907)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】