固定構造
【課題】火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、構造部材に固定部材を固定した状態を維持できる固定構造を提供する。
【解決手段】柱12を構成する燃え代層26の外周面に固定部材14が固定され、この固定部材14に燃え止まり部材16が設けられている。これにより、火災時及び火災終了後において、柱12に固定部材14を固定した状態を維持することができる。
【解決手段】柱12を構成する燃え代層26の外周面に固定部材14が固定され、この固定部材14に燃え止まり部材16が設けられている。これにより、火災時及び火災終了後において、柱12に固定部材14を固定した状態を維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や梁に固定部材を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木造の柱や梁として、燃え止まり機能を備えた耐火構造部材が提案されている。例えば、特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層とを有する複合木質構造材が開示されている。
【0003】
このような耐火構造部材の柱において、例えば、柱を構成する燃え代層の外周面にスタッド等の固定部材を固定し、建物の部屋空間を区画する壁ボードをこの固定部材で支持する場合、火災時においては、燃え代層が燃焼してこの固定が取れてしまい、壁ボードを支持する機能を果たせなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、構造部材に固定部材を固定した状態を維持できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた柱と、前記燃え代層又は前記柱心材の外周面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、燃え止まり部材が熱を吸収することにより、固定部材が固定される固定部分(燃え止まり部材が設けられた固定部材が接する燃え代層の部分、固定部材が接する燃え代層の部分に設けられた燃え止まり部材、又は燃え止まり部材が設けられた固定部材が接する柱心材の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分が着火温度に達して燃焼することを防ぐ。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての柱を構成する燃え代層又は柱心材の外周面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、前記梁心材の上面に設けられたコンクリート製の床版と、前記燃え代層又は前記梁心材の側面又は下面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1と同様の作用により、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁を構成する燃え代層又は梁心材の側面又は下面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、前記燃え代層又は前記梁心材の外周面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1と同様の作用により、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁を構成する燃え代層又は梁心材の外周面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記燃え止まり部材は、前記固定部材に設けられ、加熱されることにより前記燃え止まり層へ向って膨張する固定構造である。
【0013】
請求項4に記載の発明では、所定時間後に燃え代層が燃焼した場合、固定部材に設けられた燃え止まり部材が加熱されて燃え止まり層へ向かって膨張する。これにより、この燃え代層の燃焼により形成される隙間を無くす、又は低減することができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、この隙間から進入する火炎や熱の進入を防ぐ、又はこの隙間から進入する火炎や熱を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、構造部材に固定部材を固定した状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固定構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固定構造を示す平面断面図である。
【図3】従来の固定構造の問題点を説明する平面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る固定構造を示す平面断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る固定構造を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す側面断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す側面断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す正面断面図及び側面断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す正面断面図及び側面断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0017】
図1の斜視図に示すように、固定構造10は、柱12と、床版(不図示)上に略鉛直に立設された固定部材としてのスタッド14と、燃え止まり部材16とを有している。
【0018】
スタッド14には、対向して配置された壁ボード18、20が、釘やネジ等により固定されている。これにより、壁ボード18、20は、床スラブ(不図示)上に略鉛直な面を形成するようにスタッド14によって支持され、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁を構成している。
【0019】
スタッド14は、軽鉄製のC形鋼であり、壁ボード18、20は、繊維混入けい酸カルシウム、モルタル、セラミックファイバー、軽量気泡コンクリート等により形成されたボード、石膏ボード、強化石膏ボード、又は化粧板等からなる耐火ボードである。
【0020】
図2の平面断面図に示すように、柱12は、荷重を支持する木製の柱心材22と、柱心材22の外周を取り囲む燃え止まり層24と、燃え止まり層24の外周を取り囲む木製の燃え代層26とを備えている。燃え止まり層24は、吸熱性を有している。
【0021】
スタッド14は、固定手段としての釘28により、燃え代層26の外周面に固定されている。これによって、スタッド14は燃え代層26の外周面に密着している。なお、スタッド14は燃え代層26の外周面に接触していればよい。
【0022】
また、釘28は、略鉛直方向に対して複数設けられており、各釘28の先端部は、柱心材22に達している。これによって、スタッド14に作用する荷重を、荷重を支持する柱心材22へ確実に伝達することができる。すなわち、スタッド14は、柱12に確実に固定されている。
【0023】
スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材16が設けられている。燃え止まり部材16は、吸熱性を有している。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態の固定構造10では、図2に示すように、火災時において、火炎が燃え代層26に着火し、燃え代層26が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層26は炭化する。よって、柱12の外部から柱心材22への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層26が遮断し、燃え止まり層24が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材22の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、柱心材22を着火温度未満に抑え、柱心材22を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0026】
また、固定構造10では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分30(燃え止まり部材16が設けられたスタッド14が接する燃え代層26の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分30が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての柱12(燃え代層26の外周面)にスタッド14を固定した状態を維持できる。
【0027】
また、図3(a)の平面断面図に示すような、燃え止まり部材16が設けられていないスタッド14を柱12に固定している固定構造32においては、燃え代層26が燃焼することにより、図3(b)の平面断面図に示すように、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間に隙間Sができてしまう。これにより、矢印34のように、防火区画を超えて隣接する区画に火炎や熱が進行してしまうので、壁ボード18、20が防火区画として機能しなくなってしまう。また、燃え代層26が燃焼することにより、柱12からスタッド14が取れてしまい、壁ボード18、20が倒れてしまったり、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間に隙間ができてしまったりする。
【0028】
これに対して固定構造10では、先に説明したように、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間の間、構造部材としての柱12にスタッド14を固定した状態を維持できるので、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁として壁ボード18、20を機能させることができる。
【0029】
以上、本発明の第1の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0030】
なお、本発明の第1の実施形態では、図2で示したように、燃え止まり部材16をスタッド14の内側に設けた例を示したが、燃え止まり部材16は、固定部材としてのスタッド14に接する燃え代層26の部分に設けてもよい。すなわち、図4に示すように、固定構造10における固定部分30を燃え止まり部材16とした固定構造36としてもよい。
【0031】
固定構造36では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分30(燃え止まり部材16)の温度上昇を抑制し、着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0033】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。第2の実施形態の固定構造38では、図5(a)の平面断面図に示すように、スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材としての膨張部材40が設けられている。膨張部材40は、吸熱性を有するとともに、加熱されることにより膨張する。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0035】
本発明の第2の実施形態の固定構造38では、図5(b)の平面断面図に示すように、所定時間後に燃え代層26が燃焼した場合、加熱されることにより膨張部材40が燃え止まり層24へ向かって膨張する。これにより、この燃え代層26の燃焼により形成される、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間の隙間を無くす、又は低減することができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、この隙間から進入する火炎や熱の進入を防ぐ、又はこの隙間から進入する火炎や熱を低減することができる。
【0036】
以上、本発明の第2の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0037】
なお、膨張部材40は、吸熱性を有し且つ加熱されることにより燃え止まり層24へ向かって膨張するものであればよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0039】
第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図6の側面断面図に示すように、固定構造42は、梁44と、固定部材としてのスタッド14と、燃え止まり部材16とを有している。
【0040】
スタッド14には、対向して配置された壁ボード18、20が、釘やネジ等により固定されている。これにより、壁ボード18、20は、床スラブ(不図示)上に略鉛直な面を形成するようにスタッド14によって支持され、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁を構成している。壁ボード18、20は、梁44の梁長方向と略平行な略鉛直面を形成するように配置されている。
【0041】
梁44は、荷重を支持する木製の梁心材46と、柱心材46の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層48と、燃え止まり層48の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層50とを備えている。燃え止まり層48は、吸熱性を有している。
【0042】
梁44の上面には、鉄筋コンクリート製の床版66が設けられている。すなわち、梁心材46、燃え止まり層48、及び燃え代層50の上面に、床版66が設けられている。
【0043】
スタッド14は、梁44の梁長方向へ沿って配置され、固定手段としての釘28により燃え代層50の下面に固定されている。これによって、スタッド14は燃え代層50の下面に密着している。なお、スタッド14は燃え代層50の下面に接触していればよい。
【0044】
また、釘28は、梁44の梁長方向に対して複数設けられており、各釘28の先端部は、梁心材46に達している。これによって、スタッド14に作用する荷重を、荷重を支持する梁心材46へ確実に伝達することができる。すなわち、スタッド14は、梁44に確実に固定されている。
【0045】
スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材16が設けられている。燃え止まり部材16は、吸熱性を有している。
【0046】
次に、本発明の第3の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0047】
本発明の第3の実施形態の固定構造42では、図6に示すように、火災時において、火炎が燃え代層50に着火し、燃え代層50が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層50は炭化する。よって、梁44の外部から梁心材46への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層50と床版66とが遮断し、燃え止まり層48が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材46の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材46を着火温度未満に抑え、梁心材46を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0048】
また、固定構造42では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分52(燃え止まり部材16が設けられたスタッド14が接する燃え代層50の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分52が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁44(燃え代層50の下面)にスタッド14を固定した状態を維持できる。
【0049】
また、固定構造42では、先に説明したように、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間の間、構造部材としての梁44にスタッド14を固定した状態を維持できるので、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁として壁ボード18、20を機能させることができる。
【0050】
以上、本発明の第3の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0051】
なお、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、燃え止まり部材16をスタッド14の内側に設けた例を示したが、燃え止まり部材16は、固定部材としてのスタッド14に接する燃え代層50の部分に設けてもよい。すなわち、図7の側面断面図に示すように、固定構造42における固定部分52を燃え止まり部材16とした固定構造54としてもよい。
【0052】
固定構造54では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層50の固定部分(燃え止まり部材16)の温度上昇を抑制し、着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。
【0053】
また、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、燃え止まり層48が、梁心材46の側面と下面とを取り囲み、燃え代層50が、燃え止まり層48の側面と下面とを取り囲む例を示したが、図8の側面断面図に示すように、燃え止まり層48が、梁心材46の外周を取り囲み、燃え代層50が、燃え止まり層48の外周を取り囲むようにしてもよい。
【0054】
また、本発明の第3の実施形態では、壁ボード18、20を、梁44の梁長方向と略平行な鉛直面を形成するように配置した例を示したが、図9(a)、(b)、及び図10(a)、(b)に示すように、壁ボード18、20を、梁44の梁長方向と略直交する略鉛直面を形成するように配置してもよい。図9(a)の正面断面図、及び図9(a)のA−A断面図である図9(b)には、固定構造58が描かれており、図10(a)の正面断面図、及び図10(a)のB−B断面図である図10(b)には、固定構造60が描かれている。
【0055】
また、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、固定部材としてのスタッド14を梁44を構成する燃え代層50の下面に固定した例を示したが、スタッド14は、燃え代層50の側面に固定してもよいし、図8の場合には、燃え代層50の上面に固定してもよい。
【0056】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0057】
なお、第1、第3の実施形態では、固定部材としてのスタッド14を燃え代層26、50の外周面に固定した例を示したが、図11の拡大図に示すように、固定部材は、柱心材22や梁心材46の外周面に固定するようにしてもよい。これにより、燃え止まり部材16が熱を吸収することによって、スタッド14が固定される柱心材22又は梁心材46の固定部分62の温度上昇を抑制し、この固定部分62が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。なお、壁ボード18、20の外表面と、燃え止まり層24、48、及び燃え代層26、50との間の目地は、融解温度が高く耐火性を有するシール材64により塞いで、目地から熱が進入するのを防ぐのが好ましい。
【0058】
また、第1〜第3の実施形態では、固定部材をスタッド14とした例を示したが、固定部材は、柱や梁に固定されるさまざまな部材とすることができる。例えば、固定部材を、防火扉や防火シャッターの枠部材、スイッチボックス等の設備が取り付けられる下地材等としてもよい。
【0059】
図12、13の平面断面図には、固定部材を防火扉70の枠部材68とした例が示されている。図12では、燃え止まり部材16が枠部材68に設けられて一体化されている。また、図13では、枠部材68に接する燃え代層26の部分に燃え止まり部材16が設けられている。
【0060】
また、第1〜第3の実施形態では、釘28によって、固定部材としてのスタッド14を柱12の燃え代層26、柱心材22や、梁44の燃え代層50、梁心材46の外周面に固定した例を示したが、他の方法で固定してもよい。例えば、ネジ、接着剤により固定してもよいし、燃え代層に形成した凹部に固定部材を挿入して固定してもよい。
【0061】
また、第1〜第3の実施形態で示した柱心材20、梁心材46、及び燃え代層26、50は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材20、梁心材46、及び燃え代層26、50は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材や梁材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0062】
また、燃え止まり層24、48、及び燃え止まり部材16は、熱の吸収が可能な層又は部材であればよい。例えば、燃え止まり層24、48、及び燃え止まり部材16は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0063】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0064】
また、第2の実施形態では、図2で示した燃え止まり部材16を膨張部材40とした例を示したが、図6、8、9、12の燃え止まり部材16を膨張部材40としてもよい。これらの場合には、加熱により膨張部材40が燃え止まり層24、48へ向って膨張するように、横断面におけるスタッド14の開口面が燃え止まり層24、48へ対向するようにして、柱12の燃え代層26、梁44の燃え代層50の外周面に、スタッド14を固定する。
【0065】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10、36、38、42、54、56、58、60 固定構造
12 柱
14 スタッド(固定部材)
16 燃え止まり部材
22 柱心材
24、48 燃え止まり層
26、50 燃え代層
40 膨張部材(燃え止まり部材)
44 梁
46 梁心材
68 枠部材(固定部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や梁に固定部材を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木造の柱や梁として、燃え止まり機能を備えた耐火構造部材が提案されている。例えば、特許文献1には、木材からなる荷重支持層と、荷重支持層の外側に設けられる燃え止まり層と、燃え止まり層の外側に設けられる燃え代層とを有する複合木質構造材が開示されている。
【0003】
このような耐火構造部材の柱において、例えば、柱を構成する燃え代層の外周面にスタッド等の固定部材を固定し、建物の部屋空間を区画する壁ボードをこの固定部材で支持する場合、火災時においては、燃え代層が燃焼してこの固定が取れてしまい、壁ボードを支持する機能を果たせなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−2189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、構造部材に固定部材を固定した状態を維持できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた柱と、前記燃え代層又は前記柱心材の外周面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、燃え止まり部材が熱を吸収することにより、固定部材が固定される固定部分(燃え止まり部材が設けられた固定部材が接する燃え代層の部分、固定部材が接する燃え代層の部分に設けられた燃え止まり部材、又は燃え止まり部材が設けられた固定部材が接する柱心材の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分が着火温度に達して燃焼することを防ぐ。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての柱を構成する燃え代層又は柱心材の外周面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、前記梁心材の上面に設けられたコンクリート製の床版と、前記燃え代層又は前記梁心材の側面又は下面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1と同様の作用により、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁を構成する燃え代層又は梁心材の側面又は下面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、前記燃え代層又は前記梁心材の外周面に固定された固定部材と、前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、を有する固定構造である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1と同様の作用により、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁を構成する燃え代層又は梁心材の外周面に固定部材を固定した状態を維持できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記燃え止まり部材は、前記固定部材に設けられ、加熱されることにより前記燃え止まり層へ向って膨張する固定構造である。
【0013】
請求項4に記載の発明では、所定時間後に燃え代層が燃焼した場合、固定部材に設けられた燃え止まり部材が加熱されて燃え止まり層へ向かって膨張する。これにより、この燃え代層の燃焼により形成される隙間を無くす、又は低減することができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、この隙間から進入する火炎や熱の進入を防ぐ、又はこの隙間から進入する火炎や熱を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、構造部材に固定部材を固定した状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固定構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固定構造を示す平面断面図である。
【図3】従来の固定構造の問題点を説明する平面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る固定構造を示す平面断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る固定構造を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す側面断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す側面断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す正面断面図及び側面断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る固定構造の変形例を示す正面断面図及び側面断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る固定構造の変形例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0017】
図1の斜視図に示すように、固定構造10は、柱12と、床版(不図示)上に略鉛直に立設された固定部材としてのスタッド14と、燃え止まり部材16とを有している。
【0018】
スタッド14には、対向して配置された壁ボード18、20が、釘やネジ等により固定されている。これにより、壁ボード18、20は、床スラブ(不図示)上に略鉛直な面を形成するようにスタッド14によって支持され、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁を構成している。
【0019】
スタッド14は、軽鉄製のC形鋼であり、壁ボード18、20は、繊維混入けい酸カルシウム、モルタル、セラミックファイバー、軽量気泡コンクリート等により形成されたボード、石膏ボード、強化石膏ボード、又は化粧板等からなる耐火ボードである。
【0020】
図2の平面断面図に示すように、柱12は、荷重を支持する木製の柱心材22と、柱心材22の外周を取り囲む燃え止まり層24と、燃え止まり層24の外周を取り囲む木製の燃え代層26とを備えている。燃え止まり層24は、吸熱性を有している。
【0021】
スタッド14は、固定手段としての釘28により、燃え代層26の外周面に固定されている。これによって、スタッド14は燃え代層26の外周面に密着している。なお、スタッド14は燃え代層26の外周面に接触していればよい。
【0022】
また、釘28は、略鉛直方向に対して複数設けられており、各釘28の先端部は、柱心材22に達している。これによって、スタッド14に作用する荷重を、荷重を支持する柱心材22へ確実に伝達することができる。すなわち、スタッド14は、柱12に確実に固定されている。
【0023】
スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材16が設けられている。燃え止まり部材16は、吸熱性を有している。
【0024】
次に、本発明の第1の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0025】
本発明の第1の実施形態の固定構造10では、図2に示すように、火災時において、火炎が燃え代層26に着火し、燃え代層26が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層26は炭化する。よって、柱12の外部から柱心材22への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層26が遮断し、燃え止まり層24が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における柱心材22の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、柱心材22を着火温度未満に抑え、柱心材22を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0026】
また、固定構造10では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分30(燃え止まり部材16が設けられたスタッド14が接する燃え代層26の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分30が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての柱12(燃え代層26の外周面)にスタッド14を固定した状態を維持できる。
【0027】
また、図3(a)の平面断面図に示すような、燃え止まり部材16が設けられていないスタッド14を柱12に固定している固定構造32においては、燃え代層26が燃焼することにより、図3(b)の平面断面図に示すように、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間に隙間Sができてしまう。これにより、矢印34のように、防火区画を超えて隣接する区画に火炎や熱が進行してしまうので、壁ボード18、20が防火区画として機能しなくなってしまう。また、燃え代層26が燃焼することにより、柱12からスタッド14が取れてしまい、壁ボード18、20が倒れてしまったり、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間に隙間ができてしまったりする。
【0028】
これに対して固定構造10では、先に説明したように、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間の間、構造部材としての柱12にスタッド14を固定した状態を維持できるので、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁として壁ボード18、20を機能させることができる。
【0029】
以上、本発明の第1の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0030】
なお、本発明の第1の実施形態では、図2で示したように、燃え止まり部材16をスタッド14の内側に設けた例を示したが、燃え止まり部材16は、固定部材としてのスタッド14に接する燃え代層26の部分に設けてもよい。すなわち、図4に示すように、固定構造10における固定部分30を燃え止まり部材16とした固定構造36としてもよい。
【0031】
固定構造36では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分30(燃え止まり部材16)の温度上昇を抑制し、着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0033】
第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。第2の実施形態の固定構造38では、図5(a)の平面断面図に示すように、スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材としての膨張部材40が設けられている。膨張部材40は、吸熱性を有するとともに、加熱されることにより膨張する。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0035】
本発明の第2の実施形態の固定構造38では、図5(b)の平面断面図に示すように、所定時間後に燃え代層26が燃焼した場合、加熱されることにより膨張部材40が燃え止まり層24へ向かって膨張する。これにより、この燃え代層26の燃焼により形成される、壁ボード18、20の端部(スタッド14)と柱12との間の隙間を無くす、又は低減することができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、この隙間から進入する火炎や熱の進入を防ぐ、又はこの隙間から進入する火炎や熱を低減することができる。
【0036】
以上、本発明の第2の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0037】
なお、膨張部材40は、吸熱性を有し且つ加熱されることにより燃え止まり層24へ向かって膨張するものであればよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態に係る固定構造について説明する。
【0039】
第3の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。図6の側面断面図に示すように、固定構造42は、梁44と、固定部材としてのスタッド14と、燃え止まり部材16とを有している。
【0040】
スタッド14には、対向して配置された壁ボード18、20が、釘やネジ等により固定されている。これにより、壁ボード18、20は、床スラブ(不図示)上に略鉛直な面を形成するようにスタッド14によって支持され、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁を構成している。壁ボード18、20は、梁44の梁長方向と略平行な略鉛直面を形成するように配置されている。
【0041】
梁44は、荷重を支持する木製の梁心材46と、柱心材46の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層48と、燃え止まり層48の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層50とを備えている。燃え止まり層48は、吸熱性を有している。
【0042】
梁44の上面には、鉄筋コンクリート製の床版66が設けられている。すなわち、梁心材46、燃え止まり層48、及び燃え代層50の上面に、床版66が設けられている。
【0043】
スタッド14は、梁44の梁長方向へ沿って配置され、固定手段としての釘28により燃え代層50の下面に固定されている。これによって、スタッド14は燃え代層50の下面に密着している。なお、スタッド14は燃え代層50の下面に接触していればよい。
【0044】
また、釘28は、梁44の梁長方向に対して複数設けられており、各釘28の先端部は、梁心材46に達している。これによって、スタッド14に作用する荷重を、荷重を支持する梁心材46へ確実に伝達することができる。すなわち、スタッド14は、梁44に確実に固定されている。
【0045】
スタッド14の内側には、スタッド14の長手方向に沿って、スタッド14の内周面に接触するように燃え止まり部材16が設けられている。燃え止まり部材16は、吸熱性を有している。
【0046】
次に、本発明の第3の実施形態に係る固定構造の作用と効果について説明する。
【0047】
本発明の第3の実施形態の固定構造42では、図6に示すように、火災時において、火炎が燃え代層50に着火し、燃え代層50が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層50は炭化する。よって、梁44の外部から梁心材46への熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層50と床版66とが遮断し、燃え止まり層48が吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材46の温度上昇を抑制することができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材46を着火温度未満に抑え、梁心材46を燃焼させずに燃え止まらせて、構造体として機能させることができる。
【0048】
また、固定構造42では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層26の固定部分52(燃え止まり部材16が設けられたスタッド14が接する燃え代層50の部分)の温度上昇を抑制し、この固定部分52が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。これにより、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、構造部材としての梁44(燃え代層50の下面)にスタッド14を固定した状態を維持できる。
【0049】
また、固定構造42では、先に説明したように、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間の間、構造部材としての梁44にスタッド14を固定した状態を維持できるので、建物の部屋空間を防火区画する仕切り壁として壁ボード18、20を機能させることができる。
【0050】
以上、本発明の第3の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0051】
なお、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、燃え止まり部材16をスタッド14の内側に設けた例を示したが、燃え止まり部材16は、固定部材としてのスタッド14に接する燃え代層50の部分に設けてもよい。すなわち、図7の側面断面図に示すように、固定構造42における固定部分52を燃え止まり部材16とした固定構造54としてもよい。
【0052】
固定構造54では、燃え止まり部材16が熱を吸収することにより、スタッド14が固定される燃え代層50の固定部分(燃え止まり部材16)の温度上昇を抑制し、着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。
【0053】
また、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、燃え止まり層48が、梁心材46の側面と下面とを取り囲み、燃え代層50が、燃え止まり層48の側面と下面とを取り囲む例を示したが、図8の側面断面図に示すように、燃え止まり層48が、梁心材46の外周を取り囲み、燃え代層50が、燃え止まり層48の外周を取り囲むようにしてもよい。
【0054】
また、本発明の第3の実施形態では、壁ボード18、20を、梁44の梁長方向と略平行な鉛直面を形成するように配置した例を示したが、図9(a)、(b)、及び図10(a)、(b)に示すように、壁ボード18、20を、梁44の梁長方向と略直交する略鉛直面を形成するように配置してもよい。図9(a)の正面断面図、及び図9(a)のA−A断面図である図9(b)には、固定構造58が描かれており、図10(a)の正面断面図、及び図10(a)のB−B断面図である図10(b)には、固定構造60が描かれている。
【0055】
また、本発明の第3の実施形態では、図6で示したように、固定部材としてのスタッド14を梁44を構成する燃え代層50の下面に固定した例を示したが、スタッド14は、燃え代層50の側面に固定してもよいし、図8の場合には、燃え代層50の上面に固定してもよい。
【0056】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態に係る固定構造について説明した。
【0057】
なお、第1、第3の実施形態では、固定部材としてのスタッド14を燃え代層26、50の外周面に固定した例を示したが、図11の拡大図に示すように、固定部材は、柱心材22や梁心材46の外周面に固定するようにしてもよい。これにより、燃え止まり部材16が熱を吸収することによって、スタッド14が固定される柱心材22又は梁心材46の固定部分62の温度上昇を抑制し、この固定部分62が着火温度に達して燃焼することを防ぐことができる。なお、壁ボード18、20の外表面と、燃え止まり層24、48、及び燃え代層26、50との間の目地は、融解温度が高く耐火性を有するシール材64により塞いで、目地から熱が進入するのを防ぐのが好ましい。
【0058】
また、第1〜第3の実施形態では、固定部材をスタッド14とした例を示したが、固定部材は、柱や梁に固定されるさまざまな部材とすることができる。例えば、固定部材を、防火扉や防火シャッターの枠部材、スイッチボックス等の設備が取り付けられる下地材等としてもよい。
【0059】
図12、13の平面断面図には、固定部材を防火扉70の枠部材68とした例が示されている。図12では、燃え止まり部材16が枠部材68に設けられて一体化されている。また、図13では、枠部材68に接する燃え代層26の部分に燃え止まり部材16が設けられている。
【0060】
また、第1〜第3の実施形態では、釘28によって、固定部材としてのスタッド14を柱12の燃え代層26、柱心材22や、梁44の燃え代層50、梁心材46の外周面に固定した例を示したが、他の方法で固定してもよい。例えば、ネジ、接着剤により固定してもよいし、燃え代層に形成した凹部に固定部材を挿入して固定してもよい。
【0061】
また、第1〜第3の実施形態で示した柱心材20、梁心材46、及び燃え代層26、50は、木材によって形成されていればよい。例えば、柱心材20、梁心材46、及び燃え代層26、50は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる柱材や梁材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を角柱状の単材に加工し、この単材を複数集成し単材同士を接着剤により接着して一体化することによって形成してもよい。
【0062】
また、燃え止まり層24、48、及び燃え止まり部材16は、熱の吸収が可能な層又は部材であればよい。例えば、燃え止まり層24、48、及び燃え止まり部材16は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい。
【0063】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0064】
また、第2の実施形態では、図2で示した燃え止まり部材16を膨張部材40とした例を示したが、図6、8、9、12の燃え止まり部材16を膨張部材40としてもよい。これらの場合には、加熱により膨張部材40が燃え止まり層24、48へ向って膨張するように、横断面におけるスタッド14の開口面が燃え止まり層24、48へ対向するようにして、柱12の燃え代層26、梁44の燃え代層50の外周面に、スタッド14を固定する。
【0065】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10、36、38、42、54、56、58、60 固定構造
12 柱
14 スタッド(固定部材)
16 燃え止まり部材
22 柱心材
24、48 燃え止まり層
26、50 燃え代層
40 膨張部材(燃え止まり部材)
44 梁
46 梁心材
68 枠部材(固定部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた柱と、
前記燃え代層又は前記柱心材の外周面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項2】
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、
前記梁心材の上面に設けられたコンクリート製の床版と、
前記燃え代層又は前記梁心材の側面又は下面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項3】
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、
前記燃え代層又は前記梁心材の外周面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項4】
前記燃え止まり部材は、前記固定部材に設けられ、加熱されることにより前記燃え止まり層へ向って膨張する請求項1〜3の何れか1項に記載の固定構造。
【請求項1】
荷重を支持する木製の柱心材と、前記柱心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた柱と、
前記燃え代層又は前記柱心材の外周面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項2】
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の側面と下面とを取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の側面と下面とを取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、
前記梁心材の上面に設けられたコンクリート製の床版と、
前記燃え代層又は前記梁心材の側面又は下面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項3】
荷重を支持する木製の梁心材と、前記梁心材の外周を取り囲む燃え止まり層と、前記燃え止まり層の外周を取り囲む木製の燃え代層とを備えた梁と、
前記燃え代層又は前記梁心材の外周面に固定された固定部材と、
前記固定部材又は前記固定部材に接する前記燃え代層に設けられた燃え止まり部材と、
を有する固定構造。
【請求項4】
前記燃え止まり部材は、前記固定部材に設けられ、加熱されることにより前記燃え止まり層へ向って膨張する請求項1〜3の何れか1項に記載の固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−225130(P2012−225130A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96412(P2011−96412)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]