説明

固定用フォークジョイント、及び該ジョイントによる支持体へのパーツ搭載システム

支持体(2)上にパーツ(1)を固定するための本発明によるフォークジョイント(4)は、支持体に押し付けることができる2つのベアリング領域(411、421)、及びパーツの固定要素(13)をクランプ留めするための2つのウイング部(412、422)を備え、ウイング部は固定要素の両側でボルト(3)によって締め付けられる。各ウイング部がそれぞれ1つのベアリング領域に剛性を有して連結され、2つのベアリング領域は半剛性を有する連結部(43)により互いに連結される。このような半剛性を有する連結部は、寸法変動に起因して発生する制約力を受けると、ボルトの軸方向へ座屈することにより変形することが可能であり、2つのウイング部が互いに対してほぼ平行に保持される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、固定用フォークジョイント、及び該フォークジョイントにより支持体にパーツを搭載するシステムに関する。
【0002】
多くの搭載方法、特に自動車の分野の搭載方法においては、一般的に、比較的精密な調整を必要とする相対的配置が要求される制約の下で、2つ以上のパーツを搭載しなければならない。自動車の分野では、例えば、車体の構造壁又はエンジンの要素のような何らかの支持体等に対して、結合分岐部等のパーツを保持させるという問題がある。さらに、このパーツを、別のアセンブリ、例えば結合分岐部が連結される排気マニホルドフランジに連結しなければならない。
このような、特に「支柱形成(propping)による搭載」と呼ばれる搭載方法を実現するためには、一般的に、概ねU字型のフォークジョイントが使用される。前記例におけるフォークジョイントの基部はネジによって支持体に固定され、保持されるパーツは、フォークジョイントのU字を形成するウイング部の間にうまく挿入されるように形成された固定部を備えている。ボルトが前記2つのウイング部及び前記固定部を貫通するように設けられた貫通孔内に入り、締め付けられることにより、フォークジョイントの両ウイング部の間に固定部がクランプ留めされる。
【0003】
第一の問題は、他のパーツ又はアセンブリ、例えば前記マニホルドフランジ等に対して固定されるパーツの正確な位置決めを確実に行うこと、並びに不可避的な寸法のばらつきによりこのフランジが必ずしも常に同じ場所に配置されるわけではないとしても、フォークジョイントが固定される支持体に対して、パーツの保持を確実に行うことである。通常、フォークジョイントに設けられる孔部に固定用ネジが通る位置に一定の遊びを残すことができ、それによってこの支持体の面に対する位置決めのばらつきが許容される。同様に、フォークジョイントにパーツを搭載するためのボルトと、フォークジョイントのウイング部の穴又はパーツの穴との間にも一定の遊びを残すことができ、これによって支持体に対するフォークジョイントの固定面に垂直な方向における位置決めのばらつきを許容することができる。しかしながら、1つの欠点は、支持体に対してパーツを正確に及び最終的に位置決めすること無しに、又はそのような正確且つ最終的な位置合わせの前に、前記支持体上でのフォークジョイントの保持及び少なくともフォークジョイントの位置決めを確実に行うために、複雑なアセンブリ治具を使用しなければならないことである。
【0004】
別の問題は、フォークジョイントのウイング部の間隔の寸法のばらつきと、ウイング部間に挿入してクランプ留めすべきパーツの固定部の、幅及びボルト軸の方向のばらつきとによって発生する。この幅がウイング部間の間隔に比べて小さ過ぎると、ボルトを締め付けた際にこれらウイング部にかかる応力が甚大なものになり、ウイング部の破損に繋がる可能性がある。この問題を回避するために逆にこれらの遊びを小さくすると、パーツをフォークジョイントに無理に挿入しなければならないことになって、ウイング部に応力を発生させ、これにより搭載作業が複雑になる。
これらの問題を避けるため、フォークジョイントに代えて2つの支柱又はアングルブラケットを使用することが既知であり、この場合2つの支柱又はアングルブラケットがフォークジョイントの2つのウイング部の代わりとなる。これら2つの支柱は互いに独立であり、クランプ留めにより、パーツの固定部分に機械的応力を発生させることなく搭載することが可能となる。しかし、この場合、支持体に固定するパーツの数が2つになり、それらの相対的な位置決めという新たな課題が生じる。これらのパーツは、ボルトを締め付けた後にのみ固定される。従って、アセンブリの間において各支柱をそれぞれ一時的に所定の位置に保持しなければならず、よって組立工程が複雑になる。
【0005】
本発明の目的は、これらの問題を解決し、特に取り付けが単純なフォークジョイントにより支持体上にパーツを搭載するための、安価で、且つ搭載されるパーツ又はフォークジョイントに応力を発生させないシステムを提供することである。また、本発明は、このようなシステムに適合するように形成されたフォークジョイントであって、使用環境を修正する必要なく先行技術によるフォークジョイントの代わりとなり、且つ組立工程が大幅に容易になるようなフォークジョイントを提供するものである。
これらの目的に鑑み、本発明は、支持体に対してパーツを固定するためのフォークジョイントであり、本フォークジョイントは、支持体にクランプ留めされる2つのベアリング領域と、ボルトによってパーツの固定部分の両側にクランプ留めされる2つのウイング部とを備え、各ウイング部がそれぞれ1つのベアリング領域に剛性を有して連結され、2つのベアリング領域が互いに半剛性を有して連結され、この半剛性を有する連結部が、応力が作用したときに特に座屈により変形することが可能なことにより、ウイング部間の、ボルト軸の方向への距離の変化が許容されると同時に、2つのほぼ平行なウイング部が確実に互いに所定の位置に保持されることを特徴とする。
【0006】
このように、半剛性を有する連結部が変形可能であることにより、ボルトを締めた際に、2つのウイング部が互いに接近することができるので、パーツの固定部の幅に正確に対応してパーツを所定の位置にクランプ留めすることができる。更に、従来のフォークジョイントではウイング部がクランプ留めされていることによりそれらが互いに近づくとウイング部及び/又はフォークジョイントの基部に少なくとも曲げ応力が必然的に発生していたことに対して、搭載部、特にフォークジョイントに応力が発生するのを避けることができる。
しかしながら、応力が半剛性を有する連結部にのみ作用するものであれば、全てのネジを締め付けた後では、各ベアリング領域がその他の部位及び搭載部から独立に支持体に固定され、実質的には連結部が存在しない場合と同様に動作するため、これらの応力は搭載部の強度に対していかなる害も与えない。
【0007】
好適には、半剛性を有する連結部は平坦なスチール片である。
また好適には、応力を受けたときに変形し易いように、半剛性を有する連結部は予めS字型に変形されている。
【0008】
他の特定の構成によれば、
−ベアリング領域及びウイング部は、バックルプレートから形成される。
−半剛性を有する連結部は、ベアリング領域に溶接される。
−ウイング部の一方は、搭載用ボルトを受けるための溶接されたナットを備える。
本発明の課題は、前記フォークジョイントを用いて支持体上にパーツを搭載するためのシステムを提供することである。本システムは、支持体が、同一平面内にその表面を有し、支持体上でフォークジョイントのベアリング領域を受けるように形成された2つの隆起部を備えることを特徴とする。これらの隆起部は支持体の表面の残りの部分から突出しているので、連結部が屈曲する際に支持体に接触してフォークジョイントの締め付けを妨害しないように、アセンブリ内で発生する連結部の無制限な変形を許容する。
【0009】
ボルトを締め付けたときにフォークジョイントの2つのベアリング領域を互いに接近可能とするために、支持体へのクランプ留めに用いる連結用ネジと、これらのネジ用にフォークジョイントに設けられた孔部との間に、最小限の遊びを設けることが必要である。
他の特徴及び利点は、本発明によるフォークジョイント、及び直角フランジによりパイプを固定するためのこれら機械要素の使用方法に係る実施例に関する後述の説明により明らかになるであろう。
【実施例】
【0010】
図1はパーツの搭載状態を示し、本実施例の場合、支持体2に直角パイプ1が搭載されている。本パイプはフランジ11を備え、このフランジは、アセンブリ、例えば排気マニホルド(図示しない)の対応するフランジ12に固定される。
パイプ1は、パイプ1と一体に形成された固定部13を更に備えており、この固定部はほぼ円筒形の長いチューブ形状に形成され、軸方向に固定用ボルト3を通す孔部が貫通している。
【0011】
固定用フォークジョイント4は、例えばバックルスティールプレート(buckled steel plate)から形成されたアングルブラケット41、42として与えられる2つの部材から構成されており、アングルブラケットは半剛性を有する連結部43によって連結されている。
各アングルブラケット41、42は、それぞれベアリング領域411、421を構成する部分を備えており、これらのベアリング領域は支持体の隆起部21に当接するように配置され、ネジ51a、51bによって支持体2に固定される。前記ベアリング領域に設けられた孔部52の直径はネジ51a、51bの直径より十分に大きいので、ネジ51a、51bは孔部52を貫通し、孔部52とネジ51a、51bとの間にずれがある位置でネジを締め付けることができる。
【0012】
各アングルブラケット41、42は、ベアリング領域に対して垂直に延び、ベアリング領域に剛性を有して連結し、またフォークジョイント4の各ウイング部412、422を与える壁部を備えており、よってこれらのウイング部は互いに平行である。両ウイング部には孔部31が形成されており、これらの孔部は同軸で、一方のウイング部の孔部は搭載用ボルト3を通し、他方のウイング部はボルトを締め付けるためのナット32を有する。
半剛性を有する連結部43は、厚みの小さな平坦なスチール片から形成されているので、2つのアングルブラケットを互いに接近させる力の作用下で座屈により変形可能であるが、そのような力が作用しない限りアングルブラケット間の連結部は実質的に十分な剛性を有している。このような座屈による変形を容易にするために、図に示すように連結部43は予めS字型に形成され、これによりアングルブラケットを互いに近づけると、特に図3に示されるようにS字の湾曲部だけに力が作用する。
【0013】
搭載は、以下のように行われる。
準備段階において、フォークジョイント4を支持体上に配置するとともにその位置に保持し、ネジ51a、51bによって隆起部21に対して押し付ける。これらのネジは、当面締め付けない。事前の位置決めは、既知の種類の位置決め治具によって行われ、連結対象となるフランジ12に対して、フォークジョイント4、具体的にはそのウイング部412の位置的な調節を行う。この際、パイプ1のフランジ11は、フランジ12との間で位置決めが為される。次いで、第一のネジ51aを締め付ける。
【0014】
パイプ1を組み付けるのに関連して、パイプ1は、フランジ12に対応するフランジ11、及びフォークジョイントのウイング部412と422との間に挿入される固定部13を備えている。ボルト3を所定の位置に配置して、ウイング部422の孔部31、及び固定部13の貫通孔に通し、ウイング部412のナット32にネジ留めしてウイング部を前記固定部13に対して完全にクランプ留めする。このようなクランプ留めの過程において、前述のように連結部43は変形し、これにより2つのアングルブラケット41、42が互いに接近する。支持体2に向けて連結部の一部を局所的に移動させるこのような連結部の変形が、隆起部の存在により支持体2の壁部とフォークジョイントとの間に間隙が残されることにより可能であることに留意されたい。また、2つのアングルブラケットの互いに対する移動を可能にしているのは、ベアリング領域の孔部52とネジ51a、51bとの間に残された遊びであることが重要である。
次に、第二のネジ51bを締め付けて搭載を完了させる。このとき、アングルブラケットのいずれにも応力は発生しておらず、これにより搭載の安定性及び寿命が確実に向上する。
【0015】
本発明は、上述したフォークジョイントの例示的実施例、及びその用途のいずれにも限定されるものではない。本発明には他に多数の用途が可能であり、特に自動車の分野において、全体の寸法に大きく影響し得る寸法のばらつきを必然的に有するパーツを搭載するために、他の用途が可能である。このように、フォークジョイントの異なる部分の形状は、フォークジョイントの2つの部分を連結する半剛性を有する連結部が存在する限り、本発明の範囲から逸脱することなく変更可能である。同様に、ボルトは、機能的に等価な他のあらゆる搭載部材及びクランプ留め部材によって置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】搭載が完了した状態を示す図である。
【図2】フォークジョイントを示す斜視図である。
【図3】フォークジョイントを示す上面図である。
【図4】直角パイプを除く搭載部の構成要素を示す分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(2)上にパーツ(1)を固定するためのフォークジョイントであって、支持体にクランプ留めされる2つのベアリング領域、及びボルト(3)によってパーツの固定部(13)の両側にクランプ留めされる2つのウイング部を備え、
各ウイング部(412、422)がそれぞれ1つのベアリング領域(411、421)に剛性を有して連結され、2つのベアリング領域が互いに半剛性を有して連結されており、この半剛性を有する連結部が、応力が作用したときに座屈により変形可能であることにより、ウイング部間の距離がボルトの軸方向に変化することが可能であり、同時に2つのほぼ平行なウイング部が互いに対して所定の位置に保持されることを特徴とする、フォークジョイント。
【請求項2】
半剛性を有する連結部(43)が平坦なスチール片であることを特徴とする、請求項1に記載の固定用フォークジョイント。
【請求項3】
半剛性を有する連結部(43)が予めS字型の変形を有していることを特徴とする、請求項2に記載の固定用フォークジョイント。
【請求項4】
ベアリング領域(411、421)及びウイング部(412、422)がバックルプレートから一体に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の固定用フォークジョイント。
【請求項5】
半剛性を有する連結部(43)がベアリング領域(411、421)に溶接されていることを特徴とする、請求項1に記載の固定用フォークジョイント。
【請求項6】
ウイング部(412)の一方が、搭載用ボルト(3)を受けるための溶接されたナット(32)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の固定用フォークジョイント。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフォークジョイント(4)により支持体(2)上にパーツ(1)を固定するためのシステムであって、支持体が2つの隆起部を有し、これら隆起部が同一平面内にその表面を有し、且つ支持体上でフォークジョイントのベアリング領域(411、421)を受けるように形成されている、システム。
【請求項8】
支持体にベアリング領域(411、421)をクランプ留めするための固定用ネジ(51a、51b)と、これらネジのためにフォークジョイントに設けられた孔部(52)との間に遊びが残されていることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−525743(P2008−525743A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548874(P2007−548874)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/051097
【国際公開番号】WO2006/072722
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】