固定砥粒ワイヤの製造方法
【課題】メッキ液中にレベリング剤を添加することなく、砥粒のワイヤ本体への固着強度の向上及び砥粒による切削性能又は切断性能の向上を同時に図り得る固定砥粒ワイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含む。
【解決手段】砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解メッキによって砥粒をワイヤに固着させる固定砥粒ワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやセラミック等の硬質材料の切断等に用いられる固定砥粒ワイヤの製造方法として、ワイヤ本体の表面に電解メッキによって砥粒を固着させる方法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記特許文献1には、砥粒群を含有するメッキ液が収容されたメッキ槽内において電極板及びワイヤ本体を対向配置させる工程と、前記電極板が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるように電圧を印可させて、前記ワイヤ本体の表面に砥粒を含んだ状態のメッキ層を析出させる工程とを含む固定砥粒ワイヤの製造方法において、前記メッキ液中にレベリング剤を含有させることが開示されている。
【0004】
前記特許文献1に記載の製造方法は、砥粒群を含有するメッキ液にレベリング剤を含めることにより、砥粒の固着強度を向上させつつ砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得る固定砥粒ワイヤを製造できるとされている。
【0005】
即ち、前記メッキ液中の前記レベリング剤は、陽極として作用する前記電極板に近接する部分、即ち、前記砥粒の頂点近傍に優先的に吸着される。その結果、前記砥粒の頂点近傍におけるメッキ層の成長速度が前記砥粒のうち前記電極板から離間された基端側部分(前記砥粒のうち前記ワイヤ本体に近接する部分)におけるメッキ層の成長速度よりも遅くなる。従って、前記砥粒の基端側部分に比較的厚く析出されるメッキ層によって前記砥粒の固着強度を向上させつつ前記砥粒の頂点近傍のメッキ層を薄くして前記砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得るとされている。
【0006】
しかしながら、前記メッキ液中に前記レベリング剤を加えることで前記砥粒の頂点近傍に析出されるメッキ層の層厚を薄くできる反面、前記砥粒の頂点近傍には前記レベリング剤が吸着されることになるから、このレベリング剤によって前記砥粒による切削性能又は切断性能が悪化するという問題が生じ得る。
【0007】
又、前記特許文献1にも記載されているように、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。従って、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を奏するレベリング剤であっても、これとは異なる大きさ及び形状の砥粒に対して有効にレベリング効果を奏するとは限らない。
【0008】
前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ、固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒を含んでいる。従って、これらの大きさ及び形状の異なる複数の砥粒に対してレベリング剤によって効果的なレベリング効果を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4538049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、砥粒群を含有するメッキ液を用いた電解メッキによって砥粒がワイヤ本体に固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、前記メッキ液中にレベリング剤を添加することなく、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上及び前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を同時に図り得る固定砥粒ワイヤの製造方法の提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成する為に、砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含む固定砥粒ワイヤの製造方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
【0013】
好ましくは、前記逆電解処理工程は、前記ワイヤ本体及び前記電極部材間を流れる電流がパルス電流となるように逆電解電圧を印可するものとされる。
【0014】
より好ましくは、前記パルス電流の周波数は10Hz以上で且つ1200Hz以下、さらに好ましくは、50Hz以上で且つ1000Hz以下とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法によれば、砥粒群を含むメッキ液中に対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して前記砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させ、その後に、メッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させたので、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上を図りつつ、前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を図ることができる。
【0016】
特に、前記メッキ液中にレベリング剤を添加すること無く前記効果を得ることができるので、前記レベリング剤に起因する砥粒の切削性能又は切断性能の悪化を招くことが無く、さらに、種々の粒径及び形状の砥粒を含む砥粒群に対して有効に前記効果を奏することができる。
又、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒を露出させる場合に比して、砥粒の脱落を有効に防止しつつより多くの砥粒を前記メッキ層から露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法に用いられるメッキ槽の模式図である。
【図2】図2(a)は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における正電解処理工程後の状態を示す部分模式断面図である。 図2(b)は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における逆電解処理工程後の状態を示す部分模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法において使用される砥粒群の一例の粒径分布図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における工程模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法に関し行った実験に使用した装置の模式図である。
【図6】図6は、前記実験装置を用いて製造した逆電解前の固定砥粒ワイヤの模式断面図である。
【図7】図7は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対してパルス電流による逆電解処理を行った際の前記パルス電流の波形を示すグラフである。
【図8】図8(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数5Hz、10Hz、20Hz及び50Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例1〜4を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図9】図9(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数80Hz、100Hz、400Hz及び700Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例5〜8を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図10】図10(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数1000Hz、1200Hz、1400Hz及び1750Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例9〜12を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図11】図11は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して直流電流による逆電解処理を行った際の前記直流電流の波形を示すグラフである。
【図12】図12は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、直流電流が流れるように逆電解処理を行った実施例13を電子顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
前記固定砥粒ワイヤは、ダイヤモンド等の砥粒が銅メッキされた炭素鋼等のワイヤ本体に固着されてなるものであり、シリコンやセラミック等の硬質材料の切断又は切削に好適に使用される。
本実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法は、砥粒群を含むメッキ液からなるメッキ層をワイヤ本体に電着させることで前記砥粒群を前記ワイヤ本体に固着させるものである。
【0020】
図1に、本実施の形態に係る製造方法に用いられるメッキ装置の模式図を示す。
前記製造方法は、図1に示すように、正電解電圧槽30内に収容された砥粒群を含むメッキ液10中において電極部材20及びワイヤ本体5を対向配置させた状態で前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるような正電解電圧を印可して前記砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程(図2(a)参照)と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中において対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可することで、前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程(図2(b)参照)とを含んでいる。
【0021】
なお、図1中符号35はメッキ液10のリザーブタンクであり、ポンプ40を介して前記正電解電圧槽30及び前記リザーブタンク35の間で前記メッキ液10が循環されるようになっている。
なお、前記逆電解処理工程は、前記電極部材及び前記ワイヤ本体への電圧印可方向が異なる点を除き、前記正電解処理工程におけるメッキ装置と同一装置を用いて行われる。
【0022】
このように、本実施の形態に係る製造方法によれば、正電解電圧の印可によって前記砥粒15を含む前記メッキ層11を前記ワイヤ本体5の表面に析出させ(図2(a)参照)、その後に、逆電解電圧の印可によって前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させており(図2(b)参照)、従って、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を向上させつつ、前記砥粒15による切削性能又は切断性能を向上させることができる。
この点に関し、詳述する。
【0023】
前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるように正電解電圧を印可して前記ワイヤ本体5の表面に前記砥粒群を含むメッキ層11を析出させる正電解処理工程においては、前記メッキ層11の析出速度は、陽極として作用する前記電極部材20に近い領域ほど速くなる。
【0024】
つまり、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を十分に得るような層厚のメッキ層を形成すると、図2(a)に示すように、前記砥粒群における各砥粒15の頂上部分のメッキ層11の層厚が厚くなる。
前記固定砥粒ワイヤにおける切削作用又は切断作用は前記複数の砥粒15によって奏される為、前記複数の砥粒15の頂上部分に層厚の前記メッキ層11が積層されていると、前記砥粒15による切削能力又は切断能力が悪化する。
【0025】
ここで、正電解電圧の印可によって砥粒を含むメッキ層をワイヤ本体に析出させる際に、前記メッキ層を形成するメッキ液中に予めレベリング剤を添加しておくことで、前記砥粒の頂上部分のメッキ層を薄く、又は、無くすることが従来から提案されている。
【0026】
詳しくは、前記メッキ液中のレベリング剤は、正電解処理の際に陽極として作用する前記電極板に近接する部分、即ち、前記砥粒の頂点近傍に優先的に吸着される。その結果、前記砥粒の頂点近傍におけるメッキ層の成長速度が前記砥粒のうち前記電極板から離間された基端側部分(前記砥粒のうち前記ワイヤ本体に近接する部分)におけるメッキ層の成長速度よりも遅くなる。従って、前記砥粒の基端側部分に比較的厚く析出されるメッキ層によって前記砥粒の固着強度を向上させつつ前記砥粒の頂点近傍のメッキ層を薄くして前記砥粒による切削性能又は切断性能を向上させることができるとされている。
【0027】
しかしながら、前記メッキ液中に前記レベリング剤を加えることで前記砥粒の頂点近傍に析出されるメッキ層の層厚を薄くできる反面、前記砥粒の頂点近傍には前記レベリング剤が吸着されることになる。従って、このレベリング剤によって前記砥粒による切削性能又は切断性能が悪化するという問題が生じ得る。
【0028】
又、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。従って、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を奏するレベリング剤であっても、これとは異なる大きさ及び形状の砥粒に対して有効にレベリング効果を奏するとは限らない。
通常、前記メッキ液中に含まれる砥粒群は、平均粒径によって特定されるが、その大きさ及び形状は互いに対して異なっている。
従って、大きさ及び形状が異なる複数の砥粒に対して有効なレベリング効果を得ることは困難である。
【0029】
さらに、ワイヤ本体の表面に析出されたメッキ層から砥粒を露出させる他の方法として、正電解処理によって砥粒群を含むメッキ層をワイヤ本体の表面に析出させた後に、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部を露出させることが提案されている。
【0030】
しかしながら、この従来方法では、前記砥粒群における20%程度の砥粒しか露出させることができない。
この点に関し、前記砥粒群として、レーザー回析散乱法による平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群を用いる場合を例に説明する。
図3に、前記ダイヤモンド粒子群の粒径分布図を示す。
【0031】
図3に示すように、平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群は、粒子径15μmのダイヤモンド粒子を最も多く含むものの、粒子径10μm以下の粒子から粒子径20μm以上の粒子を含んでいる。
【0032】
このような種々の粒子径の粒子を含むダイヤモンド粒子群に対して例えば粒子径15μmの粒子が露出する程度に研磨処理を行ったとすると、粒子径が15μmより大きな粒子にとっては過研磨状態となる。
【0033】
つまり、研磨処理によってダイヤモンド粒子を露出させる場合には、比較的粒子径の大きな粒子が脱落しないように研磨量を設定する必要があり、例えば、粒子群全体の約20%に相当する粒子径17.5μm以上のダイヤモンド粒子しか露出させることができないことになる。
【0034】
これらの従来技術に対し、本実施の形態に係る前記製造方法は、前述の通り、正電解処理工程の後に、逆電解電圧を印可することで前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させている。
【0035】
この逆電解電圧の印可によって、前記メッキ層11のうち前記電極部材20に近接する部分、即ち、前記複数の砥粒15の頂上部分に積層された部分が優先的に剥離される。
従って、図2(b)に示すように、前記砥粒群を形成する複数の砥粒15の基端側部分については前記メッキ層11によって前記ワイヤ本体5に強固に固着された状態を維持しつつ、前記砥粒群における少なくとも一部の砥粒15の頂上部分を露出させて前記砥粒15による切削能力又は切断能力を向上させることができる。
【0036】
特に、本実施の形態においては、前記メッキ液10中にレベリング剤を添加すること無く前記効果を得ることができる。従って、前記レベリング剤が前記砥粒15に付着することに起因する切削能力又は切断能力の低下を招くこともない。
【0037】
さらに、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。つまり、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を得る為には、それ専用のレベリング剤を用いる必要がある。
しかしながら、前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒15を含んでいる。従って、ある特定のレベリング剤によって、異なる大きさ及び形状の複数の砥粒15を含む砥粒群に対して有効にレベリング効果を得ることは困難である。
【0038】
この点に関しても、逆電解電圧の印可によって前記砥粒群のうちの少なくとも一部の砥粒15の頂上部分のメッキ層11を剥離させている本実施の形態においては、大きさ及び形状の異なる複数の砥粒15に対して、固着強度を向上させつつ、切削性能の向上を有効に図ることができる。
【0039】
又、逆電解電圧を印可すると、前記砥粒15の頂上部分のメッキ層11を優先的に剥離させることできるので、種々の大きさの砥粒15に対してワイヤ本体5への固着強度を十分に維持しつつ、頂部を有効に露出させることができる。
例えば、前記砥粒群として平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群を用いる場合において、本実施の形態に係る方法によれば、粒子径約13μm以上のダイヤモンド粒子を露出させることができる。これは粒子群全体の約70%に相当する。
【0040】
ここで、本実施の形態に係る製造方法の具体的な工程について説明する。
図4に、前記製造方法における工程模式図を示す。
【0041】
図4に示すように、サプライ機100から供給される長尺のワイヤ本体は下記各処理槽を通過して巻取り機200によって巻き取られる。
前記ワイヤ本体は、例えば、銅メッキされた炭素鋼とされ、直径は0.1〜0.3mmとされる。
【0042】
前記製造方法は、前述の通り、正電解電圧を印可することで前記砥粒群を含むメッキ層11を前記ワイヤ本体5に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後に逆電解電圧を印可すること前記メッキ層11中の少なくとも一部の砥粒15の頂部が露出するように前記メッキ層11を剥離させる逆電解処理工程とを含むが、前記正電解処理工程及び前記逆電解処理工程に先だって、好ましくは、前処理工程を含むことができる。
【0043】
前記前処理工程には、図4に示すように、脱脂槽110を用いた脱脂工程及び水洗槽120を用いた水洗工程が含まれる。
又、前記ワイヤ本体5が予めメッキ等によってコーティングされている場合には、前記前処理工程には、さらに、コーティング剥離槽130を用いたコーティング剥離工程が含まれる。
【0044】
さらに、前記前処理工程は、ストライクメッキ槽140におけるストライクメッキ工程を含むことができる。
前記ストライクメッキ工程は、前記メッキ層11の析出に先立って前記ワイヤ本体5の表面に薄いメッキ層を形成するものであり、この薄いメッキ層によって前記砥粒15を含む前記メッキ層11の前記ワイヤ本体への密着性を向上させることができる。
【0045】
前記正電解処理工程は、前述の通り、前記砥粒群を含む前記メッキ液10中で前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向配置させた状態で正電解電圧を印可するように構成されている。
【0046】
前記砥粒15としては、例えば、ダイヤモンド粒子を用いることができ、前記メッキ液10には、例えば、スルファミン酸ニッケルを用いることができる。
又、前記電極部材20にはニッケルを用いることができる。
【0047】
好ましくは、前記砥粒群の砥粒15は、前記メッキ液10に包含されている段階においては前記メッキ液10に含まれる金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
斯かる構成によれば、前記砥粒15と前記メッキ層11との固着強度を向上させることができる。
【0048】
前記逆電解処理工程は、メッキ液が収容された逆電解槽30’中で対向配置された電極部材及びワイヤ本体に逆電解電圧を印可するように構成されている。
【0049】
図4に示すように、前記製造方法は、前記逆電解処理工程の後に、後処理を含むことができる。
前記後処理には、後メッキ槽150における後メッキ工程と、水洗槽160における水洗工程と、防錆槽170における防錆処理工程とが含まれる。
前記後メッキ工程は、前記砥粒15の固着強度を向上させる為の工程であり、前記メッキ液10が収容された前記後メッキ槽150内において前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向させた状態で、前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるように正電解電圧を印可することによってメッキ層を析出させるように構成される。
【0050】
なお、前記逆電解処理工程の後の状態においては、前記砥粒15の頂部が露出されている為(即ち、前記砥粒15の頂部のメッキ層11やコーティングは剥離されている為)、前記後メッキ工程によっては前記砥粒15の露出頂部にメッキ層は析出されない。
【0051】
ここで、本実施の形態に係る製造方法について行った実験結果について説明する。
図5に実験装置の模式図を示す。
【0052】
本実験においては、図5に示すように、電解槽130内に、砥粒として作用する,無電解Ni−Pメッキが施された平均粒子径10〜20μmのダイヤモンド粒子115(下記図6参照)を含むスルファミン酸メッキ液110を収容させ、このメッキ液中において電極部材120と線径0.12mmのピアノ線(JIS記号:SWRS82A-S)105とを対向配置させた。
【0053】
なお、図5中の符号106は前記ピアノ線105の自由端部に連結されたステンレスナットであり、前記ピアノ線105の撓みを防止して前記電極部材120及び前記ピアノ線105の平行性を担保する為に備えられる。
又、符号107は前記電解槽130内に設置された攪拌子であり、前記メッキ液中の砥粒濃度の均一化を図る為に備えられる。
【0054】
この状態で、前記電極部材120が陽極となり且つ前記ピアノ線105が陰極となるように電源101によって電圧を印可して、前記ピアノ線105の表面に厚さ5〜6μmのメッキ層111(下記図6参照)を設けた。
【0055】
図6に、前記メッキ層111が設けられたピアノ線105の模式断面図を示す。
図6に示すように、本実験においては、前記メッキ層111は、前記ピアノ線105の脱脂及び水洗を行った後に前記ピアノ線105の表面に設けられるスルファミン酸基本浴による下地メッキ層111aと、前記下地メッキ層111aの表面に設けられた砥粒付きメッキ層111bであって、前記Ni−Pメッキ付きダイヤモンド粒子115を含むスルファミン酸基本浴による砥粒付きメッキ層111bと、前記砥粒付きメッキ層111bの表面に設けられたスルファミン酸基本浴による後メッキ層111cとを含んでいる。
なお、本実験においては、Ni−Pメッキ付きダイヤモンド粒子115は、ダイヤモンド粒子及びNi−Pメッキの重量比を7:3とした。
【0056】
このようにして形成された逆電解前の固定砥粒ワイヤ(前記Ni−Pメッキ付きダイヤモンド115を含む厚さ5〜6μmの前記メッキ層111が前記ピアノ線105の表面に析出された固定砥粒ワイヤ)に対して、パルス電流による逆電解処理を行った。
【0057】
具体的には、前記電極部材120を陰極とし且つ前記ピアノ線105を陽極とした状態で、電流密度20A/dm2のパルス電流(図7参照)が、周波数5Hz(実施例1)、10Hz(実施例2)、20Hz(実施例3)、50Hz(実施例4)、80Hz(実施例5)、100Hz(実施例6)、400Hz(実施例7)、700Hz(実施例8)、1000Hz(実施例9)、1200Hz(実施例10)、1400Hz(実施例11)及び1750Hz(実施例12)の条件で流れるように、逆電解電圧を印可した。
【0058】
なお、前記各実施例1〜12においては、図7に示すように、パルス電流のデューティ比を0.3(1周期のうち30%の時間だけ前記電流密度の電流を流し、残りの70%は通電停止)とした。
【0059】
また、前記各実施例1〜12における逆電解処理の仕事量(電流密度×時間)が一定(260A・s/dm2)となるように、逆電解処理の時間を設定した。
即ち、各実施例1〜12において、前記電流密度のパルス電流が流れる時間の合計が13秒となるように、逆電解処理の時間を設定した。
【0060】
前記実施例1〜12の結果を電子走査顕微鏡(日本電子製 JEOL 型番:JSM-6363LA)を用いて倍率1500〜3000倍で観察した。
実施例1〜4の結果を図8(a)〜(d)にそれぞれ示す。
実施例5〜8の結果を図9(a)〜(d)にそれぞれ示す。
実施例9〜12の結果を図10(a)〜(d)にそれぞれ示す。
【0061】
さらに、実施例13として、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して直流電流による逆電解処理を行った。
詳しくは、図11に示すように、前記実施例1〜12と逆電解処理の条件を一致させる為に、前記直流電流の電流密度を20A/dm2とし且つ仕事量が260A・s/dm2となるように通電時間を13sとした。
【0062】
前記実施例13の結果を前記電子走査顕微鏡(日本電子製 JEOL 型番:JSM-6363LA)を用いて倍率3000倍で観察した結果を図12に示す。
【0063】
直流電流による逆電解処理の場合には、図12から、前記砥粒の回りのメッキ層が全体的に略均一に薄くなっていることが確認された。
【0064】
これに対し、パルス電流による逆電解処理の場合には、図8〜図10から、前記砥粒の回りのメッキ層が局所的に薄くなっていることが確認された。
これは、パルス電流による逆電解処理によれば、前記砥粒の前記メッキ層に対する固着強度を維持しつつ、前記砥粒による切削性能を向上させ得ることを意味している。
【0065】
又、パルス電流の周波数が10Hz(実施例2)〜1200Hz(実施例11)の範囲では、前記砥粒の前記メッキ層に対する固着強度を実質的に損なうこと無く、前記砥粒の一部を確実に露出させ得ることが確認された。
より好ましくは、パルス電流の周波数を50Hz(実施例4)〜1000Hz(実施例9)とすれば、前記砥粒の露出領域を広げ得ることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
5 ワイヤ本体
10 メッキ液
11 メッキ層
15 砥粒
20 電極部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解メッキによって砥粒をワイヤに固着させる固定砥粒ワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンやセラミック等の硬質材料の切断等に用いられる固定砥粒ワイヤの製造方法として、ワイヤ本体の表面に電解メッキによって砥粒を固着させる方法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、前記特許文献1には、砥粒群を含有するメッキ液が収容されたメッキ槽内において電極板及びワイヤ本体を対向配置させる工程と、前記電極板が陽極となり且つ前記ワイヤ本体が陰極となるように電圧を印可させて、前記ワイヤ本体の表面に砥粒を含んだ状態のメッキ層を析出させる工程とを含む固定砥粒ワイヤの製造方法において、前記メッキ液中にレベリング剤を含有させることが開示されている。
【0004】
前記特許文献1に記載の製造方法は、砥粒群を含有するメッキ液にレベリング剤を含めることにより、砥粒の固着強度を向上させつつ砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得る固定砥粒ワイヤを製造できるとされている。
【0005】
即ち、前記メッキ液中の前記レベリング剤は、陽極として作用する前記電極板に近接する部分、即ち、前記砥粒の頂点近傍に優先的に吸着される。その結果、前記砥粒の頂点近傍におけるメッキ層の成長速度が前記砥粒のうち前記電極板から離間された基端側部分(前記砥粒のうち前記ワイヤ本体に近接する部分)におけるメッキ層の成長速度よりも遅くなる。従って、前記砥粒の基端側部分に比較的厚く析出されるメッキ層によって前記砥粒の固着強度を向上させつつ前記砥粒の頂点近傍のメッキ層を薄くして前記砥粒による切削性能又は切断性能を向上させ得るとされている。
【0006】
しかしながら、前記メッキ液中に前記レベリング剤を加えることで前記砥粒の頂点近傍に析出されるメッキ層の層厚を薄くできる反面、前記砥粒の頂点近傍には前記レベリング剤が吸着されることになるから、このレベリング剤によって前記砥粒による切削性能又は切断性能が悪化するという問題が生じ得る。
【0007】
又、前記特許文献1にも記載されているように、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。従って、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を奏するレベリング剤であっても、これとは異なる大きさ及び形状の砥粒に対して有効にレベリング効果を奏するとは限らない。
【0008】
前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ、固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒を含んでいる。従って、これらの大きさ及び形状の異なる複数の砥粒に対してレベリング剤によって効果的なレベリング効果を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4538049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、砥粒群を含有するメッキ液を用いた電解メッキによって砥粒がワイヤ本体に固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、前記メッキ液中にレベリング剤を添加することなく、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上及び前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を同時に図り得る固定砥粒ワイヤの製造方法の提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成する為に、砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含む固定砥粒ワイヤの製造方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
【0013】
好ましくは、前記逆電解処理工程は、前記ワイヤ本体及び前記電極部材間を流れる電流がパルス電流となるように逆電解電圧を印可するものとされる。
【0014】
より好ましくは、前記パルス電流の周波数は10Hz以上で且つ1200Hz以下、さらに好ましくは、50Hz以上で且つ1000Hz以下とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法によれば、砥粒群を含むメッキ液中に対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して前記砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させ、その後に、メッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させたので、前記砥粒の前記ワイヤ本体への固着強度の向上を図りつつ、前記砥粒による切削性能又は切断性能の向上を図ることができる。
【0016】
特に、前記メッキ液中にレベリング剤を添加すること無く前記効果を得ることができるので、前記レベリング剤に起因する砥粒の切削性能又は切断性能の悪化を招くことが無く、さらに、種々の粒径及び形状の砥粒を含む砥粒群に対して有効に前記効果を奏することができる。
又、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部の砥粒を露出させる場合に比して、砥粒の脱落を有効に防止しつつより多くの砥粒を前記メッキ層から露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法に用いられるメッキ槽の模式図である。
【図2】図2(a)は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における正電解処理工程後の状態を示す部分模式断面図である。 図2(b)は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における逆電解処理工程後の状態を示す部分模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法において使用される砥粒群の一例の粒径分布図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法における工程模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法に関し行った実験に使用した装置の模式図である。
【図6】図6は、前記実験装置を用いて製造した逆電解前の固定砥粒ワイヤの模式断面図である。
【図7】図7は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対してパルス電流による逆電解処理を行った際の前記パルス電流の波形を示すグラフである。
【図8】図8(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数5Hz、10Hz、20Hz及び50Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例1〜4を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図9】図9(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数80Hz、100Hz、400Hz及び700Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例5〜8を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図10】図10(a)〜(d)は、それぞれ、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、周波数1000Hz、1200Hz、1400Hz及び1750Hzのパルス電流が流れるように逆電解処理を行った実施例9〜12を電子顕微鏡で観察した写真である。
【図11】図11は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して直流電流による逆電解処理を行った際の前記直流電流の波形を示すグラフである。
【図12】図12は、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して、直流電流が流れるように逆電解処理を行った実施例13を電子顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る固定砥粒ワイヤの製造方法の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
前記固定砥粒ワイヤは、ダイヤモンド等の砥粒が銅メッキされた炭素鋼等のワイヤ本体に固着されてなるものであり、シリコンやセラミック等の硬質材料の切断又は切削に好適に使用される。
本実施の形態に係る固定砥粒ワイヤの製造方法は、砥粒群を含むメッキ液からなるメッキ層をワイヤ本体に電着させることで前記砥粒群を前記ワイヤ本体に固着させるものである。
【0020】
図1に、本実施の形態に係る製造方法に用いられるメッキ装置の模式図を示す。
前記製造方法は、図1に示すように、正電解電圧槽30内に収容された砥粒群を含むメッキ液10中において電極部材20及びワイヤ本体5を対向配置させた状態で前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるような正電解電圧を印可して前記砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程(図2(a)参照)と、前記正電解処理工程の後にメッキ液中において対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可することで、前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程(図2(b)参照)とを含んでいる。
【0021】
なお、図1中符号35はメッキ液10のリザーブタンクであり、ポンプ40を介して前記正電解電圧槽30及び前記リザーブタンク35の間で前記メッキ液10が循環されるようになっている。
なお、前記逆電解処理工程は、前記電極部材及び前記ワイヤ本体への電圧印可方向が異なる点を除き、前記正電解処理工程におけるメッキ装置と同一装置を用いて行われる。
【0022】
このように、本実施の形態に係る製造方法によれば、正電解電圧の印可によって前記砥粒15を含む前記メッキ層11を前記ワイヤ本体5の表面に析出させ(図2(a)参照)、その後に、逆電解電圧の印可によって前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させており(図2(b)参照)、従って、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を向上させつつ、前記砥粒15による切削性能又は切断性能を向上させることができる。
この点に関し、詳述する。
【0023】
前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるように正電解電圧を印可して前記ワイヤ本体5の表面に前記砥粒群を含むメッキ層11を析出させる正電解処理工程においては、前記メッキ層11の析出速度は、陽極として作用する前記電極部材20に近い領域ほど速くなる。
【0024】
つまり、前記砥粒15の前記ワイヤ本体5への固着強度を十分に得るような層厚のメッキ層を形成すると、図2(a)に示すように、前記砥粒群における各砥粒15の頂上部分のメッキ層11の層厚が厚くなる。
前記固定砥粒ワイヤにおける切削作用又は切断作用は前記複数の砥粒15によって奏される為、前記複数の砥粒15の頂上部分に層厚の前記メッキ層11が積層されていると、前記砥粒15による切削能力又は切断能力が悪化する。
【0025】
ここで、正電解電圧の印可によって砥粒を含むメッキ層をワイヤ本体に析出させる際に、前記メッキ層を形成するメッキ液中に予めレベリング剤を添加しておくことで、前記砥粒の頂上部分のメッキ層を薄く、又は、無くすることが従来から提案されている。
【0026】
詳しくは、前記メッキ液中のレベリング剤は、正電解処理の際に陽極として作用する前記電極板に近接する部分、即ち、前記砥粒の頂点近傍に優先的に吸着される。その結果、前記砥粒の頂点近傍におけるメッキ層の成長速度が前記砥粒のうち前記電極板から離間された基端側部分(前記砥粒のうち前記ワイヤ本体に近接する部分)におけるメッキ層の成長速度よりも遅くなる。従って、前記砥粒の基端側部分に比較的厚く析出されるメッキ層によって前記砥粒の固着強度を向上させつつ前記砥粒の頂点近傍のメッキ層を薄くして前記砥粒による切削性能又は切断性能を向上させることができるとされている。
【0027】
しかしながら、前記メッキ液中に前記レベリング剤を加えることで前記砥粒の頂点近傍に析出されるメッキ層の層厚を薄くできる反面、前記砥粒の頂点近傍には前記レベリング剤が吸着されることになる。従って、このレベリング剤によって前記砥粒による切削性能又は切断性能が悪化するという問題が生じ得る。
【0028】
又、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。従って、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を奏するレベリング剤であっても、これとは異なる大きさ及び形状の砥粒に対して有効にレベリング効果を奏するとは限らない。
通常、前記メッキ液中に含まれる砥粒群は、平均粒径によって特定されるが、その大きさ及び形状は互いに対して異なっている。
従って、大きさ及び形状が異なる複数の砥粒に対して有効なレベリング効果を得ることは困難である。
【0029】
さらに、ワイヤ本体の表面に析出されたメッキ層から砥粒を露出させる他の方法として、正電解処理によって砥粒群を含むメッキ層をワイヤ本体の表面に析出させた後に、ドレッシング処理又は研磨処理によって前記砥粒群の少なくとも一部を露出させることが提案されている。
【0030】
しかしながら、この従来方法では、前記砥粒群における20%程度の砥粒しか露出させることができない。
この点に関し、前記砥粒群として、レーザー回析散乱法による平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群を用いる場合を例に説明する。
図3に、前記ダイヤモンド粒子群の粒径分布図を示す。
【0031】
図3に示すように、平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群は、粒子径15μmのダイヤモンド粒子を最も多く含むものの、粒子径10μm以下の粒子から粒子径20μm以上の粒子を含んでいる。
【0032】
このような種々の粒子径の粒子を含むダイヤモンド粒子群に対して例えば粒子径15μmの粒子が露出する程度に研磨処理を行ったとすると、粒子径が15μmより大きな粒子にとっては過研磨状態となる。
【0033】
つまり、研磨処理によってダイヤモンド粒子を露出させる場合には、比較的粒子径の大きな粒子が脱落しないように研磨量を設定する必要があり、例えば、粒子群全体の約20%に相当する粒子径17.5μm以上のダイヤモンド粒子しか露出させることができないことになる。
【0034】
これらの従来技術に対し、本実施の形態に係る前記製造方法は、前述の通り、正電解処理工程の後に、逆電解電圧を印可することで前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させている。
【0035】
この逆電解電圧の印可によって、前記メッキ層11のうち前記電極部材20に近接する部分、即ち、前記複数の砥粒15の頂上部分に積層された部分が優先的に剥離される。
従って、図2(b)に示すように、前記砥粒群を形成する複数の砥粒15の基端側部分については前記メッキ層11によって前記ワイヤ本体5に強固に固着された状態を維持しつつ、前記砥粒群における少なくとも一部の砥粒15の頂上部分を露出させて前記砥粒15による切削能力又は切断能力を向上させることができる。
【0036】
特に、本実施の形態においては、前記メッキ液10中にレベリング剤を添加すること無く前記効果を得ることができる。従って、前記レベリング剤が前記砥粒15に付着することに起因する切削能力又は切断能力の低下を招くこともない。
【0037】
さらに、前記レベリング剤は、種類によって機能に差異が存在する。つまり、ある特定の大きさ及び形状の砥粒に対して適切なレベリング効果を得る為には、それ専用のレベリング剤を用いる必要がある。
しかしながら、前記メッキ液中に含有される砥粒群は、それぞれ固有の大きさ及び形状を有する複数の砥粒15を含んでいる。従って、ある特定のレベリング剤によって、異なる大きさ及び形状の複数の砥粒15を含む砥粒群に対して有効にレベリング効果を得ることは困難である。
【0038】
この点に関しても、逆電解電圧の印可によって前記砥粒群のうちの少なくとも一部の砥粒15の頂上部分のメッキ層11を剥離させている本実施の形態においては、大きさ及び形状の異なる複数の砥粒15に対して、固着強度を向上させつつ、切削性能の向上を有効に図ることができる。
【0039】
又、逆電解電圧を印可すると、前記砥粒15の頂上部分のメッキ層11を優先的に剥離させることできるので、種々の大きさの砥粒15に対してワイヤ本体5への固着強度を十分に維持しつつ、頂部を有効に露出させることができる。
例えば、前記砥粒群として平均粒子径15μmのダイヤモンド粒子群を用いる場合において、本実施の形態に係る方法によれば、粒子径約13μm以上のダイヤモンド粒子を露出させることができる。これは粒子群全体の約70%に相当する。
【0040】
ここで、本実施の形態に係る製造方法の具体的な工程について説明する。
図4に、前記製造方法における工程模式図を示す。
【0041】
図4に示すように、サプライ機100から供給される長尺のワイヤ本体は下記各処理槽を通過して巻取り機200によって巻き取られる。
前記ワイヤ本体は、例えば、銅メッキされた炭素鋼とされ、直径は0.1〜0.3mmとされる。
【0042】
前記製造方法は、前述の通り、正電解電圧を印可することで前記砥粒群を含むメッキ層11を前記ワイヤ本体5に電着させる正電解処理工程と、前記正電解処理工程の後に逆電解電圧を印可すること前記メッキ層11中の少なくとも一部の砥粒15の頂部が露出するように前記メッキ層11を剥離させる逆電解処理工程とを含むが、前記正電解処理工程及び前記逆電解処理工程に先だって、好ましくは、前処理工程を含むことができる。
【0043】
前記前処理工程には、図4に示すように、脱脂槽110を用いた脱脂工程及び水洗槽120を用いた水洗工程が含まれる。
又、前記ワイヤ本体5が予めメッキ等によってコーティングされている場合には、前記前処理工程には、さらに、コーティング剥離槽130を用いたコーティング剥離工程が含まれる。
【0044】
さらに、前記前処理工程は、ストライクメッキ槽140におけるストライクメッキ工程を含むことができる。
前記ストライクメッキ工程は、前記メッキ層11の析出に先立って前記ワイヤ本体5の表面に薄いメッキ層を形成するものであり、この薄いメッキ層によって前記砥粒15を含む前記メッキ層11の前記ワイヤ本体への密着性を向上させることができる。
【0045】
前記正電解処理工程は、前述の通り、前記砥粒群を含む前記メッキ液10中で前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向配置させた状態で正電解電圧を印可するように構成されている。
【0046】
前記砥粒15としては、例えば、ダイヤモンド粒子を用いることができ、前記メッキ液10には、例えば、スルファミン酸ニッケルを用いることができる。
又、前記電極部材20にはニッケルを用いることができる。
【0047】
好ましくは、前記砥粒群の砥粒15は、前記メッキ液10に包含されている段階においては前記メッキ液10に含まれる金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされているものとされる。
斯かる構成によれば、前記砥粒15と前記メッキ層11との固着強度を向上させることができる。
【0048】
前記逆電解処理工程は、メッキ液が収容された逆電解槽30’中で対向配置された電極部材及びワイヤ本体に逆電解電圧を印可するように構成されている。
【0049】
図4に示すように、前記製造方法は、前記逆電解処理工程の後に、後処理を含むことができる。
前記後処理には、後メッキ槽150における後メッキ工程と、水洗槽160における水洗工程と、防錆槽170における防錆処理工程とが含まれる。
前記後メッキ工程は、前記砥粒15の固着強度を向上させる為の工程であり、前記メッキ液10が収容された前記後メッキ槽150内において前記電極部材20及び前記ワイヤ本体5を対向させた状態で、前記電極部材20が陽極となり且つ前記ワイヤ本体5が陰極となるように正電解電圧を印可することによってメッキ層を析出させるように構成される。
【0050】
なお、前記逆電解処理工程の後の状態においては、前記砥粒15の頂部が露出されている為(即ち、前記砥粒15の頂部のメッキ層11やコーティングは剥離されている為)、前記後メッキ工程によっては前記砥粒15の露出頂部にメッキ層は析出されない。
【0051】
ここで、本実施の形態に係る製造方法について行った実験結果について説明する。
図5に実験装置の模式図を示す。
【0052】
本実験においては、図5に示すように、電解槽130内に、砥粒として作用する,無電解Ni−Pメッキが施された平均粒子径10〜20μmのダイヤモンド粒子115(下記図6参照)を含むスルファミン酸メッキ液110を収容させ、このメッキ液中において電極部材120と線径0.12mmのピアノ線(JIS記号:SWRS82A-S)105とを対向配置させた。
【0053】
なお、図5中の符号106は前記ピアノ線105の自由端部に連結されたステンレスナットであり、前記ピアノ線105の撓みを防止して前記電極部材120及び前記ピアノ線105の平行性を担保する為に備えられる。
又、符号107は前記電解槽130内に設置された攪拌子であり、前記メッキ液中の砥粒濃度の均一化を図る為に備えられる。
【0054】
この状態で、前記電極部材120が陽極となり且つ前記ピアノ線105が陰極となるように電源101によって電圧を印可して、前記ピアノ線105の表面に厚さ5〜6μmのメッキ層111(下記図6参照)を設けた。
【0055】
図6に、前記メッキ層111が設けられたピアノ線105の模式断面図を示す。
図6に示すように、本実験においては、前記メッキ層111は、前記ピアノ線105の脱脂及び水洗を行った後に前記ピアノ線105の表面に設けられるスルファミン酸基本浴による下地メッキ層111aと、前記下地メッキ層111aの表面に設けられた砥粒付きメッキ層111bであって、前記Ni−Pメッキ付きダイヤモンド粒子115を含むスルファミン酸基本浴による砥粒付きメッキ層111bと、前記砥粒付きメッキ層111bの表面に設けられたスルファミン酸基本浴による後メッキ層111cとを含んでいる。
なお、本実験においては、Ni−Pメッキ付きダイヤモンド粒子115は、ダイヤモンド粒子及びNi−Pメッキの重量比を7:3とした。
【0056】
このようにして形成された逆電解前の固定砥粒ワイヤ(前記Ni−Pメッキ付きダイヤモンド115を含む厚さ5〜6μmの前記メッキ層111が前記ピアノ線105の表面に析出された固定砥粒ワイヤ)に対して、パルス電流による逆電解処理を行った。
【0057】
具体的には、前記電極部材120を陰極とし且つ前記ピアノ線105を陽極とした状態で、電流密度20A/dm2のパルス電流(図7参照)が、周波数5Hz(実施例1)、10Hz(実施例2)、20Hz(実施例3)、50Hz(実施例4)、80Hz(実施例5)、100Hz(実施例6)、400Hz(実施例7)、700Hz(実施例8)、1000Hz(実施例9)、1200Hz(実施例10)、1400Hz(実施例11)及び1750Hz(実施例12)の条件で流れるように、逆電解電圧を印可した。
【0058】
なお、前記各実施例1〜12においては、図7に示すように、パルス電流のデューティ比を0.3(1周期のうち30%の時間だけ前記電流密度の電流を流し、残りの70%は通電停止)とした。
【0059】
また、前記各実施例1〜12における逆電解処理の仕事量(電流密度×時間)が一定(260A・s/dm2)となるように、逆電解処理の時間を設定した。
即ち、各実施例1〜12において、前記電流密度のパルス電流が流れる時間の合計が13秒となるように、逆電解処理の時間を設定した。
【0060】
前記実施例1〜12の結果を電子走査顕微鏡(日本電子製 JEOL 型番:JSM-6363LA)を用いて倍率1500〜3000倍で観察した。
実施例1〜4の結果を図8(a)〜(d)にそれぞれ示す。
実施例5〜8の結果を図9(a)〜(d)にそれぞれ示す。
実施例9〜12の結果を図10(a)〜(d)にそれぞれ示す。
【0061】
さらに、実施例13として、前記逆電解前の固定砥粒ワイヤに対して直流電流による逆電解処理を行った。
詳しくは、図11に示すように、前記実施例1〜12と逆電解処理の条件を一致させる為に、前記直流電流の電流密度を20A/dm2とし且つ仕事量が260A・s/dm2となるように通電時間を13sとした。
【0062】
前記実施例13の結果を前記電子走査顕微鏡(日本電子製 JEOL 型番:JSM-6363LA)を用いて倍率3000倍で観察した結果を図12に示す。
【0063】
直流電流による逆電解処理の場合には、図12から、前記砥粒の回りのメッキ層が全体的に略均一に薄くなっていることが確認された。
【0064】
これに対し、パルス電流による逆電解処理の場合には、図8〜図10から、前記砥粒の回りのメッキ層が局所的に薄くなっていることが確認された。
これは、パルス電流による逆電解処理によれば、前記砥粒の前記メッキ層に対する固着強度を維持しつつ、前記砥粒による切削性能を向上させ得ることを意味している。
【0065】
又、パルス電流の周波数が10Hz(実施例2)〜1200Hz(実施例11)の範囲では、前記砥粒の前記メッキ層に対する固着強度を実質的に損なうこと無く、前記砥粒の一部を確実に露出させ得ることが確認された。
より好ましくは、パルス電流の周波数を50Hz(実施例4)〜1000Hz(実施例9)とすれば、前記砥粒の露出領域を広げ得ることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
5 ワイヤ本体
10 メッキ液
11 メッキ層
15 砥粒
20 電極部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、
砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、
前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含むことを特徴とする固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記逆電解処理工程は、前記ワイヤ本体及び前記電極部材間を流れる電流がパルス電流となるように逆電解電圧を印可することを特徴とする請求項1又は2に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記パルス電流の周波数は10Hz以上で且つ1200Hz以下であることを特徴とする請求項3に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記パルス電流の周波数は50Hz以上で且つ1000Hz以下であることを特徴とする請求項4に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項1】
砥粒群を含むメッキ液を用いてワイヤ本体にメッキ層を電着させることで前記ワイヤ本体に砥粒が固着されてなる固定砥粒ワイヤを製造する方法であって、
砥粒群を含むメッキ液中において対向配置された電極部材が陽極となり且つワイヤ本体が陰極となるような正電解電圧を印可して砥粒群を含むメッキ層を前記ワイヤ本体に電着させる正電解処理工程と、
前記正電解処理工程の後にメッキ液中で対向配置された電極部材が陰極となり且つワイヤ本体が陽極となるような逆電解電圧を印可して前記メッキ層中の少なくとも一部の砥粒の頂部が露出するように前記メッキ層を剥離させる逆電解処理工程とを含むことを特徴とする固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記砥粒は、前記メッキ液に包含されている段階においては前記メッキ液に包含されている金属の一部又は全部と同一金属によってコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記逆電解処理工程は、前記ワイヤ本体及び前記電極部材間を流れる電流がパルス電流となるように逆電解電圧を印可することを特徴とする請求項1又は2に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記パルス電流の周波数は10Hz以上で且つ1200Hz以下であることを特徴とする請求項3に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記パルス電流の周波数は50Hz以上で且つ1000Hz以下であることを特徴とする請求項4に記載の固定砥粒ワイヤの製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図4】
【図7】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2012−176483(P2012−176483A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271150(P2011−271150)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]