説明

固定部材

【課題】太陽電池モジュール等の板状モジュールを確実に固定することができると共に汎用性の高い固定部材を提供する。
【解決手段】固定部材10に、板状モジュール1の上面に当接可能とされ左右方向へ延びた上片11と、上片11の中央から下方へ延出した軸部12と、軸部12の下端から両側へ上片11よりも大きく延び上側に板状モジュール1の下面に当接可能な当接部13a及び湾曲する底面13bを有した下片13と、下片13における軸部12を挟んだ何れか一方側に形成され上下方向へ貫通した取付孔14と、を具備させた上で、固定部材10の軸部12に板状モジュール1の側面を略当接させた状態で、取付孔14を介して下片13を取付部材5に取付けると、上片11が下降して板状モジュール1の上面に当接すると共に、下片13の当接部13aが板状モジュール1の下面に当接するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上等に設置される太陽熱温水器や太陽電池モジュール等の板状モジュールを屋根上等に固定するための固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、板状モジュールとしての太陽電池モジュールを、屋根上に設置固定するための固定部材としては、特許文献1に示すような、太陽電池モジュールにおける枠体の側面に形成された凹状の接合部内に挿入される被接合部と、被接合部の中央から垂下する軸部と、軸部の下端に接続され上面に太陽電池モジュールの枠体が載置される台座部と、を備えた固定部材が提案されている。
【0003】
この固定部材によると、屋地板や屋根材等の取付部材に固定部材を取付けた状態で、固定部材の台座部及び被接合部に太陽電池モジュールの一端側の枠体を支持させ、太陽電池モジュールの他端側の枠体に別の固定部材を取付けた上で、その固定部材を取付部材へ取付けることで、太陽電池モジュールを屋根上等に固定することができる。従って、複数の太陽電池モジュールを一方側(軒側)から他方側(棟側)へ順次固定することができ、太陽電池モジュールの設置に係るコストを低減させることができる。
【0004】
また、特許文献1のものでは、軸部を挟んで固定部材を取付部材へ取付ける部位とは反対側に爪状の被係合部を備えると共に、太陽電池モジュールの枠体に被係合部と係合する係合部を備えており、被係合部を係合部に係合させることで、軸部から遠ざかる方向へ枠体が移動するのを規制することができるようになっている。これにより、太陽電池モジュールを傾斜した屋根上等に設置した時に、太陽電池モジュールの棟側(上側)を支持する固定部材でも、軒側に配置された太陽電池モジュールが軒側(下側)へ移動するのを阻止することができるので、太陽電池モジュールの荷重を軒側と棟側の固定部材で夫々支持することができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来の固定部材では、太陽電池モジュールの枠体が固定部材の台座部と被接合部との間に挿入されているだけなので、それらの寸法公差によっては太陽電池モジュールがガタ付いたり、太陽電池モジュールが固定部材の延びた方向へスライドしてしまったりする虞があった。
【0006】
また、特許文献1の固定部材では、爪状の被係合部を太陽電池モジュールの枠体に備えられた係合部と係合させるようにしているので、係合部を備えていない太陽電池モジュールでは、棟側の固定部材によって軒側の太陽電池モジュールの荷重を支持することができない問題があると共に、太陽電池モジュールを傾斜した屋根上等に設置する場合では、係合部を備えた太陽電池モジュールを用いる必要があり、汎用性の低いものとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、太陽電池モジュール等の板状モジュールを確実に固定することができると共に汎用性の高い固定部材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る固定部材は、「板状モジュールの上面に当接可能、又は、板状モジュールの側面に形成された溝内に挿入可能とされ、左右方向へ延びた上片と、該上片の中央から下方へ延出した軸部と、該軸部の下端から両側へ前記上片よりも大きく延び、上側に板状モジュールの下面に当接可能な当接部を有した下片と、該下片における前記軸部を挟んだ何れか一方側に形成され上下方向へ貫通した取付孔とを少なくとも具備した固定部材であって、該固定部材を、前記軸部に板状モジュールの側面を当接又は接近させた状態で、前記取付孔を介して前記下片を取付部材に取付けると、前記上片が下降して板状モジュールの上面又は溝の上部に当接すると共に、前記下片の前記当接部が板状モジュールの下面に当接するように形成した」ことを特徴とする。
【0009】
ここで、「板状モジュール」としては、「板状の太陽電池パネルの外周を枠体で囲った太陽電池モジュール」、「太陽熱温水器パネル」、「太陽熱集熱パネル」、「防音パネル」、「遮光パネル」、等を例示することができる。
【0010】
また、「下片」としては、「軸部から遠ざかるほど上下方向の厚さを厚くし、軸部から遠ざかった先端側の上部を当接部としたもの」、「軸部から遠ざかった先端側に上方へ突出した突出部を形成し、突出部を当接部としたもの」、等を例示することができる。
【0011】
更に、「取付部材」としては、「屋根の表面を形成する屋根材」、「屋根材が取付けられる屋地板」、「屋根を形成するための垂木等の屋根構造部材」、「板状モジュールを設置する対象物に取付けられた長尺状の桟部材」、「板状モジュールを設置する対象物に取付けられた架台」、「板状モジュールを設置する対象物との間に介装された取付金具」、「壁面」、「壁面を構成するための胴縁」、等を例示することができる。
【0012】
また、「取付孔を介して下片を取付部材に取付ける」とは、「下片の上側からボルトやビス等を取付孔に挿通し、ボルト等の頭により下片を取付部材側へ押え付けて取付ける」、「取付部材側から突出した雄ネジ部を、下片の下側から取付孔に挿通させ、下片の上側から雄ネジ部に螺合したナットにより下片を取付部材側へ押え付けて取付ける」、等を例示することができる。
【0013】
更に、「板状モジュールの側面」とは、板状モジュールの一般的な側面や、一般的な側面から突出した端面を含むものである。また、「板状モジュールの側面を接近させた状態」とは、板状モジュールの側面を、上片の先端と軸部との間の中央よりも軸部寄りに位置させた状態であり、望ましくは、上片の先端と軸部との間の距離の1/4よりも軸部寄りに位置させた状態である。これにより、上片と下片の当接部とで板状モジュールを充分に挟持固定することができる。
【0014】
また、「下片を取付部材に取付けると、上片が下降」とは、「下片の底面を湾曲又は屈曲させることで、軸部の直下が取付部材の上面から浮いた状態とし、下片を取付部材に取付けることで下片を変形させて、上片を下降させるもの」、「下片における軸部を挟んで取付孔とは反対側の先端のみが取付部材に当接するようにし、下片の底面が全体的に取付部材と沿うように取付けることで、上片を下降させるもの」、「下片の底面の両端付近に下方へ突出した突起を備えることで軸部の直下が取付部材の上面から浮いた状態とし、下片を取付部材に取付けることで下片を変形させて、上片を下降させるもの」、等を例示することができる。
【0015】
これにより、固定部材における軸部を挟んで取付孔とは反対側の上片と下片との間に板状モジュールを挿入すると共に、板状モジュールの側面を軸部に当接又は接近させた状態で、固定部材を屋根材等の取付部材に載置し、下片に形成された取付孔を介してビスやボルト、ナット等により下片を取付部材に取付けると、軸部と共に上片が下降して上片と下片の当接部とで板状モジュールを上下方向に挟んで固定することができるので、板状モジュールがガタ付いたり、固定部材の延びる方向へスライドしてしまったりするのを防止することができ、板状モジュールを確実に固定することができる。
【0016】
また、上片よりも下片が大きく延び出しているので、固定部材を取付部材へ取付けた状態で、軸部を挟んで取付孔側の上片と下片との間に板状モジュールを斜めにしながら挿入して押し込むことで、軸部を挟んで取付孔側でも板状モジュールを挟んで固定することができる。従って、この固定部材によると、軸部を挟んで両側に板状モジュールを固定することができるので、複数の板状モジュールを一方側から他方側へ順次固定することができ、板状モジュールの設置に係る手間を簡略化することができると共に、設置に係るコストを低減させることができる。
【0017】
更に、上述したように、固定部材の上片と下片の当接部とで板状モジュールを挟んで固定することができるので、板状モジュールを傾斜させた状態で設置する場合でも、板状モジュールの上下両側を夫々固定した固定部材によって、板状モジュールの荷重を支持することができ、一方の固定部材のみに荷重が偏るのを抑制して偏荷重により固定部材が変形したり破損したりするのを防止することができる。
【0018】
また、固定部材の上片と下片の当接部とで板状モジュールを挟んで固定するようにしているので、特許文献1に記載された太陽電池モジュールの枠体のように固定部材と係合するための係合部を備えていなくても、挟める形態の板状モジュールであれば固定部材によって確実に固定することができ、汎用性の高い固定部材とすることができると共に、特別な板状モジュールを用いる必要がなく、一般的な(市販の)板状モジュールを用いることができ、板状モジュールによるシステム全体に係るコストを低減させることができる。
【0019】
ところで、特許文献1では、太陽電池モジュールの枠体における係合部と、固定部材における爪状の被係合部とを、互いに係合させることで、太陽電池モジュールの枠体が軸部から離れる方向(軒側の方向)へ移動するのを規制するようにしている。この場合、太陽電池モジュールの重量によっては係合を強くする必要があり、係合を強くすることで、枠体の側面に対して直角方向から固定部材を挿入嵌合させ難くなり、作業性が悪くなる虞がある。しかしながら、本発明の固定部材によると、特許文献1のもののような爪状の被係合部を備えていないので、板状モジュールの側面に対して直角方向から固定部材を簡単に挿入嵌合させることができ、作業性を良くすることができる。
【0020】
なお、固定部材は、取付孔を、軸部に対して可及的に近い位置に形成することが望ましく、これにより、取付孔を介して(通して)ビスやボルト、ナット等により下片を取付部材に取付けた時の上片による板状モジュールの固定強度を高くすることができ、板状モジュールをより確実に固定することができる。また、下片の上面に、取付孔を介して固定部材を取付部材に取付けるためのビスやボルト等の頭部、ナット等を収容可能な凹部を形成するようしても良く、これにより、ボルト等の頭部が板状モジュールと当接するのを回避させることができるので、取付孔を可及的に軸部に近付けることができる。
【0021】
本発明に係る固定部材は、上記の構成に加えて、「取付部材に取付ける前の状態では、前記下片の底面が、前記軸部の直下が最も高くなるように湾曲又は屈曲し、取付部材に取付けることで前記底面が取付部材に沿った状態に変形する」構成としても良い。
【0022】
これにより、固定部材における下片の底面を、軸部の直下が最も高くなるように湾曲又は屈曲させており、固定部材を取付部材上に置いた状態(取付ける前の状態)では、軸部の直下に隙間が形成された状態となる。その状態で取付孔を介して取付部材に取付けることで、下片が変形して底面が取付部材に沿った状態となり軸部の直下の隙間がなくなるので、隙間の分だけ軸部を介して上片が降下することとなり、下片を取付部材に取付けると上片が降下する固定部材を確実に具現化することができ、上述した作用効果を奏する固定部材とすることができる。
【0023】
なお、下片を、軸部から遠ざかるほど上下方向の厚さを厚くするようにし、厚くなった先端を当接部とするようにしても良く、これにより、取付部材に取付けることで、下片の中央(軸部の位置)が下がり、相対的に下片の先端(当接部)が上がるので、上片と当接部とで板状モジュールをより強く挟むことができ、板状モジュールを確実に固定することができる。
【0024】
本発明に係る固定部材は、上記の構成に加えて、「前記下片の前記軸部を挟んで両側に形成され上下方向へ貫通した貫通孔と、該貫通孔へ下側から挿入され、前記取付孔を介して前記下片を取付部材に取付けると、上端が板状モジュールの下面に突き刺さる突刺部を有した補助固定部とを更に具備する」構成としても良い。
【0025】
ここで、「補助固定部」としては、「軸部を挟んで両側に形成された貫通孔に夫々挿入される突刺部が下片の下側で一体的に連結されたもの」、「軸部を挟んで両側に形成された貫通孔に挿入される突刺部が夫々独立しているもの」、「軸部を挟んで両側に形成された貫通孔に夫々挿入される突刺部が下片の下側で一体的に連結されると共に、下片の底面を取付部材から遠ざかる方向へ付勢する弾性部を有したもの」、等を例示することができる。
【0026】
これにより、固定部材を取付部材へ取付けると、下片の貫通孔に挿入された補助固定部の突刺部が板状モジュールの下面に突き刺さるので、補助固定部によっても板状モジュールがガタ付いたり固定部材の延びた方向へスライドしたりするのを防止することができ、板状モジュールを確実に固定することができる。
【0027】
なお、補助固定部を、軸部を挟んだ両側の貫通孔に夫々挿入される突刺部を下片の下側で一体的に連結すると共に導電性を有するようにしても良く、これにより、補助固定部を通じて軸部の両側に固定された板状モジュール同士を電気的に接続することができ、板状モジュール同士のアース接続を簡単に行うことができる。また、表面に絶縁性の被膜を有した板状モジュールでも、補助固定部の突刺部が突刺されることで、被膜を破ることができ、太陽電池モジュール等の板状モジュール同士を、確実に電気的に接続してアース接続することができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明によると、太陽電池モジュール等の板状モジュールを確実に固定することができると共に汎用性の高い固定部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態である固定部材を用いて板状モジュールを取付部材に固定した状態を示す斜視図である。
【図2】図1の要部を示す側面図である。
【図3】図1の固定部材を用いた板状モジュールの固定方法を示す説明図である。
【図4】本発明に係る固定部材の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る固定部材の更に異なる実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る固定部材の更に異なる実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係る固定部材の更に異なる実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る固定部材の更に異なる実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る固定部材の更に異なる実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態である固定部材について、図1乃至図3に基いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である固定部材を用いて板状モジュールを取付部材に固定した状態を示す斜視図である。図2は、図1の要部を示す側面図である。図3は、図1の固定部材を用いた板状モジュールの固定方法を示す説明図である。
【0031】
本実施形態の固定部材10は、図示するように、板状の太陽電池パネル2の外周を枠体3で囲った太陽電池モジュール4等の板状モジュール1を、屋根材等の取付部材5上に設置するためのものであり、ビスやボルト等の所定の締結部材6によって取付部材5へ取付けられるようになっている。本例の固定部材10は、板状モジュール1の上面に当接可能とされ、左右方向へ延びた上片11と、上片11の中央から下方へ延出した軸部12と、軸部12の下端から両側へ上片11よりも大きく延びた下片13と、下片13の軸部12を挟んで一方側に形成され上下方向へ貫通した取付孔14と、を備えている。固定部材10は、軸部12を挟んで上片11及び下片13が夫々左右に略均等に延びだしており、長手方向から見ると、上辺の短い略エ字状に形成されている。
【0032】
また、固定部材10は、下片13における取付孔14の上部に、取付孔14を通して取付部材5にねじ込まれる締結部材6の頭部を収容可能な凹部15を備えている。この固定部材10は、下片13が軸部12から遠ざかるほど上下方向の厚さが厚くなるように形成されており、軸部12から遠ざかった先端上部が板状モジュール1の下面と当接する当接部13aとされている。また、固定部材10は、図3(A)に示すように、取付部材5に取付ける前の状態では、下片13の底面13bが、軸部12の直下が最も高くなるように湾曲した状態となっている。なお、取付部材5へ取付ける前の状態では、下片13の上面が、先端へ向かうほど低くなるようになっており、上片11と下片13との間に板状モジュール1を挿入し易くなっている。
【0033】
本例の固定部材10は、アルミ合金等の金属を素材とした押出型材とされており、同一断面形状で長尺状に形成したものを適宜長さ(本例では、100mm〜200mm)に切断して、取付孔14や凹部15等を長手方向に1つ〜3つ形成したものである。因みに、板状モジュール1は、一般市販品とされ、固定部材10により固定される長辺の長さが、900mm〜2000mmとされている。
【0034】
次に、本例の固定部材10を用いた板状モジュール1の固定方法について説明する。まず、例えば、取付部材5上の所定位置に描かれたケガキ線に沿って固定部材10を載置した上で、取付孔14にビスやボルト等の締結部材6を挿入し、固定部材10における下片13の底面13bが取付部材5の上面と一致するまで締結部材6を取付部材5へねじ込む。そして、取付けた固定部材10の上片11と下片13との間に板状モジュール1の一方の側面を挿入した上で、板状モジュール1の対向する他方の側面に、新たな固定部材10を挿入する。具体的には、固定部材10における軸部12を挟んで取付孔14が形成された一方側とは反対側の上片11と下片14との間に板状モジュール1の他方の側面が位置するように固定部材10を挿入し、固定部材10を取付部材5上に載置する(図3(A)を参照)。
【0035】
この状態では、固定部材10の底面13bが湾曲した状態となっており、下片13の両端が取付部材5の上面と当接し、底面13bと取付部材5の上面との間で軸部12の直下が最も大きくなるような隙間が形成された状態となっている。そして、固定部材10の上側から締結部材6を取付孔14に挿入した上で、締結部材6を取付部材5へねじ込むことで、締結部材6の頭部が下降して凹部15内へ進入し、頭部が凹部15の底に当接すると、底面13bが湾曲した下片13が締結部材6の頭部によって下方へ押されることとなる。これにより、湾曲した下片13の底面13bが延びる方向へ変形し、締結部材6(頭部)の下降と共に、下片13を介して軸部12及び上片11が下降する。
【0036】
そして、下片13の底面13bにおける軸部12の直下が取付部材5の上面と当接すると、湾曲した底面13bが取付部材5の上面に沿った形状(ここでは、略直線状)となると共に下片13を介した軸部12及び上片11の下降が停止する。この時、上片11が下降することで板状モジュール1の上面と当接すると共に、下片13における軸部12の直下の中央が下降することで、相対的に下片13の先端の当接部13aが上昇して板状モジュール1の下面と当接し、板状モジュール1が上片11と下片13の当接部13aとで上下方向に挟持された状態となり、板状モジュール1の他方の側面が固定された状態となる(図3(B)を参照)。
【0037】
続いて、軸部12を挟んで取付孔14とは反対側で一つ目の板状モジュール1を固定した固定部材10に対し、軸部を挟んで取付孔14側の上片11と下片13との間に、別の板状モジュール1における一方の側面を挿入する。この時、図3(B)に示すように、板状モジュール1を取付部材5の上面に対して斜めに傾けた状態で、下片13の上面に沿ってスライドさせるように側面を挿入した上で、板状モジュール1を、その上面が先に固定した板状モジュール1の上面と略同一面状となるように位置させる。これにより、下降した上片11と、下片13との間に板状モジュール1を少ない力で挿入することができる。
【0038】
そして、板状モジュール1の一方の側面を固定部材10に固定(支持)させたら、板状モジュール1の他方の側面に、新たな固定部材10を挿入し、その固定部材10を上述と同様に取付部材5へ取付けることで、二つ目の板状モジュール1を固定することができ、複数の板状モジュール1を一方側から他方側へ向かって順次固定することができる。
【0039】
このように、本実施形態の固定部材10によると、下片13に形成された取付孔14を介してビスやボルト等の締結部材6により下片13を取付部材5に取付けると、軸部12と共に上片11が下降して上片11と下片13の当接部13aとで板状モジュール1を上下方向に挟んで固定することができるので、板状モジュール1がガタ付いたり、固定部材10の延びる方向へスライドしてしまったりするのを防止することができ、板状モジュール1を確実に固定することができる。
【0040】
また、上片11よりも下片13が大きく延び出しており、固定部材10を取付部材5へ取付けた状態で、軸部12を挟んで取付孔14側の上片11と下片13との間に板状モジュール1を斜めにしながら挿入して押し込むことで、軸部12を挟んで取付孔14側でも板状モジュール1を挟んで固定することができるので、軸部12を挟んで両側に板状モジュール1を固定することができ、複数の板状モジュール1を一方側から他方側へ順次固定することで板状モジュール1の設置に係る手間を簡略化することができると共に、設置に係るコストを低減させることができる。
【0041】
更に、固定部材10の上片11と下片13の当接部13aとで板状モジュール1を挟んで固定することができるので、傾斜した屋根上等、板状モジュール1を傾斜させた状態で設置しても、板状モジュール1の上下両側を夫々固定部材10によって支持することができ、一方(下側)の固定部材10のみに荷重が偏るのを抑制して偏荷重により固定部材10が変形したり破損したりするのを防止することができる。
【0042】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0043】
すなわち、上記の実施形態では、固定部材10の下片13が、軸部12から遠ざかるほど上下方向の厚さが厚くなるものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、図4に示すような固定部材20としても良い。なお、基本的な構成については上記の実施形態と同一の名称を付し、詳細な説明は省略する。この固定部材20は、上片21及び軸部22が上記の実施形態と同様の形態となっているのに対し、下片23が異なる形態となっている。具体的には、下片23は、軸部22から左右方向へ一定厚さで上片21よりも大きく延びた上で、先端が一旦所定量上方へ延出した上で上端から左右方向外方(軸部22から遠ざかる方向)へ取付部材5の上面と略平行に延びだした形態とされており、その延びだした上面が当接部23aとされている。
【0044】
なお、下片23における軸部22を挟んで一方側(図中、右側)で軸部22と当接部23aとの間に上下方向に貫通した取付孔24が形成されていると共に、下片23における当接部23aから軸部22までの上面側の間が当接部23aよりも凹んだ形態となっており、締結部材6の頭部等を収容可能な凹部25とされている。この固定部材20もまた、取付部材5へ取付ける前の状態では、下片23の底面23aが軸部22の直下が最も高くなるように湾曲しており、上記の固定部材10と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
また、上記の実施形態では、板状モジュール1として、側面が平坦なものに対応した固定部材10,20を示したが、これに限定するものではなく、例えば、図5に示すような、側面から外方へ延出した固定用のフランジ部3aを有した板状モジュール1と対応した固定部材20Aとしても良い。この固定部材20Aは、図示するように、図4に示した固定部材20における上片21が、左右両端に下方へ突出し板状モジュール1のフランジ部3aの上面と当接可能な突出部21aを備えた形態とされているものである。この固定部材20Aによると、側面にフランジ部3aを備えた板状モジュール1にも対応することができ、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、突出部21aがフランジ部3aの上面に突き刺さるようにしても良く、これにより、軸部22を挟んで両側に配置された板状モジュール1同士を電気的に接続することができる。
【0046】
更に、上記の実施形態では、固定部材10,20,20Aの上片11,21と下片13,23の当接部13a,23aとで板状モジュール1を挟むのみのものを示したが、これに限定するものではなく、図6及び図7に示すような板状モジュール1の固定を補助する補助固定部30,30Aを更に備えるようにしても良い。まず、図6に示す固定部材10Aは、上記の固定部材10の構成に加えて、下片13の軸部12を挟んで両側に夫々上下方向へ貫通した貫通孔16を備えていると共に、各貫通孔16へ下側から挿入される挿入片31及び挿入片31の上端に形成され先端が尖った突刺部32を有する補助固定部30を備えている。この例の補助固定部30は、一対の挿入片31の下端同士が連結片33によって連結されており、図示するように略コ字状に形成されている。また、この補助固定部30は、ステンレス鋼板等の金属板材を折り曲げたものであり、詳細な図示は省略するが、上端の長手方向両端に上方へ尖った突刺部32が形成されている。
【0047】
この例によると、固定部材10Aにおける下片13の湾曲した底面13bが取付部材5の上面と略一致するように取付孔14を介した締結部材6をねじ込んで、固定部材10Aを取付部材5に取付けると、貫通孔16に挿入された補助固定部30の突刺部32が相対的に下片13の上面から上方へ突出して板状モジュール1の下面に突き刺さるようになっている(図6(B)を参照)。これにより、上片11と下片13の当接部13aとによる挟持に加えて、補助固定部材30の突刺部32が板状モジュール1の下面に突き刺さることで、補助固定部30によっても板状モジュール1がガタ付いたり、固定部材10Aの延びた方向や軸部12から遠ざかる方向へスライドしたりするのを防止することができ、板状モジュール1を確実に固定することができる。また、補助固定部材30は、導電性を有するステンレス鋼板により形成されているので、軸部12を挟んで両側に固定された板状モジュール1同士を電気的に接続することができ、板状モジュール1同士のアース接続を簡単に行うことができる。
【0048】
一方、図7に示す固定部材20Bは、上記の図4に示した固定部材20の構成に対して、取付部材5に取付ける前の状態でも下片23の底面23bを平坦な状態とした上で、下片23の軸部22を挟んで両側に夫々上下方向へ貫通した貫通孔26を備えていると共に、各貫通孔16へ下側から挿入される挿入片31と突刺部32を有した補助固定部30Aを備えている。この例の補助固定部30Aは、図示するように、軸部22を挟んで取付孔24側の貫通孔26に挿入される挿入片31の下端から、連結片33と同一面状に軸部22から遠ざかる方向へ延びた延長片34と、延長片34の先端から斜め下方へ屈曲された弾性片35とを更に備えている。
【0049】
この例の固定部材20Bは、図7(A)に示すように、固定部材20Bを取付部材5に取付ける前の状態では、下片23の下側に配置された補助固定部30Aの弾性片35により、下片23の底面23aが、軸部22を挟んで取付孔24(弾性片35)とは反対側の先端が取付部材5の上面に当接するだけで、取付孔24側の先端は取付部材5の上面から浮いた状態となるようになっている。この状態で、軸部22を挟んで取付孔24とは反対側の上片21と下片23との間に板状モジュール1を挿入した上で、取付孔24を介して締結部材6をねじ込むと、屈曲した弾性片35が延長片34と同一面となるように展開すると共に、挿入片31の上端の突刺部32が板状モジュール1の下面に突き刺さることとなり(図7(B)を参照)、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
更に、図6や図7の実施形態では、補助固定部30,30Aにおける両側の突刺部32が、板状モジュール1の下面に夫々突き刺さるものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、図8に示すように、軸部12を挟んで取付孔14側の突刺部32が板状モジュール1の側面に突き刺さるようにしても良い。この固定部材10Bは、図6の固定部材10Aに対して、軸部12を挟んで取付孔14側の貫通孔16が、軸部12の根元の位置に形成されていると共に、補助固定部30Bにおける取付孔14側の貫通孔16に挿入される挿入片31が軸部12に沿って上方へ大きく延びだした上で、その挿入片31の上端から左右方向(図中右方向)へ尖るように突刺部32が形成されている。
【0051】
この例の固定部材10Bによると、上記と同様の作用効果を奏する他に、軸部12を挟んで取付孔14側の上片11と下片13との間に板状モジュール1を挿入する際に、下片13の貫通孔16から上方へ突出した挿入片31や突刺部32が邪魔になるのを回避させることができ、板状モジュール1を挿入し易くすることができる。
【0052】
また、上記の実施形態では、固定部材10,20の上片11,21が板状モジュール1の上面に当接するものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、図9に示すように、側面に溝3bが形成された板状モジュール1に対して、その側面の溝3b内に固定部材10Aの上片11を挿入させると共に、上片11を溝3bの上部に当接させて、下片13の当接部13aとの間で挟むようにしても良く、これによっても上記と同様の作用効果を奏することができる他に、上片11が板状モジュール1の上面に露出しないので、板状モジュール1の上面側の見栄えを良くすることができる。
【0053】
また、上記の実施形態では、締結部材6として、ビスやボルト等の頭部を有し下片13,23の上側から取付孔14,24を介して取付部材5へねじ込むものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、取付部材5側から雄ねじ部を突出させた上で、その雄ねじ部を取付孔14,24へ挿通させ、下片13,23の上側から雄ねじ部へ螺合させるナットとしても良く、これによっても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
更に、図1乃至図6、図8及び図9の実施形態では、固定部材10,20を取付ける取付部材5の締結部材6がねじ込まれる部位がねじ孔又はビス孔のものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、図7に示すように、ナット5aとしても良く、上記と同様の作用効果を奏することができる。なお、締結部材6を取付部材5のナット5aへねじ込むようにした場合、ナット5aを軸部12,22に対して直角方向(図中、左右方向)へスライドできるようにしても良く、これにより、固定部材10,20の取付位置を調整することができ、板状モジュール1の設置に係る作業性を高めることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 板状モジュール
2 太陽電池パネル
3 枠体
3b 溝
4 太陽電池モジュール
5 取付部材
5a ナット
6 締結部材
10,10A,10B,10C,20,20A,20B 固定部材
11,21 上片
12,22 軸部
13,23 下片
13a,23a 当接部
13b,23b 底面
14,24 取付孔
15,25 凹部
16,26 貫通孔
21a 突出部
30,30A,30B 補助固定部
31 挿入片
32 突刺部
33 連結片
34 延長片
35 弾性片
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2007−165499号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状モジュールの上面に当接可能、又は、板状モジュールの側面に形成された溝内に挿入可能とされ、左右方向へ延びた上片と、
該上片の中央から下方へ延出した軸部と、
該軸部の下端から両側へ前記上片よりも大きく延び、上側に板状モジュールの下面に当接可能な当接部を有した下片と、
該下片における前記軸部を挟んだ何れか一方側に形成され上下方向へ貫通した取付孔と
を少なくとも具備した固定部材であって、
該固定部材を、前記軸部に板状モジュールの側面を当接又は接近させた状態で、前記取付孔を介して前記下片を取付部材に取付けると、前記上片が下降して板状モジュールの上面又は溝の上部に当接すると共に、前記下片の前記当接部が板状モジュールの下面に当接するように形成したことを特徴とする固定部材。
【請求項2】
取付部材に取付ける前の状態では、前記下片の底面が、前記軸部の直下が最も高くなるように湾曲又は屈曲し、取付部材に取付けることで前記底面が取付部材に沿った状態に変形することを特徴とする請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記下片の前記軸部を挟んで両側に形成され上下方向へ貫通した貫通孔と、
該貫通孔へ下側から挿入され、前記取付孔を介して前記下片を取付部材に取付けると、上端が板状モジュールの下面に突き刺さる突刺部を有した補助固定部と
を更に具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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