説明

固定金具

【課題】いずれの位置にある床材でも、他の床材の固定を解除することなく固定解除および再固定可能な固定金具を提供することを目的としている。
【解決手段】固定部11が、無負荷状態で立ち上がり部12の上端同士が下端より近づいた状態となるように下方に凸の湾曲形状をしていて、固定ねじ4のねじ込みによってねじ挿通孔11aの周縁部が根太3との間で挟着されたとき、根太3の上面に沿うように弾性変形して係止部13が床材2の凹溝部21内に入り込むとともに、凹溝部21の下側壁を根太3との間で弾性係止するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根太等の下地材上に並設して設けた床材を下地材に固定するために用いる固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バルコニー床の形成に用いられるデッキ材とも称される床材の取り付け方法は、一定の目地幅を設けた状態で一定の間隔に配置された下地材としての根太に下方から受けられるとともに、根太に固定される。
上記床材の根太への固定方法としては、ビスを直接床板に打ち込んで固定する方法や固定金具を用いる方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、ビス固定は施工が簡単であるが、施工後もビスが直接見える場所にあるため、外観を損ねるということで現在では固定金具を用いた施工が主流となっている。
【0004】
一方、固定金具としては、例えば、図6に示すような幅方向の両側面に凹溝部110を備えた床材100の場合、図6及び図7に示すような固定金具200が用いられている(特許文献1参照)。
この固定金具200は、図7に示すように、ステンレス鋼などで形成されていて、固定部210と、立ち上がり部220と、係止部230とを備えている。
【0005】
固定部210は、中央にねじ挿通孔211が穿設された板状をしている。
立ち上がり部220は、固定部210の両側から対面するように立ち上がっている。
係止部230は、両立ち上がり部220の上端から他方の立ち上がり部220から離れるように延出するように設けられていて、水平部231と、この水平部231の先端から折れ曲がる折れ曲がり部232とを備えている。
【0006】
そして、床材100を下地としての根太300上に敷き並べるとともに、この固定金具200を用いて根太300に固定してバルコニー床等を形成する方法は、以下のようになっている。
(1)最も端に配置される床材100を根太300上に載置するとともに、固定金具200をこの載置された床材100の凹溝部110に一方の係止部230が嵌り込むとともに、凹溝部110より下側の側面と一方の立ち上がり部220とが略当接するように配置したのち、ねじ挿通孔211越しに固定部210の上方から固定ねじ400をねじ込む。
すなわち、固定ねじ400のねじ込みによって、固定部210のねじ挿通孔211の周囲がねじ頭部と根太300との間で挟み込まれ、固定金具200が根太300に固定される。また、床材100が、凹溝部110内に嵌り込んだ係止部230の水平部231が、その弾性力によって、水平部231と根太300との間で凹溝部110の下側壁が挟み込まれ、床材100の一方の側縁部が根太300上に固定される。
(2)隣接して配置される床材100を、その凹溝部110の下側壁が固定された固定金具200の他方の係止部230の水平部231の下方に嵌り込むように根太300上に載置する。
これにより隣接して配置される床材100の一方の側縁部が根太300に固定される。
(3)上記(1)と同様の、固定金具200の固定作業と、上記(2)と同様の、隣接して配置される床材100の根太300への載置作業をつぎつぎに繰り返してバルコニー床等を完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−27724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記固定金具200では、床材100を根太300の長軸方向の一方から他方に向かって順番に取り付けを行うようになっていることから、取り外し時には取り付けた方向と逆から順に外していく必要がある。そのため、床材100と床材100との目地部分にものを落とし、落としたものを目地部分から取り出せない場合や、破損によって床材100の1つを交換する必要が生じた場合でも、対象となる目地部分の床材100や、交換が必要な床材100に達するまで、端から順次床材100を取り外していく必要がある。したがって、作業に手間がかかるとともに、時間も費やすこととなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、いずれの位置にある床材でも、他の床材の固定を解除することなく固定解除および再固定可能な固定金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる固定金具は、ねじ挿通孔を有し、このねじ挿通孔を介して下地材に固定ねじをねじ込むことによってねじ頭部によってねじ挿通孔の周縁部を下地との間で挟着される板状をした固定部と、この固定部の両側から立ち上がる2つの立ち上がり部と、立ち上がり部の上端から他方の立ち上がり部から遠ざかる方向に延出し、立ち上がり部に沿うように下地材上に載置された床材の側面に設けられた凹溝部に嵌り込み、前記凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止して床材の端部を固定する係止部とを備える床材の固定金具において、前記固定部は、無負荷状態で前記立ち上がり部の上端同士が下端より近づいた状態となるように下方に凸の湾曲形状をしていて、固定ねじのねじ込みによってねじ挿通孔の周縁部が下地との間で挟着されたとき、下地面に沿うように弾性変形して前記係止部が凹溝部内に入り込むとともに、凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止するように形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明において、係止部は、凹溝部の壁面に食い込む突部を備えている構成としてもよい。
突部の形状は、特に限定されないが、平板状、三角形、鋸歯状等が挙げられる。
【0012】
本発明の固定金具の材質は、本発明の目的を達成できれば、特に限定されないが、ばね鋼、ステンレス鋼等を用いることが好ましい。
固定金具の大きさは任意であるが、金具厚み0.5〜1mm、固定部幅15mm、押圧部2〜7mmが望ましい。
また、固定部の湾曲形状は、特に限定されないが、曲率半径10〜30mm程度が望ましい。
【0013】
固定部の固定に用いる固定ねじとしては、特に限定されないが、例えば、ナベ型、皿型のビスや、六角ボルトが挙げられ、固定を強固にしたい場合には六角ボルトが好ましい。
また、固定にあたっては、固定ねじのねじ頭部と固定部との間にワッシャ等の座金を介在させるようにしても構わない。
【0014】
また、本発明の固定金具によって固定される床材としては、特に限定されないが、例えば、合成樹脂、無機材料、木材、これらの複合材料等からなるものが挙げられるが、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に木粉を混合した樹脂組成物を押出成形等によって成形した合成木材が好適である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明にかかる固定金具は、ねじ挿通孔を有し、このねじ挿通孔を介して下地材に固定ねじをねじ込むことによってねじ頭部によってねじ挿通孔の周縁部を下地との間で挟着される板状をした固定部と、この固定部の両側から立ち上がる2つの立ち上がり部と、立ち上がり部の上端から他方の立ち上がり部から遠ざかる方向に延出し、立ち上がり部に沿うように下地材上に載置された床材の側面に設けられた凹溝部に嵌り込み、前記凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止して床材の端部を固定する係止部とを備える床材の固定金具において、前記固定部は、無負荷状態で前記立ち上がり部の上端同士が下端より近づいた状態となるように下方に凸の湾曲形状をしていて、固定ねじのねじ込みによってねじ挿通孔の周縁部が下地との間で挟着されたとき、下地面に沿うように弾性変形して前記係止部が凹溝部内に入り込むとともに、凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止するように形成されているので、いずれの位置にある床材でも、他の床材の固定を解除することなく固定解除および再固定可能になる。
【0016】
すなわち、根太等の下地材上に湾曲状態の固定部を載せ、そのねじ挿通孔を介して固定ねじを下地材にねじ込んでいくと、固定部のねじ挿通孔の周縁部がねじ頭部で押えられ、固定部が下地材の受面に沿うように弾性変形して下地材に固定部が固定される。
そして、この固定部の固定状態では、立ち上がり部の上端間が広がり、係止部が従来の固定金具と同様の係止姿勢になり、床材の凹溝の壁面を係止部と下地材との間で挟着できるようになる。
【0017】
一方、この固定部の固定状態から固定ねじを緩めていくと、固定ねじのねじ頭部によるねじ挿通孔周縁部への押圧が解除され、固定部が弾性復元力によって元の下に凸の湾曲形状に戻る。したがって、立ち上がり部の下端が上方に持ち上がるとともに、上端間が下端間より狭まる。そして、係止部が固定部の幅方向中心方向に向かって斜め上方に持ち上がる。
【0018】
したがって、この固定金具は、従来の固定金具と同様にして床材を固定することができるとともに、床材の固定を解除する必要が生じた場合、固定を解除しようとする床材とこの床材に隣接する床材との目地にドライバー等の工具の先端部を差し込み、固定部を固定する固定ねじを緩めれば、固定部が下側に突出するように湾曲して、係止部が固定部の幅方向中心方向に向かって斜め上方に持ち上って係止部の凹溝部への係合が解除される。よって、1つの床材のみを取り外すことができる。一方、再び床材を取り付ける場合は、取り除いた床材の位置に再び床材をセットしたのち、緩めていた固定ねじを再びねじ込めば、床材の凹溝部内に係止部が嵌り込み下地材に固定される。
すなわち、この固定金具を用いれば、いずれの位置にある床材でも、他の床材の固定を解除することなく固定解除および再固定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる固定金具の第1の実施の形態の斜視図である。
【図2】図1の固定金具の断面図である。
【図3】図1の固定金具を用いた床材の固定状態をあらわす断面図である。
【図4】図1の固定金具の、床材への固定を解除する状態をあらわす断面図である。
【図5】本発明にかかる固定金具の第2の実施の形態の斜視図である。
【図6】従来の固定金具を用いた床材の固定状態をあらわす断面図である。
【図7】従来の固定金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる固定金具の第1の実施の形態をあらわしている。
【0021】
図1及び図2に示すように、この固定金具1aは、ばね鋼板あるいはステンレス鋼板を打ち抜きプレス加工することによって形成されていて、固定部11と、2つの立ち上がり部12と、2つの係止部13とを備えている。
【0022】
固定部11は、無負荷状態では、断面円弧状に湾曲していて、図1に示すように、中央にねじ挿通孔11aを備えている。
2つの立ち上がり部12は、固定部11が後述するように平板状に弾性変形した状態でそれぞれ固定部11の対向する一対の側縁から略垂直に立ち上がるように設けられていて、固定部11からその上端までの高さが固定される床材2の凹溝部21の下側壁の厚さと略同じになっている。
【0023】
2つの係止部13は、それぞれ水平部13aと折れ曲がり部13bとを備えている。
水平部13aは、一方の立ち上がり部12の上端で他方の立ち上がり部12から遠ざかる方向に立ち上がり部12に対して直交するように延出している。
折れ曲がり部13bは、水平部13aの先端から他方の立ち上がり部12に向かって斜め上方に延出するように設けられている。
【0024】
そして、この固定金具1aは、図3に示すように、前述の従来の固定金具200と同様にして、床材2を下地材としての根太3に固定することができる。
すなわち、根太3上に固定部11を載せ、ねじ挿通孔11aを介して固定ねじ4を根太3にねじ込んでいくと、固定部11のねじ挿通孔11aの周縁部がねじ頭部41で押えられ、固定部11が根太3の上面に沿うように弾性変形して受面である根太3の上面に沿うように略平板状になって固定部11のねじ挿通孔11aの周縁部がねじ頭部41と根太3との間で挟着固定される。
【0025】
そして、この固定部11の固定状態では、立ち上がり部12の上端間が広がり、根太3の上面に対して直交するようになるとともに、係止部13が従来の固定金具200と同様の係止姿勢になる。
すなわち、床材2の凹溝部21の下側壁が、係止部13の水平部13aと根太3との間で挟み込込まれ、床材2が図3に示すように固定される。
【0026】
一方、床材2と床材2の目地S内にものが落ち込んだり、床材2が破損したりして、床材2の1つを取り外す必要が生じた場合は、図4に示すように、床材2と床材2の目地Sからドライバー等の工具Dの先端部を差し入れ、取り外す床材2の一方の側縁側の固定金具1aの固定ねじ4を緩めて、固定ねじ4のねじ頭部41による固定部11への押圧を解除する。
これにより、固定部11は、図4に示すように、弾性復元力によって下側に凸の湾曲形状に戻る。そして、立ち上がり部12の上端は、固定部11の弾性復元に伴って、他方の立ち上がり部12の上端との距離が近づくように移動し、係止部13もそれに伴って固定部11の幅方向中心方向に向かって斜め上方に持ち上って係止部13が凹溝部21から外側に出た状態となる。すなわち、係止部13の凹溝部21への係合が解除される。
【0027】
したがって、床材2の係合が解除された側の端縁を斜め上方にスライドさせると、床材2の他方の端縁の凹溝部21への固定金具1aの係止部13の係合が解除されて床材2を取り外すことができる。
【0028】
また、目地Sに落ち込んだものを取り除いたのち、再び取り外した床材2を元の場所の固定する、あるいは、破損して取り除いた床材2の後に新しい床材2を固定する場合には、
床材2の一方の側縁を上方に持ち上げ、他方の側縁側を固定ねじ4を緩めていない側の固定金具1aに向けた状態で根太3上に載せながら、固定ねじ4を緩めていない固定金具1a方向にスライドさせ、固定ねじ4を緩めていない固定金具1aの係止部13を床材2の凹溝部21に嵌め込む。
【0029】
つぎに、床材2の固定ねじ4を緩めた側の端部を固定金具1aを避けながら、根太3上に載置する。
そして、固定ねじ4が緩められた固定金具1aの固定ねじ4を目地Sから先端部を差し入れたドライバーDによって固定ねじ4を根太3にねじ込み、固定部11を再び根太3の上面に沿うように弾性変形させて、図3に示すように、係止部13を床材2の一方の側縁の凹溝部21内に臨ませて再取り付けされたあるいは交換された床材2を根太3に固定する。
【0030】
この固定金具1aは、以上のように、他の床材2を取り外さなくても、取り外したい床材2のみを簡単に取り外すことができる。しかも、取り外した床材2の再取り付け、あるいは、新しい床材2と交換を行うことできる。
したがって、目地S内に落ち込んだものを取り出す作業、あるいは、破損した床材を交換する作業を行う場合に端の床材2から順に取り外す必要がなく、従来に比べ作業性に優れるとともに、作業時間も短縮できる。
【0031】
図5は、本発明にかかる固定金具の第2の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この固定金具1bは、水平部13aの長手方向の両端縁の一部を固定部11側に向かって直角に切り起こすことによって形成された平板状の突起13cを備えている以外は、上記固定金具1aと同様になっている。
【0032】
この固定金具1bは、上記のように突起13cを備えているので、固定部11が固定ねじ4の締め込みによって根太3の上面に沿うように弾性変形し、水平部13aが床材2の凹溝部21の下側壁に近づくと、突起13cが凹溝部21の下側壁に食い込むように作用する。
したがって、床材2の長手方向のズレ動きを確実に抑えることができる。
【0033】
なお、この固定金具1bの場合、上記のように突起13cが設けられ、この突起13cが凹溝部21の下側壁に食い込んでいるので、床材2を取り外す場合には、床材2の両側で固定金具1bの固定ねじ4を緩める必要がある。
【0034】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、
固定部にねじ挿通孔が1つであったが、長尺の場合、2つ以上設けるようにしても構わない。
また、上記の第2の実施の形態では、突起が水平部の長手方向の両端縁の一部を固定部側に向かって直角に切り起こすことによって形成されていたが、水平部の長手方向の片側の端縁に設けられていても構わないし、水平部の長手方向の中央部に設けられていても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の固定金具は、バルコニー床等に用いられる床材を根太等の下地材に固定するために用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1a,1b 固定金具
11 固定部
11a ねじ挿通孔
12 立ち上がり部
13 係止部
2 床材
21 凹溝部
3 根太(下地材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ挿通孔を有し、このねじ挿通孔を介して下地材に固定ねじをねじ込むことによってねじ頭部によってねじ挿通孔の周縁部を下地との間で挟着される板状をした固定部と、
この固定部の両側から立ち上がる2つの立ち上がり部と、
立ち上がり部の上端から他方の立ち上がり部から遠ざかる方向に延出し、立ち上がり部に沿うように下地材上に載置された床材の側面に設けられた凹溝部に嵌り込み、前記凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止して床材の端部を固定する係止部とを備える床材の固定金具において、
前記固定部は、無負荷状態で前記立ち上がり部の上端同士が下端より近づいた状態となるように下方に凸の湾曲形状をしていて、固定ねじのねじ込みによってねじ挿通孔の周縁部が下地との間で挟着されたとき、下地面に沿うように弾性変形して前記係止部が凹溝部内に入り込むとともに、凹溝部の壁面を下地材との間で弾性係止するように形成されていることを特徴とする固定金具。
【請求項2】
係止部は、凹溝部の壁面に食い込む突部を備えている請求項1に記載の固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−69155(P2011−69155A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222613(P2009−222613)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】