説明

固形物圧送装置及び固形物圧送方法

【課題】本発明の目的は、滑剤注入のための設備費が低減される固形物圧送装置及び固形物圧送方法を提供することである。
【解決手段】固形物圧送装置は、固形物を輸送配管100へ吐出する圧送ポンプ20と、圧送ポンプ20の吸込側に滑剤を注入する滑剤注入ポンプ101とを具備する。圧送ポンプ20の吸込側には圧送ポンプ20の吐出圧力が作用しないため、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力が低くて済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や排土のような間隙水を含む固形物をパイプ輸送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、汚泥や排土のような流動性が低い物質を輸送ポンプ及び輸送パイプを用いてパイプ輸送する技術を開示している。輸送パイプは、輸送ポンプの吐出部から目的地まで延びている。輸送物と輸送パイプ内壁との摩擦抵抗を低減するために、滑剤注入ポンプが、輸送パイプの適宜の一個所又は複数の個所に水、油、又は高分子潤滑剤のような滑剤を注入する。
【0003】
このように輸送ポンプの吐出側に滑剤を注入する場合、吐出圧力の高い滑剤注入ポンプが必要である。したがって、滑剤注入のための設備費が高額になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−12160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、滑剤注入のための設備費が低減される固形物圧送装置及び固形物圧送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明による固形物圧送装置は、固形物を輸送配管(100)へ吐出する圧送ポンプ(20、60)と、前記圧送ポンプの吸込側(44a、25、83、83a)に滑剤を注入する滑剤注入ポンプ(101)とを具備する。
【0008】
前記固形物は、ホッパ(10)から前記圧送ポンプに供給される。前記圧送ポンプは、 搬送シリンダ(30)と、前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストン(31)と、前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室(40)と、前記吸込バルブ室と前記ホッパの間に設けられた中間板(44)と、前記中間板に形成された吸込口(44a)を開閉する吸込バルブ(41)と、前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室(50)と、前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口(50a)を開閉する吐出バルブ(51)とを備える。前記滑剤注入ポンプは、前記吸込口に前記滑剤を注入する。
【0009】
前記中間板は、前記吸込口の周囲を囲む輸送管(44b)と、前記輸送管の周囲に設けられた環状流路(44c)とを備える。前記滑剤注入ポンプは、前記環状流路を介して前記輸送管の側端の全周から前記吸込口に前記滑剤を供給する。
【0010】
前記圧送ポンプは、搬送シリンダ(30)と、前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストン(31)と、前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室(40)と、前記固形物がホッパ(10)から供給される前室(25)と、前記吸込バルブ室と前記前室の間に設けられた中間板(44)と、前記中間板に形成された吸込口(44a)を開閉する吸込バルブ(41)と、前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室(50)と、前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口(50a)を開閉する吐出バルブ(51)とを備える。前記滑剤注入ポンプは、前記前室に前記滑剤を注入する。
【0011】
固形物圧送装置は、前記前室の周囲に設けられた環状流路(15)と、前記前室と前記環状流路を連通する複数流路(25a)とを更に具備する。前記複数流路は前記前室の周方向に沿って配置される。前記滑剤注入ポンプは、前記環状流路に前記滑剤を供給する。
【0012】
前記固形物は、ホッパ(11)から前記圧送ポンプに供給される。前記圧送ポンプはモーノポンプ(60)である。前記モーノポンプは、ポンプ本体(70)と、駆動装置(90)と、前記ポンプ本体と前記駆動装置との間に設けられた中間部(80)とを備える。前記ポンプ本体は、ステータ(71)と、前記ステータに形成された孔(71a)の中で回転するロータ(72)とを備える。前記中間部は、前記駆動装置から前記ロータに回転動力を伝達する回転伝達部材(86)と、前記回転伝達部材を収容するケーシング(81)とを備える。前記ケーシングは、前記ホッパに接続された第1部分(82)と、前記第1部分と前記ポンプ本体の間の第2部分(83、83a)とを備える。前記滑剤注入ポンプは、前記第2部分に前記滑剤を注入する。
【0013】
固形物圧送装置は、前記圧送ポンプの吐出圧力を検出する圧力計(104)と、前記滑剤注入ポンプと前記吸込側とを接続する滑剤供給ライン(103)と、前記滑剤供給ラインに設けられた流量調整バルブ(107)と、前記吐出圧力に基づいて前記流量調整バルブを制御する制御装置(110)とを更に具備する。
【0014】
本発明による固形物圧送方法は、圧送ポンプ(20、60)が固形物を輸送配管(100)へ吐出するステップと、前記圧送ポンプの吸込側(44a、25、83、83a)に滑剤を注入するステップとを具備する。
【0015】
固形物圧送方法は、前記固形物をホッパ(10)から前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備する。前記圧送ポンプは、搬送シリンダ(30)と、前記搬送シリンダ内を往復するピストン(31)と、前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室(40)と、前記吸込バルブ室と前記ホッパの間に設けられた中間板(44)と、前記中間板に形成された吸込口(44a)を開閉する吸込バルブ(41)と、前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室(50)と、前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口(50a)を開閉する吐出バルブ(51)とを備える。前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記吸込口に前記滑剤を注入する。
【0016】
前記中間板は、前記吸込口の周囲を囲む輸送管(44b)と、前記輸送管の周囲に設けられた環状流路(44c)とを備える。前記滑剤を注入する前記ステップは、前記環状流路を介して前記輸送管の側端の全周から前記吸込口に滑剤を供給するステップを含む。
【0017】
固形物圧送方法は、前記固形物をホッパ(10)から前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備する。前記圧送ポンプは、搬送シリンダ(30)と、前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストン(31)と、前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室(40)と、前記ホッパと前記吸込バルブ室の間に設けられた前室(25)と、前記吸込バルブ室と前記前室の間に設けられた中間板(44)と、前記中間板に形成された吸込口(44a)を開閉する吸込バルブ(41)と、前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室(50)と、前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口(50a)を開閉する吐出バルブ(51)とを備える。前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記前室に前記滑剤を注入する。
【0018】
前記前室の周囲に環状流路(15)が設けられる。前記前室と前記環状流路を連通する複数流路(25a)が設けられる。前記複数流路は前記前室の周方向に沿って配置される。 前記滑剤を注入する前記ステップは、前記環状流路に滑剤を供給するステップを含む。
【0019】
固形物圧送方法は、前記固形物をホッパ(11)から前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備する。前記圧送ポンプはモーノポンプ(60)である。前記モーノポンプは、ポンプ本体(70)と、駆動装置(90)と、前記ポンプ本体と前記駆動装置との間に設けられた中間部(80)とを備える。前記ポンプ本体は、ステータ(71)と、前記ステータに形成された孔(71a)の中で回転するロータ(72)とを備える。前記中間部は、前記駆動装置から前記ロータに回転動力を伝達する回転伝達部材(86)と、前記回転伝達部材を収容するケーシング(81)とを備える。前記ケーシングは、前記ホッパに接続された第1部分(82)と、前記第1部分と前記ポンプ本体との間の第2部分(83、83a)とを備える。前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記第2部分に滑剤を注入する。
【0020】
固形物圧送方法は、前記圧送ポンプの吐出圧力を検出すステップを更に具備する。前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記吐出圧力に基づいて前記滑剤の流量を制御する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、滑剤注入のための設備費が低減される固形物圧送装置及び固形物圧送方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る固形物圧送装置の概略図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る圧送ポンプ(ピストンポンプ)の側面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る圧送ポンプの正面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る圧送ポンプの部分断面上面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る圧送ポンプが備える中間板のA−A断面図である。
【図6】図6は、第1の実施形態の変形例に係る圧送ポンプが備える前室のB−B断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係る圧送ポンプ(モーノポンプ)の側面図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る圧送ポンプの部分断面側面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明による固形物圧送装置及び固形物圧送方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る固形物圧送装置を説明する。本実施形態に係る固形物圧送装置は、ホッパ10と、圧送ポンプ20と、輸送配管100と、滑剤注入ポンプ101と、滑剤タンク102と、滑剤供給ライン103を備える。輸送配管100は、圧送ポンプ20から目的地に延びている。滑剤タンク102は、液体の滑剤を貯える。滑剤は、例えば、水、又は高分子滑剤を含む水である。滑剤供給ライン103は、滑剤注入ポンプ101と圧送ポンプ20の吸込側(負圧部分)とを接続する。
【0025】
固形物圧送装置は、汚泥や排土のような間隙水を含む固形物を、汚泥焼却設備のような目的地へパイプ輸送する。汚泥は、例えば、下水汚泥や食品工場排水汚泥である。ホッパ10は、間隙水を含む固形物を圧送ポンプ20に供給する。圧送ポンプ20は、固形物を輸送配管100へ吐出する。固形物は、圧送ポンプ20の吐出圧力により輸送配管100内を目的地へ移動する。滑剤注入ポンプ101は、圧送ポンプ20の吸込側に滑剤を注入する。これにより、固形物と輸送配管100内壁との間に滑剤の膜が形成され、固形物と輸送配管100の内壁との摩擦抵抗が低減される。
【0026】
圧送ポンプ20の吸込側においては圧送ポンプ20の吐出圧力が作用しないため、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力は高くなくてもよい。したがって、滑剤注入のための設備費が低減される。
【0027】
図2は、圧送ポンプ20の側面図である。圧送ポンプ20は、ピストンポンプである。圧送ポンプ20は、吐出口21と、搬送ユニット22及び23と、前室25を備える。前室25は、ゲートバルブ12を介してホッパ10に接続される。吐出口21は、輸送配管100に接続される。
【0028】
図3は、圧送ポンプ20の正面図である。
【0029】
図4は、圧送ポンプ20の部分断面上面図である。搬送ユニット22は、搬送シリンダ30と、搬送ピストン31と、搬送ピストンアクチュエータ32と、吸込バルブ室40と、バルブ41と、バルブアクチュエータ42と、バルブシート43と、バルブシート43の抑え板としての中間板44と、吐出バルブ室50と、バルブ51と、バルブアクチュエータ52と、バルブシート53を備える。搬送ピストン31は、搬送ピストンアクチュエータ32に駆動されて搬送シリンダ30内を搬送シリンダ30の中心軸に沿って往復する。吸込バルブ室40及び吐出バルブ室50は、搬送シリンダ30の中心軸の延長上に配置されている。吸込バルブ室40は、吐出バルブ室50と搬送シリンダ30の間に配置される。吸込バルブ室40は、搬送シリンダ30に接続される。吸込バルブ室40は、吐出バルブ室50を介して吐出口21に接続される。すなわち、吐出バルブ室50は、吸込バルブ室40と輸送配管100の間に設けられている。吸込バルブ室40は前室25を介してホッパ10に接続されている。中間板44は、吸込バルブ室40と前室25の間に設けられている。すなわち、中間板44は、吸込バルブ室40とホッパ10の間に設けられている。中間板44には、吸込バルブ室40と前室25とを連通する吸込口44aが形成されている。バルブシート43は、吸込口44aの吸込バルブ室40側に配置されている。バルブ41は、バルブアクチュエータ42によって駆動されて吸込口44aを開閉する。吸込バルブ室40と吐出バルブ室50の間の接続口50aの吐出バルブ室50側にバルブシート53が配置される。バルブ51は、バルブアクチュエータ52によって駆動されて接続口50aを開閉する。接続口50aは搬送シリンダ30の中心軸の延長上に配置されているが、吸込口44aは搬送シリンダ30の中心軸の延長上に配置されていない。
【0030】
ホッパ10から固形物が前室25に供給される。搬送ユニット22は、前室25から固形物を吸い込んで吐出口21へ押し出す。搬送ユニット22が固形物を吸い込むとき、バルブ41が吸込口44aを開き、且つ、バルブ51が接続口50aを閉じた状態で、搬送ピストン31が吸込バルブ室40から後退する。搬送ユニット22が固形物を押し出すとき、バルブ41が吸込口44aを閉じ、且つ、バルブ51が接続口50aを開いた状態で、搬送ピストン31が吸込バルブ室40に向かって前進する。
【0031】
搬送ユニット23は、搬送ユニット22と同様に構成されており、搬送ユニット22と同様に動作する。ただし、搬送ユニット22が前室25から固形物を吸い込むときに搬送ユニット23が固形物を吐出口21へ押し出し、搬送ユニット22が固形物を吐出口21へ押し出すときに搬送ユニット23が前室25から固形物を吸い込む。
【0032】
滑剤注入ポンプ101が滑剤を注入する圧送ポンプ20の吸込側は、ホッパ10の出口よりも下流側(吸込バルブ室40側)且つバルブシート43よりも上流側(ホッパ10側)の部分である。この部分には圧送ポンプ20の吐出圧力が作用しないため、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力が低くて済む。
【0033】
また、この部分に滑剤を注入することで滑剤と固形物とが混ざってしまうことが防がれる。ここで、ホッパ10が固形物を前室25に押し込む押し込み機を備える場合にホッパ10に滑剤を注入すると、押し込み機によって固形物と滑剤が混ざってしまう。
【0034】
図5を参照して、滑剤注入ポンプ101が吸込口44aに滑剤を注入する場合の中間板44の構造を説明する。中間板44は、吸込口44aの周囲を囲む輸送管44bと、輸送管44bの周囲を囲む環状流路44cを備える。環状流路44cは、吸込口44aの周囲を囲んでいる。滑剤供給ライン103は、滑剤注入ポンプ101と環状流路44cを接続する。滑剤注入ポンプ101が環状流路44cに滑剤を四方向から供給することで、輸送管44bの側端の全周から吸込口44aに滑剤が注入される。吸込口44aは、輸送配管100に近いため、固形物と輸送配管100の内壁との間に膜を形成するための滑剤の注入ポイントとして好適である。
【0035】
本実施形態においては、一台の滑剤注入ポンプ101が搬送ユニット22の吸込口44a及び搬送ユニット23の吸込口44aに滑剤を注入してもよく、二台の滑剤注入ポンプ101がそれぞれ搬送ユニット22の吸込口44a及び搬送ユニット23の吸込口44aに滑剤を注入してもよい。
【0036】
また、上記説明では圧送ポンプ20は搬送ユニット22及び搬送ユニット23を備えるダブルピストンタイプであるが、圧送ポンプ20は搬送ユニット22及び搬送ユニット23の片方だけを備えるシングルピストンタイプであってもよい。
【0037】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置を説明する。第1の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置は、吸込口44aのかわりに前室25に滑剤が注入される点を除いて、上述の固形物圧送装置と同様である。
【0038】
図6を参照して、前室25の周囲に環状流路15が設けられ、前室25と環状流路15を連通する複数の流路25aが設けられる。複数の流路25aは前室25の周方向に沿って配置される。滑剤供給ライン103は、滑剤注入ポンプ101と環状流路15を接続する。滑剤注入ポンプ101が環状流路15に滑剤を供給することで、前室25の周囲全体から滑剤が注入される。
【0039】
(第2の実施形態)
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る固形物圧送装置を説明する。本実施形態に係る固形物圧送装置は、ホッパ10及び圧送ポンプ20がホッパ11及び圧送ポンプ60でそれぞれ置き換えられている点を除いて、第1の実施形態に係る固形物圧送装置と同様である。
【0040】
ホッパ11は、間隙水を含む固形物を圧送ポンプ60に供給する。圧送ポンプ60は固形物を輸送配管100へ吐出する。固形物は、圧送ポンプ60の吐出圧力により輸送配管100内を目的地へ移動する。滑剤注入ポンプ101は、圧送ポンプ60の吸込側(負圧部分)に滑剤を注入する。これにより、固形物と輸送配管100内壁との間に滑剤の膜が形成され、固形物と輸送配管100の内壁との摩擦抵抗が低減される。
【0041】
圧送ポンプ60の吸込側においては圧送ポンプ60の吐出圧力が作用しないため、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力は高くなくてもよい。したがって、滑剤注入のための設備費が低減される。
【0042】
圧送ポンプ60は、モーノポンプ(一軸偏心ポンプ)である。圧送ポンプ60は、エンドスタッド65と、ポンプ本体70と、中間部80と、駆動装置90を備える。エンドスタッド65と、ポンプ本体70と、中間部80と、駆動装置90は、この順番に並んでいる。中間部80は、ポンプ本体70と駆動装置90との間に設けられる。ホッパ11は、固形物を中間部80に供給する。エンドスタッド65は、一方の端部がポンプ本体70に接合され、他方の端部に圧送ポンプ60の吐出口65aが形成されている。吐出口65aは輸送配管100に接続される。
【0043】
図8を参照して、ポンプ本体70は、ステータ71と、ロータ72とを備える。ロータ72は、孔71aの中に配置される。ロータ72及び孔71aは、それぞれねじれた形状を有している。中間部80は、駆動装置90の出力軸に接続されるドライブシャフト89と、ドライブシャフト89を回転可能に支持する軸受部85と、スクリューロッド86と、ジョイント87及び88と、筒状のケーシング81とを備える。スクリューロッド86は、一端がジョイント87を介してロータ72に接続され、他端がジョイント88を介してドライブシャフト89に接続される。ケーシング81は、スクリューロッド86、ジョイント87、及びジョイント88を収容する。駆動装置90は、スクリューロッド86を介してロータ72を回転させる。すなわち、スクリューロッド86は駆動装置90からロータ72に回転動力を伝達する回転伝達部材である。ロータ72は、駆動装置90に駆動されて孔71aの中で回転する。ケーシング81は、吸込口82aが形成された吸込口形成部分82と、吸込口形成部分82とポンプ本体70の間のポンプ本体側部分83を備える。ポンプ本体側部分83は、点検孔の蓋としての点検蓋83aを備える。
【0044】
ホッパ11は、固形物を吸込口82aから吸込口形成部分82に供給する。固形物は、回転するスクリューロッド86から力を受けて、又は、相対的に回転するステータ71及びロータ72に吸い込まれて、吸込口形成部分82からポンプ本体側部分83を通ってポンプ本体70へ移動する。ポンプ本体70は固形物を吐出口65aへ押し出す。
【0045】
滑剤供給ライン103は、ポンプ本体側部分83、例えば、点検蓋83aに接続される。滑剤注入ポンプ101は、圧送ポンプ60の吸込側としてのポンプ本体側部分83に滑剤を注入する。注入された滑剤は、固形物とステータ71の内壁の間、及び、固形物と輸送配管100の内壁との間に膜を形成する。これにより、固形物とステータ71の内壁との摩擦抵抗、及び、固形物と輸送配管100の内壁との摩擦抵抗が低減される。注入された滑剤は、ロータ72又はスクリューロッド86により固形物が回転するために、固形物の表面全周に膜を形成する。圧送ポンプ60の吸込側は、ホッパ11の出口よりも下流側(ポンプ本体70側)且つポンプ本体70よりも上流側(ホッパ11側)の部分である。この部分には圧送ポンプ60の吐出圧力が作用しないため、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力が低くて済む。
【0046】
また、この部分に滑剤を注入することで滑剤と固形物とが混ざってしまうことが防がれる。ここで、ホッパ11が固形物をケーシング81内に押し込む押し込み機を備える場合にホッパ11に滑剤を注入すると、押し込み機によって固形物と滑剤が混ざってしまう。
【0047】
本実施形態においては、スクリューを備えないロッドをスクリューロッド86のかわりに用いることも可能である。
【0048】
(第2の実施形態の変形例)
図9を参照して、第2の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置を説明する。第2の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置は、第2の実施形態に係る固形物圧送装置に圧力計104及び105と、流量計106と、流量調整バルブ107と、逆止弁108と、滑剤流量制御装置110とが追加されたものである。圧力計104は、輸送配管100に設けられている。圧力計105、流量計106、流量調整バルブ107、及び逆止弁108は、滑剤供給ライン103に設けられている。滑剤流量制御装置110は、圧送ポンプ60の吐出圧力と圧送ポンプ60に注入される滑剤の目標流量とを対応付けたテーブル111を備える。圧力計105は、滑剤注入ポンプ101の吐出圧力を検出する。滑剤注入ポンプ101の吐出圧力は、工程管理のために利用される。
【0049】
圧力計104は、圧送ポンプ60の吐出圧力を検出して検出吐出圧力として滑剤流量制御装置110に出力する。流量計106は、圧送ポンプ60に注入される滑剤の流量を検出して検出流量として滑剤流量制御装置110に出力する。滑剤流量制御装置110は、検出吐出圧力及びテーブル111に基づいて検出吐出圧力に対応する滑剤の目標流量を取得する。滑剤流量制御装置110は、滑剤の検出流量と目標流量とが一致するように流量調整バルブ107を制御する。このように、圧送ポンプ60の吐出圧力に基づいて滑剤の流量が制御される。
【0050】
圧送ポンプ60の吐出圧力に基づいて滑剤の流量を制御することで、固形物と輸送配管100の内壁との摩擦抵抗を低減しながら滑剤の注入量を最小限に抑えることができる。したがって、滑剤注入による固形物の水分増加が抑制される。
【0051】
滑剤流量制御装置110は、圧送ポンプ60の吐出圧力に基づく滑剤の流量制御のかわりに、圧送ポンプ60の吐出圧力に基づく滑剤ポンプ101のオンオフ制御を実行してもよい。この場合、滑剤流量制御装置110は、圧力計104が出力する検出吐出圧力が設定圧力上限値に達したら滑剤ポンプ101の運転を開始し、圧力計104が出力する検出吐出圧力が設定圧力上限値より低い設定圧力下限値まで下がったら滑剤ポンプ101の運転を停止する。
【0052】
圧力計104及び105と、流量計106と、流量調整バルブ107と、逆止弁108と、滑剤流量制御装置110とを第1の実施形態に係る固形物圧送装置及び第1の実施形態の変形例に係る固形物圧送装置に適用してもよい。また、オペレータが滑剤流量制御装置110のかわりに圧送ポンプ20又は60の吐出圧力に基づく滑剤の流量の制御を実行してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10、11…ホッパ
12…ゲートバルブ
15…環状流路
20…圧送ポンプ(ピストンポンプ)
21…吐出口
22、23…搬送ユニット
25…前室
25a…流路
30…搬送シリンダ
31…搬送ピストン
32…搬送ピストンアクチュエータ
40…吸込バルブ室
41…バルブ
42…バルブアクチュエータ
43…バルブシート
44…中間板
44a…吸込口
44b…輸送管
44c…環状流路
50…吐出バルブ室
50a…接続口
51…バルブ
52…バルブアクチュエータ
53…バルブシート
60…圧送ポンプ(モーノポンプ)
65…エンドスタッド
65a…吐出口
70…ポンプ本体
71…ステータ
71a…孔
72…ロータ
80…中間部
81…ケーシング
82…吸込口形成部分
82a…吸込口
83…ポンプ本体側部分
83a…点検蓋
85…軸受部
86…スクリューロッド(回転伝達部材)
87、88…ジョイント
89…ドライブシャフト
90…駆動装置
100…輸送配管
101…滑剤注入ポンプ
102…滑剤タンク
103…滑剤供給ライン
104、105…圧力計
106…流量計
107…流量調整バルブ
108…逆止弁
110…滑剤流量制御装置
111…テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を輸送配管へ吐出する圧送ポンプと、
前記圧送ポンプの吸込側に滑剤を注入する滑剤注入ポンプと
を具備する
固形物圧送装置。
【請求項2】
前記固形物は、ホッパから前記圧送ポンプに供給され、
前記圧送ポンプは、
搬送シリンダと、
前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストンと、
前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記ホッパの間に設けられた中間板と、
前記中間板に形成された吸込口を開閉する吸込バルブと、
前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口を開閉する吐出バルブと
を備え、
前記滑剤注入ポンプは、前記吸込口に前記滑剤を注入する
請求項1の固形物圧送装置。
【請求項3】
前記中間板は、
前記吸込口の周囲を囲む輸送管と、
前記輸送管の周囲に設けられた環状流路と
を備え、
前記滑剤注入ポンプは、前記環状流路を介して前記輸送管の側端の全周から前記吸込口に前記滑剤を供給する
請求項2の固形物圧送装置。
【請求項4】
前記圧送ポンプは、
搬送シリンダと、
前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストンと、
前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室と、
前記固形物がホッパから供給される前室と、
前記吸込バルブ室と前記前室の間に設けられた中間板と、
前記中間板に形成された吸込口を開閉する吸込バルブと、
前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口を開閉する吐出バルブと
を備え、
前記滑剤注入ポンプは、前記前室に前記滑剤を注入する
請求項1の固形物圧送装置。
【請求項5】
前記前室の周囲に設けられた環状流路と、
前記前室と前記環状流路を連通する複数流路と
を更に具備し、
前記複数流路は前記前室の周方向に沿って配置され、
前記滑剤注入ポンプは、前記環状流路に前記滑剤を供給する
請求項4の固形物圧送装置。
【請求項6】
前記固形物は、ホッパから前記圧送ポンプに供給され、
前記圧送ポンプはモーノポンプであり、
前記モーノポンプは、
ポンプ本体と、
駆動装置と、
前記ポンプ本体と前記駆動装置との間に設けられた中間部と
を備え、
前記ポンプ本体は、
ステータと、
前記ステータに形成された孔の中で回転するロータと
を備え、
前記中間部は、
前記駆動装置から前記ロータに回転動力を伝達する回転伝達部材と、
前記回転伝達部材を収容するケーシングと
を備え、
前記ケーシングは、
前記ホッパに接続された第1部分と、
前記第1部分と前記ポンプ本体の間の第2部分と
を備え、
前記滑剤注入ポンプは、前記第2部分に前記滑剤を注入する
請求項1の固形物圧送装置。
【請求項7】
前記圧送ポンプの吐出圧力を検出する圧力計と、
前記滑剤注入ポンプと前記吸込側とを接続する滑剤供給ラインと、
前記滑剤供給ラインに設けられた流量調整バルブと、
前記吐出圧力に基づいて前記流量調整バルブを制御する制御装置と
を更に具備する
請求項1乃至6のいずれかに記載の固形物圧送装置。
【請求項8】
圧送ポンプが固形物を輸送配管へ吐出するステップと、
前記圧送ポンプの吸込側に滑剤を注入するステップと
を具備する
固形物圧送方法。
【請求項9】
前記固形物をホッパから前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備し、
前記圧送ポンプは、
搬送シリンダと、
前記搬送シリンダ内を往復するピストンと、
前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記ホッパの間に設けられた中間板と、
前記中間板に形成された吸込口を開閉する吸込バルブと、
前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口を開閉する吐出バルブと
を備え、
前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記吸込口に前記滑剤を注入する
請求項8の固形物圧送方法。
【請求項10】
前記中間板は、
前記吸込口の周囲を囲む輸送管と、
前記輸送管の周囲に設けられた環状流路と
を備え、
前記滑剤を注入する前記ステップは、前記環状流路を介して前記輸送管の側端の全周から前記吸込口に滑剤を供給するステップを含む
請求項9の固形物圧送方法。
【請求項11】
前記固形物をホッパから前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備し、
前記圧送ポンプは、
搬送シリンダと、
前記搬送シリンダ内を往復する搬送ピストンと、
前記搬送シリンダに接続された吸込バルブ室と、
前記ホッパと前記吸込バルブ室の間に設けられた前室と、
前記吸込バルブ室と前記前室の間に設けられた中間板と、
前記中間板に形成された吸込口を開閉する吸込バルブと、
前記吸込バルブ室と前記輸送配管の間に設けられた吐出バルブ室と、
前記吸込バルブ室と前記吐出バルブ室の間の接続口を開閉する吐出バルブと
を備え、
前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記前室に前記滑剤を注入する
請求項8の固形物圧送方法。
【請求項12】
前記前室の周囲に環状流路が設けられ、
前記前室と前記環状流路を連通する複数流路が設けられ、
前記複数流路は前記前室の周方向に沿って配置され、
前記滑剤を注入する前記ステップは、前記環状流路に滑剤を供給するステップを含む
請求項11の固形物圧送方法。
【請求項13】
前記固形物をホッパから前記圧送ポンプに供給するステップを更に具備し、
前記圧送ポンプはモーノポンプであり、
前記モーノポンプは、
ポンプ本体と、
駆動装置と、
前記ポンプ本体と前記駆動装置との間に設けられた中間部と
を備え、
前記ポンプ本体は、
ステータと、
前記ステータに形成された孔の中で回転するロータと
を備え、
前記中間部は、
前記駆動装置から前記ロータに回転動力を伝達する回転伝達部材と、
前記回転伝達部材を収容するケーシングと
を備え、
前記ケーシングは、
前記ホッパに接続された第1部分と、
前記第1部分と前記ポンプ本体との間の第2部分と
を備え、
前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記第2部分に滑剤を注入する
請求項8の固形物圧送方法。
【請求項14】
前記圧送ポンプの吐出圧力を検出すステップを更に具備し、
前記滑剤を注入する前記ステップにおいて、前記吐出圧力に基づいて前記滑剤の流量を制御する
請求項8乃至13のいずれかに記載の固形物圧送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207605(P2011−207605A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78611(P2010−78611)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】