固液分離装置
【課題】 汚泥などの処理対象物を詰まらせることなく搬送し、その処理対象物から効率よく液体を分離でき、しかもメンテナンス作業を容易に行うことのできる固液分離装置を提案する。
【解決手段】 可動板12と固定板13とを交互に配置し、可動板12と固定板13に形成した凹部14,15に、2本のスクリュー21,22を配置し、両スクリュー21,22の上方をカバーで覆い、両スクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、右側に位置するスクリュー22を時計方向に回転駆動し、左側に位置するスクリュー21を反時計方向に回転駆動して、処理対象物を搬送しながら、液体を可動板12と固定板13の間の間隙から排出させる。このとき、可動板12は固定板13に対して往復運動し、可動板12と固定板13の間の間隙に固形分が目詰まりすることを防止し、可動板12の交換時には、2本のスクリュー21,22を上方に持ち上げ、次いで可動板12を上方に引き上げる。
【解決手段】 可動板12と固定板13とを交互に配置し、可動板12と固定板13に形成した凹部14,15に、2本のスクリュー21,22を配置し、両スクリュー21,22の上方をカバーで覆い、両スクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、右側に位置するスクリュー22を時計方向に回転駆動し、左側に位置するスクリュー21を反時計方向に回転駆動して、処理対象物を搬送しながら、液体を可動板12と固定板13の間の間隙から排出させる。このとき、可動板12は固定板13に対して往復運動し、可動板12と固定板13の間の間隙に固形分が目詰まりすることを防止し、可動板12の交換時には、2本のスクリュー21,22を上方に持ち上げ、次いで可動板12を上方に引き上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置は従来より周知である。かかる固液分離装置によって処理される処理対象物としては、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物、或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、フスマ、食品残渣などが挙げられる。
【0003】
上記形式の固液分離装置として、孔の形成された多数の可動板と、これらの可動板の孔を貫通して延びる2本のスクリューを有する固液分離装置が提案されている(特許文献1参照)。この形式の固液分離装置によれば、流動性を失いやすい処理対象物がスクリューによって搬送されずに詰まってしまう不具合を防止し、ないしは効果的に抑制することができる。
【0004】
ところが、この形式の固液分離装置においては、経時的に摩耗した可動板を交換する際、2本のスクリューを多数の可動板からスクリューの軸線方向に引き抜いて、これらを分解し、次いで新品の多数の可動板の孔に2本のスクリューをその軸線方向に挿入して、これらを組み付けなければならぬため、可動板の交換作業が容易でなく、その作業に多大な時間を必要とする欠点があった。
【0005】
そこで、本出願人は、上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューとを有し、その可動板の凹部は、回転する2本のスクリューの羽根によって該可動板が押動される大きさに設定されていると共に、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている固液分離装置を提案した(特許第3638597号参照)。この固液分離装置によれば、可動板に形成された凹部が、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されているので、可動板を容易に交換することができる。その際、2本のスクリューによって処理対象物を効率よく搬送するには、これらのスクリューの上方を着脱可能なカバーによって覆っておくことが好ましい。かかる固液分離装置によって、処理対象物に対する高い脱液効率が得られることが望まれる。
【0006】
【特許文献1】特許第3565841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した形式の固液分離装置において、支障なく、処理対象物に対する脱液効率を高めることのできる構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューと、該2本のスクリューの上方を覆う着脱可能なカバーと、前記2本のスクリューの互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記可動板に形成された凹部は、前記スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると共に、該凹部の底部のほぼ中央部には、前記可動板が往復動するように、各スクリューによって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部を備えた突部が形成されている固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0009】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記2本のスクリューは、その羽根の一部が互いに重なった状態で配置されていると有利である(請求項2)。
【0010】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、各スクリューによって、処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリューの羽根の巻き方向が設定されていると有利である(請求項3)。
【0011】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、上部が開放した凹部を有する複数の固定板を具備し、各固定板の間に前記可動板が配置され、前記2本のスクリューは、前記固定板に形成された凹部と可動板に形成された凹部を貫通して延び、固定板の凹部も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると有利である(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支障なく、処理対象物に対する脱液効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は、本例の固液分離装置の平面図であり、図2はその固液分離装置の垂直断面図である。これらの図に示した固液分離装置によって、先に例示したいずれの処理対象物も固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
本例の固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2とを有し、これらの部材1,2の間に固液分離ユニット3が配置されている。また、入口部材1と固液分離ユニット3の上部は、着脱可能なカバー5によって覆われている。図3は、このカバー5を取り除いた状態での固液分離装置の平面図である。
【0016】
入口部材1は、図2乃至図4に示すように、下方に向けて凹んだ底壁6と、その底壁6の各端部に一体に接続された平板部7,8と、底壁6及び平板部7,8から下方に垂下した一対の側板9,10とから構成されている。
【0017】
また出口部材2は、図2、図3、図5及び図6に示すように、水平断面がほぼ矩形に形成され、かつ上部と下部が開口した本体11を有し、その本体11の固液分離ユニット3を向いた側の側壁16と、これに対向して位置する側壁17には、それぞれ切欠37,38が形成され、その各切欠37,38には、仕切板27と軸受板28がそれぞれ配置され、その仕切板27と軸受板28は、ボルト29,75と、これに螺着したナットとによって、本体11に着脱可能に固定されている。ボルト29,75を緩めることにより、仕切板27と軸受板28を、図6に示すように、本体11から分離することができる。また、本体11の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口36を構成している。
【0018】
一方、本例の固液分離ユニット3は、図2乃至図4に示すように、複数の可動板12と、複数の固定板13を有していて、各可動板12と固定板13には、図7及び図8にも示すように、上部が開放した凹部14,15がそれぞれ形成されている。また各固定板13の間にはリング状のスペーサ30が配置され、各固定板13に形成された取付孔32,33(図4及び図8)と各スペーサ30とに、ステーボルト18,19が挿通されている。図示した例では、各固定板13の凹部15の下方に形成された2つの取付孔32を貫通する2本のステーボルト18と、凹部15の各側方に形成された2つの取付孔33を貫通する2本のステーボルト19の合計が4本のステーボルトが用いられている。図4には、これらのステーボルトのうちの1本のステーボルト19と、これが嵌合するスペーサ30だけを示してあり、図1では、可動板12と固定板13の図示を省略してある。
【0019】
図2及び図3に示すように、ステーボルト18,19は、入口部材1の一方の側板9と、出口部材2の本体11の一方の側壁16を貫通し、その各ステーボルト18,19の各端部に形成された雄ねじにナット20,20Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。このように、各固定板13は、スペーサ30によって互いに所定の間隙をあけて、その軸線方向に配列され、かつステーボルト18,19とナット20,20Aとによって互いに一体的に固定され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板を、わずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0020】
また、各可動板12は、各固定板13の間の間隙にそれぞれ配置され、図7に示すように、各可動板12の厚さTは、各固定板13の間の間隙幅Gよりも小さく設定され、各固定板13の端面と、これに対向する可動板12の端面の間には、例えば0.5乃至1mm程度の濾液排出間隙gが形成される。この濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された液体、すなわち濾液を通過させるものである。可動板12の厚さTは、例えば1.5mm程度に設定され、固定板13の厚さtは、例えば3mm程度に設定される。
【0021】
図8に示すように、各可動板12は、下側の2本のステーボルト18に嵌合したスペーサ30上に載せられ、しかも、上側の2本のステーボルト19に嵌合した両スペーサ30の間に配置されている。これにより、各可動板12が下方に落下することが阻止され、しかも各可動板12は、各固定板13の間の隙間において、固定板13の端面と平行な方向に動くことができる。
【0022】
また、図1乃至図3、図7及び図8に示すように、固液分離装置は、2本のスクリュー21,22を有し、これらのスクリュー21,22は、入口部材1の底壁6により区画された凹所と、固定板13に形成された凹部15と、可動板12に形成された凹部14を貫通して延びている。ここに示した各スクリュー21,22は、軸部23,24と、その各軸部23,24にそれぞれ一体に形成されたらせん状の羽根25,26を有している。
【0023】
一方、図2、図5及び図6に示すように、出口部材2の仕切板27には、半円状の2つの切欠39,40が形成されていると共に、本体11の一方の側壁16の切欠37は、半円状の2つの切欠部41,42を有している。これらの切欠39,40と切欠部41,42によって、2つの円形の孔43,44が区画され、その各孔43,44に、図5には示していない各スクリュー21,22の軸部23,24がそれぞれ貫通して延びている。図2から判るように、各孔43,44の径は、各スクリュー21,22の軸部23,24の径よりも大きくなっている。
【0024】
また、図1乃至図3、図5及び図6に示すように、出口部材2の他方の側壁17に形成された切欠38に配置された軸受板28には、内部に軸受45,46が収容された軸受カップ47,48が固定されている。図1乃至図3に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部が、各軸受カップ47,48内にそれぞれ挿入され、各軸受45,46を介して、その各軸受カップ47,48に回転自在に支持されている。
【0025】
また、図1乃至図3に示すように、入口部材1には、ギアボックス49が着脱可能に固定され、このギアボックス49の各側壁50,51には、ギア52の固定されたギア軸54が、軸受を介して回転自在に支持されている。また、側壁51には減速機付きのモータ55が固定支持され、その出力軸56が両側壁50,51を貫通して延びている。この出力軸56にも、ギア53が固定され、このギア53と上述のギア52は、ギアボックス49の内部で互いに噛み合っている。
【0026】
ギア軸54の一方の端部と、出力軸56の一方の端部は、図1、図3及び図9に示すように、内部が中空に形成され、その中空部57の中央部に係合片58が固定配置されている。一方、図9に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部には、係合溝59が形成され、その各軸部23,24の各端部は、図3に示すように、ギア軸54と出力軸56の中空部57に挿入され、各軸部23,24に形成された係合溝59がギア軸54と出力軸56に設けられた係合片58にそれぞれ着脱可能に係合している。
【0027】
モータ55が作動して、出力軸56が回転すると、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられると共に、出力軸56とギア軸54の回転は、互いに係合した係合片58と係合溝59を介して、各スクリュー21,22に伝達され、各スクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2のまわりに回転する。
【0028】
上述のように、本例の固液分離装置においては、モータ55と、その出力軸56と、ギア軸54と、その各軸に固定されたギア53,52とによって、各スクリュー21,22を回転駆動する駆動手段が構成されているが、他の適宜な形態の駆動手段を採用することもできる。例えば、各スクリュー21,22を別々のモータにより回転駆動することもできる。この場合には、駆動手段が2つのモータを具備する。
【0029】
図7及び図8に示すように、本例の固液分離装置の2本のスクリュー21,22は、接触することなく、その羽根25,26の一部が互いに重なった状態で配置されている。すなわち、両スクリュー21,22を、その中心軸線X1,X2の方向に見たとき、両羽根25,26の一部がオーバラップした状態で位置しているのである。図8においては、両スクリュー21,22の羽根25,26の重なった部分に斜線を付し、符号QLを付してある。両スクリュー21,22を、これらが互いに重ならない状態に配置することもできる。
【0030】
また、図示した例では、両スクリュー21,22が、図3に示すように互いに平行に並置されているが、これらのスクリュー21,22の中心軸線X1,X2が、0°よりも大きな小なる角度をもった状態に、両スクリュー21,22を並置してもよい。可動板12と固定板13の凹部14,15の大きさと形態は、2本のスクリュー21,22の回転を阻害しないように設定されていることは当然である。また、本例の固液分離装置においては、各スクリュー21,22の羽根25,26のピッチが、入口部材1の側から出口部材2の側に向けて漸次、小さくなっているが、このピッチを、各スクリューの全長に亘って等しく設定することもできる。
【0031】
図2に示すように、ギアボックス49の一方の側壁50は下方に延び、その下端から水平方向に突出したフランジ部60が、固液分離装置を支持する台枠のステー61に着脱可能に固定されている。同様に出口部材2の一方の側壁16に突設されたフランジ部62も、台枠のステー63に着脱可能に固定されている。さらに、多数の固定板13のうち、図2乃至図4に、特に符号13Aを付して示した固定板は、その下部が、他の固定板よりも大きく下方に延び、その下端から水平に突出したフランジ部64が、台枠のステー65に着脱可能に固定されている。このように、複数のフランジ部60,62,64が台枠のステー61,63,65に固定されることにより、固液分離装置の全体が台枠に支持されている。
【0032】
また、図3及び図4に示すように、支柱としての用をなす固定板13Aの上部には、一対の舌片66,67が突設され、しかも、出口部材2の一方の側壁16にも、一対の舌片68,69が突設されている。これらの舌片66,67,68,69と、入口部材1の各平板部7,8の上に、図1及び図2に示すように、カバー5の各フランジ部70,71が載せられ、ボルト72とナットによって、そのフランジ部70,71が舌片66,67,68,69と平板部7,8に着脱可能に固定されている。また、入口部材1の底壁6に対応するカバー5の部分には、図1及び図2に示すように、処理対象物を投入するための投入口4が形成されている。
【0033】
次に、固液分離装置の作用を説明しながら、固液分離装置の他の構成について明らかにする。
【0034】
図2に矢印Aで示すように、多量の水分を含む汚泥(図示せず)が投入口4から入口部材1の底壁6上に流入する。処理前の汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。この汚泥には、予め凝集剤が混入され、その汚泥がフロック化されている。処理対象物によっては、凝集剤が混入されないものもある。
【0035】
このとき、モータ55の作動によって、出力軸56とスクリュー22が回転駆動され、この回転は、ギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、これによってスクリュー21も回転駆動される。このように、2本のスクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2の周りに回転することにより、入口部材1に流入した汚泥は、図2に矢印Bで示すように、多数の固定板13と可動板12の凹部15,14とカバー5とにより区画された空間Sに流入し、出口部材2の側へ向けて搬送される。
【0036】
上述のように、交互に配置された複数の可動板12と固定板13の凹部14,15と、カバー5により区画された空間S中を汚泥が移動するとき、その汚泥から水分が分離され、その分離された水分、すなわち濾液が各固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図7)を通して外部に排出される。このように排出された濾液は、図2に矢印C1,C2,C3,C4で示すように下方に流下し、各ステー61,63に固定された受皿35に受け止められ、その受皿35の排出口76から下方に排出される。この濾液中には、未だ固形分が多少含まれているので、当該濾液は、再度、他の汚泥と共に固液分離装置によって脱水処理される。
【0037】
上述のようにして、空間S中を搬送される汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥は、図2に矢印Dで示すように、出口部材2に形成された孔43,44を通して、出口部材2内に排出され、下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80重量%前後である。図1乃至図3に示すように、出口部材2の一方の側壁16と仕切板27に対向して、各軸部23,24に背圧板73,74が固定されており、これによって空間S内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0038】
上述のように、本例の固液分離装置においては、スクリュー21,22の回転により、処理対象物の一例である汚泥が入口部材1の側から出口部材2の側へ向けて搬送される。その際、固液分離ユニット3の汚泥搬送方向下流側の領域OA(図2)においては、含水率の減少した汚泥が搬送される。このとき、本例の固液分離装置には、2本のスクリュー21,22の上方を覆う着脱可能なカバー5が設けられているので、特に下流側の領域OAに存する汚泥を効率よく搬送することができる。カバー5が設けられていないと、下流側の領域OAに存する汚泥が上方に盛り上がった状態となり、その汚泥を効率よく搬送できなくなるが、その汚泥をカバー5によって上から押えることにより、汚泥の搬送効率を高めることができるのである。特に、図8に示すように、カバー5が各スクリュー21,22の羽根25,26の先端エッジに沿って近接した山状に湾曲形成されていると、この効果を一層確実なものにすることができる。
【0039】
ここで、各スクリュー21,22の羽根25,26の巻き方向とその回転方向は、固液分離ユニット3内の汚泥が、両スクリュー21,22の回転によって入口部材1の側から出口部材2の側に向けて搬送されるように設定されていることは当然である。このように、各スクリュー21,22によって処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリュー21,22の羽根25,26の巻き方向と、その回転方向が設定されているのであるが、その際、本例の固液分離装置においては、図8に示すように、2本のスクリュー21,22の互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリュー21,22が前述の駆動手段によって回転駆動される。
【0040】
より具体的には、図8に示すように、2本のスクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、右側に位置するスクリュー22は、図8に矢印Y2で示す時計方向に回転し、左側に位置するスクリュー21は、図8に矢印Y1で示す反時計方向に回転するように、各スクリュー21,22が回転駆動される。
【0041】
図示した例では、2本のスクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、その羽根25,26の一部が互いに重なった状態で位置しているので、この重なり合った部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに各スクリュー21,22が回転駆動される。
【0042】
各スクリュー21,22の回転方向を上述のように設定することによって、特に、固液分離ユニット3の下流側領域OA内に存する汚泥から効率よく水分を分離することができる。以下に、その作用を明らかにする。
【0043】
ここで、図17に示すように、右側に位置するスクリュー(以下、必要に応じて右側スクリューという)22が、本例の固液分離装置とは逆に反時計方向に回転し、左側に位置するスクリュー(以下、必要に応じて左側スクリューという)21が時計方向に回転したとする。この場合には、固液分離ユニット内の下流側領域OA(図2)において、最も圧力の高くなる汚泥部分は、図17に符号Mを付した部分となる。この汚泥部分Mの圧力によって、当該汚泥部分Mから多くの水分が絞り出される。このとき固液分離ユニット3の下流側領域OA内には、通常、含水率の低下した汚泥が詰まった状態で存在するので、汚泥部分Mの下方にも汚泥が多量に位置している。このため、汚泥部分Mから絞り出された水分の多くは、図17に矢印P1,P2で示すように上方に移動する。次いで、この水分は、行き場を失って、矢印Q1,Q2で示すように、比較的含水率の低い汚泥部分に入り込む。これは、汚泥から絞り出された水分が、再び汚泥中に戻ることを意味する。かかる動作が繰り返し行われるとすれば、汚泥に対する脱水効率が低下し、固液分離ユニットから排出された汚泥の含水率を効率よく低下させることはできない。
【0044】
これに対し、本例の固液分離装置においては、図8に示した右側スクリュー22が時計方向に回転し、左側スクリュー21が反時計方向に回転するので、固液分離ユニット3の下流側領域OA(図2)内に存する汚泥の最も圧力の高まる部分は、図8に符号MNを付した部分となる。この部分MNは、図17に示した汚泥部分Mよりも下方であって、固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図7)に近い領域である。従って、この汚泥部分MNから絞り出された水分は、図8に矢印Rで示すように、その汚泥部分MNの近傍の濾液排出間隙gに移動し、この間隙gを通って下方に流下する。このように、本例の固液分離装置においては、特に固液分離ユニット3の下流側領域OAにおいて、汚泥から絞り出された水分が多量に汚泥に戻されることはない。このため、固液分離ユニット3から出口部材2に排出された汚泥の含水率を効率よく下げることができる。
【0045】
ところで、前述のように汚泥から水分を分離する固液分離動作が行われるとき、各可動板12と固定板13との間の濾液排出間隙gに固形分がわずかに入り込むことは避けられず、これを放置すると、その間隙gが目詰まりを起こし、脱水効率が低下する。ところが、本例の固液分離装置の可動板12は、回転する2本のスクリュー21,22の羽根25,26によって、押し動かされ、各可動板12の端面が、これに対向する固定板13の端面に対して運動し、この掻動作用によって、濾液排出間隙gに入り込んだ固形分が、その間隙gから効率よく排出され、ここに詰まることが阻止される。以下に、これに関連する構成を明らかにする。
【0046】
図4及び図8に示すように、各可動板12に形成された凹部14の底部のほぼ中央部には、突部77が形成され、この突部77は、各スクリュー21,22の羽根25,26によって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部78,79を備えた山状に形成されている。図10乃至図13は、可動板12の突部77が各スクリュー21,22によって押圧されて、その可動板12が水平方向に押し動かされるときの様子を模式的に示した説明図である。これらの図においては、各スクリュー21,22を一点鎖線で表わすと共に、図8に示した各羽根25,26の断面部分25A,26Aを、単なる線で表わしてある。また、図3及び図7には、突部77の図示を省略してある。
【0047】
ここで、各羽根25,26の断面部分25A,26Aを羽根部と称することにすると、図10に示した状態においては、右側スクリュー22の羽根部26Aは上方を向き、左側スクリュー21の羽根部25Aは下方を向いている。このとき各羽根部25A,26Aは可動板12に接触しておらず、可動板12は最も左方の位置を占めている。
【0048】
この状態から、左側スクリュー21は反時計方向に回転し、右側スクリュー22は時計方向に回転するが、左側スクリュー21が図10に示した位置から角度αだけ回転したとき、左側スクリュー21の羽根部25Aの先端エッジが可動板12の突部77の第1の被加圧部78に接触し始め、左側スクリュー21がさらに回転することにより、可動板12は、羽根部25Aによって図10における右方に押し動かされる。左側スクリュー21が図10に示した位置から角度βだけ回転したとき、羽根部25Aが突部77から離れるが、このとき可動板12は最も右方の位置を占める。
【0049】
図11は、各スクリュー21,22が図10に示した位置から90°回転したときの様子を示し、このとき左側スクリュー21と右側スクリュー22の各羽根部25A,26Aは共に右方を向いている(図8も参照)。右側スクリュー22の羽根部26Aが図10に示した位置から図11に示す位置まで回転する間、その羽根部26Aが可動板12に接触することはない。
【0050】
さらに、各スクリュー21,22が90°だけ回転して、その各羽根部25A,26Aが図12に示した位置に至るまでの間も、その各羽根部25A,26Aが可動板12に接触することはなく、従って可動板12は最右方の位置に留まる。
【0051】
この状態から、左側スクリュー21はさらに反時計方向に回転し、右側スクリュー22は時計方向に回転するが、右側スクリュー22が図12に示した位置から角度αだけ回転したとき、その羽根部26Aの先端エッジが可動板12に形成された突部77の第2の被加圧部79に接触し始め、右側スクリュー22がさらに時計方向に回転することにより、可動板12は、羽根部26Aの先端エッジにより押圧されて、図12における左方に押し動かされる。右側スクリュー22が図12に示した位置から角度βだけ回転したとき、羽根部26Aは突部77から離れるが、このとき可動板12は最も左方の位置を占める。さらに各スクリュー21,22が図13に示した位置まで回転し、引き続き図10に示した位置まで回転するが、この間、各羽根部25A,26Aは可動板12に接触せず、従って可動板12は最左方位置に留まる。かかる動作が連続して繰り返し行われる。
【0052】
上述のように、可動板12は、ほぼ水平な状態を保ちながら、図8及び図10乃至図13における左右方向に往復運動する。これにより、可動板12は、固定板13に対してほぼ平行な方向に作動し、可動板12と固定板13との間の濾液排出間隙g(図7)が常にクリーニングされ、ここに固形物が入り込んだままとなって、当該間隙gが目詰まりを起こし、濾液の排出が阻害される不具合を阻止することができる。このように、可動板12に形成された凹部14の底部のほぼ中央部に、可動板12が往復運動するように、各スクリュー21,22によって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部78,79を備えた突部77を形成することによって、濾液排出間隙gの目詰まりを防止できるのである。これにより、図8に示した汚泥部分MNから絞り出された水分が支障なく濾液排出間隙gを通過することができ、汚泥の脱水効率が高められる。
【0053】
しかも本例の固液分離装置によると、2本のスクリュー21,22により、空間S内の処理対象物を搬送することができ、特に2本のスクリュー21,22の羽根25,26の一部を互いに重なった状態で配置することにより、処理対象物が流動性を失いやすい物であるときも、その処理対象物が空間Sの内部で詰まってしまう不具合を阻止できる。空間S内で脱水が進み、流動性が低下した処理対象物が、スクリュー21,22の表面に固着したとき、互いにオーバーラップした羽根25,26の部分が、その処理対象物を掻き取りながら回転し、処理対象物を崩すので、その処理対象物が空間S内で詰まる不具合を阻止できるのである。このようにして、詰まりやすい無機系の汚泥や、廃豆腐、野菜屑、果実の皮、或いはフスマや食品残渣などの処理対象物も、効率よく固液分離することができる。
【0054】
各スクリュー21,22が図17に示した方向に回転する場合には、回転する各スクリュー21,22の羽根部25A,26Aが、可動板12の各側部80,81を図17における左右にそれぞれ押圧するので、可動板12に突部77を設ける必要はない。これに対し、各スクリュー21,22が図8に示した方向に回転する場合には、突部77を設けないと、各羽根部25A,26Aが、可動板12の各側部80,81をスクリュー21,22の軸線方向に加圧してしまい可動板12を破損するおそれがある。可動板12に突部77を設けることにより、その可動板を支障なく往復運動させることができるのである。
【0055】
ところで、上述の固液分離動作を繰り返し行う間に、スクリュー21,22によって押動される可動板12は摩耗するので、その摩耗の程度が著しくなったとき、その可動板12を新たな可動板と交換する必要がある。この交換作業は次に例示するように極く簡単に行うことができる。
【0056】
先ず、モータ55の作動を停止させた状態で、図1に示したボルト72を緩めてこれを取り外し、カバー5を上方に持ち上げて該カバーを取り外す。これにより、図3に示すように、スクリュー21,22と可動板12と固定板13の上部が開放される。
【0057】
次に図5に示したボルト29,75を緩めて、図6に示すように仕切板27を取り外すと共に、軸受板28を矢印E方向に引いて、各軸受カップ47,48を各スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部から離脱する。これにより、各スクリュー21,22の一方の端部側を拘束するものがなくなる。
【0058】
次いで、各スクリュー21,22を図3に矢印Fで示す方向に引いて、わずかな距離だけその各スクリュー21,22を軸線方向に移動させる。すると、図9に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部が、ギア軸54と出力軸56の中空部57から外れる。これにより、スクリュー21,22の他方の端部側を拘束するものがなくなるので、スクリュー21,22を、そのまま上方に持ち上げることができる。可動板12と固定板13に形成された各凹部14,15が、スクリュー21,22を上方に持ち上げることのできる形態に形成されているのである。
【0059】
上述のように、スクリュー21,22を可動板12と固定板13の凹部14,15から取り外せば、各可動板12をそのまま上方に持ち上げて、これを取り外すことができる。全ての可動板12を取り外した後、新たな可動板12を取り付け、上述したところと逆の手順で、スクリュー21,22を組み付けることができる。
【0060】
上述のように、本例の固液分離装置においては、2本のスクリュー21,22を同時に上方に持ち上げることができるように、可動板12と固定板13の凹部14,15の上部開口幅の大きさが設定されているが、これらの開口幅を図示した例よりも小さく設定し、2本のスクリュー21,22を同時ではなく1本ずつ上方に持ち上げることができるように凹部14,15の上部開口幅の大きさを設定してもよい。いずれの場合も、可動板12と固定板13に形成された各凹部14,15は、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている。
【0061】
ところで、図3に示したように、各スクリュー21,22の軸部23,24に背圧板73,74を固定すると、固液分離ユニット3内の汚泥に加えられえる圧力を高め、脱水効率を高めることができるが、これらの背圧板73,74として、図14に示すように、各スクリュー21,22の外径よりも大きなものを用いると、固液分離ユニット内の汚泥に加える圧力を一層効果的に高めることができる。ところが、本例の固液分離装置においては、各スクリュー21,22の羽根25,26の一部が互いに重なっているので、各スクリュー21,22の外径よりも大きな径の背圧板73,74を各軸部23,24の同じ軸線方向位置に固定することができず、図14に示すように、各背圧板73,74のスクリュー軸線方向位置をずらす必要がある。ところが、このようにすると、一方の背圧板73と出口部材2との間の隙間G1と、他方の背圧板74と出口部材2との間の隙間G2の大きさが異なってしまう。このため、出口部材2の一方の孔43から排出される汚泥の含水率と、他方の孔44から排出される汚泥の含水率が異なってしまい、これによって固液分離装置によって脱水処理した汚泥の含水率が一定とならず、所望する含水率の汚泥を得ることができなくなるおそれがある。
【0062】
そこで、図15に示すように、一方のスクリュー21の軸部23にだけ背圧板73を固定し、他方のスクリュー22の軸部24が貫通する出口部材2の孔44の径を、その軸部24の径よりも極くわずかだけ大きく設定することが好ましい。このようにすれば、固液分離ユニット3内の汚泥は、実質的に、一方の孔43だけを通って出口部材2内に排出される。従って、出口部材2に排出された汚泥の含水率はほぼ一定となり、所望する含水率の汚泥を得ることが可能となる。しかも背圧板73の直径をスクリュー21の径よりも大きくできるので、固液分離部3内の圧力を効果的に高め、汚泥に対する脱水効率を向上させることができる。
【0063】
以上説明した固液分離装置は、上部が開放した凹部14を有する複数の可動板12のほかに、上部が開放した凹部15を有する複数の固定板13を具備し、各固定板13の間に可動板13が配置され、2本のスクリュー21,22が、固定板13に形成された凹部15と可動板12に形成された凹部14を貫通して延び、固定板13の凹部15も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成され、可動板12と固定板13の間の間隙を通して濾液が流下するように構成されている。すなわち、可動板12と固定板13が交互に配置され、可動板12が固定板13に対して作動するように構成されているのであるが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。例えば、固定板を設けずに、可動板12だけを多数枚重ねて配置し、その多数の可動板12の凹部14に2本のスクリュー21,22を貫通させ、各可動板12の間の間隙を通して濾液を排出させると共に、スクリュー21,22の回転によって、各可動板12を、図8及び図10乃至図13を参照して先に説明したところと同様に作動させ、各可動板12同士の相対運動によって、これらの間に固形物が詰まる不具合を阻止するように構成することもできる。
【0064】
また、図示した例では、隣り合う固定板13の間に1つの可動板12が配置されているが、隣り合う固定板13の間に複数の可動板12を配置してもよいことは当然である。同様に、図示した固液分離装置のスクリュー21,22は、らせん状に延びる1つの羽根を有しているが、らせん状に延びる複数の羽根を有するスクリューを採用してもよいことも当然である。
【0065】
また、図16に示すように、スペーサ30を、当該スペーサに隣接する2つの固定板のうちの一方の固定板13に一体に形成し、固定板13とスペーサ30を1つの部品として構成することもできる。例えば、固定板13とスペーサ30が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化することができ、また固定板13とスペーサ30を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することができる。
【0066】
また、図1、図2及び図8に示したカバー5は、2本のスクリュー21,22の上方を覆う位置から離脱できるように着脱可能に装着される。その際、図示した例では、そのカバー5が入口部材1と固定板13に対して、着脱可能に固定されているが、このカバー5を他の適宜な部材に着脱可能に取り付けることもできる。
【0067】
さらに、それ自体公知のように、空間Sへの処理対象物投入側が、液体分の減少した処理対象物の排出側よりも低くなるように、複数の可動板12を傾斜して配置し、空間S内の処理対象物が排出側に近づくに従って、その処理対象物により一層大きな圧力が加えられるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】固液分離装置の平面図である。
【図2】図1に示した固液分離装置の垂直断面図である。
【図3】カバーを取り外した状態での固液分離装置の平面図である。
【図4】入口部材と、可動板と、固定板と、スペーサと、ボルトの分解斜視図である。
【図5】出口部材の斜視図である。
【図6】出口部材の本体から仕切板と軸受板を分離した状態を示す斜視図である。
【図7】図1に示した固液分離装置の固液分離ユニットにおける拡大水平断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】ギア軸及び出力軸と、スクリューの軸部の連結状態を示す斜視図である。
【図10】可動板の動きを説明する図である。
【図11】可動板の動きを説明する図である。
【図12】可動板の動きを説明する図である。
【図13】可動板の動きを説明する図である。
【図14】各スクリューの軸部に固定された背圧板の他の例を示す平面図である。
【図15】各スクリューの軸部に固定された背圧板のさらに他の例を示す平面図である。
【図16】固定板とその固定板に一体化されたスペーサを示す図である。
【図17】各スクリューを図8に示した方向と逆方向に回転させたときの不具合を説明する、図8と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0069】
5 カバー
12 可動板
13 固定板
14,15 凹部
21,22 スクリュー
77 突部
78 第1の被加圧部
79 第2の被加圧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置は従来より周知である。かかる固液分離装置によって処理される処理対象物としては、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物、或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、フスマ、食品残渣などが挙げられる。
【0003】
上記形式の固液分離装置として、孔の形成された多数の可動板と、これらの可動板の孔を貫通して延びる2本のスクリューを有する固液分離装置が提案されている(特許文献1参照)。この形式の固液分離装置によれば、流動性を失いやすい処理対象物がスクリューによって搬送されずに詰まってしまう不具合を防止し、ないしは効果的に抑制することができる。
【0004】
ところが、この形式の固液分離装置においては、経時的に摩耗した可動板を交換する際、2本のスクリューを多数の可動板からスクリューの軸線方向に引き抜いて、これらを分解し、次いで新品の多数の可動板の孔に2本のスクリューをその軸線方向に挿入して、これらを組み付けなければならぬため、可動板の交換作業が容易でなく、その作業に多大な時間を必要とする欠点があった。
【0005】
そこで、本出願人は、上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューとを有し、その可動板の凹部は、回転する2本のスクリューの羽根によって該可動板が押動される大きさに設定されていると共に、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている固液分離装置を提案した(特許第3638597号参照)。この固液分離装置によれば、可動板に形成された凹部が、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されているので、可動板を容易に交換することができる。その際、2本のスクリューによって処理対象物を効率よく搬送するには、これらのスクリューの上方を着脱可能なカバーによって覆っておくことが好ましい。かかる固液分離装置によって、処理対象物に対する高い脱液効率が得られることが望まれる。
【0006】
【特許文献1】特許第3565841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述した形式の固液分離装置において、支障なく、処理対象物に対する脱液効率を高めることのできる構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューと、該2本のスクリューの上方を覆う着脱可能なカバーと、前記2本のスクリューの互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記可動板に形成された凹部は、前記スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると共に、該凹部の底部のほぼ中央部には、前記可動板が往復動するように、各スクリューによって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部を備えた突部が形成されている固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0009】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記2本のスクリューは、その羽根の一部が互いに重なった状態で配置されていると有利である(請求項2)。
【0010】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、各スクリューによって、処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリューの羽根の巻き方向が設定されていると有利である(請求項3)。
【0011】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、上部が開放した凹部を有する複数の固定板を具備し、各固定板の間に前記可動板が配置され、前記2本のスクリューは、前記固定板に形成された凹部と可動板に形成された凹部を貫通して延び、固定板の凹部も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると有利である(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支障なく、処理対象物に対する脱液効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は、本例の固液分離装置の平面図であり、図2はその固液分離装置の垂直断面図である。これらの図に示した固液分離装置によって、先に例示したいずれの処理対象物も固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
本例の固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2とを有し、これらの部材1,2の間に固液分離ユニット3が配置されている。また、入口部材1と固液分離ユニット3の上部は、着脱可能なカバー5によって覆われている。図3は、このカバー5を取り除いた状態での固液分離装置の平面図である。
【0016】
入口部材1は、図2乃至図4に示すように、下方に向けて凹んだ底壁6と、その底壁6の各端部に一体に接続された平板部7,8と、底壁6及び平板部7,8から下方に垂下した一対の側板9,10とから構成されている。
【0017】
また出口部材2は、図2、図3、図5及び図6に示すように、水平断面がほぼ矩形に形成され、かつ上部と下部が開口した本体11を有し、その本体11の固液分離ユニット3を向いた側の側壁16と、これに対向して位置する側壁17には、それぞれ切欠37,38が形成され、その各切欠37,38には、仕切板27と軸受板28がそれぞれ配置され、その仕切板27と軸受板28は、ボルト29,75と、これに螺着したナットとによって、本体11に着脱可能に固定されている。ボルト29,75を緩めることにより、仕切板27と軸受板28を、図6に示すように、本体11から分離することができる。また、本体11の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口36を構成している。
【0018】
一方、本例の固液分離ユニット3は、図2乃至図4に示すように、複数の可動板12と、複数の固定板13を有していて、各可動板12と固定板13には、図7及び図8にも示すように、上部が開放した凹部14,15がそれぞれ形成されている。また各固定板13の間にはリング状のスペーサ30が配置され、各固定板13に形成された取付孔32,33(図4及び図8)と各スペーサ30とに、ステーボルト18,19が挿通されている。図示した例では、各固定板13の凹部15の下方に形成された2つの取付孔32を貫通する2本のステーボルト18と、凹部15の各側方に形成された2つの取付孔33を貫通する2本のステーボルト19の合計が4本のステーボルトが用いられている。図4には、これらのステーボルトのうちの1本のステーボルト19と、これが嵌合するスペーサ30だけを示してあり、図1では、可動板12と固定板13の図示を省略してある。
【0019】
図2及び図3に示すように、ステーボルト18,19は、入口部材1の一方の側板9と、出口部材2の本体11の一方の側壁16を貫通し、その各ステーボルト18,19の各端部に形成された雄ねじにナット20,20Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。このように、各固定板13は、スペーサ30によって互いに所定の間隙をあけて、その軸線方向に配列され、かつステーボルト18,19とナット20,20Aとによって互いに一体的に固定され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板を、わずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0020】
また、各可動板12は、各固定板13の間の間隙にそれぞれ配置され、図7に示すように、各可動板12の厚さTは、各固定板13の間の間隙幅Gよりも小さく設定され、各固定板13の端面と、これに対向する可動板12の端面の間には、例えば0.5乃至1mm程度の濾液排出間隙gが形成される。この濾液排出間隙gは、後述するように汚泥から分離された液体、すなわち濾液を通過させるものである。可動板12の厚さTは、例えば1.5mm程度に設定され、固定板13の厚さtは、例えば3mm程度に設定される。
【0021】
図8に示すように、各可動板12は、下側の2本のステーボルト18に嵌合したスペーサ30上に載せられ、しかも、上側の2本のステーボルト19に嵌合した両スペーサ30の間に配置されている。これにより、各可動板12が下方に落下することが阻止され、しかも各可動板12は、各固定板13の間の隙間において、固定板13の端面と平行な方向に動くことができる。
【0022】
また、図1乃至図3、図7及び図8に示すように、固液分離装置は、2本のスクリュー21,22を有し、これらのスクリュー21,22は、入口部材1の底壁6により区画された凹所と、固定板13に形成された凹部15と、可動板12に形成された凹部14を貫通して延びている。ここに示した各スクリュー21,22は、軸部23,24と、その各軸部23,24にそれぞれ一体に形成されたらせん状の羽根25,26を有している。
【0023】
一方、図2、図5及び図6に示すように、出口部材2の仕切板27には、半円状の2つの切欠39,40が形成されていると共に、本体11の一方の側壁16の切欠37は、半円状の2つの切欠部41,42を有している。これらの切欠39,40と切欠部41,42によって、2つの円形の孔43,44が区画され、その各孔43,44に、図5には示していない各スクリュー21,22の軸部23,24がそれぞれ貫通して延びている。図2から判るように、各孔43,44の径は、各スクリュー21,22の軸部23,24の径よりも大きくなっている。
【0024】
また、図1乃至図3、図5及び図6に示すように、出口部材2の他方の側壁17に形成された切欠38に配置された軸受板28には、内部に軸受45,46が収容された軸受カップ47,48が固定されている。図1乃至図3に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部が、各軸受カップ47,48内にそれぞれ挿入され、各軸受45,46を介して、その各軸受カップ47,48に回転自在に支持されている。
【0025】
また、図1乃至図3に示すように、入口部材1には、ギアボックス49が着脱可能に固定され、このギアボックス49の各側壁50,51には、ギア52の固定されたギア軸54が、軸受を介して回転自在に支持されている。また、側壁51には減速機付きのモータ55が固定支持され、その出力軸56が両側壁50,51を貫通して延びている。この出力軸56にも、ギア53が固定され、このギア53と上述のギア52は、ギアボックス49の内部で互いに噛み合っている。
【0026】
ギア軸54の一方の端部と、出力軸56の一方の端部は、図1、図3及び図9に示すように、内部が中空に形成され、その中空部57の中央部に係合片58が固定配置されている。一方、図9に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部には、係合溝59が形成され、その各軸部23,24の各端部は、図3に示すように、ギア軸54と出力軸56の中空部57に挿入され、各軸部23,24に形成された係合溝59がギア軸54と出力軸56に設けられた係合片58にそれぞれ着脱可能に係合している。
【0027】
モータ55が作動して、出力軸56が回転すると、その回転がギア53,52を介してギア軸54に伝えられると共に、出力軸56とギア軸54の回転は、互いに係合した係合片58と係合溝59を介して、各スクリュー21,22に伝達され、各スクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2のまわりに回転する。
【0028】
上述のように、本例の固液分離装置においては、モータ55と、その出力軸56と、ギア軸54と、その各軸に固定されたギア53,52とによって、各スクリュー21,22を回転駆動する駆動手段が構成されているが、他の適宜な形態の駆動手段を採用することもできる。例えば、各スクリュー21,22を別々のモータにより回転駆動することもできる。この場合には、駆動手段が2つのモータを具備する。
【0029】
図7及び図8に示すように、本例の固液分離装置の2本のスクリュー21,22は、接触することなく、その羽根25,26の一部が互いに重なった状態で配置されている。すなわち、両スクリュー21,22を、その中心軸線X1,X2の方向に見たとき、両羽根25,26の一部がオーバラップした状態で位置しているのである。図8においては、両スクリュー21,22の羽根25,26の重なった部分に斜線を付し、符号QLを付してある。両スクリュー21,22を、これらが互いに重ならない状態に配置することもできる。
【0030】
また、図示した例では、両スクリュー21,22が、図3に示すように互いに平行に並置されているが、これらのスクリュー21,22の中心軸線X1,X2が、0°よりも大きな小なる角度をもった状態に、両スクリュー21,22を並置してもよい。可動板12と固定板13の凹部14,15の大きさと形態は、2本のスクリュー21,22の回転を阻害しないように設定されていることは当然である。また、本例の固液分離装置においては、各スクリュー21,22の羽根25,26のピッチが、入口部材1の側から出口部材2の側に向けて漸次、小さくなっているが、このピッチを、各スクリューの全長に亘って等しく設定することもできる。
【0031】
図2に示すように、ギアボックス49の一方の側壁50は下方に延び、その下端から水平方向に突出したフランジ部60が、固液分離装置を支持する台枠のステー61に着脱可能に固定されている。同様に出口部材2の一方の側壁16に突設されたフランジ部62も、台枠のステー63に着脱可能に固定されている。さらに、多数の固定板13のうち、図2乃至図4に、特に符号13Aを付して示した固定板は、その下部が、他の固定板よりも大きく下方に延び、その下端から水平に突出したフランジ部64が、台枠のステー65に着脱可能に固定されている。このように、複数のフランジ部60,62,64が台枠のステー61,63,65に固定されることにより、固液分離装置の全体が台枠に支持されている。
【0032】
また、図3及び図4に示すように、支柱としての用をなす固定板13Aの上部には、一対の舌片66,67が突設され、しかも、出口部材2の一方の側壁16にも、一対の舌片68,69が突設されている。これらの舌片66,67,68,69と、入口部材1の各平板部7,8の上に、図1及び図2に示すように、カバー5の各フランジ部70,71が載せられ、ボルト72とナットによって、そのフランジ部70,71が舌片66,67,68,69と平板部7,8に着脱可能に固定されている。また、入口部材1の底壁6に対応するカバー5の部分には、図1及び図2に示すように、処理対象物を投入するための投入口4が形成されている。
【0033】
次に、固液分離装置の作用を説明しながら、固液分離装置の他の構成について明らかにする。
【0034】
図2に矢印Aで示すように、多量の水分を含む汚泥(図示せず)が投入口4から入口部材1の底壁6上に流入する。処理前の汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。この汚泥には、予め凝集剤が混入され、その汚泥がフロック化されている。処理対象物によっては、凝集剤が混入されないものもある。
【0035】
このとき、モータ55の作動によって、出力軸56とスクリュー22が回転駆動され、この回転は、ギア53,52を介してギア軸54に伝えられ、これによってスクリュー21も回転駆動される。このように、2本のスクリュー21,22が、その中心軸線X1,X2の周りに回転することにより、入口部材1に流入した汚泥は、図2に矢印Bで示すように、多数の固定板13と可動板12の凹部15,14とカバー5とにより区画された空間Sに流入し、出口部材2の側へ向けて搬送される。
【0036】
上述のように、交互に配置された複数の可動板12と固定板13の凹部14,15と、カバー5により区画された空間S中を汚泥が移動するとき、その汚泥から水分が分離され、その分離された水分、すなわち濾液が各固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図7)を通して外部に排出される。このように排出された濾液は、図2に矢印C1,C2,C3,C4で示すように下方に流下し、各ステー61,63に固定された受皿35に受け止められ、その受皿35の排出口76から下方に排出される。この濾液中には、未だ固形分が多少含まれているので、当該濾液は、再度、他の汚泥と共に固液分離装置によって脱水処理される。
【0037】
上述のようにして、空間S中を搬送される汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥は、図2に矢印Dで示すように、出口部材2に形成された孔43,44を通して、出口部材2内に排出され、下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80重量%前後である。図1乃至図3に示すように、出口部材2の一方の側壁16と仕切板27に対向して、各軸部23,24に背圧板73,74が固定されており、これによって空間S内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0038】
上述のように、本例の固液分離装置においては、スクリュー21,22の回転により、処理対象物の一例である汚泥が入口部材1の側から出口部材2の側へ向けて搬送される。その際、固液分離ユニット3の汚泥搬送方向下流側の領域OA(図2)においては、含水率の減少した汚泥が搬送される。このとき、本例の固液分離装置には、2本のスクリュー21,22の上方を覆う着脱可能なカバー5が設けられているので、特に下流側の領域OAに存する汚泥を効率よく搬送することができる。カバー5が設けられていないと、下流側の領域OAに存する汚泥が上方に盛り上がった状態となり、その汚泥を効率よく搬送できなくなるが、その汚泥をカバー5によって上から押えることにより、汚泥の搬送効率を高めることができるのである。特に、図8に示すように、カバー5が各スクリュー21,22の羽根25,26の先端エッジに沿って近接した山状に湾曲形成されていると、この効果を一層確実なものにすることができる。
【0039】
ここで、各スクリュー21,22の羽根25,26の巻き方向とその回転方向は、固液分離ユニット3内の汚泥が、両スクリュー21,22の回転によって入口部材1の側から出口部材2の側に向けて搬送されるように設定されていることは当然である。このように、各スクリュー21,22によって処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリュー21,22の羽根25,26の巻き方向と、その回転方向が設定されているのであるが、その際、本例の固液分離装置においては、図8に示すように、2本のスクリュー21,22の互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリュー21,22が前述の駆動手段によって回転駆動される。
【0040】
より具体的には、図8に示すように、2本のスクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、右側に位置するスクリュー22は、図8に矢印Y2で示す時計方向に回転し、左側に位置するスクリュー21は、図8に矢印Y1で示す反時計方向に回転するように、各スクリュー21,22が回転駆動される。
【0041】
図示した例では、2本のスクリュー21,22をその中心軸線X1,X2の方向に見たとき、その羽根25,26の一部が互いに重なった状態で位置しているので、この重なり合った部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに各スクリュー21,22が回転駆動される。
【0042】
各スクリュー21,22の回転方向を上述のように設定することによって、特に、固液分離ユニット3の下流側領域OA内に存する汚泥から効率よく水分を分離することができる。以下に、その作用を明らかにする。
【0043】
ここで、図17に示すように、右側に位置するスクリュー(以下、必要に応じて右側スクリューという)22が、本例の固液分離装置とは逆に反時計方向に回転し、左側に位置するスクリュー(以下、必要に応じて左側スクリューという)21が時計方向に回転したとする。この場合には、固液分離ユニット内の下流側領域OA(図2)において、最も圧力の高くなる汚泥部分は、図17に符号Mを付した部分となる。この汚泥部分Mの圧力によって、当該汚泥部分Mから多くの水分が絞り出される。このとき固液分離ユニット3の下流側領域OA内には、通常、含水率の低下した汚泥が詰まった状態で存在するので、汚泥部分Mの下方にも汚泥が多量に位置している。このため、汚泥部分Mから絞り出された水分の多くは、図17に矢印P1,P2で示すように上方に移動する。次いで、この水分は、行き場を失って、矢印Q1,Q2で示すように、比較的含水率の低い汚泥部分に入り込む。これは、汚泥から絞り出された水分が、再び汚泥中に戻ることを意味する。かかる動作が繰り返し行われるとすれば、汚泥に対する脱水効率が低下し、固液分離ユニットから排出された汚泥の含水率を効率よく低下させることはできない。
【0044】
これに対し、本例の固液分離装置においては、図8に示した右側スクリュー22が時計方向に回転し、左側スクリュー21が反時計方向に回転するので、固液分離ユニット3の下流側領域OA(図2)内に存する汚泥の最も圧力の高まる部分は、図8に符号MNを付した部分となる。この部分MNは、図17に示した汚泥部分Mよりも下方であって、固定板13と可動板12の間の濾液排出間隙g(図7)に近い領域である。従って、この汚泥部分MNから絞り出された水分は、図8に矢印Rで示すように、その汚泥部分MNの近傍の濾液排出間隙gに移動し、この間隙gを通って下方に流下する。このように、本例の固液分離装置においては、特に固液分離ユニット3の下流側領域OAにおいて、汚泥から絞り出された水分が多量に汚泥に戻されることはない。このため、固液分離ユニット3から出口部材2に排出された汚泥の含水率を効率よく下げることができる。
【0045】
ところで、前述のように汚泥から水分を分離する固液分離動作が行われるとき、各可動板12と固定板13との間の濾液排出間隙gに固形分がわずかに入り込むことは避けられず、これを放置すると、その間隙gが目詰まりを起こし、脱水効率が低下する。ところが、本例の固液分離装置の可動板12は、回転する2本のスクリュー21,22の羽根25,26によって、押し動かされ、各可動板12の端面が、これに対向する固定板13の端面に対して運動し、この掻動作用によって、濾液排出間隙gに入り込んだ固形分が、その間隙gから効率よく排出され、ここに詰まることが阻止される。以下に、これに関連する構成を明らかにする。
【0046】
図4及び図8に示すように、各可動板12に形成された凹部14の底部のほぼ中央部には、突部77が形成され、この突部77は、各スクリュー21,22の羽根25,26によって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部78,79を備えた山状に形成されている。図10乃至図13は、可動板12の突部77が各スクリュー21,22によって押圧されて、その可動板12が水平方向に押し動かされるときの様子を模式的に示した説明図である。これらの図においては、各スクリュー21,22を一点鎖線で表わすと共に、図8に示した各羽根25,26の断面部分25A,26Aを、単なる線で表わしてある。また、図3及び図7には、突部77の図示を省略してある。
【0047】
ここで、各羽根25,26の断面部分25A,26Aを羽根部と称することにすると、図10に示した状態においては、右側スクリュー22の羽根部26Aは上方を向き、左側スクリュー21の羽根部25Aは下方を向いている。このとき各羽根部25A,26Aは可動板12に接触しておらず、可動板12は最も左方の位置を占めている。
【0048】
この状態から、左側スクリュー21は反時計方向に回転し、右側スクリュー22は時計方向に回転するが、左側スクリュー21が図10に示した位置から角度αだけ回転したとき、左側スクリュー21の羽根部25Aの先端エッジが可動板12の突部77の第1の被加圧部78に接触し始め、左側スクリュー21がさらに回転することにより、可動板12は、羽根部25Aによって図10における右方に押し動かされる。左側スクリュー21が図10に示した位置から角度βだけ回転したとき、羽根部25Aが突部77から離れるが、このとき可動板12は最も右方の位置を占める。
【0049】
図11は、各スクリュー21,22が図10に示した位置から90°回転したときの様子を示し、このとき左側スクリュー21と右側スクリュー22の各羽根部25A,26Aは共に右方を向いている(図8も参照)。右側スクリュー22の羽根部26Aが図10に示した位置から図11に示す位置まで回転する間、その羽根部26Aが可動板12に接触することはない。
【0050】
さらに、各スクリュー21,22が90°だけ回転して、その各羽根部25A,26Aが図12に示した位置に至るまでの間も、その各羽根部25A,26Aが可動板12に接触することはなく、従って可動板12は最右方の位置に留まる。
【0051】
この状態から、左側スクリュー21はさらに反時計方向に回転し、右側スクリュー22は時計方向に回転するが、右側スクリュー22が図12に示した位置から角度αだけ回転したとき、その羽根部26Aの先端エッジが可動板12に形成された突部77の第2の被加圧部79に接触し始め、右側スクリュー22がさらに時計方向に回転することにより、可動板12は、羽根部26Aの先端エッジにより押圧されて、図12における左方に押し動かされる。右側スクリュー22が図12に示した位置から角度βだけ回転したとき、羽根部26Aは突部77から離れるが、このとき可動板12は最も左方の位置を占める。さらに各スクリュー21,22が図13に示した位置まで回転し、引き続き図10に示した位置まで回転するが、この間、各羽根部25A,26Aは可動板12に接触せず、従って可動板12は最左方位置に留まる。かかる動作が連続して繰り返し行われる。
【0052】
上述のように、可動板12は、ほぼ水平な状態を保ちながら、図8及び図10乃至図13における左右方向に往復運動する。これにより、可動板12は、固定板13に対してほぼ平行な方向に作動し、可動板12と固定板13との間の濾液排出間隙g(図7)が常にクリーニングされ、ここに固形物が入り込んだままとなって、当該間隙gが目詰まりを起こし、濾液の排出が阻害される不具合を阻止することができる。このように、可動板12に形成された凹部14の底部のほぼ中央部に、可動板12が往復運動するように、各スクリュー21,22によって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部78,79を備えた突部77を形成することによって、濾液排出間隙gの目詰まりを防止できるのである。これにより、図8に示した汚泥部分MNから絞り出された水分が支障なく濾液排出間隙gを通過することができ、汚泥の脱水効率が高められる。
【0053】
しかも本例の固液分離装置によると、2本のスクリュー21,22により、空間S内の処理対象物を搬送することができ、特に2本のスクリュー21,22の羽根25,26の一部を互いに重なった状態で配置することにより、処理対象物が流動性を失いやすい物であるときも、その処理対象物が空間Sの内部で詰まってしまう不具合を阻止できる。空間S内で脱水が進み、流動性が低下した処理対象物が、スクリュー21,22の表面に固着したとき、互いにオーバーラップした羽根25,26の部分が、その処理対象物を掻き取りながら回転し、処理対象物を崩すので、その処理対象物が空間S内で詰まる不具合を阻止できるのである。このようにして、詰まりやすい無機系の汚泥や、廃豆腐、野菜屑、果実の皮、或いはフスマや食品残渣などの処理対象物も、効率よく固液分離することができる。
【0054】
各スクリュー21,22が図17に示した方向に回転する場合には、回転する各スクリュー21,22の羽根部25A,26Aが、可動板12の各側部80,81を図17における左右にそれぞれ押圧するので、可動板12に突部77を設ける必要はない。これに対し、各スクリュー21,22が図8に示した方向に回転する場合には、突部77を設けないと、各羽根部25A,26Aが、可動板12の各側部80,81をスクリュー21,22の軸線方向に加圧してしまい可動板12を破損するおそれがある。可動板12に突部77を設けることにより、その可動板を支障なく往復運動させることができるのである。
【0055】
ところで、上述の固液分離動作を繰り返し行う間に、スクリュー21,22によって押動される可動板12は摩耗するので、その摩耗の程度が著しくなったとき、その可動板12を新たな可動板と交換する必要がある。この交換作業は次に例示するように極く簡単に行うことができる。
【0056】
先ず、モータ55の作動を停止させた状態で、図1に示したボルト72を緩めてこれを取り外し、カバー5を上方に持ち上げて該カバーを取り外す。これにより、図3に示すように、スクリュー21,22と可動板12と固定板13の上部が開放される。
【0057】
次に図5に示したボルト29,75を緩めて、図6に示すように仕切板27を取り外すと共に、軸受板28を矢印E方向に引いて、各軸受カップ47,48を各スクリュー21,22の軸部23,24の一方の端部から離脱する。これにより、各スクリュー21,22の一方の端部側を拘束するものがなくなる。
【0058】
次いで、各スクリュー21,22を図3に矢印Fで示す方向に引いて、わずかな距離だけその各スクリュー21,22を軸線方向に移動させる。すると、図9に示すように、各スクリュー21,22の軸部23,24の他方の端部が、ギア軸54と出力軸56の中空部57から外れる。これにより、スクリュー21,22の他方の端部側を拘束するものがなくなるので、スクリュー21,22を、そのまま上方に持ち上げることができる。可動板12と固定板13に形成された各凹部14,15が、スクリュー21,22を上方に持ち上げることのできる形態に形成されているのである。
【0059】
上述のように、スクリュー21,22を可動板12と固定板13の凹部14,15から取り外せば、各可動板12をそのまま上方に持ち上げて、これを取り外すことができる。全ての可動板12を取り外した後、新たな可動板12を取り付け、上述したところと逆の手順で、スクリュー21,22を組み付けることができる。
【0060】
上述のように、本例の固液分離装置においては、2本のスクリュー21,22を同時に上方に持ち上げることができるように、可動板12と固定板13の凹部14,15の上部開口幅の大きさが設定されているが、これらの開口幅を図示した例よりも小さく設定し、2本のスクリュー21,22を同時ではなく1本ずつ上方に持ち上げることができるように凹部14,15の上部開口幅の大きさを設定してもよい。いずれの場合も、可動板12と固定板13に形成された各凹部14,15は、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている。
【0061】
ところで、図3に示したように、各スクリュー21,22の軸部23,24に背圧板73,74を固定すると、固液分離ユニット3内の汚泥に加えられえる圧力を高め、脱水効率を高めることができるが、これらの背圧板73,74として、図14に示すように、各スクリュー21,22の外径よりも大きなものを用いると、固液分離ユニット内の汚泥に加える圧力を一層効果的に高めることができる。ところが、本例の固液分離装置においては、各スクリュー21,22の羽根25,26の一部が互いに重なっているので、各スクリュー21,22の外径よりも大きな径の背圧板73,74を各軸部23,24の同じ軸線方向位置に固定することができず、図14に示すように、各背圧板73,74のスクリュー軸線方向位置をずらす必要がある。ところが、このようにすると、一方の背圧板73と出口部材2との間の隙間G1と、他方の背圧板74と出口部材2との間の隙間G2の大きさが異なってしまう。このため、出口部材2の一方の孔43から排出される汚泥の含水率と、他方の孔44から排出される汚泥の含水率が異なってしまい、これによって固液分離装置によって脱水処理した汚泥の含水率が一定とならず、所望する含水率の汚泥を得ることができなくなるおそれがある。
【0062】
そこで、図15に示すように、一方のスクリュー21の軸部23にだけ背圧板73を固定し、他方のスクリュー22の軸部24が貫通する出口部材2の孔44の径を、その軸部24の径よりも極くわずかだけ大きく設定することが好ましい。このようにすれば、固液分離ユニット3内の汚泥は、実質的に、一方の孔43だけを通って出口部材2内に排出される。従って、出口部材2に排出された汚泥の含水率はほぼ一定となり、所望する含水率の汚泥を得ることが可能となる。しかも背圧板73の直径をスクリュー21の径よりも大きくできるので、固液分離部3内の圧力を効果的に高め、汚泥に対する脱水効率を向上させることができる。
【0063】
以上説明した固液分離装置は、上部が開放した凹部14を有する複数の可動板12のほかに、上部が開放した凹部15を有する複数の固定板13を具備し、各固定板13の間に可動板13が配置され、2本のスクリュー21,22が、固定板13に形成された凹部15と可動板12に形成された凹部14を貫通して延び、固定板13の凹部15も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成され、可動板12と固定板13の間の間隙を通して濾液が流下するように構成されている。すなわち、可動板12と固定板13が交互に配置され、可動板12が固定板13に対して作動するように構成されているのであるが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。例えば、固定板を設けずに、可動板12だけを多数枚重ねて配置し、その多数の可動板12の凹部14に2本のスクリュー21,22を貫通させ、各可動板12の間の間隙を通して濾液を排出させると共に、スクリュー21,22の回転によって、各可動板12を、図8及び図10乃至図13を参照して先に説明したところと同様に作動させ、各可動板12同士の相対運動によって、これらの間に固形物が詰まる不具合を阻止するように構成することもできる。
【0064】
また、図示した例では、隣り合う固定板13の間に1つの可動板12が配置されているが、隣り合う固定板13の間に複数の可動板12を配置してもよいことは当然である。同様に、図示した固液分離装置のスクリュー21,22は、らせん状に延びる1つの羽根を有しているが、らせん状に延びる複数の羽根を有するスクリューを採用してもよいことも当然である。
【0065】
また、図16に示すように、スペーサ30を、当該スペーサに隣接する2つの固定板のうちの一方の固定板13に一体に形成し、固定板13とスペーサ30を1つの部品として構成することもできる。例えば、固定板13とスペーサ30が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化することができ、また固定板13とスペーサ30を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することができる。
【0066】
また、図1、図2及び図8に示したカバー5は、2本のスクリュー21,22の上方を覆う位置から離脱できるように着脱可能に装着される。その際、図示した例では、そのカバー5が入口部材1と固定板13に対して、着脱可能に固定されているが、このカバー5を他の適宜な部材に着脱可能に取り付けることもできる。
【0067】
さらに、それ自体公知のように、空間Sへの処理対象物投入側が、液体分の減少した処理対象物の排出側よりも低くなるように、複数の可動板12を傾斜して配置し、空間S内の処理対象物が排出側に近づくに従って、その処理対象物により一層大きな圧力が加えられるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】固液分離装置の平面図である。
【図2】図1に示した固液分離装置の垂直断面図である。
【図3】カバーを取り外した状態での固液分離装置の平面図である。
【図4】入口部材と、可動板と、固定板と、スペーサと、ボルトの分解斜視図である。
【図5】出口部材の斜視図である。
【図6】出口部材の本体から仕切板と軸受板を分離した状態を示す斜視図である。
【図7】図1に示した固液分離装置の固液分離ユニットにおける拡大水平断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】ギア軸及び出力軸と、スクリューの軸部の連結状態を示す斜視図である。
【図10】可動板の動きを説明する図である。
【図11】可動板の動きを説明する図である。
【図12】可動板の動きを説明する図である。
【図13】可動板の動きを説明する図である。
【図14】各スクリューの軸部に固定された背圧板の他の例を示す平面図である。
【図15】各スクリューの軸部に固定された背圧板のさらに他の例を示す平面図である。
【図16】固定板とその固定板に一体化されたスペーサを示す図である。
【図17】各スクリューを図8に示した方向と逆方向に回転させたときの不具合を説明する、図8と同様な断面図である。
【符号の説明】
【0069】
5 カバー
12 可動板
13 固定板
14,15 凹部
21,22 スクリュー
77 突部
78 第1の被加圧部
79 第2の被加圧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューと、該2本のスクリューの上方を覆う着脱可能なカバーと、前記2本のスクリューの互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記可動板に形成された凹部は、前記スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると共に、該凹部の底部のほぼ中央部には、前記可動板が往復動するように、各スクリューによって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部を備えた突部が形成されている固液分離装置。
【請求項2】
前記2本のスクリューは、その羽根の一部が互いに重なった状態で配置されている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
各スクリューによって、処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリューの羽根の巻き方向が設定されている請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
上部が開放した凹部を有する複数の固定板を具備し、各固定板の間に前記可動板が配置され、前記2本のスクリューは、前記固定板に形成された凹部と可動板に形成された凹部を貫通して延び、固定板の凹部も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項1】
上部が開放した凹部を有する複数の可動板と、これらの可動板の凹部を貫通して延びる2本のスクリューと、該2本のスクリューの上方を覆う着脱可能なカバーと、前記2本のスクリューの互いに隣り合う部分が、それぞれ下方から上方へ向けて移動する向きに、各スクリューを回転駆動する駆動手段とを具備し、前記可動板に形成された凹部は、前記スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されていると共に、該凹部の底部のほぼ中央部には、前記可動板が往復動するように、各スクリューによって交互に押圧される第1及び第2の被加圧部を備えた突部が形成されている固液分離装置。
【請求項2】
前記2本のスクリューは、その羽根の一部が互いに重なった状態で配置されている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
各スクリューによって、処理対象物がほぼ同じ方向に搬送されるように、各スクリューの羽根の巻き方向が設定されている請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
上部が開放した凹部を有する複数の固定板を具備し、各固定板の間に前記可動板が配置され、前記2本のスクリューは、前記固定板に形成された凹部と可動板に形成された凹部を貫通して延び、固定板の凹部も、スクリューを上方に持ち上げることのできる形態に形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−289195(P2006−289195A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110294(P2005−110294)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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