説明

固液混合流体用分散装置

【課題】 層状粘土鉱物からなる超微粒子のアスペクト比を維持しながら、これを有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させる固液混合流体用分散装置を提供する。
【解決手段】 内部を貫通する流路に固液混合流体を通過させる装置であって、上記流路は、(a) 外部圧入手段により固液混合流体を導入する孔11と、(b) 円筒状空洞からなる滞留部12と、(c) ロート状空洞からなる加速/整流部13と、(d) 円筒状細孔からなるノズル孔14と、(e) ノズル孔14の先端から延びる孔15と、(f) 装置の軸線方向に対して垂直に延在する円筒状の空洞からなり、ノズル孔14の先端から延びる孔がほぼ接線状に連通している混合部16と、(g) 混合部16の軸線方向の両端部から固液混合流体を外部に排出する孔17,17とを有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機超微粒子、有機ポリマー及び/又はそのモノマー、並びに溶媒からなる固液混合流体用の分散装置に関し、特に層状粘土鉱物系超微粒子を有機ポリマー及び/又はそのモノマーに分散させる固液混合流体用分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー系ナノコンポジットは、ナノオーダーの無機超微粒子(粒径:通常1〜500 nm)が有機ポリマー中に微分散した複合材料であり、ミクロンオーダーの無機微粒子が有機ポリマー中に分散した複合材料に比べて各種物性(例えば引張強度、弾性率、耐熱性、耐ガス透過性等)に優れている。そのため自動車部品、包装材料、電気・電子部品、建材等の用途に有用である。
【0003】
しかし一般的に無機超微粒子は凝集体を形成しやすく、しかも有機ポリマーに対する親和性が低いので、有機ポリマー中に均一に分散させるのが極めて困難である。そこで特許第2934229号(特許文献1)は、図7に示すように、内部を貫通する流路に、有機ポリマー、無機微粒子及び溶媒からなる固液混合流体を通過させる固液混合流体用破砕/分散装置であって、(a) 導入孔100、これから連通する一対の分岐流路101,101、及びこれらの先端部に設けられたノズル部102,102を有する流路と、(b) 各ノズル部102,102から噴射される固液混合流体の噴射流交差部に設けられた被衝突部材(例えばダイヤモンド焼結体等からなる)103とを有する装置を提案している。この装置に、500 kg/cm2以上の圧力で固液混合流体を導入し、かつ各ノズル部102,102からの噴射速度を300 m/秒以上にすると、部材103に衝突した固液混合流体中の無機微粒子が破砕/分散されて超微粒子となり、排出した流体から溶媒を除去すれば、超微粒子が微分散したポリマー系ナノコンポジットが得られる。
【0004】
この装置は、固液混合流体中の無機微粒子を破砕/分散することにより超微粒子にするものであるので、シリカ、チタニア等のセラミックス系超微粒子を含むポリマー系ナノコンポジットの製造に適している。しかし層状粘土鉱物からなる無機微粒子は、破砕されるとアスペクト比が低下してしまい、ポリマー系ナノコンポジットの機械的強度等の物性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
層状粘土鉱物からなる超微粒子(クレー系超微粒子)及び有機ポリマーからなるポリマー系ナノコンポジットは、通常層間挿入法により製造される。例えば特開昭62-74957号(特許文献2)は、機械的強度及び耐熱性に優れた複合材料の製造方法として、陽イオン交換容量が50〜200ミリ当量/100 gの粘度鉱物粉末(例えばモンモリロナイト等)と膨潤化剤(例えば銅イオン等)とを接触させて複合体を形成し、得られた複合体とポリアミドモノマー(例えばラクタム化合物等)を混合し、得られた混合物を加熱重合する方法を提案している。この方法では、粘度鉱物の層間に取り込まれたモノマーを重合するので、粘度鉱物粒子が微分散したポリマー系ナノコンポジットが得られる。しかしこの方法では、上記複合体とポリアミドモノマーを混合する際に、自動乳鉢や振動ミル等による機械的混合法を用いるので、粘度鉱物が破壊され、そのアスペクト比の保持が困難である。
【0006】
特開平8-302062号(特許文献3)は、剛性及び耐熱性に優れた樹脂組成物の製造方法として、層状化合物の層間に有機カチオン(例えば4級アンモニウム塩等)を挿入し、有機溶媒で膨潤し、分散樹脂組成物(有機ポリマー)と溶融混練して無機質フィラー含有樹脂組成物を製造する方法を提案している。この方法では、有機カチオンの挿入により層間が開き、有機ポリマーと溶融混練することにより層剥離し、単層にまで分散した超微粒子中に有機ポリマーが取り込まれるので、層状化合物が微分散したポリマー系ナノコンポジットが得られる。しかしこの方法では、溶融混練中に層状化合物同士が衝突して破壊されることがあり、やはり層状化合物粒子のアスペクト比の保持が困難である。
【0007】
【特許文献1】特許第2934229号
【特許文献2】特開昭62-74957号
【特許文献3】特開平8-302062号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、層状粘土鉱物からなる超微粒子のアスペクト比を維持しながら、これを有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させる固液混合流体用分散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、固液混合流体を高速でノズル孔に通過させ、かつノズル孔から噴出した流体を、円筒状壁面を有する流路で高速旋回させることにより、層状粘土鉱物からなる超微粒子のアスペクト比を維持しながら、これを有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させることができることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の固液混合流体用分散装置は、柱状の外形を有し、その軸線にほぼ沿って内部を貫通する流路に、無機超微粒子、有機ポリマー及び/又はそのモノマー、並びに溶媒からなる固液混合流体を通過させて、前記無機超微粒子を前記有機ポリマー及び/又はそのモノマーに分散させる固液混合流体用分散装置であって、前記流路は、(a) 前記装置の一端部に設けられており、外部圧入手段により前記固液混合流体を導入する孔と、(b) 前記導入孔の先端から拡径した段部から前記装置の軸線方向に延びる円筒状の空洞からなる滞留部と、(c) 前記滞留部の先端から前記装置の軸線方向に延びるロート状の空洞からなる加速/整流部と、(d) 前記加速/整流部の先端から前記装置の軸線方向に延びる円筒状の細孔からなるノズル孔と、(e) 前記ノズル孔の先端から装置の軸線方向に延びる孔と、(f) 前記装置の軸線方向に対して垂直に延在する円筒状の空洞からなり、前記ノズル孔の先端から延びる孔が、前記円筒状空洞の軸線方向のほぼ中央においてほぼ接線状に連通している混合部と、(g) 前記装置の他端部に設けられており、前記混合部の軸線方向の両端部から前記固液混合流体を外部に排出する孔とを有し、前記固液混合流体を前記ノズル孔に通過させ、かつ前記ノズル孔から噴出した前記固液混合流体を、前記混合部の円筒状壁面に沿って旋回させながら前記排出孔に導くことにより、前記無機超微粒子を前記有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させることを特徴とする。
【0011】
前記加速/整流部は、前記滞留部から順次縮径した複数のロート状空洞が連設されてなるのが好ましい。本発明の好ましい例では、前記無機超微粒子は層状粘土鉱物からなる。前記固液混合流体が導入される圧力は49 MPa以上であるのが好ましい。前記ノズル孔から噴射される前記固液混合流体の速度は100 m/秒以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固液混合流体用分散装置は、無機超微粒子を有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させることができる。特に層状粘土鉱物系超微粒子のアスペクト比を維持しながら、これを有機ポリマー及び/又はそのモノマーに微分散させることができる。装置から排出された固液混合流体は、溶媒を除去することにより、無機超微粒子が均一に分散したポリマー系ナノコンポジットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[1] 固液混合流体
固液混合流体(以下特段の断りがない限り、単に「流体」とよぶ)は無機超微粒子、有機ポリマー及び/又はそのモノマー、並びに溶媒からなる。無機超微粒子の粒径は特に制限されないが、通常1〜500 nmである。無機超微粒子は無機化合物又は金属のいずれからなるものであってもよい。無機化合物からなる超微粒子としては、層状粘土鉱物系超微粒子、セラミックス系超微粒子等が挙げられる。層状粘土鉱物系超微粒子としては、例えばモンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントライト、ヘクトライト、スティブンサイト、マイカ、バーミキュライト、ハロイサイト等が挙げられ、天然品又は合成品のいずれでもよい。セラミックス系超微粒子としては、酸化物系セラミックス(例えば酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ等)、窒化物系セラミックス、炭化物系セラミックス等が挙げられる。
【0014】
有機ポリマー及びそのモノマーは公知のものでよく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリイミド、アクリル酸樹脂、ポリエステル(例えばポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)等の合成樹脂及びそれらのモノマーを挙げることができる。
【0015】
溶媒は、使用する有機ポリマー又はそのモノマーに応じて適宜選択すればよい。溶媒としては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール;メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族;水等を挙げることができる。溶媒は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0016】
流体には必要に応じて相溶化剤(例えばシランカップリング剤等)を添加してもよい。相溶化剤は無機超微粒子及び有機ポリマーの組合せに応じて適宜選択する。層状粘土鉱物系超微粒子を用いる場合、これを必要に応じて有機膨潤化剤(例えば有機カチオン等)により変性してもよく、これにより層間剥離が一層容易になる。有機カチオン及びこれによる層状粘土鉱物系超微粒子の変性方法は、例えば上記特許文献3に記載されている。
【0017】
流体は、無機超微粒子、有機ポリマー及び/又はそのモノマー、並びに溶媒を混合し、無機超微粒子が破壊されない程度に撹拌することにより調製する。流体は流動性があればよく、その粘度は特に限定されない。
【0018】
[2] 固液混合流体用分散装置
図1〜6は、本発明の固液混合流体用分散装置の一例を示す。この装置は、導入側ブロック1、メインブロック2、ノズル部3及び排出側ブロック4からなり、柱状の外形を有し、その軸線に沿って内部を貫通する流路を有する。この流路は、(a) 装置の一端部に設けられており、外部圧入手段により固液混合流体を導入する孔11と、(b) 導入孔11から拡径した段部1aから装置の軸線方向に延びる円筒状の空洞からなる滞留部12と、(c) 滞留部12から順次縮径した2つのロート状空洞が連設されてなる加速/整流部13と、(d) 加速/整流部13の先端から装置の軸線方向に延びる円筒状の細孔からなるノズル孔14と、(e) ノズル孔14の先端から装置の軸線方向に延びる孔15と、(f) 装置の軸線方向に対して垂直に延在する円筒状の空洞からなり、孔15が円筒状空洞の軸線方向ほぼ中央においてほぼ接線状に連通している混合部16と、(g) 装置の他端部に設けられており、混合部16の軸線方向の両端部から流体を外部に排出する孔17とを有する。
【0019】
固液混合流体用分散装置は、流体を外部から圧入する手段に高圧ホース等を介して接続すればよい。そのため装置の一端部には、高圧ホースの継手を接続する口10が設けられている。外部圧入手段としては、押出機、高圧ポンプ等が挙げられる。流体は、外部圧入手段により500 kg/cm2(49 MPa)以上の圧力で装置に導入するのが好ましい。この圧力が49 MPa未満であると、無機超微粒子の分散性が低下する。導入圧の上限は特に制限されないが、実用上3,000 kg/cm2(294 MPa)以下であるのが好ましい。
【0020】
接続口10の底部に導入孔11が設けられている。導入孔11は流体が円滑に流入するように、ロート状に形成されている。導入孔11の入り口直径は、高圧ホースの排出孔の直径とほぼ同じであるのが好ましい。導入孔11のすり鉢状部の傾斜角θ1は45〜90度であるのが好ましい。
【0021】
滞留部12は、導入孔11から拡径した段部1aから装置の軸線方向に延びる円筒状の空洞からなる。滞留部12で流体を一旦滞留させることにより、後段の加速/整流部13での流体の乱流を軽減することができる。また滞留部12の圧力(静圧)により、後段の加速/整流部13及びノズル孔14の流体に十分な流動圧を付与することができる。滞留部12のアスペクト比やサイズを適宜調節することにより、加速/整流部13及びノズル孔14の流体にかける流動圧を調節することができる。限定的ではないが、滞留部12の断面直径は、ノズル孔14の直径の50〜150倍であるのが好ましい。滞留部12のアスペクト比L1/L2は1.5/1〜4/1とするのが好ましい。
【0022】
加速/整流部13は、滞留部12から順次縮径した第一及び第二のロート状空洞13a,13bが連設されてなる。図5に詳細に示すように、第一及び第二のロート状空洞13a,13bは各々すり鉢状の加速部130a,130bと、円筒状の整流部131a,131bとからなる。流体を十分に加速するために、すり鉢状加速部130a,130bの傾斜角θ2及びθ3は45〜150度であるのが好ましい。整流部131a,131bでは加速部で生じた乱流を整えて流体の速度低下を防止することができる。整流部131a,131bのアスペクト比L3/L4及びL5/L6は各々1.5/1〜4/1とするのが好ましい。このような第一及び第二のロート状空洞からなる加速/整流部13を設けることにより、ノズル孔14に導入する流体に、乱流を抑制しながら十分な速度を付与することができる。ただし加速/整流部13は、二つのロート状空洞からなるものに限定されない。加速/整流部13は、必要に応じて一つのロート状空洞により構成してもよいし、径が順次減少する三つ以上のロート状空洞により構成してもよい。
【0023】
加速/整流部13での縮径度L6/L2(加速/整流部13における入口直径に対する出口直径の割合)は1/5〜1/20であるのが好ましい。ノズル孔14に流体を円滑に導入し、ノズル孔14内で十分な流動速度を確保するために、加速/整流部13における出口直径L6は、ノズル孔14の直径の1〜10倍であるのが好ましい。
【0024】
ノズル孔14は、加速/整流部13の先端から装置の軸線方向に延びる円筒状の細孔からなる。ノズル孔14に流体を高速で通過させることにより、凝集した無機超微粒子は個々の粒子に解離(凝集破壊)し、流体中で分散する。特に層状粘土鉱物系無機超微粒子は、その長手方向が流体の流動方向とほぼ平行になるように配向するとともに、層間剥離を生じ、流体中で微分散する。この微分散機構は、流体中の固体相(無機超微粒子)の流動速度が、液相(溶媒並びに有機ポリマー及び/又はそのモノマー)の流動速度より遅いので、層状粘土鉱物系無機超微粒子がノズル孔14中でその長手方向(層に平行な方向)に液相による圧力を受け、層間に液体(溶媒並びに有機ポリマー及び/又はそのモノマー)が進入し、層間が開いて剥離することによるものと推測される。
【0025】
ノズル孔14から噴射する流体の速度は100 m/秒以上であるのが好ましい。この速度が100 m/秒未満であると、無機超微粒子の分散性が低下する。この速度の上限は特に制限されないが、実用上500 m/秒以下が好ましい。ノズル孔14の直径及び軸線方向長さは流体供給量により適宜設定する。限定されないが、ノズル孔14の直径は通常100〜500μmとするのが好ましく、軸線方向長さは通常3〜15 mmとするのが好ましい。
【0026】
ノズル3aは、高速で通過する流体による摩耗を抑制するために、ダイヤモンド焼結体、超硬合金焼結体、表面に多数のダイヤモンド粒子が電着された鉄、コバルトなどの金属製基体等からなるのが好ましい。中でもダイヤモンド焼結体が好ましい。ノズル3aはノズルケース3bと一体化されている。ノズルケース3bの材質としては、例えばステンレス鋼が挙げられるが、これに限定されない。ステンレス鋼とダイヤモンド焼結体とからなる部材を一体的に製造する方法は公知であるので、説明を省略する。限定的ではないが、ノズル3aの直径は、ノズル孔14の直径の20〜50倍であるのが好ましい。
【0027】
ノズル孔14から噴出した流体は、ノズル孔14の先端から装置の軸線方向に延びる連通孔15を経て混合部16に流動する。連通孔15の直径はノズル孔14の直径の5〜20倍であるのが好ましい。
【0028】
混合部16は、装置の軸線方向に対して垂直に延在する円筒状の空洞からなり、孔15が円筒状空洞の軸線方向のほぼ中央においてほぼ接線状に連通している。そして混合部16の軸線方向の両端部から流体を外部に排出する孔17,17が、混合部16における装置の軸線方向先端から外方に向けて設けられている。そのため混合部16では、ノズル孔14から噴出した流体を、その両端方向に分割するとともにその円筒状壁面に沿って高速で旋回させながら排出孔17,17に導くことができる。その過程で、無機超微粒子を流体中で一層均一に分散させることができる。ここで「ほぼ接線状に連通している」とは、混合部16の円筒状空洞に対して完全に接線状に連通している場合に限らず、混合部16に流入した流体が円筒状壁面に沿って旋回できる範囲で接線からずれている場合も含むことを意味する。
【0029】
混合部16のサイズやアスペクト比L7/L8を調整することにより、超微粒子の分散度を調整できる。限定的ではないが、混合部16の断面直径は、ノズル孔14の直径の70〜200倍であるのが好ましい。通常混合部16のアスペクト比L7/L8は、1.2/1〜3/1であるのが好ましい。排出孔17,17の径は流体の導入量に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
以上のように本発明の装置では、流体を高速でノズル孔14に通過させ、ノズル孔14から噴出した流体を混合部16の円筒状壁面に沿って高速で旋回させるので、無機超微粒子は、これら同士の衝突を伴わずに流体中で分散する。そのため層状粘土鉱物系超微粒子のアスペクト比を維持しながらナノオーダーで、有機ポリマー及び/又はそのモノマーに分散させることができる。
【0031】
装置から排出した流体は、溶媒を除去することにより、無機超微粒子が均一に分散したポリマー系ナノコンポジットとすることができる。流体が有機ポリマーのモノマーを含む場合、溶媒を除去する前又は後に重合すればよい。得られたポリマー系ナノコンポジットは、用途に応じて種々の形状に成形すればよい。
【0032】
固液混合流体用分散装置の部材構成について説明する。図6に示すように、この装置は、導入側ブロック1、メインブロック2、ノズル部3及び排出側ブロック4が、各々パッキン20〜22を介してねじ30により螺着されることにより一体化されている。導入側ブロック1には、接続口10、導入孔11及び滞留部12を形成するための円筒状突起1bが設けられている。メインブロック2には、導入側ブロック1の円筒状突起1bを収容する空洞2a、加速/整流部13、並びにノズル部3を収容する凹部2bが設けられている。ノズルケース3bには、連通孔15の一部が設けられている。排出側ブロック4には、ノズル部3をメインブロック2との間に挟持するための環状突起4a、混合部16、混合部16を密閉するためにパッキン23を介して螺着される蓋4b、連通孔15の一部(ノズルケース3bに設けられた連通孔15の片割れ部分)及び排出孔17,17が設けられている。各部材1,2,4の材質としては、例えばステンレス鋼が挙げられるが、これに限定されない。パッキン20〜23の材質としては、例えばテフロン(登録商標)が挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
以上の通り図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず、本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。例えば、固液混合流体用分散装置のいずれかの部位にヒーターを設けて、流体を加熱しながら流路に通過させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の固液混合流体用分散装置の一例を示す左側面図であり、(b)は図1(a)に示す装置の正面図であり、(c)は図1(a)に示す装置の右側面図である。
【図2】図1のA-A断面図である。
【図3】図1に示す装置の断面図である。
【図4】図1に示す装置の導入孔を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1に示す装置の加速/整流部及びノズルを示す部分拡大断面図である。
【図6】図1に示す装置の部材構成を示す斜視図である。
【図7】従来の固液混合流体用分散装置の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・導入側ブロック
1a・・・段部
1b・・・円筒状突起
2・・・メインブロック
2a・・・空洞
2b・・・凹部
3・・・ノズル部
3a・・・ノズル
3b・・・ノズルケース
4・・・排出側ブロック
4a・・・円環状突起
4b・・・蓋
10・・・接続口
11・・・導入孔
12・・・滞留部
13・・・加速/整流部
13a,13b・・・ロート状空洞
130a,130b・・・加速部
131a,131b・・・整流部
14・・・ノズル孔
15・・・連通孔
16・・・混合部
17・・・排出孔
20,21,22,23・・・パッキン
30・・・ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の外形を有し、その軸線にほぼ沿って内部を貫通する流路に、無機超微粒子、有機ポリマー及び/又はそのモノマー、並びに溶媒からなる固液混合流体を通過させて、前記無機超微粒子を前記有機ポリマー及び/又はそのモノマーに分散させる固液混合流体用分散装置であって、前記流路は、
(a) 前記装置の一端部に設けられており、外部圧入手段により前記固液混合流体を導入する孔と、
(b) 前記導入孔の先端から拡径した段部から前記装置の軸線方向に延びる円筒状の空洞からなる滞留部と、
(c) 前記滞留部の先端から前記装置の軸線方向に延びるロート状の空洞からなる加速/整流部と、
(d) 前記加速/整流部の先端から前記装置の軸線方向に延びる円筒状の細孔からなるノズル孔と、
(e) 前記ノズル孔の先端から装置の軸線方向に延びる孔と、
(f) 前記装置の軸線方向に対して垂直に延在する円筒状の空洞からなり、前記ノズル孔の先端から延びる孔が、前記円筒状空洞の軸線方向のほぼ中央においてほぼ接線状に連通している混合部と、
(g) 前記装置の他端部に設けられており、前記混合部の軸線方向の両端部から前記固液混合流体を外部に排出する孔
とを有し、前記固液混合流体を前記ノズル孔に通過させ、かつ前記ノズル孔から噴出した前記固液混合流体を、前記混合部の円筒状壁面に沿って旋回させながら前記排出孔に導くことにより、前記無機超微粒子を前記有機ポリマー及び/又はそのモノマーに均一に分散させることを特徴とする固液混合流体用分散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固液混合流体用分散装置において、前記加速/整流部は、前記滞留部から順次縮径した複数のロート状空洞が連設されてなることを特徴とする固液混合流体用分散装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の固液混合流体用分散装置において、前記無機超微粒子は層状粘土鉱物からなることを特徴とする固液混合流体用分散装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固液混合流体用分散装置において、前記固液混合流体が導入される圧力は49 MPa以上であり、前記ノズル孔から噴射される前記固液混合流体の速度は100 m/秒以上であることを特徴とする固液混合流体用分散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−98689(P2007−98689A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289388(P2005−289388)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(391009408)
【Fターム(参考)】