説明

固相重縮合によりポリエステル材料の固有粘度を高める方法、およびその装置

固相重縮合(SSP)によりポリエステル材料の固有粘度を高める装置は、ポリエステル材料(P)が所望の固有粘度に達するまで所定の熱処理温度で所定の滞留時間の間ポリエステル材料(P)を滞留させることのできる加熱可能な反応容器(2,2’)と、反応容器の下流に配され反応容器から排出されたポリエステル材料を反応温度よりも低い第1冷却温度に冷却するよう構成された冷却容器(6,6’)とを備える。冷却容器(6,6’)の下流にはポリエステル材料流をポリエステル材料処理装置(8)および/または中間保管容器(10)へ方向を切り替えるよう構成されたポリエステル材料分離装置(7)が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相重縮合によりポリエステル材料の固有粘度を高める方法、およびその装置に関し、ポリエステル材料が反応容器に導入され、ポリエステル材料が所望の固有粘度を示すまで所定の滞留時間の間所定の熱処理温度でポリエステル材料を当該反応容器に滞留させ、その後ポリエステル材料は冷却容器に送られて反応温度よりも低い第1冷却温度より低い温度に冷却される。
【背景技術】
【0002】
例えばPETやPENなどの高分子ポリエステルの製造には合成物質のなかでも固有のポリエステルの特性が利用されるが、この特性によると、ポリエステルが高温で滞留するとポリエステル分子の重縮合が起こってポリエステルの粘度が高まる。このポリエステルは、酸化分解を防止するために、真空下または不活性ガス下に滞留させられる。このような低分子ポリエステル出発物質からの高分子ポリエステルの取得は、普通、溶融重縮合(MPPC)または固相重縮合(SSP)もしくは2つの方法の組み合わせによりもたらされる。
【0003】
溶融重縮合の間、ポリエステルの溶融が、約1mbarの高真空下で約30分〜5時間の間約270℃〜300℃の温度で進行する。これには、高い処理温度により、先に述べた酸化分解過程が起こるという不利益が伴う。酸化分解は、黄色への変色を引き起こしポリエステルの重縮合を抑制するものである。溶融重縮合により実現される固有粘度は、約0.6IV(=固有粘度)となる。
【0004】
固相重縮合の間、溶融ポリエステルは、普通、複数のダイで押出され、こうして形成されるプラスチックの紐はその後水槽で冷却される。固化した後、プラスチックの紐は粒状、すなわち、ペッレットにカットされる。急激な冷却により、ポリエステルは非晶質状態となる。これは、もともと透明であったポリエステル材料は非晶質状態で透明なままとなるが、ゆっくりと冷却されたポリエステルは結晶状態となってもとの透明が白くなるため、重要である。さらに処理を進めるために、ポリエステル粒状体の凝集により結晶化温度の範囲(80〜120℃)で再加熱する必要がある。したがって、粒状体は、まずいわゆる晶析装置に供給され、ここでさらなる処理のために粒状体の追従性をとりもどすために活発な攪拌下において結晶化温度より高い温度にされる。これは撹拌器なしで容器を移動し乾燥するには最重要である。さらに、粒状体は結晶形状の内部の水分を吸収し、これにより、より短い滞留時間で乾燥する。その後すぐに粒状体がSSP(固体重縮合)反応炉または熱処理容器と呼ばれる固相重縮合容器に供給されて、固有粘度を高めるために約190〜250℃まで加熱され、その後、所望の固有粘度が得られるまで約1〜40時間の間、これらの条件下でSSP反応炉に放置する。
【0005】
SSPの方法は、基本的に2つのグループに分けることができる。すなわち、例えば特許文献1に記載の、通常は窒素が不活性ガスとして用いられて熱媒体および重縮合から分離された分離生成物の輸送媒体として機能する連続SSPと、特許文献2に記載の、回転式乾燥機に合成物質が充満し、真空下で反応温度を超える温度に加熱され、所望の固有粘度が得られるまでこの温度で滞留し、その後同じドラム内で反応温度より低い温度まで冷却される不連続SSPである。特許文献3には、半連続SSP法も記載される。それぞれ前述の公報に記載される連続および半連続SSP法は、プラスチックの粒状体が所望の固有粘度に達した後に反応温度より高い温度のSSP反応炉に残留することによりSSP反応炉で冷却され、冷却された状態でそこに保管されるように、プラスチックの粒状体の固有粘度を高めるために適しているに過ぎない。
【0006】
新しい方法では、特定の構成の装置とより長いポリエステル材料の滞留時間を用いて、溶融重縮合(MPPC)により直接所望の固有粘度を作り出すことにより固相重縮合ステップが排除される。しかしながら、この固有粘度を高める方法は、SSPステップを省略することにより、通常は固相で行われるポリエステルのアセトアルデヒドの低減も省略されるため、特にプリフォームの製造には不利益である。食品製造分野におけるポリエステルの利用ではアセトアルデヒドの低減は必須の場合もあり、固有粘度をMPPCによって高めるならば、所望のアセトアルデヒドの低減を実現するために高価な添加物を添加することが必要になる。
【0007】
PET、PEN、PA、またはPCなどの高分子ポリエステルは、その固有粘度を高める処理を行った後、例えば、プラスチックボトル製造用、ストラップ、熱成形フィルム、シートなど用のいわゆるプリフォームなど、多数の用途で利用される。固有粘度を高めるためのポリエステル材料の処理は上記方法のひとつにかかる精製装置で行われ、その後、処理済のプラスチックの粒状体は周囲温度まで冷却されて、輸送用容器に充填されて例えばプリフォームプラントに届けられる。その高い吸湿性からポリエステル粒状体は保管および輸送中に結合水を有するため、高分子ポリエステル粒状体は、プリフォームプラントにおいて射出成形装置でプリフォームに加工できるようになる前に、まず結合水の除去のために乾燥機内で冷却状態から約160〜180℃に加熱する必要がある。粒状体の乾燥には、乾燥機内で6時間以上の滞留時間が必要であり、そうでなければポリエステルの粘度損失が大きくなることになる。この必須の乾燥ステップにより、プラスチックの粒状体の処理速度が制限され、高いエネルギーの投入が必要となる。総エネルギー収支を考慮すると、ポリエステル粒状体を精製装置内で冷却し処理プラント内で乾燥のために再加熱することは著しく不利益である。
【0008】
総エネルギー収支を改善するため、ポリエステル粒状体が作られるときに精製装置内でSSP処理をするのではなく、ポリエステル粒状体のSSP処理は、処理プラントにおいてのみ、射出成形装置などの処理装置で処理される直前に行うことが提案されてきた。このため、精製装置で作られた通常固有粘度が約0.64IVの粒状体は、処理装置の上流に配されたSSP反応炉に運ばれてそこで所望の値まで固有粘度を高めるためのSSP処理を受けて材料の乾燥が同時に行われ、粒状体内のアセトアルデヒドは1ppmより低く抑えられる。このようにして、プリフォーム製造においては、SSPにより処理されていない安価な原材料を精製装置から直接用いることができる。
【0009】
しかしながら、射出成形装置などで合成物質が処理される直前に合成物質をSSP処理するという上記の提案は、装置を起動した後の連続運転が必要であり、そうでなければ装置内で起こる合成物質の反応を制御することができず、合成物質の品質が不安定および/または有害物質の発生という結果につながることがある。後者は、食品産業で用いる製品(PETボトルなど)の製造には許されない。しかしながら、実際には、誤動作のためであれ機器の一時停止または少なくとも実質的に運転速度を遅くする必要がある機器や器具に必要な改修のためであれ、プラスチック処理プラントの日常的な運転においては均一な連続運転は保証し得ない。
【特許文献1】独国特許出願公開第10054240号
【特許文献2】独国特許出願公開第19710098号
【特許文献3】国際公開第2004/029130A1号
【発明の開示】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上述のような先行技術の不利益が緩和または排除された、先に定義した種類の方法とその装置を提供することにある。特に、本発明の目的は、固相重縮合によりポリエステル材料の固有粘度を高める方法とその装置を提供することにあり、ここで、乾燥機の代わりにSSP反応炉が射出成形または押出成形装置などのプラスチック処理装置のすぐ上流に配されるが、これによって、合成物質の流量の変化もしくはプラスチック処理装置の停止によって供給される合成物質の質が不安定にならない、またはSSP反応炉の停止と再開の結果としての長いスタート時間および/もしくは高い材料損失に耐える必要がなくなる。
【0011】
本発明は、請求項1の特徴を有するポリエステル材料の固有粘度を高める方法を提供することにより、また請求項13に定義されるポリエステル材料の固有粘度を高める装置を提供することにより、先に述べた問題を解決する。本発明の好適な実施形態は従属請求項に定められる。反応温度とは、ポリエステルの固有粘度の増加が測定可能となり始める温度のことである。PETについては、例えば180℃である。固有粘度増加の測定は、DIN基準DIN53728「希釈液中のポリエチレン・テレフタレート(PETP)またはポリブチレン・テレフタレート(PBTP)の粘度数値の判定」にしたがって行うことができる。
【0012】
本発明によれば、ポリエステル材料の固有粘度の増加は、1以上のプラスチック処理装置の上流に配される加熱可能な反応容器における固相重縮合(SSP)によって実現される。反応容器(SSP反応炉)をプラスチック処理装置(フィルム、ストラップ、モノフィラメント、またはシートなどに用いられる射出成形装置および押出成形機)の前に用いることにより、精製装置でSSPにより前処理されたポリエステル材料を送るのに比べると、送られてきた材料の乾燥が必要ではないため、原材料コストを約10〜20%も減少させることができる。ポリエステル材料は反応容器に導入され、少なくともポリエステル材料の反応温度である所定の熱処理温度で所定の滞留時間の間、ポリエステル材料が所望の固有粘度に達するまでそこに置いておかれる。その後、反応容器の下流に配された冷却容器に運ばれてその冷却容器内で第1冷却温度に冷却される。第1冷却温度はポリエステル材料の反応温度よりも低く、これにより、ポリエステル材料の固有粘度がこれ以上増加するのを止める。本発明によれば、冷却されたポリエステル材料は、冷却容器から冷却容器の下流に配され、ポリエステル材料処理装置および/または中間保管容器へのポリエステル材料の流れを転換させるよう構成されるポリエステル材料分離装置へ運ばれる。製造の通常運転においては、ポリエステル材料分離装置は、冷却されたポリエステル材料を少なくとも1つの処理装置に供給するよう設定される。処理装置の誤動作もしくは故障の場合、または1以上の処理装置の改修が必要となった場合、ポリエステル材料分離装置は合成物質の流れの少なくとも一部が中間保管容器へ分岐するよう切り替えを行い、処理装置が完全に停止する場合には合成物質の流れ全体が中間保管容器に運ばれる。中間保管容器は、装置が長期にわたってダウンした場合にそうでなければ体積することになるSSP処理されたポリエステル材料を収容するために十分な中間保管能力を与えることを保証するならばどのようなサイズであってもよい。先行技術に比較しての本発明の基本的な利点は、処理装置が一時的に停止した場合、またはポリエステル材料の処理速度が低下した場合でも、SSP処理に干渉する必要が無く、当該処理をさらに進めることができることにあり、特にSSP処理を停止する必要がないことにある。ポリエステル粒状体1から約10トンの間、または反応温度180℃を超えるグランドストックが普通SSP反応炉内に置かれることを考えるならば、これがいかに重要であるかについては言うまでも無い。処理工学の観点からは、SSP処理を終了した後この量の合成物質を再加熱し、これにより合成物質全体に反応温度を超える均一な滞留時間ひいては均一な固有粘度を保証するために、このような大量の合成物質をSSP反応炉内で均一に冷却することはほとんど実現不可能である。
【0013】
処理装置の直前でSSP反応炉を用いることにより、本発明にかかる装置における合成物質の粘度は、処理装置における処理ステップおよびこれによって製造された製品それぞれに個別に調整することができ、さらにサイクル時間に関して処理最適化を行うことができる。例えば、低炭酸ミネラルウォーター用プラスチックボトルを製造するためのプリフォームのスタート製品としての合成物質には、こうしたボトルの機械強度特性が低いため、0.72IVの固有粘度しか必要ではなく、炭酸清涼飲料(CSD)ボトルはボトル内の圧力が高いため、原材料の固有粘度値に0.82IVが必要である。本発明にかかる装置では、ポリエステル材料の固有粘度は処理装置のすぐ前に個別に調整することができるため、常に同じ原材料を買うことができ、物流を単純化し(例えば、原材料を置き換えるときには必要となる原材料ホッパーのクリーニングが省略可能となる)、大量に購入注文するために低価格での購入が可能となる。さらに、ポリエステル材料のSSP処理に続いて材料はすぐに処理されて材料の長期保管は必要ではなく、従来の製造であったように、保管および輸送により材料中のアセトアルデヒド含有量は増加しない。したがって、本発明によれば、高価な添加物もアセトアルデヒド含有量を減少させるための処理を行う特定の後処理も必要ではなく、アセトアルデヒド含有量の減少は処理装置の直前にSSP反応炉で起きる。ポリエステル材料の熱処理温度および通常反応容器内で6時間を越える長い滞留時間により、反応容器における拡散過程によりポリエステル材料内に存在しうる不純物の著しい減少がもたらされるため、食品衛生局(FDA)により規定される値は実現されると考えられる。これにより、食品に接触するフィルムの直接押出成形などでの利用や、食品製造分野における射出成形の利用が、ポリエステル材料の上流洗浄処理から独立して可能となる。
【0014】
本発明の一実施形態において、ポリエステル材料は、あとで中間保管容器に送られることになる場合には、冷却容器内で第1冷却温度よりも低い第2冷却温度に冷却される。第2冷却温度は、ポリエステル材料によって、160℃以下、好ましくは140℃以下であり、PETは例えば160℃を超える温度で保管されると黄色に変色するため、際立って低い温度(例えば、80℃以下)とする場合もある。冷却容器の制御は、ポリエステル材料分離装置の位置に適切に連結されている。
【0015】
本発明の一実施形態では、小型および中型の装置に特に適しており、冷却容器は排気可能に構成され、かつ好ましくは0.1〜10mbarの真空下で動作する。
【0016】
本発明の別の実施形態においては、熱エネルギー移転がよいために合成物質の冷却がより迅速に行われ、ポリエステル材料は冷却容器内の乾燥した空気または不活性ガスによって冷却される。しかしながら、本実施形態では、特に閉回路で行われ清浄化されなければならない不活性ガスが用いられる場合には、装置についてより多くの労力が必要となる。
【0017】
本発明にかかる装置の冷却容器は、反応容器用の排出容器として機能してもよく、この目的では、そのポリエステル材料入り口およびポリエステル材料出口上に真空密遮断装置を備えるロック容器として構成される。これにより、冷却されたポリエステル材料はまとめて排出される。
【0018】
本発明にかかる装置の好都合な実施形態においては、冷却容器におけるポリエステル材料の冷却速度を高めるため、冷却容器には撹拌器が備えられる。
【0019】
本発明の好適な実施形態においては、ポリエステル材料は、反応容器に導入される前には少なくとも反応温度まで加熱される。反応容器の上流に配された予熱容器において小さめの量でおきてもよく、これにより、加熱された材料は、予熱容器から反応容器にまとめて送られる。
【0020】
反応容器での熱処理温度は材料に応じて選択するべきであるが、ほとんどの材料については少なくとも180℃である。
【0021】
本発明の一実施形態では、その簡易な構成により小型および中型の装置に特に適しており、反応容器は好ましくは0.1〜10mbarの真空下におかれてもよい。また、熱媒体、好ましくは不活性ガスまたは乾燥した空気は、反応容器を通過する。しかしながら、この構成では、大型プラントでのみペイオフするような極めて大きな労力が必要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を2つの例示的実施形態に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0023】
まず図1を参照すると、ポリエステル材料の固有粘度を高める、乾燥した空気または不活性ガスで加熱される反応容器を有する本発明にかかる装置の第1の実施形態を図示する。PET、PA、PCなどからなり、粒状体またはボトルやプリフォームなどでできたグランドストックとして用意されるポリエステル材料Pは、好ましくは予備加熱された後に、結晶の形態で、回転バルブとして図示される遮断機1を介してSSP反応容器2に供給され、ここでポリエステル材料は例えば窒素などの不活性ガスまたは乾燥した空気である熱媒体Nを用いて熱処理温度まで加熱される。この熱処理温度は、少なくとも処理対象のポリエステル材料の反応温度であり、好ましくはこれより高いが、ポリエステル材料の溶融温度よりは低い。反応温度とは、ポリエステル材料の固有粘度の増加が測定可能となり始める温度のことである。熱処理温度は、供給されるポリエステル材料に応じて調整されるが、一般的には、少なくとも180℃、好ましくは約220℃である。反応容器内の温度は、温度センサT1を用いて測定される。熱媒体Nは反応容器2の下部領域に供給され、ファン(不図示)または横チャネル送風機12により反応容器2の上部領域に吸い込まれて、それぞれガス洗浄およびガス乾燥手段5を介して、含まれる不純物や水分から開放される。その後、熱媒体Nは加熱機4を用いて熱処理温度まで加熱され、再び反応容器2に供給される。熱媒体Nの温度は、反応容器2への供給パイプにある温度センサT2によって測定される。参照符号13は、反応容器2用のレベルセンサを示す。
【0024】
SSP反応容器2におけるポリエステル材料の滞留時間の経過中、ポリエステル材料の固相重縮合がおこり、その固有粘度が高まって、これにより形成または現れた副産物は、それぞれ熱媒体の流れに吸い込まれる。反応容器2の下部領域には、合成物質のポリメリゼーションの程度を判定するためのサンプル採取用の開口部11が設けられる。
【0025】
ロックホイールとして構成された遮断機3を介して、ポリエステルは、そのSSP処理の後、反応容器2から冷却容器6へ運ばれる。冷却容器6の出口に、さらに遮断機15が配され、アウトプット7A、7Bを含むポリエステル材料分離装置7がこれに続く。アウトプット7Aはここではスクリュー押出機として構成されるポリエステル材料処理装置8へのパイプラインに接続されており、アウトプット7Bは中間保管容器10へのパイプラインに接続されている。位置によっては、ポリエステル材料分離装置7は遮断機15を通過するポリエステル材料流を、処理装置8へと流れる材料流P1と中間保管容器10へと流れる材料流P2とに分割する。すなわち、一部の流れを両方の通路に分割することも可能である。
【0026】
処理装置8の供給ホッパー16にあるレベルセンサ14により測定される下流処理装置8が材料を必要とするか否かに応じて、冷却容器6のポリエステル材料は反応容器2におけるポリエステル材料の反応温度よりも低い、例えばPETについては180℃未満の第1冷却温度まで、または第1冷却温度よりも低い、ひいてはポリエステル材料が保管中に黄色く変色する温度よりも低いと考えられる、例えばPETについては160℃未満の第2冷却温度まで冷却される。言うまでも無く、第2冷却温度は著しく低くてもよく、例えば70〜120℃の範囲から選択することができる。第2冷却温度の別の選択基準としては、中間保管容器10の温度抵抗がある。例えば、第1冷却温度は140〜179℃の範囲で調整することができ、第2冷却温度は70〜139℃の範囲で調整することができる。ポリエステル材料は、ポリエステル材料が処理装置8に供給されるとするならば、常に第1冷却温度まで冷却される。この場合、固有粘度を高める処理を停止するために反応温度未満の温度まで冷却することが必要となるが、処理装置8内で合成物質の温度は再び溶融温度まで上昇し、合成物質がすでに温度が高い処理装置に導入されるならばエネルギー投入をより少なくすることが求められるため、エネルギー節約のために冷却をできるだけ少なくすることが望まれる。ポリエステル材料は、ポリエステル材料が中間保管器10に送られるならば、第2(より低い)冷却温度にまで冷却される。この場合、ポリエステル材料が黄色く変色することはもう起こらないことが保証されることになる。すなわち、第2冷却温度は、例えばPETについては160℃未満になるように、またはポリエステル材料の問題の無い保管を可能とするためにそれぞれより低くなるように、選択される。2つの冷却温度のうちどちらの温度までポリエステル材料を冷却するのかに関する冷却容器6の調整は、レベルセンサ14の信号によって、またはポリエステル材料分離装置7の位置によって実現される。レベルセンサ14が供給ホッパー16が一杯であることを示すならば、ポリエステル材料分離装置7は、すでに第2冷却温度まで冷却されているポリエステル材料P2の流れが中間保管容器10に流れるように切り替える。材料流P2は、例えば真空輸送機9などの運搬要素を通じて送ることができる。処理装置8が新たにポリエステル材料を必要とするならば、ポリエステル材料分離装置7は材料流P1を処理装置8へと流すために切り替えられ、第1冷却温度までの材料の冷却は冷却容器内で同時に調整される。
【0027】
以下、図2を参照して、本発明にかかるポリエステル材料の固有粘度を高める装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、特に、SSP反応容器2’が真空下で運転するという点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態の要素に対応する第2の実施形態の要素は同じ参照符号で示されており、同じ機能を持つが構造的に異なっている場合にはアポストロフィをつける。
【0028】
真空輸送機を介して、結晶、好ましくは予備加熱されたポリエステル材料Pが排気可能な予熱容器17に一度に導入され、SSP反応容器2’の真空ロックとして機能する。このため、予熱容器17にはその入り口に真空密スライド状の遮断機20が設けられ、出口に真空密遮断機21が設けられる。ポリエステルを反応温度までより早く加熱するため、予熱容器にはさらに撹拌器18が設けられる。予熱容器内の温度は温度センサT4により測定される。ポリエステル材料Pを導入した後、予熱容器17は排気され、ポリエステル材料が反応温度またはそれ以上、しかしながら溶融温度未満の温度に加熱されて、その後遮断機21を開くことによりSSP反応容器2’に送られる。参照符号13は反応容器2’用のレベルセンサを示す。反応容器2’内で所望の滞留時間が経つと(すなわち、所望のIVに達すると)、ポリエステル材料は、ここではスライドとして構成される遮断機3’を介して冷却容器6’にまとめて送られる。ここで、ポリエステル材料は、反応温度未満の第1冷却温度まで冷却される。冷却容器6’は冷却過程を加速するための撹拌器19を有する。その後、スライド状の遮断機15’を介して、ポリエステル材料はポリエステル材料流P1が処理装置8の供給ホッパー16に供給されるように切り替えられたポリエステル材料分離装置7に送られる。供給ホッパー16のレベルセンサ14が「充満」の信号を送る場合には、遮断機15’が閉まって、ポリエステル材料分離装置7は冷却容器6’と中間保管容器10との間の輸送経路が開くように切り替える。冷却容器6’内の残りのポリエステル材料は材料の凝集と酸化を防止するために第1冷却温度より低い第2冷却温度まで冷却される。温度センサT3によって測定される第2冷却温度に達すると、遮断機15’が再び開いてポリエステル材料流P2が真空輸送手段9によって中間保管容器10に送られる。処理装置は、誤動作によるものであれ改修の結果としての必要な停止によるものであれ、ポリエステル材料をもはや収容することができないが、反応容器2’でのSSP処理は変更無くさらに進めることができる。すなわち、所望の滞留時間が経過すると、ポリエステル材料はSSP反応容器2’から冷却容器6’にまとめて送られ、そこで第2冷却温度まで冷却されて中間保管容器10に送られる.
【0029】
予熱容器17、反応容器2’、および冷却容器6’は、真空ダクトを介して真空ソース(不図示)に接続されて、それぞれの容器内に0.1〜10mbarの真空を生み出すことができる。個々の容器の排気は、真空ダクト内のバルブV1、V2、V3により制御される。
【0030】
さらに、同様に、上述の第1および第2の実施形態の部分の組み合わせからなる、本発明にかかるSSPによりポリエステル材料の固有粘度を高める装置の実施形態が提供されることを述べておく。このように、さらなる装置構成では、供給されるポリエステル材料は、例えばらせん状の供給パイプライン内で、まず反応温度より少し低い温度、例えば約170℃に、高温または乾燥した空気を用いて加熱され、その後、例えば100kgという比較的容量の小さい真空密予熱容器に送られる。
【0031】
その後すぐに、ポリエステル材料は予熱容器内において乾燥した空気下で例えば約200℃の熱処理温度に加熱され、供給パイプラインと予熱容器との間の真空ロックが閉鎖され、予熱容器が排気され、100kgのポリエステル材料がかなり容量の大きいSSP容器に送られる。ここで、定められた滞留時間の間、熱処理温度でSSP処理が起こる。滞留時間が経過すると、ポリエステル材料はまとめて冷却容器に送られて、そこで上述のように第1または第2冷却温度まで冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかるポリエステル材料の固有粘度を高める装置の第1の実施形態の概略図である。
【図2】本発明にかかるポリエステル材料の固有粘度を高める装置の第2の実施の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相重縮合(SSP)によりポリエステル材料の固有粘度を高める方法であって、前記ポリエステル材料が反応容器(2,2’)に導入され、少なくとも前記ポリエステル材料の反応温度であって固有粘度の上昇が測定可能となる所定の熱処理温度で、所定の滞留時間の間、前記ポリエステル材料が所望の固有粘度を示すまで、前記ポリエステル材料を当該反応容器内に滞留させ、その後前記ポリエステル材料が前記反応温度よりも低い第1冷却温度に冷却される冷却容器(6,6’)に送られ、前記冷却容器(6,6’)の下流に前記冷却されたポリエステル材料がポリエステル材料処理装置(8)および/または中間保管容器(10)に方向転換可能に送られることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記冷却容器(6,6’)内の前記ポリエステル材料が、前記第1冷却温度よりも低い、好ましくは前記ポリエステル材料がその後前記中間保管容器(10)に送られる場合には前記ポリエステル材料の変色が起こる温度よりも低い、第2冷却温度まで冷却されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却容器(6,6’)内の前記ポリエステル材料が真空下で冷却されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却容器(6,6’)内の前記ポリエステル材料が、乾燥した空気または不活性ガスなどの熱媒体(N)を用いて冷却されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却容器(6,6’)は、ポリエステル材料入り口およびポリエステル材料出口に真空密遮断装置(3,3’、15,15’)を備える排気可能なロック容器として構成されることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却容器(6,6’)内の前記ポリエステル材料の前記冷却が、攪拌下において実現されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステル材料は、前記反応容器(2,2’)に導入される前に熱処理温度に加熱されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエステル材料は、予熱容器(17)内で加熱されて前記予熱容器から前記反応容器(2’)へまとめて送られることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理温度は少なくとも180℃であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記反応容器(2’)は、0.1から10mbarの真空下に維持されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
熱媒体(N)は、好ましくは不活性ガスまたは乾燥した空気であり、前記反応容器(2’)を通過することを特徴とする、前記請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2冷却温度は160℃以下であり、好ましくは140℃以下であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
固相重縮合(SSP)によりポリエステル材料の固有粘度を高める装置であって、少なくとも前記ポリエステル材料(P)の反応温度である所定の熱処理温度で、所定の滞留時間の間、前記ポリエステル材料(P)が所望の固有粘度に達するまで、前記ポリエステル材料(P)を滞留させることのできる加熱可能な反応容器(2,2’)と、前記反応容器の下流に配され前記反応容器から排出された前記ポリエステル材料を前記反応温度よりも低い第1冷却温度に冷却するよう構成された冷却容器(6,6’)とを備え、前記冷却容器(6,6’)の下流には前記ポリエステル材料流をポリエステル材料処理装置(8)および/または中間保管容器(10)へ方向を切り替えるよう構成されたポリエステル材料分離装置(7)が配されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記冷却容器(6,6’)の温度は前記ポリエステル材料分離装置(7)の位置に応じて調整可能であり、前記ポリエステル材料が前記中間保管容器(10)に供給されるよう前記ポリエステル材料分離装置(7)が切り替えられるならば、前記冷却容器(6,6’)内の前記ポリエステル材料は前記第1冷却温度よりも低い第2冷却温度に冷却可能であることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記冷却容器(6’)が、好ましくは0.1から10mbarの真空に、排気可能であることを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の装置。
【請求項16】
不活性ガスまたは乾燥した空気などの熱媒体(N)が前記冷却容器(6)を通過可能であることを特徴とする、請求項13から請求項15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記冷却容器(6,6’)は、ポリエステル材料入り口およびポリエステル材料出口に真空密遮断装置(3,3’、15,15’)を備える排気可能なロック容器として構成されることを特徴とする、請求項15または請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記冷却容器(6’)が撹拌器(19)を有することを特徴とする、前記請求項13から請求項17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
予熱容器(17)は、好ましくは加熱可能な撹拌器(18)を備え、前記反応容器(2’)の上流に配され、前記予熱容器(17)は好ましくは予備加熱されたポリエステル材料(P)の前記反応容器(2’)への一括送達用のロック容器として構成されることを特徴とする、前記請求項13から請求項18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記反応容器(2’)が0.1から10mbarの真空に排気可能であることを特徴とする、前記請求項13から請求項19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
熱媒体(N)は、好ましくは不活性ガスまたは乾燥した空気であり、前記反応容器(2)を通過可能であることを特徴とする、前記請求項13から請求項19のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記冷却容器(6,6’)は前記ポリエステル材料分離装置(7)に液密に接続され、前記ポリエステル材料分離装置(7)は前記ポリエステル材料処理装置(8)と前記中間保管器(10)とに液密に接続されることを特徴とする、前記請求項13から請求項21のいずれかに記載の装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−543993(P2008−543993A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516060(P2008−516060)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/AT2006/000237
【国際公開番号】WO2006/133469
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507400941)
【Fターム(参考)】