説明

園芸用薬剤噴霧器

【課題】除草剤、殺虫剤、除菌剤等の植物への薬剤散布に於いては、枯らそうとする雑草、駆除しようとする害虫や病原菌以外への飛散範囲を極限まで小さくし、不必要な部分へ薬剤の飛散付着、地面への滴下を防ぎ、除草対象外の植物を枯死させてしまったりするという問題を防止しなければならない。
【解決手段】薬剤噴出部である噴霧ノズルを覆う開閉可能な飛散防止カバーを有した薬剤噴霧器を使用する。飛散防止カバーは薬剤を散布される対象植物の茎、または枝等を通す少なくとも1つの穴を有する。飛散防止カバーは薬剤噴霧の際には飛散ボウシカバー外部のレバー操作によって閉じられる。また、この動作を可能とする飛散防止カバー開閉レバーを有する。飛散防止カバー内側で噴霧した際、植物に付着し得なかった余分な薬剤を溜めることのできる空間を有し、地面への滴下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業や園芸等の分野で、除草剤、殺虫剤、除菌剤等の薬剤散布の際に生ずる、対象外の植物や樹木の不必要な部位への薬剤付着、また作業者への薬剤付着を最小限に抑えることのできる園芸用薬剤噴霧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、除草剤,殺虫剤,殺菌剤等の薬剤を植物に噴霧した場合、枯らそうとする雑草、駆除しようとする害虫や病原菌だけにとどまらず、対象外の植物や、樹木の対象外の部位への薬剤付着、また作業者への薬剤付着が著しく、環境汚染の原因ともなっている。特に芝生面に生えた雑草に除草剤を噴霧する等の場合、芝生面への影響は非常に大きいものであった。これらの現象を少なくするため、いくつかの予防的装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、除草剤噴霧に於ける飛散防止装置の改良は漏斗を伏せたような形の飛散防止カバーの底部にゴム製の補助カバーを取付けたものがある。
また、特許文献2では、作物を極限まで守る除草剤安定噴霧器具は、噴霧ノズルのまわりに固定式のカバーをつけたものがある。
【0004】
【特許文献1】 特開2003−235432号公報
【特許文献2】 特開2005−95843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では飛散範囲を狭くするだけで、不必要な部分へ薬剤が飛散付着したり、カバー内側に付着した薬剤が地面に滴下し、除草対象外の植物を枯死させてしまったりするという問題があった。例えば特許文献1の除草剤噴霧に於ける飛散防止装置の改良は、伏せた漏斗形の飛散防止カバーの底部にゴムまたは類似の板状部品を2枚取りつけ、飛散を防止しようとしたものであるが、その構造上板状部品2枚の隙間から薬剤が噴出、または滴下するという問題を有する。また特許文献2の作物を極限まで守る除草剤安定噴霧器具は噴霧ノズルのまわりに固定式のカバーを取り付けた構造であるが、これもカバーの開口部全体から薬剤が噴出するため、飛散防止効果は限られている。本発明はこれらの問題点を解決するために発明されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための本発明は、薬剤を噴霧する領域を限定する園芸用薬剤噴霧器であって、開口部を有する容器状の第一のカバー片と、開口部を有する容器状の第二のカバー片と、を備え、前記第二のカバー片は前記第一のカバー片に対して回動自在であるように前記第一のカバー片に取り付けられており、前記第二のカバー片は、前記第一のカバー片に対して回動することにより、二つの前記開口部が整合して前記第一のカバー片と前記第二のカバー片とで閉空間を形成する閉位置と、二つの前記開口部が相互に離れて前記閉空間が外部と連通する開位置と、を取ることができ、前記第一のカバー片及び前記第二のカバー片には、前記園芸用薬剤噴霧器の使用時に最下方に位置する縁部から上方に延びる隔壁がそれぞれ形成されており、前記第二のカバー片が前記閉位置にあるときに、前記第一のカバー片の隔壁と前記第二のカバー片の隔壁は協働して前記閉空間と外部の空間とを連通する連通路を形成するとともに、前記第一のカバー片及び前記第二のカバー片の底面と前記隔壁の頂点との間に余剰薬剤の貯留領域を形成する園芸用薬剤噴霧器を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの構造の本発明によると、農業用及び園芸用薬剤を噴霧する際、最小限の他の植物への薬剤付着、また最小限の人体への付着、環境への影響を考えた方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
【0009】
図1,図2は本発明である園芸用薬剤噴霧器の飛散防止カバー1a,1bの開状態を示す。飛散防止カバー1a,1bは一定の硬さを持った透明の樹脂または類似の素材で出来ており、閉じた状態であってもその内部が観察できるものとする。飛散防止カバー1a,1bの形状は閉じた状態で円柱形、球形、角柱形等を成し、その内部に一定の大きさの空間を形成できるものとする。飛散防止カバー1a,1bは蝶番4によって結合されており、それらは飛散防止カバー開閉レバー7と連結しており、該レバー7を押し上げることによって完全閉の状態から一定の角度まで開くことができる。図1,図2では飛散防止カバー開閉レバー7は開の状態である。飛散防止カバー開閉レバー7はバネ機構を有しており、開閉それぞれの位置でその該バネ機構の働きにより開,完全閉それぞれの位置で自立固定可能である。飛散防止カバー1a,1bの外部に薬剤タンク5及び取っ手6,薬剤噴霧レバー8を有する。薬剤タンク5の上部に薬剤噴霧レバー8と連動するポンプ機構を有しており、薬剤タンク5に噴霧する薬剤をいれた状態で取っ手6と薬剤噴霧レバー8を同時に握ることによってポンプ機構により吸い上げられた薬剤が薬剤噴霧ノズル3から霧状となって噴出される。
【0010】
図3,図4は本発明である園芸用薬剤噴霧器の飛散防止カバー1a,1bの閉状態を示す。飛散防止カバー開閉レバー7は閉の状態である。この状態では薬剤噴霧ノズル3は飛散防止カバー1a,1bに覆われた状態となる。この時、飛散防止カバー1a,1bは飛散防止カバー開閉レバー7が有するバネ機構の働きにより一定の強さを持って密着し、内部に噴出された霧状の薬剤は外部には漏れ出ないようになる。飛散防止カバー1a,1bの開口部の任意の一辺の略中央に設けられた半月凹状の切り欠き部によって、一対のカバー体が閉状態で貫通しているカバー底部穴1cが構成される。また、同じく飛散防止カバー1a,1bの開口部の反対側の一辺の略中央に設けられた半月凹状の切り欠き部によって、一対のカバー体が閉状態で貫通したカバー上部穴1dを構成している。カバー上部穴1dは、着脱式のカバー上部穴キャップ2a,2bにより閉じることができる構造である。
図5は図4のI−I断面を示す。この状態では飛散防止カバー1a,1bは完全閉であるが、カバー底部穴1cは開いたままの状態である。
【0011】
図6は図4のII−II断面を示す。飛散防止カバー1a,1bはその内部に、噴霧後の余剰な薬剤を貯めておく薬剤受け部1eを有する。カバー底部穴1cは飛散防止カバー1a,1bの接合面にある一定の高さを持ったカバー底接合面隔壁1fにより形成されており、飛散防止カバー1a,1bは園芸用薬剤噴霧器の使用時に最下方に位置する縁部から上方に延びる隔壁をそれぞれ形成しており、飛散防止カバー1a,1bが完全閉であるときに、飛散防止カバー1aの隔壁と飛散防止カバー1bの隔壁は協働して飛散防止カバー1a,1bが形成する閉空間と外部の空間とを連通する連通路を形成するとともに、飛散防止カバー1a及び飛散防止カバー1bの底面と前記隔壁の頂点との間に余剰薬剤の貯留領域を形成するものである。そのカバー底接合面隔壁1fは、図5で示すとおり飛散防止カバー1a,1bの底部接合面全体に設けられている。つまり飛散防止カバー1a,1bの内側底部のカバー底接合面隔壁1fの高さまでが剰余分薬剤受け部1eとなる。
【0012】
図7は本発明の一実施形態であり、芝面に生えた雑草に除草剤を噴霧した状態を表している。この状態ではまず飛散防止カバー開閉レバー7を開の状態、つまり飛散防止カバー1a,1bも同様に開の状態で取っ手6を保持しつつ、カバー底部穴1c がスギナ等の雑草Cの茎に合う位置まで持ってき、その位置で飛散防止カバー開閉レバー7を閉の状態、つまり飛散防止カバー1a,1bも同様に閉の状態にし、そのまま取っ手6と薬剤噴霧レバー8を同時に握りノズル3から除草剤を噴出させ、スギナ等の雑草Cに散布する。散布した際、スギナ等の雑草Cに付着しえなかった薬剤は、飛散防止カバー1a,1bの内側に付着するが、外部には漏れ出ない。飛散防止カバー1a,1bの内側に付着した余剰の薬剤量が一定以上になると、カバー内側を水滴となって滴り落ちるが、それらは受け部1eに溜まることになる。噴霧が終了したら飛散防止カバー開閉レバー7を開の位置に戻し、飛散防止カバー1a,1bをある程度水平に維持した状態で移動し、次の除草対象に同様の作業を繰り返す。この作業ではカバー底部穴1c の径の大きさは、スギナ等の雑草Cの茎の太さに合わせる。またこの作業ではスギナ等の雑草Cの高さが低い場合、カバー上部穴1dは開状態にする必要はなく、カバー上部穴キャップ2a,2b を装着して使用する。またこの作業ではスギナ等の雑草Cの高さに応じて、必要ならばカバー上部穴キャップ2a,2b を外し、カバー上部穴1dは開状態し使用する。
【0013】
図8は本発明の1実施形態であり、樹木等への殺虫剤、除菌剤等の散布の状態を表している。この状態ではまず飛散防止カバー開閉レバー7を開の状態、つまり飛散防止カバー1a,1bも同様に開の状態で取っ手6を保持しつつ、カバー底部穴1c が樹木Dの枝等に合う位置まで持ってき、その位置で飛散防止カバー開閉レバー7を閉の状態、つまり飛散防止カバー1a,1bも同様に閉の状態にし、そのまま取っ手6と薬剤噴霧レバー8を同時に握りノズル3から殺虫剤、除菌剤等を噴出させ、樹木Dの枝等に散布する。散布した際樹木Dの枝等に付着しえなかった薬剤は飛散防止カバー1a,1bの内側に付着するが、外部には漏れ出ない。飛散防止カバー1a,1bの内側に付着した余剰の薬剤量が一定以上になると、カバー内側を水滴となって滴り落ちるが、それらは受け部1eに溜まることになる。噴霧が終了したら飛散防止カバー開閉レバー7を開の位置に戻し、飛散防止カバー1a,1bをある程度水平に維持した状態で移動し、次の殺虫、除菌対象に同様の作業を繰り返す。この作業ではカバー底部穴1c の径の大きさは、樹木Dの枝等の太さに合わせる。またこの作業では、必要に応じてカバー上部穴キャップ2a,2bを外し、カバー上部穴1dは開状態し使用する。
【0014】
カバー上部穴キャップ2a,2b は、必要に応じて開口部の大きさ、形状等を加工できるものである。
【0015】
飛散防止カバー開閉レバー7と薬剤噴霧レバー8は、別々の位置に設ける必要はなく、取っ手6を保持しつつ、両方のレバーを同時に操作できる位置にあっても構わない。
【0016】
本発明は、以上のように述べた実施例に限定されるものではなく、例えば「上側」と記されたものは「下側」も含まれるものであり、「右側」と記されたものは「左側」も含まれるものであり、「外側」と記されたものは「内側」も含まれるものであり、「縦方向」と記されたものは「横方向」も含まれるものであり、正逆、大小、それぞれ類推できる範囲を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である飛散防止カバーの開状態を示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】同実施形態の飛散防止カバーの閉状態を示す平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図4のI−I線断面図である。
【図6】図4のII−II線断面図である。
【図7】同実施形態の雑草類への薬剤噴霧の状態をしめす側面図である。
【図8】同実施形態の樹木への薬剤噴霧の状態をしめす側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1a,1b カバー片
1c,1d 切り欠き部
1e 受け部
1f 隔壁
2a,2b キャップ
3 ノズル
4 蝶番
5 タンク
6 取っ手
7 開閉レバー
8 噴霧レバー
A 地面
B 芝
C スギナ等の雑草
D 樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を噴霧する領域を限定する園芸用薬剤噴霧器であって、
開口部を有する容器状の第一のカバー片と、
開口部を有する容器状の第二のカバー片と、を備え、
前記第二のカバー片は前記第一のカバー片に対して回動自在であるように前記第一のカバー片に取り付けられており、
前記第二のカバー片は、前記第一のカバー片に対して回動することにより、二つの前記開口部が整合して前記第一のカバー片と前記第二のカバー片とで閉空間を形成する閉位置と、二つの前記開口部が相互に離れて前記閉空間が外部と連通する開位置と、を取ることができ、
前記第一のカバー片及び前記第二のカバー片には、前記園芸用薬剤噴霧器の使用時に最下方に位置する縁部から上方に延びる隔壁がそれぞれ形成されており、
前記第二のカバー片が前記閉位置にあるときに、前記第一のカバー片の隔壁と前記第二のカバー片の隔壁は協働して前記閉空間と外部の空間とを連通する連通路を形成するとともに、前記第一のカバー片及び前記第二のカバー片の底面と前記隔壁の頂点との間に余剰薬剤の貯留領域を形成するものである園芸用薬剤噴霧器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−307040(P2008−307040A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183713(P2007−183713)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507237473)有限会社高野熔接工業所 (1)
【Fターム(参考)】