説明

土壌からの亜酸化窒素放出の低減方法

本発明は、少なくとも1種の殺菌剤(化合物A)と少なくとも1種アンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)とを用いて、それぞれの土壌で生育している植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子を処理することを含む、土壌からの亜酸化窒素放出の低減方法に関する。ただし、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A1) 複合体IIIのQ0部位の阻害剤(呼吸阻害剤、たとえば、ストロビルリン類):アゾキシストロビン、クメトキシストロビン(coumethoxystrobin)、クモキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フェナミンストロビン(fenaminstrobin)、フェノキシストロビン(fenoxystrobin)(フルフェノキシストロビン(flufenoxystrobin))、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピラメトストロビン、ピラオキシストロビン、ピリベンカルブ、トリクロピリカルブ(triclopyricarb)(クロロジンカルブ(chlorodincarb))、トリフロキシストロビン、2-[2-(2,5-ジメチル-フェノキシメチル)-フェニル]-3-メトキシ-アクリル酸メチルエステル、および2-(2-(3-(2,6-ジ-クロロフェニル)-1-メチル-アリリデン-アミノオキシ-メチル)-フェニル-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミド;
(A2) 複合体IIIのQi部位の阻害剤(呼吸阻害剤):シアゾファミド、アミスルブロム;
(A3) 複合体IIの阻害剤(呼吸阻害剤、たとえば、カルボキサニリド類):ベノダニル、ビキサフェン、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フルキサピロキサド、フラメトピル、イソピラザム、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンフルフェン、ペンチオピラド、セダキサン、テクロフタラム、チフルザミド、N-(4'-トリフルオロメチルチオビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、およびN-(2-(1,3,3-トリメチル-ブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、
(A4) 他の呼吸阻害剤(たとえば、複合体I阻害剤、脱共役剤):ジフルメトリム;ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル、ジノブトン、ジノカップ、フルアジナム、ニトルタール-イソプロピル(nitrthal-isopropyl)、テクナゼン、フェリムゾン;有機金属化合物:フェンチン塩:フェンチンアセテート、フェンチンクロリド、フェンチンヒドロキシド;アメトクトラジン、シルチオファム;
(A5) ステロール生合成阻害剤(SBI殺菌剤):
・ C14デメチラーゼ阻害剤(DMI殺菌剤):トリアゾール類:アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール-M、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルオピラム、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール;イミダゾール類:シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール;ピリミジン類、ピリジン類、およびピペラジン類:フェナリモール、ヌアリモール、ピリフェノックス、およびトリホリン;
・ Δ14-レダクターゼ阻害剤:アルジモルフ、ドデモルフ、ドデモルフ-アセテート、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、ピペラリン、およびスピロキサミン;
・ 3-ケトレダクターゼの阻害剤:フェンヘキサミド;
(A6) 核酸合成阻害剤:
・ フェニルアミド系またはアシルアミノ酸系の殺菌剤:ベナラキシル、ベナラキシル-M、キララキシル、メタラキシル、メタラキシル-M(メフェノキサム)、オフレース、オキサジキシル;
・ その他:ヒメキサゾール、オクチリノン、オキソリニック酸、ブピリメート;
(A7) 細胞分裂および細胞骨格の阻害剤:
・ チューブリン阻害剤:ベンゾイミダゾール類、チオファネート類:カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール、チオファネート-メチル;トリアゾロピリミジン類:5-クロロ-7-(4-メチル-ピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン
・ 他の細胞分裂阻害剤:ジエトフェンカルブ、エタボキサム、ペンシクロン、フルオピコリド、ゾキサミド、メトラフェノン、ピリオフェノン;
(A8) アミノ酸合成およびタンパク質合成の阻害剤:
・ メチオニン合成阻害剤(アニリノ-ピリミジン類):シプロジニル、メパニピリム、ニトラピリン、ピリメタニル;
・ タンパク質合成阻害剤:ブラスチシジン-S、カスガマイシン、カスガマイシンヒドロクロリドヒドレート、ミルジオマイシン、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン、ポリオキシン、バリダマイシンA;
(A9) シグナル伝達阻害剤:
・ MAP/ヒスチジンキナーゼ阻害剤:フルオロイミド、プロシミドン、ビンクロゾリン、フェンピクロニル、フルジオキソニル;
・ Gタンパク質阻害剤:キノキシフェン;
(A10) 脂質合成および膜合成の阻害剤:
・ リン脂質生合成阻害剤:エジフェンホス、イプロベンホス、ピラゾホス、イソプロチオラン;ケイ皮酸アミド類またはマンデル酸アミド類;
・ 脂質過酸化:ジクロラン、キントゼン、テクナゼン、トルクロホス-メチル、ビフェニル、クロロネブ、エトリジアゾール;
・ リン脂質生合成および細胞壁堆積:ジメトモルフ、フルモルフ、マンジプロアミド(mandiproamid)、ピリモルフ、ベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、ピリベンカルブ、バリフェナレート、N-(1-(1-(4-シアノフェニル)-エタンスルホニル)-ブト-2-イル)カルバミン酸-(4-フルオロフェニル)エステル;
・ 細胞膜透過性および脂肪酸に影響を及ぼす化合物:プロパモカルブ、プロパモ-カルブ-ヒドロクロリド;
(A11) 多部位作用を有する阻害剤:
・ 無機活性物質:ボルドー液、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄;
・ チオカルバメート類およびジチオカルバメート類:フェルバム、メタム、メタスルホカルブ、メチラム、プロピネブ、チラム、ジネブ、ジラム;
・ 有機塩素化合物(たとえば、フタルイミド類、スルファミド類、クロロニトリル類):アニラジン、カプタホール、ホルペット、ジクロフルアニド、ジクロロフェン、フルスルファミド、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロルフェノールおよびその塩、フサライド、トリルフルアニド、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド;
・ グアニジン類およびその他:グアニジン、ドジン、ドジン遊離塩基、グアザチン、グアザチン-アセテート、イミノクタジン、イミノクタジン-トリアセテート、イミノクタジン-トリス(アルベシレート)、ジチアノン;
(A12) 細胞壁合成阻害剤:
・ グルカン合成阻害剤:バリダマイシン、ポリオキシンB;メラニン合成阻害剤:ピロキロン、トリシクラゾール、カルプロパミド、ジシクロメット(dicyclomet)、フェノキサニル;
(A13) 植物防御誘導剤:
・ アシベンゾラール-S-メチル、プロベナゾール、イソチアニル、チアジニル、ホスホネート類:ホセチル、ホセチル-アルミニウム、亜リン酸およびその塩;
(A14) 未知の作用機序:
・ ブロノポール、キノメチオネート、シフルフェナミド、シモキサニル、ダゾメット、デバカルブ、ジクロメジン、ジフェンゾコート、ジフェンゾコート-メチルスルフェート、ジフェニルアミン、フェンピラザミン、フルメトベル、フルスルファミド、フルチアニル、メタスルホカルブ、オキシン-銅、プロキナジド、テブフロキン、テクロフタラム、トリアゾキシド、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、N-(シクロ-プロピルメトキシイミノ-(6-ジフルオロ-メトキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N'-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリ-メチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル)-アミド、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル-アミド、メトキシ-酢酸6-tert-ブチル-8-フルオロ-2,3-ジメチル-キノリン-4-イルエステルおよびN-メチル-2-{1-[(5-メチル-3-トリフルオロ-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-N-[(1R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル]-4-チアゾールカルボキサミド、3-[5-(4-クロロ-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン、3-[5-(4-メチル-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン(ピリソキサゾール(pyrisoxazole))、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、5-クロロ-1-(4,6-ジメトキシ-ピリミジン-2-イル)-2-メチル-1H-ベンゾイミダゾール、2-(4-クロロ-フェニル)-N-[4-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-イソオキサゾール-5-イル]-2-プロプ-2-イニルオキシアセトアミド;
よりなる群から選択される少なくとも1種の殺菌剤(化合物A)と、
(B1) 無機肥料:
NPK肥料、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウムアンモニウム、硫酸硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウム;
(B2) 有機肥料:
液肥、半液肥、廐肥および藁堆肥、虫糞、コンポスト、海藻、ならびにグアノ;
よりなる群から選択される少なくとも1種のアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)と、
を用いて、それぞれの土壌で生育している植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子を処理することを含み、
少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用が、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる、
土壌からの亜酸化窒素放出の低減方法に関する。
【0002】
そのほかに、本発明は、アンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)が、2-(3,4-ジメチル-ピラゾール-1-イル)-コハク酸、3,4-ジメチルピラゾールホスフェート(DMPP)、ジシアンジアミド(DCD)、1H-1,2,4-トリアゾール、3-メチルピラゾール(3-MP)、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)-ピリジン、5-エトキシ-3-トリクロロメチル-1,2,4-チアジアゾール、2-アミノ-4-クロロ-6-メチル-ピリミジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、2-スルファニルアミドチアゾール、チオウレア、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、1-ヒドロキシピラゾール、2-メチルピラゾール-1-カルボキサミド、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジアミノ-6-トリクロロメチル-5-トリアジン、二硫化炭素、チオ硫酸アンモニウム、トリチオ炭酸ナトリウム、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラノールメチルカルバメート、およびN-(2,6-ジメチルフェニル)-N-(メトキシアセチル)-アラニンメチルエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)と一緒に施用される、以上に記載される土壌からの亜酸化窒素放出の低減方法に関する。
【背景技術】
【0003】
窒素は、植物の生育および繁殖に必須の元素である。土壌中の植物可給性窒素(アンモニウムおよび硝酸イオン)の約25%は、腐植、植物および動物の残渣、ならびに有機肥料などの有機窒素化合物の分解過程(無機化)に由来する。約5%は、降雨に由来する。しかしながら、地球規模でみると、最大部分(70%)は、無機窒素肥料により植物に供給される。窒素肥料を用いなければ、地球は、現在の人口を維持することができないであろう。
【0004】
土壌微生物は、有機窒素をアンモニウム(NH4+)に変換し、これは、続いて、硝化として知られる過程で硝酸イオン(NO3-)に酸化される。硝酸イオンは、その高い植物可給性に基づいて植物が好適に取り込む窒素の一形態であるので、農業に非常に重要である。しかしながら、硝酸イオンはまた、土壌中で高移動性である。結果として、それは、土壌から容易に失われて地下水に浸出する可能性がある。それに加えて、窒素は、硝酸イオンや亜硝酸イオン(NO2-)から亜酸化窒素(N2O)や分子状窒素(N2)などのガス状窒素への微生物学的変換である脱窒により失われる。種々の損失の結果として、施用された窒素の約50%は、施肥の翌年中に失われる(Nelson and Huber; Nitrification inhibitors for corn production (2001). National Corn Handbook, Iowa State Universityを参照されたい)。
【0005】
したがって、肥料の大量使用および畜産廃棄物の施用は、地下水や地表水中の窒素レベルの増大をもたらすおそれがあり、結果的に湖沼や河川の富栄養化の増大をもたらす可能性があることが大いに懸念される。
【0006】
それに加えて、窒素施肥および畜産廃棄物は、亜酸化窒素の生成を増大させて、成層圏オゾン破壊および地球温暖化に著しく寄与するおそれがある。亜酸化窒素のほかに、二酸化炭素(CO2)およびメタン(CH4)は、天然土壌および農業土壌により生成される重要なガスである。天候や土壌タイプなどの種々のパラメーターに依存して、施肥および耕耘の増大は、亜酸化窒素放出をさらに増大させる可能性がある。
【0007】
したがって、今後何年間かの国際社会の最大の課題の1つは、大気中の温室効果の原因となるガスを削減することまたは大気中の温室効果ガス濃度を気候系への危険な人為的干渉が防止されるレベルに少なくとも安定化させることである。この懸念は、京都議定書で表明されており、その中で、批准国は、温室効果ガスの自国内排出を削減するか、またはこれらのガスの排出を維持もしくは増大する場合には排出権取引きを行うことを確約している。
【0008】
最もよく知られている温室効果ガスの1つは、二酸化炭素である。しかしながら、亜酸化窒素は、大いに懸念される他の原因である。20世紀全体を通じてかつ引き続き21世紀に入って、亜酸化窒素は、大気中で十億分率で50(ppb)増大し、毎年0.25%さらに増大し続けている。亜酸化窒素は、全温室効果ガス排出の約9%を占めるにすぎないが、今後100年間にわたる二酸化炭素の300倍の地球温暖化係数および約150年間の大気中寿命を有することに留意しなければならない。
【0009】
以上に列挙した傾向は、天然水、作物残渣、ならびに都市および農業の廃棄物中の窒素レベルの増大をもたらし、環境および公衆衛生に関する国家的および国際的な懸念を引き起こすおそれがある。
【0010】
Dharnaraj P.S.は、Lal and Lal (Editors) (Effects of pesticides on nitrification and denitrification (1988). Pesticides and Nitrogen Cycle)中に硝化および脱窒に及ぼす種々の殺有害生物剤の効果を記載している。そこに記載された試験から、ほとんどの殺菌剤は、硝化および脱窒に及ぼす効果をなんら有していないことが示される。それに加えて、本発明に係る方法工程さらには驚くべきその効果は、開示されていない。
【0011】
Mosierら(Nitrous oxide emission from agricultural fields; Assessment, measurement and mitigation (1996). Plant and Soil 131: 95.108)は、施肥土壌からのN2O放出に及ぼす硝化阻害剤の効果をまとめた。いくつかの試験から、硝化阻害剤は、アンモニウム系肥料が施肥された土壌からのN2O放出を制限したことが示唆された。
【0012】
さらに、Kinneyら(Effects of fungicides on trace gas fluxes (2004). Journal of Geophysical Research 109: 1-15)は、農業土壌からのガス流出の変化が使用される農業化学物質(殺有害生物剤)の量およびタイプにより影響を受ける可能性があると仮定した。彼らは、圃場実験を行って、微量ガス交換に及ぼす2種の汎用的多部位殺菌剤すなわちマンコゼブおよびクロロタロニルの効果を調べた。
【0013】
Kinneyら(Laboratory investigations into the effects of the pesticides mancozeb, chlorothalonil , and prosulfuron on nitrous oxide and nitric oxide production in fertilized soil (2005). Soil Biology & Biochemistry 37: 837-850)はさらに、施肥土壌中の硝化細菌および脱窒細菌によるN2O生成に及ぼすマンコゼブ、クロルタロニル、および除草剤プロスルフロンの効果を調べた。
【0014】
Somdaら(1991). Influence of biocides on tomato nitrogen uptake and soil nitrification and denitirification. Journal of Plant Nutrition 14 (11): 1187-99)は、硝化阻害剤と比較して硝化に及ぼす殺菌剤のベンレート、カプタン、および石灰硫黄合剤の影響を調べた。
【0015】
国際公開第98/05607号パンフレットは、無機肥料の処理のための無機もしくは有機のポリ酸の使用、特定的には、無機肥料の処理のための少なくとも1種の硝化阻害剤との混合物としてのポリ酸の使用に関する。
【0016】
国際公開第07/0174163号パンフレットには、N-(3',4',5'-トリフルオロビフェニル-2-イル)- 3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドが開示されている。国際公開第03/009687号パンフレットには、5-エチル-6-オクチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-イルアミン)が開示されている。N'-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンおよびN'-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチルフェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンは、国際公開第00/46184号パンフレットから公知であり、一方、N'-(2-メチル-5-トリフルオルメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンおよびN'-(5-ジフルオルメチル-2-メチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジンは、国際公開第03/93224号パンフレットに記載されている。それらは、そこに記載された方法により調製可能である。
【0017】
国際公開第08/059053号パンフレットは、植物、植物の一部分、植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所、および/または植物繁殖体を特定の活性成分で処理することにより大気からの二酸化炭素隔離を増大させる方法に関する。この発明はまた、植物の乾燥バイオマスを増大させるための化合物の使用に関する。
【0018】
さらなる活性成分ならびにその殺有害生物作用およびその製造方法は、一般に知られている。たとえば、市販の化合物は、いくつかある出版物の中でもとくにThe Pesticide Manual, 14th Edition, British Crop Protection Council (2006)に見いだしうる。
【0019】
硝化および脱窒は、亜酸化窒素が土壌環境中で生成される2つの主要な過程である。窒素肥料および殺有害生物剤の毎年の施用は、今後50年間にわたり2倍超になると予想される。それに加えて、農耕地は、2050年までに5.5×108haヘクタールだけ増大すると予想される(Tilman et al. (2001): Forecasting agriculturally driven global environmental change. Science. Vol. 292: 281-284を参照されたい)。したがって、農業土壌は、おそらく、二酸化炭素、亜酸化窒素、およびメタンの地球大気収支に及ぼす影響を絶えず増大させ続けるであろう。農業生産システムに関して、施肥および耕耘は、土壌からのN2O放出を2倍超に増大させることが示されうる。
【0020】
また、肥料の大量使用および畜産廃棄物の施用は、地下水や地表水中の窒素レベルの増大をもたらす可能性があり、これは、結果的に湖沼や河川の富栄養化の増大をもたらす可能性があることが懸念される。
【0021】
地球温暖化に影響を及ぼす可能性がある以外に、N2Oの生成は、植物が利用可能な窒素の量を低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第98/05607号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/0174163号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/009687号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/46184号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/93224号パンフレット
【特許文献6】国際公開第08/059053号パンフレット
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】NelsonおよびHuber; Nitrification inhibitors for corn production (2001). National Corn Handbook, Iowa State University
【非特許文献2】Dharnaraj P.S., LalおよびLal (編) Effects of pesticides on nitrification and denitrification (1988). Pesticides and Nitrogen Cycle
【非特許文献3】Mosierら, Nitrous oxide emission from agricultural fields; Assessment, measurement and mitigation (1996). Plant and Soil 131: 95.108
【非特許文献4】Kinneyら, Effects of fungicides on trace gas fluxes (2004). Journal of Geophysical Research 109: 1-15
【非特許文献5】Kinneyら, Laboratory investigations into the effects of the pesticides mancozeb, chlorothalonil , and prosulfuron on nitrous oxide and nitric oxide production in fertilized soil (2005). Soil Biology & Biochemistry 37: 837-850
【非特許文献6】Somdaら(1991). Influence of biocides on tomato nitrogen uptake and soil nitrification and denitirification. Journal of Plant Nutrition 14 (11): 1187-99
【非特許文献7】The Pesticide Manual, 14th Edition, British Crop Protection Council (2006)
【非特許文献8】Tilmanら. (2001): Forecasting agriculturally driven global environmental change. Science. Vol. 292: 281-284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の目的は、以上に概説した問題を解決し、とくに、土壌から、特定的には、施肥された土壌からの亜酸化窒素放出を低減すべきである信頼性のある方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
驚くべきことに、我々は、少なくとも1種の殺菌剤(化合物A)と少なくとも1種のアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)とを用いて植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする土壌などの場所および/または植物が生育するもとになる種子を処理した場合にこの目的が達成されることを見いだした。ただし、少なくとも1日間の時間差をつけて化合物(A)および化合物(B)の施用を行うことが不可欠である。
【0026】
また、本発明の目的は、少なくとも2種の殺菌剤(化合物A)を含む農業化学混合物と少なくとも1種のアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)とを用いて植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする土壌などの場所および/または植物が生育するもとになる種子を処理した場合に達成可能である。ただし、少なくとも1日間の時間差をつけて少なくとも2種の化合物(A)を含む農業化学混合物および化合物(B)の施用を行わなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
併用施用は、まったく影響を及ぼさないかまたはそれどころかN2O放出の増大を引き起こす可能性があるが、本発明に係る方法に従って殺菌剤および肥料を好適な時間間隔で施用した場合にかぎりN2O放出の大幅な低減が引き起こされることが示されうるので、殺菌剤(または少なくとも2種の殺菌剤を含むそれぞれの混合物)(化合物A)の施用と肥料(化合物B)の施用との間の時間間隔は、決定的な方法工程である。したがって、殺菌剤(化合物A)および肥料(化合物B)の施用間の時間間隔は、驚くべき効果をもたらす特別な技術的特徴であり、いずれの当業者にとっても新しくかつ独創的な技術的教示である。
【0028】
本発明に係る方法に従った活性成分の施用は、有意な生態学的および経済的な利点を提供する。生態学的観点から、N2O放出の削減は、環境およびその大気ならびに地球温暖化に及ぼす現代農業の影響を有意に低減する。それに加えて、地下水への窒素の損失、湖沼や河川の富栄養化の危険性もまた、土壌窒素の最適化使用に基づいて最小限に抑えられる。
【0029】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、アゾキシストロビン、クメトキシストロビン(coumethoxystrobin)、クモキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フェナミンストロビン(fenaminstrobin)、フェノキシストロビン(fenoxystrobin)(フルフェノキシストロビン(flufenoxystrobin))、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピラメトストロビン、ピラオキシストロビン、ピリベンカルブ、トリクロピリカルブ(triclopyricarb)(クロロジンカルブ(chlorodincarb))、トリフロキシストロビン、2-[2-(2,5-ジメチル-フェノキシメチル)-フェニル]-3-メトキシ-アクリル酸メチルエステル、および2-(2-(3-(2,6-ジ-クロロフェニル)-1-メチル-アリリデン-アミノオキシ-メチル)-フェニル-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミドよりなる群(A1)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される、
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、およびトリフロキシストロビンよりなる群から選択されるストロビルリン化合物である。
【0030】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ピラクロストロビン、オリサストロビン、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピリベンカルブ、およびトリフロキシストロビンよりなる群から選択されるストロビルリン化合物である。
【0031】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、およびトリフロキシストロビンよりなる群から選択されるストロビルリン化合物である。
【0032】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、ピラクロストロビンである。
【0033】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、ベノダニル、ビキサフェン、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フルキサピロキサド、フラメトピル、イソピラザム、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンフルフェン、ペンチオピラド、セダキサン、テクロフタラム、チフルザミド、N-(4'-トリフルオロメチルチオビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、およびN-(2-(1,3,3-トリメチル-ブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドよりなる群(A3)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0034】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ビキサフェン、ボスカリド、フルキサピロキサド、フルオピラム、イソピラザム、ペンフルフェン、ペンチオピラド、およびセダキサンよりなる群から選択されるカルボキサニリド化合物である。
【0035】
本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ビキサフェン、ボスカリド、フルキサピロキサド、イソピラザム、ペンフルフェン、ペンチオピラド、およびセダキサンよりなる群から選択されるカルボキサニリド化合物である。
【0036】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、ビキサフェン、ボスカリド、フルキサピロキサド、およびイソピラザムよりなる群から選択されるカルボキサニリド化合物である。
【0037】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、ボスカリドである。
【0038】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、フルキサピロキサドである。
【0039】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール-M、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルオピラム、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール、シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール、フェナリモール、ヌアリモール、ピリフェノックス、トリホリン、アルジモルフ、ドデモルフ、ドデモルフ-アセテート、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、ピペラリン、スピロキサミン、およびフェンヘキサミドよりなる群(A5)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0040】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ジフェノコナゾール、エポキシコナゾール、フルオピラム、フルキンコナゾール、メトコナゾール、プロチオコナゾール、トリチコナゾール、およびプロクロラズよりなる群から選択されるC14デメチラーゼ阻害剤である。
【0041】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、エポキシコナゾールである。
【0042】
本発明に係る方法の他のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、メトコナゾールである。
【0043】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、およびフェンプロピジンよりなる群から選択されるΔ14-レダクターゼ阻害剤である。
【0044】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、フェンプロピモルフである。
【0045】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、ベナラキシル、ベナラキシル-M、キララキシル、メタラキシル、メタラキシル-M(メフェノキサム)、オフレース、オキサジキシル、ヒメキサゾール、オクチリノン、オキソリニック酸、およびブピリメートよりなる群(A6)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0046】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ベナラキシル、ベナラキシル-M、メタラキシル、およびメタラキシル-M(メフェノキサム)よりなる群から選択される核酸合成阻害剤である。
【0047】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、ベンゾイミダゾール類、チオファネート類:カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール、チオファネート-メチル、5-クロロ-7-(4-メチル-ピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、ジエトフェンカルブ、エタボキサム、ペンシクロン、フルオピコリド、ゾキサミド、メトラフェノン、およびピリオフェノンよりなる群(A7)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0048】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、チオファネート-メチルおよびメトラフェノンよりなる群から選択される細胞分裂および細胞骨格の阻害剤である。
【0049】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、ピリメタニルである。
【0050】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、エジフェンホス、イプロベンホス、ピラゾホス、イソプロチオラン、ジクロラン、キントゼン、テクナゼン、トルクロホス-メチル、ビフェニル、クロロネブ、エトリジアゾール、ジメトモルフ、フルモルフ、マンジプロアミド(mandiproamid)、ピリモルフ、ベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、ピリベンカルブ、バリフェナレート、N-(1-(1-(4-シアノ-フェニル)-エタンスルホニル)-ブト-2-イル)カルバミン酸-(4-フルオロフェニル)エステル、プロパモカルブ、およびプロパモカルブ-ヒドロクロリドよりなる群(A10)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0051】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ジメトモルフおよびマンジプロアミド(mandiproamid)よりなる群から選択される脂質合成および膜合成の阻害剤である。
【0052】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、ジメトモルフである。
【0053】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、ボルドー液、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄、フェルバム、メタム、メタスルホカルブ、メチラム、プロピネブ、チラム、ジネブ、ジラム、アニラジン、カプタホール、ホルペット、ジクロフルアニド、ジクロロフェン、フルスルファミド、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロルフェノールおよびその塩、フサライド、トリルフルアニド、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド、グアニジン、ドジン、ドジン遊離塩基、グアザチン、グアザチン-アセテート、イミノクタジン、イミノクタジン-トリアセテート、イミノクタジン-トリス(アルベシレート)、ならびにジチアノンよりなる群(A11)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0054】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(A)は、メチラムである。
【0055】
本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、化合物(A)は、ジチアノンである。
【0056】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、ブロノポール、キノメチオネート、シフルフェナミド、シモキサニル、ダゾメット、デバカルブ、ジクロメジン、ジフェンゾコート、ジフェンゾコート-メチルスルフェート、ジフェニルアミン、フェンピラザミン、フルメトベル、フルスルファミド、フルチアニル、メタスルホカルブ、オキシン-銅、プロキナジド、テブフロキン、テクロフタラム、トリアゾキシド、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、N-(シクロ-プロピル-メトキシ-イミノ-(6-ジフルオロ-メトキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N'-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリ-メチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル)-アミド、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル-アミド、メトキシ-酢酸6-tert-ブチル-8-フルオロ-2,3-ジメチル-キノリン-4-イルエステルおよびN-メチル-2-{1-[(5-メチル-3-トリフルオロ-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-N-[(1R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル]-4-チアゾールカルボキサミド、3-[5-(4-クロロ-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン、3-[5-(4-メチル-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン(ピリソキサゾール(pyrisoxazole))、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、5-クロロ-1-(4,6-ジメトキシ-ピリミジン-2-イル)-2-メチル-1H-ベンゾイミダゾール、および2-(4-クロロ-フェニル)-N-[4-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-イソオキサゾール-5-イル]-2-プロプ-2-イニルオキシアセトアミドよりなる群(A14)から選択される殺菌剤(化合物A)を施用することにより低減される。
【0057】
本発明に係る方法の一実施形態では、化合物(B)は、NPK肥料、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウムアンモニウム、硫酸硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウムよりなる無機肥料(B1)の群から選択されるアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)である。
【0058】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(B)は、硫酸硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムよりなる群から選択される。
【0059】
本発明に係る方法の他の実施形態では、化合物(B)は、液肥、半液肥、廐肥および藁堆肥、虫糞、コンポスト、海藻、ならびにグアノよりなる有機肥料(B2)の群から選択されるアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)である。
【0060】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、化合物(B)は、液肥である。
【0061】
本発明に係る方法の一実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0062】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも4日間の時間差をつけて行われる。
【0063】
本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも8日間の時間差をつけて行われる。
【0064】
本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも10日間の時間差をつけて行われる。
【0065】
本発明に係る方法のさらに他の好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも16日間の時間差をつけて行われる。
【0066】
化合物(A)および(B)ならびに少なくとも2種の化合物(A)を含む混合物ならびに少なくとも1種の化合物(B)と少なくとも1種の化合物(C)とを含む混合物の好ましい実施形態、それらの好ましい使用、ならびにそれらの使用方法に関して述べた事項は、それぞれ単独または好ましくは相互の組合せのいずれかであるとみなされるものとする。
【0067】
本発明に係る方法の一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、2-(3,4-ジメチル-ピラゾール-1-イル)-コハク酸、3,4-ジメチルピラゾールホスフェート(DMPP)、ジシアンジアミド(DCD)、1H-1,2,4-トリアゾール、3-メチルピラゾール(3-MP)、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)-ピリジン、5-エトキシ-3-トリクロロメチル-1,2,4-チアジアゾール、2-アミノ-4-クロロ-6-メチル-ピリミジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、2-スルファニルアミドチアゾール、チオウレア、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、1-ヒドロキシピラゾール、2-メチルピラゾール-1-カルボキサミド、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジアミノ-6-トリクロロメチル-5-トリアジン、二硫化炭素、チオ硫酸アンモニウム、トリチオ炭酸ナトリウム、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラノールメチルカルバメート、およびN-(2,6-ジメチルフェニル)-N-(メトキシアセチル)-アラニンメチルエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)と一緒にアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)を施用することにより低減される。
【0068】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、2-(3,4-ジメチル-ピラゾール-1-イル)-コハク酸、3,4-ジメチルピラゾール-ホスフェート(DMPP)、ジシアンジアミド(DCD)、1H-1,2,4-トリアゾール、3-メチルピラゾール(3-MP)、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)-ピリジン、および5-エトキシ-3-トリクロロメチル-1,2,4-チアジアゾールよりなる群から選択される少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)と一緒にアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)を施用することにより低減される。
【0069】
本発明に係る方法の他の実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、少なくとも1種の化合物(B)と少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)とを含む農業化学混合物を施用することにより低減される。
【0070】
本発明に係る方法の他の実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出は、1種の化合物(B)と1種の硝化阻害剤(化合物C)とを含む農業化学混合物を施用することにより低減される。
【0071】
1種の化合物(B)と1種の化合物(C)とを含む表1に列挙した二次混合物は、本発明に係る方法の好ましい実施形態である。
【表1】

【0072】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、農業化学混合物は、以上に記載のいずれかの実施形態に規定された2種の化合物(A)を含む。
【0073】
本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、農業化学混合物は、以上に記載のいずれかの実施形態に規定された3種の化合物(A)を含む。
【0074】
本発明との関連では、「農業化学混合物」とは、少なくとも2種の化合物を含む物理的混合物に限定されるものではなく、少なくとも1種の化合物と少なくとも1種のさらなる化合物とを含む任意の調製物形態を意味し、その使用は、時間および場所に関連付けられる。
【0075】
本発明の一実施形態では、「農業化学混合物」とは、2種の化合物(A)を含む物理的混合物を意味する。
【0076】
本発明の一実施形態では、「農業化学混合物」とは、少なくとも1種の化合物(B)と少なくとも1種の化合物(C)との物理的混合物を意味する。
【0077】
農業化学混合物は、個別に製剤化可能であるが、時間的関連をもたせて、すなわち、同時にまたは逐次的に施用可能であり、逐次的施用は、化合物の複合作用を可能にする時間間隔を有する。
【0078】
さらに、キットの一部または二成分混合物の一部などの本発明に係る農業化学混合物の個々の化合物は、スプレータンク中で使用者自身により混合可能であり、適切であれば、さらなる助剤を添加可能である(タンク混合)。このことはまた、三成分混合物を本発明に従って使用する場合にもあてはまる。
【0079】
好ましい実施形態では、ピラクロストロビン、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、エポキシコナゾール、メトコナゾール、メトラフェノン、フルキサピロキサド、ボスカリド、ビキサフェン、イソピラザム、ペンチオピラド、フルオピラム、およびフェンプロピモルフよりなる群から選択される2種の化合物(A)が、本発明に係る方法の範囲内で施用される。
【0080】
本発明に係る方法でのそれらの意図された使用に関して、2種の化合物(A)を含む表2に列挙した以下の二次混合物は、本発明のとくに好ましい実施形態である。
【表2】

【0081】
表2の混合物の範囲内では、次の混合物がとくに好ましい:M-1、M-2、M-3、M-6、M-7、M-9、M-17、M-20、M-23、M-25、M-24、およびM-26。この部分群の範囲内では、次の混合物が好ましい:M-1、M-2、M-3、M-6、M-7、M-9、M-23、M-25、およびM-26。次の混合物がより好ましい:M-1、M-2、M-3、M-6、M-7、M-9、およびM-26。次の混合物が最も好ましい:M-1、M-2、M-6、M-9、およびM-26。究極の好ましい選択肢としては、混合物M1が挙げられる。
【0082】
したがって、究極の好ましい選択肢としては、化合物(A)としてピラクロストロビンおよびボスカリドを含む農業化学混合物が挙げられる。
【0083】
また、以上に示される混合物はすべて、本発明の一実施形態である。
【0084】
本発明に係る方法の一実施形態では、3種の化合物(A)を含む三成分混合物を施用することが可能である。
【0085】
本発明に係る方法の一実施形態では、1種の化合物(B)と2種の化合物(C)とを含む三成分混合物を施用することが可能である。
【0086】
本発明に係る方法の他の実施形態では、2種の化合物(B)と1種の化合物(C)とを含む三成分混合物を施用することが可能である。
【0087】
本発明の一実施形態では、本発明に係る方法は、植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子に、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(A)を施用する工程a)と、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(B)を施用する工程b)と、を含む。ただし、工程a)での少なくとも1種の化合物(A)の施用および工程b)での少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0088】
本発明の他の実施形態では、本発明に係る方法は、植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子に、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(A)を施用する工程a)と、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(C)と一緒に以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(B)を施用する工程b)と、を含む。ただし、工程a)での少なくとも1種の化合物(A)の施用および工程b)での少なくとも1種の化合物(C)と一緒の少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0089】
本発明のさらに他の実施形態では、本発明に係る方法は、植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子に、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(B)を施用する工程a)と、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(A)を施用する工程b)と、を含む。ただし、工程a)での少なくとも1種の化合物(B)の施用および工程b)での少なくとも1種の化合物(a)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態では、本発明に係る方法は、植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子に、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(C)と一緒に以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(B)を施用する工程a)と、以上の実施形態のいずれかに規定された少なくとも1種の化合物(A)を施用する工程b)と、を含む。ただし、工程a)での少なくとも1種の化合物(C)と一緒の少なくとも1種の化合物(B)の施用および工程b)での少なくとも1種の化合物(A)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0091】
本発明に従って処理される植物は、農業植物、造林植物、観賞植物、および園芸植物(それぞれその天然形または遺伝子改変形)よりなる群から、より好ましくは農業植物から選択される。
【0092】
より好ましい農業植物は、ジャガイモ、サトウダイコン、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、ソルガム、イネ、トウモロコシ、ワタ、アブラナ、セイヨウアブラナ、カノーラ、ダイズ、エンドウ、ソラマメ、ヒマワリ、サトウキビ、キュウリ、トマト、タマネギ、リーキ、レタス、カボチャなどの畑作物であり、さらにより好ましくは、植物は、コムギ、オオムギ、オートムギ、ライムギ、ダイズ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、ワタ、サトウキビ、イネ、およびソルガムよりなる群から選択される。
【0093】
本発明のとくに好ましい実施形態では、処理される植物は、コムギ、オオムギ、オートムギ、ライムギ、ダイズ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、カノーラ、ヒマワリ、ワタ、サトウキビ、サトウダイコン、イネ、およびソルガムよりなる群から選択される。
【0094】
一実施形態では、土壌からの亜酸化窒素放出を低減するための以上に挙げた方法は、植物繁殖体、好ましくは、トランスジェニック植物または非トランスジェニック植物よりなる群から選択される農業植物、園芸植物、観賞植物、または造林植物の種子を処理することを含む。
【0095】
「植物」という用語は、経済的に重要な植物および/または人間が栽培する植物とみなされるものとする。それらは、好ましくは、農業植物、造林植物、および園芸植物(観賞植物を包含する)から選択される。本明細書中で用いられる「植物」という用語は、地下部分(根など)および地上部分をすべて含めて、発芽種子、出芽苗、草本植生、さらには定着木本植物などの植物のすべての部分を包含する。
【0096】
「硝化阻害剤」という用語は、硝化過程を遅延または停止する任意の化学物質とみなされるものとする。硝化阻害剤は、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)の種などの細菌の活性を阻害することによりアンモニウムから硝酸イオンへの自然変換を遅延する。
【0097】
「硝化」という用語は、アンモニア(NH3)またはアンモニウム(NH4+)と酸素から亜硝酸イオン(NO2-)への生物学的酸化およびそれに続く微生物によるこの亜硝酸イオンから硝酸イオン(NO3-)への酸化とみなされるものとする。硝酸イオン(NO3-)以外に、亜酸化窒素もまた硝化により生成される。硝化は、土壌中の窒素循環に重要な工程である。
【0098】
「脱窒」という用語は、硝酸イオン(NO3-)および亜硝酸イオン(NO2-)からガス状窒素(一般的にはN2またはN2O)への微生物学的変換とみなされるものとする。この呼吸過程は、有機物などの電子供与体の酸化に応じて酸化型窒素を低減する。好ましい窒素電子受容体としては、熱力学的に最も有利なものから最も有利でないものの順に、硝酸イオン(NO3-)、亜硝酸イオン(NO2-)、酸化窒素(NO)、および亜酸化窒素(N2O)が挙げられる。一般的な窒素循環の範囲内では、脱窒は、N2を大気に戻すことにより循環を終了する。この過程は、主に、従属栄養細菌(たとえば、脱窒細菌(Paracoccus denitrificans)および種々のシュードモナス菌など)により行われるが、独立栄養脱窒細菌(たとえば、硫黄脱窒細菌(Thiobacillus denitrificans)など)もまた確認されている。脱窒細菌は、すべての主要な系統群に存在する。酸素の欠乏に直面した場合、多くの細菌種は、酸素の使用から硝酸イオンの使用に切り換えて脱窒として知られる過程で呼吸を維持することが可能である。この際、水溶性硝酸イオンは、亜酸化窒素をはじめとするガス状生成物に変換されて大気中に放出される。
【0099】
ハッピーガスまたは笑気として一般に知られる「亜酸化窒素」は、化学式N2Oを有する化学化合物である。室温では、無色の非引火性ガスである。亜酸化窒素は、硝化および脱窒の微生物過程を介して土壌中で自然に生成される。亜酸化窒素のこうした自然放出は、たとえばa)無機肥料および有機肥料を用いた土壌への窒素の直接施用、b)窒素固定作物の栽培、c)高有機含有率土壌の耕耘、d)耕作地や牧草地への家畜糞尿の施用をはじめとするさまざまな農業規範および農業活動により増大される可能性がある。
【0100】
「肥料」という用語は、植物や果実の生育を促進するために施用される化学化合物とみなされるものとする。肥料は、典型的には、土壌を介するか(植物の根による取込みのため)または葉面供給によるか(葉を介する取込みのため)のいずれかにより施用される。「肥料」という用語は、2つの主要なカテゴリー、すなわち、a)有機肥料(腐敗した植物質/動物質で構成される)およびb)無機肥料(化学品や無機物で構成される)に細分可能である。有機肥料としては、糞尿、スラリー、虫糞、ピート、海藻、下水汚泥、およびグアノが挙げられる。また、栄養素(とくに窒素)を土壌に施用するために緑肥作物が定期的に栽培される。製造される有機肥料としては、コンポスト、血粉、骨粉、および海藻抽出物が挙げられる。さらなる例は、酵素消化タンパク質、魚粉、および羽毛粉である。前年からの分解作物残渣は、他の肥沃度源である。また、そのほかに、リン鉱石、硫酸カリ、および石灰石などの天然産鉱物は、無機肥料とみなされる。無機肥料は、通常、化学変化させながら、天然産堆積物も使用して、化学プロセス(たとえば、Haberプロセスなど)を介して製造される(たとえば、濃厚三重過リン酸石灰など)。天然産無機肥料としては、チリ硝石、リン鉱石、および石灰石が挙げられる。
【0101】
「NPK肥料」とは、三大栄養素の窒素(N)、リン(P)、およびカリウム(K)を含む適切な濃度および組合せで製剤化された無機肥料のことである。
【0102】
一実施形態では、本発明に係る方法に従って処理される植物は、農業植物である。
【0103】
「農業植物」とは、一部(たとえば、種子)もしくは全部が商業規模で収穫もしくは栽培される植物、または飼料、食品、繊維(たとえば、ワタ、リネン)、可燃物(たとえば、木材、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオマス)、もしくは他の化学化合物の重要な供給源として役立つ植物のことである。好ましい農業植物は、たとえば、穀物、たとえば、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、オートムギ、ソルガム、またはイネ、ビート、たとえば、サトウダイコンまたは飼料ビート;果実、たとえば、仁果類、核果類、または柔果類、たとえば、リンゴ、セイヨウナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、またはグーズベリー;マメ科植物、たとえば、ヒラマメ、エンドウ、アルファルファ、またはダイズ;油糧植物、たとえば、アブラナ、セイヨウアブラナ、カノーラ、アマニ、カラシナ、オリーブ、ヒマワリ、ヤシ、カカオ豆、トウゴマ、アブラヤシ、ラッカセイ、またはダイズ;ウリ科植物、たとえば、カボチャ、キュウリ、またはメロン;繊維植物、たとえば、ワタ、アマ、アサ、またはジュート;柑橘類、たとえば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、またはマンダリン;野菜、たとえば、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ウリ、またはパプリカ;クスノキ科植物、たとえば、アボカド、シナモン、またはカンファー;エネルギー植物および原料植物、たとえば、トウモロコシ、ダイズ、アブラナ、カノーラ、サトウキビ、またはアブラヤシ;タバコ;堅果類;コーヒー;チャ;バナナ;蔓植物(生食用ブドウノキおよびグレープジュース用ブドウノキ);ホップ;芝生;天然ゴム植物である。
【0104】
一実施形態では、本発明に係る方法に従って処理される植物は、園芸植物である。「園芸植物」という用語は、園芸(たとえば、観賞植物、野菜、および/または果実の栽培)に一般に使用される植物とみなされるものとする。観賞植物の例は、芝生、フウロソウ、ペラルゴニウム、ペチュニア、ベゴニア、およびフクシアである。野菜の例は、ジャガイモ、トマト、コショウ、ウリ、キュウリ、メロン、スイカ、ニンニク、タマネギ、ニンジン、キャベツ、インゲン、エンドウ、およびレタス、より好ましくは、トマト、タマネギ、エンドウ、およびレタスである。果実の例は、リンゴ、セイヨウナシ、サクランボ、イチゴ、柑橘類、モモ、アンズ、およびブルーベリーである。
【0105】
一実施形態では、本発明に係る方法に従って処理される植物は、観賞植物である。「観賞植物」とは、ガーデニングで、たとえば、公園、庭、およびバルコニーで一般に使用される植物のことである。例としては、芝生、フウロソウ、ペラルゴニウム、ペチュニア、ベゴニア、およびフクシアが挙げられる。
【0106】
一実施形態では、本発明に係る方法に従って処理される植物は、造林植物である。「造林植物」という用語は、樹木、より特定的には、再造林または産業造林で使用される樹木とみなされるものとする。産業造林は、一般的には、木材、パルプ、紙、ゴムノキ、クリスマスツリー、またはガーデニング目的の幼木などの林産物の商業生産に役立つ。造林植物の例は、針葉樹、たとえば、マツ、特定的にはマツ属(Pinus)の種、モミおよびスプルース、ユーカリ、熱帯樹木、たとえば、チーク、ゴムノキ、アブラヤシ、ヤナギ(ヤナギ属(Salix))、特定的にはヤナギ属(Salix)の種、ポプラ(ハコヤナギ)、特定的にはハコヤナギ属(Populus)の種、ブナ、特定的にはブナ属(Fagus)の種、カバ、アブラヤシ、およびオークである。
【0107】
「場所」という用語は、植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする任意のタイプの環境、土壌、地域、または材料とみなされるものとする。本発明によればとくに好ましいのは土壌である。
【0108】
本発明との関連では、「混合物」または「農業化学混合物」とは、少なくとも2種の化合物の組合せを意味する。
【0109】
「少なくとも1種」という用語は、殺菌剤(化合物A)、肥料(化合物B)、および硝化阻害剤(化合物C)よりなる群から選択される1、2、3種、もしくはそれ以上のそれぞれの化合物とみなされるものとする。
【0110】
「遺伝子改変植物」という用語は、交雑育種、突然変異、または自然組換えにより自然環境下では容易に得られない形で組換えDNA技術を用いて遺伝物質が改変された植物とみなされるものとする。
【0111】
「植物繁殖材料」という用語は、種子などの植物の繁殖部分および植物の繁殖に使用可能な挿し穂や塊茎(たとえば、ジャガイモ)などの生育可能な植物材料をすべて表すとみなされるものとする。これは、種子、穀粒、根、果実、塊茎、鱗茎、根茎、挿し穂、胞子、側枝、苗条、萌芽、および植物(発芽後または土壌からの出芽後に移植可能な苗や幼植物を包含する)の他の部分、分裂組織、単一および複数の植物細胞、ならびに完全な植物を得るもとになりうる任意の他の植物組織を包含する。
【0112】
「繁殖体」または「植物繁殖体」という用語は、新しい植物を形成する能力を有する任意の構造体、たとえば、種子、胞子、または親から切り離した場合に独立して生育可能な栄養体の一部を表すとみなされるものとする。好ましい実施形態では、「繁殖体」または「植物繁殖体」という用語は、種子を表す。
【0113】
亜酸化窒素放出の低減は、有害生物の存在に依存しない。したがって、本方法の好ましい実施形態では、活性成分(化合物A)および/または少なくとも1種の化合物(A)を含む混合物の施用は、有害生物圧力の不在下で行われる。
【0114】
「BBCH主要生育段階」という用語は、植物の全発生サイクルが明確に認識可能かつ区別可能な長期間持続する発生相に細分されるすべての単子葉植物種および双子葉植物種の生物季節学上類似した生育段階の一貫したコード化のための体系である拡張BBCHスケールを意味する。BBCHスケールは、主要生育段階および二次生育段階に分割される十進コード体系を使用する。略語BBCHは、連邦農林生物研究所 (ドイツ), 連邦植物品種局 (ドイツ)および化学工業会に由来する。
【0115】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)は、植物のGS00 BBCH〜GS65 BBCHの生育段階(GS)で施用される。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)は、植物のGS14〜GS55 BBCHの生育段階で施用される。
【0117】
本発明のより好ましい実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)は、植物のGS14〜GS47 BBCHの生育段階で施用される。
【0118】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の肥料(化合物B)は、播種前および播種時、出芽前、ならびに収穫期まで(GS00〜GS89 BBCH)に施用される。
【0119】
本発明の他の実施形態では、少なくとも1種の肥料(化合物B)は、播種前および播種時、出芽前、ならびに収穫期まで(GS00〜GS89 BBCH)に少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)と一緒に施用される。
【0120】
本発明の他の実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)は、処理対象植物の葉発生期〜開花期(GS14〜GS65 BBCH)に施用される。ただし、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0121】
本発明の好ましい実施形態では、アンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)と少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)とを含む農業化学混合物は、生育段階GS00〜GS89 BBCH(播種前、収穫期まで)で少なくともに1回施用され、一方、少なくとも1種の化合物(A)は、処理対象植物の生育段階GS14〜GS65 BBCH(葉発生期〜開花期)で少なくとも1回施用される。ただし、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0122】
本発明の他の実施形態では、アンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)と少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)とを含む農業化学混合物は、播種前および播種時、出芽前、ならびに植物の苗条形成期/苗条発生期まで(GS00〜GS33 BBCH)に施用され、一方、少なくとも1種の化合物(A)は、葉発生期〜花序出現期(GS14〜GS55 BBCH)に施用される。ただし、少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用は、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる。
【0123】
本発明に係る少なくとも2種の化合物(A)を含む農業用混合物を本発明に係る方法で使用する場合、植物繁殖体は、好ましくは、同時に(一緒にもしくは個別に)または逐次的に処理される。
【0124】
逐次的施用は、施用される化合物の複合作用を可能にする時間間隔で行われる。好ましくは、第1の化合物(A)および第2の化合物(A)の逐次的施用の時間間隔は、数秒間から3ヶ月間まで、好ましくは数秒間から1ヶ月間まで、より好ましくは数秒間から2週間まで、さらにより好ましくは数秒間から3日間まで、特定的には1秒間から24時間までの範囲内である。
【0125】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に係る方法に従った施用は、反復して行われる。一実施形態では、施用は、2〜10回、好ましくは2〜5回、最も好ましくは2回反復される。
【0126】
一実施形態では、少なくとも1種の化合物(A)の施用は、反復して行われる。他の実施形態では、少なくとも1種の化合物(B)の施用は、反復して行われる。さらに他の実施形態では、1種の化合物(C)と一緒の1種の化合物(B)の施用は、反復して適用される。いずれの場合も、少なくとも1種の化合物(A)の最後の施用と少なくとも1種の化合物(B)(場合により少なくとも1種の化合物Cと一緒)の最後の施用との間に少なくとも1日間の時間差がなければならない。
【0127】
本発明に係る使用では、化合物(A)の施用量は、施用される特定の活性成分や処理される植物種などのさまざまなパラメーターに依存して、1ヘクタールあたりの活性成分換算で0.01g〜5kg、好ましくは1ヘクタールあたりの活性成分換算で1g〜1kgであり、とくに好ましいのは、1ヘクタールあたりの活性成分換算で50g〜300gである。
【0128】
種子の処理では、種子1kgあたり0.001g〜20g、好ましくは種子1kgあたり0.01g〜10g、より好ましくは種子1kgあたり0.05〜2gの量の化合物(A)が、一般に必要とされる。
【0129】
当然のことながら、化合物(A)、(B)、および(C)、ならびに混合物を利用する場合、化合物(A)、(B)、および(C)よりなる群から選択される化合物は、有効量かつ非植物毒性量で使用される。このことは、処理された植物または処理された繁殖体もしくは処理された土壌から生育された植物にいかなる植物毒性症状をも引き起こすことなく所望の効果を達成しうる量で使用されることを意味する。
【0130】
本発明に係る方法では、少なくとも2種の化合物(A)を含む混合物の施用量は、化合物のタイプおよび所望の効果に依存して、0.3g/ha〜5000g/ha、好ましくは5g/ha〜2000g/ha、より好ましくは20〜1000g/ha、特定的には20〜500g/haである。
【0131】
植物繁殖体、好ましくは種子の処理では、少なくとも2種の化合物(A)を含む本発明に係る混合物の施用量は、一般的には植物繁殖体100kgあたり0.001〜1000g、好ましくは100kgあたり0.01〜500g、特定的には100kgあたり0.1g〜250gである。
【0132】
本発明に係る使用では、化合物(B)の施用量は、1ヘクタールあたりのN換算で10kg〜300kg、好ましくは1ヘクタールあたりのN換算で50kg〜250kgである。
【0133】
いずれの実施形態でも、農業化学混合物は、土壌からの亜酸化窒素放出を低減する量で施用される。一実施形態では、農業化学混合物は、土壌からの亜酸化窒素放出を相乗的に低減する量で施用される。
【0134】
本発明に係る化合物は、生物活性が異なりうるさまざまな結晶変態で存在可能である。それらも同様に、本発明の保護対象である。
【0135】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、種子処理として施用される。
【0136】
本発明に係る方法の他のとくに好ましい実施形態では、化合物(A)は、葉面施用および/または畝溝施用として施用される。
【0137】
本発明に係る化合物、そのN-オキシドおよび塩は、慣用タイプの農業化学組成物、たとえば、溶液剤、エマルジョン剤、サスペンジョン剤、ダスト剤、粉末剤、ペースト剤、および顆粒剤に変換可能である。組成物タイプは、特定の意図した目的に依存し、いずれの場合も、本発明に係る化合物の微細かつ均一な分布が確保されなければならない。
【0138】
組成物タイプの例は、サスペンジョン剤(SC、OD、FS)、乳化性濃厚剤(EC)、エマルジョン剤(EW、EO、ES)、マイクロエマルジョン剤(ME)、ペースト剤、パステル剤、水和性粉末剤もしくはダスト剤(WP、SP、SS、WS、DP、DS)、または水溶性もしくは水和性でありうる顆粒剤(GR、FG、GG、MG)、さらには種子などの植物繁殖材料の処理のためのゲル製剤(GF)である。通常、組成物タイプ(たとえば、SC、OD、FS、EC、WG、SG、WP、SP、SS、WS、GF)は、希釈して利用される。DP、DS、GR、FG、GG、およびMGなどの組成物タイプは、通常、希釈せずに使用される。
【0139】
組成物は、公知の方法で調製される(米国特許第3,060,084号明細書、欧州特許出願公開第707445号明細書(液状濃厚剤に関して)、Browning: "Agglomeration", Chemical Engineering, Dec. 4, 1967, 147-48, Perry's Chemical Engineer's Handbook, 4th Ed., McGraw-Hill, New York, 1963, S. 8-57 und ff.、国際公開第91/13546号パンフレット、米国特許第4,172,714号明細書、米国特許第4,144,050号明細書、米国特許第3,920,442号明細書、米国特許第5,180,587号明細書、米国特許第5,232,701号明細書、米国特許第5,208,030号明細書、英国特許第2,095,558号明細書、米国特許第3,299,566号明細書、Klingman: Weed Control as a Science (J. Wiley & Sons, New York, 1961)、Hance et al.: Weed Control Handbook (8th Ed., Blackwell Scientific, Oxford, 1989)、およびMollet, H. and Grubemann, A.: Formulation technology (Wiley VCH Verlag, Weinheim, 2001)を参照されたい。
【0140】
また、農業化学組成物は、農業化学組成物で慣用される助剤を含んでいてもよい。使用される助剤は、それぞれ特定の施用形態および活性物質に依存する。好適な助剤の例は、溶媒、固体担体、分散剤または乳化剤(たとえば、さらなる可溶化剤、保護コロイド、界面活性剤、および接着剤)、有機および無機の増粘剤、殺細菌剤、凍結防止剤、消泡剤、適切であれば着色剤、および粘着付与剤または結合剤(たとえば、種子処理製剤の場合)である。
【0141】
好適な溶媒は、水、有機溶媒、たとえば、中沸点〜高沸点の鉱油留分、たとえば、灯油またはディーゼル油、さらには、コールタール油および植物起源もしくは動物起源の油、脂肪族、環状、および芳香族の炭化水素、たとえば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン、またはそれらの誘導体、アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびシクロヘキサノール、グリコール、ケトン、たとえば、シクロヘキサノンおよびγ-ブチロラクトン、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸および脂肪酸エステル、ならびに強極性溶媒、たとえば、アミン、たとえば、N-メチルピロリドンである。固体担体の例は、硬質土類、たとえば、シリケート、シリカゲル、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、ボール粘土、黄土、クレー、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕合成材料、肥料、たとえば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、および植物起源の産物、たとえば、穀粉、樹皮粉、木粉、および堅果殻粉、セルロース粉末、ならびに他の固体担体である。
【0142】
好適な界面活性剤(補助剤、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤、または乳化剤)は、芳香族スルホン酸の、たとえば、リグニンスルホン酸(Borresperse(登録商標)タイプ(Borregard, Norway))、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸(Morwet(登録商標)タイプ(Akzo Nobel, U.S.A.))、ジブチルナフタレン-スルホン酸(Nekal(登録商標)タイプ(BASF, Germany))の、および脂肪酸の、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルスルフェート、ラウリルエーテルスルフェート、脂肪アルコールスルフェート、ならびに硫酸化ヘキサ、ヘプタ、およびオクタデカノラート、硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテル、さらには、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドとの縮合物、ポリオキシ-エチレンオクチルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコールおよび脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグニン-亜硫酸廃液、ならびにタンパク質、変性タンパク質、ポリサッカリド(たとえば、メチルセルロース)、疎水変性デンプン、ポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)タイプ(Clariant, Switzerland))、ポリカルボキシレート(Sokolan(登録商標)タイプ(BASF, Germany))、ポリアルコキシレート、ポリビニルアミン(Lupasol(登録商標)タイプ(BASF, Germany))、ポリビニルピロリドン、ならびにそれらのコポリマーである。
【0143】
増粘剤(すなわち、改良された流動性(すなわち、静的条件下で高粘度かつ撹拌時に低粘度)を組成物に付与する化合物)の例は、ポリサッカリドならびに有機および無機のクレー、たとえば、キサンタンガム(Kelzan(登録商標)(CP Kelco, U.S.A.))、Rhodopol(登録商標)23(Rhodia, France)、Veegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt, U.S.A.)、またはAttaclay(登録商標)(Engelhard Corp., NJ, USA)である。
【0144】
組成物の保存および安定化のために殺細菌剤を添加してもよい。好適な殺細菌剤の例は、ジクロロフェンおよびベンジルアルコールヘミホルマールに基づくもの(ICI製のProxel(登録商標))またはThor Chemie製のActicide(登録商標)RSおよびRohm & Haas製のKathon(登録商標)MK)ならびにアルキルイソチアゾリノンやベンゾイソチアゾリノンなどのイソチアゾリノン誘導体に基づくもの(Thor Chemie製のActicide(登録商標)MBS)である。
【0145】
好適な凍結防止剤の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ウレア、およびグリセリンである。
【0146】
消泡剤の例は、シリコーンエマルジョン(たとえば、Silikon(登録商標)SRE(Wacker, Germany)またはRhodorsil(登録商標)(Rhodia, France)など)、長鎖状アルコール、脂肪酸、脂肪酸の塩、フルオロ有機化合物、およびそれらの混合物である。
【0147】
好適な着色剤は、水への溶解性が低い顔料および水溶性の染料である。例として挙げられるのは、ローダミンB、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド112、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108と呼称されるものである。
【0148】
粘着付与剤または結合剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、およびセルロースエーテル(Tylose(登録商標)(Shin-Etsu, Japan))である。粉末剤、散布剤(materials for spreading)、およびダスト剤は、化合物Iおよび適切であればさらなる活性物質を少なくとも1種の固体担体と共に混合または同時粉砕することにより調製可能である。顆粒剤、たとえば、被覆顆粒剤、含浸顆粒剤、および均一顆粒剤は、活性物質を固体担体に結合させることにより調製可能である。固体担体の例は、鉱質土類、たとえば、シリカゲル、シリケート、タルク、カオリン、アタクレー、石灰石、石灰、チョーク、ボール粘土、黄土、クレー、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、粉砕合成材料、肥料、たとえば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、および植物起源の産物、たとえば、穀粉、樹皮粉、木粉、および堅果殻粉、セルロース粉末、ならびに他の固体担体である。
【0149】
組成物タイプの例は、以下のとおりである。
【0150】
1. 水で希釈するための組成物タイプ
i) 水溶性濃厚剤(SL、LS)
本発明に係る10重量部の化合物Iを90重量部の水または水溶性溶媒に溶解させる。他の選択肢として、湿潤剤または他の助剤を添加する。活性物質は、水希釈時に溶解する。このようにして、10重量%の含有率の活性物質を有する組成物を得る。
【0151】
ii) 分散性濃厚剤(DC)
10重量部の分散剤(たとえばポリビニルピロリドン)を添加して本発明に係る20重量部の化合物Iを70重量部のシクロヘキサノンに溶解させる。水で希釈する分散液が得られる。活性物質含有率は20重量%である。
【0152】
iii) 乳化性濃厚剤(EC)
カルシウムドデシルベンゼンスルホネートおよびヒマシ油エトキシレート(いずれの場合も5重量部)を添加して本発明に係る15重量部の化合物Iを75重量部のキシレンに溶解させる。水で希釈するとエマルジョンが得られる。組成物は、15重量%の活性物質含有率を有する。
【0153】
iv) エマルジョン剤(EW、EO、ES)
カルシウムドデシルベンゼンスルホネートおよびヒマシ油エトキシレート(いずれの場合も5重量部)を添加して本発明に係る25重量部の化合物Iを35重量部のキシレンに溶解させる。乳化機(Ultraturrax)を利用してこの混合物を30重量部の水に導入し均一エマルジョンにする。水で希釈するとエマルジョンが得られる。組成物は、25重量%の活性物質含有率を有する。
【0154】
v) サスペンジョン剤(SC、OD、FS)
攪拌ボールミル中で、10重量部の分散剤および湿潤剤ならびに70重量部の水または有機溶媒を添加して、20重量部の本発明に係る化合物Iを細粒化し、微細な活性物質懸濁液を得る。水で希釈すると活性物質の安定な懸濁液が得られる。組成物中の活性物質含有率は20重量%である。
【0155】
vi) 水分散性顆粒剤および水溶性顆粒剤(WG、SG)
工業用装置(たとえば、押出し機、スプレー塔、流動床)を利用して、50重量部の分散剤および湿潤剤を添加して本発明に係る50重量部の化合物Iを微粉砕し、水和性顆粒剤または水溶性顆粒剤として調製する。水で希釈すると活性物質の安定な分散液または溶液が得られる。組成物は、50重量%の活性物質含有率を有する。
【0156】
vii) 水分散性粉末剤および水溶性粉末剤(WP、SP、SS、WS)
25重量部の分散剤、湿潤剤、およびシリカゲルを添加して本発明に係る75重量部の化合物Iをローターステーターミルで粉砕する。水で希釈すると活性物質の安定な分散液または溶液が得られる。組成物の活性物質含有率は75重量%である。
【0157】
viii) ゲル剤(GF)
攪拌ボールミル中で、10重量部の分散剤、1重量部の湿潤ゲル化剤、および70重量部の水または有機溶媒を添加して、20重量部の本発明に係る化合物Iを細粒化し、活性物質の微細懸濁液を得る。水で希釈すると活性物質の安定な懸濁液が得られ、この際、20%(w/w)の活性物質を有する組成物が得られる。
【0158】
2. 希釈せずに施用するための組成物タイプ
ix) ダスト性粉末剤(DP、DS)
5重量部の本発明に係る化合物Iを微粉砕して95重量部の微細化カオリンと均質混合する。これにより5重量%の活性物質含有率を有するダスト性組成物が得られる。
【0159】
x) 顆粒剤(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の本発明に係る化合物Iを微粉砕して99.5重量部の担体と一体化させる。一般に用いられる方法は、押出し法、スプレー乾燥法、または流動床法である。これにより0.5重量%の活性物質含有率を有する希釈せずに施用するための顆粒剤が得られる。
【0160】
xi) ULV溶液剤(UL)
10重量部の本発明に係る化合物Iを90重量部の有機溶媒(たとえばキシレン)に溶解させる。これにより10重量%の活性物質含有率を有する希釈せずに施用するための組成物が得られる。
【0161】
農業化学組成物は、一般的には0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%、最も好ましくは0.5〜90重量%の活性物質を含む。活性物質は、90%〜100%、好ましくは95%〜100%の純度(NMRスペクトルに基づく)で利用される。
【0162】
水溶性濃厚剤(LS)、フロアブル濃厚剤(FS)、ドライ処理用粉末剤(DS)、スラリー処理用水和性粉末剤(WS)、水溶性粉末剤(SS)、エマルジョン剤(ES)、乳化性濃厚剤(EC)、およびゲル剤(GF)は、通常、植物繁殖材料とくに種子の処理に利用される。これらの組成物は、希釈してまたは希釈せずに植物繁殖材料とくに種子に施用可能である。対象の組成物は、2〜10倍に希釈した後、即使用可能な調製物で0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜40重量%の活性物質濃度を与える。施用は、播種前または播種時に行うことが可能である。農業化学化合物およびその組成物をそれぞれ植物繁殖材料とくに種子に施用または処理する方法は、当技術分野で公知であり、繁殖材料を粉衣処理、塗布処理、ペレット処理、ダスト処理、浸漬処理、および畝溝施用する方法を包含する。好ましい実施形態では、化合物またはその組成物は、それぞれ、発芽を誘導しないような方法で、たとえば、種子を粉衣処理、ペレット処理、塗布処理、およびダスト処理することにより、植物繁殖材料に施用される。
【0163】
好ましい実施形態では、懸濁液タイプ(FS)の組成物が種子処理に使用される。典型的には、FS組成物は、1〜800g/lの活性物質、1〜200g/lの界面活性剤、0〜200g/lの凍結防止剤、0〜400g/lの結合剤、0〜200g/lの顔料、および全量1リットルになる量の溶媒、好ましくは水を含みうる。
【0164】
活性物質は、そのままの状態でまたはそれらの組成物の形態で、たとえば、直接スプレー可能な溶液剤、粉末剤、サスペンジョン剤、ディスパージョン剤、エマルジョン剤、ペースト剤、油ディスパージョン剤、ダスト剤、散布剤(materials for spreading)、または顆粒剤の形態で、スプレー処理、アトマイズ処理、ダスト処理、散布処理、刷毛塗り処理、浸漬処理、または灌注処理を利用して、使用可能である。施用形態は、意図した目的に完全に依存し、いずれの場合も、本発明に係る活性物質の可能なかぎりの微細分布が確保されるようにデザインされる。
【0165】
水系施用形態は、水を添加することにより、エマルジョン濃厚剤、ペースト剤、または水和性粉末剤(スプレー可能な粉末剤、油ディスパージョン剤)から調製可能である。エマルジョン剤、ペースト剤、または油ディスパージョン剤を調製するために、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤、または乳化剤を利用して、物質(そのままの状態または油もしくは溶媒に溶解された状態)を水中でホモジナイズすることが可能である。他の選択肢として、活性物質と、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤、または乳化剤と、適切であれば溶媒または油と、で構成される濃厚剤を調製することが可能であり、そのような濃厚剤は、水で希釈するのに好適である。
【0166】
即使用可能な調製物中の活性物質濃度は、比較的広い範囲内でさまざまな値に設定可能である。一般的には、それらは、0.0001〜10%重量、好ましくは0.001〜1重量%の活性物質である。
【0167】
また、活性物質を微量処理(ULV)で首尾よく使用することも可能であり、その場合、95重量%超の活性物質を含む組成物を施用したり、さらには添加剤を用いずに活性物質を施用したりすることが可能である。
【0168】
適切であれば、使用直前になってから、種々のタイプの油剤、湿潤剤、補助剤、除草剤、殺細菌剤、他の殺菌剤、および/または殺有害生物剤を活性物質またはそれを含む組成物に添加してもよい(タンク混合)。これらの作用剤は、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の重量比で本発明に係る組成物と混合可能である。
【0169】
使用可能な補助剤は、特定的には、有機変性ポリシロキサン、たとえば、Break Thru S 240(登録商標);アルコールアルコキシレート、たとえば、Atplus 245(登録商標)、Atplus MBA 1303(登録商標)、Plurafac LF 300(登録商標)、およびLutensol ON 30(登録商標);EO/POブロックポリマー、たとえば、Pluronic RPE 2035(登録商標)およびGenapol B(登録商標);アルコールエトキシレート、たとえば、Lutensol XP 80(登録商標);ならびにジオクチルスルホスクシネートナトリウム、たとえば、Leophen RA(登録商標)である。
【0170】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものであり、なんら制限を課すものではない。
【実施例】
【0171】
実施例1:
ピラクロストロビンを含有する製剤(製品名:Stamina(登録商標))を用いて5g/100kg(種子)の量でトウモロコシ種子(トウモロコシ(Zea mays)、品種「Shorty」)を処理するかまたは処理せずに放置するかのいずれかを行った。種子を標準的温室土壌(ピートとロームと砂との混合物)に1種子/ポットで播種し、20℃かつ湿度60%の人工気象室内で生育させた。完全ランダム構成で植物を10日間生育させた。6日目、完全容水量まで植物に灌水したが、施肥しなかった。その後、放置して完全に乾燥させた。10日目(ピラクロストロビンで種子を処理した10日後)、植物を分離して、ポット用の内側区画と水で満たされる外側リング部とを備えたデザインの植木鉢受け皿に各ポットをセットした。時間0で、土壌の容水量が90%を超えるように、種々の濃度のNPK肥料(化合物B)を含むまたは含まない水を植物に施用した。次に、水で満たされたリング部にリムが嵌入して気密チャンバーを形成するように、ガス採取チャンバーを植木鉢受け皿上に配置した。続いて、20立方センチメートル(cc)の空気をチャンバーからシリンジ中に吸入し、ただちにVacutainer(Labco、容量12ml)中に排出した。これは、各ポットに対する時間0の測定に相当する。実験ですべてのポットについて同一の手順を行った。1時間定温放置した後、再び20ccの空気サンプルをガスチャンバーから採取し、以上に記載したようにVacutainer中に排出した。次に、植物を人工気象室内のそれらの位置に戻した。翌2日間にわたり正確に当日の同一時刻に測定を反復した。ECDシステムを備えたShimadzu 2014 GCでサンプルを分析した。
【表3】

【0172】
表3からわかるように、本発明に係る方法に従って化合物(A)の施用の10日後にそれぞれの肥料(化合物B)を施用した場合、種子処理として施用された化合物(A)としてのピラクロストロビンは、土壌からのN2O放出を有意に低減可能である。
【0173】
実施例2:
種々の土壌タイプ(表4参照)の土壌サンプル(乾燥重量10g)を50mlスクリューキャップ遠心管に入れた。水またはEC製剤(製品名Comet(登録商標)、200L/haに希釈して濃度250g/L)として化合物(A)のピラクロストロビンを含有する水を18.5mlの量ですべての液体が吸収されるまで土壌に施用した。続いて、土壌サンプルを1日間放置した。肥料(化合物B)として1mlのCa(NO3)2溶液を土壌中の硝酸イオンの最終濃度が100kg N/haに等しくなるように施用した。次に、0.5mlのグルコース溶液(土壌10mgあたり3mgのグルコース)を施用した。土壌サンプルを混合し、20℃で48時間定温放置した。
【0174】
次に、20mlの2% K2SO4溶液を加え、振盪し、そして濾過した後、硝酸イオンおよびアンモニウムの含有率を分析した。測定は、Conway法(Stanford et. al, 1973: Nitrate determination by a modified Conway microdiffusion method. J. Assoc. Off. Anal. Chem. 56:1365-1368)により行った。Stanford et al. 1975, Soil Sci. Soc. Amer. Proc., vol. 39: 867-870、Paul and Beauchamp (1989): Can. J. Microbiol 35:754-759、およびAllgemeine Mikrobiologie, H.G. Schlegel, editor, Thieme Verlag, Stuttgart, 2006に発表されたように、この方法は、土壌中の窒素の損失を測定するのに好適であり、したがって、種々の起源の土壌中で生成されるN2Oの量を間接的に測定するのに好適である。
【表4】

【0175】
表4からわかるように、本発明に係る方法に従って化合物(A)の施用の1日後にそれぞれの肥料(化合物B)を施用した場合、種々のタイプの土壌に施用された化合物(A)としてのピラクロストロビンは、土壌からのN2O放出をさまざまなの程度まで有意に低減可能である。この低減は、天然土壌系(LiHof)に施用した場合にとくに大きい。
【0176】
実施例3:
実施例2で記載したのと同一の実験構成で、ピラクロストロビンさらにはボスカリド(異なる作用機序を示す)を化合物(A)として土壌タイプLiHofで試験した。土壌からのN2O放出を低減する能力を実施例2に記載したように評価した。個々の化合物の施用量は、表5に列挙される。
【表5】

【0177】
表5からわかるように、本発明に従って化合物(A)の施用の1日後にそれぞれの肥料(化合物B)を施用した場合、化合物(A)としてのピラクロストロビンまたはボスカリドの土壌への施用は、土壌からのN2O放出を有意に低減した。
【0178】
実施例4:
温室試験は、疑似グライ(pseudogleic)のパラ-カンビソル(para-cambisol)のAh層に相当する現場の土壌サンプルで行った。ポットに10kgのそれぞれの土壌を充填し、続いて、夏コムギを植栽した。ランダム構成を設定し、ポットに毎日灌水して孔隙が水で60%満たされるようにした。各サンプリング日に各日同一時刻にポットを個別の気密サンプリングチャンバー内に閉じ込めて、90分間の定温放置時間にわたり3つのガスサンプルを採取した。ポットをピラクロストロビンで処理するか(250g/ha = 50mlの17.32mg/l溶液)または処理せずに放置するか(UTC = 水のみ)のいずれかを行った。肥料(100kg/haの濃度で硝酸アンモニウム(化合物B))を表6に示されるように施用した。4週間にわたりサンプルを採取した。
【表6】

【0179】
表6は、本発明の驚くべき技術的効果を明確に示している。予期せずして、化合物(A)としてのピラクロストロビンおよび化合物(B)としての硝酸アンモニウムの施用を少なくとも1日間(この場合8日間)の時間差をつけて行った場合、土壌からのN2O放出は、肥料(化合物B)単独での施用または化合物(A)を化合物(B)と一緒に施用した時と比較して有意に低減されることが判明した。したがって、化合物(A)および化合物(B)の組合せ施用は、土壌からのN2O放出の低減を引き起こさないが、少なくとも1日間の時間差をつけた化合物(A)および化合物(B)の個別施用は、驚くべきことに、土壌からの亜酸化窒素放出の大幅な低減を引き起こすことが示されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1) 複合体IIIのQ0部位の阻害剤(呼吸阻害剤、たとえば、ストロビルリン類):アゾキシストロビン、クメトキシストロビン、クモキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フェナミンストロビン、フェノキシストロビン(フルフェノキシストロビン)、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピラメトストロビン、ピラオキシストロビン、ピリベンカルブ、トリクロピリカルブ(クロロジンカルブ)、トリフロキシストロビン、2-[2-(2,5-ジメチル-フェノキシメチル)-フェニル]-3-メトキシ-アクリル酸メチルエステル、および2-(2-(3-(2,6-ジ-クロロフェニル)-1-メチル-アリリデン-アミノオキシ-メチル)-フェニル-2-メトキシイミノ-N-メチル-アセトアミド;
(A2) 複合体IIIのQi部位の阻害剤(呼吸阻害剤):シアゾファミド、アミスルブロム;
(A3) 複合体IIの阻害剤(呼吸阻害剤、たとえば、カルボキサニリド類):ベノダニル、ビキサフェン、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フルキサピロキサド、フラメトピル、イソピラザム、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンフルフェン、ペンチオピラド、セダキサン、テクロフタラム、チフルザミド、N-(4'-トリフルオロメチルチオビフェニル-2-イル)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、およびN-(2-(1,3,3-トリメチル-ブチル)-フェニル)-1,3-ジメチル-5-フルオロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド、
(A4) 他の呼吸阻害剤(たとえば、複合体I阻害剤、脱共役剤):ジフルメトリム;ニトロフェニル誘導体:ビナパクリル、ジノブトン、ジノカップ、フルアジナム、ニトルタール-イソプロピル、テクナゼン、フェリムゾン;有機金属化合物:フェンチン塩:フェンチンアセテート、フェンチンクロリド、フェンチンヒドロキシド;アメトクトラジン、シルチオファム;
(A5) ステロール生合成阻害剤(SBI殺菌剤):
・ C14デメチラーゼ阻害剤(DMI殺菌剤):トリアゾール類:アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール-M、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルオピラム、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアホール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ウニコナゾール;イミダゾール類:シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トリフルミゾール;ピリミジン類、ピリジン類、およびピペラジン類:フェナリモール、ヌアリモール、ピリフェノックス、およびトリホリン;
・ Δ14-レダクターゼ阻害剤:アルジモルフ、ドデモルフ、ドデモルフ-アセテート、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、フェンプロピジン、ピペラリン、およびスピロキサミン;
・ 3-ケトレダクターゼの阻害剤:フェンヘキサミド;
(A6) 核酸合成阻害剤:
・ フェニルアミド系またはアシルアミノ酸系の殺菌剤:ベナラキシル、ベナラキシル-M、キララキシル、メタラキシル、メタラキシル-M(メフェノキサム)、オフレース、オキサジキシル;
・ その他:ヒメキサゾール、オクチリノン、オキソリニック酸、ブピリメート;
(A7) 細胞分裂および細胞骨格の阻害剤:
・ チューブリン阻害剤:ベンゾイミダゾール類、チオファネート類:カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール、チオファネート-メチル;トリアゾロピリミジン類:5-クロロ-7-(4-メチル-ピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロフェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン
・ 他の細胞分裂阻害剤:ジエトフェンカルブ、エタボキサム、ペンシクロン、フルオピコリド、ゾキサミド、メトラフェノン、ピリオフェノン;
(A8) アミノ酸合成およびタンパク質合成の阻害剤:
・ メチオニン合成阻害剤(アニリノ-ピリミジン類):シプロジニル、メパニピリム、ニトラピリン、ピリメタニル;
・ タンパク質合成阻害剤:ブラスチシジン-S、カスガマイシン、カスガマイシンヒドロクロリドヒドレート、ミルジオマイシン、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン、ポリオキシン、バリダマイシンA;
(A9) シグナル伝達阻害剤:
・ MAP/ヒスチジンキナーゼ阻害剤:フルオロイミド、プロシミドン、ビンクロゾリン、フェンピクロニル、フルジオキソニル;
・ Gタンパク質阻害剤:キノキシフェン;
(A10) 脂質合成および膜合成の阻害剤:
・ リン脂質生合成阻害剤:エジフェンホス、イプロベンホス、ピラゾホス、イソプロチオラン;ケイ皮酸アミド類またはマンデル酸アミド類;
・ 脂質過酸化:ジクロラン、キントゼン、テクナゼン、トルクロホス-メチル、ビフェニル、クロロネブ、エトリジアゾール;
・ リン脂質生合成および細胞壁堆積:ジメトモルフ、フルモルフ、マンジプロアミド、ピリモルフ、ベンチアバリカルブ、イプロバリカルブ、ピリベンカルブ、バリフェナレート、N-(1-(1-(4-シアノフェニル)-エタンスルホニル)-ブト-2-イル)カルバミン酸-(4-フルオロフェニル)エステル;
・ 細胞膜透過性および脂肪酸に影響を及ぼす化合物:プロパモカルブ、プロパモ-カルブ-ヒドロクロリド;
(A11) 多部位作用を有する阻害剤:
・ 無機活性物質:ボルドー液、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄;
・ チオカルバメート類およびジチオカルバメート類:フェルバム、メタム、メタスルホカルブ、メチラム、プロピネブ、チラム、ジネブ、ジラム;
・ 有機塩素化合物(たとえば、フタルイミド類、スルファミド類、クロロニトリル類):アニラジン、カプタホール、ホルペット、ジクロフルアニド、ジクロロフェン、フルスルファミド、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロルフェノールおよびその塩、フサライド、トリルフルアニド、N-(4-クロロ-2-ニトロ-フェニル)-N-エチル-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド;
・ グアニジン類およびその他:グアニジン、ドジン、ドジン遊離塩基、グアザチン、グアザチン-アセテート、イミノクタジン、イミノクタジン-トリアセテート、イミノクタジン-トリス(アルベシレート)、ジチアノン;
(A12) 細胞壁合成阻害剤:
・ グルカン合成阻害剤:バリダマイシン、ポリオキシンB;メラニン合成阻害剤:ピロキロン、トリシクラゾール、カルプロパミド、ジシクロメット、フェノキサニル;
(A13) 植物防御誘導剤:
・ アシベンゾラール-S-メチル、プロベナゾール、イソチアニル、チアジニル、ホスホネート類:ホセチル、ホセチル-アルミニウム、亜リン酸およびその塩;
(A14) 未知の作用機序:
・ ブロノポール、キノメチオネート、シフルフェナミド、シモキサニル、ダゾメット、デバカルブ、ジクロメジン、ジフェンゾコート、ジフェンゾコート-メチルスルフェート、ジフェニルアミン、フェンピラザミン、フルメトベル、フルスルファミド、フルチアニル、メタスルホカルブ、オキシン-銅、プロキナジド、テブフロキン、テクロフタラム、トリアゾキシド、2-ブトキシ-6-ヨード-3-プロピルクロメン-4-オン、N-(シクロ-プロピルメトキシイミノ-(6-ジフルオロ-メトキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-メチル)-2-フェニルアセトアミド、N'-(4-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(4-(4-フルオロ-3-トリフルオロメチル-フェノキシ)-2,5-ジメチル-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(2-メチル-5-トリフルオロメチル-4-(3-トリメチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、N'-(5-ジフルオロメチル-2-メチル-4-(3-トリ-メチルシラニル-プロポキシ)-フェニル)-N-エチル-N-メチルホルムアミジン、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル)-アミド、2-{1-[2-(5-メチル-3-トリフルオロメチル-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-チアゾール-4-カルボン酸メチル-(R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル-アミド、メトキシ-酢酸6-tert-ブチル-8-フルオロ-2,3-ジメチル-キノリン-4-イルエステルおよびN-メチル-2-{1-[(5-メチル-3-トリフルオロ-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-アセチル]-ピペリジン-4-イル}-N-[(1R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル]-4-チアゾールカルボキサミド、3-[5-(4-クロロ-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン、3-[5-(4-メチル-フェニル)-2,3-ジメチル-イソオキサゾリジン-3-イル]-ピリジン(ピリソキサゾール)、N-(6-メトキシ-ピリジン-3-イル)シクロプロパンカルボン酸アミド、5-クロロ-1-(4,6-ジメトキシ-ピリミジン-2-イル)-2-メチル-1H-ベンゾイミダゾール、2-(4-クロロ-フェニル)-N-[4-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-イソオキサゾール-5-イル]-2-プロプ-2-イニルオキシアセトアミド;
よりなる群から選択される少なくとも1種の殺菌剤(化合物A)と、
(B1) 無機肥料:
NPK肥料、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウムアンモニウム、硫酸硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウム;
(B2) 有機肥料:
液肥、半液肥、廐肥および藁堆肥、虫糞、コンポスト、海藻、ならびにグアノ;
よりなる群から選択される少なくとも1種のアンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)と、
を用いて、それぞれの土壌で生育している植物および/または植物が生育しているもしくは植物を生育させようとする場所および/または植物が生育するもとになる種子を処理することを含み、
少なくとも1種の化合物(A)および少なくとも1種の化合物(B)の施用が、少なくとも1日間の時間差をつけて行われる、
土壌からの亜酸化窒素放出の低減方法。
【請求項2】
化合物(A)が、ピラクロストロビン、オリサストロビン、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロブリン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピリベンカルブ、およびトリフロキシストロビンよりなる群から選択されるストロビルリン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物(A)がピラクロストロビンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化合物(A)が、ビキサフェン、ボスカリド、フルキサピロキサド、フルオピラム、イソピラザム、ペンフルフェン、ペンチオピラド、およびセダキサンよりなる群から選択されるカルボキサニリド化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物(A)がフルキサピロキサドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物(A)がボスカリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化合物(A)および化合物(B)の施用の時間差が少なくとも8日間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンモニウム含有肥料または尿素含有肥料(化合物B)が、2-(3,4-ジメチル-ピラゾール-1-イル)-コハク酸、3,4-ジメチルピラゾールホスフェート(DMPP)、ジシアンジアミド(DCD)、1H-1,2,4-トリアゾール、3-メチルピラゾール(3-MP)、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)-ピリジン、5-エトキシ-3-トリクロロメチル-1,2,4-チアジアゾール、2-アミノ-4-クロロ-6-メチル-ピリミジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、2-スルファニルアミドチアゾール、チオウレア、アジ化ナトリウム、アジ化カリウム、1-ヒドロキシピラゾール、2-メチルピラゾール-1-カルボキサミド、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジアミノ-6-トリクロロメチル-5-トリアジン、二硫化炭素、チオ硫酸アンモニウム、トリチオ炭酸ナトリウム、2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラノールメチルカルバメート、およびN-(2,6-ジメチルフェニル)-N-(メトキシアセチル)-アラニンメチルエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の硝化阻害剤(化合物C)と一緒に施用される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ピラクロストロビン、アゾキシストロビン、トリフロキシストロビン、エポキシコナゾール、メトコナゾール、メトラフェノン、フルキサピロキサド、ボスカリド、ビキサフェン、イソピラザム、ペンチオピラド、フルオピラム、およびフェンプロピモルフよりなる群から選択される2種の化合物(A)が施用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ピラクロストロビンとボスカリドとを含む農業化学混合物が化合物(A)として施用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
化合物(A)が種子処理として施用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
化合物(A)が葉面施用および/または畝溝施用として施用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の化合物(A)の施用が反復して行われる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記処理される植物が、農業植物、造林植物、観賞植物、および園芸植物(それぞれその天然形または遺伝子改変形)よりなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記植物が、コムギ、オオムギ、オートムギ、ライムギ、ダイズ、トウモロコシ、セイヨウアブラナ、カノーラ、ヒマワリ、ワタ、サトウキビ、サトウダイコン、イネ、およびソルガムよりなる群から選択される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2013−504609(P2013−504609A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529224(P2012−529224)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063358
【国際公開番号】WO2011/032904
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】