説明

土壌の保水性固化改良剤

【課題】土質を中性域に維持できるので植生に影響することが無いし、植物の成育に好適な団粒化の状態に土壌を改良することができ、しかも添加量は少量で足りるので土壌改良費用を低減できる。また乾燥地や砂漠の緑化や砂の流動防止に有効である土壌の保水性固化改良剤を提供する。
【解決手段】土壌の保水性固化改良剤の主原料は、1種以上の天然鉱物からなる、或いは加熱することにより多孔性を備えてなる多孔質吸着材である。多孔質吸着材は、天然鉱物或いは高温で焼成した炭化物を破砕機により適度の粒径に破砕することで成形してある。この多孔質吸着材に澱粉を原料とする中性保水凝集剤を適量混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、池、河川、海等におけるヘドロの固化処理、或いは乾燥土壌の保水性を高めることによる砂漠の緑化や海岸の砂の流動を防止するのに有効な土壌の保水性固化改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌改良剤としては、セメント系、石灰系を主成分とするもの、石油を原料とする合成高分子ポリマー系のもの、ペーパースラッジ、フライアッシュ、石膏系のものが知られている。
【特許文献1】特開2008−50522号公報
【特許文献2】特開2007−237159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した種々の土壌改良剤のなかで、セメント系や石灰系を主成分とする土壌改良剤は、これを添加した土壌が高アルカリ性に変化し、植物の生育に悪影響を及ぼすという欠点がある。また、土壌のアルカリ化が長期間にわたって周辺に拡大し、土質や水質を変えて周囲の環境に被害を生じさせるという弊害もある。また、土壌の固化に長時間を要するため、乾燥するまでの間に雨水等により溶出し、流出することによる二次汚染が発生するおそれがある。
【0004】
次に、合成高分子ポリマー系の土壌改良剤を使用すると、改良した土壌の透水性が低下して水捌けが悪い土質になるため、植物の根腐れが生じる等、植生に悪影響を及ぼすという問題がある。しかも、高含水率のヘドロの処理は容易ではなく、合成高分子の自然分解も難しいという欠点がある。
【0005】
更に、ペーパースラッジ、フライアッシュ、石膏系の土壌改良剤は、土壌に対して多量の添加量(最大35重量%以上)を必要とするし、原料の搬送コストも嵩み、被処理物の量が増加するという問題がある。また、疎水性が無く、雨水に溶出して流出し易いという欠点がある。
【0006】
更に、従来の固化剤のなかには、有機物質の除臭効果が少ないため、土壌改良剤として適さないというものもある。
【0007】
本発明は従来技術の種々の欠点に鑑みなされたもので、土壌の保水性を高めると共に水の流出を防止するので乾燥地や砂漠の緑化、砂の流動防止に用いて有効であるし、土質のpHを中性域に維持できるので植生に影響することが無く、添加量は少量で足りるので土壌改良費用を低減できる土壌の保水性固化改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために構成された本発明の手段は、1種以上の天然鉱物からなる、又は原料を加熱することにより多孔性を備えてなる多孔質吸着材を主原料とし、これに澱粉を原料とする中性保水凝集剤を混合したものからなる。
【0009】
そして、前記多孔質吸着材は、前記原料を800℃以上の高温で加熱したものであるとよい。
【0010】
また、前記多孔質吸着材は、破砕処理により適度の粒径からなる粒状に形成するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)本発明による土壌の保水性固化改良剤を添加した土壌は、水和反応によって高い保水機能を有するので、乾燥地や砂漠の緑化、砂の流動防止に極めて有効である。
(2)土壌の保水性固化改良剤は、多孔質と水和反応によって浸透性、保水性、保肥性が高い土壌に改良することができる。
(3)土壌の保水性固化改良剤で改良した土壌は、pHを中性域に維持できるので植生に影響を与えることがない。また、環境の二次汚染になる地盤中の水や流出水をアルカリ化することも無い。
(4)疎水性の良い地盤になるから、乾燥前と乾燥後に改良土壌が水に溶けることが無く、土壌の流失を防ぐことができる。
(5)土壌の固化速度が数十秒と速いから、固化作業の効率化を図ることができる。
(6)使用する土壌の保水性固化改良剤は少ない添加量で足りるから、コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。土壌の保水性固化改良剤の主原料は、1種以上の天然鉱物からなる多孔質吸着材からなる。多孔質吸着材は、天然鉱物を破砕機により適度の粒径、0.1〜0.001mmに破砕することにより粒状に成形してある。主材料に多孔質吸着材を用いるのは、それ自体で吸水性、保水性を有するためと、後述する澱粉を担持するためである。
【0013】
また、天然鉱物の他に、木、竹等の原料を800℃以上の高温で加熱して炭化することにより多孔質に成形した多孔質吸着材を用いてもよい。800℃以上の高温で加熱するのは、多孔質に確実に成形することにある。
【0014】
上記主原料の多孔質吸着材に、原料の澱粉を変性澱粉に加工し、この変性澱粉から得た中性保水凝集剤を適量混合する。混合した中性保水凝集剤は土壌中の水分と結合することによって多孔質吸着材の表面に付着し、また多孔に担持される。このように中性保水凝集剤を混合するのは、吸水性と保水性を有するためである。
【0015】
多孔質吸着材に対する中性保水凝集剤の混合割合は、重量比で1/100〜1/5を目安にするとよい。
【0016】
なお、本発明に係る土壌の保水性固化改良剤の使用可能な分野として、池、河川、海におけるヘドロ処理、浚渫土の再利用、作業用仮設道路の固化成形、路床や路盤の固化改良、造成宅地の土質改善、養殖池や蓮池等の堆積汚泥の改質、ベントナイト等産業廃棄物処理等固化と土壌改良、乾燥地や砂漠の緑化、砂地の流動防止等を例示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の天然鉱物からなる、又は原料を加熱することにより多孔性を備えてなる多孔質吸着材を主原料とし、これに澱粉を原料とする中性保水凝集剤を混合してなる土壌の保水性固化改良剤。
【請求項2】
前記多孔質吸着材は、前記原料を800℃以上の高温で加熱したものであることを特徴とする請求項1記載の土壌の保水性固化改良剤。
【請求項3】
前記多孔質吸着材は、破砕処理により適度の粒径からなる粒状に形成してあることを特徴とする請求項1記載の土壌の保水性固化改良剤。

【公開番号】特開2010−47645(P2010−47645A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210957(P2008−210957)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(507342401)
【Fターム(参考)】