説明

土壌処理方法

【課題】汚染土壌を高効率に再使用可能な状態に戻すことが可能であり、処理コストも抑制可能な土壌処理方法の提供を目的とした。
【解決手段】重金属類によって汚染された土壌は、洗浄工程において塩基性の処理水中に投入して洗浄される。また、洗浄工程で処理されたものは、一次分離工程において砂相と水相とに分離される。その後、一次分離工程において分離された水相に酸性の凝集剤が投入されると、水相中に浮遊している土壌の微粒子と共に重金属類が沈降し、ヘドロ状のヘドロ相を形成する。ヘドロ相に含まれている重金属類は、所定の薬剤を投入することにより無害化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類の有害物質により汚染された土壌を無害化する土壌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場跡地等の再開発に伴い、工場における排水の漏洩等により有害物質が土壌中に排出された、いわゆる土壌汚染の存在が明らかになるケースが度々報告されており、問題視されている。
【0003】
そこで、かかる問題に対処すべく、従来より例えば下記特許文献1や特許文献2に開示されているような技術を用いて汚染土壌が処理されている。
【0004】
下記特許文献1に開示されている土壌処理装置は、加熱室に土壌を収容して加熱することにより、土壌に含まれている有機ハロゲン化合物を揮発させ、汚染土壌を処理するものである。また、特許文献2に開示されている土壌処理方法は、先ず汚染土壌を洗浄処理し、これにより得られた脱水ケーキに生石灰などのカルシウム化合物を添加して造粒し、次いでこれを高温の酸化性雰囲気下で加熱処理するものである。
【0005】
ここで、上記した従来技術の土壌処理方法では、汚染土壌中に含まれている汚染物質の処理に際して、土壌に含まれている汚染物質が分解する程度の高温に加熱処理する必要がある。そのため、上記した従来技術によれば、汚染土壌の処理に膨大な熱エネルギーを要するという問題点がある。また、上記したような処理方法では、一度に処理可能な汚染土壌の量も限定され、汚染土壌の処理に膨大な時間を要することとなる。従って、従来技術の土壌処理方法は、処理能力が不十分であり、その分だけ汚染土壌の処理に要する費用も高くなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明者は、下記特許文献3に開示されているような土壌処理装置や土壌処理方法を開発した。これにより、上記した従来技術を用いた場合よりも汚染土壌の無害化に要するエネルギー消費量や費用を抑制でき、汚染土壌の処理能力も格段に向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−35218号公報
【特許文献2】特開2006−43660号公報
【特許文献3】特開2008−119682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、本発明者らが提供した特許文献3に係る土壌処理装置や土壌処理方法は、従来技術の処理装置や処理方法に比べて格段にエネルギー効率や処理費用、処理能力の面で優れたものであったが、さらに効率よく汚染土壌を再使用可能な状態にすることができる土壌処理方法の提供が求められていた。
【0009】
具体的には、従来技術の土壌処理方法によって汚染土壌を処理した場合、第1段階として汚染土壌を水洗すると、もともと溶出している重金属類に加え、土壌に含有されていた重金属類が水相中に洗い出された状態になる。重金属類を確実に無害化するためには、多量の処理水を用いて汚染土壌を水洗することが好ましい。しかし、このようにして処理した場合は、多量の処理水中に洗い出された重金属類を無害化する必要が生じ、多くの薬剤を投入しなければならないため、処理効率が低く、処理コストも高くつくという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、汚染土壌を高効率に再使用可能な状態に戻すことが可能であり、処理コストも抑制可能な土壌処理方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成すべく提供される本発明は、重金属類を含む複数種の有害物質により汚染された土壌を無害化する土壌処理方法であって、重金属類によって汚染された酸性土壌を、塩基性土類を含む塩基性の処理水中に投入して洗浄する洗浄工程と、当該洗浄工程で処理されたものから砂を含む砂相と、主として水からなる水相とに分離する一次分離工程と、当該一次分離工程において分離された水相に酸性の凝集剤を投入する凝集剤投入工程と、当該凝集剤投入工程で処理されたものからヘドロ状のヘドロ相を分離する二次分離工程と、当該二次分離工程において分離されたヘドロ相に所定の薬剤を投入することにより、ヘドロ相に含まれている有害物質を無害化する無害化工程とを有することを特徴とする土壌処理方法である(請求項1)。
【0012】
本発明のように、塩基性の処理水を用いて汚染土壌を洗浄する洗浄工程を設けることで、砂相から水相中に重金属類が洗い出される。その結果、砂相に残る重金属類の量がきわめて少なくなり、場合によっては砂相中に含まれていた重金属類が溶出したり、砂相中に含有されていた重金属類の量が減少したりして再生利用可能な程度まで無害化された状態になる。そのため、本発明の土壌処理方法によれば、洗浄工程および一次分離工程を経て得られる砂相の無害化処理が容易に行える。
【0013】
洗浄工程において塩基性の水相に重金属類が洗い出された後、凝集剤投入工程において酸性の凝集剤を投入すると、塩基性の処理水が凝集剤と反応して中和される。また、これとともに、塩基性の処理水中に溶出している重金属類が、処理水が中和へと向かう途中で化学反応を起こし、水酸化物(金属塩)となって土の微粒子とともに沈降し、ヘドロ状になる。そのため、凝集剤投入工程の後、ヘドロ状になったヘドロ相に重金属類が濃縮された状態で含まれることになる。従って、本発明の土壌処理方法では、二次分離工程においてヘドロ相を分離した後、無害化工程においてヘドロ相の中に所定の薬剤を投入することにより汚染土壌中に含まれていた重金属類を無害化でき、処理効率が高い。また、ヘドロ相中に重金属類が濃縮された状態で薬剤を投入して無害化するため、薬剤を重金属類と有効に反応させることが可能となり、無害化処理に要する薬剤の量を最小限に抑制することができる。
【0014】
本発明の土壌処理方法は、二次分離工程において分離されたヘドロ相に含まれている重金属類の濃度を分析するヘドロ相分析工程を有し、当該ヘドロ相分析工程において検出された重金属類の濃度が所定の基準含有濃度A以上であることを条件として、無害化工程に先立って酸洗工程が実施され、当該酸洗工程において、ヘドロ相が酸性条件下で洗浄されることを特徴とするものであることが好ましい(請求項2)。
【0015】
本発明の土壌処理方法のように、二次分離工程において得られたヘドロ相中に含まれている重金属類の濃度が基準含有濃度A以上の濃度である場合に、無害化工程において薬剤を投入する前に、酸洗工程において酸性条件下でヘドロ相を洗浄することにより、含有されている重金属類を溶出させ、土壌に含有されている重金属類の含有濃度を所定の基準値内に納めることが可能となる。さらに、この結果として水相中に溶出した重金属類については、薬剤を用いて処理することで所定の基準値内に収まるよう濃度を抑制することが可能である。そのため、二次分離工程において得られたヘドロ相中に含まれている重金属類の濃度が基準含有濃度A以上の濃度に達している場合であっても、これを効率よく無害化し、再利用可能な状態に復元させることが可能となる。
【0016】
ここで、上記したようにヘドロ相分析工程において検出された重金属類の含有濃度が、基準含有濃度A以上である場合に、酸洗工程を経た後に処理工程を無害化工程に進めることとすれば、汚染土壌の無害化処理の処理効率を向上させることが可能である。しかし、ヘドロ相に含まれている重金属類の含有濃度が極度に高い場合は、処理効率や処理コストの観点からすると、ヘドロ相に含まれている重金属類を無害化して再利用するよりも、そのまま廃棄処分する方が効率的である場合がある。かかる知見に基づけば、ヘドロ相分析工程において検出された重金属類の濃度が、基準含有濃度A以上に設定された所定の基準濃度B以上であることを条件として、ヘドロ相を廃棄処分することが望ましい(請求項3)。
【0017】
本発明の土壌処理方法は、一次分離工程において分離された砂相に含まれている重金属類の濃度を分析する砂相分析工程を有し、当該砂相分析工程において検出された重金属類の溶出濃度及び含有濃度が所定濃度以上であることを条件として、無害化工程に先立って酸洗工程が実施され、当該酸洗工程において、砂相が酸性条件下で洗浄されるものであってもよい(請求項4)。
【0018】
上述した二次分離工程において得られたヘドロ相中に含まれている重金属類を無害化する場合と同様に、一次分離工程において得られた砂相に含まれている重金属類を無害化する場合についても、砂相に含まれている重金属類の溶出濃度及び含有濃度が所定濃度以上の濃度である場合は、無害化工程に移行する前に、酸性条件下で砂相を洗浄する酸洗工程を経ることにより、含有されている重金属類を溶出させ、含有濃度を基準値内に抑制することが可能となる。また、酸洗工程を行うことにより水相中に溶出した重金属類については、薬剤等によって処理することが可能となり、水相中の重金属類も容易に基準値内に抑制することが可能となる。そのため、一次分離工程において得られた砂相中に含まれている重金属類の溶出濃度及び含有濃度が所定濃度以上の濃度に達している場合であっても、砂相に含まれている重金属類を効率よく無害化することができる。
【0019】
ここで、上記したような本発明の土壌処理方法により重金属類によって汚染処理された土壌の処理を行う場合において、処理対象である土壌にヘドロ状の成分が多く含まれているときは、一連の処理により得られる再使用可能な土壌の量が少なくなる。すなわち、処理対象である土壌にヘドロ状の成分が多く含まれているときは、歩留まりが悪く、汚染土壌の処理コストも高くついてしまう可能性がある。
【0020】
かかる知見に基づけば、本発明の土壌処理方法は、洗浄工程の前に、重金属類によって汚染された土壌に含まれるヘドロ状の成分の量を判別する原料判別工程があり、当該原料判定工程においてヘドロ状の成分の含有量が、所定の含有率E未満であることを条件として、重金属類によって汚染された土壌が洗浄工程により処理されるものであることが好ましい(請求項6)。
【0021】
かかる処理方法によれば、汚染土壌の無害化処理の歩留まりをより一層向上させ、処理コストをより一層抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の土壌処理方法は、洗浄工程で使用される塩基性の処理水として、塩基性の工業廃水を使用することが可能である(請求項7)。
【0023】
このように、洗浄工程において工業廃水を洗浄工程に用いる塩基性の処理水として使用すれば、工業廃水を有効利用できる。さらに、このようにして工業廃水を利用すると、従前は別途中性化して処分しなければならなかったものをそのまま使用できるため、工業廃水の中性化に要する手間やコスト、エネルギー等を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、汚染土壌を高効率に再使用可能な状態に戻すことが可能であり、処理コストも抑制可能な土壌処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の土壌処理方法を実施するための土壌処理プラントの一例を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る土壌処理方法を示すフローチャートである。
【図3】処理装置およびエアリフトポンプの構成を示す断面図である。
【図4】実験例3に係る実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
続いて、本発明の一実施形態に係る土壌処理方法について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の土壌処理方法は、重金属類によって汚染された汚染土壌を無害化するためのものであり、例えば図1に示す土壌処理プラント10のようなものを用いて実施することができる。土壌処理プラント10は、原料選別手段20や、洗浄手段30、凝集手段40、酸洗手段50、無害化処理手段60を有する。また、土壌処理プラント10は、一次分離手段70aや、二次分離手段70bも備えている。
【0027】
原料選別手段20は、汚染土壌が、本実施形態で示す土壌処理方法に適したものであるか否かを判定し、選別するものである。具体的には、原料選別手段20では、汚染土壌に含まれているヘドロ状のもの(以下、「ヘドロ成分」とも称す)が水洗いによって分別され、ふるい分けされる。原料選別手段20では、ヘドロ成分(粒径0.1[mm]以下でコンクリート用再生骨材として使用できない成分)の含有率E(ふるい分け比率)の高低によって以下に示す土壌処理方法による処理に適したものであるか否かが判断される。
【0028】
ここで、上述した含有量Eを高く設定しすぎるとヘドロ成分が多く、再使用可能な状態に戻った土壌(以下、再生土壌とも称す)の量が少なくなる。すなわち、含有率Eを高くしすぎると、再生土壌の歩留まりが低くなる。そのため、含有率Eは、0[%]〜30[%]の範囲で設定されることが好ましく、0[%]〜25[%]の範囲で設定されることが好ましい。本実施形態では、原料選別の基準となる含有率Eが30[%]に設定されており、汚染土壌全体に対してコンクリート用再生骨材として使用可能な程度に粒度の大きな土壌の構成比(粒度構成比)が高く、ヘドロの量が30[%]以下のものについてのみ、以下に示す処理方法で処理することが望ましい。
【0029】
洗浄手段30は、上記した原料選別手段20で選別された汚染土壌を塩基性の処理水と共に混合して洗浄するために設けられたものである。洗浄手段30において使用する処理水は、pH=9〜13の範囲のものが好ましく、pH=10〜12の範囲のものが好ましい。本実施形態では、pH=10〜12程度の処理水が、洗浄手段30において使用される。また、洗浄手段30で使用する処理水には、例えばセメント工場などにおいて発生した排水などを用いることが可能である。
【0030】
また、洗浄手段30は、洗浄効果を高めるべく、汚染土壌を処理水中において撹拌可能な撹拌手段を設けたものであることが好ましい。具体的には、洗浄手段30は、別途設けられた動力源から動力を受けて作動する撹拌翼や、処理水中に空気などの気体を吹き込むことで撹拌可能なものなどを撹拌手段として備えていることが好ましい。
【0031】
凝集手段40は、洗浄手段30での処理後に得られる水相部分に凝集剤を投入して処理するためのものである。凝集手段40は、洗浄手段30から取り出された水相部分を貯留するための槽や、次工程に送るための流路系統などに凝集剤を投入するための薬剤投入手段を備えたものとすることができる。
【0032】
酸洗手段50は、後に詳述する一次分離手段70aにより洗浄手段30から取り出された砂相や、後に詳述する二次分離手段70bによって取り出されたヘドロ相を酸性条件下にさらす酸洗工程を実施するために設けられたものである。酸洗手段50は、酸が投入されるものであるため、酸にさらされる部分が防錆特性に優れた材質で形成されていることが好ましい。また、酸洗工程の効果を十分発揮させるべく、酸洗手段50は、上述した洗浄手段30と同様に砂相やヘドロ相を撹拌可能な撹拌手段設けたものであることが好ましい。具体的には、酸洗手段50は、撹拌翼を設けたり、気体の吹き込み可能な構成とすることにより、砂相やヘドロ相を撹拌可能とすることが好ましい。
【0033】
無害化処理手段60は、一次分離手段70aで得られた砂相や、二次分離手段70bで得られたヘドロ相、酸洗手段50で酸洗された砂相、ヘドロ相などに対して薬剤を投入し、これらに含まれている重金属類を無害化するためのものである。
【0034】
一次分離手段70aは、洗浄手段30で洗浄された処理水と汚染土壌との混合物を、砂を含む砂相と、主として水及びヘドロの混合体からなる相(以下、水相とも称す)とに分離するものである。一次分離手段70aは、洗浄手段30を構成する機材にその機能を持たせたものであってもよく、洗浄手段30とは別に設けられたものであってもよい。
【0035】
具体的には、洗浄手段30で汚染土壌を洗浄した場合、その後静置しておけば処理水と汚染土壌との混合物は、やがて洗浄手段30を構成する槽内において砂相と水相とに分離される。そのため、洗浄手段30を構成する槽から水相部分をくみ出す装置を設け、これによって一次分離手段70aを構成することも可能である。また、洗浄手段30を構成する槽の底部に砂相を排出可能な弁などを設けることにより、この弁に一次分離手段70aとしての機能を持たせることも可能である。さらに、一次分離手段70aとして、洗浄手段30で洗浄された後に得られる処理水と汚染土壌との混合物を受け入れる槽や分離装置などを設け、洗浄手段30とは別個の一次分離手段70aを設けた構成とすることも可能である。
【0036】
二次分離手段70bは、凝集手段40において凝集剤を投入することによって形成されるヘドロ状のもの(以下、「ヘドロ相」とも称す)と、水相とに分離するためのものである。二次分離手段70bは、上記した一次分離手段70aと同様のものによって構成することができる。具体的には、二次分離手段70bは、シックナーなどによって構成することが可能である。
【0037】
続いて、本実施形態の土壌処理方法について、図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する。本実施形態の土壌処理方法では、先ずステップ1において採取現場からトラックなどによって原料選別手段20に搬入された汚染土壌に含まれているヘドロ成分の量が判別される(原料判別工程)。この原料判別工程において、ヘドロ成分の量が、汚染土壌の全体に対して粒度構成比で所定の含有率E[%](Eについては適宜設定可能。本実施形態では、E=30[%]に設定)以上含まれている場合は、十分な歩留まりが得られず、処理コストが高くつく可能性がある。そこで、ステップ1でヘドロ成分の含有率がE[%]以上である場合は、図2に示す処理フローが完了する。
【0038】
一方、ステップ1においてヘドロ成分がE[%]未満である場合は、処理フローがステップ2の一次洗浄工程に移行する。洗浄工程では、原料選別手段20において選別された土壌が洗浄手段30に準備された塩基性の処理水中に投入され、洗浄される。これにより、汚染土壌に含有されている重金属類が、処理水中に溶出する。洗浄工程において汚染土壌が所定時間にわたって洗浄されると、処理フローがステップ3の一次分離工程に進む。
【0039】
一次分離工程は、一次分離手段70aにおいて実施され、ステップ2の洗浄工程で処理された土壌と処理水との混合物を、砂を含む砂相と、主として水及びヘドロ相の混合体からなる相(水相)とに分離することが可能である。ここで分離された砂相は、図2のステップ4〜ステップ11に示す処理フローに則って処理される。一方、水相は、図2のステップ12〜ステップ24に示す処理フローに則って処理される。
【0040】
具体的には、ステップ3の一次分離工程で分離された砂相は、ステップ4の砂相分析工程において、重金属類の溶出量及び含有量についての分析を受ける。この結果、砂相に含まれている重金属類の濃度が、土壌として採取現場に埋め戻す等して良いとされる濃度P(基準値)以下の低濃度である場合は、処理フローがステップ5を経てステップ11に至り、再生土壌として利用される。ここで、濃度Pは、あらかじめ設定された値であり、下記の表1のように決定されている。
【表1】

【0041】
これに対し、ステップ4の砂相分析工程において、重金属類の溶出濃度及び含有濃度が上述した濃度P(基準値)よりも高く所定濃度未満の濃度である場合、すなわちそのまま採取現場に埋め戻すには重金属類の濃度が高いが、重金属類を無害化可能な薬剤を投入すれば効率よく無害化可能な程度の濃度である場合には、処理フローがステップ6を経てステップ9の無害化工程に至る。この場合は、一次分離手段70aで分離された砂相が、重金属類を無害化するための薬剤とともに無害化処理手段60に投入される。その後、ステップ9の無害化工程は、ステップ10において砂相に含まれている重金属類の濃度が基準値(濃度P)以下であることが確認されるまで実施される。ステップ10において、重金属類の濃度が濃度P以下になったことが確認されると、処理フローがステップ11に進み、再生土壌として利用することができる。
【0042】
また、ステップ4の砂相分析工程において、重金属類の溶出濃度及び含有濃度が高濃度であり、ステップ9の無害化工程においても重金属の含有量が基準値(濃度P)以下にならないと判断された場合、若しくはこのままステップ9の無害化工程で重金属類の無害化を行うと処理効率が低くなるおそれがある場合には、処理フローがステップ7を経てステップ8に至り、酸洗手段50において酸洗される。具体的には、一次分離手段70aで分離された砂相が、酸洗手段50に投入され、酸性条件下で洗浄される。これにより、重金属類の含有濃度が高い汚染土壌が酸性条件下で洗浄され、汚染土壌に含有されている重金属類を溶出させ、無害化工程での処理により容易に重金属類の含有濃度を基準値(濃度P)内に抑制することができる状態になる。すなわち、無害化作業における処理対象を水中に溶出した重金属類とすることができ、土壌に含有された状態の重金属類を無害化する場合よりも容易に無害化することができる状態になるといった効果が得られる。ステップ8の酸洗工程が終了すると、上述したのと同様にしてステップ9の無害化工程において重金属類が無害化される。その後、ステップ10において重金属類の濃度が濃度P以下になったことが確認されると、処理フローがステップ11に進み、砂相が再生土壌として再利用される。
【0043】
一方、上述したステップ3の一次分離工程において分離された水相には、砂相側に沈降せず浮遊している土壌の微粒子だけでなく、重金属類が多く含まれている。また、ステップ2において使用された処理水が塩基性であるため、ステップ3で分離された水相についても塩基性である。そこで、ステップ3において分離された水相を凝集手段40に移すとともに、ステップ12の凝集剤投入工程において凝集手段40に酸性の凝集剤を投入すると、水相中に浮遊している土壌の微粒子が凝集して沈降する。またこの際、土壌の沈降とともに、水相中に洗い出されている重金属類についても水酸化物(金属塩)となって沈降する。具体的には、水相中に洗い出されて浮遊している重金属類は、中和へと向かうpH=8〜9の領域において化学反応を起こし、水酸化物となって沈降する。
【0044】
ここで、ステップ12で投入される凝集剤は、pH=3〜8の範囲内のものであることが好ましく、pH=3〜4の範囲内のものであることがより一層好ましい。
【0045】
上記したようにしてステップ12において凝集剤が投入された後、しばらく静置すると、処理フローがステップ13に進む。ステップ13は、二次分離手段70bによって土壌や重金属類の水酸化物(金属塩)などからなるヘドロ相と、水相とに分離する二次分離工程である。ステップ13の二次分離工程において分離された水相には、重金属類がほとんど含まれていない。そのため、水相については、ステップ25において本実施形態で使用される水(再生水)として再利用される。
【0046】
一方、ステップ13の二次分離工程において分離されたヘドロ相には、重金属類が濃縮された状態で含まれており、これを無害化することができれば、ヘドロ相をなす土壌を再生土壌として利用できる。そこで、ステップ14のヘドロ相分析工程では、ヘドロ相を無害化する上で最適な方法を選定すべく、ヘドロ相中に含まれている重金属類の濃度が確認される。
【0047】
ステップ14でヘドロ相に含まれている重金属類の濃度が分析された結果、実験などによって定められた所定の基準含有濃度A未満である場合は、このまま上述したステップ9と同様に薬剤を投入するだけでヘドロ相に含まれている重金属類を効率よく無害化できる。そこでこの場合は、処理フローがステップ15を経て直接ステップ16の無害化工程に至り、ステップ9と同様にして重金属類が無害化される。無害化工程は、ステップ17において重金属類の濃度が土壌を採取現場に埋め戻すなどして再利用しても問題ないレベル(濃度P)以下に達したことが確認されるまで実施される。ステップ17において、重金属類の濃度が濃度P以下になったことが確認されると、処理フローがステップ18に進みセメント固化され、ステップ19において再生土壌として利用される。
【0048】
これに対し、ステップ14での分析の結果、ヘドロ相に含まれている重金属類の濃度が所定の基準含有濃度A以上B未満である場合は、ステップ16で薬剤を投入して無害化する前に、ステップ8で行ったのと同様に酸洗手段50においてヘドロ相をいったん酸洗する方が、ステップ16の無害化工程が高効率に行え、薬剤の使用量を削減できる可能性が高い。そこでこの場合は、処理フローがステップ20を経てステップ21に至り、ヘドロ相が酸洗手段50において酸洗される。その後、処理フローがステップ16およびステップ17に進み、ヘドロ相に含まれている重金属類の濃度が基準値(濃度P)以下になるまで無害化される。無害化された土壌は、ステップ18においてセメント固化された後、ステップ19において再生土壌として利用される。
【0049】
また、ステップ14でヘドロ相に含まれている重金属類の濃度分析を行った結果、基準濃度B以上の高濃度であることが判明した場合(ステップ22)は、このヘドロ相を無害化するために多量の薬剤を要したり、多量の薬剤を投入しても土壌を再使用可能な程度まで重金属類を無害化できない可能性がある。そこでこの場合は、ステップ23において脱水されケーキ状とされた後、ステップ24において廃棄される。
【0050】
上記したように、本実施形態の土壌処理方法では、重金属類を無害化するための薬剤を投入する工程(無害化工程)よりも前に、洗浄工程において塩基性の処理水中に汚染土壌を投入して洗浄することにより砂相から水相中に重金属類を洗い出した後、一次分離工程において比較的処理のしやすい砂相と、重金属類が多量に浮遊している水相とに分類している。そのため、洗浄工程および一次分離工程を経て得られる砂相を容易に無害化処理し、再生土壌として利用することができる。
【0051】
また、洗浄工程において塩基性の水相に重金属類が洗い出された後、凝集剤投入工程において酸性の凝集剤を投入すると、塩基性の処理水に溶出している重金属類が水酸化物(金属塩)となり、土の微粒子とともに沈降する。そのため、上記した土壌処理方法によれば、凝集剤投入工程の後、二次分離工程において得られたヘドロ相に重金属類が濃縮されたような状態になっている。よって、本実施形態の土壌処理方法では、二次分離工程により得られたヘドロ相に対して重金属類を無害化するための薬剤を投入することにより、汚染土壌中に含まれていた重金属類の大半を無害化でき、処理効率が高い。また、本実施形態の土壌処理方法は、重金属類を無害化処理の処理効率が高い分、これに要する薬剤の量や処理コストも最小限に抑制できる。
【0052】
また、上記実施形態で示した土壌処理方法では、一次分離工程で得られた砂相や、二次分離工程において得られたヘドロ相について、これに含まれている重金属類の濃度を砂相分析工程やヘドロ相分析工程において分析している。また、これらの分析を行った結果、砂相やヘドロ相に含まれている重金属類の濃度が高い場合は、酸洗工程において酸洗手段50により砂相やヘドロ相を酸洗し、無害化しやすい状態にしてから無害化工程において薬剤を投入して無害化している。そのため、上記実施形態に示した土壌処理方法によれば、仮に砂相やヘドロ相に含まれている重金属類の濃度が高い場合であっても、効率よく無害化することができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、砂相分析工程やヘドロ相分析工程を設け、必要に応じて酸洗工程を実施して処理工程全体の効率化を図っているが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、砂相分析工程やヘドロ相分析工程、酸洗工程を設けず、砂相やヘドロ相に含まれている重金属類の濃度にかかわらず重金属類の濃度が濃度P以下になるまで無害化工程を実施することとしてもよい。また、砂相分析工程やヘドロ相分析工程を設けず、砂相やヘドロ相に含まれている重金属類の濃度にかかわらず酸洗工程を実施した後、重金属類の濃度が濃度P以下になるまで無害化工程を実施することとしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態で示した土壌処理方法では、二次分離工程において分離されたヘドロ相に含まれている重金属類の濃度がきわめて高い場合に、これを無害化工程に回さず、廃棄することとしている(ステップ22〜ステップ24参照)。そのため、上記した土壌処理方法によれば、ヘドロ相に含まれている重金属類を無害化するために大量の薬剤を要し、かえって処理コストが高くなると想定される場合に、これを回避することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、処理コストや処理効率の観点から、ヘドロ相中に含まれている重金属類の濃度がきわめて高い場合に、廃棄処分することとしているが、本発明はこれに限定されず、重金属類の濃度が高い場合であっても酸洗工程を経て無害化工程で無害化することとしたり、酸洗工程を経ることなく無害化工程で無害化することとしてもよい。また、上記実施形態では、廃棄処分の方法の一例としてセメントにより固化する方法を示したが、本発明はこれに限定されず、他の方法で廃棄処分することとしてもよい。
【0056】
上記実施形態で示した土壌処理方法では、洗浄工程以下の処理工程において汚染土壌の処理を行うより前に、土壌処理プラント10に搬入されてきた汚染土壌に含まれているヘドロ状の成分の含有量を確認し、洗浄工程以降の処理を実施するか否かを確認することとしている(ステップ1参照)。そのため、上記した土壌処理方法によれば、搬入されてきた汚染土壌にヘドロ状の成分が多く含まれており、歩留まりが悪く処理コストが高くつくと想定される場合に、洗浄工程以降の処理工程で処理してしまうのを回避できる。
【0057】
なお、上記実施形態では、汚染土壌に含まれているヘドロ状の成分のふるい分け比率を基準として洗浄工程以降の処理工程で処理することによる歩留まりや処理コストを判断することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の判定基準を設け、これに基づいて歩留まりなどを想定した上で洗浄工程以降の処理工程で処理を行うか否かを判定することとしてもよい。また、ステップ1に示したような判定を行わず、いかなる汚染土壌についても洗浄工程以降の処理工程により処理することとしてもよい。
【0058】
上記実施形態で説明したように、洗浄工程で使用されるアルカリ土類金属を含む塩基性の処理水として、塩基性の工業廃水を使用した場合は、本来であれば別途中和して排出すべき工業廃水をそのまま有効利用できる。具体的には、前述したような塩基性の工業廃水には、コンクリート廃材から再生骨材を生産するためのプラントにおいて発生する廃水を好適に使用できる。そのため、これによれば、洗浄工程で使用するために塩基性の処理水を調製する手間や費用が省けるばかりか、工業廃水の中和処理などに要する手間や費用、エネルギーなども削減することができる。
【0059】
また、土壌処理プラント10には、現行の再生骨材製造用のプラントを併用することが可能である。このようにすることにより、廃液として発生たアルカリ水を循環使用することができ、汚染土壌を有効に洗浄することができる。
【実施例1】
【0060】
続いて、上記実施形態に示した土壌処理プラント10の具体的な実施例について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施例の土壌処理プラント10は、原料選別手段20や、洗浄手段30、凝集手段40、酸洗手段50、無害化処理手段60を有する。また、土壌処理プラント10は、洗浄手段30で処理されたものを砂相と水相とに分離する一次分離手段70aや、凝集手段40で処理されたものをヘドロ相と水相とに分離する二次分離手段70bも備えている。土壌処理プラント10は、これらのうち洗浄手段30や、酸洗手段50、無害化処理手段60のそれぞれを図3に示すような処理装置80によって構成することができる。また、一次分離手段70aや二次分離手段70bについては、図3において処理装置80内に設置された排出ポンプ96やエアリフトポンプ100によって構成することができる。以下、処理装置80や排出ポンプ96、エアリフトポンプ100の構成について具体的に説明する。
【0061】
処理装置80は、処理槽82により主要部が構成されている。処理槽82は、上方に向けて開口した槽状のものであり、汚染土壌や、処理水などを投入可能することができる。処理槽82の底部側には、気体導入手段84が設けられている。気体導入手段84は、空気等の気体を加圧状態で噴出可能なノズルによって構成されている。そのため、気体導入手段84により処理槽82の内部に投入されている混合物や処理水中に気体を噴出させることができる。本実施形態では、気体導入手段84により、処理槽82の内部に空気を7気圧〜12気圧の範囲で調整して噴出できる構成とされている。
【0062】
処理槽82の底部には、排出口86が設けられている。また、処理槽82の底部は、排出口86に向けて下り勾配がついた形状とされている。排出口86には、排出管88が接続されており、この排出管88の中途に設けられた弁90を開くことにより処理槽82内の残留物を排出できる。
【0063】
処理装置80は、給水栓92を有し、これを開栓することにより図示しない給水源から処理槽82に対して処理水を供給することができる。また、処理装置80には、薬剤供給手段94が設けられており、これを介して図示しない薬剤供給源から供給される薬剤を処理槽82に投入可能することができる。さらに、処理装置80には排出ポンプ96が設けられている。排出ポンプ96は、フロートが取り付けられており、吸い込み口を下方に向けた状態で水面に浮かぶ構成とされている。そのため、排出ポンプ96を作動させると、処理槽82内にある液相部分を吸い出し、排出することが可能である。
【0064】
エアリフトポンプ100は、処理槽82内に存在するものを吸い上げ、次工程に移送するためのものである。エアリフトポンプ100は、処理槽82内にある液相部分だけでなく、土壌やヘドロのようなものまで圧送できる。図3に示すように、エアリフトポンプ100は、屈曲した管路によって主要部が構成される本体部102と、高圧水導入手段104と、気体導入管106と、薬剤投入手段108とを有する。エアリフトポンプ100は、本体部102の一端側が処理槽82の底部側に向けて開口し、他端側が処理槽82の外側に向けて突出するように配されている。
【0065】
さらに具体的には、本体部102は、流動部102aと、流入部102bと、流出部102cとを有する。図3に示すように、流動部102aは、上下方向にほぼ垂直に立ち上がった部分であり、本体部102の主要部をなす。流入部102bは、本体部102への入口側の部分であり、流動部102aの下端側の位置に連続している。また、流出部102cは、本体部102の出口側の部分であり、流動部102aの上端側の位置に連続している。本体部102は、流動部102aと流入部102bとを繋ぐ部分が屈曲した形状とされており、流入部102bの端部が処理槽82の底部側に向くように設置されている。また、本体部102は、上端部が処理槽82の上端よりも上方に突出するように設置されている。
【0066】
流入部102bの端部は、本体部102内に処理槽82内に存在している土壌等を吸い込むための吸い込み口として機能する。本体部102は、流入部102bの端部が処理槽82の底面の略中央に相当する位置に存在し、底面から少し上方に離れた状態となるように設置されている。
【0067】
流出部186は、本体部102の上端側に繋がる部位である。本体部186と流出部186との境界部分は、本体部102と流入部102bとの境界部分と同様に屈曲した形状とされている。流出部186の末端部分は、流入部102bから流入した土壌等を排出するための排出口として機能する部分であり、処理槽82の外側に向いている。
【0068】
高圧水導入手段104は、流動部102aの軸方向、すなわち流動部102aの底部側から頂部側に向けて給水源から供給された水を高圧で噴出可能なものである。また、高圧水導入手段104の中途には、気体導入管106が接続されている。高圧水導入手段104は、本体部102において流動部102aと流入部102bとの合流点よりも流動部102aの上流側(図3の設置状態において下方側)の位置から気体を導入可能とされている。
【0069】
エアリフトポンプ100は、高圧水導入手段104を介して本体部102の底部側から頂部側に向かう方向に高圧(5〜250Kg/cm2程度)で水を導入することにより本体部102の流入部102bから処理槽82内に存在する土壌等を吸い込み、流動部102aの底部側から頂部側に向けて圧送することができる。さらに詳細に説明すると、エアリフトポンプ100において高圧水導入手段104を用いて水を高圧状態で流動部102aに導入すると、この高圧状態の水の境界面あるいはこの近傍に負圧の部分が発生する。そのため、高圧水導入手段104から流動部102a内に高圧状態で水を噴出すると、気体導入管106から空気が吸入され、流動部102a内を流れる水が空気と混じった混気状態となる。
【0070】
また、混気状態で高圧の水が流動部102a内に噴出することにより、上記した流入部102bの内部がほぼ真空状態となり、流入部102bの末端部分から処理槽82内に存在する土壌等が吸い込まれる。流入部102bから吸い込まれた土壌等は、流動部102a内を流動し、高圧水導入手段104から導入された水等と共に流動部102aの頂部側に向けて流れた後、流出部102cを介して処理槽82の外側に排出される。このように、エアリフトポンプ100は、高圧水導入手段104を介して高圧状態で水を供給することにより、処理槽82内に存在する土壌等を吸い上げ、外部に取り出すことができる。
【0071】
上記した処理装置80を、土壌処理プラント10の洗浄手段30として用いる場合は、原料選別手段20で選別された汚染土壌が処理槽82内に投入される。また、処理槽82には、給水栓90を介して塩基性の処理水が投入される。上述した洗浄工程(図2のステップ2参照)は、汚染土壌と処理水とが処理槽82内に投入された状態で気体導入手段84により空気などの気体を導入することにより実施される。これにより、汚染土壌が処理水中で十分混合し、汚染土壌中に含まれている重金属類を処理水中に洗い出すことができる。
【0072】
また、上述した酸洗手段50を処理装置80によって構成する場合は、一次分離手段70aによって取り出された高濃度の重金属類を含む砂相や、二次分離手段70bによって取り出された中濃度の重金属類を含むヘドロ相が処理槽82内に投入される(図2のステップ8,ステップ20参照)。また、処理装置80を酸洗手段50として利用する場合は、薬剤供給手段94により酸性の薬剤が処理槽82内に投入される。この状態において気体導入手段84により空気などの気体を吹き込むと、処理槽82内にある砂相やヘドロ相が十分酸にさらされた状態になる。酸洗工程を経た砂相やヘドロ相は、エアリフトポンプ100を用いて取り出し、次工程に移すことができる。
【0073】
無害化処理手段60として処理装置80を採用する場合は、一次分離手段70aによって分離された中濃度の重金属類を含む砂相や、二次分離手段7bによって分離された低濃度の重金属類を含むヘドロ相、酸洗手段によって処理された砂相、ヘドロ相などが処理槽82に投入される。無害化処理手段60として処理装置80を用いる場合は、薬剤供給手段94により重金属類を無害化するための薬剤が投入される(図2のステップ9,ステップ16参照)。また、これと共に、気体導入手段84により空気などの気体が吹き込まれる。これにより、砂相やヘドロ相などに含まれている重金属類と薬剤とが十分反応し、無害化される。
【0074】
上述したように、処理槽82内に設置された排出ポンプ96や、エアリフトポンプ100は、一次分離手段70aとして活用することができる。具体的には、洗浄部30において汚染土壌の洗浄を行ってからしばらく静置すると、処理槽82内に投入されているものが砂相と水相とに分離する。このようにして砂相と水相とに分離した後、洗浄部30として採用されている処理装置80に設置されている排出ポンプ96を作動させると、処理槽82から水相を取り出すことができる。また、エアリフトポンプ100を作動させると、処理槽82内にある砂相が流入部102bから本体部102内に吸い込まれ、流出部102cを介して排出させることが可能である。
【0075】
同様に、排出ポンプ96や、エアリフトポンプ100は、二次分離手段70bとしても活用することができる。すなわち、凝集手段40として処理装置80を採用した場合において、処理槽82に凝集剤を投入してからしばらく静置すると、処理槽82内において土壌や重金属類の微粒子が沈降し、ヘドロ相と水相とに分離した状態になる。この状態において、凝集手段40として使用されている処理装置80に対して設置されている排出ポンプ96を作動させると、処理槽82から水相を取り出すことができる。また、エアリフトポンプ100を作動させると、処理槽82内に沈降しているヘドロ相が本体部102内に吸い上げられ、流出部102cから排出される。
【実施例2】
【0076】
重金属類を含む土壌の洗浄用として用いる水の特性が、重金属類の溶出に与える影響を調べるべく行った実験例について説明する。
本実施例では、人工的に作成した人工汚染土壌を用い、実験を行った。人工汚染土壌の作成方法及び、実験方法について以下に詳述する。
【0077】
(人工汚染土壌の作成方法)
土壌として花崗岩風化土(マサ土)10[kg]を用いた。また、汚染物質として硝酸鉛(PbNO32を用いた。人工汚染土壌は、硝酸鉛9[g]を200[ml]の水に水溶させたものを前記土壌2[Kg]にふりかけて予備乾燥したものを、別途準備した8[Kg]の土壌と混合攪拌することにより準備された。
【0078】
上述したようにして作成された人工汚染土壌200[g]を200[ml]の塩基性の水に投入したもの(サンプルA)と、人工汚染土壌200[g]を200[ml]の水道水に投入したもの(サンプルB)とを試料として用いた。塩基性の水には、セメント工場において発生した工業用水が用いられ、pHが10〜12の範囲内にある。
【0079】
本実験は、下記1)〜5)に示すようにして実施される。
1)サンプルA,Bを5分間攪拌する。
2)1)の工程の後、凝集剤を投入し、5分間沈降させる。
3)上記1),2)の工程を2回実施する。
4)3)で実施された2回の実験につき、それぞれ水相及びヘドロ相を3検体ずつ採取する。
5)4)で採取された水相及びヘドロ相について、硝酸鉛の溶出量を分析する。
【0080】
上記した実験結果は、下記表2及び表3の通りであった。表2及び表3に示すように、処理水として水道水を用いた場合に比べ、塩基性の水(アルカリ水)を用いた場合の方が、処理水中及びヘドロ中への硝酸鉛の溶出量が高くなることが判明した。すなわち、塩基性の水を処理水として用いた場合の方が、人工土壌中に含ませた汚染物質(硝酸鉛)が溶出しやすいことが判明した。従って、塩基性の水を処理水として用いれば、効率よく汚染物質を溶出させ、土壌を無害化できることが判明した。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【実施例3】
【0083】
上記実験例2で実験に用いた人工汚染土壌を試料として使用し、処理水を用いて水洗することによる効果を確かめるための試験を行った。実験前において、試料として用いた人工汚染土壌における鉛(Pb)の溶出量は1.93[mg/l]であり、鉛(Pb)の含有量は660[mg/Kg]であった。
【0084】
(実験方法)
攪拌用の容器内に試料となる人工汚染土壌を200[g]と、200[ml]の蒸留水を入れ、これを振とう器にかけることにより人工汚染土壌を水中において攪拌した。すなわち、人工汚染土壌及び蒸留水を、重量比で1:1となるように容器に入れて実施された。また、攪拌作業は繰り返し実施された。具体的には、攪拌作業を所定の攪拌時間だけ行った後、3分間静置して土壌を沈降させ、その後容器から上澄み液を廃棄し、新たに蒸留水を200[ml]補充したものを再度振とう器にかける作業を繰り返すことにより、攪拌を複数回にわたって実施した。また、試料を3グループに分類し、各グループ毎に攪拌時間を異ならせた。具体的には、攪拌時間が5分であるものをAグループ、10分であるものをBグループ、15分であるものをCグループとして、各グループ毎に3検体ずつ試験を行った。その結果、下記表4及び図4のグラフのような結果が得られた。
【0085】
【表4】

【0086】
また、グループCの試料C1〜C3について上記実験の開始前と、実験後(試料C1の攪拌10回目、試料C2の攪拌11回目、試料C3の攪拌12回目完了時点)とで、水中に溶出している鉛(Pb)の溶出量及び、土壌に含有されている鉛(Pb)の含有量を比較した結果、下記表5のような結果になった。
【0087】
【表5】

【0088】
上記した実験の結果、図4に示すように、攪拌回数を重ねる毎に重金属類(鉛(Pb))が緩やかに減少していき、その変化が曲線的であることが判明した。また、攪拌時間を必要以上に長くとっても、重金属類の溶出量はほとんど変化しないことが判明した。
【符号の説明】
【0089】
10 土壌処理プラント
20 原料選別部
30 洗浄部
40 凝集手段
50 酸洗手段
60 無害化処理手段
70a 一次分離手段
70b 二次分離手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属類を含む複数種の有害物質により汚染された土壌を無害化する土壌処理方法であって、
重金属によって汚染された酸性土壌を、塩基性の処理水を用いて洗浄する洗浄工程と、
当該洗浄工程で処理されたものから砂を含む砂相と、主として水からなる水相とに分離する一次分離工程と、
当該一次分離工程において分離された水相に酸性の凝集剤を投入する凝集剤投入工程と、
当該凝集剤投入工程で処理されたものからヘドロ状のヘドロ相を分離する二次分離工程と、
当該二次分離工程において分離されたヘドロ相に所定の薬剤を投入することにより、ヘドロ相に含まれている有害物質を無害化する無害化工程とを有することを特徴とする土壌処理方法。
【請求項2】
二次分離工程において分離されたヘドロ相に含まれている重金属類の濃度を分析するヘドロ相分析工程を有し、
当該ヘドロ相分析工程において検出された重金属類の濃度が所定の基準含有濃度A以上であることを条件として、無害化工程に先立って酸洗工程が実施され、
当該酸洗工程において、ヘドロ相が酸性条件下で洗浄されることを特徴とする請求項1に記載の土壌処理方法。
【請求項3】
ヘドロ相分析工程において検出された重金属類の濃度が、基準含有濃度A以上に設定された所定の基準濃度B以上であることを条件として、ヘドロ相が廃棄処分されることを特徴とする請求項2に記載の土壌処理方法。
【請求項4】
一次分離工程において分離された砂相に含まれている重金属類の濃度を分析する砂相分析工程を有し、
当該砂相分析工程において検出された重金属類の濃度が所定濃度以上であることを条件として、無害化工程に先立って酸洗工程が実施され、
当該酸洗工程において、砂相が酸性条件下で洗浄されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土壌処理方法。
【請求項5】
洗浄工程の前に、重金属類によって汚染された土壌に含まれるヘドロ状の成分の量を判別する原料判別工程があり、
当該原料判定工程において、重金属類によって汚染された土壌に含まれるヘドロ状の成分が、重金属類によって汚染された土壌の全量に対して所定の含有率E未満であると判定されることを条件として、重金属類によって汚染された土壌が洗浄工程により処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の土壌処理方法。
【請求項6】
洗浄工程で使用される塩基性の処理水として、塩基性の工業廃水が使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の土壌処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−88039(P2011−88039A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241675(P2009−241675)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(505073406)EACLE有限会社 (10)
【Fターム(参考)】