説明

土壌消毒機

【課題】 短い間隔で薬液を土中に吐出することができるようにする。
【解決手段】 本発明の土壌消毒機1は、圃場を走行自在に構成された機体2に対し、薬液Bが入れられた薬液タンク6と、該薬液タンク6の薬液Bを吸引する薬液ポンプ7と、該薬液ポンプ7を作動させるポンプ駆動機構8と、該薬液ポンプ7から吐出される薬液Bを土中に吐出する注入刀10とが搭載されてなっている。薬液ポンプ7を複数台備えている。ポンプ駆動機構8は、該複数台の薬液ポンプ7を順繰りに作動させるように構成されている。注入刀10には、該複数台の薬液ポンプ7から吐出される薬液Bを一カ所に集めてから送るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場内を走行しながら土中に薬液を注入する土壌消毒機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に記載された土壌消毒機を例示する。この土壌消毒機は、図4に示すように、トラクター等の自走自在な駆動車に対し、転動輪53に走行自在に支持して成る機体51を牽引自在に連結せしめている。その機体51には、転動輪53に連動して作動するように構成された薬液ポンプ55と、薬液を収納する薬液タンク58とを搭載している。薬液ポンプ55の吸入口側には薬液タンク58に通じる吸入パイプ56を配し、吐出口側には機体底部の注入刀59先端の吐出口60に通じる吐出パイプ57を配してなっている。
【0003】
従来、この種の土壌消毒機は、主にクロロピクリン剤用として、転動輪53の回転により、1個の薬液ポンプ55と1つの注入刀59により、約30cm間隔で注入している。また、薬液ポンプ55としては、ダイヤフラムポンプが使用されてきている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−17058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、クロロピクリン剤は薬効及び刺激臭が強いこと等が敬遠され、その代替えとして、カーバムナトリウム塩が普及し始めている。しかしながら、このカーバムナトリウム塩は5cm間隔で土中に注入しなければならず、この仕様に対応した土壌消毒機は存在していない。
【0006】
仮に、従来の土壌消毒機における薬液ポンプ55の駆動速度を向上させることも考えられるが、そうすると、薬液ポンプ55に無理が掛かり、薬液ポンプ55の動作が不安定になったり、薬液ポンプ55の寿命が低減する可能性がある。特に、土壌消毒機の薬液ポンプ55としては、実績のあるダイヤフラムポンプを採用することが好ましい。しかしながら、5cm間隔で薬液を吐出するようにダイヤフラムポンプの駆動速度を上昇させると、ダイヤフラムポンプが内蔵するゴム製のダイヤフラムに過度の動きを強制することになり、ポンプの動作が不安定になるとともに、ダイヤフラムが薬液で腐蝕し易くなって寿命が短縮してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の土壌消毒機は、
圃場を走行自在に構成された機体に対し、
薬液が入れられた薬液タンクと、
該薬液タンクの薬液を吸引する薬液ポンプと、
該薬液ポンプを作動させるポンプ駆動機構と、
該薬液ポンプから吐出される薬液を土中に吐出する注入手段と
が搭載されてなる土壌消毒機であって、
前記薬液ポンプを複数台備え、
前記ポンプ駆動機構は、該複数台の薬液ポンプを順繰りに作動させるように構成され、
前記注入手段には、該複数台の薬液ポンプから吐出される薬液を一カ所に集めてから送るように構成されている。
【0008】
この構成によれば、複数台の薬液ポンプを順繰りに作動させるようになっているので、各薬液ポンプの駆動速度をその分低減させることができる。このため薬液ポンプの動作を安定させることができるとともに、薬液ポンプの寿命の短縮を防止できる。そして、複数台の薬液ポンプから吐出される薬液を一カ所に集めてから前記注入手段に送るようになっているので、短い間隔で薬液を土中に吐出することができる。
【0009】
前記土壌消毒機においては、
前記注入手段を複数備え、
前記一カ所に集められた薬液が該複数の注入手段に送られるように構成された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、複数の注入手段により、複数カ所で同時に薬液を土中に注入することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る土壌消毒機によれば、短い間隔で薬液を土中に吐出することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態の土壌消毒機1を示している。この土壌消毒機1は、いわゆる自走タイプのものであり、前輪3及び転動輪4により圃場を走行自在に支持された機体2を備え、該機体2の前部に走行用の原動機5を搭載して前輪3を駆動回転している。この機体2に対し、薬液Bが入れられた薬液タンク6と、該薬液タンク6の薬液Bを吸引する左右一対の薬液ポンプ7と、該各薬液ポンプ7をそれぞれ作動させる左右一対のポンプ駆動機構8と、該両薬液ポンプ7から吐出される薬液Bを合流させる合流部9と、該合流部9から吐出される薬液Bを土中に吐出する3本の注入刀10とが搭載されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0013】
図1及び図3に示すように、薬液タンク6の上部開口には、開閉弁15を有する吸入パイプ16が挿入されており、該吸入パイプ16は、途中で2分岐され、各薬液ポンプ7の吸入口7aに接続されている。各薬液ポンプ7の吐出口7bは、それぞれ合流部9に第一の吐出パイプ17で接続されており、該合流部9は、各注入刀10に第二の吐出パイプ18で接続されている。このように、一対の薬液ポンプ7から順繰りに吐出される薬液Bは、合流部9に集められ、該合流部9から3本の注入刀10にそれぞれ送られるように構成されている。また、合流部9には、薬液タンク6へ余分な薬液Bを還流させるための一対の還流パイプ19がそれぞれ接続されている。
【0014】
薬液ポンプ7は、本例では、ダイヤフラムポンプが採用されており、プッシュロッド20が上下に往復駆動されると、これにより内蔵するダイヤフラム(図示略)が駆動されるようになっており、具体的には、プッシュロッド20が下方に駆動されると薬液Bを吸入口7aから吸入し、プッシュロッド20が上方に駆動されると薬液Bを吐出口7bから吐出するようになっている。
【0015】
ポンプ駆動機構8は、転動輪4の回転速度を増速させる増速機構としてのチェーン伝動機構21と、該チェーン伝動機構21の出力軸22に取り付けられた角丸正方形状のカム23と、一端側にカム23に従動するカムフォロアー24が設けられ、他端側で薬液ポンプ7のプッシュロッド20を上下に往復運動させるシーソー型テコ25とを備えている。本例の両ポンプ駆動機構8は、図2に示すように、両ポンプ駆動機構8のカム23が、相対的に45°ずれた状態で取り付けられており(同図中、両ポンプ駆動機構8のうちの一方を実線で、他方を二点鎖線で示している。)、これにより、転動輪4の回転に伴って、両薬液ポンプ7を交互に作動させるようになっている。
【0016】
以上のように構成された本例の土壌消毒機1によれば、2台の薬液ポンプ7を交互に作動させるようになっているので、各薬液ポンプ7の駆動速度をその分低減させることができる。このため薬液ポンプ7の動作を安定させることができるとともに、薬液ポンプ7の寿命の短縮を防止できる。そして、2台の薬液ポンプ7から吐出される薬液Bを一カ所に集めてから注入手段としての注入刀10に送るようになっているので、短い間隔で薬液Bを土中に吐出することができる。
【0017】
また、一カ所に集められた薬液Bが該3本の注入刀10に送られるように構成されているので、3カ所で同時に薬液Bを土中に注入することができる。
【0018】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)薬液ポンプ7や注入刀10の数を適宜変更すること。
(2)自走のための機構(走行用の原動機5等)に代えて、トラクター等の自走可能な駆動車に対して連結する連結具を設け、該駆動車によって牽引されるように、本発明の土壌消毒機1を構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る土壌消毒機の側面図である。
【図2】同土壌消毒機のポンプ駆動機構の要部の動作を示す図である。
【図3】同土壌消毒機における薬液のフローを示すブロック図である。
【図4】従来の土壌消毒機の側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 土壌消毒機
2 機体
3 前輪
4 転動輪
5 原動機
6 薬液タンク
7 薬液ポンプ
7a 吸入口
7b 吐出口
8 ポンプ駆動機構
9 合流部
10 注入刀
16 吸入パイプ
17 第一の吐出パイプ
18 第二の吐出パイプ
19 還流パイプ
20 プッシュロッド
21 チェーン伝動機構
22 出力軸
23 カム
24 カムフォロアー
25 シーソー型テコ
B 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行自在に構成された機体に対し、
薬液が入れられた薬液タンクと、
該薬液タンクの薬液を吸引する薬液ポンプと、
該薬液ポンプを作動させるポンプ駆動機構と、
該薬液ポンプから吐出される薬液を土中に吐出する注入手段と
が搭載されてなる土壌消毒機であって、
前記薬液ポンプを複数台備え、
前記ポンプ駆動機構は、該複数台の薬液ポンプを順繰りに作動させるように構成され、
前記注入手段には、該複数台の薬液ポンプから吐出される薬液を一カ所に集めてから送るように構成された土壌消毒機。
【請求項2】
前記注入手段を複数備え、
前記一カ所に集められた薬液が該複数の注入手段に送られるように構成された請求項1記載の土壌消毒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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