説明

土建汚泥処理用の脱水剤

【課題】土木工事、建設工事の際に排出される土建汚泥を低コストで脱水処理でき、かつ含水率の低い脱水ケーキを得ることができる土建汚泥処理用の脱水剤を目的とする。
【解決手段】両性高分子凝集剤と、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤と、水溶性塩とを含有することを特徴とする土建汚泥処理用の脱水剤。本発明の土建汚泥処理用の脱水剤を用いれば、土木工事、建設工事の際に排出される土建汚泥を低コストで脱水処理でき、かつ含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事、建設工事の際に排出される汚泥を処理する土建汚泥処理用の脱水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削、ボーリング、杭打ち工事、河川や湖沼、港湾等の浚渫工事等の土木工事や建設工事が行われる工事現場では、様々な性状の汚泥(以下、土建汚泥と称する。)が排出される。排出された土建汚泥は、工事の妨げにならないように工事現場から運び出す必要がある。しかし、土建汚泥は多量の水分を含んでいるため、扱いが厄介であり、また、工事現場から大量に発生するため、廃棄場所への運搬に多額の費用がかかる。従来、土建汚泥の多くは、廃棄場所に埋め立て処分されていたが、環境保全の規制等もあり、昨今では廃棄場所の確保も難しくなってきている。
土建汚泥中の約8〜9割は水分なので、水分を取り除けば土建汚泥の大幅な減量が可能である。従って、上記問題を解決するために、近年の工事現場では、土建汚泥の脱水処理が実用化されるようになり、土建汚泥の減量及び固形化が図られるようになってきた。また、最近では、土建汚泥を埋戻土や盛土に有効利用できるような一般土砂レベルの残土にまで脱水処理することが望まれている。
【0003】
一般的な土建汚泥の脱水処理としては、まず、脱水剤を添加して、脱水剤に含まれる凝集剤によって、土建汚泥中の固形物を適当な大きさのフロックに凝集させた後、プレス機等の脱水機を用いて脱水処理することにより、減量化や固形化が行われている。
ところが、ベントナイト等の泥土調整剤が含まれる土建汚泥の場合、高い粘性を有するために固形分と水分が分離しにくく、従来の脱水剤では良好な脱水性能が得られにくかった。
【0004】
上記問題点を解決する手段として、種々の脱水剤及び脱水処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、及び水溶性塩からなる脱水剤が提案されている。また、特許文献2では、予め上記の土建汚泥に水溶性金属塩を添加した後、特許文献1に類似した組成の脱水剤を使用する方法が提案されている。また、特許文献3では、上記の土建汚泥に予めカチオン性高分子凝集剤を添加してミクロフロックを形成し、次いでアニオン性高分子凝集剤を添加することによる脱水方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−38404号公報
【特許文献2】特開2001−49981号公報
【特許文献3】特公昭55−16718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、満足な脱水性能を得るには、脱水剤を大量に添加する必要があるため、脱水剤のコストが膨大となる。また、特許文献1の脱水剤は、土建汚泥に脱水剤を添加して凝集フロックを生成させる際、一部のカチオン性高分子凝集剤と、アニオン性高分子凝集剤とが土建汚泥中で反応し、本来目的とすべきフロック形成の効果が減衰してしまうことがある。
また、特許文献2では、特許文献1と同様に多くの添加量を必要とするため、脱水剤のコストが高くつく。また、特許文献2の脱水剤は、土建汚泥への添加を2回行う必要があるため、添加作業に手間が掛かる。
また、特許文献3は、特許文献2と同様に、土建汚泥への添加を2回行う必要があるため、添加作業に手間が掛かるばかりでなく、脱水処理後の土建汚泥において満足すべき含水率、すなわち充分な脱水性能が得られなかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、土木工事、建設工事の際に排出される土建汚泥を低コストで脱水処理でき、かつ含水率の低い脱水ケーキ(脱水処理後の固形物)を得ることができる土建汚泥処理用の脱水剤を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
両性高分子凝集剤と、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤と、水溶性塩とを含有することを特徴とする土建汚泥処理用の脱水剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤を用いれば、土木工事、建設工事の際に排出される土建汚泥を低コストで脱水処理でき、かつ含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、下記3成分を含有することを特徴としている。
(1)両性高分子凝集剤
(2)アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤
(3)水溶性塩
以下に、上記成分について詳細に説明する。
【0009】
(1)両性高分子凝集剤
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤に含有される両性高分子凝集剤は、両性高分子凝集剤を構成する分子の一分子中に、必須成分としてイオン性成分であるカチオン性基及びアニオン性基を有している。また、これらの成分の他に、非イオン成分であるノニオン性基を有していてもよい。
【0010】
両性高分子凝集剤の製造において、カチオン性基を構成するためには、カチオン性モノマーが用いられる。カチオン性モノマーとしては、例えば下記一般式(1)で表されるジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート類の中和塩あるいは四級塩等が挙げられる。また、本発明では、1種または2種以上のこれらカチオン性モノマーを用いることができる。なお、下記一般式(1)中、R1 及びR は炭素数1〜4のアルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なってもよい。RはHまたはアルキル基またはベンジル基であり、(X1-は、陰イオンである。
【0011】
【化1】

【0012】
両性高分子凝集剤の製造において、アニオン性基を構成するためには、アニオン性モノマーが用いられる。アニオン性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、カルボキシル基を含有するビニルモノマーが挙げられる。中でも下記一般式(2)で表されるアクリル酸が好ましく使用される。また、本発明では、1種または2種以上のアニオン性モノマーを用いることができる。
【0013】
【化2】

【0014】
両性高分子凝集剤の製造において、ノニオン性基を構成するためには、ノニオン性モノマーが用いられる。ノニオン性のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも下記一般式で(3)で表されるアクリルアミドが好ましく使用される。また、本発明では、1種または2種以上のノニオン性モノマーを用いることができる。
【0015】
【化3】

【0016】
カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを混合して共重合する、或いはカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとカチオン性モノマーを混合して共重合することによって、両性高分子凝集剤を得ることができる。なお、これら共重合に関しての重合方法は特に限定されないが、例えば、沈殿重合、塊状重合や、分散重合、水溶液重合等の公知の重合方法を用いることができる。
【0017】
両性高分子凝集剤の組成としては、カチオン性基(C)のモル数が10〜60モル%、アニオン性基(A)のモル数が2〜20モル%であることが好ましい。また、CとAのモル比(C/A)が、1以上であることが好ましい。
両性高分子凝集剤の固有粘度(dl)は、30℃の1N硝酸ナトリウム水溶液中において、5dl/g以上であることが好ましく、12〜18dl/gがより好ましい。固有粘度が5dl/g未満では、凝集力が弱くなり添加量の増大及び脱水ケーキの含水率が悪化する。なお、両性高分子凝集剤の有する固有粘度は、両性高分子凝集剤の分子量と相関関係にあり、分子量の指標となる。上記の固有粘度を分子量に置き換えるならば、両性高分子凝集剤の分子量は、180万であることが好ましく、700万〜1250万がより好ましい。
なお、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤には、上記の組成からなる両性高分子凝集剤を2種類以上用いてもよい。また、両性高分子凝集剤には、水溶解性の向上、溶解液の劣化防止のために固体酸を加えてもよい。固体酸としては、スルファミン酸、酸性亜硫酸ソーダ等が一般的に用いられる。
【0018】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、上記で説明した両性高分子凝集剤を用いることで、カチオン性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤を用いた従来の脱水剤における凝集剤同士の結合による脱水性能の低下を回避できる。そのため、本発明の脱水剤に含まれる複数種類の凝集剤が、汚泥中の固形物に対して最大限の凝集作用を発揮できる。そのため、両性高分子凝集剤を含有する本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、従来の脱水剤に比べて、少量の添加でも優れた脱水性能を得ることができるのである。
【0019】
(2)アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤
次に、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤に含有されるアニオン性又はノニオン性高分子凝集剤について説明する。
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤に含有されるアニオン性高分子凝集剤は、例えば、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとを共重合させることにより得ることができる。
アニオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等カルボキシル基を含有するビニルモノマー挙げられる。中でも、上記一般式(1)で表されるアクリル酸が好ましく用いられる。また、本発明では、1種または2種以上のアニオン性モノマーを用いることができる。
ノニオン性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。中でも、上記一般式(3)で表されるアクリルアミドが好ましく用いられる。また、本発明では、1種または2種以上のノニオン性モノマーを用いることができる。
上記モノマーの共重合方法は特に限定されないが、例えば、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合等の公知の重合方法を用いることができる。
アニオン性高分子凝集剤を得る方法としては、上記の方法の他にも、ノニオン性モノマーを重合させた後、その重合体を苛性ソーダ等のアルカリ剤を用いて加水分解することでも得ることができる。
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤に含有されるアニオン性高分子凝集剤におけるアニオン構成単位は、20モル%以下であり、15モル%以下がより好ましい。アニオン構成単位が20モル%より高いと、両性高分子凝集剤との混合物が溶解不良となり好ましくない。
【0020】
ノニオン性高分子凝集剤は、ノニオン性モノマーを重合させることにより得ることができる。該ノニオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも、上記一般式(3)で表されるアクリルアミドが好ましく用いられる。また、本発明では、1種または2種以上のノニオン性モノマーを用いることができる。なお、本発明におけるノニオン性高分子凝集剤とは、アニオン性の構成単位が2モル%以下の高分子凝集剤を示す。
ノニオン性モノマーの重合方法としては特に限定されないが、例えば、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合等の公知の重合方法を用いることができる。
【0021】
アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤の分子量は、分子量数百万以上で高分子凝集剤として広く用いられており、特に限定されない。
また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤には、上記のアニオン性高分子凝集剤を2種類以上用いてもよく、ノニオン性高分子凝集剤を2種類以上用いてもよく、アニオン性高分子凝集剤とノニオン性高分子凝集剤とを複合して用いてもよい。
【0022】
(3)水溶性塩
水溶性塩としては、5質量%水溶液のpHが4.5〜8.0を示す水溶性塩であることが好ましい。この範囲内のpHを示す水溶性塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。中でも塩化カルシウムが好ましく用いられる。また、これら水溶性塩を複数用いてもよい。pHが8.0より高いアルカリ性を示す水溶性塩では、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤が水に溶けなくなるので好ましくない。なお、脱水剤のpHの安定化を図るために、脱水剤に公知の酸を添加してもよい。
【0023】
本発明の脱水剤は、上記で説明した両性高分子凝集剤、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤、及び水溶性塩を、水に希釈混合した水溶液として提供される。なお、脱水剤中における、上記高分子凝集剤の合計濃度は、0.2〜2.0質量%が好ましい。
また、脱水剤中における、両性高分子凝集剤と、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤との配合比は、重量比で99:1〜50:50が好ましく、95:5〜75:25がより好ましい。
また、脱水剤中における、両性高分子凝集剤と水溶性塩との配合比は、重量比で90:10〜25:75が好ましく、80:20〜50:50がより好ましい。
【0024】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、まず、水溶性塩が主体となって土建汚泥中の固形物に結合し、微細なフロックを形成する。次いで、この微細なフロック同士が、両性高分子凝集剤、及びアニオン性またはノニオン性高分子凝集剤によってさらに結合し、大きなフロックを形成することで、固形物が凝集して沈殿する。
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤の作用機構として、より詳しくは以下のように推定される。通常、土建汚泥は7〜10のpHを示す。一方、脱水剤の水溶液のpHは4.5〜8.0に保たれている。両性高分子凝集剤は、脱水剤が有する低pHによってアニオン性基の乖離が抑制されている。脱水剤が土建汚泥に添加されると、両性高分子凝集剤中のアニオン性基が乖離し、両性高分子凝集剤は両性挙動を示す。このとき別途混合されたアニオン性又はノニオン性高分子凝集剤が土建汚泥中に存在するが、アニオン性基同士の反発によって、両性高分子凝集剤はアニオン性又はノニオン性高分子凝集剤と結合するより先に、土建汚泥中の固形物と反応し、微細なフロックを生成する。その後、さらにシェアーを掛けると、両性高分子凝集剤内の余剰カチオン基が、両性高分子凝集剤のアニオン性基及びアニオン性又はノニオン性高分子凝集剤との間でイオンコンプレックスを形成することで、微細なフロック同士が結合し、強固で疎水性の高いフロックが得られる。
【0025】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、上記で説明した3成分を含有することにより、従来の脱水剤より優れた脱水性能を得ることができる。ゆえに、従来の脱水剤よりも添加量を少なくすることができる。
また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤によって分離された水は、非常に透明度があって下水や河川に流しても水汚染を生ずることはない。また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、従来の脱水剤より含水率の低い脱水ケーキを得ることができるので、脱水ケーキをそのまま埋戻土や盛土に有効利用できる。
また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、土建用途以外でも、例えば工場等から排出されるCMC等の有機系分散剤を含んだ汚泥に対しても、効果的に用いることができる。その他、脱水が必要な汚泥、排水等の水分散液に関して、幅広い利用が可能である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
<脱水剤の調整>
各実施例の脱水剤を得るために、まず、下記表1に示す各凝集剤の構成成分と配合比率とした各高分子凝集剤を得た。また、表1に示すように、各高分子凝集剤の参考データとして、C/Aモル比及び固有粘度(dl/g)を測定した。なお、得られた各凝集剤の種類として、R1〜5は両性高分子凝集剤であり、K1はカチオン性−アニオン性高分子凝集剤であり、A1及び2はアニオン性高分子凝集剤であり、N1はノニオン性高分子凝集剤である。また、下記表1における略号は、以下の各モノマーを表している。
DME:ジメチルアミノエチルアクリレート・メチルクロライド4級塩(カチオン性モノマー)
DMC:ジメチルアミノエチルメタクリレート・メチルクロライド4級塩(カチオン性モノマー)
AAm:アクリルアミド(ノニオン性モノマー)
AA:アクリル酸(アニオン性モノマー)
【0027】
【表1】

【0028】
次に、上記で得た各高分子凝集剤を下記表2に示す組成の割合で配合し、さらに下記表2の通りに水溶性塩を混合してから、0.3質量%の水溶液に調整することで、各実施例並びに各比較例の脱水剤を得た。
【0029】
【表2】

【0030】
<測定方法>
実施例における各測定方法は、以下の通りである。
(高分子凝集剤の固有粘度)
固有粘度は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃の条件で、ウベローデ希釈型毛細管粘度計を用い、定法に基づき測定した。(参照:高分子学会編「新版高分子辞典」p.107、朝倉書店)
【0031】
<実施例1〜8>
トンネル掘削のシールド工法によって排出されるシールド汚泥を土建汚泥として、これに表2に示す脱水剤を添加することにより脱水処理試験を実施した。なお、この土建汚泥の性状は粘性のある液状であり、pH:7.0、固形物(TS)濃度:26.7質量%、浮遊物(SS)濃度:25.3質量%を示した。
試験方法としては、まず、500mlのビーカーに上記の土建汚泥を300ml計量し、次いで、表3に示す量の脱水剤を添加し、スパチュラにて30秒間攪拌混合することにより、フロックを形成した。形成したフロックのフロック粒径を測定後、48メッシュの濾布に開け、10秒間の間に濾布を通過した濾液(分離した水)の量、及び濾液中のSS濃度を測定した。その後、フロックを脱水プレス機で脱水し、得られた脱水ケーキの含水率を測定した。なお、脱水プレス機による脱水条件は、1.0Kg/cmの圧力で1分間のプレスとした。これらの測定結果を表3に示す。
【0032】
<実施例9〜10>
表2に示す組成の脱水剤を用いて実施例1〜8と同様にして実施例9〜10の脱水処理試験を行った。なお、実施例9は、配合する両性高分子凝集剤のC/Aモル比が0.5と、好ましい範囲から外れている脱水剤を使用した。また、実施例10は、配合する両性高分子凝集剤とアニオン性高分子凝集剤の配合比率が質量比で45:55と、好ましい範囲から外れている脱水剤を使用した。試験結果を表3に示す。
【0033】
<比較例1〜3>
表2に示す組成の脱水剤を用い、実施例1〜8と同様にして比較例1〜3の脱水処理試験を行った。なお、比較例1は、水溶性塩を配合しない脱水剤を使用した以外は、実施例2と同じ条件で脱水処理試験を行った。比較例2−1は、実施例2のアニオン性モノマーの配合分もノニオン性モノマーとした以外は、実施例2と同じ条件にして脱水処理試験を行った。すなわち、比較例2−1は、両性高分子凝集剤を有さない脱水剤による脱水処理試験とした。比較例2−2は、比較例2−1と同じ脱水剤を用い、この脱水剤を4倍量として添加した以外は、実施例2と同じ条件にして脱水処理試験を行った。比較例3は、アニオン性またはノニオン性高分子凝集剤を配合しない脱水剤を使用した以外は、実施例2と同じにして脱水処理試験を行った。これらの試験結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
<評価>
各実施例は何れも良好な脱水性能を示し、特に実施例1〜8においては、脱水ケーキの含水率が70%未満と、優れた脱水性能を発揮することが確認された。また、実施例9及び実施例10は、好ましい範囲の脱水剤を使用した実施例1〜8に比較して、脱水ケーキの含水率が高い値を示した。
比較例1は、各実施例に比較して凝集フロックの大きさは変わらないものの、ろ過性能が劣り、脱水ケーキの含水率も80.1%と著しく劣る結果であった。この結果により、水溶性塩が脱水性能に重要であることが確認され、従来のアニオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤からなる比較例1の脱水剤に比べて、本発明の脱水剤を用いた実施例の方が、優れた脱水性能を有していることが判明した。
比較例2−1は、実施例に比較して凝集フロックが小さく、ろ過性能、脱水ケーキの含水率も78.8%と著しく劣る結果であった。この結果により、両性高分子凝集剤がフロックの粒径に重要であることが確認され、従来のカチオン性高分子凝集剤とアニオン性またはノニオン性高分子凝集剤と水溶性塩からなる比較例2−1の脱水剤に比べて、本発明の脱水剤を用いた実施例の方が、優れた脱水性能を有していることが判明した。
比較例2−2は、実施例と同程度の凝集フロックを生成したが、脱水ケーキの含水率は74.3%と劣る結果であった。この結果により、従来のカチオン性高分子凝集剤とアニオン性またはノニオン性高分子凝集剤と水溶性塩からなる比較例2−1及び2−2に用いた脱水剤は、本発明の脱水剤を用いた実施例より、脱水剤を大量に添加しないと充分な脱水性能が得られず、また、本発明の好ましい範囲の脱水剤を用いた実施例1〜8には、脱水性能が遠く及ばないことが確認された。ゆえに、本発明の脱水剤は、従来のカチオン性高分子凝集剤とアニオン性またはノニオン性高分子凝集剤と水溶性塩からなる比較例2−1及び2−2に用いた脱水剤に比べて、少量の添加でも充分な脱水性能が得られ、かつその脱水性能は従来の脱水剤に比べて顕著に優れていることが判明した。
比較例3は、実施例に比較して凝集フロックが小さく、ろ過性能、脱水ケーキの含水率とも劣る結果であった。この結果により、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤が、脱水性能の向上に重要であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、従来の脱水剤に比べて土建汚泥の脱水性能に優れているので、ベントナイト等の泥土調整剤を含んだ土建汚泥であっても、含水率の低い脱水ケーキを得ることができる。そのため、脱水ケーキをそのまま埋戻土や盛土に有効利用できる。また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、少量の添加量でも充分な脱水性能を得られるので、土建汚泥を低コストで脱水処理できる。また、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、土建汚泥への添加が一回で済むので、作業性に優れている。
ゆえに、本発明の土建汚泥処理用の脱水剤は、土建汚泥の効率的な脱水処理を可能にし、土木工事、建設工事に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性高分子凝集剤と、アニオン性又はノニオン性高分子凝集剤と、水溶性塩とを含有することを特徴とする土建汚泥処理用の脱水剤。



【公開番号】特開2008−229497(P2008−229497A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72776(P2007−72776)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】