説明

土木工事用杭

土木工事に用いる土木工事用杭の本体内部に、楔体を有するコアー体を有し、土中深くで、コアー体の楔体が土中へ刺さり、土木工事用杭の抜け出るのを防ぐ作用をするように構成されている土木工事用杭は従来からあったが、コアー体を土木工事用杭本体内部の適切な位置に設置することが難しいという問題点があった。そこで、本発明は、適切にコアー体を配置する事が可能であり、当該労力の削減を図ることを可能にする土木工事用杭を提供することを課題とし、例えば、本発明は、土木工事用杭1本体の内部にはコアー体6の案内誘導を可能にする案内レール4が備えられていて、案内レール4を介してコアー体6が案内誘導され、楔体6a、6bが切り押し開口部2a、2b、3a、3bに適切に導かれることを特徴とする土木工事用杭1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、護岸工事、あるいは道路工事、または建築・構築用土台工事などに使用する土木工事用杭に関するものである。特には、土木工事用杭において、内部に楔体を有するコアー体を装着している土木工事用杭に関するものである。
【背景技術】
従前の土木工事用杭は、形状でも、また大きさでも様々なものがあった。そしてその材質は、ほとんどコンクリート材あるいは鉄材によって形成されていた。もっともポピュラーな土木工事用杭は、円筒錐形状あるいは円柱形状に形成されるものである。このような土木工事用杭を、河川、あるいは海岸、または道路などの護岸工事に使用する場合には、その土木工事用杭を斜めにあるいは垂直に打ち込んで使用するものであった。また建築・構築用の土木工事の場合でも、これは同様であった。このため、土質が脆い所や、軟弱地盤の所に土木工事用の杭を打っても、杭自体が安定しなかったり、揺らいだり、はたまた抜けて来たりするという欠点があった。地盤の硬い所でも、時間が経ると、土木工事用杭が揺らいだり、また浮き出たりするという欠点を有するものであった。また耐震性においても従前の土木工事用杭では、不安定性を有するものであった。土木工事用杭が、このように揺らいだり、安定しなかったり、また浮き出て来るような状態では、工事も危険であり、工事完了後もかなりの危険性を有することとなり、不都合なものである。そこで、このような欠点や、不都合を改善し、土中においてより安定した状態を保持できる土木工事用杭が発明され、例えば特開平11−323923号公報に開示されている。
特開平11−323923号公報には、先導杭体及び継手杭体から形成され、各々杭体の側壁には複数の開口部を有し、また各々の杭体内部に、複数の楔体を有するコアー体が装着され、かつ楔体の先端が開口部端に係止するように装着されて構成される土木工事用杭が示されている。
しかし、この様な従来技術では、コアー体を杭本体内部の適切な場所に位置決めする事が難しいといった問題点があった。すなわち、コアー体が杭本体内部の適切な場所に位置決めされた時に、コアー体に取り付けられた複数の楔体の先端が各杭体の側壁に形成された複数の開口部の内側に隣接する。その状態で、各楔体の先端を放射方向外側に案内しながらコアー体を押し下げることにより、土木工事用杭から楔体を突出させる。
ところで、コアー体を杭本体内部の適切な場所に位置決めする作業の難点は、土木工事用杭の長さにある。通常、土木工事用杭は、口径が20cm〜30cmの鋼管で長さ5m〜6m、又はそれ以上となる。さらに、鋼管側壁の適便の箇所に設ける開口部は、鋼管口より3m以上先にあり、その数も数箇所、例えば、8ヶ所となっている。このような小さな開口部へ長さ約80cmの楔体各一枚ずつをいっぺんに挿入する訳であるが、かかる作業はいわゆる目隠し状態での作業と同じで感を頼りに行うものであった。従って、組立には二人以上の作業員が必要で、一本の土木工事用杭を組立るのに15分から20分以上の時間浪費をしていた。
そこで、難作業である組立の改良と簡素化が急務であった。また、土木工事用杭を大きくするとそれを構成する部材も大きくなり、土木工事用杭から楔体を突出させることがさらに難しかった。
そこで、本発明は、コアー体を杭本体内部の適切な場所に簡単に位置決めすることができる土木工事用杭を提供することを課題とする。さらに、本発明は、このような土木工事用杭を製造するのに適した道具及び方法を提供することを課題とする。
【発明の開示】
上記課題を解決するために請求の範囲第1項に記載の本発明は、一端に後付けで固定される先導部を有し且つ内部は空洞状に形成され、また側壁には複数の開口部が設けられている土木工事用杭本体内に、複数枚の楔体を有するコアー体が装着されて成る土木工事用杭において、該土木工事用杭本体の内部には該コアー体の案内誘導を可能にする案内レールが備えられていて、該案内レールを介して該コアー体が案内誘導され、該楔体の先端が該開口部に適切に導かれることを特徴とする土木工事用杭を提供する。
これにより、コアー体を土木工事用杭の内部の適切な場所に位置決めすることを可能にする土木工事用杭を提供することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第2項に記載の本発明は、請求の範囲第1項に記載の土木工事用杭において、前記土木工事用杭本体は、2以上に分割された杭本体部分が接合固定されており、前記コアー体は各杭本体部分に1つずつ配置されることを特徴とする。
これにより、複数の杭本体部分からなる土木工事用杭が提供される。よって、長さの違う複数種類の土木工事用杭が提供される。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第3項に記載の本発明は、請求の範囲第2項に記載の土木工事用杭において、前記案内レールは、分割された杭本体部分を跨って複数本が土木工事用杭本体内に配置されることを特徴とする。
これにより、複数の杭本体部分からなる土木工事用杭であっても、コアー体を土木工事用杭の内部の適切な場所に位置決めすることを可能にする。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第4項に記載の本発明は、請求の範囲第2項に記載の土木工事用杭において、前記案内レールは、分割された杭本体部分にそれぞれ複数本が配置されることを特徴とする。
これにより、コアー体を、分割された各杭本体部分の内部の適切な場所に位置決めすることを可能にする。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第5項に記載の本発明は、請求の範囲第1項に記載の土木工事用杭において、前記開口部が外部からの力により開放する切り押し開口部であり、開放された切り押し開口部の舌片部分は少なくとも下端部が前記土木工事用杭本体と接続されていて、当該舌片部分がスロープを形成していることを特徴とする。
これにより、適切に位置決めされたコアー体の楔体は、スロープを使って適切に土木工事用杭から外部へ突出することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第6項に記載の本発明は、請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載の土木工事用杭において、前記土木工事用杭は、外部に土掘削用の螺旋翼を備えており、それにより、前記土木工事用杭が土中に貫入するのを補助することを特徴とする。
これにより、適切に地中に土木工事用杭を埋設することが出来るようになる。また、この螺旋翼により、埋設された土木工事用杭を支持することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第7項に記載の本発明は、請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、前記先導部は、掘削翼を備えていることを特徴とする。
これにより、適切に地面を掘削して土木工事用杭を埋設することが出来るようになる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第8項に記載の本発明は請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、前記楔体は、隣り合う楔体と異なる長さであることを特徴とする。
これにより、土木工事用杭から楔体が段違いに突出されるようになり、強固に地中に固定することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第9項に記載の本発明は、請求の範囲第1項〜第8項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、前記土木工事用杭本体の断面形状を円形あるいは角形としたことを特徴とする。
これにより、設置場所等に適合させた土木工事用杭を提供することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第10項に記載の本発明は請求の範囲第1項〜第9項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、前記楔体は、一つずつ、前記開口部に対応する位置において前記コアー体に蝶番等の角度を変えられる部材を用いて取り付けられていることを特徴とする。
これにより、楔体は曲がらないで土木工事用杭から突出することが可能になる。
本願の第二の発明は、前述の土木工事用杭の生産に用いられる磁石を備えたマグネットクロスゲージに係る。
よって、上記課題を解決するために請求の範囲第11項に記載の本発明は、請求の範囲第1項〜第10項のいずれか一項に記載の土木工事用杭の生産に用いられる磁石を備えたマグネットクロスゲージであって、複数の前記案内レールを互いに並行に維持しつつ、前記土木工事用杭本体内部に挿入可能で、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に互いに並行な状態で固定した後、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に残したまま前記土木工事用杭本体から外部に取り出し可能なマグネットクロスゲージを提供する。
これにより、土木工事用杭を製造するのに適した道具を提供することが可能になる。そして、土木工事用杭の内部に適切に案内レールを設けることが出来るようになる。また、一人でも容易に案内レールを取り付けることが可能になる。さらに、土木工事用杭の組立にかかる労力や時間を削減することが出来るようになる。
上記課題を解決するために請求の範囲第12項に記載の本発明は、請求の範囲第11項に記載のマグネットクロスゲージであって、前記案内レールを保持可能な複数の溝が周辺部に形成され、それに隣接してマグネットが取り付けられており、その一面に取手が設けられてなる第一のマグネットクロスゲージ部と、前記第一のマグネットクロスゲージ部に固定された棒部材と、前記棒部材に移動可能に又は移動不能に取り付けられ、その周辺部に前記案内レールを保持可能な複数の溝とそれに隣接してマグネットが取り付けられている第二のマグネットクロスゲージ部とを備えて構成されてなるマグネットクロスゲージを提供する。
これにより、複数本の案内レールを土木工事用杭の内部に適切に固定することが出来るようになる。
本願の第三の発明は、前述のマグネットクロスゲージを用いて案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法に係る。
よって、上記課題を解決するために請求の範囲第13項に記載の本発明は、請求の範囲第11項又は第12項に記載のマグネットクロスゲージを用いて案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法であって、マグネットクロスゲージを用いて複数の前記案内レールを互いに並行に維持する工程と、互いに並行に維持されている前記案内レールを前記土木工事用杭本体内部に挿入し、前記土木工事用杭本体内部での前記案内レールの位置を決める工程と、前記案内レールをそれぞれ前記土木工事用杭本体の内壁に固定する工程と、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に残して前記マグネットクロスゲージのみを前記土木工事用杭本体の外部に取り出す工程とを備えていることを特徴とする案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法を提供する。
これにより、複数の案内レールを土木工事用杭本体内に一度に迅速且つ正確に固定する方法が提供される。
上記課題を解決するために請求の範囲第14項に記載の本発明は、請求の範囲第13に記載の案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法において、前記土木工事用杭本体が、2つ以上の杭本体部分から構成されており、前記案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法は、それに先立って、これら杭本体部分の接合固定する工程を備えていることを特徴とする。
これにより、長い寸法の土木工事用杭の場合も、短い杭本体部分を接合固定することにより得ることができる。
上記課題を解決するために請求の範囲第15項に記載の本発明は、請求の範囲第13に記載の案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法において、前記土木工事用杭本体が、2つ以上の杭本体部分から構成されており、前記案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法は、2つ以上の杭本体部分のそれぞれに対して行うことを特徴とする。
これにより、短い杭本体部分に対して複数の案内レールを一度に迅速且つ正確に固定することができる。
本願の第四の発明は、前述の土木工事用杭を製造する方法に係る。
よって、上記課題を解決するために請求の範囲第16項に記載の本発明は、請求の範囲第1項〜第10項のいずれか一項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、前記土木工事用杭本体の側壁部に開口部を形成した後又は前に、案内レールを該土木工事用杭本体の内壁に固定する工程と、土木工事用杭本体内に先端が鋭角状に形成される複数枚の楔体を有するコアー体を該案内レールにより案内誘導し、当該楔体の先端が前記開口部近傍に位置するようにセットする工程とを含んで構成されてなる土木工事用杭製造方法を提供する。
これにより、土木工事用杭を製造するのに適した方法を提供することが可能になる。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第17項に記載の本発明は、請求の範囲第16項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、前記土木工事用杭本体が2つ以上の杭本体部分から構成されており、前記土木工事用杭を製造する方法は、前記案内レールを土木工事用杭本体の内壁に固定する工程に先立って、これら杭本体部分の接合固定する工程を含んでおり、前記案内レールを土木工事用杭本体の内壁に固定する工程は、前記案内レールを接合固定された複数の杭本体部分を跨るように設置するものであることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第18項に記載の本発明は、請求の範囲第16項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、前記土木工事用杭本体が2つ以上の杭本体部分から構成されており、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に固定する工程及び前記楔体の先端を前記開口部近傍に位置するようにセットする工程とは、それぞれの杭本体部分に対して行われ、さらに、しかる後、コアー体を備えた杭本体部分を接合固定する工程を含んでなることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために請求の範囲第19項に記載の本発明は、請求の範囲第16項〜第18項のいずれか一項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、前記案内レールの固定工程の後に、さらに、前記土木工事用杭本体の一端に円錐あるいは角錐状に形成される先導部を固定する工程とを含んでなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第一実施形態の外観斜視図である。
第2図は、本願の第二発明に係るマグネットクロスゲージの第一実施形態の使用方法を示す外観斜視図である。
第3図は、第2図に示されたマグネットクロスゲージの構成要素及びその関係を示す説明図であり、(a)は支持用のマグネットクロスゲージ部の平面図、(b)は中継用のマグネットクロスゲージ部の平面図、そして(c)は(a)及び(b)に示されたマグネットクロスゲージ部の関係を示すマグネットクロスゲージの正面図である。
第4図は、第1図に示された土木工事用杭を構成する先導杭体に装着されるコアー体の外観斜視図である。
第5図は、第1図に示された土木工事用杭を構成する継手杭体に装着されるコアー体の外観斜視図である。
第6図は、第1図に示された土木工事用杭を構成する先導部の固定前を示す一部を断面とした外観斜視図である。
第7図は、第1図に示された土木工事用杭を構成する先導掘削螺旋翼の外観図であり、(a)はその平面図であり、(b)はその正面図である。
第8図は、第1図に示された土木工事用杭を構成する継手螺旋翼の外観図であり、(a)はその平面図であり、(b)はその正面図である。
第9図は、第1図に示された土木工事用杭の使用状態を示す模式図である。
第10図は、本発明に係る土木工事用杭から楔体を突出させる際に使用する鋼棒の加工前における外観斜視図である。
第11図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第二実施形態の先導杭体に装着されるコアー体の外観斜視図である。
第12図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第二実施形態の継手杭体に装着されるコアー体の外観斜視図である。
第13図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第二実施形態に使用される先導部の外観斜視図である。
第14図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第二実施形態の継手杭体と根出し鋼棒との組み合わせを説明するための模式図である。
第15図は、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第二実施形態において先導杭体のコアー体を中心に描いた説明図であり、(a)は楔体の突出前の端面図であり、(b)は楔体の突出後の端面図である。
次に、本願の第一発明に係る土木工事用杭の第一実施形態を図面に基づいてそれぞれの部材とそれらの関係を示しつつ、詳細に説明する。
第1図に示されているように、土木工事用杭1は、先導杭体2と、継手杭体3と、先導杭体2や継手杭体3の内部に固定される案内レール4と、先導部5と、コアー体6と、先導掘削螺旋翼7と、そして、継手螺旋翼8とを含んで構成されている。
本実施形態では、土木工事用杭1の本体部分は、先導杭体2に0〜複数の継手杭体3を固定して製造する。これにより、種々の長さの土木工事用杭1を作成することができる。本発明は、もちろん、1本の一体的な本体部分だけで、すなわち、先導杭体2の長さを長くすることにより、土木工事用杭1を構成することを含む。この場合、コアー体6は、1本の土木工事用杭1に複数又は単数装着される。
先導杭体2は、内部が空洞の円筒形をした鋼管から作製される。先導杭体2は、上下2つのグループに分けられる合計8つの切り押し開口部2a、2bと接合部2cとを備えている。切り押し開口部2a、2bを形成するには、先ず、下部一辺を残して三辺に切れ目を入れる。そして、後に、外から内方に向かう力を与えることにより、下部の一辺を基点に舌片状の部分を内側に折り曲げる。その結果、内側に折れた当該舌片部分は、楔体6a、6bが外部に突出するためのスロープを形成する。
しかし、切り押し開口部2a、2bの切断された三辺の先導杭体2の箇所は、強度が弱くなる。それ故、補強のために補強枠9を設けることが好ましい。また、切り押し開口部2a、2bは、先導杭体2の長手方向には同一線上に二つずつ設けられるが、周方向には隣り合う切り押し開口部2a、2b同士が高さを変えて凸凹となるように且つ2つ目のものとは同一高さとなるように配置される(第1図参照)。
継手杭体3の概略は先導杭体2と同じである。継手杭体3も、内部が空洞の円筒形をした鋼管から作製される。継手杭体3は、上下2つのグループに分けられる合計8つの切り押し開口部3a、3bと、地上突起部3cと、接合部3dと、を備えている。尚、前述のように2以上の継手杭体3を接合して土木工事用杭1の本体部分を構築する場合は、継手杭体3の上下両端に接合部3dを設け、その代わりに地上突起部3cを除去したものを使用する。
切り押し開口部3a、3bも、切り押し開口部2a、2bと同様にして形成する。図示された好ましい実施形態では、先導杭体2に設けられる切り押し開口部2a、2bと継手杭体3に設けられる切り押し開口部3a、3bとが土木工事用杭1の長手方向において同一線上に設けられている。これらを円周方向にずらすことももちろん可能である。土木工事用杭1を中心に360度全周に対してより多くの根張り効果が期待でき、安定性が向上する。地上突起部3cは、土木工事用杭1を地中に埋設するときの回転駆動を補助するものである。
尚、本発明は、先導杭体2や継手杭体3を断面円形の鋼管から作製するばかりでなく、四角形等の多角形断面を有する内部が中空の材料から作製することを排除しない。また、本発明は、鋼以外にAl合金やTi合金や、合成樹脂により作製することを排除しない。さらに、先導杭体2や継手杭体3は、切り押し開口部2a、2b、3a、3bの数を8つに限定せず、任意の複数とすることができる。もちろん、偶数個でなく奇数個であっても良い。また、本実施形態では、開口部を切り押し開口、すなわち、下部一辺を残して三辺に切れ目を入れる工程は予め行っておき、舌片部分の折り曲げ工程は後述するように、所定のタイミングで行うような方式を採用した。しかしながら、予め四角形状に開口しておき、開口部にはスロープを形成した部材を外部から取り付けるようにする方式を排除しない。さらに、本発明は、切り押し開口部を、先導杭体2や継手杭体3の長手方向の同一線上に設けないようにすることを排除しない。また、周方向に隣り合う切り押し開口部2a、2b、3a、3bは、先導杭体2や継手杭体3の長手方向に直角な同一の水平断面上に配置するようにしても良い。さらに、本発明は先導杭体2と継手杭体3の基本構成を異なるようにすることを排除しない。
本実施形態において、土木工事用杭1の本体である土木工事用杭本体は、1本の導杭体2と1本の継手杭体3とからなっている。これら導杭体2と継手杭体3とは、凸凹状の接合部2c、3dを嵌め合わせて結合し、結合部を溶接することにより土木工事用杭の本体としている。そして、当該接合部を保護するために接合部カバー10を装着する。しかし、本発明は、先導杭体2と継手杭体3を溶着して一の土木工事用杭本体とすることを排除しない。また、前述のように先導杭体2に複数の継手杭体3を連結することを本発明は排除しない。さらに、接合部2c、3dにより結合した結合部を溶接しないことを排除しない。尚、本実施形態では、先導杭体2と継手杭体3は同じ長さ及び同じ径である。しかし、異なる長さや異なる径とすることを本発明は排除しない。
次に、先導杭体2や継手杭体3の内部に固定される案内レール4について説明する。案内レール4は、磁石にくっつく磁性を有する鋼材から出来ていて断面が四角形である。案内レール4は先導杭体2と継手杭体3を足した長さとなっている。
尚、本発明は、案内レールの断面を角形以外に、円形や多角形とすることを排除しない。また、鋼から作製する以外に、Al合金やTi合金や合成樹脂により作製することを排除しない。また、本実施形態では、先導杭体2と継手杭体3とを加えた長さと案内レール4とはほぼ同じ長さとなっている。もちろん、それぞれに設けるようにすることを排除するものではない。すなわち、本発明は、案内レール4は先導杭体2及び継手杭体3に各4本ずつで、計8本用いられることを排除しない。案内レール4の数を本発明は限定しない。案内レール4は、先導杭体2と継手杭体3で独立に取り付けるときには同じものを用いることができる。この場合には、先導杭体2及び継手杭体3のそれぞれの長さよりも案内レール4を少し短くするのが良い。これは、先導杭体2や継手杭体3を接続する部分や先導部5と接続する部分を考慮するためである。
先導杭体2や継手杭体3と異なる材質の材料で案内レール4を作製することを本発明は排除しない。しかし、先導杭体2、継手杭体3及び案内レール4が共に同じ材料から作製されることが好ましい。互いの接合を容易にするためである。また、案内レール4は、磁石にくっつく磁性を有する材料から作製されることが望ましい。それ故、このような磁性を有しない材料から作製された場合には、このような磁性を有する材料を一部に有するようにする。
次に、案内レール4を先導杭体2及び/又は継手杭体3の内部に取り付ける道具と、その道具を用いた土木工事用杭の製造方法について説明する。
まず、その道具であるマグネットクロスゲージ40について説明する。4本の案内レール4は、互いに並行に且つ4本の案内レール4の中心線から互いに90度の角度にマグネットクロスゲージ40を用いて配置される(第2図参照)。
このマグネットクロスゲージ40を第3図に示す。第3図(a)にはマグネットクロスゲージ部40Aが、第3図(b)にはマグネットクロスゲージ部40Bが、そして第3図(c)にはマグネットクロスゲージ部40Aとマグネットクロスゲージ部40Bの関係が示されている。
第3図(a)のマグネットクロスゲージ部40Aは、4つのマグネット40aと、取手40bと、4つの溝40cとを備えている。一方、第3図(b)のマグネットクロスゲージ部40Bは、4つのマグネット40aと、4つの溝40cと、孔40dとを備えている。これらのマグネット40aは、マグネットクロスゲージ部40A、40Bの各溝40cの近傍に備えられる。これにより、磁石にくっつく鋼材である案内レール4をひきつけ、溝40c内に保持可能とする。取手40bは、第2図に示した状態でマグネットクロスゲージ40を移動可能にするための取手である。溝40cは、案内レール4と補合する形状を有していて、その内部に案内レール4を適切に保持することができる。孔40dは、四角形をしている。この孔40dには、角材40eが挿入される。この角材40eの一端はマグネットクロスゲージ部40Aの取手側と異なる面の中央に接合により固定されている。
また、マグネットクロスゲージ部40Bは、角材40eの軸方向に移動可能である(第3図(c)参照)。しかし、マグネットクロスゲージ部40Bが角材40eから不意に外れないように、角材40eの一端には突起40fが備えられている(第3図(c)参照)。突起40fは、意図的に所定値以上の力が働くと角材40eの内部に収納されるようになっているので、マグネットクロスゲージ部40Bを角材40eから取り外すことも可能である。
尚、本発明は、案内レール4を互いに適正な位置に保ったまま移動可能であれば、取手40bの形状を限定しない。溝40cは、案内レール4と補合する形状を有していることに本発明は限定しない。また、形状を四角形以外に円形や多角形であることを排除しない。しかし、案内レール4を適切に保持することが必要である。さらに、孔40dは角材40eの断面形状に対応して四角形である。しかし、本発明は、マグネットクロスゲージ部40Aと、マグネットクロスゲージ部40Bの溝40cを互いに対応する位置に保つことが出来るのであれば、円形でも多角形でも良い。また、角材40eの一端はマグネットクロスゲージ部40Aの取手側と異なる面の中央に接合により固定されることに本発明は限定しない。使用時に固定されているかのように扱えればどのような接合方法でもよい。さらに、突起40fから角材40eが抜けないようにすることを本発明は排除しない。さらに、本発明は、一対のマグネットクロスゲージ部40A、40Bを一つの部材とすることを排除しない。また、3つ以上のマグネットクロスゲージ部を組み合わせることを本発明は排除しない。
次に、かかるマグネットクロスゲージ40を用いて案内レール4を土木工事用杭本体の内部に取り付ける方法について説明する。
前述した本発明の好ましい実施形態では、土木工事用杭1の本体は、先導杭体2と継手杭体3とから構成されている。そこで、案内レール4を用いて後述するコアー体6を土木工事用杭本体の内部に取り付ける方法としては、大別して、先導杭体2と継手杭体3とを接合固定した後にコアー体6を組み込む場合と、それぞれにコアー体6を組み込んでおき、これらを接合固定する場合の2つの方法がある。
初めに、先導杭体2と継手杭体3とを接合固定した後にコアー体6を組み込む場合におけるマグネットクロスゲージ40を用いての案内レール4の取付方法について説明する。
初めに、先導杭体2と継手杭体3を、接合部2c、3dの位置で接合し、例えば、溶接により両者を固定する。次に、4本の案内レール4を互いに並行に且つ4本の案内レール4の中心線から互いに90度の角度となるようにして、後述するマグネットクロスゲージ40にセットする(第2図参照)。4本の案内レール4の長さは、土木工事用杭1の本体の長さとほぼ等しくする。次に、この配置を保ったまま土木工事用杭本体の内部であって、切り押し開口部2a、2b、3a、3bを避ける位置に4本の案内レール4を挿入する。この状態で、各案内レール1を土木工事用杭本体の内壁の必要箇所に溶接により接合する。最後に、取手40bを引っ張って、マグネットクロスゲージ40を土木工事用杭本体の外部に取り除く。これにより、容易に且つ的確に案内レール4を土木工事用杭本体の内壁に固定することが可能になる。なお、切り押し開口部2a、2b、3a、3bの切れ目を形成する時期に関しては、上記工程のいずれかの工程の前後に行うことができる。
ここで、土木工事用杭本体の内部にセットされるコアー体6の構造について説明する。
第4図のコアー体6は、先導杭体2の内部に取り付けられるコアー体であり、第5図のコアー体6は、継手杭体3の内部に取り付けられるコアー体である。コアー体6は、4組の楔体6a、6bと、移動台座6cとを備えている。継手杭体3に取り付けられるコアー体6は、さらに、中打体6fを有している。楔体6aは、楔体6bよりも長くなっている。これは、先導杭体2や継手杭体3において、切り押し開口部2a、2b、3a、3bが異なる位置に配置されていることに対応している。また、楔体6a、6bは、移動台座6cに90度おきに一組ずつ配置されるが、周方向に隣り合う組における楔体6a、6bは、長さが異なっている。これは、周方向に隣り合う切り押し開口部2a、2b、3a、3bが、互いに交互に配置されることに対応している。
移動台座6cには、案内レール4に沿ってコアー体6を先導杭体2や継手杭体3の内部で案内する誘導溝6dが形成されている。もちろん、誘導溝6dは、案内レール4を配置する位置に対応している。そして、移動台座6cには、複数のセメントミルク注入口6eが備えられている。セメントミルク注入口は、セメントミルクを注入可能にする注入口である。継手杭体3に取り付けられるコアー体6の中打体6fは、移動台座の中央に一端を取り付け取り外し可能に固定される。つまり、第5図のコアー体6は、第4図のコアー体に中打体6fを取り付けたものである。移動台座6cの中央に図示されていない雌ネジが切ってあって、そこに中打体6fの一端の雄ネジが螺合する。また、中打体6fのもう一端の径は他の箇所よりも大きくなっている。さらに、中打体6fを含めたコアー体6の長さは、先導杭体2や継手杭体3の長さと同じ長さになっている。
各案内レール4を、土木工事用杭本体の内壁に溶接などにより固定した後、先導杭体2の下端に円錐あるいは角錐状に形成される先導部5を装着固定する。
ここで、先導部5について詳細に説明する。
先導部5は、鋼から作製される。先導部5は土木工事用杭本体の一端、すなわち先導杭体2の下端に取り付けられる円錐形の部材である。先導部5は、係合部5aを有していて係合部5aが先導杭体2の内部に嵌合することにより取り付けられる(第6図参照)。そして、取り付け後に境界部分は溶接され、先導部5は先導杭体2に固定される。尚、先導部5は、先導杭体2や継手杭体3とは異なる材料から作製されることを排除しない。また、土木工事用杭本体の形状に対応していれば、円錐形以外に、角錐形や多角錐形であっても良い。
ところで、土木工事用杭の組立であるが、前述のように、土木工事用杭本体に案内レール4を設置した後、土木工事用杭本体である先導杭体2や継手杭体3の内部に、コアー体6、6を案内レール4に従い案内誘導して固定することが行われる。
より詳しく述べると、先導杭体2の内部に取り付けられる第4図のコアー体6が土木工事用杭本体内に先に挿入される。コアー体6の移動台座6cは、その誘導溝6dにより案内レール4に沿って移動し、土木工事用杭本体である先導杭体2や継手杭体3の内部に案内される。尚、この挿入前に切り押し開口部2aを外部からハンマー等で叩き、内部から外部への約40度のスロープを形成しておく。
次に、第5図のコアー体6を土木工事用杭本体に挿入する。楔体6a、6bは、全体を多少外側に開放した状態、すなわち、それらの先端が土木工事用杭本体の内径よりも大きくなっている状態で、入れる時に全体を絞って入れる。従って、コアー体6を土木工事用杭本体内に挿入すると、楔体6a、6bの鋭角状先端が土木工事用杭本体の内壁に沿って滑りながら入ることとなる。そして、最終的に、4ヶ所の中押し加工を施した開口部2aに、長い方の楔体6aの先端鋭角部分が突出する。次に、残った4ヶ所の切り押し開口部2bを20度前後中押し加工してから、再度移動台座6cを押すと、開口部2bから4枚の楔体6bの鋭角先端部が突出し、土木工事用杭1の組立の簡素化が図れる。
同様に、継手杭体3の切り押し開口部3aを外部からハンマー等で叩き、内部から外部への約40度のスロープを形成しておく(第6図参照)。しかる後、第5図のコアー体6を挿入すると、第4図のコアー体6の移動台座6cは、第5図のコアー体の中打体6fに押されて、先導杭体2の最奥部に到達する。そして、第4図のコアー体6に取り付けられた楔体6a、6bの突端は切り押し開口部2a、2bから突出可能な位置に達する。他方、第5図のコアー体6に取り付けられた楔体6aの突端は切り押し開口部3aから突出可能な位置に同様に達する。次に、同様に切り押し開口部3bに外部から力をかけ、内部から外部への約20度のスロープを形成する。
好ましくは、第5図のコアー体6の移動台座6cにさらに力をかけて土木工事用杭本体の内部に上下に積み重なったコアー体6、6を押し込む。これにより、上方のコアー体6に取り付けられた楔体6bの突端も切り押し開口部3bから突出可能な位置に達する。
次に、又は、上記土木工事用杭1の組立中に、先導掘削螺旋翼7や継手螺旋翼8を土木工事用杭本体の外周に取り付ける。
螺旋翼である先導掘削螺旋翼7(図7参照)や継手螺旋翼8(図8参照)は、鋼製のドーナッツ形状の円盤を加工して作製される。そして、その先端部及び/又は外周部は、土を掘削していくために刃のような鋭利な形状になっている。これら部位は、木の根切り、土切り用として用いることができる。作成方法は、ドーナツ形金属板の外周から翼内周まで1ケ所の切込みを入れる。そして、この切込みの両側を上下に引き離すことにより、金属板を螺旋状に形成する。先導掘削螺旋翼7及び継手螺旋翼8の中心側は、先導杭体2の装着部の外形と補合する形状とする。その内側には、一定間隔に、角形突起7a、8aが設けられている。角形突起7a、8aは、交互に上及び下方向に折曲げ加工される。交互に起こした角形突起7a、8aの面積を増やした事で、螺旋翼7、8を土木工事用杭1へ溶接するときの仮止めや位置決めが簡単になり、それらの取り付け時間と経費の削減、簡素化が達成される。すなわち、角形突起7a、8aは上下に折り曲げて使用するので、円筒状の鋼管杭に溶接する場合でも鋼管杭形状にあわせ接触する角度を調節できるからである。
このようにした先導掘削螺旋翼7や継手螺旋翼8は、溶接などにより連結することもできる。これにより、先導杭体2への固定を強固且つ容易とする。尚、本発明は、角形突起7a、8aが円形又は多角形であることを排除しない。
先導掘削螺旋翼7は、土木工事用杭1を地中に挿入するときの補助をする役目を為すので、先導部5の近傍に設けられる。具体的には、先導杭体2の先端に固定される。角形突起7a、8aの上下折曲げ加工した先導堀削螺旋翼7と継手螺旋翼8を回転貫入角度に適合するように角度調整を施す。そして、先導杭体2の側面に溶接により固定する。
尚、本発明は、溶接以外に係止部材を設けて機械的に係止することを排除しない。また、本実施形態では、先導掘削螺旋翼7に継手螺旋翼8を一つ連結することとしている。しかし、本発明は、先導掘削螺旋翼7に継手螺旋翼8を連結しないことも、又は複数の継手螺旋翼8を連結することも排除しない。
次に、先導杭体2と継手杭体3とにそれぞれにコアー体6を組み込んでおき、これらを接合固定する場合におけるマグネットクロスゲージ40を用いての案内レール4の取付方法について説明する。
先導杭体2を用意すると共に、前述と同様にして、4本の案内レール4をマグネットクロスゲージ40にセットする(第2図参照)。4本の案内レール4の長さは、それぞれ先導杭体2の長さとほぼ等しくする。次に、この配置を保ったまま先導杭体2の内部であって、切り押し開口部2a、2bを避ける位置に4本の案内レール4を挿入する。この状態で、各案内レール1を先導杭体2の内壁の必要箇所に溶接により接合する。最後に、取手40bを引っ張って、マグネットクロスゲージ40を先導杭体2の外部に取り除く。これにより、容易に且つ的確に案内レール4を先導杭体2の内壁に固定することが可能になる。同様にして、継手杭体3にも、案内レール4を溶接固定する。かかる案内レール4を設けた先導杭体2及び継手杭体3を製造し、工場内で又は現場において両者を溶接などにより固定する。これにより、土木工事用杭1が製造される。この場合にも、切り押し開口部2a、2b及び/又は3a、3bを形成するための切れ目を、上記工程のいずれかの工程の前後に入れることができる。また、先導部5を先導杭体2の下端に装着固定する時期も、案内レール4を先導杭体2の内壁に固定した後であれば、いつでも良い。
以上、本発明に係る土木工事用杭の第一実施形態の構成及び組立手順を説明した。次に、かかる土木工事用杭の使用方法を、第9図を用いて説明する。
まず、本発明に係る土木工事用杭1は図示しない回転貫入杭機により地面100に所定深度に達するまで回転貫入される。所定の深度まで到達する間に、先導掘削螺旋翼7及び継手螺旋翼8により掘削攪拌された土木工事用杭1の外周部分は軟弱土質化している。すなわち、先導掘削螺旋翼7や継手螺旋翼8の投影面積が先導杭体2や継手杭体3の径より大きいため、これらの螺旋翼の回転貫入で掘削攪拌された鋼管外周部分は軟弱土質化される。
土木工事用杭1が地面100の所定の深さまで埋設された状態で、第10図の根出し鋼棒30を土木工事用杭1の上部から内部に挿入する。これにより、コアー体6、6は力を受けて、下方に下げられると同時に、楔体6a、6bが外部に突出する。そして、楔体6a、6bは軟弱土質化している掘削攪拌土101を貫通し、硬質土102まで達する(第9図参照)。すなわち、土木工事用杭1に内蔵された16枚の楔体6a、6bは、根出し鋼棒30で圧入をかけられ切り押し開口部2a、2b、3a、3bから突出し、軟弱土質から硬質土102まで刺さる。この結果、土木工事用杭1は木の根の如く360度全周方向からの力に対して安定性を有することとなり、又螺旋翼も土木工事用杭1のための支持構造体となり地震に強い免震杭とする効果を有する。
一方、このような土木工事用杭1の施設状態において、土木工事用杭1の内部には大きな空間が存在する。そこで、移動台座6cのセメントミルク注入口6eを介してセメントミルクを注入し、全土木工事用杭1内を固形化し安定した安全で堅牢な支持杭を提供することが可能になる。
次に、第11図、第12図及び第15図に基づいて、本発明に係る土木工事用杭1の第二実施形態を説明する。尚、第一実施形態と同様の構成要素に対しては、第二実施形態においても、図面中で同じ符号を用いている。
第二実施形態における土木工事用杭1と、上記した第一実施形態における土木工事用杭1は、概ね同じである。それ故、以下に、第一実施形態とは異なる部材について、まず説明する。
第二実施形態における土木工事用杭1は、全長が4〜5mである。そして、楔体6a、6bは幅広く且つ厚さが厚いため、楔体6a、6bを湾曲させることは不可能である。
第11図及び第12図には、第二実施形態に係る土木工事用杭1に内蔵されるコアー体6が示されている。第11図のコアー体6は、先導杭体2の内部に取り付けられるコアー体6であり、第12図のコアー体6は、継手杭体3の内部に取り付けられるコアー体6である。
コアー体6は、4組の楔体6a、6bと、移動台座6cと、蝶番6gと、中継部材6hとを備えている。中継部材6hは、移動台座6cの下部中央に一端を固定している。中継部材6hには、楔体6a、6bがそれぞれ蝶番6gを介して取り付けられている。それ故、楔体6a、6bは蝶番6gを起点にして中継部材6hに対する角度を変化させることが出来るようになる。尚、継手杭体3に取り付けられるコアー体6においては、中継部材6iの先端に中打体6fが設けられている。楔体6aは、楔体6bと同じ長さになっている。しかし、楔体6aと楔体6bとは、中継部材6h又は中継部材6iの異なる高さ位置に取り付けられている。具体的には、これら部材は角材であり、4つの側面に楔体6aと楔体6bが縦方向に所定の間隔をあけて取り付けられている。これは、先導杭体2や継手杭体3において、切り押し開口部2a、2b、3a、3bが異なる高さ位置に配置されていることに対応している。
移動台座6cには、案内レール4に沿ってコアー体6を先導杭体2や継手杭体3の内部で案内にする誘導溝6dが形成されている。もちろん、誘導溝6dの位置は、案内レール4を配置すべき位置に対応している。移動台座6cには、また、複数のセメントミルク注入口6eが形成されている。セメントミルク注入口は、セメントミルクを注入可能にする注入口である。
継手杭体3に取り付けられるコアー体6の中打体6fは、中継部材6iの一端に取り付けられる。第12図のコアー体6は、第11図のコアー体に中打体6fを取り付けたものとすることができる。この取り付けは、例えば、中継部材6iの中央に雌ネジが切り、そこに中打体6fの中央に突設した雄ネジを螺合することによっても達成できる。中継部材6iと中打体6fとを一体にしても良い。また、中打体6fの径は中継部材6iの太さよりも大きくなっている。さらに、中継部材6hと、中継部材6iの長さは、中継部材6iの方が長くなっている。さらに、中打体6fを含めたコアー体6の長さは、先導杭体2や継手杭体3の長さとほぼ同じ長さになっている。
尚、本発明は、中継部材6hの断面形状を、角形に限定しない。すなわち、本発明において、中継部材6hの断面形状は円形や、五角形や六角形等の多角形であっても良い。また、本発明は、中打体6fを含めたコアー体6の長さが、先導杭体2や継手杭体3の長さと異なることを排除しない。
次に、第二実施形態に係る土木工事用杭1に用いられる先導部5を、第13図を用いて説明する。第二実施形態における先導部5は、複数の掘削翼5bを有している。この掘削翼5bと、上記した導掘削螺旋翼7や継手螺旋翼8等の螺旋翼とにより、本発明に係る土木工事用杭1を土中に埋設することが容易になる。但し、本発明は、土木工事用杭に掘削翼5bと、導掘削螺旋翼7や継手螺旋翼8等の螺旋翼とを両方設けることに限定しない。
次に、第二実施形態に係る土木工事用杭1から楔体6a、6bを突出させるために用いる根出し鋼棒30を、第14図を用いて説明する。
根出し鋼棒30は多段式であり、外周にネジがきってあり、雄ネジ部30aを形成している。他方、継手杭体3の内部の上部には、ネジが切ってあり、雌ネジ部3eを形成している。すなわち、雌ネジ部3eに雄ネジ部30aを螺合させることにより、根出し鋼棒30を回転させながら継手杭体3の内部に押し込むことが可能になる。但し、継手杭体3の内部中ほどまでは案内レール4が取り付けられているので、雌ネジ部3eは継手杭体3の上部のみに設けるものである。すなわち、案内レール4は、先導杭体2と継手杭体3を組み合わせた長さよりも短い長さとなっている。また、根出し鋼棒30は図示しないが多段式になっているので、所定の長さまで根出し鋼棒30が継手杭体3の中まで挿入されると継ぎ足して長くする。これにより、適切にコアー体6を圧入することが出来るようになる。
以上が、第二実施形態における土木工事用杭1と、上記第一実施形態における土木工事用杭1の違いである。
次に第二実施形態における土木工事用杭1を地面100に圧入した後の楔体6a、6bの突出について第15図を用いて説明する。
第15図(a)は、第二実施形態における土木工事用杭1を先導杭体2のコアー体6を中心に描いた断面図であり、楔体6a、6bの突出前の状態を表している。また、第15図(b)は、第15図(a)において、楔体6a、6bを突出させた状態を表している。尚、第15図では、先導杭体2について主として説明するが、継手杭体3においても同様である。
まず、土木工事用杭1について説明する。先導杭体2の内壁とその内部のコアー体6の中継部材6hとの間には広い空間Sが形成されている。従って、セメントミルを充填して強固な土木工事用杭1を得ることができる。第15図(a)に示されているように、土木工事用杭1を組立てた状態では、楔体6a、6bは切り押し開口部2a、2bから突出可能に位置している。先導杭体2の上部には継手杭体3が固定されてあり、先導杭体2のコアー体6の上に継手杭体3のコアー体6が乗っかった状態になっている。この時、先導杭体2のコアー体6の移動台座6cには、継手杭体3のコアー体6の中打体6fが接している。
第15図(a)の状態で、土木工事用杭1の上部より、根出し鋼棒30を挿入して螺合させると、回転により大きなトルクが発生する。これにより、図中下向きの力Fが上方のコアー体6に掛かり、上下のコアー体6は同時に下方に押される。その結果、蝶番6gが開き、それに固定されている楔体6a、6bが曲がることなく土木工事用杭1から第15図(b)のように外側に押し出される。
本実施例では、楔体6a、6bは、第一実施形態に比較して次の三つの特徴を有している。一つ目は、楔体6a、6bが、コアー体6の強固な且つ平らな中継部材6hの側面に取り付けられている点である。極めて大きな力を楔体6a、6bに伝達することができる。二つ目は、楔体6a、6bが、コアー体6の中継部材6hに蝶番6g等の角度を変えられる部材を用いて取り付けられている点である。楔体6a、6bを湾曲することなく地中に真っ直ぐに挿入することができる。三つ目は、楔体6a、6bは、幅広で厚く屈曲しない材料で作られている点である。コアー体6の中継部材6hと先導杭体2の内壁との間に大きな間隔Sがあったとしても楔体6a、6bが湾曲しない。
本実施形態の土木工事用杭1においても、4本の案内レールを前述のマグネットクロスゲージ40を用いて鋼管内壁に且つ正確な所望の位置に一度に固定する。他方、土木工事用杭1に内蔵するコアー体6の移動台座6cには、4本の誘導溝6dが形成されているので、これに案内レール4を保持することで、従来、非常に困難であった組立作業における時間の浪費が節約できる。これにより、二人一組の作業が一人での簡単な作業に改善された。また、楔体6a、6bを土木工事用杭1から突出させ根を張った状態では、土木工事用杭1の側壁は複数の楔体6a、6bにより支持され且つ先端部は螺旋翼により支持される。これにより、土木工事用杭1は、強固に地中に根を張った状態になる効果を有する。
さらに、本実施形態の土木工事用杭1は、前記した第一実施形態の土木工事用杭1よりも簡単な構成であるという特徴を有する。第一実施形態の土木工事用杭1においては、楔体6a、6bを突出させるためには楔体6a、6bが湾曲することが必要である。一方、本実施形態の土木工事用杭1から楔体6a、6bを突出させるためには楔体6a、6bが曲がることは必ずしも必要でない。それ故、第一実施形態の土木工事用杭1を小型の土木工事用杭として、また第二実施形態の土木工事用杭1を大型の土木工事用杭として、分けて用いることも可能である。但し、本発明は、前述した第一実施形態や第二実施形態に限定しない。
【産業上の利用可能性】
以上のように本発明に係る土木工事用杭によれば、案内レールがあるため、土木工事用杭を迅速に且つ容易に組立ることが可能になる。また、マグネットクロスゲージがあるので、容易に案内レールを互いに適した位置に保つことが可能になり、土木工事用杭内に案内レールを設けることが容易になる。又量産化でき、改良を重ね簡素化で経済的にも安価に提供できることを特徴とする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に後付けで固定される先導部を有し且つ内部は空洞状に形成され、また側壁には複数の開口部が設けられている土木工事用杭本体内に、複数枚の楔体を有するコアー体が装着されて成る土木工事用杭において、
該土木工事用杭本体の内部には該コアー体の案内誘導を可能にする案内レールが備えられていて、
該案内レールを介して該コアー体が案内誘導され、該楔体の先端が該開口部に適切に導かれることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の土木工事用杭において、
前記土木工事用杭本体は、2以上に分割された杭本体部分が接合固定されており、前記コアー体は各杭本体部分に1つずつ配置されることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項3】
請求の範囲第2項に記載の土木工事用杭において、
前記案内レールは、分割された杭本体部分を跨って複数本が土木工事用杭本体内に配置されることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項4】
請求の範囲第2項に記載の土木工事用杭において、
前記案内レールは、分割された杭本体部分にそれぞれ複数本が配置されることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の土木工事用杭において、
前記開口部が外部からの力により開放する切り押し開口部であり、開放された切り押し開口部の舌片部分は少なくとも下端部が前記土木工事用杭本体と接続されていて、当該舌片部分がスロープを形成していることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載の土木工事用杭において、
前記土木工事用杭は、外部に土掘削用の螺旋翼を備えており、それにより、前記土木工事用杭が土中に貫入するのを補助することを特徴とする土木工事用杭。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第6項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、
前記先導部は、掘削翼を備えていることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項8】
請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、
前記楔体は、隣り合う楔体と異なる長さであることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項9】
請求の範囲第1項〜第8項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、
前記土木工事用杭本体の断面形状を円形あるいは角形としたことを特徴とする土木工事用杭。
【請求項10】
請求の範囲第1項〜第9項のいずれか一項に記載の土木工事用杭において、
前記楔体は、一つずつ、前記開口部に対応する位置において前記コアー体に蝶番等の角度を変えられる部材を用いて取り付けられていることを特徴とする土木工事用杭。
【請求項11】
請求の範囲第1項〜第10項のいずれか一項に記載の土木工事用杭の生産に用いられる磁石を備えたマグネットクロスゲージであって、
複数の前記案内レールを互いに並行に維持しつつ、前記土木工事用杭本体内部に挿入可能で、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に互いに並行な状態で固定した後、前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に残したまま前記土木工事用杭本体から外部に取り出し可能なマグネットクロスゲージ。
【請求項12】
請求の範囲第11項に記載のマグネットクロスゲージであって、
前記案内レールを保持可能な複数の溝が周辺部に形成され、それに隣接してマグネットが取り付けられており、その一面に取手が設けられてなる第一のマグネットクロスゲージ部と、
前記第一のマグネットクロスゲージ部に固定された棒部材と、
前記棒部材に移動可能に又は移動不能に取り付けられ、その周辺部に前記案内レールを保持可能な複数の溝とそれに隣接してマグネットが取り付けられている第二のマグネットクロスゲージ部と、
を備えて構成されてなるマグネットクロスゲージ。
【請求項13】
請求の範囲第11項又は第12項に記載のマグネットクロスゲージを用いて案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法であって、
マグネットクロスゲージを用いて複数の前記案内レールを互いに並行に維持する工程と、
互いに並行に維持されている前記案内レールを前記土木工事用杭本体内部に挿入し、前記土木工事用杭本体内部での前記案内レールの位置を決める工程と、
前記案内レールをそれぞれ前記土木工事用杭本体の内壁に固定する工程と、
前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に残して前記マグネットクロスゲージのみを前記土木工事用杭本体の外部に取り出す工程と、
を備えていることを特徴とする案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法。
【請求項14】
請求の範囲第13に記載の案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法において、
前記土木工事用杭本体が、2つ以上の杭本体部分から構成されており、
前記案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法は、それに先立って、これら杭本体部分の接合固定する工程を備えていることを特徴とする案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法。
【請求項15】
請求の範囲第13に記載の案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法において、
前記土木工事用杭本体が、2つ以上の杭本体部分から構成されており、
前記案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法は、2つ以上の杭本体部分のそれぞれに対して行うことを特徴とする案内レールを土木工事用杭本体内に固定する方法。
【請求項16】
請求の範囲第1項〜第10項のいずれか一項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、
前記土木工事用杭本体の側壁部に開口部を形成した後又は前に、案内レールを該土木工事用杭本体の内壁に固定する工程と
土木工事用杭本体内に先端が鋭角状に形成される複数枚の楔体を有するコアー体を該案内レールにより案内誘導し、当該楔体の先端が前記開口部近傍に位置するようにセットする工程と、
を含んで構成されてなる土木工事用杭製造方法。
【請求項17】
請求の範囲第16項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、
前記土木工事用杭本体が2つ以上の杭本体部分から構成されており、前記土木工事用杭を製造する方法は、前記案内レールを土木工事用杭本体の内壁に固定する工程に先立って、これら杭本体部分の接合固定する工程を含んでおり、
前記案内レールを土木工事用杭本体の内壁に固定する工程は、前記案内レールを接合固定された複数の杭本体部分を跨るように設置するものであることを特徴とする土木工事用杭製造方法。
【請求項18】
請求の範囲第16項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、
前記土木工事用杭本体が2つ以上の杭本体部分から構成されており
前記案内レールを前記土木工事用杭本体の内壁に固定する工程及び前記楔体の先端を前記開口部近傍に位置するようにセットする工程とは、それぞれの杭本体部分に対して行われ、
さらに、しかる後、コアー体を備えた杭本体部分を接合固定する工程を、
を含んで構成されてなる土木工事用杭製造方法。
【請求項19】
請求の範囲第16項〜第18項のいずれか一項に記載の土木工事用杭を製造する方法であって、前記案内レールの固定工程の後に、さらに、
前記土木工事用杭本体の一端に円錐あるいは角錐状に形成される先導部を固定する工程と、
を含んで構成されてなる土木工事用杭製造方法。

【国際公開番号】WO2005/014939
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512889(P2005−512889)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000492
【国際出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(595068416)
【Fターム(参考)】