説明

圧力センサ

【課題】
【解決手段】流体系に密封装着される圧力センサユニットであって、取り付け部材と、取り付け部材を貫通し且つ圧力センサユニットが流体系に装着された場合に流体系と接触する開口部を有する膜空胴と、膜空胴の先端部に形成された膜と、膜撓みセンサとを具備し、膜は、取り付け部材の応力及び歪みから膜を隔離するように構成された応力隔離部材により取り付け部材から分離される圧力センサユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力センサの技術に関し、特に、生物医学解析システムの流体系に密封装着される圧力センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは、多くの流体系などにおいて重要な構成要素であり、信頼性の高い出力信号を供給するために、特定の流体系及びその流体系における圧力センサの位置に関する条件に適合していなければならない。一般に、圧力センサはある特定の圧力検出範囲に限定されており、種々の目的に適する多様なセンサが存在する。多くの用途で、1つの重要な特徴は、順次使用される試料ボリュームの相互汚染の危険を回避することである。従って、センサを洗浄可能であること及び流体が貯留されるようなポケット等が存在しないことは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−038789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の技術の1つ以上の欠点を克服する新たな圧力センサユニット及び圧力センサ構成を提供することである。この目的は、独立特許請求の範囲において定義されるセンサユニット及びセンサ構成により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのようなセンサユニットの利点の1つは、従来のセンサユニットと比較して、密封力、印加圧力、熱膨張などの形の外部からの影響を受けにくいことである。
【0006】
もう1つの利点は、センサユニット本体を1つの材料片から一体に形成できるので、欠陥及び汚染の原因となるポケットを形成することなく均質な不活性材料から安価に製造可能なことである。
【0007】
本発明の実施形態は従属特許請求の範囲において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面を参照して本発明を以下に詳細に説明する。
【図1a】図1aは、圧力センサアセンブリの一実施例を概略的に示した図である。
【図1b】図1bは、圧力センサアセンブリの一実施例を概略的に示した図である。
【図1c】図1aは、圧力センサアセンブリの一実施例を概略的に示した図である。
【図2】図2a及び図2bは、本発明に係る圧力センサアセンブリの一実施形態を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1a〜図1cは、高圧生物医学解析システムなどで使用されるセンサユニット20を有する圧力センサアセンブリ10の一実施例を概略的に示した図である。図1aにおいて、圧力センサアセンブリ10及び圧力センサユニット20は、図1bの線A‐Aに沿った横断面図で概略的に示され、図示の便宜上、いくつかの特徴は図の平面に取り込まれている。図1bは、以下に詳細に説明されるように、破線により示されるいくつかの内部特徴を含む正面図である。圧力センサアセンブリ10は、圧力センサユニット20、接続筐体30及びセンサ支持筐体40を具備する。
【0010】
図1cに最もよく示すように、圧力センサユニット20は、密封面60を有する取り付け部材50と、取り付け部材50を貫通し且つ密封面60により取り囲まれた開口部80を有する膜空胴70と、膜空胴70の先端部に形成された膜90と、膜撓みセンサ100とを具備する。キャピラリートラップなどを効果的に回避するために、取り付け部材50及び膜90は1つの材料片から一体に形成されるのが好ましい。膜は、膜空胴の容積が小さいにも関わらず、流体系の高い圧力に耐えられるように形成される。あるいは、センサは、何らかの適切な方法によって接合される2つ以上の別個の部品から形成されてもよい。図1bに示されるように、センサユニットは円形の横断面を有してもよいが、正方形又は楕円形などの別の形状であってもよい。更に、取り付け部材50及び膜90はそれぞれ異なる横断面形状を有してもよい。
【0011】
膜撓みセンサ100は、薄膜歪みゲージ、容量性ゲージ、誘導性ゲージ、マイクロメカニックセンサ、光センサ等のように膜90の撓みの程度を検出可能な何らかの種類のセンサであってもよい。一実施形態では、膜撓みセンサ100はスパッタ薄膜フルブリッジ歪みゲージ回路である。スパッタ金属歪みゲージ回路は、他の多くの歪みゲージ技術より優れた長期間安定性及び温度能力を示す。開示されるセンサアセンブリにおいて、膜撓みセンサ100は、支持筐体の背面にある穴を通るケーブル110により流体系制御装置等に接続される。あるいは、膜撓みセンサ100は無線接続されてもよい。
【0012】
圧力センサユニットは、更なる密封材料を使用することなく圧力センサアセンブリ(流体系)の相補形密封面に圧接密封される密封面60を有する。図1a〜図1cにおいて、相補形密封面は、接続筐体20の接続面の環状密封突起部110から構成される。このような密封構成により、密封されるべき2つの構成要素の間の縁部境界面に至るまで欠けるところなく密封されるので、キャピラリートラップの発生は効果的に回避される。開示される実施形態では、密封面60は、膜空胴開口部80を取り囲む狭い領域により形成される。取り付け部材50に密封力が加えられることにより、密封面60は、流体系の環状密封突起部110の相補形密封面に圧接される。開示される実施形態では、密封面60は平坦な面であり、密封接続を実現するために、境界面をきわめて精密に表面仕上げすること及び境界面に大きな圧力が加えられることが必要である。尚、相補形密封面が円錐形又は波形などの適切な形状であれば、密封面60はほぼどのような形状であってもよい。
【0013】
圧力センサユニット20が環状密封突起部110に圧接密封された場合、接続筐体30に形成された入口120及び出口130は、圧力センサユニット20の膜空胴70と流体連通する。入口120及び出口130は、圧力センサアセンブリ10を流体系に接続するために使用される。別の実施形態では、圧力センサアセンブリは、弁などの機能ユニットに一体に組み込まれてもよい。その場合、機能ユニットは、圧力センサユニット20の膜空胴と流体連通する複数の入口及び出口を具備してもよい。
【0014】
開示される実施形態では、接続筐体30に関して圧力センサユニット20を支持し且つ1つ以上の固着部材140によって接続筐体30に圧接されるように構成されたセンサ支持筐体40に圧力センサユニット20を配置することにより、密封力が加えられる。固着部材140により加えられる力によって直接影響を受けない再現可能な密封力を実現するために、センサ支持筐体40は、圧力センサユニット20を支持する支持ばね構成150を具備する。図1aにおいて、固着部材140は、センサ支持筐体40の対応するねじ穴に装着されるボルトとして概略的に示され、支持ばね構成150は、例えば1つ以上のばね座金及び支持スリーブから構成される。
【0015】
高圧下で圧力センサユニット20を流体系に密封接続するために、密封力は非常に大きくなければならない。しかし、加えられる密封力及び膜撓みセンサ100の感度に関して、圧力センサユニット20はその筐体部材30、40への外部からの機械的な影響に応答してしまう場合があり、これが誤差の原因になりうることが判明している。例を挙げると、図1bに更に詳細に示されるように、支持ばね構成150により圧力センサユニット20に加えられる密封力は、密封面60から横方向にある距離だけずれる。相補形の密封面60の間で所望の密封を実現するために大きな密封力を加えなければならないため、密封力のずれは取り付け部材50に歪み及び応力を発生させる。その歪み及び応力は膜90に伝達され、その結果、センサ特性に歪みが生じる。この種の圧力センサユニット20が圧力センサアセンブリの最終位置に取り付けられた場合、膜90に対応する膜撓みセンサ100は自動的に影響を受ける。圧力センサアセンブリ10の取り付け後及び実験開始前などに、膜撓みセンサ100からの出力を解釈するレジストレーションユニットをリセット及び/又は校正することにより、この取り付け歪みが処理されてもよい。しかし、センサは流体系に堅固に取り付けられるので、例えば異なる構成要素間の熱膨張差及び流体配管の装着に起因する構成要素の機械的妨害などの他の外部影響も膜に伝達されてしまう。更に、流体系における圧力変化がセンサアセンブリにおける圧力センサユニットの取り付け状態に影響を及ぼす場合もあり、この影響も膜に伝達されて、膜の撓みに追加される。
【0016】
図2a及び図2bは、上記の種類の圧力センサユニット21を有する圧力センサアセンブリ10の一実施形態を概略的に示した図である。一実施形態では、圧力センサユニット21を流体系に取り付けることによって取り付け部材50で発生する応力及び歪みから膜90を隔離するように構成された応力隔離部材200により、膜90は取り付け部材50から分離される。上記の構成と同様に、図2aにおいて、圧力センサアセンブリ10及び圧力センサユニット21は、図1bの線A‐Aに沿った横断面で概略的に示される。
【0017】
上述の図1a〜図1cの圧力センサユニット20と同様に、図2a及び図2bの圧力センサユニット21は、密封面60を有する取り付け部材50と、取り付け部材50を貫通し且つ密封面60により取り囲まれた開口部80を有する膜空胴70と、膜空胴70の先端部に形成された膜90と、膜撓みセンサ100とを具備し、取り付け力及び外部からの他の影響によって取り付け部材50で発生する応力及び歪みから膜90を隔離するように構成された応力隔離部材200により、膜は取り付け部材から分離される。
【0018】
一実施形態では、応力隔離部材200は、取り付け部材50と膜90とを相互に接続する薄肉管状部材210である。管状部材210の寸法は、取り付け部材及び筐体30及び40への接続面の構造、並びに加えられる取り付け力及び圧力センサユニット21の所望の圧力範囲に応じて選択されなければならない。一般に、管状部材210は、取り付け部材50から伝達される応力及び歪みを弾性的に吸収することにより膜90を隔離するのに十分な薄さの壁を有し且つ十分な長さを有していなければならない。その一方で、管状部材210は、流体系の流体の圧力による変形を回避するのに十分な剛性も有していなければならない。
【0019】
膜90を取り付け部材50から更に隔離するために、開示される圧力センサユニット21の応力隔離部材200は、薄肉管状部材210と膜90とを相互に接続する剛性隔離部材220を具備する。これにより、管状部材210を介して伝達される残留応力及び残留歪みから膜は完全に隔離される。前述のように、剛性隔離部材220の寸法は、加えられる力及び圧力、並びに取り付け部材50及び管状部材210の寸法に応じて選択される。
【0020】
キャピラリートラップなどを効果的に回避するために、取り付け部材50、応力隔離部材200及び膜90は、1つの材料片から一体に形成されるのが好ましく、且つ容積の小さな膜空洞を有するにも関わらず流体系の高圧に耐えられるように形成される。あるいは、センサは、何らかの適切な方法によって一体に接合される2つ以上の別個の部品から形成されてもよい。上述した通り、図1bに示されるように、圧力センサユニット21は、円形の横断面を有してもよいが、正方形又は楕円形などの別の形状であってもよい。更に、取り付け部材50、応力隔離部材200及び膜90はそれぞれ異なる横断面形状を有してもよい。
【0021】
開示される実施形態では、取り付け部材50は、対向する筐体30、40の面により支持されるフランジ形である。しかし、システムに十分な支持及び密封が与えられるのであれば、取り付け部材50は、雄ねじ、1つ以上の円錐形支持面などの何らかの適切な方法で筐体30、40により支持されてもよい。更に、流体系への密封装着は、ガスケット材料を含む又は含まない平面シール、円錐形面シール、ラジアルシールなどの何らかの適切な密封系により実現されてもよい。
【0022】
図1bに示される圧力センサユニット20と図2bに示される圧力センサユニット21とをFEMプログラムANSYSワークベンチを使用して理論的に比較すると、膜90において外部力により発生される垂直歪みは、図1bのセンサユニット20と比べて図2bのセンサユニット21で理論上約140分の1まで減少することがわかった。
【符号の説明】
【0023】
10 圧力センサアセンブリ
20 圧力センサユニット
21 圧力センサユニット
30 接続筐体
40 センサ支持筐体
50 取り付け部材
60 密封面
70 膜空胴
80 開口部
90 膜
100 膜撓みセンサ
110 環状密封突起部
120 入口
130 出口
140 固着部材
150 支持ばね構成
200 応力隔離部材
210 薄肉管状部材
220 剛性隔離部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体系に密封装着される圧力センサユニットであって、
取り付け部材と、
前記取り付け部材を貫通し且つ前記圧力センサユニットが前記流体系に装着された場合に前記流体系と接触する開口部を有する膜空胴と、
前記膜空胴の先端部に形成された膜と、
膜撓みセンサと
を具備し、前記膜が、前記取り付け部材の応力及び歪みから前記膜を隔離するように構成された応力隔離部材で前記取り付け部材から分離されている、圧力センサユニット。
【請求項2】
前記応力隔離部材は、前記取り付け部材と前記膜とを相互に接続する薄肉管状部材である、請求項1記載の圧力センサユニット。
【請求項3】
前記応力隔離部材は、前記薄肉管状部材と前記膜とを相互に接続する剛性隔離部材を具備する、請求項2記載の圧力センサユニット。
【請求項4】
前記取り付け部材、前記応力隔離部材及び前記膜は、1つの材料片から一体に形成される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の圧力センサユニット。
【請求項5】
前記圧力センサユニットはほぼ円形の横断面を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の圧力センサユニット。
【請求項6】
前記取り付け部材はフランジ形である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の圧力センサユニット。
【請求項7】
前記取り付け部材の外側にねじ山が形成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の圧力センサユニット。
【請求項8】
前記取り付け部材は、前記膜空胴の前記開口部を取り囲む狭い領域により形成された密封面を具備し、前記密封面は、前記取り付け部材に密封力を加えることにより前記流体系の相補形密封面に圧接された場合に前記流体系に密封装着されるように構成される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の圧力センサユニット。
【請求項9】
接続筐体と、センサ支持筐体と、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の圧力センサユニットとを具備する圧力センサアセンブリであって、
前記接続筐体は、前記圧力センサユニットに密封装着される相補形の密封面と、前記圧力センサユニットの前記膜空胴と流体連通する入口及び出口とを具備し、
前記センサ支持筐体は、前記接続筐体に関して前記圧力センサユニットを支持し且つ1つ以上の固着部材によって前記接続筐体に圧接されるように構成される圧力センサアセンブリ。
【請求項10】
前記支持筐体は、前記圧力センサユニットを支持する支持ばね構成を具備する、請求項9記載の圧力センサアセンブリ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522244(P2012−522244A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503367(P2012−503367)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050340
【国際公開番号】WO2010/114465
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】