説明

圧力センサ

【課題】圧力を高精度に検出可能にする。
【解決手段】第1のケース1の凹部2内に圧力検出用の検出素子4を配設し、圧力導入孔14を有する第2のケース11を凹部2を覆うように第1のケース1に組み付け、周辺部が第2のケース11に固定されたメタルダイヤフラム16と凹部2とで囲まれた圧力検出室19を備え、圧力検出室19内に圧力伝達媒体20を充填した。メタルダイヤフラム16の周辺部上に配設されメタルダイヤフラム16を第2のケース11に固定する押さえ部材17を備え、第1のケース1の一面に凹部2を囲むように設けられた溝21内に収容され押さえ部材17により押圧支持されたシール部材22を備えた。更に、シール部材22は、溝21内に収容されて押さえ部材17により押圧された状態で、溝21の内周面21a及び外周面21bに接触するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出室内にオイルを充填したオイル封止型の圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケースに設けられた圧力検出室内にオイル(圧力伝達媒体)を充填し、充填したオイルをメタルダイヤフラムとOリングによって封止するように構成された圧力センサが記載されている。この圧力センサにおいては、ケースにOリング収容用の溝部を形成し、この溝部に収容したOリングを押さえ部材で押圧し、押さえ部材とメタルダイヤフラムをケースに溶接している。上記構成の圧力センサでは、押さえ部材の内周端部の形状をテーパ形状にすることで、Oリングの支持機能を損なうことなく、メタルダイヤフラム固定部の耐性及び精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−98608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、燃費向上や排ガス規制に対応した新規エンジン開発や新規トランスミッション開発が進み、圧力センサの高精度化の要望がある。しかし、上記構成の圧力センサの場合、Oリングをケースの溝部に収容したときに、溝部の内周面とOリングとの間に隙間がある。このため、測定媒体の圧力変動時にOリングが上記溝部の内周面側に変形して、圧力検出室の容積変化が発生するおそれがあり、圧力の検出誤差が大きくなるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、圧力を高精度に検出することができる圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、一面に凹部が形成された第1のケースと、前記凹部内に配設された圧力検出用の検出素子と、圧力導入孔を有し前記凹部を覆うように前記第1のケースに組み付けられた第2のケースと、周辺部が前記第2のケースに固定された状態で前記凹部と前記圧力導入孔とを区画するメタルダイヤフラムと、前記凹部と前記メタルダイヤフラムとで囲まれ内部に圧力伝達媒体が充填された圧力検出室と、前記メタルダイヤフラムの周辺部上に配設され前記メタルダイヤフラムを前記第2のケースに固定する押さえ部材と、前記第1のケースの一面に前記凹部を囲むように設けられた溝と、前記溝内に収容され前記押さえ部材により押圧支持されたシール部材とを備え、前記圧力導入孔から導入された圧力により前記メタルダイヤフラムに発生する応力を、前記圧力伝達媒体を介して前記検出素子へ伝達するように構成された圧力センサにおいて、前記シール部材は、前記溝内に収容されて前記押さえ部材により押圧された状態で、前記溝の内周面及び外周面に接触するように構成されているので、測定媒体の圧力変動時にシール部材が溝部の内部で変形しなくなり、圧力検出室の容積変化が発生しなくなるから、圧力を高精度に検出することができる。
【0007】
上記構成の場合、請求項2の発明のように、前記シール部材はOリングであることが好ましい。
また、請求項3の発明のように、前記シール部材は、シール面から突出する凸状形状を有するシール部材であることが良い構成である。この構成の場合、請求項4の発明のように、前記シール部材は、粘性の高いシリコーン樹脂やフッ素樹脂の液状シール剤を硬化させることにより形成されることが好ましい。また、請求項5の発明のように、前記シール部材は、フッ素樹脂やフロロシリコーン系樹脂で形成されていることが良い。
【0008】
請求項6の発明によれば、前記溝の内部における前記シール部材の外周側にバックアップリングを配設したので、作動圧力が高圧な環境で圧力センサを使用したときに、バックアップリングによりシール部材のむしれやねじれ損傷などの発生を防止することができる。
【0009】
上記構成の場合、請求項7の発明のように、前記バックアップリングは、樹脂成型品であることが好ましい。また、請求項8の発明のように、前記バックアップリングは、硬化後の材料硬度が高い液状シール剤で形成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態を示す圧力センサの全体概略断面図
【図2】図1中の2点鎖線で示す部分の拡大図
【図3】Oリングの外径寸法と溝の深さ寸法と関係を示す図
【図4】Oリングの圧縮率と永久圧縮歪との関係を示す特性図
【図5】本発明の第2実施形態を示す図2相当図
【図6】本発明の第3実施形態を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付している。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のオイル封止型の圧力センサの全体構成を概略的に示す断面図であり、図2は、図1中の2点鎖線で示す部分の拡大図である。これら図1及び図2に基づいて本実施形態の圧力センサの構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、圧力センサはケースプラグ1(第1のケース)を備えており、このケースプラグ1は、例えば、断熱樹脂材料であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂を型成形することにより作られており、本実施形態ではほぼ円柱状をなしている。このケースプラグ1のうち一端部(図1中の下端部)の端面(一面)には凹部2が形成されており、他端部には開口部3が形成されている。
【0013】
図2にも示すように、凹部2には、センサ部4(圧力検出用の検出素子)が配設されている。このセンサ部4は、センサチップ5と台座6とを有して構成されており、センサチップ5と台座6とは陽極接合又は共有接合されている。センサ部4の台座6は、シリコーン系樹脂などによる接着材を介して凹部2の底面に接着されている。
【0014】
センサチップ5には、ダイヤフラム7が形成されており、このダイヤフラム7には、図示しないブリッジ回路を構成するように形成されたゲージ抵抗が設けられている。そして、このセンサチップ5は、ダイヤフラム7に圧力が印加されると、ゲージ抵抗の抵抗値が変化してブリッジ回路の電圧が変化し、この電圧の変化に応じてセンサ出力信号を出力する半導体ダイヤフラム式の圧力センサチップである。
【0015】
また、図1に示すように、ケースプラグ1には、センサチップ5と外部の回路等とを電気的に接続するための複数個の金属製棒状のターミナル8が配設されている。各ターミナル8は、インサートモールド(インサート成形)によりケースプラグ1と一体に成形されることにより、ケースプラグ1内に保持されている。
【0016】
具体的には、各ターミナル8はケースプラグ1を貫通しており、各ターミナル1のうち一端部はケースプラグ1から凹部2内に突出しており、他端部はケースプラグ1から開口部3内に突出している。凹部2内に突出している各ターミナル8の端部は、ボンディングワイヤ9を介してセンサチップ5と電気的に接続されている。開口部3内に突出している各ターミナル8の端部は、図示しないワイヤハーネス等の外部配線部材を介して外部回路と電気的に接続されている。
【0017】
そして、凹部2のうちターミナル8が突出している部分には、例えば、シリコーン系樹脂から成るシール材10が配設されている。このシール材10は、凹部2とターミナル8との隙間を封止するためのものである。
【0018】
また、ケースプラグ1の図1中の下端部には、ハウジング11(第2のケース)が組み付けられている。本実施形態では、これらケースプラグ1およびハウジング11により、センサ部4を備える圧力センサのケースが構成されている。具体的には、ハウジング11には収容凹部12が設けられており、この収容凹部12内にケースプラグ1のうちの凹部2が設けられた一端部が挿入され、ハウジング11の端部13がケースプラグ1にかしめられることでケースプラグ1とハウジング11とが組み付けられている。
【0019】
上記ハウジング11は、例えば、SUS等の金属材料よりなるものであり、測定媒体を導入するための圧力導入孔14が形成されている。この圧力導入孔14の外周壁面には、圧力センサを外部機器(図示しない)に固定するためのねじ部15が形成されている。
【0020】
また、ハウジング11のうちの上記凹部2が形成されているケースプラグ1の一端部の端面と対抗している部分には、例えば、SUS等からなる円形のメタルダイヤフラム16と、このメタルダイヤフラム16の外縁部分16a上に載置された環状のリングウェルド(押さえ部材)17とが配設されている。
【0021】
上記構成の場合、レーザ溶接等によりメタルダイヤフラム16の外縁部分16aおよびリングウェルド17をハウジング11に対して溶接することで、ハウジング11、メタルダイヤフラム16およびリングウェルド17が溶け合った溶接部18が形成されている。なお、メタルダイヤフラム16のうち外縁部分16aは、リングウェルド17と共にハウジング11に対して固定される部分である。メタルダイヤフラム16のうち凹部2を閉塞する部分16bは、圧力伝達媒体20の体積変化を吸収し、測定媒体の圧力と圧力検出室19内の圧力の均衡を保つダイヤフラム部として機能する部分である。
【0022】
このように構成されたケースプラグ1とハウジング11において、凹部2、メタルダイヤフラム16、およびリングウェルド17で圧力検出室19が構成されている。この圧力検出室19内には、メタルダイヤフラム16に印加された圧力をセンサチップ5に伝達する圧力伝達媒体20が充填されている。この圧力伝達媒体20は、例えば、フッ素オイルやシリコーンオイルなどのオイルで構成されている。
【0023】
また、ケースプラグ1のうちの凹部2が設けられた一端部の端面には、凹部2を囲むように環状の溝21が形成されている。この環状の溝21の内部には、封止部材として例えばシリコーンゴム等からなるOリング22が収容されている。このOリング22は、ケースプラグ1とハウジング11とのかしめによるかしめ圧でリングウェルド17(メタルダイヤフラム16)によって押圧されることで圧力検出室19から圧力伝達媒体20が漏れることを防止(封止)するものである。この構成の場合、図2に示すように、Oリング22は、リングウェルド17によって押圧された状態において、ケースプラグ1の凹部2の溝21の内周面21a及び外周面21bに接触(密接)すると共に、溝21の内底面21c及びリングウェルド17に接触(密接)するように構成されている。
【0024】
ここで、Oリング22が押圧変形される前の状態の形状を、図3に示す。この図3に示すように、押圧変形される前のOリング22は、ケースプラグ1の溝21内に収容された状態では、溝21の開口縁部21aの表面から上方に突出している。即ち、Oリング22の外径寸法(最大寸法)をAとし、溝21の深さ寸法をBとすると、A>Bが成立するように構成されている。そして、Oリング22の圧縮率を次の式の通り定義する。
【0025】
圧縮率(%)=(1−(B/A))*100
本実施形態におけるOリング22の上記圧縮率と永久圧縮歪との関係を、図4に示す。この図4に示すように、圧縮率が8%以下の場合、シール不良が発生し、圧力伝達媒体20が漏れる可能性がある。反対に、圧縮率が40%以上の場合、Oリング22の圧縮割れが発生する可能性がある。このため、ケースプラグ1とハウジング11とのかしめによるかしめ圧で押圧したときのOリング22の圧縮率を、8〜40%の範囲に設定することが好ましい。
【0026】
上記構成の圧力センサの圧力検出動作について簡単に説明する。測定媒体が圧力導入孔14を通じてメタルダイヤフラム16に印加されると、圧力検出室19内に充填されている圧力伝達媒体20を介してセンサチップ5に形成されているダイヤフラム7に圧力が印加される。ダイヤフラム7に圧力が印加されると、ダイヤフラム7のブリッジ回路のゲージ抵抗の抵抗値が変化する。このため、センサチップ5では、ブリッジ回路の出力電圧が変化し、印加された圧力に応じたセンサ信号が出力される。このセンサ信号は、センサチップ5からボンディングワイヤ9およびターミナル11を介して外部に出力される。
【0027】
以上説明した構成の圧力センサによれば、Oリング22(シール部材)は、溝21内に収容されてリングウェルド17(押さえ部材)により押圧された状態で、前記溝21の内周面21a及び外周面21bに接触するように構成されているので、従来構成とは異なり、測定媒体の圧力変動時にOリング22が溝部21の内部で変形しなくなり、圧力検出室19の容積変化が発生しなくなるから、圧力を高精度に検出することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第2実施形態では、Oリング22の代わりに、シール面から突出する凸状形状を有するシール部材23を用いた。このシール部材23は、ケースプラグ1の溝21内に例えば粘性の高いシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の液状シール剤を塗布し、シール面から突出する凸状形状が形成されるように硬化させて形成している。そして、シール部材23は、リングウェルド17によって押圧された状態において、ケースプラグ1の凹部2の溝21の内周面21a及び外周面21bに接触(密接)すると共に、溝21の内底面21c及びリングウェルド17に接触(密接)する構成となっている。
【0029】
上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、Oリング等の成形品を組み付ける必要がないため、Oリングに付着する異物混入を防止でき、圧力検出室19の気密性をより一層向上させることができる。
【0030】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態を示すものである。尚、第2実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第3実施形態では、ケースプラグ1の溝21の内部に、第2実施形態のシール部材23よりもやや小さい形状のシール部材23と、例えば樹脂成形品からなるバックアップリング24を収容した。この場合、シール部材23が内周側となり、バックアップリング24が外周側となるように収容した。そして、シール部材23は、リングウェルド17によって押圧された状態において、ケースプラグ1の凹部2の溝21の内周面21a及びバックアップリング24に接触(密接)すると共に、溝21の内底面21c及びリングウェルド17に接触(密接)する構成となっている。また、バックアップリング24は、シール部材23及び溝21の外周面21bに接触(密接)する構成となっている。
【0031】
上述した以外の第3実施形態の構成は、第2実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第3実施形態においても、第2実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第3実施形態によれば、圧力センサを作動圧力が6.9MPaを超えるような環境で使用しても、バックアップリング24によりシール部材23のむしれやねじれ損傷などを防止することができ、シール部材23の寿命を長くすることが可能となる。
【0032】
尚、上記第3実施形態では、バックアップリング24を樹脂成形品で形成したが、これに限られるものではなく、硬化後の材料硬度が高い液状シール剤(例えばエポキシ樹脂)でバックアップリングを形成しても良い。また、圧力センサを、例えば、エンジンオイルやトランスミッションオイルに浸漬する形態で使用する場合には、フッ素樹脂やフロロシリコーン系樹脂等で形成したシール部材を使用することにより、圧力検出室19内の気密性を一層向上させることができる。更に、上記第3実施形態では、シール部材23を用いたが、これに代えて、Oリングを用いても良い。
【符号の説明】
【0033】
図面中、1はケースプラグ(第1のケース)、2は凹部、4はセンサ部、5はセンサチップ、11はハウジング(第2のケース)、14は圧力導入孔、16はメタルダイヤフラム、17はリングウェルド(押さえ部材)、18は溶接部、19は圧力検出室、20は圧力伝達媒体、21は溝、21aは内周面、21bは外周面、22はOリング(シール部材)、23はシール部材、24はバックアップリングを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に凹部が形成された第1のケースと、前記凹部内に配設された圧力検出用の検出素子と、圧力導入孔を有し前記凹部を覆うように前記第1のケースに組み付けられた第2のケースと、周辺部が前記第2のケースに固定された状態で前記凹部と前記圧力導入孔とを区画するメタルダイヤフラムと、前記凹部と前記メタルダイヤフラムとで囲まれ内部に圧力伝達媒体が充填された圧力検出室と、前記メタルダイヤフラムの周辺部上に配設され前記メタルダイヤフラムを前記第2のケースに固定する押さえ部材と、前記第1のケースの一面に前記凹部を囲むように設けられた溝と、前記溝内に収容され前記押さえ部材により押圧支持されたシール部材とを備え、前記圧力導入孔から導入された圧力により前記メタルダイヤフラムに発生する応力を、前記圧力伝達媒体を介して前記検出素子へ伝達するように構成された圧力センサにおいて、
前記シール部材は、前記溝内に収容されて前記押さえ部材により押圧された状態で、前記溝の内周面及び外周面に接触するように構成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記シール部材は、Oリングであることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記シール部材は、シール面から突出する凸状形状を有するシール部材であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記シール部材は、粘性の高いシリコーン樹脂やフッ素樹脂の液状シール剤を硬化させることにより形成されることを特徴とする請求項3記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記シール部材は、フッ素樹脂やフロロシリコーン系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または3記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記溝の内部における前記シール部材の外周側にバックアップリングを配設したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記バックアップリングは、樹脂成型品であることを特徴とする請求項6記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記バックアップリングは、硬化後の材料硬度が高い液状シール剤で形成されていることを特徴とする請求項6記載の圧力センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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