説明

圧力分布測定センサ装置

【課題】被計測者の歩行に関する運動能力を容易に判断する。
【解決手段】重心軌跡算出部131の軌跡算出部135が、圧力分布センサ11上におけるローテーション動作状態の被計測者の重心位置の軌跡を算出する。安定輪郭抽出部141の抽出部142が、重心位置の軌跡に基づいて、圧力分布センサ11上において閉曲線となる安定輪郭を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢、病気及びケガなどにより歩行に関する運動能力が低下している患者に対して、運動能力を回復させる運動プログラムを提供するにあたって、当該患者の運動能力を判断するために用いられる圧力分布測定センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢、病気及びケガなどにより歩行に関する運動能力が低下している患者の運動能力を回復させるため、ロードセルを用いて患者が自身の立位状態における重心位置を確認しつつ、指示された重心位置と一致するように自身の重心位置を移動させる訓練を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平07−275307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、患者の運動能力によって訓練内容を変えていないため、当該患者の運動能力を回復させるのに適切な訓練が行われていない可能性がある。この点、指導員が患者に様々な動作を指示することによって患者の運動能力を把握した後に、当該患者の運動能力を回復させる運動プログラムを指示することが行われているが、患者の運動能力の把握は、指導員の長年の経験に基づいてなされるため、患者の運動能力を正確に把握することが難しい。
【0005】
本発明の主たる目的は、被計測者に関する運動能力を容易に把握することができる圧力分布測定センサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力分布測定センサ装置は、被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有するシート状の圧力分布センサと、被計測者が前記圧力分布センサに支持されるときに、前記圧力分布センサからの圧力分布データに含まれる前記複数の圧力検知領域のそれぞれで検知される圧力に対応した所定の周期毎の出力値から、前記圧力分布センサ上で移動する被計測者の重心位置の軌跡を算出する重心軌跡算出手段と、前記重心位置の軌跡に基づいて、前記圧力分布センサ上で閉曲線となる安定輪郭を抽出する安定輪郭抽出手段とを備えている。
【0007】
上記構成によれば、圧力分布センサ上で揺動する被計測者の重心位置の軌跡を算出し、その軌跡に応じた領域に基づいて安定輪郭を抽出することができる。これにより、被計測者の運動能力を示す被計測者の動作に応じた安定輪郭を抽出することができ、計測者が被計測者の運動能力状態を容易に把握することができる。
【0008】
また、本発明の圧力分布測定センサ装置は、前記圧力分布センサ上における被計測者の荷重領域に基づく外輪郭を算出する外輪郭算出手段と、前記外輪郭と前記安定輪郭とを比較する比較手段とをさらに備えるものであってもよい。
【0009】
上記構成によれば、被計測者の静止状態での荷重領域に基づく外輪郭を算出し、該外輪郭と安定輪郭とを比較することができる。これにより、計測者が正確に運動能力状態を把握することができる。
【0010】
また、本発明の圧力分布測定センサ装置は、前記圧力分布センサに支持される被計測者に対し、所定動作の指示を行う指示手段をさらに備えることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
上記構成によれば、被計測者の運動能力状態を示す被計測者の動作を指示することができるようになっている。これにより、運動能力状態の把握にあたって適切な所定の動作を指示することができる。
【0012】
また、本発明の圧力分布測定センサ装置の前記指示手段が指示する前記所定の動作は、ローテーション動作であることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、被計測者の運動能力状態を示すと共に、容易な動作であるローテーション動作を指示することができるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1の実施形態の圧力分布測定センサ装置1の概略構成を示す外観図である。図2は、圧力分布測定センサ装置1の機能ブロック図である。
【0015】
圧力分布測定センサ装置1は、被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有するシート状の圧力分布センサ11を有している。圧力分布測定センサ装置1は、被計測者が圧力分布センサ11上で所定動作を行わせたときの当該被計測者の重心位置の軌跡を算出し、重心位置の軌跡に基づく安定輪郭を抽出するものである。指導者は、圧力分布測定センサ装置1によって抽出された被計測者の安定輪郭に基づいて、被計測者の歩行に関する運動能力を把握する。尚、安定輪郭については後述する。
【0016】
図1に示すように、圧力分布測定センサ装置1は、シート状の圧力分布センサ11と、圧力分布センサ11に接続された圧力検出部12と、パーソナルコンピュータ(パソコン)20と、圧力検出部12とパソコン20とを接続する接続ユニット40とを備えている。接続ユニット40は、インターフェースボックス45及びインターフェースケーブル46を含んでおり、その両端が圧力検出部12及びパソコン20の各入出力インターフェース(図示しない)に接続されている。
【0017】
圧力分布センサ11は、多数の感圧センサ11aが格子状に配置された圧力検知領域を有している。圧力分布センサ11の厚さは、約0.1〜0.2mmである。被計測者がその上に立つための十分な剛性を有する検出板は必要ではなく、被計測者の両足は圧力分布センサ11上に載せることができる。また、圧力分布センサ11は、シート単体での使用も可能であるが、シートの保護の観点から、ゴムシートを緩衝用に積層してもよい。また、床上へのセッティングを容易にする目的でセンサを保持するアルミなどの金属製や樹脂製の板の上に積層してもよい。
【0018】
圧力検出部12は、多数の感圧センサ11aのそれぞれに接続されており、各感圧センサ11aの状態を検出する。本実施形態においては、各感圧センサ11aの状態は、それらに加えられる圧力に対応した0〜255のデジタル出力値によって表される。圧力検出部12は、このデジタル出力値をパソコン20に対して出力する。
【0019】
パソコン20は、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26と、制御部30(図2参照)とを有している。ここで、制御部30には、圧力分布測定センサ装置1に係る各種動作を制御する重心軌跡算出プログラム、安定輪郭抽出プログラム、及び、データ等が格納されたハードディスク、圧力分布測定センサ装置1の各部の動作を制御する信号を生成するために各種演算を実行するCPU、CPUでの演算結果などのデータを一時保管するRAMなどが含まれている。
【0020】
制御部30は、図2に示すように、重心軌跡算出部131と、安定輪郭抽出部141と、外輪郭算出部151と、結果解析部161と、報知制御部171とを有している。また、制御部30には、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26とが接続されている。
【0021】
重心軌跡算出部131は、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置(荷重状態)を検知し、被計測者の重心位置の軌跡を算出するものである。重心軌跡算出部131は、圧力分布データ記憶部132と、重心算出部133と、重心位置記憶部134と、軌跡算出部135と、重心軌跡記憶部136とを有している。
【0022】
圧力分布データ記憶部132は、圧力検出部12から接続ユニット40を介してパソコン20に送信された圧力分布データを記憶するものである。圧力分布データ記憶部132には、圧力分布センサ11に格子状に配置された多数の感圧センサ11a毎に、計測時間内におけるサンプル時間おきの圧力分布データが記憶されている。つまり、各サンプル時間に対応する1つの検知時刻における多数の感圧センサ11aの圧力分布データが、検知時刻の数だけ記憶されている。従って、この圧力分布データに基づいて、各感圧センサ11aで検知される圧力の時間的な変化を把握することができる。また、圧力分布センサ11で検出される圧力分布の時間的な変化を検知することができる。
【0023】
重心算出部133は、圧力分布データ記憶部132に記憶された圧力分布データに基づいて、検知時刻ごとに圧力分布センサ11上の被計測者の重心位置を算出するものである。
【0024】
重心算出部133における重心位置の算出方法について、図3を参照して説明する。図3は、所定時間において多数の感圧センサ11aで検知される圧力分布データを示している。本実施形態の圧力分布センサ11では、多数の感圧センサ11aが、X軸方向(図中左右方向)にm+1列に配置されていると共に、Y軸方向(図中上下方向)にn+1列に配置されている。従って、多数の感圧センサ11aは、(m+1)×(n+1)の格子状に配置されている。
【0025】
また、図3では、各感圧センサ11aで検知された圧力データが記号で示されている。例えば、X軸方向にはu列目であって且つY軸方向にはv列目に対応する感圧センサ11aによって検知される圧力データは、a(u、v)(但し、uは0以上m以下の整数、vは0以上n以下の整数)と表されている。
【0026】
この場合のX軸方向の重心位置Cfxは、次式で算出される。
【数1】

【0027】
また、Y軸方向の重心位置Cfyは、次式で算出される。
【数2】

【0028】
図2に戻って、重心位置記憶部134は、重心算出部133が算出した重心位置を記憶するものである。重心位置記憶部134には、上述のように、算出されたX軸方向の重心位置、Y軸方向の重心位置、及び、重心位置に対応する検知時刻、が関連付けられて記憶される。
【0029】
軌跡算出部135は、重心位置記憶部134に記憶される検知時刻毎の重心位置から重心位置の軌跡を算出する。
【0030】
ここで、図4を参照して、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置の軌跡について説明する。図4は被計測者の重心位置の軌跡を説明するための図であり、図中に仮想線示された足形110は、圧力分布センサ11上に配置された被計測者の足の配置位置を示している。また、図中の渦巻き状の線は、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置の軌跡111である。
【0031】
本実施の形態において、上述の検知時刻毎の圧力分布データは、被計測者に所定の動作を行わせている状態で計測される。具体的に、被計測者は、圧力分布センサ11上で直立し、足元は動かさず、足元から鉛直方向を軸として頭が円を描くように所定時間動作するように指示される。即ち、被計測者は、圧力分布センサ11上で足元を中心に身体が逆円錐を描くように動作する。以下、このような動作をローテーション動作と称す。被計測者がローテーション動作を行う所定時間において圧力分布データが所定周期毎に計測される。
【0032】
尚、計測時において、被計測者が行う所定の動作はローテーション動作に限定されることはない。
【0033】
また、本実施の形態において、上述の動作の指示は、圧力分布測定センサ装置1のディスプレイ21に指示内容が表示されるようになっているが、これに限定されるものではない。ディスプレイ21における所定の動作を指示する表示態様については後述する。
【0034】
被計測者が上述のような動作を行う際に計測された所定周期毎の圧力分布データから所定周期毎の重心位置の座標が算出された後、軌跡算出部135は、所定周期毎の重心位置座標を時系列順に直線で接続することで、直線が渦巻き状に折れ曲がって構成された重心位置の軌跡111を算出する。尚、本実施の形態では、重心位置の軌跡111は、被計測者が圧力分布センサ11上において静止している場合の重心位置から開始されるものである。以下、重心位置の軌跡111の開始位置を、圧力分布センサ11の中心とする。
【0035】
重心軌跡記憶部136は、算出された重心位置の軌跡111を記憶するものである。
【0036】
安定輪郭抽出部141は、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置の軌跡111から、安定輪郭を抽出し、記憶するものである。安定輪郭抽出部141は、抽出部142と、抽出結果記憶部143とを有している。
【0037】
抽出部142は、重心軌跡記憶部136に記憶される重心位置の軌跡から、図5に示すような安定輪郭113を抽出するものである。図5は安定輪郭113、及び、後述の外輪郭112を説明するための図であり、図中の安定輪郭113は、圧力分布センサ11上における安定輪郭113を示している。抽出結果記憶部143は、抽出された安定輪郭113を記憶するものである。
【0038】
ここで、『安定輪郭』とは、算出された重心位置の軌跡の特徴を1つの閉曲線で示したものである。即ち、安定輪郭は、被計測者の重心位置の軌跡に基づいて、圧力分布センサ11上で閉曲線となるように抽出されるものである。安定輪郭に囲まれた領域は、圧力分布センサ11上において、少なくとも重心位置の軌跡の一部を含む。本実施の形態における安定輪郭113は、図5に示すように、被計測者の重心位置の軌跡111のうちの最も外側に形成される軌跡を抽出して構成されるものである。具体的には、重心位置の軌跡111の開始位置と、重心位置の軌跡111の終了位置(最終計測位置)とが線分で接続され、最も外側の輪郭のみが選択されて、安定輪郭が抽出される。
【0039】
外輪郭算出部151は、圧力分布センサ11上における被計測者の荷重領域から、外輪郭112を算出し、記憶するものである。外輪郭算出部151は、算出部152と、外輪郭記憶部153とを有している。
【0040】
算出部152は、図5に示すような外輪郭112を算出するものである。ここで、『外輪郭』とは、被計測者の荷重領域の特徴を閉曲線で示したものである。即ち、外輪郭は、圧力分布センサ11上における被計測者の荷重領域に基づいて、算出されるものである。外輪郭に囲まれた領域は、圧力分布センサ11上において、少なくとも被計測者の荷重領域の一部を含む。本実施の形態において、被計測者の荷重領域は、被計測者が所定時間にローテーション動作を行った際に、圧力分布センサ11が圧力を検出したすべての座標領域を示す。図5に示す外輪郭112は、1つの閉曲線となっているが、これに限定されず、複数の閉曲線から成るものであってもよい。また、被計測者の荷重領域は、被計測者が静止した状態で検出されるものであってもよい。
【0041】
外輪郭記憶部153は、抽出された外輪郭112を記憶するものである。
【0042】
結果解析部161は、抽出結果記憶部143に記憶される安定輪郭113を解析すると共に、安定輪郭113と外輪郭記憶部153に記憶される外輪郭112とを比較するものである。即ち、結果解析部161は、安定輪郭113の評価を行うものである。
【0043】
具体的に、結果解析部161は、外輪郭112が有する面積に対する安定輪郭113が有する面積の割合(以下、安定輪郭割合)を算出し、図6に示すように、その算出結果を分類することで総合的な安定度を評価する。例えば、結果解析部161は、安定輪郭割合が33%未満の場合は、「狭い」に分類する。また、結果解析部161は、安定輪郭割合が33%以上で38%未満の場合は、「やや狭い」に分類する。また、結果解析部161は、安定輪郭割合が38%以上で43%未満の場合は、「平均的」に分類する。また、結果解析部161は、安定輪郭割合が43%以上で48%未満の場合は、「やや広い」に分類する。また、結果解析部161は、安定輪郭割合が48%以上である場合は、「広い」に分類する。結果解析部161は、分類が「狭い」ほど安定度が低いと評価し、分類が「高い」ほど安定度が高いと評価する。
【0044】
また、結果解析部161は、安定輪郭113の形状がどの程度正円に近いかを評価する。具体的に、結果解析部161は、圧力分布センサ11の中心から、上下左右方向及びこれら間の斜め方向の八方向への安定輪郭113までの距離のばらつきを解析する。即ち、この八方向と、安定輪郭113とが交わる点までの夫々の距離を算出する。そして、最大距離から最小距離を減算した結果が小さいほど正円に近いと評価する。
【0045】
さらに、結果解析部161は、上記八方向における中心から外輪郭112までの距離に対する中心から安定輪郭113までの距離の割合を算出して、各方向の安定度を評価する。この割合が小さいほど安定度が低いと評価し、割合が大きいほど安定度が高いと評価する。
【0046】
図2に戻って、報知制御部171は、被計測者を圧力分布センサ11上でローテーション動作をとらせる指示内容と、安定輪郭113に基づく安定輪郭画像213と、外輪郭112に基づく外輪郭画像212と、結果解析部161による評価内容とをディスプレイ21に表示させるものである。
【0047】
具体的に、ディスプレイ21に表示される上記内容の表示態様を図7及び図8を用いて説明する。図7は、被計測者にローテーション動作をとらせるための指示内容を示すディスプレイ21の正面図であり、図8は、安定輪郭画像213、外輪郭画像212、及び、結果解析部161による評価内容を示すディスプレイ21の正面図である。
【0048】
図7に示すように、測定開始時において、ディスプレイ21に被測定者にローテーション動作させるための指示内容表示画面が表示されるようになっている。具体的に、指示内容表示画面には、指示テキスト画像214、ローテーション動作説明画像215、及び、ローテーション動作回転方向画像216が表示される。
【0049】
指示テキスト画像214は、「前を向いたまま指示があるまで身体全体を時計回りに回転させてください。」という文字列を示すテキスト画像である。ローテーション動作説明画像215は、ローテーション動作の方法を説明する画像である。ローテーション動作回転方向画像216は、ローテーション動作の回転方向を説明する画像である。図示しないが、図7に示すローテーション動作とは逆方向の指示内容表示画面についても表示されるようになっている。
【0050】
これらの画像が表示されることにより、被計測者の運動能力状態を示す被計測者の動作を指示することができるようになっている。これにより、運動能力状態の把握にあたって適切な所定の動作を指示することができる。例えば、本計測に慣れていない計測者であってもローテーション動作を正確に被計測者に指示できるようになっている。また、指示内容表示画面を被計測者に対して提示する場合、被計測者はローテーション動作をどのように行えばよいかを容易に理解することができるようになっている。
【0051】
また、図8に示すように、測定終了後において、ディスプレイ21に被測定者にローテーション動作させるための評価内容表示画面が表示されるようになっている。具体的に、評価内容表示画面には、外輪郭画像212、安定輪郭画像213、結果コメント画像217、及び、評価コメント画像218が表示される。
【0052】
外輪郭画像212は、外輪郭112を画像として描画したものである。安定輪郭画像213は、安定輪郭113を画像として描画したものである。図8に示すように、外輪郭画像212、及び、安定輪郭画像213は、ディスプレイ21の左上部に表示される。安定輪郭画像213は、被測定者がローテーション動作を時計回りに行った場合と、反時計回りに行った場合との両方が表示されるようになっている。外輪郭画像212、及び、安定輪郭画像213は、重ね合わされて表示されるため、比較が容易にできるようになっている。
【0053】
外輪郭画像212、及び、安定輪郭画像213の右方には、結果コメント画像217が表示される。結果コメント画像217は、外輪郭112及び安定輪郭113の面積と、外輪郭112に対する安定輪郭113の割合と、その割合の評価とを示すものである。安定輪郭113の面積と、外輪郭112に対する安定輪郭113の割合と、その割合の評価とは、被測定者がローテーション動作を時計回りに行った場合と、反時計回りに行った場合との両方が表示されるようになっている。
【0054】
外輪郭画像212、安定輪郭画像213、及び、結果コメント画像217の下方には、評価コメント画像218が表示される。評価コメント画像218は、結果解析部161が解析した結果に基づく被測定者へのアドバイスが表示されるようになっている。具体的に、評価コメント画像218は、総合的な安定度、安定輪郭113の形状がどの程度正円に近いかの評価、及び、各方向の安定度を示した上で、対応するコメントを表示するようになっている。
【0055】
次に、図9を参照しつつ圧力分布測定センサ装置1の動作について説明する。図9は、圧力分布測定センサ装置1の動作を示すフローチャートである。計測が開始されると、まず、報知制御部171によって、被計測者に対して圧力分布センサ11上でローテーション動作を行うことを指示する指示内容表示画面がディスプレイ21に表示される(ステップS101)。
【0056】
次に、被計測者がローテーション動作を開始したか否かが判定される(ステップS102)。具体的に、所定以上の圧力分布データの変化があったが否かが計測され、所定以上の圧力分布データの変化があった場合、被計測者がローテーション動作を開始したと判定される。ローテーション動作を開始していないと判定された場合(ステップS102:NO)、ステップS102の処理を繰り返し行うことで、被計測者によってローテーション動作が開始されるのを待機する。
【0057】
一方、被計測者がローテーション動作を開始したと判定された場合(ステップS102:YES)、その時の圧力分布データ、および、圧力分布データの検知時刻が記憶される(ステップS103)。その後、所定時間が経過したか否かが判定される(ステップS104)。所定時間が経過していない場合(ステップS104:NO)、前回の圧力分布データの検知時刻から所定周期が経過したか否かが判定される(ステップS105)。所定周期が経過しない場合(ステップS105:NO)、ステップS105の処理が繰り返されて、所定周期が経過するまで待機状態となる。一方、所定周期が経過した場合(ステップS105:YES)、ステップS103に戻る。
【0058】
一方、ステップS104の処理において所定時間が経過したと判定された場合(ステップS104:YES)、1回分のローテーション動作が完了したとして、その旨報知し、重心位置の軌跡を算出する(ステップS106)。具体的には、圧力分布データから、各検知時刻における重心位置を算出した後、重心位置の軌跡を算出する。
【0059】
そして、重心位置の軌跡から安定輪郭を抽出する(ステップS107)。その後、ローテーション動作の逆方向(反時計回り)について測定済みであるか否かが判定される(S108)。ローテーション動作の逆方向について測定済みでない場合(ステップS108:NO)、ステップS101乃至ステップS107の処理を繰り返す。この場合、ステップS101で表示する指示内容表示画面の示すローテーション動作は反時計回りのものである。
【0060】
一方、ローテーション動作の逆方向について測定済みである場合(ステップS108:YES)、圧力分布データから外輪郭を算出すると共に、外輪郭、及び、安定輪郭について結果解析が行われる(ステップS109)。その後、評価内容表示画面がディスプレイ21に表示され(ステップS110)、当該計測が終了される。
【0061】
尚、上記フローチャートにおける処理の順序等は、これに限定されるものではない。例えば、重心位置の軌跡の算出(ステップS106)、及び、安定輪郭の抽出(ステップS107)は、2回のローテーション動作(時計回り、反時計回り)の圧力分布データ測定後に実行されるものであってもよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態の圧力分布測定センサ装置1は、被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有するシート状の圧力分布センサ(圧力分布センサ11)と、被計測者が圧力分布センサに支持されるときに、圧力分布センサからの圧力分布データに含まれる複数の圧力検知領域のそれぞれで検知される圧力に対応した所定の周期毎の出力値から、圧力分布センサ上で移動する被計測者の重心位置の軌跡(重心位置の軌跡111)を算出する重心軌跡算出手段(重心軌跡算出部131等)と、重心位置の軌跡に基づいて、圧力分布センサ上で閉曲線となる安定輪郭(安定輪郭113)を抽出する安定輪郭抽出手段(安定輪郭抽出部141等)とを備える構成にされている。
【0063】
上記構成によれば、圧力分布センサ上で揺動する被計測者の重心位置の軌跡を算出し、その軌跡に応じた領域に基づいて安定輪郭を抽出することができる。これにより、被計測者の運動能力を示す被計測者の動作に応じた安定輪郭を抽出することができ、計測者が被計測者の運動能力状態を容易に把握することができる。
【0064】
また、本実施の形態の圧力分布測定センサ装置1は、圧力分布センサ上における被計測者の荷重領域に基づく外輪郭(外輪郭112)を算出する外輪郭算出手段(外輪郭算出部151)と、外輪郭と安定輪郭とを比較する比較手段(結果解析部161等)とをさらに備える構成にされている。
【0065】
上記構成によれば、被計測者の静止状態での荷重領域に基づく外輪郭を算出し、該外輪郭と安定輪郭とを比較することができる。これにより、計測者が正確に運動能力状態を把握することができる。
【0066】
また、本実施の形態の圧力分布測定センサ装置1は、圧力分布センサに支持される被計測者に対し、所定動作の指示(図7に示す指示内容表示画面)を行う指示手段(ディスプレイ21等)をさらに備える構成にされている。
【0067】
上記構成によれば、被計測者の運動能力状態を示す被計測者の動作を指示することができるようになっている。これにより、運動能力状態の把握にあたって適切な所定の動作を指示することができる。
【0068】
また、本実施の形態の圧力分布測定センサ装置1のディスプレイ21の指示内容表示画面に表示される所定の動作は、ローテーション動作である。
【0069】
上記構成によれば、被計測者の運動能力状態を示すと共に、容易な動作であるローテーション動作を指示することができるようになっている。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、以下の構成を上述の実施の形態における構成に加えて、或いは重複して備えていても良い。
【0071】
例えば、本実施の形態において、上述の動作の指示は、圧力分布測定センサ装置1のディスプレイ21に指示内容が表示されるようになっているが、これに限定されるものではない。例えば、圧力分布測定センサ装置1がスピーカを備え、音声により指示を行うものであってもよいし、圧力分布測定センサ装置1にその旨のテキストが記載されるものであってもよい。また、指示は圧力分布測定センサ装置1によって行われるものに限定されることはない。また、例えば、測定者等により指示されるものとし、圧力分布測定センサ装置1のコストを抑えるようにしてもよい。
【0072】
また、本実施の形態における安定輪郭は、図5に示すように、被計測者の重心位置の軌跡のうちの最も外側に形成される軌跡を抽出して構成されるものであるが、これに限定されることはない。例えば、圧力分布センサ11上における中心(被計測者の静止状態での重心位置)から上下左右方向及びこれら間の斜め方向の八方向に対して、重心位置の軌跡の平均を取るものであってもよい。具体的に、安定輪郭は、上記八方向のそれぞれの方向において、重心位置の軌跡との交点の平均の座標を算出し、これらの座標を閉曲線となるように接続したものであってもよい。
【0073】
また、例えば、安定輪郭は、重心位置の軌跡に対応する所定時間のうち、ある期間のもののみに基づいて抽出されるものであってもよい。例えば、具体的に、上記八方向のそれぞれの方向において、最後に通過した座標を算出し、これらの座標を閉曲線となるように接続したものであってもよい。
【0074】
また、例えば、安定輪郭は、重心位置の軌跡が形成する閉空間の最大の輪郭を抽出するものであってもよい。
【0075】
また、本実施の形態における外輪郭は、圧力分布センサ11が圧力を検出したすべての座標領域の輪郭としたが、これに限定されることはない。例えば、外輪郭は、被計測者が静止した状態で検出された被計測者の荷重領域であってもよい。また、被計測者の足のうらを投影させた領域の輪郭であってもよいし、これに基づいて仮想的な閉曲線に形成したものであってもよい。
【0076】
また、例えば、外輪郭は、以下のように算出するものであってもよい。外輪郭は、被計測者の荷重領域についてY軸方向に位置を変えながらX軸方向に走査し、1つのY軸成分についてX軸が最大の座標と最小の座標とを算出し、算出したすべての座標に関して被計測者の荷重領域をなぞるように閉曲線を形成するものであってもよい。
【0077】
また、本実施の形態における安定輪郭は、2回のローテーション動作について別々に抽出するものであったがこれに限定されることはない。例えば、2回のローテーション動作における2つの重心位置の軌跡から1つの安定輪郭を抽出するものであってもよい。この場合、評価内容表示画面において、1つの安定輪郭画像213が表示される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力分布測定センサ装置の概略構成を示す外観図である。
【図2】図1の圧力分布測定センサ装置の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す感圧センサで検知される圧力分布データを示す図である。
【図4】図1に示す圧力分布センサ上における被計測者の重心位置の軌跡を説明するための図である。
【図5】安定輪郭、及び、外輪郭を説明するための図である。
【図6】安定輪郭の総合的な安定度の分類を説明するための図である。
【図7】指示内容表示画面を示すディスプレイの正面図である。
【図8】評価内容表示画面を示すディスプレイの正面図である。
【図9】図1に示す圧力分布測定センサ装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1 圧力分布測定センサ装置
11a 各感圧センサ
11 圧力分布センサ
11a 感圧センサ
12 圧力検出部
20 パソコン
21 ディスプレイ
25 キーボード
26 マウス
30 制御部
40 接続ユニット
45 インターフェースボックス
46 インターフェースケーブル
110 足形
111 重心位置の軌跡
112 外輪郭
113 安定輪郭
131 重心軌跡算出部
132 圧力分布データ記憶部
133 重心算出部
134 重心位置記憶部
135 軌跡算出部
136 重心軌跡記憶部
141 安定輪郭抽出部
142 抽出部
143 抽出結果記憶部
151 外輪郭算出部
152 算出部
153 外輪郭記憶部
161 結果解析部
171 報知制御部
212 外輪郭画像
213 安定輪郭画像
214 指示テキスト画像
215 ローテーション動作説明画像
216 ローテーション動作回転方向画像
217 結果コメント画像
218 評価コメント画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有するシート状の圧力分布センサと、
被計測者が前記圧力分布センサに支持されるときに、前記圧力分布センサからの圧力分布データに含まれる前記複数の圧力検知領域のそれぞれで検知される圧力に対応した所定の周期毎の出力値から、前記圧力分布センサ上で移動する被計測者の重心位置の軌跡を算出する重心軌跡算出手段と、
前記重心位置の軌跡に基づいて、前記圧力分布センサ上で閉曲線となる安定輪郭を抽出する安定輪郭抽出手段と、
を備えていることを特徴とする圧力分布測定センサ装置。
【請求項2】
前記圧力分布センサ上における被計測者の荷重領域に基づく外輪郭を算出する外輪郭算出手段と、
前記外輪郭と前記安定輪郭とを比較する比較手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力分布測定センサ装置。
【請求項3】
前記圧力分布センサに支持される被計測者に対し、所定動作の指示を行う指示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力分布測定センサ装置。
【請求項4】
前記所定の動作は、ローテーション動作であることを特徴とする請求項3に記載の圧力分布測定センサ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−69228(P2010−69228A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242757(P2008−242757)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(307020545)公立大学法人岡山県立大学 (8)
【Fターム(参考)】