説明

圧力変動エアーナイフ

【課題】湿式枚用洗浄装置の最終液切りエアーナイフの液切り効果を高めるため、エアーナイフを上下して被洗浄物に対する気体の風圧を制御する上下動手段を具備した圧力変動エアーナイフを提供することにある。
【解決手段】基板60の搬入方向Dに対し所定の角度θで設置されたエアーナイフ8と、エアーナイフ8から噴射される気体の噴射量を一定にした状態で、エアーナイフ8を上下動させる上下動手段20と、被洗浄物60の搬送位置を検出する1つ以上の位置検出センサ40と、位置検出センサ40の出力により上下動手段20を制御する上下動制御手段50とを有し、エアーナイフ8と被洗浄物60との対向距離Gが、基板60の搬送位置に応じて制御されることにより、基板面上に噴射される気体の風圧が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式枚用洗浄装置の最終液切り乾燥手段として用いられるエアーナイフに係り、詳しくは、液切り効果を高めるため、エアーナイフから噴射される気体の被洗浄物面上の風圧を制御する上下動手段を具備した圧力変動エアーナイフに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、特許文献1の乾燥処理装置の構成を示す装置構成図である。図3において、上流側の洗浄処理槽で処理が行われた基板(図示されず)は、乾燥処理槽2の搬送ローラ3上に、矢印方向から搬入される。搬入後、時間が経過し、基板の前端縁の幅方向一端部がエアーナイフ8から噴射される気体の噴射領域に至ると、第1のスイッチ11によって検出され、検出信号が制御装置13に入力される。
【0003】
制御装置13に第1のスイッチ11の検出信号が入力されると、この制御装置13から第1の流量制御弁15と第2の流量制御弁16とに駆動信号が出力され、流量制御弁15、16が開放される。それにより、一対のエアーナイフ8に管路14を通じて最大流量の気体が供給され、基板に付着残留した処理液は搬送方向と逆方向に押し流される。乾燥処理を開始した時点では、基板に付着残留する処理液の量が多いが、エアーナイフ8から最大流量で気体が噴出されるため、基板の乾燥処理を確実に行なうことが可能となる。
【0004】
さらに時間が経過すると、基板は第2のスイッチ12によって検出される位置まで搬送される。つまり、基板の後端縁の幅方向一端部がエアーナイフ8から噴射される気体の噴射領域に到達すると、それを第2のスイッチが検出する。制御装置13は、その検出信号によって第2の流量制御弁16を閉じ、エアーナイフ8から噴射される気体の量を半分にする。これにより、エアーナイフ8から噴射される気体は基板に残留する処理液を穏やかに押し流すから、勢い良く流す場合のように処理液が基板の搬送方向後端縁で跳ね、再付着することが防止される。
【0005】
しかも、エアーナイフ8に供給する気体の量を半減することができるから、気体の使用量を大幅に低減することができる。さらに、基板の後端縁の幅方向一端部がエアーナイフ8の噴射領域に到達した時点では、基板の上面に付着残留する処理液の量が乾燥処理開始時に比べて大幅に減少しているから、その時点で気体の供給量を半減しても、乾燥処理に悪影響を及ぼすことがなく、乾燥能率は低下しない。
【0006】
基板が所定の位置まで搬送されたことを第2のスイッチ12が検出すると、その時点から制御装置13に接続されたタイマ10が作動する。タイマ10が作動してから所定の時間が経過すると、エアーナイフ8から噴射される気体によって乾燥処理されていない部分は基板の後端縁の幅方向他端部だけとなる。タイマ10がタイムアップする経過時間では、制御装置13からの駆動信号によって第2の流量制御弁16が開放されてエアーナイフ8には最大流量の気体が供給される。それによって、基板の後端部の幅方向他端部に押し流された処理液はその後端部から確実に除去されることになる。
【0007】
すなわち、エアーナイフ8からの気体の噴射領域に基板の前端縁の幅方向一端部が到達した時点から、後端縁の幅方向一端部が到達するまでの間は気体の噴射量を最大とし、その後、乾燥処理されていない部分が基板の後端縁の幅方向他端部だけとなるまでは気体の噴射量を最大時の半分とし、さらに基板の後端縁の幅方向他端部を乾燥処理するときには再び気体の噴射量を最大にしている。
【0008】
そのため、気体の噴射量を常時最大として乾燥処理する場合に比べて気体の使用量を大幅に低減することができる。しかも、気体の噴射量を低減するタイミングは、基板の全面に処理液が付着残留している場合に比べその量が低減しているときであるから、気体の供給量を半減しても、基板に付着残留する処理液を確実に除去し、基板を乾燥することが可能である。
【特許文献1】特開2002−353189号公報
【0009】
ところがこの乾燥処理装置によると、気体の噴射量を常時最大として乾燥処理する場合に比べて気体の使用量を低減することができるものの、気体の噴射量を低減できるタイミングは、気体の噴射量を最大とするタイミングより短いため、依然として多量の気体を消費することになる。このため、基板サイズがさらに大きくなれば、さらに消費量が増えることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、湿式枚用洗浄装置の最終液切りエアーナイフの液切り効果を高めるため、エアーナイフを上下して被洗浄物に対する気体の風圧を制御する上下動手段を具備した圧力変動エアーナイフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧力変動エアーナイフは、湿式枚用洗浄装置の最終液切り乾燥手段として用いられる圧力変動エアーナイフであって、被洗浄物の搬入方向に対し所定の角度で設置されたエアーナイフと、エアーナイフから噴射される気体の噴射量を一定にした状態で、エアーナイフを上下動させる上下動手段と、被洗浄物の搬送位置を検出する1つ以上の位置検出センサと、位置検出センサの出力により上下動手段を制御する上下動制御手段とを有し、エアーナイフと被洗浄物との対向距離が、被洗浄物の搬送位置に応じて制御されることにより、被洗浄物面上に噴射される気体の風圧が制御されることを特徴とする。
【0012】
本発明の圧力変動エアーナイフのエアーナイフは、角度調整手段に設置され、被洗浄物の寸法形状に応じて、所定の角度に調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアーナイフを乾燥処理効果が最大となる角度に設定し、エアーナイフから噴射される気体の噴射量を一定にした状態で、エアーナイフを上下することにより、被洗浄物に対する気体の風圧を制御することが可能であるため、エアーナイフによる乾燥処理効果を低下させること無く、気体の消費量を低減することができ、この圧力変動エアーナイフを装備することにより、気体の消費量が少なく、乾燥処理効率の高い湿式枚用洗浄装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1aは、本発明による圧力変動エアーナイフの装置構成を搬送面の上側から見た構成図である。図1aにおいて、圧力変動エアーナイフのエアーナイフ8は、角度調整手段30に設置され、角度調整手段30は上下動制御手段20に設置されている。また、エアーナイフ8の両端は、気体供給源Sから気体停止バルブVを介して気体が供給されるよう、パイプ接続されている。さらに、エアーナイフ8は、角度調整手段30により、被洗浄物である基板60の搬入方向を示す矢印Dの方向に対して角度θをなして設置されている。
【0015】
基板60が搬送される経路の基板60の下側には、基板60の搬送方向の前端部Fと後端部Bの通過を検知する1つ以上の位置検出センサ40−1〜6が設置されている。位置検出センサ40−1〜6は、上下動制御手段50に接続され、検知した位置検出信号を送信する。上下動制御手段50は、この位置検出信号を受信して、上下動手段20と気体停止バルブVとを制御する。図1bは、図1aのエアーナイフ8と基板60とを、一点差線Aで切断した断面図である。エアーナイフ8と基板60との対向距離を示すギャップGは、上下動手段20の上下動により制御される。
【0016】
図2は、基板の搬送位置のタイミングと基板表面の気体の圧力との関係を示す基板表面圧力図である。図1において、気体供給源Sから供給される気体の圧力は、図2で示される圧力P1に設定されている。基板60が方向Dから搬入されると、位置検出センサ40−1は、前端部FをタイミングT1で検知した位置検出信号を、上下動制御手段50に送信する。上下動制御手段50はこの信号を受信すると、エアーナイフ8を降下させる降下開始信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は、降下を開始する。
【0017】
次に位置検出センサ40−2が、前端部FをタイミングT2で検知した位置検出信号を、上下動制御手段50に送信する。上下動制御手段50はこの信号を受信すると、エアーナイフ8の降下を停止させる降下停止信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は、降下を停止する。このタイミングT1からタイミングT2の間に、エアーナイフ8は、基板60の面の気体の圧力が圧力P2となる位置まで降下して停止する。
【0018】
次に位置検出センサ40−3が、前端部FをタイミングT3で検知した位置検出信号を上下動制御手段50に送信すると、上下動制御手段50は、気体停止バルブVにバルブを開ける信号を送信する。気体停止バルブVがこの信号を受信しタイミングT3でバブルを開けると、エアーナイフ8から圧力P2の気体が基板60の表面に向け噴射される。この圧力P2の状態は、位置検出センサ40−1が、基板60の後端部BをタイミングT4で検知した位置検出信号を上下動制御手段50に送信するまで継続する。これにより基板60の乾燥処理を開始した時点での多量の処理液を、確実に乾燥処理できる。
【0019】
位置検出センサ40−1が、タイミングT4で位置検出信号を上下動制御手段50に送信すると、上下動制御手段50はエアーナイフ8を上昇させる上昇開始信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は上昇を開始する。次に位置検出センサ40−2又は3が、後端の端部BをタイミングT5で検知した位置検出信号を上下動制御手段50に送信すると、上下動制御手段50は上昇を停止させる上昇停止信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は上昇を停止しする。
【0020】
このタイミングT4からタイミングT5の間に、エアーナイフ8は、基板60の面の気体の圧力が圧力P1となる位置まで上昇して停止する。この圧力P1の状態は、位置検出センサ40−4が、後端部BをタイミングT6で検知した位置検出信号を上下動制御手段50に送信するまで継続する。タイミングT4において基板60の後端部Bが位置検出センサ40−1に検知される時点においては、基板60の表面の処理液の量は減少しており、気体圧力P1でも乾燥処理が低下することは無い。
【0021】
位置検出センサ40−4が位置検出信号を上下動制御手段50に送信すると、上下動制御手段50は再度エアーナイフ8を降下させる降下開始信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は降下を開始する。次に位置検出センサ40−5が、後端部BをタイミングT7で検知した位置検出信号を、上下動制御手段50に送信する。上下動制御手段50はこの信号を受信すると、エアーナイフ8の降下を停止させる降下停止信号を上下動手段20に送信し、上下動手段20は、降下を停止する。このタイミングT6からタイミングT7の間に、エアーナイフ8は、基板60の面の気体の圧力が圧力P2となる位置まで降下して停止する。
【0022】
この圧力P2の状態は、位置検出センサ40−6が、後端部BをタイミングT8で検知した位置検出信号を上下動制御手段50に送信するまで継続する。タイミングT7からタイミングT8の間は、基板60の後端部Bがエアーナイフ8を通過し終えるタイミングであり、後端部Bの部分に残留している処理液は、気体の圧力P2により確実に乾燥処理される。上下動制御手段50には処理枚数が予めセットされており、タイミングT8の位置検出信号で1枚目の基板60の通過を確認すると、圧力P2の状態はそのまま継続される。次に、上記タイミングT3の場合と同様、2枚目の基板60の搬入を告げる位置検出信号を位置検出センサ40−6から受信することにより、上記と同じ工程に入れるため、基板乾燥の連続処理を維持することができる。上下動制御手段50は、タイミングT8の位置検出信号が、最後に処理された基板60の信号であると判断すると、気体停止バルブVにバルブを閉める信号を送信する。気体停止バルブVはこの信号を受信し、タイミングT8でバルブの停止を開始し、乾燥処理が終了する。
【0023】
基板60の特性や寸法形状により、乾燥処理を開始した時点T3で圧力P2の高圧噴射を行なうと、液ハネがひどく基板60への再付着が発生する場合がある。このため基板60の特性や寸法形状に合わせて、タイミングT3からT6の間を、液残りが無く且つ液ハネも無い圧力P3(P1<P3<P2)に設定することも可能である。エアーナイフ8は基板60の下側にも設けられ、一対のエアーナイフとして構成しても良い。また、角度調整手段30は、種々の基板60の特性や寸法形状に対応して、エアーナイフ8の角度θを調整し、乾燥処理効果が最大となる角度に設定することができる。さらに、連続処理における基板60の搬送間隔は、エアーナイフ8の角度θに応じて、互いの前端部Fと後端部Bとがエアーナイフ8に同時に掛からないよう配置されて搬送されることが望ましい。
【0024】
以上説明したように本発明によれば、エアーナイフを乾燥処理効果が最大となる角度に設定し、エアーナイフから噴射される気体の噴射量を一定にした状態で、エアーナイフを上下することにより、被洗浄物に対する気体の風圧を制御することが可能であるため、エアーナイフによる乾燥処理効果を低下させること無く、気体の消費量を低減することができる。この圧力変動エアーナイフを装備することにより、気体の消費量が少なく、乾燥処理効率の高い湿式枚用洗浄装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】aは、本発明による圧力変動エアーナイフの装置構成を示す構成図、bは、本発明によるエアーナイフと基板とを、一点差線Aで切断した断面図。
【図2】本発明の圧力変動エアーナイフによる気体の基板表面圧力図。
【図3】従来の乾燥処理装置の構成を示す装置構成図。
【符号の説明】
【0026】
8 エアーナイフ
20 上下動手段
30 角度調整手段
40 位置検出センサ
50 上下動制御手段
60 基板
F 前端部
B 後端部
D 搬入方向矢印
G ギャップ
θ 角度
S 気体供給源
P 圧力計
V 気体停止バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式枚用洗浄装置の最終液切り乾燥手段として用いられる圧力変動エアーナイフであって、
被洗浄物の搬入方向に対し所定の角度で設置されたエアーナイフと、
前記エアーナイフから噴射される気体の噴射量を一定にした状態で、前記エアーナイフを上下動させる上下動手段と、
前記被洗浄物の搬送位置を検出する1つ以上の位置検出センサと、
前記位置検出センサの出力により前記上下動手段を制御する上下動制御手段とを有し、
前記エアーナイフと前記被洗浄物との対向距離が、前記被洗浄物の搬送位置に応じて制御されることにより、前記被洗浄物面上に噴射される気体の風圧が制御されることを特徴とする圧力変動エアーナイフ。
【請求項2】
前記エアーナイフは角度調整手段に設置され、前記被洗浄物の寸法形状に応じて、前記所定の角度に調整されることを特徴とする請求項1に記載の圧力変動エアーナイフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−204248(P2009−204248A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48357(P2008−48357)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】