説明

圧力容器

【課題】圧力容器において、上蓋の取り扱い及び管理、並びに上蓋による容器本体の閉塞を容易且つ適切に行えるようにする。
【解決手段】支持機構3は、自由端部30aを上蓋1に接続させると共に、基部30bを縦向きの旋回中心軸32に対しその軸方向に移動可能に組み合わせてなる旋回アーム30と、旋回アーム30の基部30bと旋回中心軸32の支持体33との間に介在されて旋回アーム30に上方への付勢力を作用させる付勢手段31とを備える。クランプ機構4は、左右一対のクランプ部材40、40を備え、各クランプ部材40、40は上蓋1の縁部12と容器本体2の開口縁部20aとを側方から同時に納める締め込み溝40aを有すると共に、その一端側を支持体33に縦向きの軸40bをもって回動可能に組み合わせている。クランプ機構4は、両クランプ部材40、40の他端同士をこれを近接させる締め込み可能に接続させる接続手段41を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力容器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上蓋とこの上蓋により開放可能に閉塞される上部開口を持った容器本体とを備えて構成される圧力容器にあっては、上蓋は相応の重量を持つところであり、その開放作業などにおける取り扱いは必ずしも容易でない。また、開放時の上蓋の管理に格別の配慮を必要とさせる場合も少なくない。特に、食品や薬品の製造などに用いられる圧力容器にあっては、上蓋の汚染などは厳に防止されなければならない。また、この種の圧力容器では、通例、上蓋の周回方向に複数のクランプを配するなどして上蓋と容器本体との前記閉塞状態を確保するようにしているが、その作業は必ずしも容易でなく、また、この閉塞状態を適切に作り出すことには格別の配慮が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の圧力容器において、上蓋の取り扱い及び管理、並びに上蓋による容器本体の閉塞を容易且つ適切に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、圧力容器を、上蓋の支持機構と、上蓋のクランプ機構とを備えてなる圧力容器であって、
上蓋の支持機構は、
自由端部を上蓋に接続させると共に、基部を縦向きの旋回中心軸に対しその軸方向に移動可能に組み合わせてなる旋回アームと、
この旋回アームの基部と旋回中心軸の支持体との間に介在されてこの旋回アームに上方への付勢力を作用させる付勢手段とを備えてなり、
クランプ機構は、
上蓋の外形に倣い且つこの上蓋の外周の約半分の長さをそれぞれ持った左右一対のクランプ部材を備え、
各クランプ部材は上蓋の縁部と容器本体の開口縁部とを側方から同時に納める締め込み溝を有すると共に、その一端側を前記支持体に縦向きの軸をもって回動可能に組み合わせており、
さらにクランプ機構は、両クランプ部材の他端同士をこれを近接させる締め込み可能に接続させる接続手段を備えているものとした。
【0005】
上蓋を容器本体の開口上に重ね置いた状態から左右一対のクランプ部材の締め込み溝内にそれぞれ上蓋の縁部と容器本体の開口縁部が入り込むように一対のクランプ部材を前記縦向きの軸を中心に回動させ、この後、接続手段により一対のクランプ部材の他端同士を近接させる締め込みをなすことで、容器本体の開口を密閉することができる。接続手段の接続を解いて一対のクランプ部材の締め込み溝内から前記両縁部を抜き出させることで前記密閉状態は解除される。密封状態が解除されると、前記付勢手段により上蓋の容器本体の開口から離れる向きへの移動がアシストされる。これにより、前記旋回中心軸を中心とした上蓋の水平方向への回動による容器本体の開放作業を容易になすことができる。上蓋と容器本体とは容器本体の開放時にも一体化されており、この開放時の上蓋の管理に格別の配慮を払う必要はない。
【0006】
かかる圧力容器の好適な一つの態様としては、さらに、前記支持体が容器本体に備えられたブラケットに対し、この支持体及びブラケットのいずれか一方に設けられた縦向きの棒状体を、これらの他方に設けられた縦向きのスリーブに挿通して組み合わされるようにしておく。
【0007】
前記支持体はクランプ機構を構成するクランプ部材も支持している。したがって、前記スリーブを棒状体に挿通することで、上蓋及びクランプ機構を容器本体に組み合わせることができる。また、このスリーブから棒状体を抜き出すことにより、上蓋及びクランプ機構を容器本体から取り外すことができる。圧力容器の洗浄や滅菌ないしは殺菌処理時には、前記スリーブから棒状体を抜き外すことにより容易に上蓋と容器本体とを分離して、これをなすことができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、圧力容器における上蓋の取り扱い及び管理、並びに上蓋による容器本体の閉塞を容易且つ適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は圧力容器の平面構成図(a図)及び側断面構成図(b図)であり、上蓋は閉塞位置にある。
【図2】図2は図1の要部拡大構成図である。
【図3】図3は圧力容器の平面構成図(a図)及び側断面構成図(b図)であり、クランプ機構による上蓋と容器本体との締め込みを解いた直後の状態を示している。
【図4】図4は圧力容器の平面構成図(a図)及び側断面構成図(b図)であり、図3の状態から上蓋の取っ手側を持ち上げた状態を示している。
【図5】図5は圧力容器の平面構成図(a図)及び側断面構成図(b図)であり、図4の状態から上蓋を180度旋回させた容器本体の完全開放状態を示している。
【図6】図6はクランプ機構を構成する一対のクランプ部材の連結体による連結部分を側方から見て示している。
【図7】図7は支持機構を構成する支持体に連結体を組み合わせる手順を示した断面構成図であり、(a図)→(b図)→(c図)の順でこの組み合わせがなされる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図7に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる圧力容器は、上蓋1とこの上蓋1により開放可能に閉塞される上部開口20を持った容器本体2とを備えて構成されて、内部に大気圧と異なる一定の圧力下で貯留物を貯留し得るものである。この実施の形態にかかる圧力容器は、特に、食品や医薬品の製造などに用いるのに適した構造を備えている。
【0011】
容器本体2は、筒状をなす胴部21を有する。図示の例では、胴部21は円筒状をなすように構成されている。胴部21の上部は開放され、容器本体2は上部に開口20を備えている。この開口20はその全周を巡る外鍔22により縁取られており、この外鍔22により開口縁部20aが形成されている。容器本体2内の貯留物は側部や図示しない底部などに必要に応じて設けられる流出部より外部に圧送などされる。
【0012】
上蓋1は、容器本体2の前記開口20を塞ぐ大きさを備えている。図示の例では、上蓋1は円盤状をなすように構成されている。この上蓋1の直径は容器本体2の前記開口縁部20aの外径(外鍔22の鍔端における容器本体2の外径)と略一致するように構成されている。上蓋1の上部であってその中心を挟んだ一方側には、後述する旋回アーム30の自由端部30aの取り付け部10が形成されている。また、上蓋1の上部であってその中心を挟んだ他方側には略コ字状をなす金属棒材の両下端を上蓋1の上部に止着させてなる取っ手11が設けられている。
【0013】
かかる圧力容器は、上蓋1の支持機構3と、上蓋1のクランプ機構4とを備えている。
【0014】
上蓋1の支持機構3は、旋回アーム30と付勢手段31とを備えている。旋回アーム30は、自由端部30aを上蓋1に接続させると共に、基部30bを縦向きの旋回中心軸32に対しその軸方向に移動可能に組み合わせてなる。付勢手段31は、この旋回アーム30の基部30bと旋回中心軸32の支持体33との間に介在されてこの旋回アーム30に上方への付勢力を作用させる付勢手段31とを備えてなる。
【0015】
図示の例では、旋回中心軸32の支持体33は、容器本体2に備えられたブラケット23に対し、このブラケット23に設けられた縦向きの棒状体23aを、支持体33に設けられた縦向きのスリーブ33aに挿通して組み合わされるようになっている。図示の例とは別に、旋回中心軸32の支持体33は、容器本体2に備えられたブラケット23に対し、支持体33に設けられた縦向きの棒状体を、ブラケット23に設けられた縦向きのスリーブに挿通して組み合わされるようにしておくこともできる。
【0016】
図示の例では、ブラケット23は、胴部21の側部に一端を止着させたアングル材によって構成されている。棒状体23aは、このアングル材の水平部に設けられた貫通孔に通されたボルト23bによって構成されている。ボルト23bはその下端にアングル材の水平部を上下から挟み付けるナット23cが螺装されており、これにより胴部21の側部との間に間隔を開けてアングル材から上方に向けて突き出している。
【0017】
また、図示の例では、支持体33は、上面33cと下面33dとを長方形状とした略直方体状のブロックによって構成されている。支持体33の下面33dの外端側に、スリーブ33aの上端が止着されている。
【0018】
前記旋回中心軸32は、支持体33の上面33cの外端33e側から上方に突き出すように備えられている。図示の例では、支持体33に形成されたねじ穴33bに上方からねじ付けられる有頭のボルト32aにより、かかる旋回中心軸32を構成させている。
【0019】
図示の例では、旋回アーム30は、上蓋1に接続させる自由端部30aと基部30bとを共に略水平に配すると共に、基部30bを自由端部30aよりも上方に位置させ両者の間に基部30bの側に斜め上がりに延びる連接部30cとするように成形された板状体によって構成されている。基部30bに形成された貫通孔に旋回中心軸32を構成するボルト32aの頭部32b下が通されるようになっている。旋回アーム30の基部30bとこの頭部32bとの間には、容器本体2の開口20を上蓋1が閉塞した状態(図2)において間隔が形成されるようになっている。
【0020】
また、図示の例では、前記付勢手段31は、旋回中心軸32を内側に通した圧縮コイルバネ31aによって構成されている。このバネ31aのバネ上端は旋回アーム30の基部30bにリング状の座体31bを介して当接され、かつ、バネ下端は支持体33の上面33cにリング状の座体31bを介して当接されている。
【0021】
前記支持体33はクランプ機構4を構成する後述するクランプ部材40も支持している。したがって、前記スリーブ33aを棒状体23aに挿通することで、上蓋1及びクランプ機構4は容器本体2に組み合わされる。また、このスリーブ33aから棒状体23aを抜き出すことにより、上蓋1及びクランプ機構4は容器本体2から取り外される。図示の例では、前記ボルト23bの上端がスリーブ33aの上端の止着箇所の内側において支持体33の下面33dに突き当たる位置でブラケット23上に支持体33が支持されるようになっている。
【0022】
クランプ機構4は、左右一対のクランプ部材40、40と、接続手段41とを備えている。
【0023】
左右一対のクランプ部材40、40は、上蓋1の外形に倣い且つこの上蓋1の外周の約半分の長さをそれぞれ持っている。また、各クランプ部材40、40はそれぞれ上蓋1の縁部12と容器本体2の開口縁部20aとを側方から同時に納める締め込み溝40aを有すると共に、その一端側を前記支持体33に縦向きの軸40bをもって回動可能に組み合わせている。
【0024】
図示の例では、各クランプ部材40はそれぞれ、平面形状を、円盤状をなす上蓋1の円弧に倣った略半弧状をなすように構成されている。左右一対のクランプ部材40、40はその湾曲内側に前記締め込み溝40aを備えている。また、左右一対のクランプ部材40、40は、連結体40cをもって、その締め込み溝40aの側を向き合わせるようにして、その一端側で一体に組み合わされている。連結体40cは、上下二枚のプレート40d、40eにより構成されている。左側のクランプ部材40はこの二枚のプレート40d、40eの左端間その一端を挟み込み、また、右側のクランプ部材40はこの二枚のプレート40d、40eの右端間にその一端を挟み込んで、それぞれ縦向きの軸40bをもって連結体40cに回動可能に組み合わされている。一方、前記支持体33の内端33f側の上面33cには上側の前記プレート40dを納める凹み33gが形成されていると共に、この凹み33gの底33hと支持体33の下面33dとの間の距離が上下のプレート40d、40eの内面間の距離と略一致するようになっている。それと共に、かかる凹み33gの入り口における支持体33の外端33e側の口縁部には、支持体33の内端33f側に突き出してこの入り口を上側のプレート40dの幅以下に狭める係止爪33iが設けられている。また、この係止爪33iの下方では凹み33gの底33hに彫り込み33jが形成されている。そして、上側のプレート40dは、支持体33の外端33e側に向けられるプレート40dの外縁を彫り込み33jに入り込ませて傾斜させた状態(図7(a))から、この外縁側を支点にして上側のプレート40dの向きを水平にするように操作することで、この外縁を前記係止爪33iに引っ掛けるようにして前記凹み33gに納めることができるようになっている。(図7(b)から図7(c))支持体33の下面33dと内端33f側の側面との間には上側のプレート40dの前記操作時に下側のプレート40eの上面を案内する面取り33kが形成されている。図示の例では、かかる連結体40cを介して、各クランプ部材40、40はその一端側を前記支持体33に縦向きの軸40bをもって回動可能に組み合わせている。
【0025】
一方、接続手段41は、前記一対のクランプ部材40、40の他端同士をこれを近接させる締め込み可能に接続させる構成を備えている。
【0026】
図示の例では、かかる接続手段41は、一対のクランプ部材40、40の他端にそれぞれ形成された対向部40fの一方に縦向きの軸41cをもって一方端部を回動可能に組み合わされると共にこの対向部40fの他方に形成された図示しない溝に前方から中間部41bをはめ込まれる接続軸41aと、この接続軸41aの他方端部に螺進退可能にネジつけられた操作頭部41dとを備えてなる。かかる図示しない溝への中間部41bのはめ込み状態から操作頭部41dを螺進させることで、前記縦向きの軸41cと操作頭部41dとの間の距離を縮めて前記締め込みをなすようにしている。対向部40fはクランプ部材40の弧状部に交叉する向きにクランプ部材40の外側に突き出している。
【0027】
上蓋1を容器本体2の開口20上に重ね置いた状態から左右一対のクランプ部材40、40の締め込み溝40a内にそれぞれ上蓋1の縁部12と容器本体2の開口縁部20aが入り込むように一対のクランプ部材40、40を前記縦向きの軸40bを中心に回動させ、この後、接続手段41により一対のクランプ部材40、40の他端同士を近接させる締め込みをなすことで、容器本体2の開口20を密閉することができる。(図1)図示の例では、かかる上蓋1の縁部12の上面12aと容器本体2の開口縁部20aの下面20bとにそれぞれかかる締め込みを強めるほどに締め込み溝40aの内壁に接して両縁部同士の押しつけ力を高める傾斜が付けられている。接続手段41の接続を解いて一対のクランプ部材40、40の締め込み溝40a内から前記両縁部12、20aを抜き出させることで前記密閉状態は解除される。密封状態が解除されると、前記付勢手段31により上蓋1の容器本体2の開口20から離れる向きへの移動がアシストされる。図示の例では、上蓋1における旋回アーム30との接続側がやや上方に持ち上がる。(図3)これにより、前記旋回中心軸32を中心とした上蓋1の水平方向への回動による容器本体2の開放作業を容易になすことができる。(図4から図5)図示の例では、この開放作業を前記取っ手11を利用してなすようにしてある。上蓋1と容器本体2とは容器本体2の開放時にも一体化されており、この開放時の上蓋1の管理に格別の配慮を払う必要はない。また、圧力容器の洗浄や滅菌ないしは殺菌処理時には、前記スリーブ33aから棒状体23aを抜き外すことにより容易に上蓋1と容器本体2とを分離して、これをなすことができる。図示の例ではさらに、クランプ機構4と支持体33との分離も前記支持体33から連結体40cを取り外すことで容易であり、これらの隅々の洗浄なども適切になすことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 上蓋
12 縁部
2 容器本体
20a 開口縁部
3 支持機構
30 旋回アーム
30a 自由端部
30b 基部
31 付勢手段
32 旋回中心軸
33 支持体
4 クランプ機構
40 クランプ部材
40a 締め込み溝
40b 縦向きの軸
41 接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋の支持機構と、上蓋のクランプ機構とを備えてなる圧力容器であって、
上蓋の支持機構は、
自由端部を上蓋に接続させると共に、基部を縦向きの旋回中心軸に対しその軸方向に移動可能に組み合わせてなる旋回アームと、
この旋回アームの基部と旋回中心軸の支持体との間に介在されてこの旋回アームに上方への付勢力を作用させる付勢手段とを備えてなり、
クランプ機構は、
上蓋の外形に倣い且つこの上蓋の外周の約半分の長さをそれぞれ持った左右一対のクランプ部材を備え、
各クランプ部材は上蓋の縁部と容器本体の開口縁部とを側方から同時に納める締め込み溝を有すると共に、その一端側を前記支持体に縦向きの軸をもって回動可能に組み合わせており、
さらにクランプ機構は、両クランプ部材の他端同士をこれを近接させる締め込み可能に接続させる接続手段を備えていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
支持体が容器本体に備えられたブラケットに対し、この支持体及びブラケットのいずれか一方に設けられた縦向きの棒状体を、これらの他方に設けられた縦向きのスリーブに挿通して組み合わされるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185425(P2011−185425A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54566(P2010−54566)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(598174923)大阪サニタリー金属工業協同組合 (6)
【Fターム(参考)】