説明

圧力検知マット

【課題】より少ない部品点数で、かつ、より簡易な工程で製造することが可能であって、軽量化も図ることが可能な圧力検知マットを提供する。
【解決手段】互いに対向して配置され、押圧により接触可能な一対の電極板1,2と、一対の電極板1,2間に間隙を形成する複数のスペーサ3と、一対の電極板1,2の外側にそれぞれ配置された一対のマット本体4,5と、を備える圧力検知マットである。一対の電極板1,2のうちのいずれか一方または双方に、複数のスペーサ3を挿通可能な複数の孔部6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力検知マット(以下、単に「マット」とも称する)に関し、詳しくは、工作機械および産業用ロボット等の周辺の保護装置として使用される圧力検知マットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械および産業用ロボット等の周辺に配置される保護装置の一つとして、作業者等がその上に乗ったことおよび乗っていることを圧力により検知して機械の運転を停止させる、圧力検知マットがある。従来の圧力検知マットは、例えば、図6に示すような構造を有している。
【0003】
図6に示す圧力検知マット100は、一対の電極板101,102を、弾性を有するスペーサ103を介して積層し、その外側を一対のマット本体104,105で覆って形成されている。この場合、各スペーサ103は、上下電極板101,102に対し、粘着テープ等により接着される。また、各スペーサ103の周囲には、検知感度を向上するための接点リング106が配置されている。この圧力検知マット100においては、上部マット本体104を介して上部電極板101に圧力が付与されると、スペーサ103が圧縮変形して上部電極板101と接点リング106とが接触し、上部電極板101、接点リング106および下部電極板102が導通状態となる。
【0004】
このような圧力検知マット100は、図7に示すような工程で製造される。すなわち、まず、下部マット本体105上に、下部電極板102を設置する(図中の(a),(b))。次いで、下部電極板102上の所定の位置にスペーサ103を接着し(図中の(c)、なお、図中では簡単のためにスペーサを1個のみで示す)、その周囲に接点リング106を設置する(図中の(d))。次いで、その上に上部電極板101を配置して上部電極板101にスペーサ103を接着し(図中の(e))、さらにその上に上部マット本体104を配置することにより、マット100を得ることができる(図示せず)。
【0005】
また、図8に示すような構造を有する圧力検知マットも公知である。図示するマット200は、一対の電極板201,202を、弾性を有するスペーサ203を介して積層し、その外側を一対のマット本体204,205で覆っている点は、図6に示すマットと同様であるが、接点リングを配置せずに、スペーサ配置部以外の下部電極板の位置をかさ上げすることにより、検知感度の向上を図っているものである。このマット構造においても、各スペーサ203は、上下電極板201,202に対し、粘着テープ等により接着される。この圧力検知マット200においては、上部マット本体204を介して上部電極板201に圧力が付与されると、スペーサ203が圧縮変形して上部電極板201と下部電極板202とが接触し、上部電極板201および下部電極板202が導通状態となる。
【0006】
その他、圧力検知マットに関する公知技術として、例えば、特許文献1には、固定電極板と作動電極板との間に、複数の同一の空間部を格子状に併設した伸縮性及び復元性を有する非導電材により構成された隔離体を介在させた警告マットが開示されている。また、特許文献2には、上電極と下電極との対向領域に、その接触作動距離を上電極と下電極との間の間隔よりも小さくする作動距離補完導体部を設けた薄型マットスイッチが開示されており、特許文献3には、表裏両面に開口する複数の貫通孔が形成された軟弾性絶縁体と、その表裏両面に配設された一対の導電体と、軟弾性絶縁体の各貫通孔および一対の導電体により画成された空間内に、少なくとも一方の導電体に対して非接触状態で転動可能に閉じ込められた複数の導電性転動体と、を具備するマットスイッチ装置が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献4には、一対の電極板と、その間に点在して電極板間に隙間を形成する、弾性変形可能で絶縁性を有するクッション材と、その周囲に設けられ、設けられた位置での隙間の間隙寸法よりも薄く形成されて一方の電極板に接触する補助電極部と、を有する感圧スイッチが開示されている。
【特許文献1】実登第3076172号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2001−126583号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2002−163950号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2005−174747号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の圧力検知マットは、いずれも電極板にスペーサを貼付しているため、電極板間の間隙を狭めるために接点リング等の補助電極を用いることが必須となっていた。しかしながら、かかる補助電極を用いる従来の圧力検知マットは、部品点数が多くなるため、管理や組立てに多大な工数を有するという問題を有していた。また、接点リングの位置決めに時間を要するという難点もあった。さらに、マットの軽量化を図るためには電極板の板厚を薄くすることが効果的であるが、従来のマット構造において電極板の板厚を単に薄くすると、電極板が変形し易くなってしまい、作動不良を生ずる原因となりやすい。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、より少ない部品点数で、かつ、より簡易な工程で製造することが可能であって、軽量化も図ることが可能な圧力検知マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の圧力検知マットは、互いに対向して配置され、押圧により接触可能な一対の電極板と、該一対の電極板間に間隙を形成する複数のスペーサと、該一対の電極板の外側にそれぞれ配置された一対のマット本体と、を備える圧力検知マットにおいて、
前記一対の電極板のうちのいずれか一方または双方に、前記複数のスペーサを挿通可能な複数の孔部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記一方または双方の電極板における前記孔部の周縁部が、対向する他方の前記電極板に向かい隆起していることが好ましく、前記一方または双方の電極板における隆起した周縁部と、該電極板に隣接する前記マット本体との間に、空間が形成されていることがより好ましい。また、前記周縁部の隆起端が、前記電極板と略並行となる平坦部を形成することも好ましい。さらに、本発明においては、前記一方または双方の電極板を、プレス成形により好適に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極板のうちのいずれか一方に、スペーサを挿入可能な孔部を設けたことで、より少ない部品点数で、かつ、より簡易な工程で製造することができ、軽量化も図ることができる圧力検知マットを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の圧力検知マットの一好適例の概略部分断面図を示す。図示する本発明の圧力検知マット10は、一対の電極板1,2と、その間に間隙を形成する複数のスペーサ3と、これら一対の電極板1,2の外側にそれぞれ配置された一対のマット本体4,5とを備えている。このうち一対の電極板1,2は、互いに対向して、押圧により接触可能に配置されている。
【0015】
本発明においては、一対の電極板のうちのいずれか一方または双方、図示する例では下部電極板2に、複数のスペーサ3を挿通可能な複数の孔部6が形成されている。図3に、かかる孔部6を形成した下部電極板2の平面図を示す。これにより、従来の接点リング等の補助電極を用いることなく、上部電極板1と下部電極板2との間の接触距離を狭めて検知感度を向上することができ、補助電極の位置決めを行う必要もない。したがって、良好な検知感度を担保しつつ、部品点数および組立て工数の削減を図ることが可能となる。また、電極板の軽量化の効果も得ることができる。
【0016】
図2に、本発明の圧力検知マットの他の好適例の概略部分断面図を示す。図示する本発明のマット20は、一対の電極板11,12と、その間に間隙を形成する複数のスペーサ13と、これら一対の電極板11,12の外側にそれぞれ配置された一対のマット本体14,15とを備えている。このうち一対の電極板11,12は、互いに対向して、押圧により接触可能に配置されている。
【0017】
図2に示す実施形態においては、下部電極板12に、複数のスペーサ13を挿通可能な複数の孔部16が形成されるとともに、下部電極板12における孔部16の周縁部が、対向する上部電極板11に向かい隆起させられている。このように、孔部16の周縁部を隆起させることで、補助電極なしでより検知感度をより向上することができ、効果的である。また、この場合、図示するように、孔部16の周縁部の隆起端が、電極板11,12と略並行となる平坦部17を形成するものとすることで、電極板間をより接触しやすくして感度を向上する効果を得ることができ、より好適である。
【0018】
さらに、図示するように、下部電極板12における隆起した周縁部と、下部電極板12に隣接するマット本体15との間に空間が形成されていることで、スペーサ13が圧縮されやすくなって、検知感度をより向上することができる。なお、このように電極板に隆起させた部分を設けることで、電極板の剛性を向上する効果も得られる。
【0019】
また、図2に示す実施形態においては、スペーサ13が、独立の部品ではなく、下部マット本体15と一体的に形成されて、下部マット本体15の一部として設けられている。このようにスペーサを下部マット本体と一体化することで、部品点数および組み立て工数をより削減でき、好適である。
【0020】
本発明においては、一対の電極板のうちのいずれか一方または双方に上記孔部を設ける点のみが重要であり、これにより本発明の所期の効果を得ることができる。それ以外のマット構成や配線構造等の詳細については、常法に従い適宜構成することができ、特に制限されるものではない。
【0021】
本発明において孔部は、図示するように下部電極板に設ける他、上部電極板に設けてもよく、双方に設けてもよいが、好適には、下部電極板のみに設けて、上部電極板には設けないものとする。上部電極板に孔部を設けると、マットの平坦性を損なうことに加え、上部マット本体に対し上部電極板を接着することが必要となって、工数が増大する。
【0022】
本発明において、孔部を有する電極板は、プレス成形により形成することができる。図2に示すような、孔部の周縁部を隆起させるなどした電極板についても、プレス成形により容易に形成することが可能である。本発明に用いる電極板の材質としては、弾力性および屈曲耐久性を有する導電性材料、例えば、金属や導電性樹脂組成物等を挙げることができ、これら導電性材料を薄板状または箔状体として用いることができる。
【0023】
また、マット本体は、可撓性を有する絶縁材料により形成することができ、具体的には、ニトリルゴム(NBR)等のゴム材料や、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料を用いることができる。また、スペーサは、上部電極板および上部マット本体の自重を支える強度を有し、弾性変形し易い絶縁材料により形成する。具体的には例えば、シリコーンゴムや発泡ウレタン、発泡シリコーンゴム等を用いることができる。特には、押圧時の弾性変形により、押圧前の厚さに対して少なくとも20%以上薄くなる材料、すなわち、押圧前の厚さに対して80%未満の厚さになる材料を用いることが好ましい。中でも、繰返し変形時にもへたりを生じにくい、シリコーンゴムが好適である。
【0024】
ここで、図2に示すように、スペーサをマット本体と一体的に形成する場合に、スペーサ部分とマット本体とを異なる材料で形成する際には、2色成形の手法を用いればよい。これにより、所望の材料の組み合わせで、本発明のマットを構成することができる。
【0025】
図4に、図1に示す本発明のマット10を製造する際の工程図を示す。図示するように、この場合、まず、下部マット本体5上の所定の位置に、スペーサ3を接着する(図中の(a),(b)、なお、図中では簡単のためにスペーサを1個のみで示す)。次いで、下部マット本体5上に、スペーサ3に対応する位置に孔部を設けた下部電極板2を、スペーサ3を孔部6に嵌め込むことで積層し(図中の(c))、上部電極板1を設置して(図中の(d))、さらにその上に上部マット本体を配置することにより、本発明のマット10を得ることができる(図示せず)。
【0026】
また、図5に、図2に示す本発明のマット20を製造する際の工程図を示す。図示するように、この場合、スペーサ13を、下部マット本体15と一体的に形成しておく(図中の(a)、なお、図中では簡単のためにスペーサを1個のみで示す)。次いで、この下部マット本体15上に、スペーサ13に対応する位置に孔部16を設けた下部電極板12を、スペーサ13を孔部16に嵌め込むことで積層する(図中の(b))。さらに、この上に上部電極板11を設置して(図中の(c))、さらにその上に上部マット本体を配置することにより、本発明のマット20を得ることができる(図示せず)。
【0027】
図4,5に示すように、本発明のマットは、従来のマットの場合(図7)に比し、少ない工数で製造できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る圧力検知マットを示す概略部分断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る圧力検知マットを示す概略部分断面図である。
【図3】本発明に係る電極板を示す部分平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る圧力検知マットの製造工程を示す工程図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る圧力検知マットの製造工程を示す工程図である。
【図6】従来の圧力検知マットの一例を示す概略部分断面図である。
【図7】従来の圧力検知マットの一例の製造工程を示す工程図である。
【図8】従来の圧力検知マットの他の例を示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1,11,101,201 上部電極板
2,12,102,202 下部電極板
3,13,103,203 スペーサ
4,14,104,204 上部マット本体
5,15,105,205 下部マット本体
6,16 孔部
10,20,100,200 圧力検知マット
17 平坦部
106 接点リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置され、押圧により接触可能な一対の電極板と、該一対の電極板間に間隙を形成する複数のスペーサと、該一対の電極板の外側にそれぞれ配置された一対のマット本体と、を備える圧力検知マットにおいて、
前記一対の電極板のうちのいずれか一方または双方に、前記複数のスペーサを挿通可能な複数の孔部が形成されていることを特徴とする圧力検知マット。
【請求項2】
前記一方または双方の電極板における前記孔部の周縁部が、対向する他方の前記電極板に向かい隆起している請求項1記載の圧力検知マット。
【請求項3】
前記一方または双方の電極板における隆起した周縁部と、該電極板に隣接する前記マット本体との間に、空間が形成されている請求項2記載の圧力検知マット。
【請求項4】
前記周縁部の隆起端が、前記電極板と略並行となる平坦部を形成する請求項2または3記載の圧力検知マット。
【請求項5】
前記一方または双方の電極板が、プレス成形により形成されてなる請求項1〜4のうちいずれか一項記載の圧力検知マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−134873(P2009−134873A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307478(P2007−307478)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】