説明

圧力波過給機用の複合ハブ

本発明は、内燃機関を過給するためのガスダイナミック圧力波機械(6)の回転可能なセルロータ(7)の軸−ハブ−結合部を、チューブから成るハブアウタボディを有する個々の板材部品又はハブアウタボディ(71)の混成体及び鋳造された軸収容部であるディスク(18)から構成することを提案する。本発明により、全体を鋳造された軸−ハブ−結合部を置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、ハウジング内で軸上に回転可能に支承されたセルロータを有し、このセルロータが、過給空気用の供給ラインと燃焼ガス用の排気ライン間に配設されている、内燃機関を過給するためのガスダイナミック圧力波機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスダイナミックプロセスを閉じたガス通路内に発生させ、過給のために利用する過給システムは、一般に圧力波過給機又は圧力波機械と呼ばれる。セルロータは、シリンダ状に形成され、大抵は、一定の横断面で延在する軸方向に真直ぐな通路を備え、これら通路は、高温ガス側から低温ガス側に延在する。板状部品から構成された、非シリンダ状の外部輪郭を有するセルロータが、特許文献1に示されている。軸−ハブ−結合部であるセルロータの基本的な内部システムは、機械加工仕上げによって製造することができる。これは、相応の軸受手段を有する軸のことであり、この軸に、相応のシール手段も設けられている。この場合、軸は、切頭円錐形のハブを支持し、このハブに、セルロータのセル構造が固定されている。
【0003】
特許文献2には、同様に、板材から構成された、内部シリンダと外部シリンダと中間壁とから成るセルシリンダが示されているが、中間壁は、両シリンダ間に延在し、Z字又はU字又はI字の形で相互に接触している。1枚の板材が、相応の大きさのシリンダに巻かれ、次に長手方向の継ぎ目が溶接されることによって、内部シリンダも外部シリンダも製造されている。セルロータが中心にして回転する本来の軸−ハブ−結合部は、それ以上には図示されていない。
【0004】
今日のシステムにおいて問題であるのは、セルロータの部品形状全体が支配を受ける熱的負荷スペクトルである。セルロータの高温ガス側では、1100°Cまでの温度が存在し、低温ガス側では、最大200°Cの温度が存在する。熱的に惹起された部品の歪と、これから生じる次善最適の効率とが、結果となる。特に、ガスを案内する要素間のクリアランスの維持において、問題が生じる。従って、通常は、圧力波機械においてこれまで自動車用の大量生産で使用されるセルロータが、鋳造された材料から製造された。しかしながら、鋳造された圧力波機械は、比較的高価で、重量が重くなるので、種々の努力は、増々、板材から構成されたロータの方向に向かう。しかしながら、結合部を収容するハブアウタボディを含めた軸−ハブ−結合部は、これまで、部品の複雑さに基づいて鋳物部品として残っている。但し、異方性を有する熱的負荷に基づいて、ロータのセル構造とハブとのために異なった材料を選択することは問題である。加えて、これまで使用された耐高温性の材料によって、仕上げ寸法までゆっくりとした費用のかかる加工が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 021 367号明細書
【特許文献2】英国特許第920,624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、軽量で少ない製造費用で製造可能な軸−ハブ−結合部を有する改善されたガスダイナミック圧力波機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を、本発明は、ハウジング内で軸上に回転可能に支承されたセルロータを有し、このセルロータが、過給空気用の供給ラインと燃焼ガス用の排気ライン間に配設されている、内燃機関を過給するためのガスダイナミック圧力波機械において、軸が、ハブアウタボディである板材から成るチューブ内に収容されており、軸収容部のための孔が、ハブアウタボディ内に固定されたディスク内に形成されていること、又は、ハブアウタボディ内に、ハブアウタボディのチューブよりも小さい直径のインナチューブが固定されており、このインナチューブ内に、軸が収容されていることによって、解決する。この場合、ハブアウタボディは、セルロータと相応に、上級の板材から成っていてもよい。ハブアウタボディの内部構造は、材料選択に関して新しい自由度を可能にする。ディスクは、軸収容部用の孔を形成した、鋳造又は鍛造によって製造された部品とすることができる。選択的に、ディスクは、比較的簡単な打抜き部品としてもよい。ディスクが、リムスターの形式の切り下記を備えていると好ましい。リムスターにより、部品の大きさ、従って相応の重量も、鋳造されたディスクの場合ですら、最小に制限される。リムスターの孔に、軸が、収容及び固定される。リムスター又はディスクは、ハブアウタ星の内壁と接合、例えば溶接又はロウ付けされる。
【0008】
ハブ全体が、板状部品から構成されると好ましい。このため、軸を収容するために、ハブアウタボディよりも小さい直径のインナチューブが使用される。次に、この小さい直径のインナチューブは、別個の板状部品によってハブアウタボディ内に半径方向を保持される。この場合、軸を収容するインナチューブは、外側のハブボディの部分長にわたって延在する。チューブは、負荷に耐えるために、十分な厚さの壁を有する。この場合、チューブの保持は、更にまた、1つ又は複数の個別部品を介して行なわれる。これが板状部品であると好ましい。板状部品は、ハブアウタボディ内に、半径方向に、又は、ハブアウタボディの横断面平面に対して角度をもって取り付けることができる。特に、板状部品は、応力、製造誤差及び/又は熱歪を相殺するため、凸又は凹に湾曲させることができる。インナチューブの確実な取付けを保証するため、複数の板状部品が、互いに間隔を置いたインナチューブとハブアウタボディ間に設けられていると好ましい。ハブアウタボディの内壁は、個々の部品の締まり嵌めを保証するため又は誤差を相殺するため、輪郭を加工することができる。軸収容部に対して間隔を置いてハブアウタボディ内に、軸の敏感な軸受を950°Cまでの高い排気温度から保護する1つ又は複数の遮熱板が取り付けられていると好ましい。
【0009】
以下で、本発明を図に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるハブの断面図を示す。
【図2】本発明によるハブの別の実施形の断面図を示す。
【図3】軸−ハブ−結合部の領域の圧力波過給機の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、軸を有しない本発明によるハブ1を縦断面図で示す。ハブ1は、シリンダ状のハブアウタボディ2を備え、このハブアウタボディ内に、インナチューブ3が、互いに凸に配設された板状部品4a,4bを介して保持されている。この場合、板状部品4a,4bは、本質的に両凸の形状を間に形成する。従って、板状部品4a,4bは、横断面平面A−Aに対して平行に延在しない。板状部品4a,4b間に閉じ込められた空気が、熱的負荷下で膨張することができるように、板状部品4a,4bには、詳細には図示していないガス交換用の切欠きが設けられている。
【0012】
図2は、同様の構造を示すが、但し、ここでは、インナチューブ3が、間に両凹の形状を形成する板状部品5a,5bを介してハブアウタボディ2内に固定されている。従って、板状部品5a,5bは、互いに凹に形成されている。ハブアウタボディ2は、板材から引き抜かれた又は溶接されたチューブから成り、同じことがインナチューブ3についても当て嵌まる。インナチューブ3は、示してない軸を収容するために使用される。領域20,21に、ハブアウタボディ2の内壁の加工の可能な輪郭が図示されている。本発明による構造により、ハブアウタボディ2、インナチューブ3及び板状部品4a,4b,5a,5bは、異なった材料を備えることができる。ハブ1は、全体として軽量で柔軟に製造可能になる。
【0013】
図3は、圧力波機械6を縦断面図で示す。この圧力波機械6は、板材7cによって互いに分離された2つのセルの列7a,7bから成るセルロータ7を備える。セルロータ7の列7a,7bは、シリンダ状のハブアウタボディ71の周囲に配設されている。セルロータ7は、ハブアウタボディ71と結合され、その、軸13に対する結合を介して回転可能に支承されている。セルロータ7は、2重壁の固定のハウジング8によって包囲され、このハウジングは、ハウジング接続部9を介して、詳細には図示していない高温ガス側Bと結合可能である。高温ガス側Bと向かいあって位置する低温ガス側Cで、セルロータ7は、インテークマニホールド10と過給空気ライン11と接続されている。インテークマニホールド10も過給空気ライン11も、共通の鋳物ハウジング12内に存在する。
【0014】
鋳物ハウジング12内に、軸13は、ボールベアリング14を介して回転可能に支承されている。セルロータ7とは反対側のその端部で、軸13は、詳細には図示していない駆動モータに固定されている。ボールベアリング14は、カバー及びシール15a,15bを介して汚れに対して保護されている。
【0015】
本発明によれば、セルロータ7のインナチューブであるハブアウタボディ71は、継ぎ目無しで引き抜かれた又は溶接されたチューブから成る。ハブアウタボディ71の内壁は、ネジ17によって互いに結合された相前後して位置する3つの遮熱板16のための締まり嵌めを得るために、加工された輪郭72を備える。遮熱板16は、ハブアウタボディ71の内部で低温ガス側Cから高温ガス側Bを分離する。3つの遮熱板16間に閉じ込められた空気が、熱的負荷下で膨張することができるように、低温ガス側の2つの遮熱板16は、詳細には図示していないガス交換用の切欠きを備えている。高温ガス側の第1の遮熱板16は、気密の構成を備える。
【0016】
更に、ハブアウタボディ71には、加工された輪郭73が設けられており、この輪郭内で、鋳物ハウジング12は、セルロータ7の妨げられることのない回転を可能にするための十分な遊びをもって差し込まれている。軸13は、鋳造されたリムスターの形態のディスク18内に差し込まれ、ネジ19を介してディスクとネジ止めされている。ディスク18は、ハブアウタボディ71と母材結合されている。
【0017】
従って、有利なやり方で、ディスク18とハブアウタボディ71の材料が、互いに違うものにすることができる。確かに、本発明により構成された軸−ハブ−結合部の単一構造は、ハブの一部材鋳造よりも複雑である。しかしながら、この単一構造は、部材の数が多くなるが、全体として軽量である。
【符号の説明】
【0018】
1 ハブ
2 ハブアウタボディ
3 インナチューブ
4a 板状部品
4b 板状部品
5a 板状部品
5b 板状部品
6 圧力波機械
7 セルロータ
7a セルの列
7b セルの列
7c 7aと7b間の板材
8 ハウジング
9 ハウジング接続部
10 インテークマニホールド
11 過給空気ライン
12 鋳物ハウジング
13 軸
14 ボールベアリング
15a カバー及びシール
15b カバー及びシール
16 遮熱板
17 ネジ
18 ディスク
19 ネジ
20 2の領域
21 2の領域
71 ハブアウタボディ
72 加工された輪郭
73 加工された輪郭
A−A 横断面平面
B 高温ガス側
C 低温ガス側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(8)内で軸(13)上に回転可能に支承されたセルロータ(7)を有し、このセルロータが、過給空気用の供給ラインと燃焼ガス用の排気ライン間に配設されている、内燃機関を過給するためのガスダイナミック圧力波機械(6)において、
軸(13)が、ハブアウタボディ(2,71)である板材から成るチューブ内に収容されており、軸収容部のための孔が、ハブアウタボディ(2,71)内に固定されたディスク(18)内に形成されていること、又は、ハブアウタボディ(2)内に、ハブアウタボディ(2)のチューブよりも小さい直径のインナチューブ(3)が固定されており、このインナチューブ内に、軸(13)が収容されていることを特徴とするガスダイナミック圧力波機械。
【請求項2】
ディスク(18)が、リムスターの形式の切欠きを備えていることを特徴とする請求項1に記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項3】
インナチューブ(3)が、別個の板状部品(4a,4b,5a,5b)によってハブアウタボディ(2)内に半径方向を保持されていることを特徴とする請求項1に記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項4】
板状部品(4a,4b,5a,5b)が、ハブアウタボディ(2)内に、ハブアウタボディ(2)の横断面平面(A−A)に対して角度をもって取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項5】
ハブアウタボディ(2)内の板状部品(4a,4b,5a,5b)が、凸又は凹に湾曲させられて形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項6】
複数の板状部品(4a,4b,5a,5b)が、ハブアウタボディ(2)内に設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項7】
板状部品(4a,4b,5a,5b)の少なくとも1つに、ガス交換用の切欠きが設けられていることを特徴とする請求項6に記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項8】
ハブアウタボディ(71)の内壁が、加工された輪郭(72,73)を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項9】
軸収容部に対して間隔を置いて、1つ又は複数の遮熱板(16)がハブアウタボディ(71)内に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のガスダイナミック圧力波機械。
【請求項10】
遮熱板(16)の少なくとも1つに、ガス交換用の切欠きが設けられていることを特徴とする請求項9に記載のガスダイナミック圧力波機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−527578(P2012−527578A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512197(P2012−512197)
【出願日】平成22年4月24日(2010.4.24)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000465
【国際公開番号】WO2010/136005
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】