説明

圧力計及びクロマトグラフ装置

【課題】ブルドン管内に残留した流体を速やかに排出でき、ブルドン管内を流れる流体の流量を増加できる圧力計及びクロマトグラフ装置を提供することにある。
【解決手段】ブルドン管式圧力計1は、対となるブルドン管2A,2Bを有し、ブルドン管2Aの自由端部4Aとブルドン管2Bの自由端部4Bを接続管6によって接続している。この接続管6は、ブルドン管2Aの内部空間とブルドン管2Bの内部空間を連絡する。ブルドン管2A,2Bは、同じ材質及び同じ寸法で作製されており、流体の圧力に対応して同じ動きをする。管路12A内を流れる流体は、ブルドン管2Aの自由端部3A内に流入する。この流体は、ブルドン管2A内を通り、ブルドン管2Aの自由端部4Aから接続管6内を通ってブルドン管2Bの自由端部4B内に達する。ブルドン管2B内に流入した流体は、固定端部3Bから管路部12Bに導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力計及びクロマトグラフ装置に係り、特に、ブルドン管方式の圧力計、及びこの圧力計を用いたクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドン管式圧力計は、比較的構造が簡単であり、電源を必要とせずかつ精度良く圧力を測定することが可能であるため、分析装置及び流体製品の製造装置における圧力計として広く利用されている。このブルドン管式圧力計の概略構造を以下に説明する。
【0003】
ブルドン管式圧力計は、ブルドン管及び指針を有する。ブルドン管の固定端が圧力を測定したい管路に接続される。ブルドン管の内部は管路内を流れる流体によって満たされる。管路内の圧力が上昇した場合には、ブルドン管が膨張し、ブルドン管の自由端が移動する。管路内の圧力が下降した場合には、ブルドン管が収縮し、ブルドン管の自由端が圧力が上昇する場合と逆方向に移動する。ブルドン管の自由端の動きは、ギヤ及びクランクを介して指針の回転運動に変換される。
【0004】
ブルドン管式圧力計は、圧力測定の対象となる流体がブルドン管内に直接流れ込んで行き止まりとなるような構造であるため、流体がブルドン管の内部に滞留するという問題が発生する。例えば、化粧品及び医薬品などの流体製品の製造ラインにブルドン管式圧力計を設置した場合には、ブルドン管内に長時間に亘って滞留する製品の流体が経時変化するため、その流体が製品の品質劣化及び変質をもたらす。また、ガスクロマトグラフ装置などの分析装置では、その装置を機能させる物質として流体を使用した場合、その装置の稼動前にブルドン管内に入り込んだ空気などがブルドン管内に長時間に亘って残留し、圧力測定対象ガスとしてヘリウムなどを管路内に流した際に、残留しているその空気が少しずつヘリウムに混ざって検出器内に入る現象が生じる。この現象により、分析装置本来の性能が出なかったり、測定中に異常なデータが出たりする。流体が、製品そのものでなく、分析装置のように装置を機能させる物質として使われる場合には、長時間に亘って流体を流した状態にして、ブルドン管内に滞留している流体が圧力測定したい流体に置換されるまで待つことも考えられる。しかしながら、ブルドン管内に滞留している流体が圧力測定したい流体に完全に置換されるまで、数日を要する場合も有る。このため、分析装置の立上げに多大な時間を要することとなる。
【0005】
上記した問題の解決案が幾つか提案されている。まず、特許文献1は、その第1図及び第2図に示すように、ブルドン管の自由端に取り外し可能な栓を設けている。この栓は、内部の流体をパージする際において一時的に取り外され、パージ後に再び取り付けられる。栓を取り外すことによって、ブルドン管内に滞留する流体を外部に排出できる。
【0006】
特許文献2は、特許文献1と同様に、ブルドン管内に滞留している流体を外部に排出するものである。特許文献2は、ブルドン管の自由端部に、バルブを設けたチューブを接続している。特許文献3は、ブルドン管の固定端部にダイアフラムを設け、ブルドン管内の空間と管路をそのダイアフラムによって隔離している。管路内の圧力は、ダイアフラムを介してブルドン管内の別の流体に伝えられることによって測定される。特許文献4は、ブルドン管2に細いチューブを挿入しており、ブルドン管の自由端からブルドン管内に圧力測定の対象となる流体を導入し、そのチューブを通してその流体が常に流れるようにしている。
【0007】
【特許文献1】実開昭51−145970号公報
【特許文献2】実開昭57−66760号公報
【特許文献3】特開昭61−155718号公報
【特許文献4】実開昭62−30136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
取り外し可能な栓をブルドン管に設ける特許文献1は構造が単純である。しかしながら、ブルドン管は頻繁にパージを必要とするため、栓の取り外し及び取り付けも頻繁に行う必要がある。ブルドン管は通常圧力計内部にあり、ブルドン管内に滞留する流体の排出のために、栓の取り外し及び取り付け作業が非常に面倒である。
【0009】
特許文献2は、チューブに取り付けられたバルブを開閉すればよいので、特許文献1よりも滞留する流体の排出を簡単に行うことができる。しかしながら、滞留する流体の排出時において、バルブの開閉操作を行うわずらわしさは残る。また、特許文献2は、チューブがバルブによって固定されているため、ブルドン管の自由端の動きが阻害される可能性がある。
【0010】
特許文献3は、ダイアフラムを設けているため、ブルドン管内での流体の滞留という問題は生じない。しかしながら、ダイアフラムは可動領域が小さく、圧力測定対象の流体が気体である場合には、圧力変動に対する体積の変動が大きいため、圧力を精度良く測定することができなくなる。
【0011】
ブルドン管内に滞留する流体の排出操作が面倒である特許文献1及び2で生じる問題、及び圧力測定対象の流体が気体である場合において測定精度が低下するという問題は、特許文献4によって解消される。特許文献4は、圧力測定対象の流体の圧力を測定しているときにもブルドン管内をその流体が流れるので、特許文献1,2及び3で生じるそれらの問題が生じない。しかしながら、ブルドン管内に設けられるチューブの直径が大きい場合には、このチューブがブルドン管の動きを阻害することになる。逆に、そのチューブの直径が小さい場合には、チューブ内の流路断面積が小さくなるため、その流体の流量が減少する。この流体の流量の減少は、分析装置においては測定精度の低下となって現れる。化粧品及び医薬品などの流体製品の製造装置においては、その流量の減少は単位時間当たりにおける流体製品の生産量の低下につながる。
【0012】
本発明の目的は、ブルドン管内に残留した流体を速やかに排出でき、かつ、ブルドン管内を流れる流体の流量を増加できる圧力計及びクロマトグラフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、固定端部及び自由端部を有する複数のブルドン管を備え、対となるブルドン管のそれぞれの自由端部を接続管によって接続して対となるブルドン管の内部空間を連通させ、対となるブルドン管のうち一方のブルドン管の固定端部に流体流入口を設け、他方のブルドン管の固定端部に流体流出口を設けた圧力計にある。
【0014】
対となるブルドン管の一方のブルドン管に流入した流体は、相互の自由端部を連絡する接続管内を通って他方のブルドン管内に流入し、他方のブルドン管の固定端部より流出する。このため対となるブルドン管内に残留する流体を速やかに排出することができる。また、ブルドン管内に設けられるもの(例えば、特許文献4に記載されたチューブ)がないので、ブルドン管内に形成される流体が流れる流路の断面積を増やすことができる。このため、圧力測定時においてブルドン管内を流れる流体の流量を増加させることができる。
【0015】
上記した目的は、被測定試料注入口から注入される被測定試料が添加されるキャリアガスを供給する第1管路と、第1管路に設けられた第1流量調節手段と、被測定試料を含むキャリアガスが供給され、検出器に連絡される分析カラムと、検出器に検出器ガスを供給する第2管路と、第2管路に設けられた第2流量調節手段とを備え、上記の特徴を有する圧力計を、第1管路及び第2管路の少なくとも1つに設けることによっても達成できる。
【0016】
圧力計のブルドン管内に残留する、キャリアガス及び検出器ガスと異なる成分を有する流体を速やかに排除できるので、被測定試料のイオン化効率が増大し、被測定試料の分析精度が向上する。ブルドン管内を流れるキャリアガス及び検出器ガスの流量を増大できるので、被測定試料の分析精度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブルドン管内に残留した流体を速やかに排出でき、かつ、圧力測定時においてブルドン管内を流れる流体の流量を増加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の好適な一実施例であるブルドン管式圧力計を、図1を用いて説明する。本実施例のブルドン管式圧力計1は、対となる2本のブルドン管2A,2Bを有し、ブルドン管2Aの自由端部4Aとブルドン管2Bの自由端部4Bを接続管6によって接続している。この接続管6は、ブルドン管2Aの内部空間とブルドン管2Bの内部空間を連絡する。ブルドン管2Aの自由端部4Aに取り付けられたロッド7が、支点9を中心に回転する可動片8に係合されている。可動片8は、円弧状の縁を有し、この部分に扇型歯車10を形成している。扇型歯車10と噛み合うピニオン11が、指針5を取り付けている回転軸(図示せず)に設けられている。ブルドン管式圧力計1は、複数のブルドン管を備えている点で、特許文献1〜4に記載された各ブルドン管式圧力計と異なっている。ブルドン管2A,2Bは、同じ材質及び同じ寸法で作製されており、流体の圧力に対応して同じ動きをする。
【0020】
ブルドン管2Aの固定端部3Aは、流体が流れる管路12の管路部12Aに接続される。ブルドン管2Bの固定端部3Bは、流体が流れる管路12の管路部12Bに接続される。管路12内を流れる圧力測定対象の流体は、管路部12Aからブルドン管2Aの自由端部3A内に流入する。この流体は、ブルドン管2A内を通り、ブルドン管2Aの自由端部4Aから接続管6内を通ってブルドン管2Bの自由端部4B内に達する。ブルドン管2B内に流入した流体は、その内部を通り、ブルドン管2Bの固定端部3Bから管路部12Bに導かれる。
【0021】
流体の圧力が上昇した場合には、ブルドン管2A,2Bは矢印Aの方向に移動する。ブルドン管2Aのこの動きは、ロッド7によって可動片8に伝えられる。可動片8は支点9を中心にして反時計方向に回転する。扇型歯車10と噛み合っているピニオン11は、時計方向に回転する。このため、指針5も時計方向に回転する。流体の圧力が下降した場合には、ブルドン管2A,2Bは矢印Bの方向に移動する。このとき、指針5は反時計方向に回転する。
【0022】
ブルドン管式圧力計1は、圧力測定対象の流体を管路部12A、ブルドン管2A、接続管6、ブルドン管2B及び管路部12Bの順に流しながら圧力を測定することができる。ブルドン管2A,2B内を常に流体が流れるので、各ブルドン管内に流体が滞留することを防止できる。ブルドン管2A,2Bは、流体の圧力に応じて同じ動きをするので、一方のブルドン管が他方のブルドン管の動きを阻害することはない。このため、ブルドン管式圧力計1は、流体の圧力を精度良く測定することができる。また、ブルドン管2A,2Bは、内部の流路断面積が大きくなるので、圧力測定時において内部を流れる流体の流量を特許文献4よりも増大させることができる。
【実施例2】
【0023】
本発明の好適な一実施例であるブルドン管式圧力計を、図1を用いて説明する。実施例1のブルドン管式圧力計1は対となる2本のブルドン管を使用している。これに対し、本実施例のブルドン管式圧力計1Aは4本のブルドン管を使用する。ブルドン管式圧力計1Aはブルドン管2A,2B,2C,2Dを備える。ブルドン管2A,2Bが対となるブルドン管であり、ブルドン管2C,2Dが別の対となるブルドン管である。ブルドン管2Aの固定端部3Aが管路部12Aに接続される。ブルドン管2Dの固定端部3Dが管路部12Bに接続される。ブルドン管2Bの固定端部3Bとブルドン管2Cの固定端部3Cを接続する接続管6Bは、ブルドン管2Bの内部空間とブルドン管2Cの内部空間を連絡する。ブルドン管2Aの自由端部4Aとブルドン管2Bの自由端部4Bを接続する接続管6Bは、ブルドン管2Aの内部空間とブルドン管2Bの内部空間を連絡する。ブルドン管2Cの自由端部4Cとブルドン管2Dの自由端部4Dを接続する接続管6Cは、ブルドン管2Cの内部空間とブルドン管2Dの内部空間を連絡する。ブルドン管式圧力計1Aの他の構造はブルドン管式圧力計1と同じである。
【0024】
管路部12Aを流れる流体は、ブルドン管2A,接続管6A,ブルドン管2B,接続管6B,ブルドン管2C,接続管6C,ブルドン管2D及び管路部12Bをこの順に流れる。本実施例のブルドン管式圧力計1Aもブルドン管式圧力計1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、4本のブルドン管を使用しているため、同じ圧力でもブルドン管式圧力計1よりも大きなトルクを得ることができ、より大きな指針5を動かしたり、指針5の替りにスイッチを押すなどの機械的働きをさせることが可能である。ブルドン管を6本以上の偶数本にすることも可能である。
【実施例3】
【0025】
実施例1のブルドン管式圧力計1を適用した本発明の他の実施例であるガスクロマトグラフ装置15を、図3を用いて説明する。ガスクロマトグラフ装置15は、ブルドン管式圧力計1B,1C、流量調節器16,20、被測定試料注入口17、分析カラム18及び検出器19を有する。ブルドン管式圧力計1B,1Cは、ブルドン管式圧力計1と同じ構成を有する。流量調節器16が設けられた管路21は、ブルドン管式圧力計1Bのブルドン管2Aの固定端部3Aに接続される。管路22は、ブルドン管式圧力計1Bのブルドン管2Bの固定端部3Bと被測定試料注入口17を連絡する。図3には図示されていないが、ブルドン管式圧力計1Bにおいて、ブルドン管2Aの自由端部4Aとブルドン管2Bの自由端部4Bは、図1に示すように、接続管6によって連絡されている。流量調節器20が設けられた管路24は、ブルドン管式圧力計1Cのブルドン管2Aの固定端部3Aに接続される。ブルドン管式圧力計1Cのブルドン管2Bの固定端部3Bと検出器19は、管路23によって連絡されている。分析カラム18は、被測定試料注入口17及び検出器19に連絡される。
【0026】
管路21で導かれるキャリアガスは、流量調節器16で第1設定流量に調節され、ブルドン管式圧力計1Bのブルドン管2A内に導かれる。このキャリアガスは、固定端部3Aからブルドン管2A内に流入し、ブルドン管2A内を通って接続管6を経てブルドン管2Bの自由端部4A内に供給される。キャリアガスは、ブルドン管2B内を流れて固定端部3Bから管路22内に流出し、さらに、被測定試料注入口17に到達する。被測定試料注入口17から注入された被測定試料は、キャリアガスに混合されて分析カラム18に導入される。分析カラム18は、キャリアガスに含まれている被測定試料を各成分ごとに分離させる。
【0027】
検出器19は、分離カラム18から流出した被測定試料を含むキャリアガスを導入し、分離カラム18で分離された各成分ごとにその成分に応じた電気信号を順次出力する。検出器19として、例えば、光イオン化検出器(PID)を用いた場合について説明する。光イオン化検出器では、検出器ガスとして、高純度のヘリウムを使用する。検出器ガス(ヘリウム)は、流量調節器20で所定の流量に調節され、ブルドン管式圧力計1Cのブルドン管2A内に導かれる。この検出器ガスは、固定端部3Aからブルドン管2A内に流入し、ブルドン管2A内を通って接続管6を経てブルドン管2Bの自由端部4A内に供給される。検出器ガスは、ブルドン管2B内を流れて固定端部3Bから管路22内に流出し、さらに、検出器19に供給される。検出器(光イオン化検出器)19は、内部において、高圧放電によって検出器ガス(ヘリウム)を励起状態にする。さらに、検出器19は、励起状態になった検出器ガスのエネルギーによって被測定試料をイオン化し、イオン化された各成分の濃度を検出する。
【0028】
流量調節器16は、ブルドン管式圧力計1Bで測定されたキャリアガスの圧力に基づいて、キャリアガスの流量を第1設定流量に調節する。流量調節器20は、ブルドン管式圧力計1Cで測定された検出器ガスの圧力に基づいて、検出器ガスの流量を第2設定流量に調節する。
【0029】
本実施例で用いるブルドン管式圧力計1B,1Cは、ブルドン管式圧力計1で生じる効果を得ることができる。
【0030】
ガスクロマトグラフ装置15の立上げ時及びガスボンベ交換時に、空気(キャリアガス及び検出器ガスとは異なる成分を有する流体)が管路21から混入してブルドン管式圧力計1Bのブルドン管2A,2B内に達する。しかしながら、本実施例のガスクロマトグラフ装置15では、被測定試料の分析を行う前に、予めキャリアガスをブルドン管式圧力計1Bのブルドン管2A,2B内に供給することにより、ブルドン管2A,2B内に存在する空気は、キャリアガスと共に検出器19から外部に全て排出される。したがって、ガスクロマトグラフ装置15は、ブルドン管が行き止まりとなる構造のブルドン管式圧力計(以下、便宜的に従来型ブルドン管式圧力計という)を、キャリアガスを供給する管路に用いた場合に生じる問題点を改善することができる。
【0031】
キャリアガスを供給する管路に従来型ブルドン管式圧力計を設置した場合には、ブルドン管内に滞留した空気が、被測定試料の分析時に少しずつキャリアガスに混入され、試料注入口から注入された被測定試料と共に検出器にみちびかれる。このため、空気に含まれる成分が、元々、被測定試料に含まれていたような分析結果が得られる。
【0032】
本実施例は、上記したように、ブルドン管2A内に存在する空気を全て外部に排出することができるため、分析時において、空気を検出器19に導入すること避けられる。ガスクロマトグラフ装置15は、被測定試料に含まれている各成分だけの濃度を精度良く検出することができる。
【0033】
ガスクロマトグラフ装置15の立上げ時及びガスボンベ交換時に、管路24から混入した、あるいはガスクロマトグラフ装置15の使用を停止している間に、検出器19の排気口(図示せず)から逆流した空気がブルドン管式圧力計1Cのブルドン管2A,2B内に溜まった場合でも、被測定試料の分析を行う前に、予め検出器ガスをブルドン管式圧力計1Cのブルドン管2A,2B内に供給することにより、ブルドン管2A,2B内に存在する空気は、検出器ガスと共に検出器19から外部に全て排出される。したがって、本実施例は、ブルドン管が行き止まりとなる構造のブルドン管式圧力計を検出器ガスを供給する管路に設けた場合のように、ブルドン管内に滞留した空気が、被測定試料の分析時に検出器ガスに混入して検出器19に供給されることを避けることができる。分析時に空気が検出器ガスと共に検出器19に導入されないため、励起された検出器ガスのエネルギーを被測定試料のイオン化に使用する割合が著しく増加し、被測定試料のイオン化効率が著しく増大する。このイオン化効率の増大により、本実施例のガスクロマトグラフ装置15の感度を著しく増大できる。
【0034】
本実施例によれば、分析時においてブルドン管式圧力計1B,1Cに空気が滞留しないためそれらの内部に残留した空気を迅速に排気することができる。したがって、ガスクロマトグラフ装置15は、被測定試料を短時間で分析することが可能となる。また、分析時における感度低下及び異常な分析データの発生を防ぐことができる。
【0035】
本実施例は、ブルドン管式圧力計1B,1Cの各ブルドン管2A,2B内に、特許文献4に示すチューブを挿入していないので、キャリアガスまたは検出器ガスが流れる、各ブルドン管2A,2B内の流路断面積を特許文献4よりも大きくすることができる。このため、検出器19に供給するキャリアガス及び検出器ガスの各流量を、ガスクロマトグラフ装置15での分析性能を満足できるそれぞれの設定流量以上に増大できる。したがって、ガスクロマトグラフ装置15における被測定試料の分析精度が向上する。特許文献4に記載された、ブルドン管内にチューブを挿入したブルドン管式圧力計をガスクロマトグラフ装置に適用した場合には、キャリアガス及び検出器ガスの各流量を、ガスクロマトグラフ装置での分析性能を満足させる程度に確保することはできない。
【0036】
ブルドン管式圧力計1Bは流量調節器16よりも下流でキャリアガス供給管に設置し、ブルドン管式圧力計1Cは流量調節器20よりも下流で検出器ガス供給管に設置することが望ましい。このようなブルドン管式圧力計1B,1Cの配置によって、キャリアガス及び検出器ガスの各流量の調節を精度良く行うことができる。
【0037】
以上に述べたガスクロマトグラフ装置においてはブルドン管式圧力計1をキャリアガス供給管及び検出器ガス供給管に設置しているが、ブルドン管式圧力計1はキャリアガス供給管及び検出器ガス供給管のいずれかに設置してもよい。ガスクロマトグラフ装置の感度は、ブルドン管式圧力計1をキャリアガス供給管に設置した場合に比べてブルドン管式圧力計1を検出器ガス供給管に設置した場合に向上する度合いが大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のブルドン管式圧力計の構成図である。
【図2】本発明の他の実施例である実施例2のブルドン管式圧力計の構成図である。
【図3】本発明の他の実施例である、図1に示すブルドン管を適用したガスクロマトグラフ装置の構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A,1B,1C…ブルドン管式圧力計、2A,2B,2C,2D…ブルドン管、3A,3B,3C,3D…固定端部、4A,4B,4C,4D…自由端部、5…指針、6,6A,6B,6C…接続管、12,21,22,23,24…管路、15…ガスクロマトグラフ装置、16,20…流量調節器、17…被測定試料注入口、18…分析カラム、19…検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端部及び自由端部を有する複数のブルドン管を備え、対となる前記ブルドン管のそれぞれの自由端部を接続管によって接続して前記対となるブルドン管の内部空間を連通させ、前記対となるブルドン管のうち一方の前記ブルドン管の前記固定端部に流体流入口を設け、他方の前記ブルドン管の前記固定端部に流体流出口を設けたことを特徴とする圧力計。
【請求項2】
前記ブルドン管の個数は2個である請求項1に記載の圧力計。
【請求項3】
被測定試料注入口と、検出器と、前記被測定試料注入口から注入される被測定試料が添加されるキャリアガスを供給する第1管路と、前記第1管路に設けられた第1流量調節手段と、前記被測定試料を含む前記キャリアガスが供給され、前記検出器に連絡される分析カラムと、前記検出器に検出器ガスを供給する第2管路と、前記第2管路に設けられた第2流量調節手段とを備え、
請求項1または請求項2記載の圧力計が、前記第1管路及び前記第2管路の少なくとも1つに設けられていることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記第1管路に設けられる前記圧力計が前記第1流量調節手段よりも下流に配置されている請求項3に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記第2管路に設けられる前記圧力計が前記第2流量調節手段よりも下流に配置されている請求項3に記載の液体クロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−64542(P2008−64542A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241420(P2006−241420)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】