説明

圧力調整弁の組立方法およびこれに用いる位置決め治具

【課題】受圧膜体を簡単且つ位置精度良く組み込むことができる圧力調整弁の組立方法およびこれに用いる位置決め治具を提供する。
【解決手段】リング状端面の環状溝52にシールリングを装着するシールリング装着工程と、リング状端面51のネジ孔54に切抜き孔64を合せるようにして、受圧膜体を仮セットする受圧膜体仮セット工程と、リング状端面51のネジ孔54にバカ孔72を合せるようにして、押えリング71を仮セットする押えリング仮セット工程と、リング状端面51のネジ孔54に、バカ孔72および切抜き孔64を貫通して取付けネジ73を仮締めするネジ仮締め工程と、押えリング71に位置決め治具131をセットする治具セット工程と、位置決め治具131のマークに受圧膜体を位置合わせする受圧膜体本セット工程と、取付けネジ73を本締めするネジ本締め工程と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ内外を画成する受圧膜体により、液体を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁の組立方法およびこれに用いる位置決め治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力調整弁として、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を減圧供給するものが知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、ハウジング本体(バルブケーシング)と、受圧板およびダイヤフラム本体から成るダイヤフラム(受圧膜体)と、ハウジング本体とダイヤフラムとの間に介設されたパッキン(シールリング)と、ダイヤフラムを押さえるリングプレート(押えリング)と、を有している。
ハウジング本体、ダイヤフラムおよびリングプレートには、相互に対応する位置に固定ねじを螺合するための複数の貫通孔がそれぞれ形成されている。ハウジング本体に形成した複数の貫通孔はネジ孔で構成され、ダイヤフラムに形成した複数の貫通孔は固定ねじが遊挿される切抜き孔で構成され、リングプレートに形成した複数の貫通孔は固定ねじが遊挿されるバカ孔で構成されている。
この圧力調整弁において、想定されるダイヤフラム廻りの組立方法は、ハウジング本体の環状溝にパッキンを装着した後、これに相互の貫通孔を位置合わせしてダイヤフラムおよびリングプレートを重ね、固定ねじを仮締めする。次に、ダイヤフラムの受圧板を、ハウジング本体の2次室のセンターに目見当で位置合わせし、ダイヤフラムに張りを与えつつ固定ねじを本締めする。
【特許文献1】特開2006−142215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の圧力調整弁の組立方法において、ダイヤフラムに張りを与えながらの位置合せ作業は極めて煩雑なものとなり、特にダイヤフラムを目見当で位置合わせすると、ダイヤフラムが微妙に位置ズレして取り付けられてしまうおそれがある。そして、極端な場合は、ダイヤフラムが位置ズレし、ダイヤフラムの切抜き孔がパッキンを跨いで取り付けられてしまうことが、想定される。かかる場合、シール切れを生じ液漏れの原因となる。
【0004】
本発明は、受圧膜体を簡単且つ位置精度良く組み込むことができる圧力調整弁の組立方法およびこれに用いる位置決め治具を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の圧力調整弁の組立方法は、扁平形状のバルブケーシングのリング状端面に、バルブ内外を画成する受圧膜体と、受圧膜体を押さえる押えリングと、押えリングに形成した複数のバカ孔および受圧膜体に形成した複数の切抜き孔を貫通して、リング状端面に形成した複数のネジ孔に螺合した複数の取付けネジと、リング状端面に形成した環状溝と受圧膜体との間に介設したシールリングと、を備え、受圧膜体により、導入した液体を大気圧基準で減圧して供給する圧力調整弁の組立方法であって、押えリングの内周面に嵌合した状態で受圧膜体に対面し、透光性部材で構成され、受圧膜体を押えリングに位置合わせするためのマークを有する位置決め治具を用い、リング状端面の環状溝にシールリングを装着するシールリング装着工程と、シールリング装着工程の後、リング状端面の複数のネジ孔に複数の切抜き孔を合せるようにして、受圧膜体を仮セットする受圧膜体仮セット工程と、受圧膜体仮セット工程の後、リング状端面の複数のネジ孔に複数のバカ孔を合せるようにして、押えリングを仮セットする押えリング仮セット工程と、押えリング仮セット工程の後、リング状端面の複数のネジ孔に、複数のバカ孔および複数の切抜き孔を貫通して複数の取付けネジを仮締めするネジ仮締め工程と、押えリングに位置決め治具をセットする治具セット工程と、治具セット工程の後、位置決め治具のマークに受圧膜体を位置合わせする受圧膜体本セット工程と、受圧膜体本セット工程の後、複数の取付けネジを本締めするネジ本締め工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、環状溝にシールリングを装着したバルブケーシングのリング状端面に対し、受圧膜体および押えリングを仮セットし、さらに取付けネジを仮締めしたところで、押えリングに位置決め治具を装着し、そのマークに受圧膜体を位置合わせするようにしているため、受圧膜体を、簡単且つ精度良く位置決めすることができる。また、取付けネジの仮締めに伴う、シールリングと受圧膜体との摩擦により、受圧膜体を安定に微小移動させることができ、受圧膜体の位置決めを簡単に行えるだけでなく、受圧膜体に簡単に張りを与えることができる。また、取付けネジの本締め時にも、受圧膜体が位置ズレすることがない。これにより、受圧膜体の切抜き孔が、シールリングにかかり或いはこれを跨いで組み立てられることがなく、圧力調整弁の液漏れを有効に防止することができる。なお、位置決め治具を予め押えリングに装着しておいて、押えリングを仮セットしてもよい。
【0007】
この場合、受圧膜体は、押えリングの外形より大きく形成されており、ネジ本締め工程の後、押えリングからはみ出した受圧膜体の不要部分を、押えリングの外周に沿って切り取るカット工程を、更に備えたことが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、受圧膜体本セット工程において、受圧膜体の押えリングからはみ出した部分を把持して微調整を行うことで、受圧膜体の位置決め作業を簡単且つ迅速に行うことができる。そして、本締め工程の後、受圧膜体の不要部分をカットすることで、不要部分を適切に処理することができる。
【0009】
この場合、受圧膜体の中央部には、大気圧基準で弁体を作動させると共に受圧膜体と同心の受圧板が設けられており、位置決め治具のマークは、受圧板の外形を指標する形状を有していることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、受圧板を位置決め治具のマークに重ねるように位置合わせすることで、受圧膜体を簡単に精度良く位置決めすることができる。
【0011】
本発明の位置決め治具は、上記に記載の圧力調整弁の組立方法に用いる位置決め治具であって、押えリングの内周面に嵌合した状態で受圧膜体に対面し、受圧膜体を押えリングに位置合わせするためのマークを有し、マークは、受圧板の外形を指標する形状を有していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、押えリングの内周面に嵌合される構成であるため、押えリングがバルブケーシングのリング状端面に精度良く取り付けられるものである限り、位置決め治具自身を精度良く装着することができ、そのマークを目標に受圧膜体を位置決めすることで、受圧膜体をリング状端面に精度良く組み込むことができる。また、受圧板を位置決め治具のマークに重ねるように位置合わせすることで、受圧膜体を簡単に精度良く位置決めすることができる。しかも、マークは受圧膜体に対面するため、視線の角度を気にすることなく、マークと受圧板とを正確に位置合わせすることができる。
【0013】
この場合、押えリングに嵌合した状態で複数のバカ孔が臨む部位に、各取付けネジの螺合操作を許容する複数の切欠き部が形成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、位置決め治具を押えリングに装着したまま、取付けネジの本締め(仮締め)を行うことができる。すなわち、受圧膜体の位置決め状態を確認しながら本締めを行うことができ、誤って、本締め時に受圧膜体が位置ズレしても、これを見逃すことがない。
【0015】
この場合、マークは、受圧板の外形に略合致する形状を有していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、マークに受圧板を重ねるようにして位置決めすることができるため、精度良く位置決めすることができる。
【0017】
この場合、マークは、裏面に刻設したV溝により形成されていることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、マークと受圧板とが極めて接近した状態となるため、視線の角度に関係なく、マークに受圧板を精度良く位置合わせすることができる。また、V溝により生ずる3つの角部が、3本の線(相似形となる3重の線)として見えるため、マークに受圧板を簡単且つ精度良く位置合わせすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付した図面を参照して、本実施形態に係る圧力調整弁について説明する。この圧力調整弁は、カラーフィルタなどを製造する液滴吐出装置の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給するチューブに介設されており、機能液滴吐出ヘッドに機能液を大気圧基準(一定圧)で減圧供給するものである。
【0020】
図1に示すように、圧力調整弁1は、主要部を成す調整弁本体2と、調整弁本体2の流入側に差込み接合した流入コネクタ3と、調整弁本体2の流出側に差込み接合した流出コネクタ4と、を備えている。そして、流入コネクタ3には、押えナット107を介して、図外の機能液タンクに連なるチューブ5が接続され、同様に流出コネクタ4には、押えナット107を介して、図外の機能液滴吐出ヘッドに連なるチューブ5が接続される。
【0021】
図2および図3に示すように、調整弁本体2は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブケーシング11と、バルブケーシング11と共に1次室12を画成する蓋体14と、バルブケーシング11に受圧膜体61を固定することでバルブケーシング11と共に2次室13を画成する押えリング71と、で構成されており、バルブケーシング11、蓋体14および押えリング71は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、バルブケーシング11の中心部には、1次室12および2次室13を連通する連通流路15が形成されている。
【0022】
押えリング71および蓋体14は、バルブケーシング11に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており(図示省略)、いずれも円形の受圧膜体61の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。バルブケーシング11および押えリング71は、受圧膜体61の周縁部およびシールリング53を挟込み込んで相互に液密に突合せ接合されている。同様に、蓋体14は、シールリング18を介してバルブケーシング11に対し相互に液密に突合せ接合されている。これにより、1次室12および2次室13は、液密に保持されている。
【0023】
1次室12は、バルブケーシング11の後面と、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する蓋体14とにより、受圧膜体61と同心となる略円柱形状に形成されている。また、1次室12の上部には、1次室12から径方向斜めに延びる流入ポート16が形成され、中心部には、連通流路15に連なる1次室側開口部17が開口している。そして、この1次室側開口部17には、1次室12側から連通流路15を開閉する弁体81が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部17の周縁部により、弁体81が離接する弁座が構成されている。また、弁体81は、これと蓋体14との間に介設した弁体付勢ばね19によって、閉弁方向(2次室13側)に弱い力で付勢されている。
【0024】
流入ポート16は、流入コネクタ3が差込み接合される接合受け部21と、接合受け部21に連なり、フィルタ24を収容するフィルタ収容部22と、フィルタ収容部22と1次室12とを連通する流入流路部23と、から構成されている。接合受け部21には、後述する流入コネクタ3の接続口部104が差し込み接合される。フィルタ収容部22には、フィルタ24が、流入コネクタ3との間に介設した押えばね25に付勢された状態で収容されている。また、流入流路部23は、流入ポート16に対し1次室12側に偏って形成されている。
【0025】
フィルタ24は、円形ステンレス製のフィルタエレメント31と、フィルタエレメント31をセットする受けホルダ32と、フィルタエレメント31を押える押えホルダ33とで構成され、フィルタ収容部22の当接段部26に着座するように設けられている。そして、上記の押えばね25およびフィルタ24は、流入コネクタ3を引抜くことで、取り出し得るようになっている。
【0026】
2次室13は、バルブケーシング11の前面と、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する受圧膜体61と、で形成されており、受圧膜体61は、押えリング71によりバルブケーシング11に取り付けられている(詳細は、後述する。)。具体的には、2次室13は、バルブケーシング11に凹型形成した内面壁41と受圧膜体61とによって、全体として受圧膜体61を底面とする円錐台形状に形成されている。また、2次室13の下部には、2次室13から真下に延びる流出ポート42が形成され、中心部には、連通流路15に連なる2次室側開口部43が開口している。そして、この2次室側開口部43の周縁部と後述する受圧膜体61との間には、受圧膜体61を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね44が介設されている。
【0027】
図3に示すように、バルブケーシング11の前面周縁部であるリング状端面51には、断面矩形の環状溝52が形成され、環状溝52には、リング状端面51と受圧膜体61との間をシールする上記のシールリング53が装着されている。また、リング状端面51における環状溝52の外側には、押えリング71を取り付けるための複数の取付けネジ73が螺合するネジ孔54が複数(6個)形成されている。
【0028】
受圧膜体61は、樹脂フィルムで構成した膜体本体62と、膜体本体62の中央部に接着した樹脂製の受圧板63とで構成されている。膜体本体62(受圧膜体61)の周縁部には、バルブケーシング11のネジ孔54に対応する部位に複数(6個)の切抜き孔64が形成されている。受圧板63は、膜体本体62と同心の円板状に、且つ膜体本体62に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に上記の弁体81が離接するようになっている(図2参照)。
【0029】
押えリング71は、バルブケーシング11のリング状端面51と同じ大きさのドーナツ状に形成されており、その周縁部には、ネジ孔54および切抜き孔64に対応する部位に複数(6個)のバカ孔72が形成されている。これにより、環状溝52にシールリング53を装着したバルブケーシング11のリング状端面51に受圧膜体61をセットし、これに押えリング71を複数本の取付けネジ73でねじ止めすることで、2次室13が構成される。
【0030】
弁体81は、弾性材で構成され、弁の機能を奏するリング状の弁体本体82と、弁体本体82保持する弁ホルダ83と、を備えている。弁体本体82は、弁座となる1次室側開口部17の周縁部に離接することで連通流路15を開閉する。また、弁ホルダ83は、連通流路15を挿通する軸部84を有しており、この軸部84の先端が上記の受圧板63に当接するようになっている(図2参照)。
【0031】
図4に示すように、流出ポート42は、流入ポート16と同様の形態を有しており、流出コネクタ4が差込み接合される接合受け部21と、接合受け部21と2次室13とを連通する流出流路部91と、から構成されている。接合受け部21には、流出コネクタ4の接続口部104が差し込み接合される。なお、流入ポート16および流出ポート42は、機能液の流れ方向とフィルタ24の有無とにおいて異なるが、接合部分の基本形態は同一である。
【0032】
このように構成された圧力調整弁1では、例えば機能液滴吐出ヘッドの液滴吐出により2次室13の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体61が凹変形してゆき、受圧板63が弁体81を押す。これにより、弁体81が開弁し、連通流路15を介して1次室12から2次室13に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室13の圧力が高まってゆき、受圧膜体61が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板63が弁体81から離れるように前進し、同時に弁体81が前進して閉弁する。
【0033】
すなわち、圧力調整弁1は、大気圧と機能液滴吐出ヘッドに連なる2次室13との内部圧力のバランスにより受圧膜体61が変形することで連通流路15を開閉する。その際、弁体付勢ばね19および膜体付勢ばね44に力が分散して作用し、且つ弁体本体82の弾性力により、弁体81は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体81の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッドの吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、1次室12側で発生する脈動等も、弁体81で縁切りされるため、これを吸収(ダンパー機能)することができる。
【0034】
次に、図5ないし図8を参照して、受圧膜体61を含む2次室13側の組立方法について詳細に説明する。受圧膜体61は、上記したように、2次室13内の内部圧力の変化により凹凸変化して弁体81を開閉させる、いわゆるダイヤフラムであり、バルブケーシング11に精度良く組みつけられる必要がある。本実施形態では、この組付けに際し、受圧膜体61を位置決めするための位置決め治具131を用いるようにしている。そこで、2次室13側の組立方法を説明する前に、この位置決め治具131について説明する。
【0035】
図5に示すように、位置決め治具131は、樹脂などの透光性の素材(実際のものは透明)で、外径において押えリング71より僅かに小さく略円板形状に形成されている(図5(b)参照)。位置決め治具131の周縁部には、バカ孔72が臨む部位に、各取付けネジ73の螺合操作を許容する複数の切欠き部132が形成されている。また、位置決め治具131の中央部には、押えリング71の内周面138に嵌合する円形嵌合部133が、押えリング71の厚さより僅かに薄く突設されている。円形嵌合部133の中心部には、受圧膜体61の受圧板63の位置合わせ基準となるマーク134が円形に形成されている。マークは、円形嵌合部133の下面側にV溝で刻設されており、マーク134を前面から覗くと、外円135、中円136および内円137からなる3重の円として見え、中円136が受圧板63の外形と一致する大きさになっている。
【0036】
このように構成された位置決め治具131は、バルブケーシング11にネジ止めされる押えリング71の内周面138に嵌合するように位置決めされ、また受圧膜体61は、このようにして位置決めされた位置決め治具131のマークに位置決めされるようになっている。
【0037】
次に、図6ないし図9を参照して、2次室13側の組立方法について詳細に説明する。上記したように、2次室13は、シールリング53を装着したバルブケーシング11に対して、受圧板63を有する受圧膜体61および押えリング71をセットした後、位置決め治具131で受圧膜体61を位置決めして、複数の取付けネジ73でねじ止めされる(図6参照)。なお、組立時の受圧膜体61は、押えリングの外形より大きく且つ矩形に形成され、さらにリング状端面51に形成された複数のネジ孔54に合せて複数の切抜き孔64が形成されている(図7参照)。
【0038】
図7ないし図9に示すように、圧力調整弁1の2次室13側の組立方法は、リング状端面51の環状溝52にシールリング53を装着するシールリング装着工程(図7(a)参照)と、リング状端面51に受圧膜体61を仮セットする受圧膜体仮セット工程(図7(b)参照)と、セットされた受圧膜体61の上に押えリング71を仮セットする押えリング仮セット工程(図7(c)参照)と、押えリング71および受圧膜体61を取付けネジ73で仮締めするネジ仮締め工程(図8(d)参照)と、押えリング71に位置決め治具131をセットする治具セット工程(図8(e)参照)と、受圧板63を位置合わせする受圧膜体本セット工程(図8(f)参照)と、取付けネジ73を本締めするネジ本締め工程(図9(g)参照)と、受圧膜体61の不要部分を、切り取るカット工程(図9(h)参照)と、を備えている。
【0039】
シールリング装着工程では、前面(2次室13側)が上向きになるようにセットしたバルブケーシング11の前面に、上方からリング状端面51の環状溝52にシールリング53を装着する(図7(a)参照)。
【0040】
受圧膜体仮セット工程では、シールリング53を装着した後、リング状端面51に形成された複数のネジ孔54と、受圧膜体61に形成された複数の切抜き孔64と、をそれぞれ合せるようにして、リング状端面51に受圧膜体61を仮セットする(図7(b)参照)。
【0041】
押えリング仮セット工程では、受圧膜体61を仮セットした後、受圧膜体61に形成された複数の切抜き孔64と、押えリング71の複数のバカ孔72とをそれぞれ合せるようにして、受圧膜体61の上方から押えリング71を仮セットする(図7(c)参照)。なお、バルブケーシング11に形成したネジ孔54は貫通孔となっており、このネジ孔54にピンを立てておいて、受圧膜体仮セット工程および押えリング仮セット工程を行うことが、好ましい(図示省略)。
【0042】
ネジ仮締め工程では、押えリング71を仮セットした後、押えリング71の上方からリング状端面51に向って、バカ孔72および切抜き孔64を貫通してネジ孔54に取付けネジ73をそれぞれ仮締めする。具体的には、押さえリング71の外周からはみ出している受圧膜体61を把持して、シールリングと受圧膜体61との摩擦によって受圧板63の位置を微小移動できる程度に仮止めする(図8(d)参照)。
【0043】
治具セット工程では、取付けネジ73で仮止めした後、押えリング71の内周面138に位置決め治具131の円形嵌合部133をはめ込み装着すると共に、切欠き部132に押えリング71のバカ孔72が臨むように、位置決め治具131を回転調整する(図8(e)参照)。この状態で、セットされた位置決め治具131のマーク134は、受圧板63と僅かな間隙dを残して近接する(図5(b)参照)。
【0044】
受圧膜体本セット工程では、位置決め治具131をセットした後、押えリング71の外形からはみ出した受圧膜体61を把持して受圧板63を位置合わせする。具体的には、位置決め治具131の上方から円形嵌合部133に形成されたマーク134および受圧板63を覗き込み、受圧板63の外形をマーク134の中円136の外形を重ねるように、X軸方向、Y軸方向およびθ軸方向に受圧膜体61を微小移動させる(図8(f)参照)。また、上記したように、受圧板63とマーク134とは、近接しているため、受圧板63およびマーク134を重ねるように位置合わせすることで、受圧膜体61を簡単に精度良く位置決めすることができる。
【0045】
ネジ本締め工程では、受圧板63を位置合わせした後、受圧板63の位置がずれないように、受圧膜体61に張りを与えながら、複数の取付けネジ73を均等に本締めする(図9(g)参照)。
【0046】
カット工程では、本締めした後、位置決め治具131を取り外して、押えリング71の外周からはみ出している受圧膜体61を、押えリング71の外周に沿って切り取る(図9(h)参照)。以上の工程により、圧力調整弁1の2次室13側の組立作業を終了する(図9(i)参照)。
【0047】
なお、本実施形態では、ネジ孔54、切抜き孔64およびバカ孔72は、それぞれ6つずつ形成されているが、これらの数は限定されるものではない。
【0048】
また、押えリング仮セット工程の後、ネジ仮止め工程を経て、治具セット工程を行っているが、予め、押えリング71に位置決め治具131を装着した状態で、仮セットされた受圧膜体61に装着した後、ネジ仮止め工程を行ってもよい。
【0049】
以上の構成によれば、シールリング53を装着したバルブケーシング11に対し、受圧膜体61および押えリング71をセットして仮締めした後に、受圧板63を位置決め治具131のマーク134を基準に位置合わせする。このため、受圧膜体61を、簡単且つ精度良くバルブケーシング11に対して位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】圧力調整弁の外観平面図である。
【図2】圧力調整弁を流入ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図3】圧力調整弁における2次室側の外観斜視図である。
【図4】圧力調整弁を流出ポートの軸線方向に切断した縦断面図である。
【図5】位置決め治具の平面図および断面図である。
【図6】圧力調整弁における2次室側の分解斜視図である。
【図7】2次室側の組立工程(1)を示した組立説明図である。
【図8】2次室側の組立工程(2)を示した組立説明図である。
【図9】2次室側の組立工程(3)を示した組立説明図である。
【0051】
1…圧力調整弁 11…バルブケーシング 51…リング状端面 52…環状溝 53…シールリング 54…ネジ孔 61…受圧膜体 64…切抜き孔 71…押えリング 72…バカ孔 73…取付けネジ 131…位置決め治具 132…切欠き部 134…マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状のバルブケーシングのリング状端面に、バルブ内外を画成する受圧膜体と、受圧膜体を押さえる押えリングと、押えリングに形成した複数のバカ孔および前記受圧膜体に形成した複数の切抜き孔を貫通して、前記リング状端面に形成した複数のネジ孔に螺合した複数の取付けネジと、前記リング状端面に形成した環状溝と前記受圧膜体との間に介設したシールリングと、を備え、
前記受圧膜体により、導入した液体を大気圧基準で減圧して供給する圧力調整弁の組立方法であって、
前記押えリングの内周面に嵌合した状態で前記受圧膜体に対面し、透光性部材で構成され、前記受圧膜体を前記押えリングに位置合わせするためのマークを有する位置決め治具を用い、
前記リング状端面の前記環状溝に前記シールリングを装着するシールリング装着工程と、
前記シールリング装着工程の後、前記リング状端面の前記複数のネジ孔に前記複数の切抜き孔を合せるようにして、前記受圧膜体を仮セットする受圧膜体仮セット工程と、
前記受圧膜体仮セット工程の後、前記リング状端面の前記複数のネジ孔に前記複数のバカ孔を合せるようにして、前記押えリングを仮セットする押えリング仮セット工程と、
前記押えリング仮セット工程の後、前記リング状端面の前記複数のネジ孔に、前記複数のバカ孔および前記複数の切抜き孔を貫通して前記複数の取付けネジを仮締めするネジ仮締め工程と、
前記押えリングに位置決め治具をセットする治具セット工程と、
前記治具セット工程の後、前記位置決め治具のマークに前記受圧膜体を位置合わせする受圧膜体本セット工程と、
前記受圧膜体本セット工程の後、前記複数の取付けネジを本締めするネジ本締め工程と、を備えたことを特徴とする圧力調整弁の組立方法。
【請求項2】
前記受圧膜体は、前記押えリングの外形より大きく形成されており、
前記ネジ本締め工程の後、前記押えリングからはみ出した前記受圧膜体の不要部分を、前記押えリングの外周に沿って切り取るカット工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁の組立方法。
【請求項3】
前記受圧膜体の中央部には、大気圧基準で弁体を作動させると共に前記受圧膜体と同心の受圧板が設けられており、
前記位置決め治具のマークは、前記受圧板の外形を指標する形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁の組立方法。
【請求項4】
請求項3に記載の圧力調整弁の組立方法に用いる位置決め治具であって、
前記押えリングの内周面に嵌合した状態で前記受圧膜体に対面し、前記受圧膜体を前記押えリングに位置合わせするためのマークを有し、
前記マークは、前記受圧板の外形を指標する形状を有していることを特徴とする位置決め治具。
【請求項5】
前記押えリングに嵌合した状態で前記複数のバカ孔が臨む部位に、前記各取付けネジの螺合操作を許容する複数の切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の位置決め治具。
【請求項6】
前記マークは、前記受圧板の外形に略合致する形状を有していることを特徴とする請求項4または5に記載の位置決め治具。
【請求項7】
前記マークは、裏面に刻設したV溝により形成されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の位置決め治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−208020(P2009−208020A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54991(P2008−54991)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】