説明

圧力調理器

【課題】大幅な設計変更をすることなく、鍋内の異常状態をユーザに知らせる。
【解決手段】内蓋44と蓋21との間を、排気通路の一部を構成する排気空間65とし、内蓋44に、排気空間65に連通する連通孔68を設け、連通孔68に、鍋10内が弁機構(調圧弁48,55)によって昇圧可能な設定圧力より高い異常圧力になると作動して、連通孔68および排気空間65を通して鍋10内の空気を蓋21の外部へ排気する安全弁69を配設するとともに、安全弁69の排気方向上流側または下流側に、連通孔68を通して排気する際の排気圧によって発音する発音体73を配設した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能とした圧力調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の圧力調理器は、本体内部に調理鍋を着脱可能に収容し、この調理鍋の上端開口を蓋体によって密閉している。蓋体には、調理鍋の内部と外部とを連通させる排気通路が設けられ、その入口側に調圧弁を配設することにより、調理鍋内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能としている。
【0003】
調圧弁が閉塞した状態のまま正常に作動しなくなった場合や、排気通路の入口である通気孔が塞がれた場合には、調理鍋内の圧力が設定圧を超えた異常圧力まで昇圧する。この問題は、調理鍋内が異常圧力まで昇圧すると作動する安全弁を配設することで回避できる。しかし、安全弁が作動している状態は、何らかの異常が発生して調理鍋内が異常圧力まで昇圧しているため、放置したまま調理を続けるのは好ましくはない。
【0004】
そこで、特許文献1では、調圧弁を配設した第1排気通路と安全弁を配設した第2排気通路とを設け、第2排気通路中に笛などの発音体を配設した炊飯器が提供されている。この炊飯器では、鍋内が異常圧力まで昇圧して安全弁が作動すると、その排気圧で発音体が発音するため、その異常状態をユーザに知らせることができる。そのため、ユーザは、炊飯器を一時停止して異常を解消したり、炊飯制御自体を取り止めることで、異常状態が放置されることを防止できる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の炊飯器では、専用の第2排気通路を形成する必要があるため、大幅な設計変更が必要になり、製造コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−14542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、大幅な設計変更をすることなく、鍋内の異常状態をユーザに知らせることができる圧力調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の圧力調理器は、有底筒状の鍋と、この鍋の上端開口を密閉する内蓋を有する蓋と、この蓋に設けられ前記内蓋に形成した通気孔と前記蓋の外部とを連通させる排気通路と、この排気通路中に設けられ前記鍋内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能な弁機構と、を備えた圧力調理器において、前記内蓋と前記蓋との間を、前記排気通路の一部を構成する排気空間とし、前記内蓋に、前記排気空間に連通する連通孔を設け、前記連通孔に、前記鍋内が前記弁機構によって昇圧可能な設定圧力より高い異常圧力になると作動して、前記連通孔および前記排気空間を通して前記鍋内の空気を前記蓋の外部へ排気する安全弁を配設するとともに、前記安全弁の排気方向上流側または下流側に、前記連通孔を通して排気する際の排気圧によって発音する発音体を配設した構成としている。
【0009】
この圧力調理器は、内蓋と蓋との間を排気通路の一部を構成する排気空間とし、内蓋に排気空間に連通する連通孔を設け、この連通孔に鍋内が異常圧力まで昇圧すると作動する安全弁を配設している。そのため、通常の弁機構による排気通路と、安全弁が作動した時の排気通路とを、共用できる。そして、内蓋の連通孔の上流側または下流側に排気圧によって発音する発音体を配設しているため、大幅な設計変更をすることなく、鍋内が異常圧力まで昇圧した場合に、その異常状態をユーザに知らせることができる。
【0010】
この圧力調理器では、前記安全弁は、前記内蓋の連通孔の外周部上面を密閉するシール部材からなることが好ましい。このようにすれば、容易かつ安価に安全弁を搭載することができる。
【0011】
また、前記発音体は、前記安全弁を囲繞するように排気方向下流側に配設され、前記鍋内の空気の排気圧によって弾性的に変形して発音可能な筒状部材からなることが好ましい。このようにすれば、容易かつ安価にユーザに異常状態を知らせることができる。
この場合、前記発音体を構成する筒状部材が弾性変形する排気圧は、前記安全弁が作動する異常圧力より低いことが好ましい。このようにすれば、鍋内が異常圧力になることにより、確実に発音させることができる。
【0012】
または、前記発音体は、前記内蓋の連通孔の前記鍋側に位置するように排気方向上流側に配設され、前記内蓋の連通孔と同軸に配置された流出孔、および、この流出孔と所定間隔をあけて前記流出孔と同軸に配置された流入孔を有し、これらの間に発音空間が形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧力調理器では、内蓋と蓋との間を排気通路の一部を構成する排気空間とし、この排気空間に連通する内蓋の連通孔に安全弁を配設しているため、通常の排気通路と安全弁が作動した時の排気通路とを共用できる。そして、内蓋の連通孔の上流側または下流側に発音体を配設しているため、大幅な設計変更をすることなく、鍋内が異常圧力まで昇圧した異常状態をユーザに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の圧力調理器である炊飯器を示す断面図である。
【図2】蓋体の構成を示す斜視図である。
【図3】内蓋の構成を示す斜視図である。
【図4】(A),(B)は内蓋の構成を示す断面図である。
【図5】(A)は安全弁および発音体の非作動状態を示す概略図、(B)は安全弁および発音体の作動状態を示す概略図である。
【図6】第2実施形態の圧力調理器である炊飯器を示す断面図である。
【図7】第2実施形態の発音体を有するフィルタセットを示す斜視図である。
【図8】(A)は安全弁および発音体の非作動状態を示す概略図、(B)は安全弁および発音体の作動状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る第1実施形態の圧力調理器である圧力式の炊飯器を示す。この炊飯器は、電磁誘導加熱される有底筒状の内鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、炊飯器本体11に回動可能に取り付けた蓋体21とを備えている。本発明では、蓋体21に形成した排気通路に調圧弁48,55を配設して内鍋10内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能とし、かつ、蓋体21に安全弁69を配設して設定圧力より高い設定した異常圧力を越えて昇圧することを防止している。そして、安全弁69の排気方向下流側に発音体73を配設し、設定異常圧力になるとユーザに知らせるようにしている。
【0017】
炊飯器本体11は、筒形状をなす胴体12と、胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付けた肩体14とからなる外装体を備えている。この肩体14は、略中央に内鍋10を着脱可能に配置するための開口部15を備え、この開口部15の正面側に、蓋体21を閉塞状態に維持するための係合受部(図示せず)が設けられている。また、肩体14の開口部15には、筒状をなす内胴16と、非導電性材料からなる受け皿状の保護枠17とが配設されている。この保護枠17の下部外周面には、第1加熱手段である誘導加熱コイル18がフェライトコア19を介して配設されている。また、内胴16の外周部には、第2加熱手段である胴ヒータ(図示せず)が配設されている。さらに、保護枠17には、保護枠17を貫通して内鍋10の温度を検出するための温度検出手段である内鍋用温度センサ20が配設されている。
【0018】
蓋体21は、肩体14の背部に形成されたヒンジ受部に回動可能に取り付けられ、炊飯器本体11の上端開口を開放可能に閉塞するものである。この蓋体21は、炊飯器本体11の外装体と共に外表面材を構成する上板22と、上板22の底を閉塞する下板26とを備えている。閉塞状態で内鍋10の側に位置する下板26の下側には放熱板40が配設され、この放熱板40の下側に内蓋44が着脱可能に配設されている。そして、この蓋体21は、内蓋44に取り付けられた第1調圧弁48および第2調圧弁55の内部、これらを収容する下板26の収容部31,36との隙間、内蓋44と放熱板40との隙間、および、蒸気口ユニット24内を経た経路によって、内鍋10内と機外とを連通させる排気通路が構成されている。
【0019】
上板22には、前部に蓋体21を開放操作するための操作部材23が配設されている。また、上板22の背部には、排気通路の出口を構成する蒸気口ユニット24が着脱可能に配設されている。この蒸気口ユニット24は、下方へ突出した接続部25が上板22に形成した貫通孔を通して下板26の被接続部28に接続される。
【0020】
下板26は、肩体14の上側の凹状の窪み形状と対応する形状をなす。下板26の背部には、肩体14のヒンジ受部に回動可能に軸着されるヒンジ接続部27が設けられている。また、下板26の背部には、蒸気口ユニット24の下部に位置するように、蒸気口ユニット24の接続部25を着脱可能に接続する被接続部28が設けられている。この被接続部28の下端開口には、放熱板40との間をシールするシール部材29が配設されている。さらに、下板26の前部には、蓋体21を炊飯器本体11に対して閉塞した状態に維持する蓋ロック部材30が回動可能に取り付けられている。この蓋ロック部材30は、キックバネによって係合位置に付勢され、操作部材23が押し込まれることにより係合受部との係合が解除される。
【0021】
また、下板26には、図1および図2に示すように、内蓋44に配設された第1調圧弁48を収容する第1調圧弁収容部31が設けられている。この第1調圧弁収容部31は、上下端を開口した筒状のもので、その上端開口にはパッキン32が配設され、下端開口には放熱板40との間をシールするシール部材33が配設されている。第1調圧弁収容部31の背面側には、第1調圧弁48の駆動手段であるステッピングモータ34が配設されている。このステッピングモータ34には、その駆動力を第1調圧弁48に伝える押下部材35が配設されている。
【0022】
第1調圧弁収容部31の横には、第2調圧弁55を収容する第2調圧弁収容部36が設けられている。この第2調圧弁収容部36は、下端開口のドーム形状のもので、その側壁前部には駆動用開口部が設けられ、この駆動用開口部がパッキン37により閉塞されている。なお、第2調圧弁収容部36の下端開口は、第1調圧弁収容部31と同様に、放熱板40との間がシール部材(図示せず)によってシールされている。第2調圧弁収容部36の正面側には、第2調圧弁55の駆動手段であるソレノイド38が配設されている。このソレノイド38は、通電されることにより後退し、通電が遮断されることにより進出するロッドを備えている。このロッドには、パッキン37を介して第2調圧弁収容部36内に位置する第2調圧弁55の球状部材60を押圧する押圧部材39が配設されている。
【0023】
放熱板40は金属製であり、その上面には第3加熱手段である蓋ヒータ41が配設されている。この放熱板40には、被接続部28の下部に位置するように開口部42が設けられ、この開口部42の上側縁がシール部材29によってシールされている。同様に、収容部31,36の下部に開口部が設けられ、これら開口部がシール部材33によってシールされている。また、放熱板40の外周部には、内蓋44の外周部との間をシールするシール部材43が配設されている。
【0024】
図3および図4(A)に示すように、内蓋44は、金属製の内蓋本体45と蓋パッキン46とを備えている。蓋パッキン46は、内鍋10の上端開口の内周壁に密着してシールするもので、外周部に樹脂枠47を配設することにより、内蓋本体45に対して離脱不可能に装着されている。この内蓋44には、上面側に第1調圧弁48と第2調圧弁55とが配設され、下面側にフィルタセット61が配設されている。
【0025】
第1調圧弁48は、排気通路中に設けられる第1の弁機構である。この第1調圧弁48は、内蓋本体45の第1調圧弁収容部31の中心に位置するように第1挿通孔49が設けられ、その上部に配設されている。第1調圧弁48は、第1挿通孔49に内鍋10の側から配設される第1弁座50を備えている。この第1弁座50には、排気通路の第1の入口となる第1通気孔51が設けられている。また、第1弁座50には、上下端を開口した筒状をなす第1カバー52が配設されている。この第1カバー52は、下部に第1調圧弁収容部31に連通する孔52aを備えている。この第1カバー52の内部には、第1通気孔51を開放可能に閉塞する弁体53と、この弁体53を閉塞位置(下向き)に移動させる作動受部材54と、これらの間に位置するスプリング(図示せず)とを備えている。そして、この第1調圧弁48は、ステッピングモータ34の駆動により押下部材35を介して作動受部材54が下向きに移動されると、スプリングを介して弁体53で第1通気孔51を閉塞する。また、作動受部材54の移動量(付勢力)の調節により、1.00〜1.30atmの範囲で、内鍋10内を昇圧可能である。また、ステッピングモータ34の駆動により作動受部材54の移動が解除されると開放位置に移動され、第1通気孔51を開放して内鍋10内を大気に開放する。
【0026】
第2調圧弁55は、排気通路中に設けられる第2の弁機構である。この第2調圧弁55は、内蓋本体45の第2調圧弁収容部36の中心に位置するように第2挿通孔56が設けられ、その上部に配設されている。第2調圧弁55は、第2挿通孔56に内鍋10の側から配設される第2弁座57を備えている。この第2弁座57には、排気通路の第2の入口となり、内鍋10内が沸騰した状態で、内鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積の第2通気孔58が設けられている。また、第2弁座57には、下端を開口したドーム状をなす第2カバー59が配設されている。この第2カバー59は、第2調圧弁収容部36のパッキン37の側に、ソレノイド38の押圧部材39を進退可能に挿通するとともに、第2調圧弁収容部36に連通する孔59aを備えている。この第2カバー59の内部には、第2通気孔58を開放可能に閉塞する球状部材60が配設されている。この球状部材60は、ソレノイド38の駆動によりロッドが後退すると転動して第2通気孔58を閉塞し、ソレノイド38への通電を遮断してロッドが進出すると第2通気孔58上から離間される。本実施形態の球状部材60は、第2通気孔58を閉塞した状態で、内鍋10内の圧力が1.30atmに昇圧すると、その蒸気の圧力で第2通気孔58上から転動して離反する重量のものを使用している。
【0027】
フィルタセット61は、排気通路の入口である第1および第2通気孔51,58を覆うように配設され、内鍋10内の調理物が通気孔51,58を目詰まりさせることを防止するとともに、排気通路内に調理物が侵入することを防止するものである。本実施形態のフィルタセット61は、第1および第2弁座50,57の取り付けによって内蓋本体45に挟み込まれるようにして配設されるフィルタベース部材62と、このフィルタベース部材62に着脱可能に装着されるフィルタ部材63とからなる。フィルタ部材63には、例えば雑穀類を通過させない直径のフィルタ孔64が複数設けられている。
【0028】
この内蓋44を装着した蓋体21は、第1および第2通気孔51,58から内鍋10内の空気(蒸気)が排気される。そして、第1および第2通気孔51,58を通って第1および第2調圧弁48,55内に流入し、第1および第2調圧弁48,55のカバー52,59と収容部31,36との間を通って放熱板40と内蓋44との隙間に至る。即ち、放熱板40と内蓋44との間は、排気通路の一部を構成する排気空間65となる。そして、この排気空間65に流入した空気は、被接続部28から蒸気口ユニット24を経て機外に排気される。なお、以上の構成は、従来の炊飯器と同様である。
【0029】
そして、本実施形態の蓋体21には、図1および図3に示すように、内鍋10内が第1および第2調圧弁48,55によって昇圧可能な設定圧力(1.30atm)より高い異常圧力(例えば1.50atm)になると作動して、内鍋10内の空気を外部へ排気するための安全弁69が配設されている。この安全弁69は、下板26上に配設する差圧式の圧力センサ66と内鍋10内とを連通させ、排気空間65とは区画するように密閉するシール部材により構成している。
【0030】
具体的には、図4(B)に示すように、圧力センサ66の下方に位置するように、放熱板40に取付孔67が設けられ、内蓋44の内蓋本体45に連通孔68が設けられている。この連通孔68は、調理物が目詰まりすることはない大径のものである。そして、取付孔67には、シール部材として機能する安全弁69が配設されている。この安全弁69は、両端開口の円筒部70を備え、その中間位置に取付孔67の外周部上面に圧接してシールするシール片71が設けられている。円筒部70の上端開口は、圧力センサ66の入力ポートに接続されている。また、円筒部70の下端は、略円錐筒状をなすように下向きに拡開させた弾性変形部72とされている。この弾性変形部72は、内蓋44を装着した状態で連通孔68の外周部上面に圧接され、内鍋10内と排気空間65内とを区画(密閉)する。また、弾性変形部72は、内鍋10の内圧が予め設定した異常圧力になると外向きに変形して、連通孔68と排気空間65とを連通させる。
【0031】
安全弁69の排気方向下流側には、連通孔68を通して排気空間65へ排気される空気の排気圧によって発音する発音体73が配設されている。この発音体73は、安全弁69の弾性変形部72の外周を囲繞するように、下向きに拡開した略円錐筒状の筒状部材からなる。発音体73は、安全弁69と同一軸線となるように放熱板40の取付孔67に取り付けられている。本実施形態では、発音体73を取付孔67に配置し、その内側に安全弁69を装着することにより、発音体73が挟み込まれるようにして装着される。発音体73は、シール部材と同様の材料からなり、安全弁69の弾性変形部72より弾性的に変形し易い軟質な弾性変形部74を有する。そして、この弾性変形部74は、下端縁と内蓋44との間を空気が通過する際に風切音が発生する。即ち、弾性変形部74が弾性的に変形する排気圧は、安全弁69が作動する異常圧力より低く設定され、内鍋10内が異常圧力になることにより、確実に発音するように構成している。
【0032】
この炊飯器には、肩体14の正面上部に、使用者が炊飯条件を入力するためのスイッチと、その選択状態や動作状態を表示する液晶表示板とを有する操作パネル75が配設されている。また、胴体12と保護枠17との間には、マイコンを実装した制御基板が配設されている。そして、マイコンは、ユーザが操作パネル75の操作することによる炊飯制御の実行を検出すると、予め記憶された炊飯プログラムに従って、予熱、昇温、沸騰維持、および、むらしの各工程からなる炊飯処理を実行した後、引き続いて、炊き上げた米飯を所定温度に保温する保温処理を実行する。
【0033】
炊飯処理中には、内鍋10を加熱することにより発生した蒸気は、第1および第2通気孔51,58から排気通路に流入して、各収容部31,36から排気空間65を経て蒸気口ユニット24に流入し、この蒸気口ユニット24から外部へ排気される。また、沸騰維持工程では、ソレノイド38をオンすることにより第2通気孔58を閉塞し、圧力センサ66の検出値に基づいてステッピングモータ34を駆動させて、内鍋10内の圧力を多段階で調整する。そして、この調圧中に内鍋10内が設定圧力を超えると、第1調圧弁48の弁体53がスプリングの付勢力に抗して上向きに移動して、内鍋10内の圧力を降圧する。また、内鍋10内が設定した最大設定圧力を越えると、第2調圧弁55の球状部材60が排気圧で第2通気孔58上から転動して離反し、内鍋10内の圧力を降圧する。
【0034】
この際、図5(A)に示すように、安全弁69内には、連通孔68を通して内鍋10内の圧力が加わっている。しかし、その圧力は異常設定圧力より低いため、安全弁69の弾性変形部72は弾性的に変形することはなく、内蓋44に圧接したシール状態を維持する。その結果、連通孔68を通して共用の排気空間65へ蒸気が排出されることはない。
【0035】
一方、何らかの原因で第1および第2通気孔51,58が目詰まりした場合、または、誤使用によりフィルタセット61のフィルタ孔64が塞がれた場合、内鍋10内の圧力は最大設定圧力を超えた異常圧力に昇圧する。内鍋10内が設定異常圧力まで昇圧すると、図5(B)に示すように、安全弁69の弾性変形部72が弾性的に外向きに変形し、内鍋10内の高圧蒸気が連通孔68を通して排気空間65に流入する。そうすると、連通孔68の下流側に位置する発音体73の弾性変形部74は、安全弁69の弾性変形部72より弾性的に変形し易いものであるため、その排気圧によって弾性的に外向きに変形する。その結果、内鍋10内の蒸気が排気空間65を通り、蒸気口ユニット24を経て外部に排出される。この際、発音体73によって風切音が連続的に発生し、その音が外部に出力される。よって、炊飯器が異常圧力に昇圧していることをユーザが確認できる。
【0036】
このように、本発明の炊飯器では、安全弁69が作動すると、安全弁69の排気方向下流側に配設した発音体73が連続的に発音し、ユーザに報知することができる。よって、ユーザは、炊飯器を一時停止して異常を解消したり、炊飯制御自体を取り止めることで、異常状態が放置されることを防止できる。
【0037】
また、炊飯器は、内蓋44と放熱板40との間を排気空間65とし、内蓋44に排気空間65に連通する連通孔68を設けて、その連通孔68に安全弁69を配設するとともに、発音体73を配設している。そのため、通常の排気通路と安全弁69が作動した時の排気通路とを共用できる。よって、大幅な設計変更をすることなく、ユーザに対して異常状態を確実に知らせることができる。
【0038】
特に、安全弁69は、連通孔68を密閉するシール部材によって構成しているため、容易かつ安価に搭載することができる。しかも、発音体73は、安全弁69を囲繞するように配設したシール部材と同様の筒状部材からなるため、大幅な設計変更をすることなく容易かつ安価に実装し、ユーザに異常状態を確実に知らせることができる。
【0039】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の炊飯器を示す。この第2実施形態では、発音体を連通孔68に対して内鍋10側である排気方向上流側に配設した点で、第1実施形態と大きく相違する。また、本実施形態の発音体は、第1および第2通気孔51,58が目詰まりすることを防止するためのフィルタセット80に一体的に設けている。
【0040】
第2実施形態のフィルタセット80は、排気通路の入口である第1および第2通気孔51,58および安全弁69用の連通孔68を覆うように配設されるものである。このフィルタセット80は、第1および第2弁座50,57の取り付けによって内蓋本体45に挟み込まれるようにして配設されるフィルタベース部材81と、このフィルタベース部材81に開閉可能に装着されるフィルタ部材86とからなる。
【0041】
図7に示すように、フィルタベース部材81は略矩形状の薄板からなり、背面側(図中左側)にヒンジ受部82が設けられている。このフィルタベース部材81には 第1調圧弁48を装着する位置に第1調圧弁挿通部83が設けられるとともに、第2調圧弁55を装着する位置に第2調圧弁挿通部84が設けられている。これら挿通部83,84は、第1および第2調圧弁48,55の弁座50,57のフランジ部が嵌合される凹部内に孔を設けたものである。また、フィルタベース部材81の正面側には、フィルタ部材86を開放可能にロックするロック部材85が配設されている。
【0042】
フィルタ部材86は、フィルタベース部材81に重畳するように配置される略矩形状の薄板からなる。このフィルタ部材86は、別体のヒンジ軸87を介してヒンジ受部82に回動可能に接続されるヒンジ接続部88を備えている。フィルタ部材86には、第1および第2調圧弁挿通部83,84を覆うようにフィルタ部89が設けられ、このフィルタ部89に複数のフィルタ孔90が設けられている。また、フィルタ部材86の正面側外周部には、ロック部材85が係合するロック受部91が設けられている。
【0043】
これらフィルタベース部材81およびフィルタ部材86には、連通孔68の排気方向上流側に位置する発音空間部(発音体)92が設けられている。この発音空間部92は、フィルタベース部材81に形成した第1空間形成部93と、フィルタ部材86に形成した第2空間形成部96とで構成される。
【0044】
第1空間形成部93は、連通孔68と同一軸線上に位置するように設けられた円形状の窪みからなる。この第1空間形成部93には、連通孔68と同一に配置された流出孔94が形成されている。また、第1空間形成部93の開口縁には、円環状に突出する係合リブ95が設けられている。
【0045】
第2空間形成部96は、係合リブ95に外嵌する直径の円形状の窪みからなる。この第2空間形成部96には、第1空間形成部93の流出孔94と同径で同軸に配置された流入孔97が設けられている。また、第2空間形成部96の内周面には、中心に向かって突出するガイド部98が周方向に所定間隔をあけて設けられている。
【0046】
この第2実施形態の炊飯器は、マイコンによって炊飯制御が実行されると、第1実施形態と同様に、第1および第2調圧弁48,55を調整しながら加熱される。そして、第1および第2通気孔51,58に何ら異常が生じていない場合には、これらを通して内鍋10内の蒸気が排気される。そして、安全弁69は、図8(A)に示すように、安全弁69の弾性変形部72が弾性的に変形することはなく、内蓋44に圧接したシール状態を維持する。その結果、発音空間部92内には、高圧蒸気が通過しないため、音が発せられることはない。
【0047】
一方、何らかの原因で通気孔51,58が目詰まりした場合や、誤使用によりフィルタセット80のフィルタ孔90が塞がれた場合には、内鍋10内の圧力は最大設定圧力を超えた異常圧力に昇圧する。そうすると、図5(B)に示すように、安全弁69の弾性変形部72が弾性的に外向きに変形し、内鍋10内の蒸気が連通孔68を通して排気空間65に排出する。その結果、内鍋10内の蒸気が発音空間部92内を通過するため、音が発せられ、その音が外部に出力される。よって、炊飯器が異常圧力に昇圧していることをユーザが確認できる。
【0048】
このように、第2実施形態の炊飯器は、第1実施形態と同様に、内鍋10内が設定圧力を超えた異常圧力になると、その排気圧によって音が出力される。しかも、その発音体である発音空間部92は、連通孔68の上流側である内蓋44の内鍋10側に配設するフィルタセット80に設けているため、大幅な設計変更をすることなく容易かつ安価に実装し、ユーザに異常状態を確実に知らせることができる。
【0049】
なお、本発明の圧力調理器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、安全弁69を圧力センサ66と内鍋10内とを連通させるシール部材により構成したが、専用のシール部材により構成してもよい。また、安全弁69はシール部材33に限られず、第1調圧弁48のように弁体をスプリングによって付勢した機械式のものであってもよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では、排気通路を閉塞して内鍋10内を大気圧より高い設定圧力に昇圧するための弁機構を一対の調圧弁48,55により構成したが、この弁機構は、一方の調圧弁48,55だけを配設した構成であっても、同様の作用および効果を得ることができる。勿論、調圧弁48,55の機構は、これらの構成に限定されるものではない。
【0052】
さらにまた、第1実施形態では、安全弁69と発音体73を別体で構成したが、これらは一体的に形成してもよい。また、これらは、放熱板40の取付孔67に取り付ける構成としたが、内蓋44の連通孔68に取り付ける構成としてもよい。
【0053】
そして、前記実施形態では、飯米を炊飯する圧力炊飯器に発音体73を設ける構成を適用したが、所定の食材を調理する圧力式の調理器にも同様に適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…内鍋
11…炊飯器本体
18…誘導加熱コイル(加熱手段)
21…蓋体
24…蒸気口ユニット(排気通路)
31…第1調圧弁収容部
36…第2調圧弁収容部
40…放熱板
44…内蓋
48…第1調圧弁
49…第1挿通孔
51…第1通気孔
53…弁体
55…第2調圧弁
56…第2挿通孔
58…第2通気孔
60…球状部材
61…フィルタセット
65…排気空間
66…圧力センサ
68…連通孔
69…安全弁
73…発音体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の鍋と、この鍋の上端開口を密閉する内蓋を有する蓋と、この蓋に設けられ前記内蓋に形成した通気孔と前記蓋の外部とを連通させる排気通路と、この排気通路中に設けられ前記鍋内を大気圧より高い設定圧力に昇圧可能な弁機構と、を備えた圧力調理器において、
前記内蓋と前記蓋との間を、前記排気通路の一部を構成する排気空間とし、
前記内蓋に、前記排気空間に連通する連通孔を設け、
前記連通孔に、前記鍋内が前記弁機構によって昇圧可能な設定圧力より高い異常圧力になると作動して、前記連通孔および前記排気空間を通して前記鍋内の空気を前記蓋の外部へ排気する安全弁を配設するとともに、
前記安全弁の排気方向上流側または下流側に、前記連通孔を通して排気する際の排気圧によって発音する発音体を配設した
ことを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】
前記安全弁は、前記内蓋の連通孔の外周部上面を密閉するシール部材からなることを特徴とする請求項1に記載の圧力調理器。
【請求項3】
前記発音体は、前記安全弁を囲繞するように排気方向下流側に配設され、前記鍋内の空気の排気圧によって弾性的に変形して発音可能な筒状部材からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力調理器。
【請求項4】
前記発音体を構成する筒状部材が弾性変形する排気圧は、前記安全弁が作動する異常圧力より低いことを特徴とする請求項3に記載の圧力調理器。
【請求項5】
前記発音体は、前記内蓋の連通孔の前記鍋側に位置するように排気方向上流側に配設され、前記内蓋の連通孔と同軸に配置された流出孔、および、この流出孔と所定間隔をあけて前記流出孔と同軸に配置された流入孔を有し、これらの間に発音空間が形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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