説明

圧延クーラントの循環供給設備

【課題】圧延クーラントを循環流通させながら清浄度を高めることができ、クーラントに含まれる異物に起因した被圧延材の凹み等の傷の発生を効果的に抑制することのできる圧延クーラントの循環供給設備を提供する。
【解決手段】圧延クーラントの循環供給設備を、クーラントの原液を流入させる原液流入口56と、原液中の異物を濾過するフィルタと、フィルタを通過した濾液を流出させる濾液流出口58と、フィルタに付着した異物を吸引しドレン液としてドレン排出口92から排出するフィルタ浄化手段とを有し、原液の連続した濾過を実行しつつフィルタ浄化を併行して行う自動洗浄濾過装置42を含んで構成する。そしてクーラントを循環流路24を通じて圧延機14に連続供給する一方、ドレン排出口92から出たクーラントのドレン液を遠心分離機100に通して異物の分離処理を施した上で、循環流路24に戻し、クーラントとして循環使用するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は圧延機への圧延クーラントの循環供給設備に関し、詳しくは圧延クーラントに汚れ物質として含まれている異物の除去手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材等の冷間圧延の工程では、冷却及び潤滑の目的で圧延クーラントを圧延ロールと被圧延材とに噴きかけることが行われている。
この冷間圧延での圧延クーラントとしては、例えば水80〜95%程度に油5〜20%程度(何れも質量%)を加えて均一混合したエマルジョン液が用いられている。
【0003】
一般にこの圧延工程における圧延クーラントの圧延機への供給は、次のようにして行っている。
即ち、圧延機から出た圧延クーラントを循環流路に沿って循環させ、そして循環流路上で圧延クーラント(以下単にクーラントとすることがある)に汚れ物質として含まれている固形の異物を濾過により分離除去し、清浄化したクーラントを圧延機に連続供給するようにしている。
【0004】
圧延機から出たクーラントには、被圧延材に付着していた汚れや、圧延加工により圧延材から出た摩耗粉,更には被圧延材に接触してクーラントの液をしごくようにして取り除く布製のパット由来の繊維屑等が含まれており、そこで循環流路上に濾過装置を設置してクーラントに含まれる異物を濾過除去し、清浄化したクーラントを圧延機へと送るようにしているのである。
【0005】
図3は、従来用いられている圧延クーラントの循環供給設備の例を示している。
図において、200,202は圧延機204における圧延ロール(200はワーキングロール,202はバックアップロール)で、206はクーラントノズルであり、圧延クーラントはこのクーラントノズル206から圧延ロールと被圧延材とに向けて噴きかけられる。
220は布製のパッドで、このパッド220は被圧延材に押し当てられて、被圧延材に付着したクーラントをしごくようにして除去する。
208は圧延クーラントの循環流路で、この循環流路208上に圧延クーラントを一時的に貯溜する貯溜タンク210が備えられている。
ここで貯溜タンク210はダーティタンク210Aと、中間タンク210Bと、クリーンタンク210Cとに分かれている。
【0006】
圧延機204から出た圧延クーラントは先ずこのダーティタンク210Aに流入してそこに貯溜される。
そしてダーティタンク210A内の圧延クーラントが、ポンプにてフラットベット式濾過装置212に送られる。
このフラットベット式の濾過装置212は、濾材(フィルタ)として濾紙を用いたもので、容器214内に濾紙216をセットしてある。
【0007】
この濾過装置212では、ダーティタンク210Aから送られて来た圧延クーラントを濾紙216を通過させることで濾過を行い、圧延クーラントに含まれている異物を分離除去する。
そして濾紙216を通った圧延クーラントの濾液が、クリーンタンク210Cへと流入してそこに貯溜される。
【0008】
尚濾過装置212は、容器214内にセットしてある濾紙216が多量の異物を濾過することにより目詰まりを生じたり、濾過能力が低下したとき、容器214外にある濾紙を図中左方向に送って容器214内の濾紙を更新し、新しく容器214内にセットした濾紙にて濾過を行う。
そして容器214外の濾紙を使い切ったところで、濾紙全体の交換を行う。
クリーンタンク210Cに一旦貯溜された圧延クーラントは、ポンプにより下流側のバグフィルタ218を通過して圧延機204へと供給される。
【0009】
この例の循環供給設備において、濾過装置212は一定時間ごとに(一定流量の濾過を行うごとに)容器214外の濾紙を容器214内に図中左向きに送り込んで、容器214内にセットしてある濾紙を更新する。その頻度は例えば30分に1回程度で、その際の所要時間は25秒程度である。
【0010】
また容器214外の濾紙を使い切ってしまうと、そこで濾紙全体の交換を行う。その頻度は例えば1週間に1回程度で、その際の所要時間は30分程度である。
そして濾紙216の更新を行う際、及び濾紙全体の交換を行う際には、当然に濾過装置212へのダーティタンク210A内のクーラントの供給は停止される。
【0011】
一方濾過装置212が停止している間にも、圧延機204にはクリーンタンク210C内のクーラントが連続供給され、また使用済のクーラントが圧延機204から連続して流出し、ダーティタンク210A内に流れ込む。
【0012】
この結果、クリーンタンク210C内のクーラントの量は減少する一方で、ダーティタンク210A内のクーラントの量は増え続け、そして遂にはその量がダーティタンク210Aの容量を超えて、ダーティタンク210A内のクーラントが中間タンク210Bへとオーバーフローして流入し、更にはその中間タンク210Bの容量をも超えて、クリーンタンク210Cへとオーバーフローし流入するといったことが生じる。
即ち汚れたクーラントがクリーンタンク210Cへと流入してしまうといったことが起る(クーラントの循環量が大量であるため貯溜タンク210のタンク容量は、圧延クーラントの連続した循環によって数分程度で内部の液全体が更新してしまう程度で、相対的に小容量である)。
【0013】
圧延機204に連続して送られるクーラントの量、つまり圧延機204から連続して出て来るクーラントの量は、例えば毎分数百リットルと大量であり、一方貯溜タンク210はこれに対して容量が小量であり(貯溜タンク210の容量を大きくすることは各種の制約の下で困難である)、そのため濾過装置212による濾過を停止させて、ダーティタンク210A内のクーラントの汲み出しを停止すると、上記のようにダーティタンク210Aから中間タンク210Bに、更にはクリーンタンク210Cへと汚れた圧延タンクのオーバーフローが生じてしまう。
【0014】
このためクリーンタンク210Cのタンク壁は汚れが付着した状態となり、そしてあるときそのタンク壁に付着していた汚れがクリーンタンク210C内の濾過済みのクーラントの液とともに汲み出され、そして微細な異物がバグフィルタ218を通過して圧延機204へと送られてしまうといったことが生じる。
【0015】
而して圧延機204にその異物を含んだクーラントが送られると、圧延ロールにて異物が被圧延材に押し付けられることで、被圧延材に異物に起因する凹み等の傷を発生させてしまうといったことが起り得る。
特にみがき帯鋼等にあっては、そのような微細な異物(例えば太さが0.1mm程度の繊維屑)による傷であっても大きな問題となる。
【0016】
尚クリーンタンク210Cに異物を含んだクーラントが流れ込む問題の対策として、バグフィルタ218のフィルタとして目開きの小さなものを用いると直ぐに目詰まりを起してしまい、またバグフィルタ218での圧力損失が大きくなって、圧延機204へのクーラントの吐出圧が低下して圧延品質に影響を与えてしまう。そのため一定以上に目開きの小さなフィルタを用いることが困難であることも、上記問題の発生の要因となっている。
【0017】
以上のような問題は、濾過装置212が濾紙の更新或いは濾紙全体の交換のために所定時間停止させなければならず、その間ダーティタンク210A内の圧延クーラントが汲み出されないことに起因して生ずる問題である。
【0018】
尚、主として一般の工業用水を対象として、水中から懸濁物質を分離除去する濾過装置として自動洗浄機能を備えた以下のような濾過装置、即ち(a)ハウジングと、(b)ハウジングの内部に懸濁物質を含む原水を流入させる原水流入口と、(c)ハウジングの内部に設置され、原水流入口から流入した原水を通過させて原水中の懸濁物質を濾過により分離し除去するフィルタと、(d)フィルタを通過した清浄な水の濾液をハウジングの外部に流出させる濾液流出口と、(e)吸引流を発生させてフィルタの濾過面に付着した懸濁物質を水とともに吸入する吸引ノズルをフィルタの濾過面に沿って移行させ、吸入した懸濁物質を含む水をドレン水としてドレン排出口から排出するフィルタ浄化手段と、を備え、フィルタによる原水の連続した濾過を実行しつつ、フィルタ浄化手段によるフィルタ浄化を併行して行う自動洗浄濾過装置が公知である。
【0019】
例えば下記特許文献1にこの種の自動洗浄濾過装置が開示されている。
この濾過装置は、連続的な濾過を行いつつフィルタを自動洗浄する機能を備えたもので、この自動洗浄濾過装置を圧延クーラントの濾過装置として適用するといったことも考えられる。
但しこの自動洗浄濾過装置は、フィルタから剥離させ、吸引ノズルに吸入した異物(汚れ)を水とともにドレン水としてドレン排出口から排出して廃棄処分するものであり、これを圧延クーラントの濾過装置として用いたとき、排液の処分に多大なコストがかかってしまうとともに、ドレン液として排出した分の多量のクーラントを新たに循環流路に補給しなければならず、これをそのままクーラントの濾過装置として適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2004−141785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は以上のような事情を背景とし、圧延クーラントを循環流路に沿って循環流通させながらその清浄度を高めることができ、圧延機に供給される圧延クーラントに含まれる異物に起因した被圧延材の凹み等の傷の発生を効果的に抑制することのできる圧延クーラントの循環供給設備を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
而して請求項1のものは、冷却及び潤滑の目的で圧延ロールと被圧延材とに噴きかけられて圧延機から出た油と水とを含む圧延クーラントを循環流路に沿って循環させ、該循環流路上で該クーラントに汚れ物質として含まれる固形の異物を濾過により分離し、清浄化した該クーラントを該圧延機に供給する圧延クーラントの循環供給設備であって、(a)ハウジングと、(b)該ハウジングの内部に前記異物を含む前記クーラントの原液を流入させる原液流入口と、(c)該ハウジングの内部に設置され、該原液流入口から流入した原液を通過させて該原液中の異物を濾過により分離し除去するフィルタと、(d)該フィルタを通過した清浄な前記クーラントの濾液を前記ハウジングの外部に流出させる濾液流出口と、(e)吸引流を発生させて前記フィルタの濾過面に付着した前記異物を前記クーラントとともに吸入する吸引ノズルを前記フィルタの濾過面に沿って移行させ、吸入した異物を含む該クーラントをドレン液としてドレン排出口から排出するフィルタ浄化手段と、を備え、前記フィルタによる前記原液の連続した濾過を実行しつつ、前記フィルタ浄化手段によるフィルタ浄化を併行して行う自動洗浄濾過装置を有し、前記圧延機から出た前記異物を含んだ前記クーラントを前記循環流路の一部をなすダーティタンクに貯溜するとともに、該ダーティタンク内の該クーラントを前記原液流入口から前記フィルタを経て前記濾液流出口に到る、前記循環流路における前記自動洗浄濾過装置の内部流路を流通させた後、前記濾液流出口から前記圧延機に到る該循環流路の外部流路を通じて該圧延機に供給するようになす一方、前記ドレン排出口と前記循環流路とを連絡する戻し流路を設けて、該ドレン排出口から出た前記ドレン液を該戻し流路に設けたドレン液処理機に通して、該ドレン液に対し異物の分離処理を施した上で前記循環流路に戻し、前記クーラントとして循環使用するようになしたことを特徴とする。
【0023】
請求項2のものは、請求項1において、前記ドレン液処理機が前記ドレン液中の異物を遠心分離する遠心分離機であることを特徴とする。
【0024】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記フィルタ浄化手段が、前記フィルタを通過した前記クーラントの濾液を該フィルタに噴射する噴射ノズルを備え、前記吸引ノズルと該噴射ノズルとをセットで該フィルタに沿って移行させるものとなしてあることを特徴とする。
【0025】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記濾液流出口から前記圧延機に到る前記外部流路にクリーンタンクを具備させ、該濾液流出口から出た前記クーラントを該クリーンタンクに一旦貯溜した上で、該クリーンタンクから前記圧延機に向けて供給するようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0026】
以上のように本発明は、圧延クーラントの濾過装置として、ハウジングと、原液流入口と、フィルタと、濾液流出口と、フィルタ浄化手段と、を備え、フィルタによる原液の連続した濾過を実行しつつ、フィルタ浄化手段によるフィルタ浄化を併行して行う自動洗浄濾過装置を用い、そして圧延機から出た異物を含んだクーラントをダーティタンクに貯溜するとともに、ダーティタンク内のクーラントを上記自動洗浄濾過装置の原液流入口から上記フィルタを経て濾液流出口に到る、循環流路における自動洗浄濾過装置の内部流路を流通させた後、濾液流出口から圧延機に到る循環流路の外部流路を通じて圧延機に供給するようになす一方、ドレン排出口から出たドレン液をドレン液処理機に通して、ドレン液に対し異物の分離処理を施した上で戻し流路を通じて循環流路に戻し、クーラントとして循環使用するようになしたものである。
【0027】
本発明では、濾過装置が連続した濾過を実行しつつ、フィルタに付着した異物をフィルタ浄化手段にて自動的にフィルタから剥離させて除去する機能を有しているため、クーラントを圧延機に循環供給するに際し濾過装置を一時的に停止させる必要がない。
従って濾過装置の停止によりダーティタンク内のクーラントの量が増え続け、ダーティタンクから溢出してしまうといった問題を解決することができる。
【0028】
また請求項4に従って濾過装置から出た清浄なクーラントをクリーンタンクに一旦貯溜した上で、クリーンタンクから圧延機に向けて供給する場合において、図3の従来の設備のようにそのクリーンタンクとダーティタンクとを1つの貯溜タンクに分けて設けた場合であっても、ダーティタンク内の汚れたクーラントがクリーンタンク内に流れ込んで来るといったことを防止でき、クリーンタンク内を常に清浄に維持することができる。
【0029】
従ってクリーンタンク内のクーラントを圧延機に供給する際、異物が良好に除去されたきれいなクーラントを圧延機に供給でき、圧延ロールにて異物が被圧延材に押し込まれ、被圧延材に凹み等の傷を発生させてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0030】
本発明では、自動洗浄濾過装置のドレン排出口から出たドレン液を廃棄処分せず、戻し流路上に設けたドレン液処理機に通してドレン液に対する異物の分離処理を施した上で循環流路に戻し、クーラントとして循環使用するようになしている点を特徴としている。
【0031】
かかる本発明では、ドレン液廃棄のための処理処分に多額の費用を要するといった問題を生じないのに加えて、ドレン液として排出した分の多量のクーラントを循環流路に継続的に補給する必要もない。
【0032】
本発明では上記のドレン液処理機として、ドレン液中の異物を遠心分離する遠心分離機を好適に用いることができる(請求項2)。
【0033】
また上記の自動洗浄濾過装置におけるフィルタ浄化手段を、フィルタを通過したクーラントの濾液をフィルタに噴射する噴射ノズルを備え、吸引ノズルと噴射ノズルとをセットでフィルタに沿って移行するものとなしておくことができる(請求項3)。
【0034】
請求項4は、自動洗浄濾過装置における濾液流出口から圧延機に到る外部流路上にクリーンタンクを備え、濾液流出口から出たクーラントをクリーンタンクに一旦貯溜した上で、クリーンタンクから圧延機に向けて供給するようになしたもので、この請求項4によれば、万一自動洗浄濾過装置が故障した場合においても、一定時間の間クリーンタンク内に貯溜してある圧延クーラントを圧延機に向けて供給し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である圧延クーラントの循環供給設備を示した全体図である。
【図2】図1における自動洗浄濾過装置を示した図である。
【図3】圧延クーラントの循環供給設備の従来例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10,12は圧延機(冷間圧延機)14における圧延ロール(10はワーキングロール,12はバックアップロール)である。
16はクーラントノズルで、このクーラントノズルから水と油とを含むエマルジョン状態の圧延クーラント(以下単にクーラントとする)が、冷却及び潤滑の目的で圧延ロールと被圧延材18とに向けて噴きかけられる。
この例において、クーラントは水95%と油5%(何れも質量%)とを含んだ液である。
【0037】
20は、被圧延材18に押し当てられ、被圧延材18に付着したクーラントをしごくようにして被圧延材18から取り除く布製のパッドである。
また22は、圧延機14からのクーラントを受ける受器である。
24は、圧延機14から出たクーラントを循環させて再び圧延機14に供給する循環流路で、26はこの循環流路24に備えられた貯溜タンクである。
【0038】
貯溜タンク26は地下に設けられており、内部がダーティタンク26Aと、中間タンク26Bと、クリーンタンク26Cとに分かれている。
この貯溜タンク26は、従来用いられている図3に示した貯溜タンク210と同様のもので、その内部容量も同じである。
ここでは貯溜タンク26の容量は約6000L(リットル)で、それを3分割し、ダーティタンク26A,中間タンク26B,クリーンタンク26Cとしている。
【0039】
この例では、圧延機14から出たクーラントが流路28を通じて貯溜タンク26のダーティタンク26Aに流入し、そこに一時的に貯溜され、そこからポンプ40により汲み出されて流路30を通じ自動洗浄濾過装置42へと送られ、そこでクーラントに汚れ物質として含まれている異物が濾過により除去され、濾過後の濾液、つまり清浄化されたクーラントが流路32を通じて貯溜タンク26のクリーンタンク26Cに流入し、そこに一時的に貯溜される。
尚自動洗浄濾過装置42については後述する。
【0040】
クリーンタンク26Cに貯溜されたクーラントはポンプ44により汲み出され、そして流路34を通じ再び圧延機14へと供給される。
この流路34にはバグフィルタ46が備えられており、クリーンタンク26Cから汲み出されたクーラントは、このバグフィルタ46を通過して圧延機14へと送られる。
ここでバグフィルタ46は1次側フィルタと2次側側フィルタとを直列に配置して構成してあり、1次側フィルタとして目開きが25〜100μmのものが、また2次側フィルタとして目開き10〜50μmのものが用いられている。
尚、圧延機14の停止中は流路34に設けられた三方バルブ48が流路36側に切り替えられ、クリーンタンク26Cから汲み出されたクーラントが、流路34から流路36へと流れて再びクリーンタンク26Cへと戻される。
【0041】
図2に自動洗浄濾過装置42の構成が示してある。
この自動洗浄濾過装置42は、ハウジング50を有しており、その内部に円筒形状をなす粗目フィルタ52と、同じく円筒形状をなす細目フィルタ54とが軸方向に並べて設けてある。
粗目フィルタ52は粗大な固形物を濾過により分離除去するもので、ここでは粗目フィルタ52はパンチングメタルから成っている。
一方細目フィルタ54は、クーラントの原液中に汚れ物質として含まれている微細な異物を濾過により除去するもので、ここでは金属のメッシュ状部材から成っている。
この細目フィルタ54は目開きが10〜500μm程度のもの、特にここでは25μmのものが用いられている。
尚、粗目フィルタ52の図中左端と細目フィルタ54の図中右端とは、それぞれ遮蔽板60,62により閉鎖されている。
【0042】
この実施形態では、ダーティタンク26A内の汚れ物質即ち異物を含んだクーラントの原液が、ハウジング50に設けた原液流入口56から図1のポンプ40による加圧状態でハウジング50内部に流入する。
流入したクーラントの原液は粗目フィルタ52を外側から内側に通過して流れ、そこで1次濾過が行われる。即ちクーラントの原液中に含まれている粗大な固形分がそこで除去される。
【0043】
粗目フィルタ52の内側に流入した原液は、続いて図2中矢印で示すように図中右方向に移動して、細目フィルタ54の内側に流れた後、細目フィルタ54を内側から外側へと流れ、そこで原液に対する2次濾過が行われる。
即ち原液中に含まれている微細な異物が、この細目フィルタ54により濾過され、そして細目フィルタ54を通過した濾液即ち清浄化されたクーラントが濾液流出口58から流出し、図1のクリーンタンク26Cへと流入する。
【0044】
64は、粗目フィルタ52及び細目フィルタ54の中心部において図中左右方向(軸方向)に延設されたダートコレクタ管で、このダートコレクタ管64には、軸方向の異なった2個所にノズル部材66が互いに180°異なった向きで一体回転状態に設けられている。
【0045】
ダートコレクタ管64は、外管と内管とを有する2重管構造をなしており、そしてその内管の内側に濾液の流路を、また外管と内管との間にドレン液を流通させるドレン流路を形成している。
【0046】
一方ノズル部材66には、ドレン流路に連通したノズル孔を有し、細目フィルタ54の内面に付着した異物を吸引する吸引ノズルが設けられ、更にこの吸引ノズルの回転方向の後側位置に、濾液の流路に連通したノズル孔を有し、細目フィルタ54の内面に濾液を噴射する噴射ノズルが設けられている。
【0047】
80は、一対のノズル部材66をダートコレクタ管64とともに回転運動させるモータ、82は一対のノズル部材66をダートコレクタ管64とともに図中左右方向即ち軸方向に移動させるピストンで、一対のノズル部材66即ちそれらに備えられた各一対の吸引ノズル及び噴射ノズルは、これらモータ80による回転と、ピストン82による軸方向移動とによって、細目フィルタ54の内面を螺旋運動しながら図中左右方向に移動する。
【0048】
84は、細目フィルタ54の外側に形成される濾液室86と、上記の6本の内管の内側に形成される濾液の流路の軸方向の一端(図中左端)とを連通させる連通管で、この連通管84上に噴射ポンプ88が設けられている。
尚90は、細目フィルタ54の図中右端を閉鎖する仕切板62の右側に形成されたドレンチャンバで、92はドレン排出口,94はドレン排出口92に設けられたドレンバルブである。
【0049】
図2に示す自動洗浄濾過装置42では、図1のポンプ40にて加圧状態で送られて来たクーラントの原液を、原液流入口56からハウジング50内部に流入させる。
そして流入したクーラントの原液を、先ず粗目フィルタ52を外側から内側に通過させて1次濾過し、更に細目フィルタ54を内側から外側に通過させて2次濾過を行い、そしてその濾液即ち清浄化したクーラントを濾液流出口58から流出させる。
【0050】
この自動洗浄濾過装置42では、このようなクーラントの原液に対する連続した濾過を実行しつつ、細目フィルタ54の内面に付着した異物除去のためのフィルタ浄化を行う。
具体的には、ドレン排出口92のドレンバルブ94を開いてドレンチャンバ90の圧力を急降下させ、そして細目フィルタ54の内側の原液の圧力とドレンチャンバ90との圧力差により、吸引ノズルにて吸引流を生ぜしめ、その吸引流によって、細目フィルタ54の内面に付着している異物を細目フィルタ54から剥離させ且つこれを吸引ノズル内に吸入する。
そして吸入した異物を含むクーラントの原液をドレン液として、ダートコレクタ管64の内部のドレン流路を流通させてドレンチャンバ90へと送り、更にドレンチャンバ90からドレン排出口92を通じて外部に排出する。
【0051】
また吸引ノズルによる吸引とを併せて噴射ポンプ88を作動させ、濾液室86内の濾液を連通管84を通じてダートコレクタ管64の内管の内側の濾液の流路に送り込み、更に噴射ノズルから細目フィルタ54の内面に向けて濾液を噴射し、細目フィルタ54の洗浄を行う。
この実施形態では、洗浄ノズル(吸引・噴射),ダートコレクタ管64,モータ80,ピストン82,連通管84,噴射ポンプ88,ドレン排出口92,ドレンバルブ94等がフィルタ浄化手段を構成している。
この細目フィルタ54に対する浄化は連続的に行うこともできるが、ここでは一定時間ごと、例えば15分に1回の頻度で行う。その際に生ずるドレン液の流量は、例えば200L(リットル)/分である。
【0052】
尚この種の自動洗浄濾過装置は、一般の工業用水等の濾過装置として特許文献1等に開示された公知のものであり、また市販もされている。
【0053】
但しこの種従来の自動洗浄濾過装置では、ドレン排出口92から排出されたドレン液は廃棄処分されているが、ここではドレン排出口92から排出されたドレン液をクーラントとして循環して使用する。
即ち、ドレン排出口92から出た異物を含むクーラントのドレン液は、ドレン排出口92と循環流路24、詳しくはその一部をなすダーティタンク26Aとを連絡する戻し流路38を通じて一旦ドレンタンク96に貯えられた後、ポンプ98にて遠心分離機(ドレン液処理機)100へと送られて、そこで異物が固液分離されてドレン液から除かれ、そして異物の除かれたドレン液即ちクーラントが、貯溜タンク26のダーティタンク26Aへと戻される。
ここで戻し流路38は循環流路24における分岐流路として考えることもできる。即ちクーラントが戻し流路38を通じて循環流路24を循環移動する。
戻し流路38を通じてダーティタンク26Aに戻されたクーラントは、続いてダーティタンク26Aから再び自動洗浄濾過装置42の原液流入口56へと供給される。
【0054】
即ち回収されたドレン液が固液分離された上で、循環系外に排出されることなくそのまま循環流路24へと戻され、圧延機14に対するクーラントとして循環使用される。
従ってこの実施形態のクーラントの循環供給設備にあっては、ドレン液の排出及び廃棄に伴う新たなクーラントを循環流路24に大量に補給する必要はない。
【0055】
尚この実施形態において、自動洗浄濾過装置42は600〜800L(リットル)/分の流量でクーラントの原液を流入させ、通常時は濾過後のクーラントを濾液流出口58から同量で流出する。
従ってクリーンタンク26Cには、毎分600〜800リットルの量で清浄化されたクリーンなクーラントが常時流入する。
【0056】
一方圧延機14に向けてクリーンタンク26Cから汲み出されるクーラントは毎分400〜500リットルであり、その差は200〜300リットルである。
その差分、即ち過剰な量のクーラントはクリーンタンク26Cからオーバーフローして隣の中間タンク26Bへと流れ込み、更には中間タンク26Bをオーバーフローしてダーティタンク26Aの側に流れ込む。
即ち通常時は、毎分200〜300リットルの量でクリーンタンク26Cから中間タンク26Bに、更にはダーティタンク26Aへとクーラントが流れ込む。
【0057】
そしてクリーンタンク26Cから中間タンク26Bを経てダーティタンク26Aに毎分流れ込む200〜300リットルのクーラントが、圧延機14から毎分400〜500リットルの量で流入して来るクーラントとともに、合計毎分600〜800リットルの量で自動洗浄濾過装置42の側へと送り込まれて、そこでクーラントに対する浄化が行われる。
つまりこの実施形態では、貯溜タンク26において常時クリーンタンク26Cから中間タンク26Bへ、更に中間タンク26Bからダーティタンク26Aへとクーラントの流れが生じている。
【0058】
従ってダーティタンク26A内の異物を含んだクーラントが、中間タンク26Bを経てクリーンタンク26Cへと流れ込むといったことはなく、従ってクリーンタンク26Cは常時清浄な状態に保持される。
【0059】
尚、自動洗浄濾過装置42において細目フィルタ54の浄化が間欠的に行われたときには、クーラントがドレン液となって一定量排出されるため、その分、濾液流出口58から流路32を通じてクリーンタンク26Cに流入するクーラントの量は少なくなる。
そしてその少なくなった分が、流路38を通じてダーティタンク26Aに流入し、続いてそこから流路30を通じて自動洗浄濾過装置42の側に流入することとなる。
【0060】
以上のような本実施形態においては、自動洗浄濾過装置42が連続した濾過を実行しつつ、細目フィルタ54に付着した異物をフィルタ浄化手段にて自動的に細目フィルタ54から剥離させて除去する機能を有しているため、クーラントを圧延機14に循環供給するに際し濾過装置42を一時的に停止させる必要がない。
従って濾過装置42の停止によりダーティタンク26A内のクーラントの量が増え続け、ダーティタンク26Aから溢出して、中間タンク26Bを経由しクリーンタンク26C内に流れ込んで来るといったことはない。むしろクーラントはクリーンタンク26Cからダーティタンク26Aへと流れ、従って本実施形態によればクリーンタンク26C内を常に清浄に維持することができる。
【0061】
従ってクリーンタンク26C内のクーラントを圧延機14に供給する際、異物が良好に除去されたきれいなクーラントを圧延機14に供給でき、圧延ロールにて異物が被圧延材18に押し込まれ、被圧延材18に凹み等の傷を発生させてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、ドレン液廃棄のための処理処分に多額の費用を要するといった問題を生じないのに加えて、ドレン液として排出した分の多量のクーラントを循環流路24に継続的に補給する必要もない。
【0063】
以上では自動洗浄濾過装置42から出た清浄なクーラントを一旦クリーンタンク26Cに貯溜した上で、そのクリーンタンク26Cから圧延機14へと汲み出して供給するようになしているが、これと異なって自動洗浄濾過装置42から出た清浄なクーラントを、そのままタンクを経由しないで直接圧延機14へと供給するようにクーラントの循環供給設備を構成することも可能である。
【0064】
また上例ではドレン排出口からのドレン液をダーティタンクに戻すようにしているが、場合によって中間タンクに戻すようにしても良いし、更に本発明では自動洗浄濾過装置として特許文献1に開示のように細目フィルタ54の外面から濾液を内側に向けて噴射する逆洗機能を持ったもの、或いは吸引ノズルによる吸引だけを行うようになしたものを用いることも可能であり、またクーラントとして上記例示した組成のもの以外のものを用いる場合においても適用可能である。
更にドレン液処理機として遠心分離機を例示したが、他の種類の分離機を用いることも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 ワーキングロール(圧延ロール)
12 バックアップロール(圧延ロール)
14 圧延機
18 被圧延材
24 循環流路
26 貯溜タンク
26A ダーティタンク
26C クリーンタンク
28,30,32,34,36,72 流路
38 戻し流路
42 自動洗浄濾過装置
50 ハウジング
52 粗目フィルタ
54 細目フィルタ
56 原液流入口
58 濾液流出口
92 ドレン排出口
100 遠心分離機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却及び潤滑の目的で圧延ロールと被圧延材とに噴きかけられて圧延機から出た油と水とを含む圧延クーラントを循環流路に沿って循環させ、該循環流路上で該クーラントに汚れ物質として含まれる固形の異物を濾過により分離し、清浄化した該クーラントを該圧延機に供給する圧延クーラントの循環供給設備であって、
(a)ハウジングと、(b)該ハウジングの内部に前記異物を含む前記クーラントの原液を流入させる原液流入口と、(c)該ハウジングの内部に設置され、該原液流入口から流入した原液を通過させて該原液中の異物を濾過により分離し除去するフィルタと、(d)該フィルタを通過した清浄な前記クーラントの濾液を前記ハウジングの外部に流出させる濾液流出口と、(e)吸引流を発生させて前記フィルタの濾過面に付着した前記異物を前記クーラントとともに吸入する吸引ノズルを前記フィルタの濾過面に沿って移行させ、吸入した異物を含む該クーラントをドレン液としてドレン排出口から排出するフィルタ浄化手段と、を備え、前記フィルタによる前記原液の連続した濾過を実行しつつ、前記フィルタ浄化手段によるフィルタ浄化を併行して行う自動洗浄濾過装置を有し、
前記圧延機から出た前記異物を含んだ前記クーラントを前記循環流路の一部をなすダーティタンクに貯溜するとともに、該ダーティタンク内の該クーラントを前記原液流入口から前記フィルタを経て前記濾液流出口に到る、前記循環流路における前記自動洗浄濾過装置の内部流路を流通させた後、前記濾液流出口から前記圧延機に到る該循環流路の外部流路を通じて該圧延機に供給するようになす一方、
前記ドレン排出口と前記循環流路とを連絡する戻し流路を設けて、該ドレン排出口から出た前記ドレン液を該戻し流路に設けたドレン液処理機に通して、該ドレン液に対し異物の分離処理を施した上で前記循環流路に戻し、前記クーラントとして循環使用するようになしたことを特徴とする圧延クーラントの循環供給設備。
【請求項2】
請求項1において、前記ドレン液処理機が前記ドレン液中の異物を遠心分離する遠心分離機であることを特徴とする圧延クーラントの循環供給設備。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記フィルタ浄化手段が、前記フィルタを通過した前記クーラントの濾液を該フィルタに噴射する噴射ノズルを備え、前記吸引ノズルと該噴射ノズルとをセットで該フィルタに沿って移行させるものとなしてあることを特徴とする圧延クーラントの循環供給設備。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記濾液流出口から前記圧延機に到る前記外部流路にクリーンタンクを具備させ、該濾液流出口から出た前記クーラントを該クリーンタンクに一旦貯溜した上で、該クリーンタンクから前記圧延機に向けて供給するようになしてあることを特徴とする圧延クーラントの循環供給設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6132(P2013−6132A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138934(P2011−138934)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】