説明

圧延機のロール組替方法

【課題】多段圧延機を備えた圧延装置において、圧延材を通板させたままワークロールを簡単に取り外せるようにする。
【解決手段】本発明の圧延機のロール組替方法は、圧延材Wを圧延する上下一対のワークロール5を有する多段圧延機1と、多段圧延機1に圧延材Wを送り出す巻出リール3と、多段圧延機1で圧延された圧延材Wを巻き取る巻取リール4とを備えた圧延装置2にて、圧延材Wを巻出リール3と巻取リール4とに掛け渡して通板させたままワークロール5を組み替えるに際して、ワークロール5を通過する圧延材Wのパスラインが略水平になるように、圧延材Wの水平位置を調整して、その後、ワークロール5を多段圧延機1から取り外すか、多段圧延機1内に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機のロール組替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、箔材などの圧延材を圧延する際には、複数のロールを組み合わせた多段圧延機が用いられる。この多段圧延機の一例として、ワークロールを支持する中間ロールと中間ロールを支持するバックアップロールとが側方から見た場合に葡萄の房のように扇状に広がる「クラスタ型の多段圧延機」が知られている。
一般に、多段圧延機による圧延の際には、圧延材の材種や最終製品の板厚などに合わせてワークロールを交換する必要がある。ところが、特にクラスタ型の多段圧延機の場合には、ワークロールの周囲に中間ロールやバックアップロールなどを複数備えており、複雑に入り組んだロール配置を有していることが多い。そのため、ワークロールなどを組み替える場合には、特許文献1〜3に示すような方法が採用されていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、多段圧延機において上ハウジングを上昇させ、上部ワークロールを上昇させることで上下のワークロール間に隙間を形成させ、この隙間へ、多段圧延機の作業側からワークロール軸心に沿うように上部ワークロールの下部外周面を支承する上部フォーク部を進出させ、上ハウジングに対する上部ワークロールの保持関係を解除することによって上部フォーク部上に上部ワークロールを積載させ、その後上部フォーク部を多段圧延機内から機外へ退出させることで、上部ワークロールの抜き出し、又はこれらの逆手順を行うことによって上部ワークロールの差し込みを行う多段圧延機のロール組替方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、多段圧延機の圧延ロール(ワークロール)をその軸芯に沿って下方から支承するロール支承部材と、このロール支承部材で支承された圧延ロールを多段圧延機に対して差し込み又は抜き出しすべくロール支承部材を移動させる移動機構と、ロール支承部材を上下方向に傾斜可能とする傾斜機構とが備えられた多段圧延機の圧延ロールを組み替える際に、ロール支承部材を圧延ロールのほぼ下方となる位置まで下向き状態で差し入れ、圧延ロールを掬い上げるようにしてロール支承部材上に載置した後、略水平に戻し、その略水平状態を保持したまま多段圧延機外に引き抜く多段圧延機のロール組替方法が開示されている。
【0005】
これら特許文献1、特許文献2のロール組替方法は、ワークロールの下方にフォーク部やロール支承部材を差し込んで、これらの部材に載せられた状態でロールを圧延機の側方に引き抜くことで、中間ロールやバックアップロールなどのロールを取り外すことなく、ワークロールだけの組替を可能とするものである。
一方、特許文献3には、作業ロール(ワークロール)の両端に軸受箱を有すると共にこの作業ロールを水平に保持する水平保持ローラーと、作業ロール軸芯と平行に延在するストリップ案内ガイドとを有する6段式の多段圧延機のワークロールの組替方法が開示されている。これにより、ロール組替時には、水平保持ローラーを後退させると共に前記ストリップ案内ガイドを前進させ、その先端にて作業ロールの軸受箱を支持可能にしている。
【0006】
この特許文献3のロール組替装置は、中間ロールやバックアップロールなどをワークロールの近傍から離れた位置まで一旦後退させ、ワークロールの周辺にロール移動のためのスペースを確保したうえで、ワークロールをベアリングボックス毎に水平移動させることでワークロールの取り外しや組み替えを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3416251号公報
【特許文献2】特許第4226457号公報
【特許文献3】特開昭61−42407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、長さの短い圧延対象材(短尺材)を圧延する際には、短尺材の長さを補うためにリーダ材が用いられ、圧延材の両端にリーダ材が溶接などで接続されて全長が延長される。ところが、このような短尺材を圧延するに際しては、前述の接続部分(圧延材とリーダ材との溶接箇所)をそのままデフレクタロールに接触させると、当該デフレクタロールに疵が発生してしまう虞がある。
【0009】
そのため、短尺材の圧延材を圧延する際には、デフレクタロールを傷つけないようにデフレクタロールを圧延材から遠ざけた状態、言い換えればデフレクタロールをパスラインから外した状態としたまま圧延を行うことが考えられる。
このような「デフレクタロールを用いない圧延」においては、圧延を中断して圧延材を通板したまま、上述した特許文献1〜特許文献3の技術を用いてワークロールを交換するという状況が起こり得る。
【0010】
この場合、巻出リールと巻取リールの高さ位置は一定のため、コイル巻き出し位置の高さとワークロール高さ、コイル巻き取り位置の高さが水平となる場合は稀であり、大部分のケースは、巻出リールからワークロールを経て巻取リールに向かう圧延材に傾斜(圧延パスラインの傾斜)が生じてしまう。
圧延材が水平方向に対して傾斜した状態で通板されたまま、ワークロールを側方に移動させようとすると、ワークロールを取り外したり取り付けたりする際に傾斜した圧延材が障害となり、作業性を損なうばかりか、圧延材またはワークロールに疵をつけることにもなりかねない。圧延材の張力を一時的にゼロにすると、圧延材が垂れ下がることによって圧延材の傾斜がさらに強くなり、ワークロールの取り替え作業がさらに困難になってしまう場合もある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものであって、ワークロールを通る圧延材のパスラインが水平となっていない場合であっても、圧延材をワークロール間に通板させたままでワークロールの組み替えが容易に行える圧延機のロール組替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る圧延機のロール組替方法は、圧延材を圧延する一対のワークロールを有する多段圧延機と、前記多段圧延機に圧延材を送り出す巻出リールと、前記多段圧延機で圧延された圧延材を巻き取る巻取リールとを備えた圧延装置のロール組替方法において、前記圧延材を前記巻出リールと前記巻取リールとに掛け渡して通板させたままワークロールを組み替えるに際して、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整し、その後、前記ワークロールを多段圧延機に対して挿脱することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記巻出リールとワークロールとの間に、当該巻出リールから巻き出された圧延材の搬送方向を変更する巻出側のデフレクタロールを上下方向に位置調整可能に設けておき、前記ワークロールと巻取リールとの間に、当該ワークロールから巻き出された圧延材の搬送方向を変更する巻取側のデフレクタロールを上下方向に位置調整可能に設けておき、前記巻出側及び巻取側のデフレクタロールの上下高さを変更することにより、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整するようにするとよい。
【0014】
更に好ましくは、前記巻出側及び巻取側の少なくとも一方のデフレクタロールが、圧延材を挟んで対向配置された上下一対の上側デフレクタロールと下側デフレクタロールとからなり、各デフレクタロールの上下高さを変更することにより、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整するようにするとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧延機のロール組替方法によれば、一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが水平となっていない場合であっても、圧延材をワークロール間に通板させたままでワークロールの組み替えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】多段圧延機が備えられた圧延装置を示した正面図である。
【図2】圧延材のパスラインが凸状の場合のロール組替方法を示した図である。
【図3】圧延材のパスラインが凹状の場合のロール組替方法を示した図である。
【図4】圧延材のパスラインが巻出側から巻取側に向かうにつれて高くなるように傾斜した場合のロール組替方法を示した図である。
【図5】圧延材のパスラインが巻出側から巻取側に向かうにつれて低くなるように傾斜した場合のロール組替方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧延機のロール組替方法の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本発明のロール組替方法に用いられるクラスタ型の多段圧延機1(以降、単に多段圧延機1と呼ぶ)が備えられた圧延装置2を示したものである。なお、図1の多段圧延機1は12段型とされているが、本発明が適用される多段圧延機の段数は、12段に限定されない。4段、6段、20段などの多段圧延機でもよい。
【0018】
多段圧延機1は、ステンレス材や特殊鋼などの金属材料からなる圧延材Wを板材などに圧延するもので、上下に配置された一対のワークロール5を有している。
各ワークロール5は、複数(2つ)の中間ロール9で支持され、中間ロール9は、最外側に位置する複数(3つ)のバックアップロール10で支持されている。中間ロール9及びバックアップロール10は、ワークロール5を中心として上下に向かって葡萄の房のように扇状に広がった配置(クラスタ型)とされている。
【0019】
最外側のバックアップロール10は、軸受ベアリング等を内蔵した軸支持部11を介して、ミルハウジング12に回転自在に支持されている。中間ロール9には、モータ等からなる駆動機構が接続されており、ワークロール5に回転力を伝達する。
また、ミルハウジング12には、上側のバックアップロール10を支持する上側ミルハウジング12Uと、下側のバックアップロール10を支持する下側ミルハウジング12Dとがある。これら上側のミルハウジング12U及び下側のミルハウジング12Dの間には、両者を連結するコラム13が設けられている。上側ミルハウジング12Uは下側ミルハウジング12Dに対して昇降可能となっている。
【0020】
この多段圧延機1の左側には圧延材Wを巻き出す巻出リール3が配備され、多段圧延機1の右側には圧延材Wを巻き取る巻取リール4が配備されている。巻出リール3、巻取リール4に対して、圧延材Wは上側巻き出し、上側巻き取りとなっている。
この多段圧延機1は、圧延材Wを右向き(図中の黒矢印の方向)に送りつつ圧延を行なった後、圧延方向を左向き(図中の白矢印の方向)に切り替えて次の圧延を行うというように、圧延方向を正逆交互に切り替えながらリバース圧延できるようになっている。
【0021】
リバース圧延において、圧延方向が右向きの場合には、多段圧延機1の左側のリールが巻出リール3となり右側のリールが巻取リール4となる。圧延方向が左向きの場合には、多段圧延機1の左側のリールが巻取リール(4)となり右側のリールが巻出リール(3)となる。つまり、左右のリールが交互に巻出リール3と巻取リール4との役割を担う構成となっている。
【0022】
巻出リール3及び巻取リール4は、巻き出し・巻き取り速度を調整することで、圧延材Wに対して張力を付与できるようになっている。すなわち、テンションリールとしての機能を有している。
また、多段圧延機1と巻出リール3との間には、巻出リール3から巻き出された圧延材Wの搬送方向を変更しつつ圧延材Wをワークロール5に送る巻出側のデフレクタロール6が設けられている。さらに、多段圧延機1と巻取リール4との間には、ワークロール5から巻き出された圧延材Wの搬送方向を変更しつつ圧延材Wを巻取リール4に送る巻取側のデフレクタロール7が設けられている。
【0023】
詳しくは、巻出側のデフレクタロール6は、圧延材Wより上方に設けられて圧延材Wの上面に接触可能とされた上側デフレクタロール6Uと、この上側デフレクタロール6Uに対面すると共に、圧延材Wより下方に設けられて圧延材Wの下面に接触可能とされた下側デフレクタロール6Dとからなる。
巻取側のデフレクタロール7は、圧延材Wより上方に設けられて圧延材Wの上面に接触可能とされた上側デフレクタロール7Uと、この上側デフレクタロール7Uに対面すると共に、圧延材Wより下方に設けられて圧延材Wの下面に接触可能とされた下側デフレクタロール7Dとからなる。
【0024】
これら4本のデフレクタロール6U、6D、7U、7Dのそれぞれには、デフレクタロールを上下方向に移動(昇降)する昇降機構8が設けられている。この昇降機構8としては、例えば油圧シリンダやスクリュージャッキなどが採用可能である。
なお、図1に示す実施形態では、巻出側及び巻取側に上下一対計4本のデフレクタロールを設けているが、上下片方のみでもかまわない。また、巻出側及び巻取側のデフレクタロールを圧延材進行方向に対して複数並べたものでもよい。
【0025】
ところで、デフレクタロールを用いて圧延材の水平位置を調整するのが、装置を構成するにあたって最も望ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、圧延装置2にピンチロールが設けられている場合、このピンチロールを上側デフレクタロール6U、7Uとして機能させてもよい。また、その他のロール、例えばブライドルロールやワイパーロールを圧延材の昇降に使用してもよい。
【0026】
以上述べた圧延装置2で行われる本発明のロール組替方法について説明する。
本発明のロール組替方法は、上述した圧延装置2において、圧延材Wを巻出リール3と巻取リール4とに掛け渡して通板させたままワークロール5を取り外す際に、圧延材Wの張力を無張力状態にした後で、ワークロール5の上流側及び下流側のパスラインが略水平になるように圧延材Wの水平位置を調整しておき、その後、ワークロール5を多段圧延機1に対して挿脱するものである。
【0027】
なお、ここで「略水平」とは、圧延材Wの水平位置が実質的な意味で水平であることを意味し、完全に水平であることまでを要しない。ワークロールの挿脱にあたって、圧延材Wが影響を与えない程度に水平であればよい。
パスラインの水平調整が必要になるのは、次のような理由からである。
図1に示すように、短尺材S(長さの短い圧延対象材)を圧延する際、短尺材Sの長さを補うためにリーダ材Lが用いられ、圧延材Wとリーダ材Lとは溶接などにより接続される。ところが、このような圧延材Wとリーダ材Lとの接続部分A、Bをそのままデフレクタロール6、7に接触させるとデフレクタロール6、7に疵が発生してしまう。このため、短尺材Sを含む圧延材Wを圧延する際には、デフレクタロール6、7に疵をつけないようにデフレクタロール6、7を圧延材Wから遠ざけた状態、言い換えればデフレクタロール6、7をパスラインから外した状態としたまま、巻出リール3及び巻取リール4のみを用いて、圧延材Wを巻出リール3と巻取リール4とに掛け渡した状態で圧延が行われる。
【0028】
このような圧延作業において、圧延作業を中断して圧延材Wを通板したまま、ワークロール5を交換する必要がある。このような場合、圧延を中断した位置によっては、巻出リール3の巻径と巻取リール4の巻径との差が大きくなって、巻出リール3からワークロール5を経て巻取リール4に向かう圧延材Wのパスラインに傾斜が生じてしまうことがある。また、巻出リール3及び巻取リール4の設置位置や使用するリール径の大小の関係で、ワークロール5から巻出リール3又は巻取リール4へ向かう圧延材Wのパスラインに傾斜が生じてしまうことがある。
【0029】
このように圧延パスラインが水平方向に対して傾斜した状態のままワークロール5を取り外したり組み込んだりすると、出し入れの際に傾斜した圧延材Wが障害となる。特に、ワークロール5を側方に引き抜く場合には、張力の一部が摩擦力として加わらないように、圧延材Wの張力を一時的にゼロまたは非常に小さい状態(無張力状態)にする。すると、圧延材Wの傾斜がさらに強くなって、ワークロール5の取り替え作業がさらに困難になってしまう。
【0030】
それ故、本発明のロール組替方法では、圧延材Wの張力を無張力状態にした後に、ワークロール5の上流側及び下流側のパスラインが水平方向を向くように、圧延材Wの水平位置を調整しておくのである。
具体的には、圧延材Wの傾斜状態には図2(a)〜図5(a)のような場合があり、本発明のロール組替方法では、それぞれの傾斜状態に合わせて圧延材Wのパスラインを略水平に調整している。
【0031】
図2(a)に示す圧延装置2は、巻出リール3の上面と巻取リール4の上面とが下側のワークロール5の上面より低くなっている。このような場合、Wの傾斜状態は上に凸状となる。図2(a)の状況は、巻出リール3の初期設定位置及び巻取リール4の初期設定位置をワークロール5より低く設定した場合や、小径のリールを使用した場合に起こりうる。
【0032】
このような場合は、図2(b)に示すように、まずは、圧延材Wに作用する張力をほぼゼロにした上で巻出リール3及び巻取リール4をフリーの状態とし巻出側及び巻取側の下側デフレクタロール6D、7Dの位置を双方とも上昇させ、デフレクタロール6D、7Dの上面高さとワークロール5の高さ(下側のワークロール5の上面の高さ)とを等しくなるように調整する。言い換えれば、巻出側のデフレクタロール6Dと圧延材Wが接する点、巻取側のデフレクタロール7Dと圧延材Wが接する点、ワークロール5,5による圧下点の3点が略水平ライン上に並ぶか、ワークロール5,5による圧下点より他の2点が若干上に位置するように、巻出側及び巻取側の下側デフレクタロール6D、7Dの位置を双方とも上昇させる。
【0033】
なお、巻出リール3、巻取リール4をフリー状態にした場合に、圧延材Wのたわみなどが過大となった際には、巻出リール3及び巻取リール4を寸動にて少し回転させて、圧延材Wにかすかに張力を加えても良い。
このようにデフレクタロール6D、7Dの高さとワークロール5の高さとを等しくすれば、圧延材Wのパスラインの向きが略水平に調整される。その上で、上側ミルハウジング12Uを下側ミルハウジング12Dに対して上昇させ、上側の圧延材Wと上側ミルハウジング12との間にワークロール5の移動を可能とするスペースを確保し、上側のワークロール5の下方にフォークやロール支承部材を差し込んで、これらの部材に載せられた状態で上側のワークロール5を多段圧延機1の側方に引き抜く。同様にして下側のワークロール5を取り外せば、圧延材Wのパスラインが当初水平となっていない圧延材Wに対しても、圧延材Wを通板させたままワークロール5の取り外しが容易且つ確実に行える。
【0034】
ワークロール5を取り付ける場合も同様であり、巻出側及び巻取側のデフレクタロール6D、7Dの上面高さと下側のワークロール5の上面高さとを等しくし、圧延材Wのパスラインの向きを略水平に調整する。その上で、上側ミルハウジング12Uを下側ミルハウジング12Dに対して上昇させ、上側の圧延材Wと上側ミルハウジング12との間にワークロール5の移動を可能とするスペースを確保し、下側のワークロール5、次いで上側のワークロール5の順番で差し込むようにする。
【0035】
一方、図3(a)に示す圧延装置2は、巻出リール3の上面と巻取リール4の上面とが下側のワークロール5の上面より高くなっている。このような場合、圧延材Wの傾斜状態は凹状となる。図3(a)の状況は、巻出リール3の初期設定位置及び巻取リール4の初期設定位置をワークロール5より高く設定した場合や、大径のリールを使用した場合に起こりうる。
【0036】
このような場合は、図3(b)に示すように、巻出側及び巻取側の上側デフレクタロール6U、7Uの位置を双方とも下げ、デフレクタロール6U、7Uの下面の高さとワークロール5の高さ(下側のワークロール5の上面)とを等しくするか、下側のワークロール5の上面の高さより他の2点の高さが若干高くするようにするとよい。その上で、図2の例で述べた如く、ワークロール5の挿脱を行う。
【0037】
また、図4(a)に示す圧延装置2のように、巻出リール3の巻径が小さく、巻取リール4の巻径が大きい場合は、巻出リール3の上面の高さが下側のワークロール5の上面の高さより低くなり、巻取リール4の上面の高さが下側のワークロール5の上面の高さより高くなる場合が起こり得る。つまり、巻出リール3からワークロール5を経て巻取リール4に向かう圧延材Wに右上がりの傾斜が生じている。
【0038】
この場合は、図4(b)に示すように、巻出側の下側デフレクタロール6Dの位置を上げ、巻取側の上側デフレクタロール7Uの位置を下げ、デフレクタロール6D、7Uの高さとワークロール5の高さ(下側のワークロール5の上面)とを略等しくなるようにするとよい。その後、図2で述べたようにワークロール5の取り外し乃至は組み込みを行う。
さらに、図5(a)に示す圧延装置2のように、巻出リール3の巻径が大きく巻取リール4の巻径が小さい場合は、巻出リール3の上面の高さが下側のワークロール5の上面の高さより高くなり、巻取リール4の上面の高さが下側のワークロール5の上面の高さより低くなる場合が起こり得る。つまり、巻出リール3からワークロール5を経て巻取リール4に向かう圧延材Wに右下がりの傾斜が生じている。
【0039】
この場合は、図5(b)に示すように、巻出側の上側デフレクタロール6Uの位置を下げ、巻取側の下側デフレクタロール7Dの位置を上げ、デフレクタロール6U、7Dの高さとワークロール5の高さ(下側のワークロール5の上面)とを等しくなるようにするとよい。このようにすれば、パスラインの傾斜状態が図2と異なる圧延材Wに対しても、圧延材Wを通板させたまま、ワークロール5の組み替え(取り付け乃至は取り外し)を容易におこなうことができる。
【0040】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 多段圧延機
2 圧延装置
3 巻出リール
4 巻取リール
5 ワークロール
6D 巻出側の下側デフレクタロール
6U 巻出側の上側デフレクタロール
7D 巻取側の下側デフレクタロール
7U 巻取側の上側デフレクタロール
8 昇降機構
9 中間ロール
10 バックアップロール
11 軸支持部
12D 下側ミルハウジング
12U 上側ミルハウジング
13 コラム
A 接続部分
B 接続部分
L リーダ材
S 短尺材
W 圧延材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材を圧延する一対のワークロールを有する多段圧延機と、前記多段圧延機に圧延材を送り出す巻出リールと、前記多段圧延機で圧延された圧延材を巻き取る巻取リールとを備えた圧延装置のロール組替方法において、
前記圧延材を前記巻出リールと前記巻取リールとに掛け渡して通板させたままワークロールを組み替えるに際して、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整し、その後、前記ワークロールを多段圧延機に対して挿脱することを特徴とする圧延機のロール組替方法。
【請求項2】
前記巻出リールとワークロールとの間に、当該巻出リールから巻き出された圧延材の搬送方向を変更する巻出側のデフレクタロールを上下方向に位置調整可能に設けておき、前記ワークロールと巻取リールとの間に、当該ワークロールから巻き出された圧延材の搬送方向を変更する巻取側のデフレクタロールを上下方向に位置調整可能に設けておき、
前記巻出側及び巻取側のデフレクタロールの上下高さを変更することにより、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の圧延機のロール組替方法。
【請求項3】
前記巻出側及び巻取側の少なくとも一方のデフレクタロールが、圧延材を挟んで対向配置された上下一対の上側デフレクタロールと下側デフレクタロールとからなり、各デフレクタロールの上下高さを変更することにより、前記一対のワークロール間を通過する圧延材のパスラインが略水平になるように前記圧延材の水平位置を調整することを特徴とする請求項2に記載の圧延機のロール組替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18034(P2013−18034A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153844(P2011−153844)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】