説明

圧着記録用紙

【課題】熱定着方式の乾式電子写真プリンターによる接着力の低下を抑制した圧着記録用紙を提供する。
【解決手段】支持体の少なくとも片面に、通常状態では粘着性、接着性とも示さず、加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着層を有する圧着記録用紙において、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数が0.15(ml/m2・ms1/2)以上であることを特徴とする圧着記録用紙。好ましくは、JIS P 8117による透気度を500秒以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電子写真方式による印刷において、接着力の低下を抑制した圧着記録用紙に関するものである。ここで、圧着記録用紙とは、通常状態では粘着性、接着性ともに示さず、加圧時に接着性を示し、加圧接着後に剥離可能な感圧接着層を有する圧着記録用紙のことである。
【背景技術】
【0002】
圧着記録用紙は、支持体上に通常のハンドリングの際には粘着性、接着性ともに示さず、加圧時に接着性を示す再剥離性感圧接着剤よりなる感圧接着層を形成させ、二つ折り、三つ折り、あるいは複数枚を重ね合わせることにより、感圧接着層同士を対面させた状態で加圧により接着させるものであり、加圧接着後に剥離可能な状態にすることも、剥離不可能な状態にすることも可能である。
【0003】
例えば、二つ折り、三つ折り、あるいは複数枚を重ね合わせ、加圧接着させることで密封し、見かけ上1枚のはがきとして郵送された後、受取人が剥離可能な接着部分を剥離して、内部に記録された情報を読みとることができる剥離性はがき、隠蔽はがき、あるいは圧着はがきとして使用した場合、一般のはがきと比較してより多くの情報を伝達することが可能となり、且つ、他人には知られたくない親展通信情報(暗証番号、会員番号、請求金額、預金残高など)は剥離可能な感圧接着面に記録し、加圧、接着した後郵送されるので、守秘性も優れている結果、使用量が増加しつつある。
【0004】
このような圧着記録用紙に使用される感圧接着剤は、天然ゴム、あるいは天然ゴムに不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム誘導体が好んで用いられる。その理由の一つは、天然ゴム誘導体が高い自己接着性を持ち、互いに接触させて加圧すると接着性が発現する一方、通常状態では粘着性、接着性ともに低く、所謂タック性が低いという特徴を持つためである。理由の二つめは、グラフト化によって分子の極性が増加し、親水性物質に対するアンカーリング力が増加するためである。
【0005】
また、天然ゴム、あるいは天然ゴム誘導体からなる感圧接着層を支持体の表面に形成するのみでは、ブロッキングが発生しやすく、印刷インク定着性も不足し、かつ、フォーム印刷適性やノンインパクトプリンター印刷適性が不十分であることが多いので、通常は無機顔料などの充填剤を適宜組み合わせた混合物よりなる感圧接着層を支持体の表面に形成して圧着記録用紙を製造する。
【0006】
ここで、通常圧着記録用紙の流通過程は以下の如く構成される。まず、製紙業者、または接着剤業者などが支持体の少なくとも片面に、通常状態では粘着性、接着性とも示さず、加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着層を形成して圧着記録用紙を製造して販売する。次いで、印刷業者などが圧着記録用紙にオフセット方式やグラビア方式などでフォーム印刷などを行った後、データ入力業者がノンインパクトプリンター、即ち電子写真方式、または、インクジェット方式などの各種記録方式で親展通信情報を印字し、圧着シーラーを用いて再剥離可能な状態で親展通信情報記録面同士を接着させ、受取人に郵送される。
【0007】
上記、電子写真方式の内、乾式電子写真方式は、広く一般に普及しており、事務用複写機などに代表される方式で、圧着記録用紙の記録方式としても最も頻繁に使われている。
【0008】
乾式電子写真方式の中でも、トナー定着方式の違いにより、2種類に大別される。一つはフラッシュ定着方式であり、こちらは用紙にかかる熱量が少なく、比較的トラブルも少ない。もう一つは熱定着方式であり、こちらはニップされた高温の定着ロールを用いるため、種々のトラブルを引き起こす。
【0009】
近年、乾式電子写真方式のノンインパクトプリンターは高速化が進み、熱定着方式のプリンターでは、トナーの溶融、定着のためにかかる熱量も多くなり、用紙にとってはより厳しい状況となっている。用紙にかかる温度が高くなると、種々のトラブルを引き起こすが、その中でも、接着力の低下は大きな問題であり、極端に接着力が低下するとその後の圧着工程において、用紙が圧着出来ない、或いは圧着は可能であっても、軽度の外力によって簡単に剥がれてしまうため(口開き)、致命的な欠陥となる。
【0010】
接着力の低下は、熱により天然ゴム、或いは天然ゴム誘導体等の感圧接着剤が劣化することが原因であると考えられている。
【0011】
感圧接着剤の劣化を防ぐために、酸化防止剤や老化防止剤と呼ばれるアミン系やフェノール系の物質が添加されることが知られている。
【0012】
尚、透気度を規定した圧着記録用紙としては、トナーの転写不良、搬送性を改良した例(例えば、特許文献1参照)、トナーブロッキング現象を抑制した例(例えば、特許文献2参照)がある。
【特許文献1】特開2000−119614号公報
【特許文献2】特開2002−169320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、乾式電子写真方式、特に熱定着方式のノンインパクトプリンターで記録を行った際の、接着力の低下を抑制した圧着記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明の圧着記録用紙を発明するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の圧着記録用紙は、支持体の少なくとも片面に、通常状態では粘着性、接着性とも示さず、加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着層を有する圧着記録用紙において、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数が0.15(ml/m2・ms1/2)以上である圧着記録用紙である。
【0016】
さらに、JIS P 8117による透気度(以下、ガーレー透気度と称する)が500秒以下である圧着記録用紙である。
【発明の効果】
【0017】
支持体の少なくとも片面に、通常状態では粘着性、接着性とも示さず、加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着層を有する圧着記録用紙において、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数が0.15(ml/m2・ms1/2)以上とすることにより、乾式電子写真方式、特に熱定着方式のノンインパクトプリンターで記録を行った際の、接着力の低下を抑制した圧着記録用紙を得ることができる。また、ガーレー透気度を500秒以下とすることにより、その効果はより顕著となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の内容をさらに具体的に説明する。本発明における圧着記録用紙は、乾式電子写真方式、特に熱定着方式のノンインパクトプリンターで記録を行った際の、接着力の低下を抑制するものである。
【0019】
今まで、接着力の低下は、熱により天然ゴム、或いは天然ゴム誘導体等の感圧接着剤が劣化することが原因であると考えられていた。しかし、単純に熱を加えた時の接着力の低下と実際に熱定着方式のノンインパクトプリンターで記録を行った際の接着力の低下の関係にしばしば相違が見られた。
【0020】
本発明者は鋭意検討した結果、圧着記録用紙の吸油性が影響していることを見いだした。即ち、熱定着方式のプリンターでは、記録用紙表面上から熱定着ロールへのトナーの転写を防ぐために、通常熱定着ロールへシリコンオイルが供給されている。このシリコンオイルは定着時に記録用紙表面へ転移することとなる。
【0021】
転移したシリコンオイルは、圧着の際、感圧接着剤同士の接着を妨げ、結果として接着力の低下を引き起こす。記録用紙の吸油性が良い場合、接着力の低下は少ないが、吸油性が悪い場合、接着力の低下は大きくなる。
【0022】
本発明では、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数を0.15(ml/m2・ms1/2)以上とすることにより、接着力の低下を抑制できることを見いだした。
【0023】
ブリストー法とは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51に規定される液体吸収試験であり、本発明においては、吸収係数の算出に必要な液体吸収時間は、ヘッドボックススリット後部側壁の厚みを考慮していない。
【0024】
吸油性を良くすることにより、接着力低下が抑制される理由は、ブロッキング防止、或いはフォーム印刷適性付与のため、感圧接着層中に含有されている無機顔料等が不要なシリコンオイルを吸収するためであると考えられる。
【0025】
一方、接着力の低下に熱量が影響しているのも事実である。通常、熱定着方式のプリンターにおいては、プレヒート板の温度は100℃前後、熱定着ロールは200℃近い温度であり、プリント後に巻き取られた用紙、或いは折り加工されスタックされた用紙内部には熱がたまりやすい現象が発生する。記録用紙に与えられた熱を如何に迅速に逃がすかがポイントとなる。
【0026】
そのためには、記録用紙の透気性を良くすることが重要となる。本発明においては、ガーレー透気度を500秒以下とすることにより、接着力低下抑制の効果が高いことを見いだした。
【0027】
圧着記録用紙の透気性を良くするためには、用紙支持体の透気性を良くすること、具体的には使用されるパルプの濾水度を高くする、抄造時におけるプレス線圧を低くする等、より紙層をポーラスにすることの他、感圧接着層の主成分として使用される天然ゴム或いは天然ゴム誘導体の皮膜形成を制御し、感圧接着層の透気性を改良することが重要となる。
【0028】
以下、本発明の圧着記録用紙に使用される成分について、詳細に記述する。
【0029】
感圧接着層中の主成分である感圧接着剤は、天然ゴム、あるいは天然ゴムに不飽和モノマーをグラフト化した天然ゴム誘導体が好んで用いられる。天然ゴム誘導体の天然ゴムにグラフト化する不飽和モノマーとしては、具体的にメタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。これらの中でも、ホモポリマー作製などの副反応が起こりにくく、グラフト化反応が確実に進行することから、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルを使用することが一般的である。
【0030】
感圧接着層中の接着剤成分としては、天然ゴム或いは天然ゴム誘導体の他、合成ゴムを用いることが出来る。また、印刷適性の付与、バインダー能力の増強、ブロッキングの防止、接着力の制御等を目的として、顔料、熱可塑性樹脂、水溶性ポリマー、粘着性向上剤、離型剤等の各種充填材を用いることが出来る。
【0031】
具体的には、シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機顔料、澱粉粒子、メラミン樹脂粒子、プラスチックピグメント等の有機顔料、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性ポリマー、更にはSBR、アクリル系樹脂等の有機エマルジョン等が挙げられる。
【0032】
更に、感圧接着層中には必要に応じて、帯電防止剤、分散剤、防腐剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、保水剤等の助剤を添加することが出来る。
【0033】
本発明の圧着記録用紙に用いられる支持体としては、紙や不織布、合成紙、金属フィルム、ポリエステルフィルムあるいはレジンコート紙などのシートや、これらを貼り合せて得られる複合シートを用いることができるが、感圧接着層塗工工程、および親展記録用紙として使用する際の加工工程を考慮した場合、特性的に適しており経済的でもあるので紙を用いることが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる紙は、木材パルプと顔料を主成分として構成される。木材パルプとしては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプや合成パルプなどを含み、必要に応じて製紙業で使用されている顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、染料などの各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で抄造することができる。また、酸性紙、中性紙、アルカリ性紙のいずれであってもよい。さらに、紙支持体としては、非塗工紙である上質紙、塗工紙であるアート紙、コーテッド紙、キャスト紙などがいずれも使用可能である。
【0035】
本発明の圧着記録用紙における支持体に感圧接着層を塗工または含浸する方法としては、例えば、各種グラビアコータ、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、Uコンマコータ、AKKUコータ、スムージングコータ、ショートドウェルコータ、ディップコータ、落下カーテンコータ、スライドコータ、ダイコータ、サイズプレス、シムサイザーなどの各種塗工装置、また、グラビア、オフセット、凸版、平版などの印刷方式でも、オンマシンあるいはオフマシンで用いることができる。
【0036】
感圧接着層の塗工量としては、低塗工量ではフォーム印刷時の着肉性や接着力の低下が生じやすくなり、また、高塗工量では接着力が強くなりすぎて再剥離が困難になったり、透気性が著しく低下するので、3〜10g/m2を目安とすることが好ましい。
【0037】
本発明の圧着記録用紙は、感圧接着層の強度向上や表面の平滑性、摩擦係数のコントロールを目的として、支持体に感圧接着層を塗工または含浸後、感圧接着層の表面にカレンダー処理を施すことができる。これにより、塗工層の脱落がなくなり、印刷適性が格段に向上するとともに、表面の平滑性が向上することにより、印刷物としての見栄えが極めて良くなるなどの効果が得られる。
【0038】
カレンダー処理の手段としては、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー加工機が使用できる。カレンダーロールとしては、金属ロール、樹脂ロールなどが使用できる。カレンダー処理を行う圧力およびカレンダーの通紙回数は限定されないが、支持体の種類や厚さ、あるいは感圧接着層の厚さにより決定される。
【0039】
本発明の圧着記録用紙の使用方法としては、例えば、支持体の片面に該感圧接着層を設けた圧着記録用紙を“V”の字状に折り曲げて圧着することで印字部分全面を隠蔽する方法(二つ折りはがき)、あるいは“L”字状に折り曲げてから圧着させることで印字情報の一部のみを隠蔽する方法(二つ折りはがき)、支持体の両面に感圧接着層を設けた一枚の圧着記録用紙を“Z”字状に折り曲げることで印字部分を隠蔽し、片面は再剥離可能に、もう一方の片面は剥離困難に圧着する方法(三つ折り4面はがき)、あるいは両面とも再剥離可能に圧着する方法(三つ折り6面はがき)などにより、親展通信情報が完全に隠蔽された状態で郵送され、着信後に受取人が剥離して親展通信内容を確認することができ、かつ剥離した後は再接着不可能であるので、情報の非公開性が完全な剥離性隠蔽はがきとして使用することができるものである。
【0040】
本発明の圧着記録用紙は、熱定着方式の乾式電子写真プリンターにおいて、特にその効果を発揮するものであるが、フラッシュ定着方式の乾式電子写真プリンターに適用しても何ら差し支えない。
【0041】
実施例
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の内容は、実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り質量部および質量%を示す。
【0042】
(支持体の作製)
LBKP/NBKP=9/1を離解し、濾水度380mlCSFに叩解、炭酸カルシウムを対パルプ100部当たり10部、カチオン化澱粉を対パルプ100部当たり0.4部、硫酸バンドを対パルプ100部当たり1部、AKDを対パルプ100部当たり0.14部添加し、長網式抄紙機を用いて坪量120g/m2、密度0.85g/cm3になるように支持体を作製した。
【実施例1】
【0043】
メタクリル酸メチルを25%グラフト化した天然ゴム誘導体(商品名:コアテックスMG25、ムサシノケミカル社製)100部、顔料として合成シリカ(商品名:ミズカシルP−707、吸油量270ml/100g、水沢化学工業社製)50部、小麦澱粉100部、鹸化度88%の部分鹸化型ポリビニルアルコール3部及びスチレン−ブタジエンラテックス10部を配合して感圧接着層組成物を調製した。エアーナイフコータでその感圧接着層組成物を支持体に固形分塗工量が5g/m2となるように両面塗工し、乾燥させて実施例1の圧着記録用紙を作製した。
【実施例2】
【0044】
実施例1における合成シリカ50部を70部とした以外は実施例1と同様にして実施例2の圧着記録用紙を作製した。
【実施例3】
【0045】
実施例1における部分鹸化型ポリビニルアルコール3部を1部とし、固形分塗工量を3g/m2とした以外は実施例1と同様にして実施例3の圧着記録用紙を作製した。
【実施例4】
【0046】
実施例2における部分鹸化型ポリビニルアルコール3部を1部とし、固形分塗工量を3g/m2とした以外は実施例2と同様にして実施例4の圧着記録用紙を作製した。
【実施例5】
【0047】
実施例1における合成シリカ(商品名:ミズカシルP−707、吸油量270ml/100g、水沢化学工業社製)50部を合成シリカ(商品名:ミズカシルP−603、吸油量115ml/100g、水沢化学工業社製)70部に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の圧着記録用紙を作製した。
【0048】
(比較例1)
実施例1における合成シリカ(商品名:ミズカシルP−707、吸油量270ml/100g、水沢化学工業社製)50部を合成シリカ(商品名:ミズカシルP−603、吸油量115ml/100g、水沢化学工業社製)50部に変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の圧着記録用紙を作製した。
【0049】
(比較例2)
比較例1における合成シリカ50部を30部とした以外は比較例1と同様にして比較例2の圧着記録用紙を作製した。
【0050】
(比較例3)
比較例1における部分鹸化型ポリビニルアルコール3部を1部とし、固形分塗工量を3g/m2とした以外は比較例1と同様にして比較例3の圧着記録用紙を作製した。
【0051】
以上、実施例1〜5および比較例1〜3の圧着記録用紙について、支持体の裏面側に塗工した感圧接着層面を下記の評価方法により評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0052】
・吸収係数
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51に準拠し測定した。シリコンオイルとして、IBM社製Infoprint4100プリンターに使用されるFuserOilを用い、スリット幅0.5mm、後部側壁厚さ1.0mmのヘッドボックスを用いて測定した。
【0053】
・ガーレー透気度
JIS P 8117に準拠し透気度を測定、結果を秒数で示した。
【0054】
・接着力の測定:日本エーディーエム社製の圧着シーラーMS9100を用いて、シートを三つ折りにし接着させた後、JIS K 6854に準じたT型剥離試験を行って接着力を測定した。接着力が再剥離に好適な0.4〜0.8N/25mmの範囲になるようシーラー目盛りを変化させて測定後、シーラー目盛りに対する接着力の回帰式を求め、接着力が0.6N/25mmとなるシーラー目盛りを計算により算出した。
【0055】
・接着力低下の判定:熱定着方式のプリンターに通す前後でのシーラー目盛りの差を判定した。目盛りの差が5未満は良好、5〜10は実用上問題ない範囲で良好、10を越えるものは不良である。尚、接着力の低下が大きく、接着力測定時にシーラーを最小目盛り(5)にしても、再剥離に好適な0.4〜0.8N/25mmの範囲が得られなかったものは、不可と表記した。
【0056】
(プリンター条件)
熱定着方式の乾式電子写真プリンターとして、IBM社製Infoprint4100を用い、速度55m/min、予熱プラテン温度設定100、ホットロール温度設定100、オイル流量設定75、オイルベルト速度設定50の条件でプリントを行った。尚、プリント後の接着力は、プリント後24時間放置し自然冷却した後、トナーの乗っていない白地部分で測定を行った。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果から明らかなように、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数が0.15(ml/m2・ms1/2)以上の圧着記録用紙は、接着力の低下が少なく良好であり、更にガーレー透気度が500秒以下の圧着記録用紙は、よりその効果が顕著であり、接着力の低下が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の圧着記録用紙は、接着力の低下が少ないため、熱定着方式の乾式電子写真プリンターに適用できる。もちろん、フラッシュ定着方式の乾式電子写真プリンターに適用しても何ら差し支えない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも片面に、通常状態では粘着性、接着性とも示さず、加圧により剥離可能な接着性を示す感圧接着層を有する圧着記録用紙において、感圧接着層面のシリコンオイルを用いたブリストー法による吸収係数が0.15(ml/m2・ms1/2)以上であることを特徴とする圧着記録用紙。
【請求項2】
JIS P 8117による透気度が500秒以下であることを特徴とする請求項1記載の圧着記録用紙。

【公開番号】特開2007−92247(P2007−92247A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285570(P2005−285570)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】