説明

圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末およびその製造方法、ならびに圧粉磁心

【課題】高磁束密度で、焼鈍後であっても高い電気絶縁性を維持し、かつ機械的強度がより一層優れた圧粉磁心用の鉄基軟磁性粉末を提供すること。
【解決手段】本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末は、鉄基軟磁性粉末表面に、リン酸化成皮膜層を有する皮膜が形成されており、該皮膜を赤外分光法・拡散反射法で分析し、3700cm-1から2500cm-1に生じる水酸基の吸収を吸光度表示した際のピーク高さが0.04以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末およびその製造方法、ならびに、この鉄基軟磁性粉末を用いて得られる圧粉磁心に関する。
【背景技術】
【0002】
交流磁場内で使用される磁心には、鉄損が小さいことと、磁束密度が高いことが要求される。また、製造工程におけるハンドリング性が良好なことや、コイルにするための巻き線の際に破損しない十分な機械的強度を有することも要求される。これらの点を考慮して、圧粉磁心分野では、鉄粉粒子を電気絶縁性の樹脂で被覆する技術が知られている。このような電気絶縁性の樹脂で被覆した鉄粉粒子を用いて得られる圧粉磁心は、渦電流損失が抑制されて鉄損が小さくなるとともに、鉄粉粒子間が樹脂で接着されて機械的強度も向上する。
【0003】
一方で、磁束密度の向上には圧粉磁心を高密度に形成することが有効であるため、鉄粉粒子を被覆する電気絶縁性樹脂の量は低減することが好ましい。また、特にヒステリシス損失を低減して鉄損を小さくするには、高温で焼鈍して圧粉磁心の歪みを解放してやることが有効であると考えられている。そこで、電気絶縁性樹脂含有量が少なくても鉄粉粒子間を効果的に絶縁することができ、かつ、焼鈍といった高温での熱処理を行っても良好な電気絶縁性を維持できるような圧粉磁心用の鉄粉の開発が望まれている。
【0004】
このような観点から、電気絶縁性樹脂として、耐熱性の高いシリコーン樹脂を用いる技術が開発されている。また、樹脂以外の絶縁物として、リン酸等から得られるガラス状化合物の皮膜を絶縁層として利用する技術も古くから知られている(特許文献1)。
【0005】
ところで、有機高分子であるシリコーン樹脂に比べれば、これらの無機系絶縁皮膜は熱的安定性に優れているはずであるが、高温の熱処理(焼鈍)を行うと絶縁性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、上記問題を解決するべく検討を行って、鉄基軟磁性粉末表面に、特定の元素を含むリン酸系化成皮膜と、シリコーン樹脂皮膜とをこの順で形成することで、高磁束密度、低鉄損、高機械的強度の圧粉磁心を提供することに成功し、既に特許を受けている(特許文献2)。
【0007】
しかし、圧粉磁心の高性能化の要求は特許文献2の出願時に比べてさらに高まっており、従来にも増して、高磁束密度、低鉄損、高機械的強度が求められるようになっている。中でも、機械的強度に対する要求は高く、高磁束密度、低鉄損を維持しつつ機械的強度を高めた圧粉磁心が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2710152号公報
【特許文献2】特許第4044591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたものであり、高磁束密度で、焼鈍後であっても高い電気絶縁性を維持し、かつ機械的強度がより一層優れた圧粉磁心用の鉄基軟磁性粉末を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできた本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末は、鉄基軟磁性粉末表面に、リン酸化成皮膜層を有する皮膜が形成されており、該皮膜を赤外分光法・拡散反射法で分析し、3700cm−1から2500cm−1に生じる水酸基の吸収を吸光度表示した際のピーク高さが0.04以上であることを特徴とする。
【0011】
このように、鉄基軟磁性粉末表面に形成される、リン酸系化成皮膜層を有する皮膜が、所定量以上の水酸基を有することにより、リン酸系化成皮膜が水酸基由来の酸素を介して鉄基軟磁性粉末表面と強固な結合を形成することとなる。その結果、鉄基軟磁性粉末同士の結合力が向上し、本発明の鉄基軟磁性粉末を用いて得られる圧粉磁心の機械的強度も向上するものと推測される。
【0012】
本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末は、前記皮膜が、前記リン酸化成皮膜層の上にさらにシリコーン樹脂皮膜層を有していることが好ましい実施態様である。
【0013】
なお、上記皮膜を赤外分光法・拡散反射法で分析する際の測定条件については後述する。
【0014】
本発明には、上記の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形し、400℃以上で熱処理して得られることを特徴とする圧粉磁心が包含される。その際、圧粉磁心の密度は7.55g/cm3以上であることが好ましい。
【0015】
本発明には、上記の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を製造する方法であって、表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末と水とを混合してリン酸系化成皮膜とすることを特徴とする圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法が包含される。
【0016】
本明細書においては、上記のように「未水和のリン酸系化成皮膜」と表現するときは、所定量の水酸基が導入される前のリン酸系化成皮膜を意味するものとする。
【0017】
さらに、シリコーン樹脂を水および/または有機溶剤に溶解させたシリコーン樹脂溶液と混合して、シリコーン樹脂皮膜を前記リン酸系化成皮膜の上に形成することが好ましい実施態様である。次いで、前記シリコーン樹脂皮膜が形成された圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を加熱して、前記シリコーン樹脂皮膜を予備硬化することも好ましい実施態様である。
【0018】
上記製造方法で用いる、前記表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末は、水および/または有機溶剤からなる溶媒にPを含む化合物を溶解させた溶液と、鉄基軟磁性粉末とを混合して得てもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高磁束密度、低鉄損のみならず、機械的強度にも一層優れる圧粉磁心を得ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末]
本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末(以下、単に「圧粉磁心用鉄粉」と称する場合がある。)は、鉄基軟磁性粉末(以下、単に「軟磁性粉末」と称する場合がある。)表面に、リン酸系化成皮膜層を有する皮膜が形成されており、該皮膜を赤外分光法・拡散反射法で分析し、3700cm−1から2500cm−1に生じる水酸基の吸収を吸光度表示した際のピーク高さが0.04以上であることを特徴とする。以下、本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末について詳述する。
【0021】
(鉄基軟磁性粉末)
本発明で用いる軟磁性粉末は、強磁性体の鉄基粉末であり、具体的には、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイなど)、および鉄基アモルファス粉末等が挙げられる。これらの軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法によって溶融鉄(または溶融鉄合金)を微粒子とした後に還元し、次いで粉砕する等によって製造できる。このような製法では、ふるい分け法で評価される粒度分布で累積粒度分布が50%になる粒径(メジアン径)が20〜250μm程度の軟磁性粉末が得られるが、本発明で用いる軟磁性粉末は、粒径(メジアン径)が50〜150μm程度であることが好ましい。
【0022】
(リン酸系化成皮膜)
本発明の圧粉磁心用鉄粉は、上記軟磁性粉末表面に、リン酸系化成皮膜層を有する皮膜が形成されている。より詳細には、上記軟磁性粉末表面にリン酸系化成皮膜が形成されている。これにより、軟磁性粉末に電気絶縁性を付与することができる。
【0023】
このリン酸系化成皮膜は、Pを含む化合物を用いて形成されるガラス状の皮膜であればその組成は特に限定されるものではないが、P以外に、さらにCo、NaおよびSと共に、Csおよび/またはAlを含む化合物を用いて形成されるガラス状の皮膜であることが好ましい。本発明の圧粉磁心用鉄粉は、皮膜中に所定量以上の水酸基を有することを特徴とするが、かかる水酸基由来の酸素が、後に行う熱処理(焼鈍)時にFeと半導体を形成して比抵抗を低下させることを抑制するのに有効なためである。
【0024】
リン酸系化成皮膜が、P以外に、上記Co等を含む化合物を用いて形成されるガラス状の皮膜である場合には、これらの元素の含有率は、圧粉磁心用鉄粉100質量%中の量として、Pは0.005〜1質量%、Coは0.005〜0.1質量%、Naは0.002〜0.6質量%、Sは0.001〜0.2質量%であることが好ましい。また、Csは0.002〜0.6質量%、Alは0.001〜0.1質量%であることが好ましい。CsとAlとを併用する場合も、それぞれをこの範囲内とすることが好ましい。
【0025】
上記元素のうち、Pは酸素を介して軟磁性粉末表面と化学結合を形成する。従って、P量が0.005質量%未満の場合には、軟磁性粉末表面とリン酸系化成皮膜との化学結合量が不十分となり、強固な皮膜を形成しないおそれがあり好ましくない。一方、P量が1質量%を超える場合には、化学結合に関与しないPが未反応のまま残留し、かえって結合強度を低下させるおそれがあり、好ましくない。
【0026】
Co、Na、S、Cs、Alは、後に行う熱処理(焼鈍)中にFeと酸素が半導体を形成するのを阻害して、比抵抗が低下するのを抑制する作用を有する。Co、NaおよびSは、複合添加されることによってその効果を最大化させる。また、CsとAlはいずれか一方でも構わないが、各元素の下限値は、Co、NaおよびSの複合添加の効果を発揮させるための最低量である。また、Co、Na、S、Cs、Alは、必要以上に添加量を上げると複合添加時に相対的なバランスを維持できなくなるだけでなく、酸素を介したPと軟磁性粉末表面との化学結合の生成を阻害するものと考えられる。
【0027】
本発明のリン酸系化成皮膜には、MgやBが含まれていてもよい。これらの元素の含有率は、圧粉磁心用鉄粉100質量%中の量として、Mg、B共に、0.001〜0.5質量%であることが好適である。
【0028】
本発明のリン酸系化成皮膜の膜厚は、1〜250nm程度が好ましい。膜厚が1nmより薄いと絶縁効果が発現しない場合がある。また250nmを超えると、絶縁効果が飽和する上、圧粉磁心の高密度化の点からも望ましくない。より好ましい膜厚は、10〜50nmである。
【0029】
(水酸基量)
本発明の皮膜は水酸基を有していることを特徴とし、その水酸基量は、下記の方法によって求めた場合に、ピーク高さ0.04以上で表されるものであり、0.042以上が好ましく、0.045以上がより好ましく、0.050以上がさらにより好ましい。最も好ましくは、リン酸系化成皮膜が上記の水酸基量を示す態様である。このように、軟磁性粉末表面に形成される皮膜が、ピーク高さ0.04以上の水酸基量を含むことにより、リン酸系化成皮膜が酸素を介して軟磁性粉末表面と強固な結合を形成することとなるため、結果として鉄基軟磁性粉末同士の結合力も向上し、得られる圧粉磁心の機械的強度を向上できる。一方、水酸基量がピーク高さ0.04未満で表される場合には、リン酸系化成皮膜が酸素を介して軟磁性粉末表面と強固な結合を形成することができず、得られる圧粉磁心の機械的強度を向上することができない。なお、水酸基量の上限は特に限定されるものではないが、ピーク高さ0.1を超える皮膜(特に、リン酸系化成皮膜)を形成するためには技術的困難性を伴う場合がある。
【0030】
<水酸基量測定方法>
装置:Magna-750 FT-IR spectrometer, Nicolet 製
アタッチメント:Spectra-Tech 製, 拡散反射アタッチメント Collector(測定時には、ブロッカーを使用)
検出器:DTGS
測定領域:4000〜400 cm-1
分解能:8 cm-1
積算回数:1000 回
データ処理:採取したスペクトルを吸光度表示する。ベースライン補正を、水酸基の吸収(おおよそ3700 cm-1〜2500 cm-1)を含まないように行い、ベースラインから、水酸基のピーク高さを測定する。
【0031】
(シリコーン樹脂皮膜)
本発明の圧粉磁心用鉄粉は、前記皮膜が、前記リン酸系化成皮膜の上にさらにシリコーン樹脂皮膜層を有していることが好ましい。これにより、シリコーン樹脂の架橋・硬化反応終了時(圧粉成形時)には、粉末同士が強固に結合するので、得られる圧粉磁心の機械的強度が増大する。また、耐熱性に優れたSi−O結合を形成して熱的安定性に優れた絶縁皮膜となる。
【0032】
シリコーン樹脂皮膜は、二官能性のD単位(R2SiX2:Xは加水分解性基)よりは、三官能性のT単位(RSiX3:Xは前記と同じ)を多く持つことが好ましい。硬化が遅いものでは粉末がべとついて、シリコーン樹脂皮膜形成後のハンドリング性が悪くなるためである。しかし、四官能性のQ単位(SiX4:Xは前記と同じ)が多く含まれていると、予備硬化の際(後述する)に粉末同士が強固に結着してしまい、後の圧粉成形が行えなくなるため好ましくない。よって、シリコーン樹脂皮膜はT単位を60モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、全てT単位であることが最も好ましい。
【0033】
上記Rとしては、メチル基またはフェニル基が挙げられる。一般にフェニル基を多く持つ方が耐熱性は高いとされているが、本発明で採用するような高温の焼鈍条件では、フェニル基の存在はそれほど有効とは言えなかった。フェニル基の嵩高さが、緻密なガラス状網目構造を乱して、熱的安定性や鉄との化合物形成阻害効果を逆に低減させるのではないかと考えられる。よって、本発明のシリコーン樹脂皮膜では、メチル基が50モル%以上占めることが好ましく、70モル%以上占めることがより好ましく、フェニル基を全く持たないことが最も好ましい。
【0034】
なお、シリコーン樹脂(皮膜)のメチル基とフェニル基の比率や官能性については、FT−IR等で分析可能である。
【0035】
シリコーン樹脂皮膜の付着量は、リン酸系化成皮膜とシリコーン樹脂皮膜とがこの順で形成された圧粉磁心用鉄粉を100質量%としたとき、0.05〜0.3質量%となるように調整することが好ましい。付着量が0.05質量%未満の場合には、シリコーン樹脂皮膜が形成された圧粉磁心用鉄粉は絶縁性に劣り、電気抵抗が低くなる。また、0.3質量%を超える場合には、得られる圧粉磁心の高密度化が達成しにくい。
【0036】
シリコーン樹脂皮膜の厚みとしては、1〜200nmが好ましい。より好ましい厚みは20〜150nmである。また、リン酸系化成皮膜とシリコーン樹脂皮膜との合計厚みは250nm以下とすることが好ましい。250nmを超えると、磁束密度の低下が大きくなる場合がある。
【0037】
(潤滑剤)
本発明の圧粉磁心用鉄粉は、さらに潤滑剤を含有してもよい。この潤滑剤の作用により、圧粉磁心用鉄粉を圧縮成形する際の圧粉磁心用鉄粉間、あるいは圧粉磁心用鉄粉と成形型内壁間との摩擦抵抗を低減でき、成形体の型かじりや成形時の発熱を防止することができる。このような効果を有効に発揮させるためには、潤滑剤が圧粉磁心用鉄粉全量中、0.2質量%以上含有されていることが好ましい。しかし、潤滑剤量が多くなると、圧粉成形体の高密度化に反するため、0.8質量%以下にとどめることが好ましい。
【0038】
圧粉磁心用鉄粉に潤滑剤を含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧粉磁心用鉄粉に潤滑剤を添加して行う方法や、圧粉磁心用鉄粉を圧縮成形する際に、成形型内壁面に予め潤滑剤を塗布した後、成形する方法(型潤滑成形)が挙げられる。なお、型潤滑成形の場合には、0.2質量%より少ない潤滑剤量でも構わない。
【0039】
潤滑剤としては、従来から公知のものを使用すればよく、具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸の金属塩粉末、およびパラフィン、ワックス、天然または合成樹脂誘導体等が挙げられる。
【0040】
[圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法]
本発明の圧粉磁心用鉄粉は、いずれの方法によって製造されてもよいが、軟磁性粉末表面へのリン酸系化成皮膜の形成は、表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された軟磁性粉末(以下、単に「リン酸系皮膜形成粉末」と称する場合がある。)を水と混合して水和させる(リン酸系化成皮膜とする)ことによって得ることが簡便で好ましい。これにより、皮膜(特に、リン酸系化成皮膜)の水酸基量を容易に所定量まで増加させることができる。以下、本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法について詳述する。
【0041】
<表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された軟磁性粉末の製造方法>
本発明の製造方法で用いるリン酸系皮膜形成粉末は、いずれの態様で製造されてもよいが、例えば、水および/または有機溶剤からなる溶媒にPを含む化合物を溶解させた溶液と、軟磁性粉末とを混合した後、必要に応じて前記溶媒を蒸発させて得ることができる。
【0042】
本工程で用いる溶媒としては、水や、アルコールやケトン等の親水性有機溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒中には公知の界面活性剤を添加してもよい。
【0043】
Pを含む化合物としては、例えばオルトリン酸(H3PO4)が挙げられる。また、リン酸系化成皮膜が上記の組成となるようにするための化合物としては、例えば、Co3(PO42(CoおよびP源)、Co3(PO42・8H2O(CoおよびP源)、Na2HPO4(PおよびNa源)、NaH2PO4(PおよびNa源)、NaH2PO4・nH2O(PおよびNa源)、Al(H2PO43(PおよびAl源)、Cs2SO4(CsおよびS源)、H2SO4(S源)、MgO(Mg源)、H3BO3(B源)等が挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム塩(NaH2PO4)をP源やNa源として用いると、得られる圧粉磁心の密度、機械的強度、比抵抗がバランス良く優れるものとなるため好ましい。
【0044】
軟磁性粉末に対するPを含む化合物の添加量は、形成されるリン酸系化成皮膜の組成が上記の範囲になるものであればよい。例えば、固形分が0.01〜10質量%程度となるように調製した、Pを含む化合物(さらには、皮膜に含ませようとする元素を含む化合物)の溶解溶液を、軟磁性粉末100質量部に対し1〜10質量部程度添加して、公知のミキサー、ボールミル、ニーダー、V型混合機、造粒機等の混合機で混合することによって、形成されるリン酸系化成皮膜の組成を上記の範囲内にすることができる。
【0045】
また必要に応じて、上記混合工程の後、大気中、減圧下、または真空下で、150〜250℃で乾燥する。
【0046】
乾燥後には、目開き200〜500μm程度の篩を通過させておくことが好ましい。
【0047】
<水酸基の導入>
水の混合量は、リン酸系皮膜形成粉末100質量部に対し、0.8質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。水の混合量が0.8質量部未満の場合には、皮膜(特に、リン酸系化成皮膜)の水酸基量を、ピーク高さで0.04以上にすることができない場合がある。なお、水の混合量の上限については特に限定されないが、40質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、18質量部以下がさらに好ましい。40質量部を超える場合には、得られた圧粉磁心用鉄粉の乾燥(後述する水分の除去)に時間がかかる場合がある。また、乾燥後の圧粉磁心用鉄粉を必要に応じて篩にかける場合に、篩を通らない場合がある。
【0048】
リン酸系皮膜形成粉末と水との混合時間は、特に限定されるものではなく、例えば3分〜10分でよい。また、水は適宜加熱(30℃〜100℃)しておいても構わない。
【0049】
本発明の製造方法においては、水と混合して水和させた後に熱処理して、水和成分以外の水分を除去することが好ましい。熱処理条件は、その目的を達成することができれば特に限定されるものではなく、例えば50〜100℃下、15分〜1時間程度の熱処理でよい。
【0050】
<軟磁性粉末表面へのリン酸系化成皮膜の形成>
本発明において、軟磁性粉末表面へのリン酸系化成皮膜の形成は、リン酸系皮膜形成粉末を水と混合して水和させる方法の他に、例えば、上述のリン酸系皮膜形成粉末の製造を、溶媒として水を用いて行うとともに、その後の乾燥操作を、例えば50〜100℃下、15分〜1時間程度に留めて、上記水との混合操作(水和操作)を経ることなく、ピーク高さで0.04以上を表す水酸基量を有するリン酸系化成皮膜とする方法によって行ってもよい。
【0051】
<シリコーン樹脂皮膜の形成>
本発明の圧粉磁心用鉄粉は、リン酸系化成皮膜の上に、さらにシリコーン樹脂皮膜が形成されていることが好ましい。このようなシリコーン樹脂皮膜の形成は、例えば、上記水和処理、及びその後の熱処理によって得られた圧粉磁心用鉄粉(以下、便宜上、単に「水和物」と称する場合がある。)と、シリコーン樹脂を水および/または有機溶剤に溶解させたシリコーン樹脂溶液とを混合し、次いで必要に応じて前記水および/または有機溶剤を蒸発させることによって行うことができる。
【0052】
なお、シリコーン樹脂を溶解させる溶媒として水を用いる場合には、本シリコーン樹脂皮膜の形成と同時に、リン酸系化成皮膜に水酸基を導入することもできることとなる。このため、シリコーン樹脂皮膜形成後の皮膜の水酸基量がピーク高さで0.04以上を示すことができれば、本シリコーン樹脂皮膜の形成は、ピーク高さで0.04未満の水酸基を有するリン酸系化成皮膜が表面に形成されている圧粉磁心用鉄粉を用いて行ってもよい。
【0053】
本工程で用いるシリコーン樹脂としては、これを用いて形成されるシリコーン樹脂皮膜の組成(特にT単位、及びR)を上記の範囲にできるものであることが好ましく、T単位が好ましくは60モル%以上(より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは全てT単位)で、Rの50モル%以上(より好ましくは70モル%以上、最も好ましくは100モル%)がメチル基であるシリコーン樹脂が好ましい。具体的には、メチル基が50モル%以上のメチルフェニルシリコーン樹脂(例えば、信越化学工業社製のKR255、KR311等)を用いることが好ましく、メチル基が70モル%以上のメチルフェニルシリコーン樹脂(例えば、信越化学工業社製のKR300等)を用いることがより好ましく、フェニル基を全く持たないメチルシリコーン樹脂(例えば、信越化学工業社製のKR251、KR400、KR220L,KR242A、KR240、KR500、KC89等や、東レ・ダウコーニング社製のSR2400等)を用いることが最も好ましい。
【0054】
本工程で用いる有機溶剤としては、アルコール類や、トルエン、キシレン等の石油系有機溶剤等が挙げられる。
【0055】
水和物に対するシリコーン樹脂の添加量は、形成されるシリコーン樹脂皮膜の付着量が上記の範囲になるものであればよい。例えば、固形分が大体2〜10質量%になるように調製したシリコーン樹脂溶液を、水和物100質量部に対し0.5〜10質量部程度添加して行うことによって、シリコーン樹脂皮膜の付着量を上記範囲内にすることができる。添加量が0.5質量部より少ないと混合に時間がかかったり、皮膜が不均一になるおそれがある。一方、10質量部を超えると乾燥に時間がかかったり、乾燥が不充分になるおそれがある。なお、シリコーン樹脂溶液は適宜加熱しておいても構わない。
【0056】
本工程で水和物とシリコーン樹脂溶液とを混合する際に用いる混合機としては、特に限定されるものではなく、上記の混合機であってよい。
【0057】
本工程では、水和物とシリコーン樹脂溶液との混合操作の後、必要に応じて乾燥して、前記水および/または有機溶剤を蒸発させてもよい。
【0058】
この乾燥工程では、用いた有機溶剤が揮発する温度で、かつ、シリコーン樹脂の硬化温度未満に加熱して、水および/または有機溶剤を充分に蒸発揮散させることが望ましい。具体的な乾燥温度としては、有機溶剤として上記のアルコール類や石油系有機溶剤を用いた場合は、60〜80℃程度が好適である。
【0059】
乾燥後には、凝集ダマを除くために、目開き200〜500μm程度の篩を通過させておくことが好ましい。
【0060】
乾燥後には、シリコーン樹脂皮膜が形成された圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末(以下、便宜上、単に「シリコーン樹脂皮膜形成粉末」と称する場合がある。)を加熱して、シリコーン樹脂皮膜を予備硬化させることが推奨される。
【0061】
予備硬化とは、シリコーン樹脂皮膜の硬化時における軟化過程を粉末状態で終了させる処理である。この予備硬化処理によって、温間成形時(100〜250℃程度)にシリコーン樹脂皮膜形成粉末の予備硬化物の流れ性を確保することができる。具体的な手法としては、シリコーン樹脂皮膜形成粉末を、このシリコーン樹脂の硬化温度近傍で短時間加熱する方法が簡便であるが、薬剤(硬化剤)を用いる手法も利用可能である。予備硬化と、硬化(予備ではない完全硬化)処理との違いは、予備硬化処理では、粉末同士が完全に接着固化することなく、容易に解砕が可能であるのに対し、粉末の成形後に行う高温加熱硬化処理では、樹脂が硬化して粉末同士が接着固化する点である。完全硬化処理によって成形体強度が向上する。
【0062】
上記したように、シリコーン樹脂皮膜形成粉末を予備硬化させた後、解砕することで、流動性に優れた圧粉磁心用鉄粉が得られ、圧粉成形の際に成形型へ、砂のようにさらさらと投入することができるようになる。予備硬化させないと、例えば温間成形の際に粉末同士が付着して、成型型への短時間での投入が困難となることがある。実操業上、ハンドリング性の向上は非常に有意義である。また、予備硬化させることによって、得られる圧粉磁心の比抵抗が非常に向上することが見出されている。この理由は明確ではないが、硬化の際の軟磁性粉末との密着性が上がるためではないかと考えられる。
【0063】
短時間加熱法によって予備硬化を行う場合、100〜200℃で5〜100分の加熱処理を行うとよい。130〜170℃で10〜40分の加熱処理がより好ましい。予備硬化後も、篩を通過させておくことが好ましい。
【0064】
[圧粉磁心]
本発明には、上記圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末(圧粉磁心用鉄粉)を用いて得られる圧粉磁心が包含される。以下、本発明の圧粉磁心について詳述する。
【0065】
圧粉磁心を製造するには、まず、上記圧粉磁心用鉄粉を圧縮成形する。圧縮成形法は特に限定されず、従来公知の方法が採用可能である。
【0066】
圧縮成形の好適条件は、面圧で、490MPa〜1960MPa、より好ましくは790MPa〜1180MPaである。特に、980MPa以上の条件で圧縮成形を行うと、密度が7.55g/cm3以上である圧粉磁心を得やすく、高強度で磁気特性(磁束密度)の良好な圧粉磁心が得られるため好ましい。成形温度は、室温成形、温間成形(100〜250℃)いずれも可能である。型潤滑成形で温間成形を行う方が、より高強度の圧粉磁心が得られるため、好ましい。強度の目安としては、後述する実施例における測定方法で、120MPa以上が好ましい。
【0067】
成形後は、圧粉磁心のヒステリシス損失を低減するため高温で焼鈍する。このときの焼鈍温度は400℃以上が好ましく、比抵抗の劣化がなければ、より高温で熱処理することが望ましい。焼鈍時の雰囲気は特に限定されないが、窒素等の不活性ガス雰囲気下が好ましい。焼鈍時間は比抵抗の劣化がなければ特に限定されないが、20分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。
【0068】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
【0070】
先ず、実施例および比較例で用いた評価方法について、以下説明する。
【0071】
(水酸基量)
装置:Magna-750 FT-IR spectrometer, Nicolet 製
アタッチメント:Spectra-Tech 製, 拡散反射アタッチメント Collector(測定時には、ブロッカーを使用)
検出器:DTGS
測定領域:4000〜400 cm-1
分解能:8 cm-1
積算回数:1000 回
データ処理:採取したスペクトルを吸光度表示する。ベースライン補正を、水酸基の吸収(おおよそ3700 cm-1〜2500 cm-1)を含まないように行い、ベースラインから、水酸基のピーク高さを測定する。
【0072】
(密度)
試験片の体積、及び質量から算出した。
【0073】
(透磁率)
外径36mm×内径24mm×厚み5mmのリング状試験片を作成し、BHアナライザーにて測定した。
【0074】
(比抵抗)
31.75mm×12.7mm×厚み5mmの短冊状試験片を作成し、4端子法(試験間距離7mm)で測定した。
【0075】
(抗折強度)
31.75mm×12.7mm×厚み5mmの短冊状試験片を作成し、日本粉末冶金工業会のJPMA M 09−1992に準拠して、3点曲げ試験を行って求めた。
【0076】
(実施例1)
<リン酸系皮膜形成粉末の調製>
軟磁性粉末として純鉄粉(神戸製鋼所製;アトメル300NH;粒径(メジアン径)80〜100μm)を用いた。水:1000部、Na2HPO4:88.5部、H3PO4:181部、H2SO4:61部、Co3(PO42:30部、Cs2SO4:44部を混合して、さらに10倍に希釈した処理液10部を、目開き300μmの篩を通した上記純鉄粉200部に添加して、V型混合機を用いて30分以上混合した後、大気中、200℃で30分乾燥し、目開き300μmの篩を通した。
【0077】
<水酸基の導入>
上記工程で得られたリン酸系皮膜形成粉末800gに対し、水を15g添加し、撹拌しながら5分間混合した。その後、75℃にて30分の熱処理を行い、水和成分以外の水分を除去して、圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を得た。
【0078】
<水酸基量の測定>
得られた圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末について、リン酸系化成皮膜の水酸基量を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0079】
<圧粉成形>
続いて、ステアリン酸Znをアルコールに分散させた潤滑剤溶液を、金型表面に塗布した後、圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を入れ、面圧980MPaで室温(25℃)での圧粉成形を行った。成形体寸法は、31.75mm×12.7mm、高さ約5mmである。その後、600℃で1時間、窒素雰囲気下で焼鈍して、本発明の圧粉磁心を得た。昇温速度は約5℃/分とし、熱処理後は炉冷した。
【0080】
<圧粉磁心特性>
得られた圧粉磁心の密度、透磁率、比抵抗、及び抗折強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
(実施例2及び3、比較例1)
表1に示したように、水酸基の導入の際に添加する水量を変えた以外は、実施例1と同様にして、圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末、及び圧粉磁心をそれぞれ製造し、各圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の水酸基量と、各圧粉磁心の密度、透磁率、比抵抗、及び抗折強度を測定した。その結果を表1に示した。
【0083】
(実施例4)
<シリコーン樹脂皮膜形成粉末の予備硬化物の調製>
シリコーン樹脂(信越化学工業社製;KR220L;メチル基100モル%、T単位100モル%)をトルエンに溶解させて、4.8%の固形分濃度の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液を、実施例1で調製した圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末(800g)に対して樹脂固形分が0.15%となるように添加して混合した。次いで、オーブン炉で大気圧中、75℃、30分間加熱して乾燥した後、目開き300μmの篩を通した。その後、150℃で30分間予備加熱を行い、シリコーン樹脂皮膜形成粉末の予備硬化物を得た。
【0084】
<水酸基量の測定>
得られた圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末について、リン酸系化成皮膜層とシリコーン樹脂皮膜層との皮膜の水酸基量を測定した。得られた結果を表2に示した。
【0085】
<圧粉成形>
続いて、ステアリン酸Znをアルコールに分散させた潤滑剤溶液を、金型表面に塗布した後、予備硬化物を入れ、面圧980MPaで室温(25℃)での圧粉成形を行った。成形体寸法は、31.75mm×12.7mm、高さ約5mmである。その後、600℃で1時間、窒素雰囲気下で焼鈍して、本発明の圧粉磁心を得た。昇温速度は約5℃/分とし、熱処理後は炉冷した。
【0086】
<圧粉磁心特性>
得られた圧粉磁心の密度、透磁率、比抵抗、及び抗折強度を測定した。その結果を表2に示した。
【0087】
(実施例5及び6、比較例2)
実施例4のシリコーン樹脂皮膜形成粉末の予備硬化物の調製において、実施例1で調製した圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末に換えて、実施例2、3、及び比較例1で調製した圧粉磁心用鉄基軟磁性粉をそれぞれ用いた以外は実施例4と同様にして、シリコーン樹脂皮膜形成粉末の予備硬化物を得、次いで圧粉磁心を製造した。得られた各圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の水酸基量と、各圧粉磁心の密度、透磁率、比抵抗、及び抗折強度をそれぞれ測定した。その結果を表2に示した。
【0088】
【表2】

【0089】
(参考例1及び2)
実施例5及び6の圧粉成形について、面圧784MPa、室温(25℃)で行った以外は実施例5及び6と同様にして、圧粉成形を行って圧粉磁心を製造した。得られた圧粉磁心について、密度、透磁率、比抵抗、及び抗折強度をそれぞれ測定した。その結果を表3に示した。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例1〜6、及び比較例1〜2との比較から、リン酸系化成皮膜に水酸基を導入することにより比抵抗が向上する(すなわち、鉄損の小さい圧粉磁心が得られる)ことが分かった。また、抗折強度も向上する(すなわち、機械的強度にも優れた圧粉磁心が得られる)ことが分かった。また、実施例1〜3と実施例4〜6とから、シリコーン樹脂皮膜を形成した方が、高い比抵抗を示す(より鉄損の小さい圧粉磁心が得られる)ことが分かった。
【0092】
さらに、実施例5及び6と参考例1及び2とから、圧粉磁心の密度が7.55g/cm3以上である方が、透磁率、抗折強度が向上するため好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末は、モータのロータやステータのコアとなる圧粉磁心の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄基軟磁性粉末表面に、リン酸化成皮膜層を有する皮膜が形成されており、該皮膜を赤外分光法・拡散反射法で分析し、3700cm-1から2500cm-1に生じる水酸基の吸収を吸光度表示した際のピーク高さが0.04以上であることを特徴とする圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末。
【請求項2】
前記皮膜は、前記リン酸化成皮膜層の上にさらにシリコーン樹脂皮膜層を有している請求項1に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を圧粉成形し、400℃以上で熱処理して得られることを特徴とする圧粉磁心。
【請求項4】
密度が7.55g/cm3以上である請求項3に記載の圧粉磁心。
【請求項5】
請求項1または2に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を製造する方法であって、表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末と水とを混合してリン酸系化成皮膜とすることを特徴とする圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法。
【請求項6】
さらに、シリコーン樹脂を水および/または有機溶剤に溶解させたシリコーン樹脂溶液と混合して、シリコーン樹脂皮膜を前記リン酸系化成皮膜の上に形成する請求項5に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂皮膜が形成された圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末を加熱して、前記シリコーン樹脂皮膜を予備硬化する請求項6に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法。
【請求項8】
前記表面に未水和のリン酸系化成皮膜が形成された鉄基軟磁性粉末が、水および/または有機溶剤からなる溶媒にPを含む化合物を溶解させた溶液と、鉄基軟磁性粉末とを混合して得られる請求項5から7のいずれか一項に記載の圧粉磁心用鉄基軟磁性粉末の製造方法。

【公開番号】特開2010−196101(P2010−196101A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41090(P2009−41090)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】