圧縮復元可能な高分子スキャフォールド
医用器具は、拡張バルーンを有するカテーテルまでクリンプされる高分子スキャフォールドを含む。スキャフォールドは、スキャフォールドの直径が50%だけ締め付けられあるいは圧縮された後、バルーンにより展開されて約90%の圧縮復元を行なう。スキャフォールドは、クローズドセルを接続する非対称なクローズドセル接続リンクを含むパターンを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤溶出医用器具に関し、特に、本発明は送達バルーンによって拡張される高分子スキャフォールドに関する。
【背景技術】
【0002】
放射状に拡張可能な体内プロテーゼは、解剖学的管腔に埋め込まれるようになっている人工器具である。「解剖学的管腔」とは、血管、尿路、胆管などの管状器官の腔、管のことである。ステントは、略円筒形状でかつ解剖学的管腔の一部を開放状態に保持し、時として拡張させる機能を果たす体内プロテーゼの例である(ステントの一例がLau等の米国特許第6,066,167号明細書において見出される)。ステントは、しばしば、血管のアテローム硬化性狭窄の治療で使用される。「狭窄」とは、身体の通路またはオリフィスの直径が狭いことあるいは収縮していることである。そのような治療において、ステントは、血管の壁を補強し、脈管系における血管形成後の再狭窄を防止する。「再狭窄」とは、血管や心臓弁が明らかな成功をもって(バルーン血管形成術、ステント留置術、または、弁形成術などによって)治療された後の血管や心臓弁における狭窄の再発のことである。
【0003】
ステントを用いた患部や病変の治療は、ステントの送達および展開の両方を伴う。「送達」とは、解剖学的管腔を通じて病変などの所望の治療部位にステントを導入して輸送することである。「展開」とは、治療領域の管腔内でのステントの拡張に対応する。ステントの送達および展開は、カテーテルの一端の周囲にステントを位置決めして、カテーテルの端部を皮膚を通じて解剖学的管腔へ挿入し、カテーテルを所望の治療位置に解剖学的管腔内で押し進めて、ステントを治療位置で拡張させ、カテーテルを管腔から除去することによって達成される。
【0004】
バルーン拡張型ステントの場合には、ステントは、カテーテル上に配置されるバルーンの周囲に装着される。ステントの装着は、一般的に、解剖学的管腔内への挿入前にステントをバルーン上まで圧縮させあるいはクリンプすることを伴う。管腔内の治療部位では、バルーンを膨張させることによってステントが拡張される。その後、バルーンが収縮されて、カテーテルがステントおよび管腔から引き出され、それにより、治療部位にステントが残されてもよい。自己拡張型ステントの場合、ステントは、引き込み可能なシースを介してカテーテルに固定されてもよい。ステントが治療部位にあるとき、シースが引き出されてもよく、それにより、ステントが自己拡張できる。
【0005】
ステントは、多くの基本的な機能要件を満たすことができなければならない。ステントは、それが展開後に血管の壁を支持するときにステントに課される構造的な負荷、例えば径方向圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントは、適切な径方向強度を有さなければならない。展開後、ステントは、それに作用するようになる様々な力にもかかわらず、その耐用年数の全体にわたってそのサイズおよび形状を適切に維持しなければならない。特に、ステントは、これらの力にもかかわらず、所望の治療時間にわたって血管を所定の直径に適切に維持しなければならない。治療時間は、血管壁が作り変えられるために必要な時間に対応し得る。その治療時間後、ステントは、所望の直径を維持するために血管にとってもはや不要となる。
【0006】
径方向圧縮力に耐えることができるステントの能力である径方向強度は、ステントの径方向降伏強度と、ステントの周方向にわたる径方向剛性とに関連する。ステントの「径方向降伏強度」または「径方向強度」は、(この出願の目的のため)これを超えればステント直径がステントの無負荷直径まで戻らなくなる、すなわち、ステントの回復不可能な変形が存在する降伏応力状態をもたらす圧縮負荷として理解されてもよい。径方向降伏強度を超えると、ステントが更に激しく降伏することが予期され、また、大きな変形を引き起こすのに最小限の力だけで済む。
【0007】
径方向降伏強度を超える前であっても、径方向圧縮後にステントに永久的変形が存在する場合があるが、ステントのある場所におけるこの永久変形の度合いは、血管を径方向で支持できるステントの全体の能力に大きな影響を及ぼすほど激しくはない。したがって、ある場合において、当技術分野は、「径方向降伏強度」を最大径方向負荷と見なす場合があり、この最大径方向負荷を超えると、スキャフォールド剛性が劇的に変化する。「径方向降伏強度」単位は、時として、力を長さで割ったものであり、これは単位長さ当たりの径方向降伏強度の表現である。したがって単位長さ当たりの径方向降伏強度、例えばFN/mmにおいて、径方向負荷、すなわち、この値を超えると2つの異なる長さL1、L2を有するステントにおける剛性のかなりの変化をもたらす。径方向負荷は、それぞれ積F×L1およびF×L2となる。しかしながら、値Fは両方のケースで同じであり、そのため、都合の良い表現を使用して、ステントの長さとは無関係な径方向降伏強度を認識できる。一般に、剛性が失われるポイントを特定する径方向力は、ステント長さが変化するときに単位長さ当たりで大きく変化しない。
【0008】
冠状動脈に埋め込まれるステントは、主に、血液が鼓動する心臓へ圧送されかつ血液が鼓動する心臓から圧送される際の血管の周期的な収縮および拡張に起因する径方向負荷、一般的には本質的に周期的な負荷に晒される。しかしながら、抹消血管、または、冠状動脈外の血管、例えば腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、腎動脈、および、鎖骨下動脈に埋め込まれるステントは、径方向力および圧縮負荷または締め付け(pinching)負荷の両方に耐えることができなければならない。これらのステントタイプは、身体の表面に近い血管に埋め込まれる。これらのステントは、身体の表面に近いため、圧縮負荷または締め付け負荷に対して特に脆く、そのため、ステントが部分的にあるいは完全に押し潰れる可能性があり、それにより、血管内での流体流れが妨げられる。
【0009】
径方向負荷に制限される冠動脈ステントと比較して、末梢血管ステントは、Duerig、Tolomeo、Wholey、Overview of superelastic stent Design、Min Invas Ther & Allied Technol 9(3/4)、pp.235−246(2000)and Stoeckel、Pelton、Duerig、Self−Expanding Nitinol Stents−Material and Design Considerations、European Radiology(2003)に記載されるように、締め付け負荷または圧縮負荷と径方向負荷との間のかなりの差異を考慮に入れなければならない。また、ステントの対応する圧縮剛性特性および径方向剛性特性も劇的に変化し得る。したがって、特定の度合いの径方向剛性を有するステントは、一般的に言って、該ステントによって所有される締め付け剛性の度合いも示さない。2つの剛性特性は同じではなくあるいは更には類似してもいない。
【0010】
大腿動脈内に埋め込まれる末梢血管ステントにおいて予期される断面圧縮の大きさは、高齢患者の動脈では、大腿動脈の上部、中間部、および、下部で5.8+/−7%、6.5+/−4.9%、および、5.1+/−6.4%程度になると推定され、また、若い患者では、2.5+/−7.7%、−0.8+/−9.4%、および、−1.5+/−10.5%になると推定された。末梢血管ステントにおける他の考慮すべき事項は、ステントが強度/剛性の機械損失を伴うことなく耐えることができる曲げおよび軸方向圧縮の度合いである。冠動脈ステントと比較して、末梢血管ステントは、通常、一例として、表在大腿動脈中に埋め込まれるときに約36〜40mmの長さを有する。したがって、ステントは、破損することなく軸方向圧縮負荷および曲げ負荷に耐えるのに十分に柔軟でなければならない。予期される曲げおよび軸方向圧縮の大きさは、Nikanorov、Alexander、MD et al.、Assessment of self−expanding Nitinol stent deformation after chronic implantation into the superficial femoral arteryにおいて研究されて報告された。
【0011】
今まで、最も一般的に使用されるタイプの末梢血管ステントは、ニチノールなどの超弾性材料から形成される自己拡張型ステントである。このタイプの材料は、圧縮負荷や長手方向の曲げなどの急激な変形後にその当初の形状まで戻ることができることで知られている。しかしながら、この様々な自己拡張型ステントは品質が望ましくない。最も顕著なものとして、超弾性材料の高い弾力性は、ステントによって支持される血管に作用する「慢性的な外向きの力(COF)」と一般に呼ばれるものをもたらす。COFに起因する合併症は、Schwartz、Lewis B.et al.Does Stent Placement have a learning curve:what mistakes do we as operators have to make and how can they be avoided?、Abbott Laboratories; Abbott Park、IL.、USAに記載されている。自己拡張型ステントによって血管に作用するCOFは、自己拡張型ステントによって治療される病変の高い度合いの再狭窄の主な要因であると考えられる。薬剤溶出自己拡張型ステントから送達される抗増殖薬剤であってもステントのCOFに起因する再狭窄を軽減できないことが分かった。
【0012】
血管を支持するためにバルーンによって塑性変形されるステントは、この欠点に見舞われない。確かに、バルーン拡張型ステントは、超弾性材料から形成される自己拡張型ステントとは対照的に、外向きの残留力を血管に対して及ぼすことなく血管を支持するのに望ましい直径まで展開できるという望ましい品質を有する。しかしながら、従来技術は、塑性変形されたステントが、いったん末梢動脈内で押し潰され、締め付けられ、あるいは、圧縮されると、そのままとなり、血管を永久的に遮ると結論付けてきた。したがって、従来技術は、塑性変形されたステントが、望ましくない状態を患者に対してもたらすため、末梢血管を治療するために使用されるべきでないと結論付けてきた。
【0013】
例えば米国特許出願公開第2010/0004735号明細書に記載されているように、高分子スキャフォールドは、生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、または、生体浸食性の高分子から形成される。生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、生体溶解性、または、生体浸食性という用語は、分解する、吸収する、再吸収する、または、埋め込み部位から離れるように浸食する材料またはステントの特性を指す。米国特許出願公開第2010/0004735号明細書に記載される高分子スキャフォールドは、金属ステントとは対照的に、限られた期間のみにわたって身体内にとどまるようになっている。スキャフォールドは、生体分解性または生体浸食性高分子から形成される。多くの治療用途では、体内でのステントの存在は、例えば血管開通性を維持するおよび/または薬剤送達というその意図される機能が達成されるまで限られた時間にわたって必要となり得る。また、生体分解性のスキャフォールドは、金属ステントに比べて解剖学的管腔の治癒を高めることができ、それにより、後期血栓症の発生率の低下につながる可能性があると考えられる。これらのケースでは、血管内でのプロテーゼの存在が限られた継続時間にわたるように、金属ステントではなく、高分子スキャフォールドを使用して、特に生体浸食性の高分子スキャフォールドを使用して血管を治療することが望ましい。しかしながら、高分子スキャフォールドを開発する際には克服すべき多くの課題がある。
【0014】
当技術分野は、クリンプ力やバルーン拡張力などの外的負荷に晒される際にその構造的完全性および/または形状を保持できる高分子スキャフォールドの能力に影響を及ぼす様々な要因を認識する。これらの相互作用は複雑であり、作用のメカニズムは完全に理解されていない。当技術分野によれば、塑性変形によって展開状態まで拡張されるタイプの高分子生体吸収性スキャフォールドを同様に機能する金属スキャフォールドから区別する特徴は、多く、そして、重要である。確かに、金属製のスキャフォールドの挙動を予測するために使用される許容された分析的または経験的な方法/モデルのうちの幾つかは、不適切ではないにしろ、バルーン拡張型スキャフォールドの高分子耐負荷構造の非常に非線形な時間に依存する挙動を確実にかつ一貫して予測するための方法/モデルとして信頼できないところがある。該方法は、一般に、スキャフォールドを体内に埋め込むあるいは経験的データを予測する/予期するために必要とされる許容できる程度の確実性を与えることができない。
【0015】
また、医用器具に関連するバルーン、例えばスキャフォールド展開および/または血管形成のための非順応性バルーンの製造における最先端の技術は、高分子材料がストラットによって相互に接続されるリングの網状体の塑性変形により生体内の管腔を支持するために使用される際にどのように振る舞うことができるのかに関して限られた情報しか提供しないと認識される。要するに、バルーンが膨張されて管腔を支持しているときに、負荷が掛けられる前の膜の機械的特徴に最も似ている膨張された薄壁バルーン構造の機械的特徴を向上させるように工夫される方法は、展開された高分子スキャフォールドの挙動への見識を、たとえあったとしても僅かしか与えない。1つの違いは、例えば、高分子スキャフォールドでは破壊または亀裂が生じ易いことである。当技術分野は、機械的な問題があまりにも異なっており、したがって、ある種の材料の類似性を共有するにもかかわらず、有益な見識を与えることができないと認識する。せいぜい、バルーン製造技術は、バルーン拡張型の生体吸収性高分子スキャフォールドの特性を向上させようとする者に対して一般的な指針を与えるにすぎない。
【0016】
高分子スキャフォールドとして使用するために考えられた高分子材料、例えば、ポリ(L−ラクチド)(「PLLA」)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLGA」)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)、または、10%未満のD−ラクチドを伴うポリ(L−ラクチド−コ−D−ラクチド)(「PLLA−コ−PDLA」)、および、PLLD/PDLAステレオコンプレックスは、ステントを形成するために使用される金属材料との比較により、以下の何らかの方法で説明されてもよい。適した高分子は重量に対する強度の比率が低く、そのため、等価な機械的特性を金属のそれに対して与えるために、より多くの材料が必要とされる。したがって、ステントが所望の半径で管腔壁を支持するために必要な強度を有するために、ステントを更に厚くかつ更に幅広くしなければならない。また、そのような高分子から形成されるスキャフォールドは、脆くなり易く、あるいは、限られた破壊靱性を有する。材料に固有の異方性特性および速度に依存する非弾性特性(材料の強度/剛性は、材料が変形される速度に応じて異なる)は、高分子、特にPLLAまたはPLGAなどの生体吸収性高分子と協働して、この複雑さの度合いを増す。
【0017】
したがって、一般に懸案事項を生じない、あるいは、材料の平均的な機械特性の予期しない変化に注意深い配慮を要しない金属ステントで行なわれる処理ステップ、および、金属ステントに対してなされる設計変更は、同様の負荷条件下にある高分子の機械的特性の非線形な、時として予測できない性質に起因して、高分子スキャフォールドに適用できない場合がある。それは、時として、より一般的に特定の状態が1つの要因に起因するのかあるいは他の要因に起因するのかどうか−例えば欠陥だったかどうかにかかわらず、製造プロセスの1つ以上のステップ、あるいは、スキャフォールド製造後に行なわれるプロセスにおける1つ以上のステップ、例えばクリンプの結果を予測することが可能になる前であっても広範囲に及ぶ検証に取り組む必要があるケースである。結果として、製造プロセス、製造後プロセスの変更、または、スキャフォールドパターン設計の比較的軽微な変更は、一般的に言って、高分子の代わりに金属材料が使用された場合よりも徹底的に吟味されなければならない。したがって、異なる高分子スキャフォールド形状の中からその改良のために選択する際には、生産的でない経路を除いて、より生産的な経路に導くためのツールとして利用できる推論、理論、または、系統的発見方法は、金属ステントにおいて変更を成す場合よりもかなり少ない。
【0018】
したがって、本発明者等は、等方性の延性金属材料が使用されたときのステント検証または実現可能性に関して当技術分野で既に許容された推論が高分子スキャフォールドにとって適切でないと認識する。高分子スキャフォールドパターンの変更は、管腔を支持するその展開状態におけるスキャフォールドの剛性または管腔被覆率に影響を与えるだけでなく、スキャフォールドがクリンプされあるいは展開されているときに破壊が生じる性向にも影響を与える場合がある。これは、金属ステントと比べて、一般に、変更されたスキャフォールドパターンが不利な結果をもたらし得ないかどうかあるいは処理ステップ(チューブ形成、レーザ切断、クリンプなど)の大きな変更を必要とし得ないかどうかに関してなされ得る仮定が存在しないことを意味する。簡単に言えば、ステント製造プロセスを簡略化する金属の非常に有益な固有の特性(一般的には、変形速度または負荷方向に対して不変の応力/歪み特性、および、材料の延性)により、変更されたステントパターンおよび/または処理ステップと、新たなパターンを伴いかつ生体内に埋め込まれる際に不具合を伴わないステントを確実に製造できるようにする能力との間で推論を更に容易に引き出すことができる。
【0019】
塑性変形される高分子スキャフォールドのストラットおよびリングのパターンの変更は、クリンプされるときおよびその後にバルーンにより展開されるときのいずれにおいても、残念ながら、金属ステントの場合と同じあるいは同様の程度まで予測できない。確かに、高分子スキャフォールド製造ステップでは、代わりにパターンが金属チューブから形成された場合に何ら変更を必要としなかったパターン変更の結果として予期されない問題が生じ得ると認識される。金属ステントパターンの変更とは対照的に、高分子スキャフォールドパターンの変更は、製造ステップまたは製造後処理、例えばクリンプおよび滅菌において他の修正を必要とする場合がある。
【0020】
前述した要件を満たすことに加えて、スキャフォールドを放射線不透過性にするあるいはx線透視下で見えるようにすることが望ましい。正確な配置は、スキャフォールドの送達のリアルタイムな視覚化によって容易化される。心臓科医またはインターベンショナル・ラジオロジストは、患者の脈管構造を通じて送達カテーテルを追跡し、病変部位にスキャフォールドを正確に配置できる。これは、一般に、蛍光透視または同様のX線視覚化法によって達成される。スキャフォールドをX線透視下で見えるようにするためには、スキャフォールドが周辺組織よりも多くのX線を吸収しなければならない。スキャフォールドにおけるX線不透過性材料がその直接的な視覚化を可能にしてもよい。しかしながら、生体分解性高分子スキャフォールド(および、一般に炭素、水素、酸素、および、窒素から成る高分子)の重大な欠点は、それらが放射線不透過性を伴わない放射線透過性であるという点である。生体分解性高分子は、身体組織に類似するx線吸収性を有し易い。この問題に対処する1つの方法は、X線不透過性マーカをスキャフォールドの構造要素に取り付けることである。X線不透過性マーカは、マーカが構造要素に固定されるように構造要素内に配置することができる。しかしながら、高分子ステントにおけるステントマーカの使用は、多くの難問を伴う。1つの難問は、マーカの挿入の困難性に関連する。これらの困難性および関連する困難性は米国特許出願公開第2007/0156230明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
末梢血管を治療するためのプロテーゼであって、バルーン拡張型ステントの望ましい品質を有し、(自己拡張型ステントの場合と同様に)外向きの残留力を血管に及ぼさないと同時に、一般に冠状動脈スキャフォールドでは受けない末梢血管内で予期される他の負荷事象に加えて締め付け負荷または圧縮負荷から末梢血管内で復元できる十分な弾力性を有するプロテーゼを開発する必要がある。また、末梢血管を支持するために必要とされる最小径方向強度および剛性、小さい交差形状、および、血管内での限られた存在を少なくともプロテーゼが有することができるようにそのような高分子スキャフォールドを製造することも必要である。また、標準的な撮像技術を使用してその係留中に容易に監視されかつ歩留まりの高い製造が可能なスキャフォールドの必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、50%圧縮負荷後に高い圧縮復元可能性、例えば少なくとも約90−95%の圧縮復元可能性を含む前述したニーズに対処するのに適した高分子スキャフォールドを提供する。スキャフォールドは高分子チューブから切断されて、バルーンまでクリンプされる。したがって、本発明は、チューブから切断されて末梢血管スキャフォールドとして使用するのに適するバルーン拡張型の塑性変形スキャフォールドを提供する。このようにすると、本発明を実施することにより自己拡張型ステントの欠点を除去することができる。
【0023】
今まで、当技術分野は、末梢血管の支持および処置のために金属または合金に依存してきた。前述したように、金属ステントは埋め込まれると体内に永久にとどまるが、これは望ましくない。したがって、閉塞血管を処置した後に溶解する材料から形成されるスキャフォールドが金属ステントよりも好ましい。しかしながら、高分子は金属よりもかなり柔軟である。高分子が金属の代替物としての役目を果たす場合には、新たな設計手法が必要とされる。
【0024】
高分子スキャフォールドにおいては、大きな径方向力、小さいクリンプ形状、および、圧縮復元が必要とされる。これらのニーズを満たすように材料を改質できない場合には、ストラットのスキャフォールド網状体の設計変更が必要とされる。径方向降伏強さを高めるための幾つかの既知の手法が存在する。1つの手法は壁厚を増大させることであり、他の手法はストラット幅を増大させることである。しかしながら、これらの変更は、クリンプ状態で器具の大きな形状をもたらす。したがって、器具の小さなクリンプ形状および大きい剛性および強度は、必要であるが、これまで当技術分野において扱われていない。
【0025】
言うまでもなく、本明細書中に開示される高分子スキャフォールドの態様は、末梢血管で用いるバルーン拡張型ステントまたはスキャフォールドの適合性に関して当技術分野においてこれまでになされた結論と相反する。自己拡張ステントに関する問題は知られている。したがって、代替物が求められる。しかしながら、従来の見識は、自己拡張ステントとは対照的に、十分な径方向の強度および剛性を有するバルーン拡張ステントが、特に高い曲げ力および/または圧縮力を埋め込みプロテーゼに与える血管において適した代替物ではないというものである。
【0026】
本発明によれば、望ましい径方向の剛性および強度、破壊靱性、および、目標送達直径までクリンプされ得る能力を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、3つの競合する設計属性、すなわち、径方向強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性を適切に釣り合わせる。
【0027】
明細書中には、これらの競合する必要性を効果的に釣り合わせることができ、それにより、慢性的な外向きの力を受けるプロテーゼに代わるものを与えるスキャフォールドの実施形態が開示されている。本開示から分かるように、少なくとも以下の必要性に対処できるスキャフォールドの特徴をより良く理解するために、様々な高分子スキャフォールドの組み合わせが製造されて検査された。
所望の最小径方向剛性および強度、反跳(recoil)、展開能力、並びに、クリンプ形状を犠牲にしないスキャフォールドの圧縮復元可能性;
展開時の急激な反跳 − バルーンによる展開の30分以内の直径減少の大きさ;
送達/展開形状 − すなわち、スキャフォールドがクリンプ中に構造的完全性を維持しつつサイズを減少できる大きさ;
生体内径方向降伏強さ、および、径方向剛性;
バルーンによる拡張時およびクリンプ時、または、血管内への埋め込まれて曲げ負荷、軸方向圧縮負荷、および、径方向圧縮負荷の組み合わせに晒される時の亀裂形成/伝搬/破壊;
バルーンによる拡張時のスキャフォールドリングの展開の不均一性;および、
締め付け/圧縮剛性。
【0028】
末梢血管に埋め込まれたスキャフォールドの生体内動物試験を含んだこれらの研究に基づいて、本発明は、復元可能性を含む所望の特性を示す高分子スキャフォールドを特徴付ける以下の関係を与える。
壁厚に対する外径の比率;
ストラット幅に対する外径の比率;
締め付け剛性に対する径方向剛性の比率;
スキャフォールド直径に対する締め付け剛性の比率;
スキャフォールド直径に対する径方向剛性の比率;
ストラットまたはリンクの幅に対するその厚さの比率;
ストラット慣性モーメントに対するクリンプ前スキャフォールド直径の比率。
【0029】
前記必要性を満たすスキャフォールドの機械的特性を特徴付ける更なる関係が本開示から推測されてもよい。
【0030】
本発明の一態様によれば、圧縮復元性と良好な径方向強度および剛性を有する高分子スキャフォールドは、材料特性間および/またはスキャフォールド寸法間の以下の関係のうちの1つ以上を有する。言うまでもなく、これらの関係は、本明細書中に開示されるように、また、本開示の全体にわたって、臨床目的を達成するのに比類なく適する圧縮復元可能なスキャフォールドのために必要とされるスキャフォールドの重要な特徴を明らかにするスキャフォールド構造特性、材料、および、寸法の間のこれまで知られていない関係を含む。したがって、本発明は、血管を支持するために必要とされる所望の剛性および強度特性を有する圧縮復元可能なスキャフォールドをもたらすために、特定の関係、例えば、1つ以上の更なるスキャフォールド寸法との組み合わせで使用される無次元数、例えば膨張直径、アスペクト比、クラウン角度、壁厚の特定を含む。
【0031】
本発明の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドのリングを形成するストラットは、約0.8〜1.4のアスペクト比(AR)を有する。アスペクト比(AR)は、厚さに対する断面幅の比率として規定される。したがって、0.0116の幅および0.011の壁厚を有するストラットにおいては、ARが1.05である。
【0032】
本発明の他の態様によれば、リンクがスキャフォールドのリングを接続する。リンクのARは約0.4〜0.9であってもよい。
【0033】
本発明の他の態様によれば、リンクおよびストラットの両方のARは約0.9〜1.1または約1であってもよい。
【0034】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドがバルーンカテーテルの送達バルーンまでクリンプされる。バルーンは、クリンプ前のスキャフォールドの直径よりも小さい最大拡張直径を有する。スキャフォールドは、7〜10mm、または、より狭くは7〜8mmのクリンプ前直径を有するとともに、50%圧縮からの少なくとも80%の復元可能性を保持しつつ所望の締め付け強度を有する。
【0035】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、少なくとも0.5N/mmの所望の締め付け剛性、少なくとも0.3N/mmの径方向強度、および、少なくとも0.008”または0.008”〜0.012”の壁厚を有する。スキャフォールドは、少なくとも約30%圧縮後にその直径の少なくとも80%を復元できる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、0.008”〜0.014”、あるいは、更に狭くは0.008”〜0.011”の壁厚を有する9mmのスキャフォールド(クリンプ前直径)は、50%の圧縮復元可能性を保ちつつ所望の締め付け剛性を与える。より一般的には、壁厚に対するクリンプ前直径またはチューブ直径の比率が約30〜60または約20〜45であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。また、幾つかの実施形態では、壁厚に対する膨張直径の比率が約25〜50または約20〜35であると見出された。
【0037】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.6〜1.8N/mm2である。
【0038】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.08〜0.18N/mm3である。
【0039】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、径方向剛性に対する締め付け剛性の比率が約4〜1、3〜1、または、より狭くは約2〜1であり、壁厚に対する締め付け剛性の比率が約10〜70、または、より狭くは20〜50、あるいは、更に狭くは約25〜50であり、また、締め付け剛性に対するスキャフォールド膨張直径の比率が約15〜60、または、より狭くは約20〜40である。
【0040】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、9個または8個のクラウンを備えるリングを有する。9クラウンパターンおよび7〜9mmの外径において、クラウン角度は115°未満であり、より好ましくは、クラウン角度は105°〜95°である。8クラウンパターンおよび7〜9mmの外径においては、クラウン角度が約110°未満である。
【0041】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、約0.3N/mmよりも大きいあるいは約0.32〜0.68N/mmの径方向強度、および、約0.5N/mmよりも大きいあるいは約0.54N/mm〜1.2N/mmの径方向剛性を有する。スキャフォールドは、約0.008”〜0.014”の壁厚を有してもよく、また、6.5mm非順応性バルーンによって約2mmクリンプ形状から展開され、あるいはバルーンカテーテル上での約2mmの交差形状から約6.5mm〜7mmの直径まで展開されるように構成されてもよい。スキャフォールドストラットおよび/またはリンク要素は、1.0以上のARを有してもよい。
【0042】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その直径の50%まで締め付けられた後にその直径の80%を超えて復元し、また、締め付け状態は1〜5分間にわたって維持される。
【0043】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その直径の25%まで締め付けられた後にその直径の90%を超えて復元し、また、締め付け状態は1〜5分間にわたって維持される。
【0044】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、接続リンクの外周に配置されてスキャフォールドの隣接するリングから離間される一対のマーカを含むマーカ構造を含み、この場合、クリンプ形状はマーカを伴ってもあるいは伴わなくても同じとなるようになっている。あるいは、本発明の他の態様によれば、放射線不透過性箔がスキャフォールドのリンクの周囲に巻回されて所定位置に保持される。
【0045】
本発明の他の態様によれば、約0.008”〜0.014”の壁厚と約7mm〜10mmの外径とを有する高分子スキャフォールドが前述の必要性を満たすことができた。
【0046】
本発明の他の態様において、圧縮復元可能なスキャフォールドは、7mm、8mm、および、9mmの外径から2mmの外径までクリンプされるとともに、高分子、特にPLLAなどの脆い高分子がスキャフォールド構造を形成するために使用される際に典型的な懸案対象であるストラットの破壊および/または過度な亀裂を伴うことなく展開された。
【0047】
スキャフォールドは、それがその送達バルーンまでクリンプされる前のスキャフォールドの直径を意味するクリンプ前直径(SDPC)と、膨張直径(SD1)とを有する。スキャフォールドは、バルーンカテーテルまでクリンプされて、身体内の血管に送達されるようになっている。スキャフォールドが埋め込まれるようになっている平均血管直径はVDである。SD1はVDよりも約1.2倍大きい。開示の目的のため、VDは約5mm〜10mmの範囲をとることができ、また、SDPCは約6〜12mmの範囲をとることができる。本発明の他の態様によれば、
1.1×(VD)≦SDPC≦1.7×(VD) (式1)
1.1×(SDI)×(1.2)−1≦SDPC≦1.7×(SDI)×(1.2)−1 (式2)
である。
【0048】
式1、2を満たすスキャフォールドは、有利な径方向剛性、締め付け剛性、許容できる反跳、径方向強度および/または交差形状を有しつつ、少なくとも25%圧縮後に少なくとも90%の復元を成す圧縮復元可能なスキャフォールドをもたらすことができる。好ましい実施形態では、スキャフォールドがPLLAから形成される。式1、2における部分不等式はおおよその範囲を示そうとしている。
【0049】
本発明に係る高分子スキャフォールドは、大腿動脈、膝窩動脈、脛骨動脈、陰部動脈、上腕動脈、頸動脈、頸静脈、腹部動脈、および、静脈の状態を治療するために使用されてもよいと考えられる。
【0050】
本発明の他の態様では、スキャフォールドのための対称なクローズドセル(閉じられた升目)が、展開均一性を向上させるとともに、圧縮復元可能性を有するスキャフォールドにおける破壊問題を減少させる。
【0051】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型医用器具は、高分子チューブから形成され、
バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも33%まで圧縮された後にその直径の約90%を超えるレベルに達し、スキャフォールドは0.3N/mmよりも大きい径方向剛性を有する。
【0052】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型医用器具は、バルーンにより展開されるときに拡張直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールド(クリンプスキャフォールドともいう)を含み、スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも75%まで圧縮された後にその直径の90を超えて回復でき、スキャフォールドは、
約0.3N/mmよりも大きい径方向剛性、
クリンプスキャフォールドの直径よりも300〜400%大きいクリンプ前直径を有するクリンプ前のスキャフォールドの径方向強度、締め付け強度、締め付け剛性、および、破壊靱性、
を備える。
【0053】
本発明の他の態様において、径方向に拡張可能なステントは、PLLAチューブから形成されるバルーン拡張型スキャフォールドを含み、
スキャフォールドがストラットの径方向に拡張可能な複数の波状円筒リングを含み、ストラットの波状リングがクラウンを備え、ストラットの隣接するリングが長手方向リンクにより接続され、1つのリングがその外周にわたって9個以下のクラウンと3本のリンクとを有し、任意のクラウンの角度が115°未満であり、
スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、
スキャフォールドが少なくとも約0.008”の壁厚を有する。
【0054】
本発明の他の態様において、末梢血管に埋め込み可能な医用器具は、バルーンにより拡張されるときに直径を有するスキャフォールドを形成するクリンプスキャフォールドを含み、
スキャフォールドは、直径の少なくとも67%まで圧縮された後に直径の90%を超えて回復し、
スキャフォールドがPLLAから形成され、
スキャフォールドは、壁厚に対する直径の比率が約30〜60であり、
スキャフォールドがストラットとリンクとを有し、ストラットおよび/またはリンクは、厚さに対する幅の比率が約0.8〜1.4であり、
スキャフォールドが約0.3N/mm以上の径方向剛性を有する。
【0055】
本発明の一態様によれば、破壊靱性を高めおよび/またはスキャフォールドの送達直径を減少させるようになっているスキャフォールドのための改良されたクラウン設計が存在する。小さい形状の制限を克服しかつPLGAのPLLAなどの脆い高分子を使用して埋め込むことができる既存のスキャフォールドパターンの設計変更は、スキャフォールドのリングを形成するストラットをブリッジするクラウンの内側半径のサイズをかなり減少させることが分かった。例えば、一実施形態において、8mmのクリンプ前直径を有するスキャフォールドは非順応性バルーンまでクリンプさせることができ、その場合、クリンプ形状は約2mmである。この例では、膨張直径が約6.5mmである。
【0056】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、ストラットが互いにぶつかり始めるポイントまであるいはそれよりも下方までクリンプさせることができる。スキャフォールドは、その理論最小形状に関して規定されてもよい。本発明の一態様によれば、圧縮復元可能性を有する高分子スキャフォールドは、後にバルーンにより展開されるときにその特性に悪影響を及ぼすことなくその理論最小形状まであるいはそれよりも下方までクリンプさせることができる。本発明の一態様に係るクラウンの永久的な変形を伴うことなく理論最小形状または直径に達しあるいはそれを超えて(すなわち、この形状未満)もよい。クリンプは、高分子のガラス転移温度に近い温度で行なわれてもよい。最終クリンプ直径に達すると、クリンプされたスキャフォールドは、最小形状に保たれて、形状を設定するために数分間にわたってとどめられる。提案された考えは、一般的なステント構造から逸脱せず、クラウンの内側の最小半径を実現することによりクリンプ中のクラウンの内側での変形量を減少させるようになっている。体外試験データおよびSEM画像は、本発明の態様が実務レベルに下げられたときに亀裂の改善、すなわち、クリンプ中および拡張後の亀裂形成または伝搬が少ないことを示している。
【0057】
本発明の他の態様において、所望の送達直径までクリンプされ得る末梢血管に埋め込み可能なスキャフォールドは、スキャフォールドにおけるリング構造に作用する負荷を低減するように変えられてもよい。例えば、スキャフォールドは、末梢動脈が径方向圧縮負荷および締め付け負荷に加えて、曲げおよび/または軸方向負荷を与えるときにリングに印加される負荷を低減するようにリンク構造が変更されてもよい。変更は、リング構造ではなくリンクにおいて予め定められた破壊または亀裂伝搬を与えること、例えばスキャフォールドが血管内で過度な歪みを呈するときあるいは疲れ損失をもたらす周期的な負荷を受けるときにリング構造において亀裂が形成するのを回避するために更なるヒンジ点をリンクに導入することであってもよい。
【0058】
本開示の他の態様では、クローズドセルによって形成されるリングを有するスキャフォールドパターンが存在する。リングのそれぞれのクローズドセルは、クローズドセルの長手方向に離間されて周方向に延びるストラット部分を接続するリンク要素を共有する。これらのクローズドセルリングのそれぞれは、クローズドセルリングを接続する構造の曲げ剛性を低下させるために減少された曲げ慣性モーメント(MOI)を有する接続リンクによって互いに接続される。あるいは、接続リンクは、例えば高歪み領域の近傍に形状の急激な変化を形成することにより、予め定められた破壊点を含むことができる。
【0059】
本発明の他の態様において、前述した必要性のうちの1つ以上を満たす圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約33%まで圧縮されるときに約90%を超える圧縮復元可能性を有し、その開始直径の約33%まで圧縮されるときに約90%を超える圧縮復元可能性を有し、付随的な(例えば1分未満の)圧縮事象後にその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有し、および/または、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約25%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、長い圧縮継続時間(例えば、約1分〜5分、あるいは、約5分よりも長い時間)にわたってその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有する。
【0060】
本発明の他の態様において、圧縮復元性を有しかつバルーンまでクリンプされるときに約300〜400%の直径減少を有する高分子スキャフォールドは、0よりも実質的に大きい0付近の内側半径を形成するクラウンを有する。
【0061】
本発明の他の態様では、スキャフォールドのための対称なクローズドセルが、展開均一性を向上させるとともに、圧縮復元可能性を有するスキャフォールドにおける破壊問題を減らす。
【0062】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込み可能な医用器具は、高分子チューブから形成され、
バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも約75%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する。
【0063】
本発明の他の態様によれば、身体の末梢血管内に埋め込まれるための医用器具は、高分子チューブから形成されて、
バルーンまでクリンプされるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素の網状体を有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張状態に拡張されるときに拡張直径を有し、スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達し、クリンプされたスキャフォールドは、クリンプされたスキャフォールドにおける理論最小直径にほぼ等しいあるいはそれを下回るクリンプ直径を有する。
【0064】
本発明の他の態様によれば、医用器具は、バルーンまでクリンプされるとともに、バルーンにより拡張されるときに拡張直径を有する高分子スキャフォールドを備え、クリンプされた前記スキャフォールドは、2つの直交軸周りに対称な複数のクローズドセルを含む相互接続要素のパターンを有し、スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えて回復できる。
【0065】
本発明の他の態様によれば、末梢動脈に埋め込むための医用器具を形成する方法は、円筒状の高分子チューブを径方向に拡張するステップと、約0インチの内側半径を有するクラウンを形成することを含むチューブからスキャフォールドを形成するステップと、スキャフォールドをバルーンカテーテルまでクリンプするステップとを含む。
【0066】
この明細書中で言及される全ての刊行物および特許出願は、参照することにより、あたかもそれぞれの個々の刊行物または特許出願が参照することにより組み入れられるように具体的にかつ個別に示されたかのように、また、あたかもそれぞれの前記個々の刊行物または特許出願が任意の図を含めて十分に説明されたかのように同じ程度まで本願に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】変形された高分子チューブの斜視図である。チューブはスキャフォールドに形成される。
【図2】スキャフォールドの第1の実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図3】スキャフォールド構造の部分斜視図である。
【図4】スキャフォールドの第2の実施形態に係るスキャフォールドパターン部分平面図である。
【図5A】図4の断面VA−VAでとられたスキャフォールドパターンの一部の平面図である。
【図5B】図2の断面VB−VBでとられたスキャフォールドパターンの一部の平面図である。
【図6A】本開示の態様に係るスキャフォールド特徴の例を示す表である。
【図6B】本開示の態様に係るスキャフォールド特徴の例を示す表である。
【図7A】拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7B】拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7C】第1の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7D】第1の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示
【図7E】別の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示している。
【図7F】別の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示している。
【図8A】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8B】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8C】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8D】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8F】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8G】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図9A】リングを接続するリンクに形成される放射線不透過性マーカ構造を含むスキャフォールドの第1の実施形態を示している。拡張形状を示している。
【図9B】リングを接続するリンクに形成される放射線不透過性マーカ構造を含むスキャフォールドの第1の実施形態を示している。クリンプ形状におけるスキャフォールドリングの折り畳まれたストラットに対する放射線不透過性マーカの位置を示している。
【図10A】リングを接続するリンク上に配置される放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態を示している。拡張形状を示している。
【図10B】リングを接続するリンク上に配置される放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態を示している。クリンプ形状におけるスキャフォールドリングの折り畳まれたストラットに対する放射線不透過性マーカの位置を示している。
【図11A】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11B】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11C】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。マーカ材料のストリップにおける場所を描いている。
【図11D】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。マーカ材料のストリップにおける場所を描いている。
【図11E】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11F】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。この例では、端部リングでクラウンを補強するために使用される材料によって放射線不透過性が与えられる。したがって、本実施形態は、端部リングで視認性を高める一方で、端部リングの補強も行なう。
【図12A】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドのその非変形(無負荷)状態および締め付け負荷に晒されるときの変形状態(仮想線で描かれる)の断面を示している。
【図12B】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドが締め付け負荷に晒されるときの圧縮復元可能性に対する壁厚の影響を示すための異なる厚さの等価な半円筒シェルのモデルである。
【図12C】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドが締め付け負荷に晒されるときの圧縮復元可能性に対する壁厚の影響を示すための異なる厚さの等価な半円筒シェルのモデルである。
【図13】50%圧縮後のスキャフォールドにおける圧縮復元性を示すプロットである。プロットは、短い時間、1分、および、5分にわたる50%での圧縮後に24時間にわたって復元されるパーセンテージを示している。
【図14A】リングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第1の実施形態を含むスキャフォールドの代わりの実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図14B】リングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第1の実施形態を含むスキャフォールドの代わりの実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図14C】スキャフォールドのリングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第2の実施形態である。
【図14D】リングを接続するリンクの脆弱部分の代わりの実施形態を示している。非対称な脆弱リンク部分を示している。
【図14E】リンクのための破壊点をボイドに形成するためにボイドがリンクに形成されるリンク構造の一例を示している。
【図14F】リングを接続するリンクの脆弱部分の代わりの実施形態を示している。対称な脆弱リンク部分を示している。
【図15】リング構造がクラウン間で延びる湾曲ストラットを有するスキャフォールドにおける代わりのリング構造に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図16】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図17】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図18】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図19】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図20】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図21】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図22】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図23】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図24】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【図25】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【図26】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
開示を以下のように進める。最初に、後の開示の過程にわたって使用されてもよい用語の規定について説明する。まず、変形された高分子チューブを前駆体から形成するためのプロセスの実施形態についてである。開示によれば、圧縮復元可能なバルーン拡張型スキャフォールドは、破壊靱性を含むスキャフォールドの機械的特性を高めるようになっているプロセスにより形成されるチューブ(図1)から切断される。次に、幾つかの実施形態に係るスキャフォールドパターンについて述べる。スキャフォールドパターンの例に関し、その説明において、高分子スキャフォールドの剛性、強度、クリンプ、および、展開において重要な役割を果たすと考えられるスキャフォールドの態様、および、それらが耐力高分子構造の圧縮復元可能性に関連する他の特性について言及する。本明細書中には、特に同様のストラットパターンを有する同等の末梢血管金属ステントの態様と比較すると正反対の、ある場合には、驚くべき予期しないスキャフォールドの態様が含まれる。最後に、本発明の実施形態の典型例および観察結果の説明並びに克服課題を含めて、体外試験結果および生体内試験結果について説明する。これらの例では、本発明の態様の更なる認識、すなわち、所望の径方向の強度特性および剛性特性を有しかつバルーンカテーテルを介した血管を通じた送達に適する直径までクリンプされ得る圧縮復元可能なバルーン拡張型高分子スキャフォールドを得ることができる。
【0069】
この開示の目的のため、以下の用語および定義が適用される。
【0070】
「膨張直径(inflated diameter)」または「拡張直径(expanded diameter)」とは、スキャフォールドを血管内に埋め込むためにスキャフォールドの支持バルーンが膨張されてスキャフォールドがそのクリンプ形態から拡張されるときにスキャフォールドが達成する最大直径のことである。膨張直径とは、公称バルーン直径を超える拡張後直径のことであってもよい。例えば、6.5mm半順応PEBAXバルーンは約7.4mmの拡張後直径を有する。スキャフォールド直径は、バルーン圧力によってその膨張直径を達成した後、バルーンが除去された後に血管の壁によって与えられる反跳効果および/または圧縮力に起因して、ある程度まで直径が減少する。例えば、表6Bの特性を有するV59スキャフォールドの拡張に言及すると、6.5mmPEBAXバルーン上に配置されて該バルーンが血管外で拡張後状態まで拡張されると、スキャフォールド内径は、急激な反跳が生じる前後でそれぞれ約7.4mmおよび約(1−0.955)×(7.4mm)となる。この開示の目的のため、膨張直径は平均血管直径の約1.2倍になる場合があり、また、末梢血管サイズは一般に約4〜10mmの範囲である。
【0071】
「理論最小直径(theoretical minimum diameter)」は、ストラットのその形状、長さ、厚さ、および、幅に基づくスキャフォールドにおける最小直径を意味する。「理論最小直径」は、バルーン拡張型プロテーゼのように後に展開させることができかつ適切に機能できるスキャフォールドまたはステントにおける最小クリンプ形状に関して規定されない。むしろ、それは、直径の均一な減少後に器具が占め得る空間の形状または最小容積により規定される定義にすぎない。式として、「理論最小直径」(Dmin)は以下のように表わすことができる。
Dmin=(ΣSwi+ΣCrj+ΣLwk)×(π)−1+2×WT (式3)
ここで、上記の量はスキャフォールドの断面スライスから取得される。
ΣSwi(i=1...n)は、幅Swiを有するn個のリングストラットの総和である。
ΣCrj(j=1...m)は、半径Crjを有するm個のクラウン内側半径(×2)の総和である。
ΣLwk(k=1...p)は、幅Lwkを有するp個のリンクの総和である。
WTはスキャフォールドの壁厚である。
【0072】
式3は、折り畳まれたストラット対、例えば図22Bのストラット420、422における幅がクラウン410の近傍で測定されようがストラット中間幅であろうが同じであると仮定する。クラウンがより多く形成され、それにより、そこで幅がリングストラット中間幅よりも大きくなると、Swiがクラウンでの幅によって測定される。また、ストラット間の最小空間は、隣接するクラウン(または谷部)の内径の2倍、すなわち、Crjによって規定される。
【0073】
図21のスキャフォールド寸法において、クラウン幅はストラット中間幅よりも大きい。したがって、式3を用いると、Dminは、[16×(0.013)+12×(0.0005)+4×(0.0115)]×(π)−1+2×(0.011)=0.1048”(インチ)すなわち2.662mm(クラウンを通る断面で計算される最小直径)となる。代わりに断面がストラット中間幅(0.013ではなく0.0116)でとられた場合には、式3が0.0976”すなわち2.479mmを与える。
【0074】
なお、式3は、ストラットがほぼ正方形の断面を有することを前提とする。これは、図21のスキャフォールドにおける場合である(クラウンでのストラット断面寸法が0.011×0.013)。台形断面を伴うストラットを有するスキャフォールド、例えば、外径に対する壁厚の比率が図1の場合よりもかなり高くなるように小さい直径から切断されるスキャフォールドにおいて、Dminにおける更に正確な近似値は(ΣSwi+ΣCrj+ΣLwk)×(π)−1となる。これは、ストラットの厚さを越えて延びる表面が互いに当接する前に外面におけるストラットの縁同士がDminで当接するからである。
【0075】
ガラス転移温度(以下、「Tg」と称する)は、高分子のアモルファス領域が大気圧で脆弱なガラス質状態から固体変形可能状態または延性状態に変化する温度である。すなわち、Tgは、高分子の鎖で部分運動が始まる温度である。所定の高分子のTgは、加熱速度に依存し得るものであり、高分子の熱履歴によって影響され得る。また、高分子の化学的構造は、高分子鎖の移動性に影響を与えることにより、ガラス転移に大きく影響を及ぼす。
【0076】
「応力」とは、対象材料中の面内の小領域を通じて作用する力の場合のように単位面積当たりの力のことである。応力は、それぞれ垂直応力および剪断応力と呼ばれる、面に対して垂直および平行な成分に分けることができる。引張応力は、例えば、対象材料の拡張をもたらす(長さを増大させる)応力の垂直成分である。また、圧縮応力は、対象材料の圧縮をもたらす(長さを減少させる)応力の垂直成分である。
【0077】
「歪み」は、所定の応力または負荷で材料に生じる拡張または圧縮の大きさのことである。歪みは、当初の長さの割合またはパーセンテージとして、すなわち、長さの変化を当初の長さで割った値として表わされてもよい。したがって、歪みは、拡張の場合にはプラスであり、圧縮の場合にはマイナスである。
【0078】
「弾性率」は、材料に印加される単位面積当たりの応力または力の成分を、印加力によってもたらされる印加力の軸に沿う歪みで割った比率として規定されてもよい。例えば、材料は、引張弾性率および圧縮弾性率の両方を有する。
【0079】
「靱性」または「破壊靱性」は、破壊前に吸収されるエネルギーの量、あるいは、同等に、材料を破壊するために必要とされる仕事量である。靱性の1つの指標は、ゼロ歪みから破断時の歪みまでの応力−歪み曲線下の面積である。応力は材料に作用する引張力に比例し、また、歪みはその長さに比例する。その結果、曲線下の面積は、高分子が破壊する前に伸長する距離にわたる力の積分に比例する。この積分はサンプルを破壊するために必要な仕事(エネルギー)である。靭性は、サンプルがその破壊前に吸収できるエネルギーの指標である。靭性と強度との間には違いがある。強いが頑丈ではない材料は脆弱であると言われる。脆性材料は強いが、破壊前にあまり変形することができない。
【0080】
本明細書中で使用される用語「軸方向」および「長手方向」は、置き換え可能に使用され、ステントの中心軸または管状構造の中心軸と平行なあるいは略平行な方向、配向、または、ラインを指す。用語「周方向」とは、ステントまたは管状構造の外周に沿う方向のことである。用語「径方向」とは、ステントの中心軸または管状構造の中心軸に対して垂直または略垂直でかつ周方向の特性、すなわち、径方向強度を表わすために時として使用される方向、配向、または、ラインのことである。
【0081】
用語「圧縮復元(crush recovery)」は、スキャフォールドが締め付け負荷または圧縮負荷からどのように復元するかを表わすために使用され、一方、用語「圧縮抵抗(crush resistance)」は、スキャフォールドの永久変形を引き起こすために必要とされる力を表わすために使用される。良好な圧縮復元性を有さないスキャフォールドまたはステントは、圧縮力の除去後にその当初の直径まで実質的に戻らない。前述したように、所望の径方向力を有するスキャフォールドまたはステントは、許容できない圧縮復元を有し得る。また、所望の圧縮復元を有するスキャフォールドまたはステントは、許容できない径方向力を有し得る。
【0082】
図2に示される高分子スキャフォールドはポリ(L−ラクチド)(「PLLA」)チューブから形成される。このPLLAチューブを形成するためのプロセスは、米国特許出願第12/558,105号明細書(整理番号62571.382)に記載されるプロセスであってもよい。以下に記載されるように所望のスキャフォールド直径、厚さ、および、材料特性を有する図1のチューブを形成するために「変形される」前駆体について言及する。スキャフォールドのための開始チューブにおいて所望の特性をもたらすためにチューブが変形される前、あるいは、幾つかの例では拡張される前に、前駆体が形成される。前駆体は、その後にダイを通じて押し出される高分子の溶融温度を超えて加熱される未加工PLLA樹脂材料で始まる押出プロセスによって形成されてもよい。その後、一例では、拡張されたPLLAチューブを形成するための拡張プロセスは、PLLAガラス転移温度(すなわち、60〜70℃)を超えるが溶融温度(165〜175℃)を下回る温度、例えば約110〜120℃までPLLA前駆体を加熱することを含む。
【0083】
前駆体チューブはブロー成形プロセスによって径方向および軸方向に変形される。この場合、変形はチューブの長手方向軸に沿って所定の長手方向速度で徐々に生じる。後述するように、変形は、チューブが図2のスキャフォールドに形成される前にチューブの機械的特性を改善する。チューブ変形プロセスは、高分子鎖を径方向および/または二軸方向に配向するようになっている。再アライメントを引き起こす配向または変形は、変形プロセス中に材料結晶化度および結晶形成のタイプに影響を与えるべく、処理パラメータ、例えば圧力、熱(すなわち、温度)、変形速度の正確な選択にしたがって行なわれる。
【0084】
別の例において、チューブは、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLGA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、これらの単量体のいずれかを組み合わせる任意の半結晶共重合体、または、これらの高分子の任意の混合物から形成されてもよい。スキャフォールドのための材料選択は、多くの末梢血管場所、特に手足付近に配置される末梢血管場所と関連付けられる複雑な負荷環境を考慮に入れるべきである。
【0085】
大腿動脈は、様々な力が器具を同時に圧縮し、ねじり、伸長させ、あるいは、短くするため、脈管インプラントに対して動的な環境を与える。力の印加は、点荷重と分布荷重との間で、または、その組み合わせで、あるいは、時間に応じても変化する場合がある。最近の結果は、高結晶質PLLAから形成される生体吸収性のスキャフォールドが、血管に作用する永久的で一定の外向きの径方向力をもたらすことなく圧縮復元を行なうことができることを示した。永久的で一定の外向きの径方向力は、ニチノールの自己拡張型ステントに伴う後期臨床問題の原因となる場合がある。しかしながら、生体吸収性のスキャフォールドに伴う残りの課題は、それらのスキャフォールドを時間に応じて最適に破壊耐性にすること、すなわち、様々な動的負荷環境下でスキャフォールドの疲労寿命または生存性を改善することである。スキャフォールド、特に末梢血管に埋め込まれるスキャフォールドにおいては、破壊靱性を向上させる必要性が引き続いてある。
【0086】
脈管スキャフォールドの破壊抵抗は、形状および材料に依存するだけでなく、製造プロセスおよび展開パラメータにも依存する。したがって、特に、スキャフォールドを均一に拡張させて展開させることができるようにするプロセス、設計、および、送達システムを有する必要がある。不均一な展開の結果として、場合により、スキャフォールドの様々なストラットおよびクラウンが非常に異なる力および動きに晒され、それにより、疲労寿命に悪影響が及ぶ。
【0087】
材料の破壊靭性を特徴付けるのに役立つ有用な無次元数はデボラ数(固有材料減衰時定数と外部印加力の時定数との比)と呼ばれる。デボラ数が高いほど、過渡的な負荷または所定の振幅の疲労負荷の下で破壊するインプラントの予期される可能性が高くなる。
【0088】
幾つかの方法で、すなわち、a)低いTgブロック、例えばブロック共重合体を含むためのバックボーン変更、b)ポリマーブレンド、c)光架橋をバックボーンへ導入することによって、強靱化領域をインプラント設計に導入することができる。
【0089】
PLLAなどのホモポリマーの破壊靱性は、最終的なインプラントの微細構造を制御することによって改善することもできる。%結晶化度、サイズ、および/または、結晶の分布、空間分布、および、結晶領域の勾配や形状などの変数。巨視的形状との組み合わせにおける微細構造制御の組み合わせ、例えば、スキャフォールドパターン、クリンププロセス等は、他のスキャフォールド材料特性、例えば径方向剛性および/または締め付け剛性に大きな悪影響を及ぼすことなく、破壊靭性を向上させる場合がある。
【0090】
エラストマー特性を与えることに代わる手段は、「軟質」層および「硬質」層を有する多層構造の使用である。この場合、1つ以上の軟質層が高Tg材料から形成され、硬質層が高Tg材料を有する。同様の方法で、高低Tg領域は、ブロック共重合体または高分子混合物の使用によって典型的なゴム強靱化形態をもたらすことができる。所定の領域/ブロックのTgを所定のモノマーカらあるいはランダム共重合体のいくつかのモノマーの使用によってもたらすことができる。典型的な低Tg材料は、本開示にしたがって、カプロラクトン、ラクトン誘導体、炭酸塩、ブチルコハク酸エステル、炭酸トリメチレン、ジオキサノン、または、他の既知のモノマーカら形成することができる。使用され得る他の低Tg材料は、分解ではなく溶解によって腎臓をきれいにする材料である。そのような材料としては、本開示にしたがって、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、または、ポリビニルアルコール(PVA)、または、他の既知の高分子を挙げることができる。
【0091】
疲労特性を向上させる代わりの方法は、軸方向柔軟性の導入、および、特にコネクタリンクにおける予め定められた破壊点の使用である。破壊点は、実際の破壊、例えばひび割れや亀裂またはインプラントにおいて分布される小寸法の破壊の前駆体として機能し得る。亀裂またはひび割れの分布またはパターンは、特定の負荷、例えばねじれ、径方向力、引張りなどに晒されるときにスキャフォールドの予期される靱性のうちの1つを決定付けるあるいは知らせる場合がある。言うまでもないが、亀裂形成と結合した負荷環境との間の一般的に非常に非線形な関係に起因して、すなわち、同時に印加されて時間的に変化する曲げ、ねじれ、および、軸方向負荷に起因して、そのような予測方法を全ての状況に適用できない場合がある。
【0092】
疲れ特性を向上させる代わりの方法は、以下で更に詳しく説明するように、軸方向柔軟性の導入、および、予め定められた破壊点、特にコネクタリンクまたはその近傍における破壊点の使用である。
【0093】
約7mmの直径および約200ミクロンの壁厚、より具体的には8mmの直径および280ミクロンの壁厚を有する図1のチューブにおいては、拡張温度が華氏235±5°であり、拡張圧が110±10psiであり、拡張速度が0.68±0.20mm/秒である。
【0094】
高分子チューブが受ける径方向拡張の度合いは、引き起こされる周方向の分子配向および結晶配向の度合い、および、周方向の強度を部分的に特徴付けることができる。径方向拡張の度合いは、RE比=(拡張されたチューブの内径)/(チューブの当初の内径)として規定される径方向拡張(「RE」)比によって定量化される。また、RE比は、RE%=(RE比−1)×100%として規定されるパーセンテージとして表わすこともできる。高分子チューブが受ける軸方向伸長の度合いは、引き起こされる軸方向の分子配向および結晶配向、および、軸方向の強度を部分的に特徴付けることができる。軸方向伸長の度合いは、AE比=(拡張されたチューブの長さ)/(チューブの当初の長さ)として規定される軸方向伸長(「AE」)比によって定量化される。また、AE比は、AE%=(AE比−1)×100%として規定されるパーセンテージとして表わすこともできる。好ましい実施形態では、REが約400%であり、AEが40〜50%である。
【0095】
図1の補強されて強化された円筒状の高分子チューブは、スキャフォールド構造に形成され、一実施形態では、図2に示されるようなパターン200(パターン200は平面図または扁平な図で示される)を形成する複数のストラット230およびリンク234を有する構造に形成され、パターンは、クリンプ前、および、バルーン拡張によって血管内でスキャフォールドがそのクリンプ状態からその展開状態に塑性変形または不可逆変形された後のスキャフォールドにおけるパターンに関する。つまり、図2のパターン200は(図3に三次元空間で部分的に示されるように)管状スキャフォールド構造を表わしており、そのため、軸A−Aがスキャフォールドの中心軸または長手方向軸と平行である。図3は、クリンプ前または展開後の状態のスキャフォールドを示している。図3から分かるように、スキャフォールドは、略管状体を形成するストラットおよびリンクの開放骨格を備える。図1の円筒状の変形チューブは、レーザ切断装置により、好ましくは切断中に冷却剤としてヘリウムガスを使用するピコ秒緑色レーザにより、図2〜図3に描かれるストラットおよびリンクから成るこの開放骨格へ形成されてもよい。
【0096】
適したレーザプロセスの詳細は、米国出願第12/797、950号明細書(整理番号62571.404)において見出すことができる。ヘリウムガスは、レーザの切断経路に隣接するスキャフォールド構造を溶かすあるいは該スキャフォールド構造の特性を変えるのを回避するために必要である。典型的なレーザ加工パラメータが表1に与えられる。
【0097】
表1:約0.008”〜0.014”の壁厚を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドに関するレーザ加工パラメータ
【表1】
【0098】
図2を参照すると、パターン200は、ストラット230によって形成される長手方向に離間されるリング212を含む。リング212は幾つかのリンク234によって隣接するリングに接続され、それぞれのリンクは軸A−Aと平行に延びる。スキャフォールドパターン(パターン200)のこの第1の実施形態では、4つのリンク234が、図2ではその左右にリングを有するリングを示す内部リング212を、2つの隣接するリングのそれぞれに対して接続する。したがって、リング212bは、4つのリンク234によってリング212cに接続されるとともに、4つのリンク234によってリング212aに接続される。リング212dは、図2の左にあるリングのみに接続される端部リングである。
【0099】
リング212は、クラウン207、209、210で接続されるストラット230によって形成される。リンク234は、クラウン209(W−クラウン)およびクラウン210(Y−クラウン)でストラット230と接合される。クラウン207(自由−クラウン)にはリンク234が接続されない。ストラット230は、クラウン中心から一定の角度を成してクラウン207、209、210から延びることが好ましい。すなわち、リング212は、正弦波曲線のパターン200とは対照的に、形状がほぼジグザグである。しかしながら、他の実施形態では、湾曲状のストラットを有するリングが考えられる。このように、この実施形態では、隣接するクラウン207、209/210間の長手方向距離であるリング212の高さは、クラウンで接続する2つのストラット230の長さと、クラウン角度θとから得ることができる。幾つかの実施形態では、リンク234が自由または非接続クラウン、W−クラウン、または、Y−クラウンに接続されるかどうかに応じて、異なるクラウンでの角度θが異なる。
【0100】
リング212のジグザグ変化は、主に、スキャフォールドの外周にわたって(すなわち、図2のB−B方向に沿って)生じる。ストラット212の中心軸は、主に、スキャフォールドの長手方向軸からほぼ同じ径方向距離に位置する。理想的には、リングを形成するストラット間でのほぼ全ての相対的な動きは、クリンプ中および展開中において、径方向ではなく軸方向で生じる。以下で更に詳しく説明するが、高分子スキャフォールドは、多くの場合、位置ずれおよび/または不均一な径方向負荷が加えられることに起因して、この様式で変形しない。
【0101】
リング212は、クリンプ中に小さい直径まで潰すことができ、また、血管内での展開中に大きい直径まで拡張させることができる。開示の一態様によれば、クリンプ前直径(例えば、軸方向および径方向に拡張されたチューブの直径であり、該チューブからスキャフォールドが切断される)は、常に、送達バルーンが膨張時にもたらすことができる最大拡張スキャフォールド直径よりも大きい。一実施形態によれば、クリンプ前直径は、送達バルーンが過度に膨張され、あるいはバルーン−カテーテルのためのその最大使用直径を超えて膨張されるときであっても、スキャフォールド拡張直径よりも大きい。
【0102】
パターン200は、リンク237によって形成される一対の横方向に離間される穴のそれぞれで放射線不透過性材料を受けるように形成される構造を有する4つのリンク237(それぞれの端部に2つ、図2には一方の端部だけが示される)を含む。これらのリンクは、クリンプ中にストラットをリンク上に折り重ねるのを妨げないように構成される。これは、以下で更に詳しく説明するように、最大でほぼDminの直径までスキャフォールドをクリンプできるようにするために、あるいは、スキャフォールドがクリンプ時に放射線不透過性マーカ保持構造のために利用できる空間を実質的に有さないようにするために必要である。
【0103】
スキャフォールド構造の第2の実施形態は、図4に示されるパターン300を有する。パターン200と同様に、パターン300は、ストラット330によって形成される長手方向に離間されるリング312を含む。リング312は幾つかのリンク334によって隣接するリングに接続され、各リンクは軸A−Aと平行に延びる。図2に関連するリング212、ストラット230、リンク234、および、クラウン207、209、210と関連付けられる構造の先の説明は、第2の実施形態では4つではなく3つのストラット334だけがそれぞれ隣り合うリングの対を接続することを除き、第2の実施形態の対応するリング312、ストラット330、リンク334、および、クラウン307、309、310にも適用される。したがって、第2の実施形態において、リング312bは、3つのリンク234だけによってリング312cに接続されるとともに、3つのリンク334だけによってリング312aに接続される。リンク237と同様の放射線不透過性マーカを受けるように形成されるリンクは、リング312cとリング312dとの間に含まれてもよい。
【0104】
図5Aおよび図5Bは、各パターン300、200と関連付けられるクローズドセル要素の繰り返しパターンの態様をそれぞれ描いている。図5Aは、仮想ボックスVAによって境界付けられるパターン300の一部を示し、また、図5Bは、仮想ボックスVBによって境界付けられるパターン200の一部を示す。これらの図にはセル304およびセル204がそれぞれ示される。図5A、5Bでは、垂直基準軸が軸B−Bおよび長手方向軸A−Aによって示される。パターン200では、リング212のそれぞれの対によって4つのセル204が形成される。例えば、4つのセル204は、リング212b、212cと、このリング対同士を接続するリンク234とによって形成され、他の4つのセル204は、リング212a、212bと、このリング対同士を接続するリンクとによって形成され、その他も同様である。一方、パターン300では、3つのセル304がリング対とそれらの接続リンクとによって形成される。
【0105】
図5Aを参照すると、セル304の空間336、336aは、図示の長手方向に離間されるリング312b、312c部分と、リング312b、312cを接続する周方向に離間される平行なリンク334a、334cとによって境界付けられる。リンク334b、334dは、セル304を図3の左右に隣接するリングにそれぞれ接続する。リンク334bはW−クラウン309でセル304に接続する。リンク334dはY−クラウン310でセル304に接続する。「W−クラウン」とは、ストラット330とリンク336との間で延びるクラウン310の角度が鈍角(90°よりも大きい)であるクラウンのことである。「Y−クラウン」とは、ストラット330とリンク336との間で延びるクラウン309の角度が鋭角(90°よりも小さい)であるクラウンのことである。Y−クラウンおよびW−クラウンに関する同じ定義がセル204にも適用される。セル304においては8個の接続または自由クラウン307が存在し、これらのクラウンは、クラウンで接続されるリンク334を欠く8個のクラウンとして理解されてもよい。セル304においては、Y−クラウンとW−クラウンとの間に1つあるいは3つの自由クラウンが存在する。
【0106】
図5Aのセル304の更なる態様は、それぞれのクラウン307、309、310における角度を含む。一般的には互いに等しくないこれらの角度(例えば、パターン300を有するスキャフォールドの「V2」および「V23」実施形態に関しては図21を参照)は、図5Aでは、それぞれがクラウン307、309、310と関連付けられる角度366、367、368として特定される。パターン300を有するスキャフォールドにおいては、ストラット330がストラット幅361とストラット長さ364とを有し、クラウン307、309、310がクラウン幅362を有し、また、リンク334がリンク幅363を有する。それぞれのリング312はリング高さ365を有する。クラウンにおける半径は一般に互いに等しくない。クラウンの半径は、図5Aでは、半径369、370、371、372、373、374として特定される。
【0107】
セル304はW−Vクローズドセル要素として考えられてもよい。図6Aでは、「V」部分が文字「V」に似ている斜線領域336aを示す。残りの斜線が付されていない部分336、すなわち、「W」部分は、文字「W」に似ている。
【0108】
図5Bを参照すると、セル204の空間236は、図示のように長手方向に離間されるリング212b、212cの部分と、これらのリングを接続する周方向に離間される平行なリンク234a、234cとによって境界付けられる。リンク234b、234dは、セル204を図2の左右に隣接するリングにそれぞれ接続する。リンク234bはW−クラウン209でセル236に接続する。リンク234dはY−クラウン210でセル236に接続する。セル204においては4つのクラウン207が存在し、これらのクラウンは、クラウンで接続されるリンク234を欠く4つクラウンとして理解されてもよい。セル204においては、それぞれのY−クラウンとW−クラウンとの間に1つの自由クラウンだけが存在する。
【0109】
図5Bのセル204の更なる態様は、それぞれのクラウン207、209、210における角度を含む。一般的には互いに等しくないこれらの角度(例えば、パターン200を有するスキャフォールドの「V59」実施形態に関しては図6Bを参照)は、図5Bでは、それぞれがクラウン207、209、210と関連付けられる角度267、269、268として特定される。パターン200を有するスキャフォールドにおいては、ストラット230がストラット幅261とストラット長さ266とを有し、クラウン207、209、210がクラウン幅270を有し、また、リンク234がリンク幅261を有する。それぞれのリング212はリング高さ265を有する。クラウンにおける半径は一般に互いに等しくない。クラウンの半径は、図5Aでは、内側半径262および外側半径263として特定される。
【0110】
セル204はW−クローズドセル要素として考えられてもよい。セル204によって境界付けられる空間236は文字「W」に似ている。
【0111】
図5Aと図5Bとを比較すると、Wセル204が軸B−B、A−Aに関して対称であり、一方、W−Vセル304がこれらの軸の両方に関して非対称であるのが分かる。Wセル204は、リンク234間に1つのクラウン207しか有さないことを特徴とする。したがって、Y−クラウンまたはW−クラウンは、常に、パターン200のそれぞれのクローズドセルごとに、各クラウン207間にある。この意味では、パターン200は、それぞれがリンク234によって支持されないクラウンを1つしか有さないクローズドセルパターンを繰り返していると理解されてもよい。一方、W−Vセル304は、W−クラウンとY−クラウンとの間に3つの支持されないクラウン307を有する。図5Aから分かるように、リンク334dの左側に3つの支持されていないクラウン307が存在し、また、リンク334bの右側に3つの支持されていないクラウン307が存在する。
【0112】
パターン200を有するスキャフォールドの機械的挙動とパターン300を有するスキャフォールドの機械的挙動とは以下の点が異なる。これらの違いは、後述する他の違いと共に、生体内試験を含む図6A〜図6Bのスキャフォールド間の比較において観察された。ある点において、これらの試験は、例えば従来の見識が従来の金属ステントまたは冠状動脈スキャフォールドによりもたらされるときに、予期されずかつ従来の見識に反した本発明に係るスキャフォールドの機械的態様を実証した。したがって、特定の設計選択においては、臨床、製品歩留まり、および/または、送達プロファイルの要件によって決定されようとなかろうと、以下の特徴が留意されなければならない。
【0113】
一般に、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、望ましい径方向の剛性、強度、および、破壊靱性を有し、目標送達直径まで、例えば少なくとも約Dminに至るまでクリンプされ得るとともに、強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性の3つの競合する設計属性を釣り合わせる。
【0114】
生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさとは、送達直径に至るまでスキャフォールドをクリンプできる能力のことである。W−セル204を形成するようにクラウンを接続するリングストラット230は、反管腔側の面に接する軸(軸A−A)を中心とする回転が更に抑制さえる。W−VセルのV部分の場合、クラウンは、接続リンク336の数の減少に起因して、特定の形状下で軸A−Aを中心にねじれ易い場合がある。実際には、リング部分が「反転する」可能性があり、それにより、回転し、あるいは、座屈の結果として面外に撓む(「面外」とは、スキャフォールドの弓形の円筒状の面の外側の撓みのことであることに留意されたい。図5Aを参照すると、「面外」は、この図の表面に対して垂直にストラットが撓むことを意味する)。図5Bの場合のようにクラウンまたは谷部のそれぞれにリンク234が存在する場合には、クラウンが座屈しあるいは反転する任意の傾向が減少される。これは、リングストラットがリンク236によって更に抑制されるからである。本質的に、リンクは、リングにわたる負荷をより均一に釣り合わせる役目を果たす。
【0115】
米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に更に詳しく記載されて図示されるように、パターン300にしたって構成されるスキャフォールドにおける「反転(flipping)」現象はクリンプ中に観察された。W−Vセル304は、隣接するクラウンまたは谷部の過度のねじれを抑制するために、クラウン307で隣接リンク334を欠いている。本質的に、リンク334間に2つのクラウン307が存在する場合、リングのV部分の反転または座屈を防止する拘束は、個々のリングストラット330の座屈強度、すなわち、ねじれにおける高分子ストラットの強度および剛性に依存する。しかしながら、1つのリンク234がそれぞれの隣接するクラウン/谷部に接続される場合(図5B)には、接続されるリンク234によって加えられる曲げ剛性に起因して、クラウン207での面外撓みが更に抑制され、それにより、隣接するクラウン207でのねじれが抑制される。
【0116】
それに対応して、パターン200にしたがったスキャフォールドは、同様に構成されるパターン300にしたがったスキャフォールドよりも剛性が高い。パターン200にしたがったスキャフォールドは、軸方向および長手方向の両方の曲げにおいて剛性が高い。これは、より多くのリンク236が使用されるからである。しかしながら、高い剛性が望ましくない場合がある。剛性が高くなると、剛性のより低いスキャフォールドにわたって大きな亀裂が形成される可能性がある。例えば、更なるリンクによって付加される剛性は、特にスキャフォールドが曲げ(リングが互いに対して移動する)と径方向圧縮および/または締め付け(圧縮)との組み合わせに晒される場合には、更なるリンク234により互いに接続されるリングに対して更に大きな応力をもたらす可能性がある。リンク234の存在は、リングの剛性を更に大きくすることに加えて、更なる負荷経路をリングにもたらす。
【0117】
生体内条件は、パターン200にしたがったスキャフォールドに有利に働く可能性があるが、パターン300にしたがったスキャフォールドは、送達直径に至るまで更に容易にクリンプされ得る。また、他のファクタもスキャフォールドをクリンプできる能力に影響を及ぼす。本開示によれば、クリンプ前のスキャフォールドにおける約115°未満のクラウン角度は、(1つのケースでは6.5mmの膨張直径に対して)更に高いクラウン角度を有するスキャフォールドよりもあまり破壊の問題や関連する展開の問題(例えば、リングストラットの不均一な折り畳み/拡開)を引き起こし得ないことが分かった。スキャフォールドは、約7.4mmまで膨張され得るバルーンまでクリンプされる。したがって、バルーンが過度に膨張されると、スキャフォールドが最大で約7mmの膨張直径を達成する。本開示に係るバルーンカテーテル−スキャフォールドアセンブリにおいて、バルーンにおける最大膨張直径はクリンプ前のスキャフォールド直径以下である。前述したように、スキャフォールドにおける最大膨張直径はクリンプ前のスキャフォールド直径よりも小さいことが好ましい。
【0118】
望ましいクリンプ形状を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドを設計する過程中に、8mm直径でスキャフォールドを形成する際には、2つの理由により、スキャフォールドを所望のクリンプ形状にクリンプすること、例えば、スキャフォールドを8mm直径から約2mm形状にクリンプすることが難しいことが分かった。第1に、350〜400%直径減少要件を課すことにより、高分子材料は、この大きな直径減少に晒されるときにスキャフォールドによって受けられる歪みレベルに単に起因して、亀裂形成および亀裂伝搬を更に生じ易かった。この懸念は、剛性を調整することによって、例えばストラット角度、壁厚、および/または、クラウンの数を減少させることによって対処された。また、チューブ(図1)を形成するために使用されるプロセスステップは、前述したように、亀裂形成および亀裂伝搬に対するスキャフォールドの抵抗を高めるのに役立つことが分かった。
【0119】
第2に、亀裂形成を制限するようにスキャフォールド寸法が調整された場合であっても、スキャフォールドのための空間をクリンプ形状の範囲内に制限するという問題が存在した。クリンプされるスキャフォールドと関連付けられる材料の質量に起因して、所望のクリンプ形状へのリングの圧縮に利用できる空間は、受け入れられない降伏応力または破壊をもたらさなければ得られなかった。したがって、亀裂問題または展開問題を伴うことなく350〜400%直径減少が達成できた場合であっても、スキャフォールドパターンは、スキャフォールド構造が可能とする関節の範囲を超えなければ更なる減少を可能にしない。
【0120】
本開示の他の態様によれば、スキャフォールドの破壊靱性を高めるおよび/または送達直径を減少させるようになっているスキャフォールドのための改良されたクラウン構造が存在する。形状減少限界を克服し、かつPLGAのPLLAのような脆性高分子を使用して実施され得る既存のスキャフォールドパターンへの設計変更が、クラウン/谷部を形成するストラットをブリッジするクラウンまたは谷部の内側半径のサイズをかなり減少させることが分かった。
【0121】
図7Aおよび図7Bは、クラウン410近傍の一対のストラット420、422を示している。クリンプ前状態では、ストラット420、422がクラウン角度φだけ離間されるとともに、クラウンが内側半径raを伴って形成される。これはクラウンにとって典型的な構造である。内側半径は、クラウンでの応力集中を回避するように選択される。技術が教示したように、クラウンなどのヒンジ点で形状の劇的な変化が存在すると、クラウンにわたる曲げにおける慣性モーメントが不連続となるため、亀裂または降伏がヒンジ点で形成される可能性が更に高まる(それにより、径方向強度に影響が及ぶ)。
【0122】
金属ステントの場合、クリンプ前の角度φは、ステントが展開されるときの角度よりも小さい。小径のステントを形成することにより、ステントを小さな形状まで更に容易にクリンプできる。内側半径の存在に起因して、径方向剛性を失うことなく、展開時に角度φを超えることができる。しかしながら、この半径が非常に小さくかつ展開時のストラット角度がφを超える場合には、内側半径での応力集中に起因して、降伏または他の問題が発現する機会が高まる。金属の延性および弾力性に起因して、金属から形成されるステントを図7Bに示されるよりも更に小さくクリンプすることもできる。ストラット420、422が互いに接触してもよい。すなわち、Sが2×raよりも小さいが、ステントは、過度なクリンプ状態にもかかわらず、依然として復元してその径方向の剛性を維持できる。
【0123】
しかしながら、高分子スキャフォールドにおいては、距離S(図7B)を一般に半径raにおいて許容されるよりも小さくすべきでないことが分かった。すなわち、Sは2ra以上である。高分子スキャフォールドの場合、ストラット420、422が互いに接近されれば、すなわち、Sが2×ra未満になれば、スキャフォールドが展開される際に材料の脆性が破壊問題をもたらす可能性があり得る。したがって、スキャフォールドは、半径において許容できる距離を超えてクリンプされれば、その径方向剛性を維持できない場合がある。図8A、図8F、図8Gとして含まれる走査型電子顕微鏡(SEM)写真は、図7Bの距離Sが2×ra未満のときのクラウンでの破壊を示している。これらの写真から分かるように、Wクラウン、自由クラウンおよびYクラウンではかなりの材料破壊がある。
【0124】
ストラット420、422間の距離S(図7B)を減少させる目的で、本発明者等は、当技術分野により与えられるアドバイスにもかかわらず、半径raを可能な限り小さくすることを決めた。驚いたことに、径方向強度の大きな目立った再び生じる、あるいはひどく高い損失を伴うことなく、スキャフォールドがクリンプ状態から拡張状態まで復元できることが分かった。図8B、図8C、図8Dとして与えられるSEMは、クリンプ後に半径が減少してその後にバルーンにより拡張したクラウン/谷部を示している。これらの例において、クラウン内側半径は、切断工具(前述した緑色光ピコ秒レーザ)が形成できたと同程度に小さく形成された。図8A、図8F、図8Gと図8B、図8C、図8Dとを比較すれば分かるように、小さい半径を有するスキャフォールドは幾つかのボイドを生成したが、亀裂伝搬は存在しない。構造的な完全性が維持された。これらの写真の展開されたスキャフォールドは良好な径方向剛性を維持した。
【0125】
図7Cおよび図7Dは、これらの予期しない結果をもたらしたクラウン形成の実施形態を示している。ここに描かれるクラウン形成の小さい半径を有するタイプのWセルの一例が図5Bおよび図6Bに示される。半径rbは約0.00025インチであり、これはレーザによって形成され得る最小半径に対応する。0.00025インチ半径は、目標半径としてあるいは半径サイズの限界として考えられないが、それはこの実施形態にとって望ましい結果をもたらした。むしろ、小さい形状サイズを得るために、半径は可能な限りゼロに近くてもよいと考えられる。したがって、当業者であれば分かるように、実施形態における半径は、本開示にしたがって本発明を実施するために、この半径よりも大きいあるいはこの半径よりも小さい約0.00025(切断工具に応じて)となり得る。例えば、クリンプサイズを望み通りに減少させるように半径が選択されてもよいと考えられる。
【0126】
ほぼゼロの内側半径は、開示の目的のため、クラウン構造を形成する工具において可能な最小半径を意味する。幾つかの実施形態に係る内側半径は、距離Sがほぼゼロまで減少できるようにする半径を意味する。すなわち、図7Dに示されるように、ストラット同士が隣接しおよび/または互いに接触する(S’がほぼゼロまたはゼロである)。
【0127】
本発明に係るスキャフォールドをどのようにして強度損失を伴わずに理論最小半径まで減少した後に拡張できるのかに関する、特定の理論に縛られるのを望むことなく、膨張直径よりも大きい開始直径の選択が有利な結果に役立つと考えられる。金属ステントがその膨張直径よりも小さい直径から形成されて、その小さい直径がより小さいクリンプ形状を促進するべく選択されてもよい先の例とは対照的に、好ましい実施形態に係る高分子スキャフォールドは、バルーンカテーテル−スキャフォールドアセンブリにおける最大膨張直径よりも大きい開始直径から形成される(大きい開始直径は、後述するように急激な反跳を減らすため、および/または、図1のチューブにおけるチューブ処理ステップで前述したように展開状態での径方向強度特性を高めるために好ましい場合がある)。このように、クリンプ前ストラット角度は、スキャフォールドが展開されるときの最大クラウン/ストラット角度よりも大きいことが好ましい。つまり、バルーンがスキャフォールドをクリンプ状態から展開状態に拡張させるときには、決して図7Cのクラウン角度(クリンプ前角度)を超えない。圧縮復元可能な高分子スキャフォールドの特徴、すなわち、展開クラウン角度よりも大きいクリンプ前クラウン角度は、従来技術の教示内容に反して、最小内側半径がウラウン形成のために使用されたときにSEM写真における高分子スキャフォールドがどのように径方向強度を保持するのかに関する手掛かりを与えると考えられる。血管により負荷が掛けられる際のスキャフォールドの拡張ではなく圧縮は、ボイドの存在にもかかわらず、更なる脆弱化をもたらさないと考えられる。クラウンがそのクリンプ前形状(図7C)に対して圧縮変形のみを受けると、内側半径近傍の潜在的に脆弱化された領域が圧縮応力のみに晒され、そのため、クラウンが引き裂かれることがなく、すなわち、亀裂伝搬を引き起こさない。
【0128】
米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に詳しく記載されるスキャフォールドのクリンプは、高分子のガラス転移温度よりも低いがガラス転移温度付近の温度まで高分子材料を加熱することを含む。一実施形態において、クリンプ中のスキャフォールドの温度は、PLLAにおけるガラス転移温度よりも約5〜10°低い温度まで上昇される。最終クリンプ直径までクリンプされると、最終ドウェル期間にわたってクリンプジョーが最終クリンプ直径で保持される。圧縮復元を成す高分子スキャフォールドをクリンプするこの方法は、クリンプジョーが解放されるときの反跳を減らすために有益である。しかしながら、内側半径を小さくする本開示の態様に関して他の予期しない結果が見出された。ドウェル期間中に、高分子スキャフォールドのクリンプ形状を理論最小形状よりも小さい形状まで小さくできることが分かった。
【0129】
図6Bのスキャフォールドに関して先に与えられた例から、Dminにおける値は0.1048”すなわち2.662mmである。米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に記載されかつ先に要約されたクリンプ手順にしたがってこのスキャフォールドをクリンプすると、スキャフォールドを0.079”すなわち2.0066mmのクリンプ形状まで小さくできることが分かった。そのため、このスキャフォールドにおいて、クリンプ形状はDmin未満であった。この形状により、0.085”外径の保護シースをスキャフォールド上にわたって配置できる。薬剤コーティングがスキャフォールド上にわたって配置された際には、シースを伴うスキャフォールドの形状が0.092”であった。このスキャフォールドにおいては、径方向強度の範囲が0.45〜0.65N/mmであり、径方向剛性の範囲が1.00〜1.20N/mmであり、圧縮復元可能性が約90%(50%圧縮)であった。
【0130】
ドウェル期間中の材料の圧縮に起因してDmin未満の小さい形状が得られたと考えられる。本質的に、高い温度でドウェル期間中にクリンプジョーによって課される圧力により、リングを形成するストラットが一緒に圧縮されてクリンプスキャフォールド形状まで更に小さくなる。これらの実施形態によれば、その理論最小形状よりも小さい形状を成すクリンプされたスキャフォールドは、生体内でうまく展開されて検査された。このスキャフォールドは、50%の直径減少後の約90%を上回る望ましい圧縮復元に加えて、望ましい径方向剛性特性を有した。
【0131】
この開示の他の態様において、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドのためのストラットおよびクラウンの形成は、図7Aに示されるクラウン形成を成すスキャフォールドにおけるクリンプ形状よりも小さいクリンプ形状を達成する目的で、図7Eに描かれる形状を成すように形成される。これらの実施形態によれば、クラウンが図示のように半径rcに形成される。このスキャフォールドがクリンプされると、ストラットを互いに接近させることができ、それにより、これらのストラットを離間させる距離がほぼゼロ(S”がほぼゼロまたはゼロである)になる。図7Cの実施形態とは異なり、半径rcは、ストラットの端部とクラウンの端部との間に穴または拡大領域を形成することにより、何らかの有限のあるいはより大きな半径にされる。その内面に沿って内側半径を形成するクラウンにおける厚さt’cは、ストラット幅より小さくてもよい(図7Cおよび図16の例では、クラウン厚さがストラット幅より大きくてもよい)。これにより、クリンプ形状を大きくすることなく更に大きな内側半径をクラウンで使用できる。
【0132】
これらの実施形態において、図7E〜図7Fに描かれるクラウン形成を成すスキャフォールドは、「鍵穴」クラウン形成と称される。この名は、内壁面により形成される鍵穴スロットまたは開口を示す図7Fを参照することにより更に説明しなくても理解できる。クリンプ形状では、クラウン近傍のストラットが互いに接近される一方で、半径rcを有する穴または開口がクラウンでほぼ維持される。距離S”は、「鍵穴」クラウン形成においては半径rcの2倍よりも小さい。
【0133】
パターン300、200を具現化するスキャフォールドの例が図6A〜図6Bに与えられる(0.008インチ壁厚を有するV2実施形態、0.008インチおよび0.014インチの壁厚を有するV23実施形態、および、0.011インチ壁厚を有するV59実施形態と称される)。図5A〜図5Bの様々なセル属性のための特定の値が与えられる。
【0134】
8mmのクリンプ前直径を有するスキャフォールドV59(パターン200)は、非順応性バルーンまでクリンプされ得る。この場合、クリンプ形状は約2mmである。この例では、膨張直径が約6.5mmである。クリンプ前直径7、9をそれぞれ有するスキャフォールドV2、V23は、非順応性バルーンにより約6.5mmまで拡張される。V2、V23スキャフォールドは約0.092インチ(2.3mm)の直径までクリンプさせることができる。
【0135】
本開示によれば、スキャフォールドのストラットのアスペクト比(AR)が約0.8〜1.4であってもよく、リンクのARが約0.4〜0.9であってもよく、あるいは、リンクおよびストラットの両方のARが約0.9〜1.1または約1であってもよいことが分かった。アスペクト比(AR)は厚さに対する幅の比率として規定される。したがって、0.0116の幅および0.011の壁厚を有するストラットに対しては、ARは1.05である。
【0136】
本開示によれば、圧縮復元可能性を有するバルーン拡張型の高分子スキャフォールドは、約0.3N/mmよりも大きい径方向強度または約0.32〜0.68N/mmの径方向強度を有するとともに、約0.5N/mmよりも大きい径方向剛性または約0.54〜1.2N/mmの径方向剛性を有する。本開示によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、約0.008”〜0.014”の壁厚を有するスキャフォールドにおいてこれらの範囲の剛性および強度を有するとともに、約2mmクリンプ形状から6.5mm非順応性バルーンによって展開されるように構成され、あるいは、バルーンカテーテル上の約2mmの交差形状から約6.5mm〜7mmの直径に展開されるように構成される。
【0137】
PLLAなどの生体分解性高分子(および、一般に炭素、水素、酸素、窒素から成る高分子)が、放射線不透過性を伴わず、放射線透過性である。スキャフォールドは放射線不透過性でありあるいはX線透視下で見えることが望ましく、それにより、スキャフォールド本体、好ましくは端部リングをリアルタイムに視覚化することで、血管内での正確な配置を容易に行なえる。心臓科医師またはインターベンショナル・ラジオロジストは、一般に、患者の脈管構造を通じて送達カテーテルを追跡し、蛍光透視または同様のX線視覚化法を使用して、病変部位にスキャフォールドを正確に配置する。スキャフォールドをX線透視下で見えるようにするためには、スキャフォールドが周辺組織よりも多くのX線を吸収しなければならない。スキャフォールドにおけるX線不透過性材料がその直接的な視覚化を可能にしてもよい。これらの材料を生体分解性高分子スキャフォールドと共に含ませる1つの方法は、例えば米国特許出願第11/325,973号明細書(整理番号62571.45)に記載される技術を使用してX線不透過性マーカをスキャフォールドの構造要素に取り付けることである。しかしながら、他のステントまたはスキャフォールドとは異なり、本開示に係る圧縮復元可能性を有する生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、または、生体内分解性の末梢血管に埋め込まれるスキャフォールドは、公知技術で適切に扱われない特別な要件を有する。
【0138】
最小クリンプ直径、例えばDminを増大させることなくマーカ保持材料(マーカ構造)の近傍で所望の剛性特性を維持するという満たされない必要性が存在する。マーカ保持材料は、特に300〜400%の直径減少を有するスキャフォールドの場合に、あるいは更には、開始クリンプ前直径から送達直径にクリンプされる際に、および/または、目標送達直径が最大でもほぼスキャフォールドの理論最小直径(Dmin)となる場合に、送達カテーテル上のクリンプされたスキャフォールドにおいて必要とされる交差形状または送達直径を得るために利用できる非常に限られた空間を妨げてはならない。クリンプ中に所望の送達直径を得るためには、例えば300〜400%以上の直径減少を達成できるためには、マーカ材料(リンクに負荷がかけられるとき)がスキャフォールドのリングを形成するストラットの折り畳みを妨げてはならないことが分かった。しかしながら、この必要性を径方向剛性への影響を考慮することなく扱うと、マーカ構造の近傍で許容できない剛性損失が存在することが分かった。
【0139】
図9Aおよび図9Bを参照すると、パターン200に係るスキャフォールドの部分が示されている。図9Aは、放射線不透過性材料500(マーカ500)を保持するリンク237が配置されるスキャフォールドの部分を示している。図9Bは、クリンプ形状で構成されるときのスキャフォールドのこの同じ部分を示している。リング212b、212c、212d、212fはそれぞれ、クリンプリング212b’、212c’、212d’、212f’として、それらの圧縮された折り畳みあるいはコンパクト形状で示されている。リング212のそれぞれが同じ径方向剛性特性を有する(リンク接続は無視する)ことができるように、一対のマーカ500がリングストラット230上ではなくリンク237上に配置されるのが好ましい。他の実施形態では、適した受け入れ部をリング構造に形成することにより、マーカ500がリング212上に配置されてもよい。
【0140】
図9Bから分かるように、クリンプされたスキャフォールドにおいて最小直径、例えばほぼ少なくとも理論最小クリンプ直径(Dmin)を維持するために、マーカ構造の存在が折り畳まれたストラット230間の距離に影響を与えないことが好ましい。この結果を得るため、リンク237の長さは、300〜400%以上の直径減少を達成するために必要に応じてストラット230の折り畳みを制限することを妨げることなく、マーカを支持しない他のリンク234の長さL1を超えて増大(L237=L1+L2)されてもよい(長さL2は、おおよそ、マーカ構造(デポ(depot)502および一対のマーカ500)を受け入れるために必要とされる長さである)。一方、厳格なクリンプ直径要件を有さない、あるいはスキャフォールドの構造要素間に最小空間を有さないステントまたはスキャフォールドは、マーカ500を保持するために折り畳みストラットの下側にサイズが大きいリング接続リンクを有してもよい。これは、クリンプ形状でマーカ構造のために利用できる空間が残存するからである。
【0141】
デポ502は、スキャフォールドがチューブから切断されるときに形成されてもよい。デポ502は、マーカ500球、例えば白金球の直径よりも僅かに小さいサイズの穴を備え、それにより、球を穴内に配置して、薬剤高分子コーティングがスキャフォールド上にわたって塗布されるときに穴に球を固定することができる。薬剤高分子コーティングは、デポ502の穴内にマーカ500を保持する接着剤またはバリアとしての役目を果たすことができる。
【0142】
本開示の一態様において、適切な照明を達成するために必要なマーカ500を形成する球の直径は、高分子スキャフォールドの壁厚(235、図3)よりも小さい。したがって、球が穴内に配置された後に、コーティングがその上に塗布されてもよい。球直径がほぼ壁厚235以下であるため、平坦な形状を得るために球の再形成または成形は不要である。したがって、マーカを塗布するプロセスが簡略化される。
【0143】
しかしながら、図9の実施形態に係る最小クリンプ直径を維持するためにマーカ構造を有するリンクの長さが増大されると、隣接するリングの組み合わされた径方向剛性特性が低下される。これは、それらのリングが更に離間されるからである。特に端部リング(それがたった1つの隣接リングのみに接続されるため、本質的に剛性が低い)に関してこの剛性損失を最小限に抑えるため、マーカ構造がリング212d、212f間ではなくリング212c、212f間に配置される。また、マーカ構造は、マーカ対500が長手方向(軸A−A)ではなく垂直軸B−Bに沿って方向付けられるデポ502a、502bに置かれるように配置される。軸B−Bに沿ってデポ502a、502bを配置することにより、マーカ500が長手方向に配置される場合よりも長さL2が短くなるのが好ましく、それにより、隣接リング212c、212f(リンク237の長さの増大によってもたらされる)、および端部リング212dの組み合わされた径方向剛性の望ましくない損失が最小になる。
【0144】
高分子スキャフォールドにおけるマーカの他の実施形態によれば、パターン200に係るスキャフォールドは、クリンプ要件に合うために必要とされる増大された長さとマーカ構造とを有するリンク237を欠いてもよい。代わりに図10Aおよび図10Bを参照すると、放射線不透過性材料シート504、例えば0.025”長さおよび0.004”厚さの金、白金、または、イリジウムの箔が、リンク234の周囲に巻き付けられて、例えばスキャフォールド上に堆積される薬剤高分子コーティングにより所定位置に保持される。箔の厚さは無視できるため、あるいは、クリンプ中の材料圧縮により、スキャフォールドは、折り畳みストラット230間のマーカ504の存在にもかかわらず、少なくともほぼDminクリンプ直径を維持できる場合がある。これらの実施形態によれば、箔がスキャフォールド機能に影響を及ぼさないため−リンク長さは他のリンク224とほぼ同じであってもよい−、箔は、好ましくは、血管内のスキャフォールド端部の更に容易な識別を促すためにスキャフォールドの端部の更に近傍に配置されてもよい。例えば、マーカ504がリング212dをリング212fに接続するリンクに配置されてもよい。これは、剛性特性がマーカ504の存在によって影響されないからである。
【0145】
図11A〜図11Eに描かれる高分子スキャフォールドにおけるマーカの他の実施形態によれば、パターン200に係るスキャフォールドは、放射線不透過性マーカを保持するためにリング構造が変更される。図11A〜図11Eに示されるようにマーカ材料を端部リング212dのクラウン207上またはその近傍に配置することにより、血管内の端部リングの位置を更に容易に突き止めることができる(マーカが端部リングに配置されているため)。図11A、図11B、図11Eに描かれる実施形態によれば、1つ以上の円筒形状のマーカ511、516、531がそれぞれ、クラウン207に配置されてもよく(図11A、図11B)、あるいは、図11Eの場合のようにクラウン207の近傍に配置されてもよい。図11C、図11Dの実施形態によれば、放射線不透過性材料の1つ以上のストリップ521、526がクラウンの近傍に配置され(図11C)あるいはクラウンの周囲に配置される(図11D)。
【0146】
単一のマーカ511は、図11Aの場合では、クラウン207に形成される穴512内に受けられてもよく、あるいは、図11Bに示されるようにクラウン207から延びるアイレット519により設けられる穴内に受けられてもよい。後者の場合には、アイレットがクラウン207から破断するのを回避するため、延在部519を形成する材料の延性または破壊靱性を向上させることが必要な場合がある。このアイレットに関する強度/剛性要件は存在しないため、クラウンの剛性に影響を与えることなく更に高い破壊耐性を有するように材料を局所的に変えることが実用的な場合がある。例えば、靱性は、局所的な熱処理、局所的な可塑化、または、局所的なコーティング塗布によって得ることができる。局所的な熱処理は、ポリマーブレンドまたはブロック共重合体がスキャフォールドの骨格に使用される場合に特に有益である。図11Eは、ストラット532に形成される3つの穴に受けられる3つの放射線不透過性断片531を示しており、ストラット532は、穴534の存在に起因するストラット230の強度損失に対応するべく肉厚に形成されている。
【0147】
図11Cおよび図11Dは、リング212bに形成されるスロット522、528にそれぞれ受けられる放射線不透過性材料のストリップ526、521の例を示している。ストリップ521はストラット524内に配置されてもよく、あるいは、ストリップ526は、クラウンの視認性を高めるためにクラウン207の周囲に配置されてもよい。これらの設計選択は、このクラウンの曲げ剛性への影響も考慮に入れるべきであり、これは図11Aの実施形態にも当てはまる。スロット522、528は、クラウンでの曲げ剛性への影響を最小にするために、ストラットおよび/またはクラウンの中立軸と一致することが好ましい。
【0148】
他の実施形態において、ストリップ521、526は、生体再吸収可能な材料中に分散された放射線不透過性粒子、例えば60%タングステン粒子から成る材料から形成されてもよい。この実施形態は、スキャフォールドが生体分解された後に血管内に放射性不透過性材料を分散させるという利点を有する。
【0149】
他の実施形態において、スキャフォールドは、金属ばね要素がクラウン内に挿入されることにより、(リンクの長さの増大に起因して)端部リングでの実質的な径方向の強度または剛性を失うことなく、例えば図9A〜図9Bに示されるようにマーカを受け入れるために長くされた端部リング接続リンクを有してもよい。したがって、この実施形態によれば、マーカ要素が存在する。
【0150】
他の実施形態では、金属ばねまたは複合金属−高分子ばねが、より高い視認性を与えるとともに端部リングを補強するという二重の役割を果たしてもよい。図11Fを参照すると、端部リング312B’がその一方側を形成する場合の非対称セル304’の変形形状が示されている。自由クラウン307、Y−クラウン309、および、W−クラウン310には、該クラウンに埋め込まれる弓形の補強要素またはばね460が存在する。部材460のための材料は、クラウンで付加される強度/剛性に加えて、これらの材料が放射線不透過性であることから体内に埋め込まれる際のスキャフォールドの端部の視認性を更に高めるために、例えば、鉄、マグネシウム、タングステンであってもよくあるいはこれらを含んでもよい。ストラットの中立軸に対する部材460の位置は、例えばクラウンの外端に最も近いその縁部に最も近接してもよく、例えば、リングが圧縮下にあるときのストラットにわたる最終的な引張応力が主に部材460の存在に起因して増大されるようにクラウンの内側半径から最も離れてもよい。部材460は、より高い視認性を与えるとともに更なる径方向の強度および剛性を端部リングに与えるという二重の役目を果たすために、端部リングのそれぞれのクラウンに配置されるのが好ましい(さもなければ、端部リングは、1つの隣接するリングのみに接続されているため、径方向剛性が内部リング構造よりも小さくなる)。
【0151】
設計プロセス
前述したように、課題は、大マーカに言えば、3つの競合する設計ドライバ、すなわち、径方向強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性の間の適切な釣り合いを達成するものとして述べられてもよい。
【0152】
パターン200または300を有する実施形態は、本明細書中に開示されるパラメータの特定の組み合わせによる、あるいは開示に照らして容易に再現可能な望ましい結果をもたらすことが分かった。ガイドとして使用するために適切な圧縮復元を成す既知の先行バルーン拡張型ステントが存在しなかったことが分かる(確かに、当技術分野は、末梢血管ステントのためのそのような開発経路を阻害してきた)。したがって、様々な高分子スキャフォールドの組み合わせが製造されてベースにされ、また、以下の目的を達成するのに最も適した関係を理解するために以下の特性が評価された。
【0153】
所望の最小径方向剛性および強度、反跳、展開能力、並びに、クリンプ形状の犠牲を伴わないスキャフォールドの圧縮復元可能性;
展開時の急激な反跳 − バルーンによる展開の30分以内の直径減少の大きさ;
送達/展開形状 − すなわち、スキャフォールドがクリンプ中に構造的完全性を維持しつつサイズを減少できる大きさ;
生体内径方向降伏強さ、および、径方向剛性;
バルーンによる拡張時およびクリンプ時、または、血管内への埋め込まれて曲げ負荷、軸方向圧縮負荷、および、径方向圧縮負荷の組み合わせに晒される時の亀裂形成/伝搬/破壊;
バルーンによる拡張時のスキャフォールドリングの展開の不均一性;および、
締め付け/圧縮剛性。
【0154】
これらの項目については前述した。以下は、開示される実施形態の態様の更なる見識を得るために、本開示に係るスキャフォールドの挙動に関する更なる例および結論を与える。
【0155】
パターン300(図4)に類似するパターンを伴って形成されるスキャフォールドは良好な大きさの圧縮復元可能性を有したが、このスキャフォールドの他の特性は、バルーン拡張後の材料の記憶に起因して理想的ではなかった。最初に6.5mmチューブから形成されてほぼ同じ直径まで展開されたスキャフォールドは、急激な反跳問題を有した−6.5mへの展開後に、スキャフォールドが約5.8mm直径まで跳ね返った。また、スキャフォールドは、スキャフォールドリングの不規則な拡張などの問題も展開中に呈した。
【0156】
設計上の問題を解決しようとする1つの試みが以下の態様で始まった。スキャフォールドの特性は、所望の圧縮復元可能性を維持しつつ、剛性、強度、構造的完全性、展開・反跳問題に対処するように変更された。最終的に、スキャフォールドは、50%締め付け変形後の良好な圧縮復元特性を維持しつつ所望の一連のスキャフォールド特性を有して(本開示にしたがって)設計された。50%締め付け変形後の良好な圧縮復元特性とは、その非変形高さの50%にほぼ等しい高さまでスキャフォールドを押圧する圧縮負荷を掛けた後にスキャフォールドの外径を十分に、例えば約90〜95%まで復元できるスキャフォールドの能力のことである。
【0157】
締め付け剛性(径方向剛性に対立するものとして)は、スキャフォールドの壁厚の変化に最も影響されあるいは最も敏感である。壁厚が増大するにつれて、締め付け剛性が高まる。また、スキャフォールドの圧縮復元可能性は、印加される負荷に応じて最も外側に撓む領域にもたらされる応力により最も影響される。後述するように、壁厚が増大されるにつれ、スキャフォールドの外側に撓んだ端部における歪みエネルギーの集中の高まりに起因して圧縮復元可能性が低下する。したがって、圧縮復元可能なスキャフォールドにおける設計では、締め付け剛性を増大させるための壁厚と、締め付け剛性の増大に起因する圧縮復元可能性の低下とを釣り合わせなければならない。同様に、径方向剛性は壁厚の変化によってあまり影響されない(締め付け中においては、負荷の大部分が面外ではなく面内負荷であるため)が、圧縮復元可能性に影響を及ぼすように壁厚が変えられる場合には、径方向剛性を考慮に入れなければならない。壁厚が変化すると、径方向剛性が変化する。
【0158】
図12A、図12B、図12Cに描かれる図は、壁厚と圧縮復元可能性との間の関係を説明し易くするために与えられる。図12Aは、スキャフォールドがその非変形(無負荷)状態と締め付け負荷に晒される変形状態(仮想線で描かれる)とにあるスキャフォールドの断面を示している。「S」および「S’」によって示されるスキャフォールドの端部は、最も高い歪みエネルギーの領域を示している。言うまでもなく、これはスキャフォールドが締め付け負荷を受けているときのこれらの領域の高度な湾曲によってもたらされる。スキャフォールドが復元しない場合、あるいは、締め付け負荷(F)からのスキャフォールドの復元が低下する場合、それは、これらの領域で材料が降伏してしまっているためであり、そのため、元の圧縮前の直径へ復元するのは不可能であり、あるいは、そのような復元が低下される。図12Aにおける大きさが等しい反対方向の圧縮力Fは、スキャフォールドの高さを、その非変形高さ、すなわち、スキャフォールド直径から、δによって示される変形高さに撓ませる。圧縮力Fが印加されているときに最も高い歪みエネルギーを含むスキャフォールドの領域は、仮想線で示される変形形状における対称軸の近傍にある。以下の説明では、スキャフォールド領域S、S’における負荷反応または材料応力/歪み状態が歪みエネルギーに関して表わされる。
【0159】
図12Bおよび図12Cは、スキャフォールドが異なる壁厚を有するときの領域Sにおける歪みエネルギーへの影響を示すべく意図された負荷下の構造の簡略化されたモデルである。本質的に、モデルは、ばね定数Kを有するばねに関して領域Sにおける線形応力−歪み表示を構成するために図12Aの変形形状の対称性を利用しようと試みる。したがって、スキャフォールド特性は、円弧10/20(輪またはリングの1/2)または端部で支持される半円筒シェルとしてモデリングされる。円弧は、強制的な変位δが加えられるときには下方(Y方向)へ移動できず、これは図12Aの対称性に起因して境界条件として許容できると考えられる。x方向の動きは、ばね定数Kを有するばねによって抑制される。図12Cの半球円弧10は厚さt1を有し、図12Bの半球円弧20は厚さt2>>t1を有する。
【0160】
図12B、図12Cにおいて締め付け負荷が加えられるにつれて、円弧10、20が(仮想線で示されるように)変形される。これは、図12Aの場合と同様に円弧10/20のそれらの中心でのほぼデルタ(δ)の量の強制変位によってモデリングされる。しかしながら、円弧10は、強制変位が加えられるときにはその曲率に関して円弧20よりも小さく変形する。これは、その曲げ剛性が円弧20よりも高いからである。円弧10では曲率があまり変化されないため、強制変位によりもたらされる%程度の歪みエネルギーが端部のばねによって支えられる。この場合、ばね力がSでの外側への動きを抑制している。円弧20においては、より多くの%歪みエネルギーが円弧で支えられる。これは、端部で動きを抑制するばねとは対照的に、より大きな曲率変化が意図されるからである。
【0161】
結果として、所定の印加力の場合、端部での%歪みエネルギーは円弧10においてより大きい。これは、円弧10の曲げ剛性が円弧20よりも大きいからである。これがばねの変位によって描かれている(x2>x1)。円弧20を抑制するばねにおける%歪みエネルギー(すなわち、1/2K(x2)2/(円弧20の全歪みエネルギー)×100)は、ばねを抑制する円弧10の%歪みエネルギー(すなわち、1/2K(x1)2/(円弧10の全歪みエネルギー)×100)よりも大きい。したがって、この例から、壁厚と圧縮復元可能性との間の関係に関する基本的評価を得ることができる。
【0162】
好ましい実施形態では、9mmのスキャフォールドクリンプ前直径の場合、0.008”〜0.014”、あるいは、更に狭くは0.008”〜0.011”の壁厚が、50%の圧縮復元可能性を保ちつつ所望の締め付け剛性を与えることが分かった。より一般的には、壁厚に対するクリンプ前直径またはチューブ直径の比率が約30〜60または約20〜45であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。また、幾つかの実施形態では、壁厚に対する膨張直径の比率が約25〜50または約20〜35であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。
【0163】
また、締め付け剛性を高めるための壁厚の増大は、所望のクリンプ形状を維持するために制限されてもよい。壁厚が増大されるにつれて、クリンプされたスキャフォールドの最小形状が増大し得る。したがって、壁厚は、先に説明したようにそれが圧縮復元可能性に対して及ぼし得る悪影響およびクリンプ形状の望ましくない増大の両方によって制限される場合があることが分かった。
【0164】
試験
異なる機械的特性を測定してステントの特性とスキャフォールドの特性との間で比較を行なう目的でスキャフォールドおよびステントに対して行なわれる様々な試験の結果が以下に与えられる。試験で使用されたステントは、Cordis(特許商標)S.M.A.R.T.(特許商標)CONTROL(特許商標)Lliac自己拡張スント(8×40mm)(「コントロールステント」)、Igaki−Tamai(「Igaki−Tamai stent」)によるREMEDYステント(6×40mm)、および、Omnilink Eliteステント(6×40mm)であった。
【0165】
スキャフォールドV2、V23、V59に関して表2〜表5に与えられるデータは、表6A、表6Bに挙げられる特性を有するスキャフォールドに関するものである。スキャフォールドは、米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)の段落[0071]〜[0091]に記載されるプロセスと同様のプロセスを使用して、送達バルーンまでクリンプされた後、それらの膨張直径まで拡張された。
【0166】
表2〜表6に与えられるデータは、スキャフォールドおよびステントがそれらの送達バルーンによって拡張された後のスキャフォールド特性およびステント特性を示している。以下の表2〜表5で報告される各試験においては、特に他の点が述べられていなければ、統計値が平均値である。
【0167】
表1、表2は、他のタイプのステントと比較される様々なスキャフォールドにおける圧縮復元のパーセンテージを示すデータを与える。スキャフォールドおよびステントは、表に示されるそれぞれの量だけステントおよびスキャフォールドを圧縮または締め付けるために一緒に移動される一対の対向する平坦な金属プレートを使用して圧縮された。試験は20℃で行なわれた。
【0168】
表2は、V2、V23、V59スキャフォールドの圧縮復元可能性とIgaki−TamaiステントおよびOmnilink Elite(6mm外径および40mm長さ)バルーン拡張型ステントの圧縮復元可能性とを比較している。圧縮期間は短かった(ほぼ0秒)。
【0169】
表2:20℃で平坦プレート試験を使用したおおよその圧縮復元(圧縮後12時間を経て測定された開始直径のパーセンテージとして)
【表2】
【0170】
結果から分かるように、Omnilink Elite冠動脈ステントと比べると、V2、V23、V59の圧縮復元間には劇的な違いが存在する。最良の結果は、V23(0.008”壁厚)およびV59スキャフォールドにより、Igaki−Tamaiステントと比較したこれらのスキャフォールドの径方向の強度特性および剛性特性を考慮に入れると達成される(表5参照)。
【0171】
表3は、50%圧縮後の0.008”壁厚を有するV23スキャフォールド(図6A)における圧縮復元挙動を比較している。データは、開始直径の50%での短い(ほぼ0秒)圧縮後、1分の圧縮後、および、5分の圧縮後におけるV23スキャフォールドのパーセント圧縮復元を示している。
【0172】
表3:20℃で平坦プレート試験を使用したV23(0.008”壁厚)のおおよその圧縮復元(圧縮後24時間を経て測定された開始直径のパーセンテージとして)
【表3】
【0173】
図13は、その開始直径の50%まで圧縮された際のV59スキャフォールドにおける平坦プレート除去後の24時間にわたる圧縮復元特性を示している。0秒、1分、および、5分の圧縮継続時間後のスキャフォールドの復元に対応する3つのプロットが示されている。スキャフォールド直径は、平坦プレートが取り除かれた後の24時間に至るまでの異なる時間点で測定された。これらのプロットから分かるように、復元の大部分は、平坦プレートが取り除かれた後の約5分以内で起こっている。したがって、本開示にしたがって構成されるスキャフォールドにおいては、約90%圧縮復元が長い圧縮期間にわたって、例えば10分、1/2時間、または、1時間にわたって可能であると考えられる。
【0174】
締め付け力または圧縮力が短期間(図13では「0秒保持時間(50%)」により示される)のみにわたって加えられると、試験は、その内径の約95〜99%までの回復を示す。力が1分間または5分間にわたって保持されると、試験は、復元可能性が少ないことを示す。図13の例では、スキャフォールドがその内径の約90%まで復元することが分かった。ほぼ同じである1分および5分の時間は、負荷状態にあるときに塑性歪みあるいは復元不可能な歪みに屈する粘弾性材料の任意の効果が殆ど生じたことを示唆する。
【0175】
本開示によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールド(適切な強度特性および剛性特性、例えば以下の表4におけるスキャフォールドの剛性特性および強度特性を有する)は、その開始直径の約33%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、付随的な(例えば1分未満の)圧縮事象後にその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有し、また、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約25%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、長い圧縮継続時間(例えば、約1分〜5分、あるいは、約5分よりも長い時間)にわたってその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有する。
【0176】
急激な反跳問題が観察された。一例において、スキャフォールドは、0.008”壁厚を有する7mm変形チューブから形成された。スキャフォールドが6.5mmまでバルーン展開された場合には、スキャフォールドが約5.8mmまで跳ね返った。この問題に対処するため、スキャフォールドは、8mm、9mm、10mmのより長いチューブから形成された。意図される膨張直径に対してクリンプ前直径が大きいと、6.5mmまで展開されるときに反跳を殆ど呈さないことが分かった。変形チューブが作られたときに形成される材料の記憶が急激な反跳を低減すると考えられる。
【0177】
7.4mm膨張直径を有するスキャフォールドにおける例えば10mmの開始チューブ直径は例えば8mmチューブよりも小さい反跳を呈するが、このより大きな直径サイズは、大きなチューブサイズの使用を妨げる他の問題をもたらした。大きい直径に起因して、実行不可能でなければ、約2mmの所望のクリンプ直径までクリンプしている最中に直径を減らすことが難しくなった。材料が更に多く、直径減少が更に大きいため、直径を減らすために利用できる空間が少ない。したがって、開始直径が閾値を超えると、所望のクリンプ形状を維持することが実現不可能になる。反跳が少なくかつ約2mmのクリンプ形状を依然として得ることができるという点において9mmチューブサイズが許容できる結果をもたらすことが分かった。
【0178】
過度な開始直径は、展開中に他の問題をもたらす可能性がある。第1に、開始直径からクリンプ直径への直径減少が非常に大きい場合には、それに対応して、スキャフォールドのヒンジ要素、クラウン、または、谷部における局部応力が増大する。高分子材料は脆弱化し易いため、応力レベルが必要以上に大きくなると、ストラットにひびが入りあるいはストラットが破壊する懸念がある。直径9mmの開始直径のスキャフォールド(他のスキャフォールド直径と組み合わせて)は、過度な亀裂または破壊を伴うことなく、2mmまで減少された後に7.4mm膨張直径まで拡張され得ることが分かった。
【0179】
表4は、図6A、図6BのV2、V23、V59スキャフォールドで観察される急激な反跳を比較している。
【0180】
表4:急激な反跳比較
【表4】
【0181】
前述したように、金属ステントとは異なり、高分子スキャフォールドにおける設計は、クリンプ中および血管内で膨張されるときの両方においてその破壊靱性を考慮に入れなければならない。抹消動脈内に配置されるスキャフォールドにおいては、スキャフォールドにより受けられる締め付け力または圧縮力に加えて、スキャフォールドが皮膚の表面に近くおよび/またはその場所が身体の付属器内またはその近傍にあることから、直面される負荷のタイプが、一般に、曲げ負荷および軸方向負荷に関して冠動脈ステントよりも激しい。これについては、例えば、Nikanorov、Alexander、M.D.et al.、Assessment of self−expanding Nitinol stent deformation after chronic implantation into the superficial femoral arteryを参照されたい。
【0182】
当技術分野において知られるように、高い径方向剛性特性および強度特性を有するように設計されたスキャフォールドは、一般的に言うと、構造的完全性を維持するために必要とされる破壊靱性も呈さない。適切な破壊靱性を伴う末梢埋め込み高分子スキャフォールドを有する必要性は、スキャフォールドのストラットおよびリンクであるいはこれらの間で比較的高い度合いの歪みを維持する必要性、および、疲れ破壊に帰する繰り返しの周期的な負荷事象を所定期間にわたって維持する必要性の両方に帰する。
【0183】
スキャフォールドを形成するチューブの前述した製造方法は、スキャフォールド材料の固有の破壊靱性を高めようとしている。しかしながら、リンクにおけるスキャフォールドの剛性を低下させることによって、あるいは、更なるヒンジ部またはクラウン要素をリングに加えることによってスキャフォールド内での破壊または亀裂伝搬の事例を減らすため、更なる手段が使用されてもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、破壊または亀裂がスキャフォールドの更に重大な領域に伝搬しないように、予め定められた破壊点をスキャフォールドに形成することができる。幾つかの例が与えられる。
【0184】
前述したように、末梢血管に埋め込まれる高分子スキャフォールドは、一般的に言うと、径方向圧縮負荷、締め付けあるいは圧縮負荷、曲げ負荷、および、軸方向圧縮負荷の組み合わせに晒される。試験結果は、亀裂の大部分が、末梢血管に埋め込まれる高分子スキャフォールドにおいてリングを接続するリンクではなく、リングを形成するストラットで生じ得ることを示している。確かに、体外データは、スキャフォールドが末梢血管内に埋め込まれるときに周期的な径方向負荷、曲げ負荷、および、軸方向負荷に完全に耐え抜くことができることを示唆する場合があるが、スキャフォールドが生体内で末梢血管において軸方向負荷、曲げ負荷、および、径方向負荷の組み合わせに晒される場合には、それにもかかわらず、許容できない亀裂形成、破壊、または、径方向強度の著しい脆弱化が存在する。
【0185】
このことを考慮に入れて、スキャフォールドパターンの別の実施形態は、スキャフォールドの径方向の強度または剛性に大きな影響を与えることなく曲げおよび軸方向圧縮においてスキャフォールドを脆弱化させるあるいは更に柔軟にしようとする。リングを接続するリンクを更に柔軟にすることにより、スキャフォールドが曲げあるいは軸方向圧縮に晒されるとき、リングが互いに軸方向に位置合わせされないとき、例えば、スキャフォールドが湾曲した血管内に位置するときなどに生じる1つのリングとそれに隣り合うリングとの間の相対的な動きは、隣り合うリング同士の間に高い負荷をもたらさない。これは、リンクが、負荷を一方のリングから他方のリングに直接に伝えるのではなく、リング間の相対的な動きに応じてより撓み易いからである。
【0186】
パターン200の別の実施形態を参照すると、スキャフォールドは、図14Aおよび図14Bに描かれるパターンにしたがって構成される。パターン400は、曲げおよび軸方向圧縮(または引張り)においてスキャフォールドにより高い柔軟性をもたらすようにリング212を接続するリンク434/440が変更されている点を除き、パターン200と同様である。図14Bを参照すると、リンク434は、リングのY−クラウンに最も近い曲げにおける第1の慣性モーメント(MOI1)を有する第1の部分435と、隣接するリングのW−クラウンに最も近い曲げにおける第2の慣性モーメント(MOI2)を有する第2の部分438とを含む。ここで、MOI1<MOI2である。また、実際に曲げ剛性を更に減らすためのヒンジまたは関節を形成するために、部分435にはU形状部分436が形成される。U形状部分436は、リング212が図14Bで時計回りに回転するときに開放する。したがって、リンクは、ヒンジ436a周りの曲げ剛性が非常に低いため、時計回りの曲げにおいて非常に柔軟である。反時計回りの回転に関しては、U形状部分の端部同士が当接し、それにより、実際にヒンジ436aの効果が打ち消される。
【0187】
スキャフォールドの時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方において等しく柔軟なスキャフォールドを構成するため、U形状部分434は、リンクのMOI部分の減少のみによって、例えば図14BのU形状部分436をMOIが減少された直線部分と置き換えることによって高い柔軟性が与えられるように除去されてもよい。交互に位置する逆U−リンク440bとU−リンク440aとを示す図14Aには別の案が描かれている。スキャフォールドが時計回りの曲げモーメントに晒される(すなわち、リング212dがリング212eに対して図14Aの下方に移動される)と、U−リンク440aのU形状部分がヒンジ点として作用する。「U」は、隣接するリング212間の相対的な動きに応じて開放し、一方、逆U−リンク440bは、逆「U」の端部同士が接触するため、本質的に直線部として機能する。同様に、スキャフォールドが反時計回りの曲げモーメントに晒される(すなわち、リング212dがリング212eに対して図14Aの上方に移動される)と、逆U−リンク440bの逆U形状部分がヒンジ点として作用する。逆「U」は、隣接するリング212間の相対的な動きに応じて開放し、一方、U−リンク440aは、スキャフォールドが撓む際に「U」の端部同士が接触するため、本質的に直線部として機能する。
【0188】
他の実施形態では、各リング間の距離を増大することによって、あるいは1つおきのリング間の距離を増大することによってMOIの減少が達成されてもよい。例えば、図2のリング212a、212b間の距離が増大されてもよい(一方、リング212c、212b間の距離は同じままである)。この例では、リング212a、212bを接続するリンクは、リング212b、212cを接続するリンクと同じMOIを有することができるが、前者のリンクは、その長さが後者のリンクよりも長いため、曲げにおいて剛性が低い。
【0189】
他の代わりの手段において、パターン400は、図14Cに描かれるように、対向する「U」形状部分または「S」部分を有するリンク442を含む。Sリンク442は、図14Bでは1つだったが、リンク442の部分435が2つのヒンジ点444a、444bを有することを除き、前述同様にNOI1、MOI2を有する。この構成により、リンク442は、時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方における曲げ柔軟性を高めるためのヒンジ点を有する。したがって、リンク442を有するパターン400においては、時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方においてより高い曲げ柔軟性を得るために同じリンク442があらゆる場所で使用されてもよい。
【0190】
図14D〜図14Fは、Y−クラウンとW−クラウンとを接続してこれらの間で延びるリンク442の更なる実施形態を示している。これらの例は、パターンがチューブから切断されるようにリンクを成形することによって、あるいはスキャフォールドがチューブから切断された後にリンクを修正することによって可変MOIを有するリンクを示している。
【0191】
図14Dおよび図14Fは、接続クラウンに隣接して配置される領域よりも小さいMOIを有する領域を有するように形成されるリンク450、454をそれぞれ示している。リンク450の場合、小さいMOIを有する領域451は、クラウンに隣接する領域における曲げの中立軸「X」からオフセットされ、あるいは中立軸「X」の周りで非対称である。リンク454の場合、領域455は、クラウンに隣接する領域における中立軸の周りで対称である。領域451、452におけるこの対称性/非対称性コントラストは、クラウンにおける対称軸に関して説明されてもよい。つまり、図から容易に特定され得るY−クラウン(210)またはW−クラウン(209)における対称軸「X」に関して、領域451はX軸の周りで非対称であり、一方、リンク454のネック領域455は、クラウン軸と見なされてもよいこの軸の周りで対称である。
【0192】
図14Eは、リンク452に2つの湾曲ボイド453a、453bを形成するためにリンクの端部間の材料が除去される例を示している。これらの実施形態は、前述した「S」リンクと同様の様式で機能してもよい。この実施形態によれば、予め定められた破壊点(リングが機能しなくなる前に機能しなくなる)がボイド453a、453b間にある。ボイド453a、453bを形成する材料は、軸X周りの対称性を保持するためにほぼ同じであってもよく、あるいは、図14Dの場合と同様に対称軸をこの軸と同一直線上にさせないように異なるサイズであってもよい。ボイドサイズの選択は、リングに対する所望の破壊特性に基づくとともに、前述したように時計回り方向および反時計回り方向での曲げにおいて小さいリンク剛性を有することが好ましいかどうかに基づく。
【0193】
他の実施形態では、リングのストラットを変更することにより、より大きな疲れ靱性および/または破壊靱性が得られてもよい。図15を参照すると、リング450がクラウン451で接続される湾曲ストラット452によって形成される点を除いてパターン300に類似するパターンが示されている。この例では、ストラット452が1つの正弦波周期に近似する形状を有する。図4の直線ストラットを正弦波ストラットと置き換えることにより、本質的に更なるヒンジ点がリングに形成される。
【0194】
図14A〜図14Cに関連して説明した変更されるリンク要素の数は、スキャフォールドのリングを接続するために使用されるリンクの5−100%であってもよい。前述したUリンクまたはSリンクは、各リング間に配置されてもよく、あるいは、1つおきのリング対間に配置されてもよい。また、リンクは、それらのMOIをUリンクまたはSリンクを伴うことなく減少させることによって変更されてもよい。更に、1つ以上の接続リンクを除去できる。接続リンクが少ない場合、例えば3〜4個の場合、スキャフォールドは、一般に、小さい曲げ剛性および軸方向剛性を有さなければならない(スキャフォールドの他の全てが変更されないことを前提とする)。しかしながら、前述したように、スキャフォールドのそのような変化における性能、再現可能性、品質制御、および、生産力への終端間または全体の影響は、残念ながら、金属ステントの場合と同様に予測するのが容易ではない。
【0195】
開示の他の態様においては、スキャフォールドパターンがクローズドセルによって形成されるリングを有する。リングのそれぞれのクローズドセルは、クローズドセルの長手方向に離間して周方向に延びるストラット部分を接続するリンク要素を共有する。これらのクローズドセルリングのそれぞれは、接続リンク、例えばクローズドセルリングを接続する構造の曲げ剛性を低下させるために小さい曲げ慣性モーメント(MOI)を有するリンク434、442、450、452または454によって相互に接続される。あるいは、接続リンクは、例えば高歪み領域の近傍に形状の急激な変化を形成することにより、予め定められた破壊点を含むことができる。図14Aを再び参照すると、図示のスキャフォールドパターンは、それぞれのクローズドセルリングに接続されるリンク440aを有する。それぞれのクローズドセル204ごとに、互いに同一直線上にある第1および第2の接続リンクが存在する。第1のリンクはクラウンに隣接して配置されるMOI1を有し、また、第2のリンクは、図14Aに示されるパターンを生成するためにクラウンの先端に配置されるMOI2を有する。あるいは、クローズドセルリングを接続するリンクは、相互に接続されるクローズドセルリングから等距離に配置されるMOI1を有してもよい。
【0196】
本開示の更なる態様によれば、予め定められた破壊点をリングを接続するリンクに含むスキャフォールドが存在する。破壊点は、リングを接続するリンクでの亀裂形成によってリング間負荷を甦らせるようになっている。予め定められた亀裂場所を含むことによってリンクを通じた十分な亀裂伝搬が存在する(負荷は亀裂にわたって伝わることができない)ときにクラウンに作用する負荷が減少されあるいは排除されるため、特に疲れ負荷に関して生体内負荷が設計を超える場合には、リンク、例えばリンク450、452を犠牲にしてリング構造の完全性を維持することができる。本開示のこの態様によれば、リンクは、高歪み領域の近傍に小さいMOIを有するとともに、急激な形状変化、例えば約90°のミッドスパンを含む。スキャフォールドにおけるこれらの予め定められた破壊点は、前述したようにクローズドセルリング間であるいはそれぞれのリングストラット間で延びてもよい。
【0197】
また、亀裂/破壊問題は、スキャフォールドの不規則なクリンプおよび/または展開の結果としても観察される。不規則な展開は、スキャフォールドが血管のための均一な径方向支持を行なうことができないという観点からだけでなく、生体内で強度および/または剛性の損失をもたらす亀裂伝搬、破壊、および、構造の降伏の観点からも問題がある。不規則な展開の例としては、クラウンがそれらの設計角度を超えて拡張されること、極端な場合には、展開またはクリンプ中にクランプが反転するあるいは座屈することが挙げられる。これらの問題はクリンププロセス中および展開中に観察された。そのような例は、米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に更に詳しく記載されている。
【0198】
パターン300は、パターン200よりも多くのこれらのタイプの問題を生じ易い場合がある。該パターンのリンクは、パターン200と比較して、W−Vクローズドセル304のVセグメントを形成するリングストラットのための支持を殆ど行なわない。w形状のクローズドセル204は、その対称性に起因して、反転などの不規則を伴うことなくうまく展開できたと考えられる。W−Vセル304に固有の非対称な負荷は、クリンプ中または展開中に座屈問題を生じ易かった。しかしながら、これらの想定し得る問題は、それらが生じる場合には、クリンププロセスに対して変更を加えることにより対処されてもよい。
【0199】
例えば、7mmの直径と非対称なクローズドセル(パターン300)とを有するスキャフォールドは、ストラットの反転が何ら観察されることなくクリンプ後に展開された。9mm直径の第2のスキャフォールドは、その後、バルーンまでクリンプされて展開された。このスキャフォールドは7mmスキャフォールドと同じパターン300を有した。ストラットまたはクラウンの角度は、直径の増大によってもたらされる径方向剛性の変化を補償するため、直径の比率分だけ、すなわち、9/7倍だけ増大された。しかしながら、9mmスキャフォールドがクリンプされると、スキャフォールドストラットに反転が生じた(主に、W−VクローズドセルのV領域で)。この問題を是正するため、Wクローズドセル(パターン200)が検査された。この修正は、反転されたストラットの事例を減らすのに役立った。驚いたことに、W−Vクローズドセルパターンを有する同等の金属ステントに関して同じ不規則なクリンプ/展開問題が観察されなかった。したがって、反転問題(特に)は高分子スキャフォールドに特有の現象であると判断された。
【0200】
反転現象を避けるため、反転現象が金属ステントで生じる場合には、ストラットの面外(弓形の反管腔側表面の外側)撓みを防止するためにストラットの慣性モーメントを調整することを考慮してもよい。しかしながら、前述したように、高分子材料は金属材料では存在しない制約または限界をもたらす。ストラットの曲げ慣性特性を変えることによるストラットの望ましくない動きを最小限に抑える場合には、一般的に言って、高分子ストラットが同様の金属ストラットよりも厚くおよび/または幅広くなければならないことに留意する必要がある。このことは、隣接するストラットと既に高い壁厚との間で利用できる空間が金属の対応物よりも少ないことを意味する。この空間問題は、展開サイズまたは展開サイズよりも大きいチューブから高分子スキャフォールドを形成する実施形態においては更に悪化される。金属ステントの場合と同様に、同じ血管部位への通過のためには、クリンプ中にスキャフォールドの直径が減少されることが望ましい。したがって、クリンプされたスキャフォールドにおける送達プロファイルは、金属ステントとほぼ同じでなければならない。
【0201】
金属ステントは、展開直径とクリンプ直径との間にあるチューブから切断されてもよい。したがって、ストラット間の間隔が更に大きく、また、ステントがバルーン上で更に容易に圧縮される。これは、クリンプ前のステントがクリンプ直径に更に近い直径を有するからである。一方、高分子スキャフォールドは、展開状態に等しいあるいはそれよりも大きい直径のチューブから切断されてもよい。これにより、より多くの材料が高分子スキャフォールドにおける送達プロファイルに密集されなければならない。したがって、高分子スキャフォールドには、クリンププロファイルおよび開始チューブ直径によって決定される更に多くの制限が課され、それにより、ストラット幅またはストラット厚に関する設計オプションが制限される。
【0202】
血管支持プロテーゼにおける良く知られた設計要件は、ステントであろうとスキャフォールドであろうと、血管の収縮によって与えられる予期される生体内径方向力を含む管腔壁の径方向内側への力に起因して所望の管腔直径を維持できるその能力である。図6A〜図6Bの例を参照すると、スキャフォールドの径方向剛性および径方向強度は、ストラットの幅、クラウン半径および角度、クラウンと谷部との間で延びるリングストラットの長さ、クラウンの数、および、スキャフォールドの壁厚(厚さ235、図3)によって影響される。後者のパラメータ(壁厚)は、前述したように締め付け剛性に影響を与える。したがって、設計プロセス中、このパラメータは、締め付け剛性および圧縮復元可能性に影響を及ぼすように変えられるが、それは径方向剛性にも影響を与える。径方向剛性に影響を与えるため、前述したパラメータのうちの1つ以上(クラウン角度、クラウン半径、リングストラット長さ、クラウン数、および、ストラット幅)が径方向剛性を増大または減少させるべく変えられてもよい。
【0203】
一例を挙げると、開始チューブ直径を8mm、9mm、または、おそらく更には10mmまで増大させることにより7mmスキャフォールドの反跳問題を克服できることが分かった場合には、スキャフォールドパターン直径の対応する変化への最初の近似は、リングストラット長さ、クラウン角度、および、リンクなどの特性を、直径の比率分だけ、例えば外径を7mmから8mmへ増大させるときには8/7だけ増大させることを伴った。しかしながら、この大マーカな近似は、圧縮復元可能性などの他の所望の特性を保つのに不十分であることが分かった。したがって、更なる改良が必要とされた。
【0204】
径方向剛性と前述のパラメータとの間の関係は良く知られている。しかしながら、たとえ現在の技術で知られている場合であって、これらの剛性−変化パラメータと、バルーン拡張型ステントの圧縮復元可能性との間の関係、ましてやバルーン拡張型スキャフォールドとの関係については良く知られていない。したがって、設計プロセスは、これらの関連するスキャフォールド特性を圧縮復元可能性にかなりの悪影響を及ぼすことなく改善できるかどうかを決定するために剛性パラメータが変えられた場合には、径方向剛性、締め付け剛性、および、圧縮復元可能性の間での持続的な比較または評価を必要とした(クリンプ中および展開中に変化が降伏問題または破壊問題ももたらさなかったと仮定する)。
【0205】
これらのパラメータを変えて剛性に影響を与えると、9クラウンスキャフォールドおよび8クラウンスキャフォールドにおいて以下の観察がなされた。9クラウンパターンおよび7〜9mm外径においては、115°を超える角度が、高い径方向剛性をもたらす一方で、展開時に破壊問題を呈するとともに、圧縮復元可能性の不満足な減少も呈した。許容できる結果をもたらすことが分かったストラットまたはクラウンの角度は約105°〜95°であった。8クラウンスキャフォールドにおいては、115°よりも小さい角度がクラウンにとって好ましかった。8クラウンスキャフォールドにおいては、角度がほぼ110°を下回る。一般的に言うと、クラウンが多くなればなるほど、スキャフォールドが径方向で更に柔軟になり、クラウン角度が大きくなればなるほど、スキャフォールドの径方向の柔軟性が低くなる。
【0206】
コントロールステント、Igaki−Tamaiステント、および、Absoluteステント(8.5mm外径、36m長)と共にV2、V23、V59構成スキャフォールド(図6A〜図6Bにまとめられた特性を有する)の電子ビーム殺菌後に平均径方向強度値(N/mm)と径方向剛性値(N/mm)との間で比較が行なわれた。表5は結果をまとめている。
【0207】
表5:径方向の強度および剛性の比較
【表5】
【0208】
V2、V23、V59は、Igaki−Tamaiステントよりもかなり優れた強度値および剛性値を有した。0.014”のV23が最も高い径方向剛性を有した。V2、V23、V59の強度値および剛性値は自己拡張型ステントに匹敵した。
【0209】
また、本開示に係るスキャフォールドの締め付け剛性間でも比較が行なわれた。値は、3つのサンプルに基づくN/mmの単位の平均値を表わす。剛性値は、20℃で平坦プレート試験を使用して、スキャフォールドをその開始直径、例えば拡張直径または膨張直径の1/2、すなわち、50%まで圧縮するために必要とされる測定力から計算された。
【0210】
表6:締め付け剛性
【表6】
【0211】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、径方向剛性に対する締め付け剛性の比率が約4〜1、3〜1、または、より狭くは約2〜1であり、壁厚に対する締め付け剛性の比率が約10〜70、または、より狭くは20〜50、あるいは、更に狭くは約25〜50であり、また、締め付け剛性に対するスキャフォールド膨張直径の比率が約15〜60、または、より狭くは約20〜40である。
【0212】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.6〜1.8N/mm2である。
【0213】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.08〜0.18N/mm3である。
【0214】
動物研究
図6A〜図6Bに記載されるスキャフォールドに関して2つの動物研究(「研究1」および「研究2」)が行なわれた。スキャフォールドは、高分子スキャフォールドの有効性を評価するために、28日、90日、および、180日にわたって健康な豚モデルの大腿動脈中に埋め込まれた。
【0215】
研究1:V2と、8mm外径および40mm長さを有するCordis(特許商標)S.M.A.R.T.(特許商標)CONTROL(特許商標)Lliac自己拡張スント(以下、「コントロールステント」)とを比較する。研究で調査された埋め込まれたV2およびコントロールステントの特徴のうちの1つは、埋め込み後28日、90日、180日における健康な動脈に対する埋め込みプロテーゼの慢性的な外向きの力によって引き起こされる効果の度合いおよび関連する合併症である。
【0216】
研究2:V23−008とV23−014とを比較して、壁厚がスキャフォールド性能に対して与えた影響、主に、管腔面積の損失、スキャフォールド面積、および、新生内膜厚の成長を決定する。
【0217】
研究の過程にわたって、埋め込まれたプロテーゼは、豚による様々な度合いの腰伸長および曲げに晒され、これにより、腰および膝の最大曲げ中に、埋め込みスキャフォールドおよびコントロールステントに約10〜12%曲げおよび約13〜18%軸方向圧縮が課されると考えられる。
【0218】
図16は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を使用して測定されたコントロールステントおよびスキャフォールドにおける動脈の平均最小管腔直径(MLD)を示すプロットである。測定値は、28日、90日、および、180日後に取得された。28日後、スキャフォールド平均MLDは約3.6mm(15サンプル)であり、一方、コントロールステント平均MLDは約4.7mm(13サンプル)であった。90日後、スキャフォールド平均MLDは約4.4mm(7サンプル)であり、また、コントロールステント平均MLDは約3.6mm(5サンプル)であった。180日後、スキャフォールド平均MLDは約4.4mm(9サンプル)であり、また、コントロールステント平均MLDは約4.0mm(7サンプル)であった。28、90、180日後のコントロールステントにおける平均MLDの変化は、スキャフォールドにおける平均MLDの変化よりもかなり大きかった。
【0219】
図17は、28、90、180日後の平均新生内膜厚(OCTにより測定された)を示している。28日では、平均コントロールステント新生内膜厚が約0.4mm(15サンプル)であり、一方、平均スキャフォールド新生内膜厚は約0.2mm未満(13サンプル)であった。90日では、コントロールステントにおける平均新生内膜厚が約0.43(7サンプル)まで増大し、一方、スキャフォールドにおける平均新生内膜厚は約0.1mm(5サンプル)まで減少した。180日では、コントロールステントの平均新生内膜厚が0.55mmまで増大し、一方、スキャフォールド平均新生内膜厚は約0.19mmまで増大した。28、90、180日では、コントロールステントにおける新生内膜厚の変化は、スキャフォールドにおけるよりもかなり高かった。なお、PLLAスキャフォールドは組織成長を低下させるために薬剤コーティングを含んだが、コントロールステントは同様の薬剤コーティングを有さなかったことに注意したい。
【0220】
図18は、OCTを使用して28、90、180日後に測定された狭窄の大きさを示している。28日後、狭窄の大きさは、コントロールステントおよびスキャフォールドにおいてそれぞれ約22%および18%であった。90日後、コントロールステントにおける狭窄の大きさは約25%まで増大し、一方、スキャフォールドの狭窄は約5%まで減少した。180日後、コントロールステントにおける狭窄の大きさは約25%にとどまり、一方、スキャフォールドの狭窄は約4%まで減少した。28、90、180日後、コントロールステントにおける狭窄の変化はスキャフォールドよりもかなり大きかった。
【0221】
図19は、埋め込み後180日で取得された、埋め込まれたスキャフォールドおよびコントロールステントのそれぞれの血管造影画像を示している。暗領域は、プロテーゼが埋め込まれた管腔のサイズを示す。これらの画像から分かるように、コントロールステントの近傍の管腔はかなり狭かった。図16、図17、図18における新生内膜厚の増大、MLDの減少、および、コントロールステントの近傍の狭窄の増大はそれぞれ、自己拡張型コントロールステントによって動脈に課される慢性的な外向きの力のしるしであると考えられる。
【0222】
図20および図21は、QVA測定技術(医師により一般に使用される)を使用した28、90、180日におけるプロットを示している。図20は、コントロールステントおよびスキャフォールドにおける平均・変化後期損失(埋め込み後の管腔直径の損失)を描いている。図21は、コントロールステントおよびスキャフォールドにおけるMLDに関する平均および変化を示している。
【0223】
図22および図23はそれぞれ、コントロールステントおよびV2スキャフォールドにおける組織形態計測による組織形態計測的な面積狭窄および新生内膜肥厚の28日および90日におけるプロットである。これらのプロットはいずれも、面積狭窄および新生内膜成長の安定したあまり好ましくない増大を示し、一方、スキャフォールドにおける面積狭窄および新生内膜成長は、ほぼ一定しており、コントロールステントよりも少なかった。
【0224】
図24は、28日後および90日後の0.008”壁厚を有するV23(「V23/008」)と0.014”壁厚を有するV23(「V23/014」)とを最小管腔面積および最小スキャフォールド面積に関して比較している。最小管腔面積および最小スキャフォールド面積はいずれも0.014”壁厚を有するV23において高かった。図25は、28日後および90日後における管腔面積損失を示している。0.014”壁厚を有するV23は、0.008”壁厚を有するV23よりも管腔面積損失が小さかった。また、0.014”壁厚を有するV23においては、サンプル間であまり変化がなかった。図26は、0.008”壁厚を有するV23と0.014”壁厚を有するV23との間の平均新生内膜厚を示している。0.014”壁厚が埋め込まれたときには、スキャフォールドの管腔表面上で組織成長が殆ど見られなかった。
【0225】
コントロールステントとV2スキャフォールドとを比較する30、90、180日動物研究は、スキャフォールドがコントロールステントと比べて慢性的な外向きの力と関連付けられる問題を殆ど呈さないことを示唆する。0.008”壁厚スキャフォールドと0.014”壁厚スキャフォールドとを比較する30、90日研究は、スキャフォールドに関してより大きな壁厚が使用される場合には、スキャフォールド直径、管腔直径の損失が小さく、新生内膜成長が殆どないであろうことを示唆する。
【0226】
本発明の特定の実施形態を図示して説明してきたが、当業者であれば分かるように、この発明のその広い態様から逸脱することなく変更および改良をなすことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、この発明の思想および範囲内に入るそのような変更および改良の全てをそれらの範囲内に包含するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤溶出医用器具に関し、特に、本発明は送達バルーンによって拡張される高分子スキャフォールドに関する。
【背景技術】
【0002】
放射状に拡張可能な体内プロテーゼは、解剖学的管腔に埋め込まれるようになっている人工器具である。「解剖学的管腔」とは、血管、尿路、胆管などの管状器官の腔、管のことである。ステントは、略円筒形状でかつ解剖学的管腔の一部を開放状態に保持し、時として拡張させる機能を果たす体内プロテーゼの例である(ステントの一例がLau等の米国特許第6,066,167号明細書において見出される)。ステントは、しばしば、血管のアテローム硬化性狭窄の治療で使用される。「狭窄」とは、身体の通路またはオリフィスの直径が狭いことあるいは収縮していることである。そのような治療において、ステントは、血管の壁を補強し、脈管系における血管形成後の再狭窄を防止する。「再狭窄」とは、血管や心臓弁が明らかな成功をもって(バルーン血管形成術、ステント留置術、または、弁形成術などによって)治療された後の血管や心臓弁における狭窄の再発のことである。
【0003】
ステントを用いた患部や病変の治療は、ステントの送達および展開の両方を伴う。「送達」とは、解剖学的管腔を通じて病変などの所望の治療部位にステントを導入して輸送することである。「展開」とは、治療領域の管腔内でのステントの拡張に対応する。ステントの送達および展開は、カテーテルの一端の周囲にステントを位置決めして、カテーテルの端部を皮膚を通じて解剖学的管腔へ挿入し、カテーテルを所望の治療位置に解剖学的管腔内で押し進めて、ステントを治療位置で拡張させ、カテーテルを管腔から除去することによって達成される。
【0004】
バルーン拡張型ステントの場合には、ステントは、カテーテル上に配置されるバルーンの周囲に装着される。ステントの装着は、一般的に、解剖学的管腔内への挿入前にステントをバルーン上まで圧縮させあるいはクリンプすることを伴う。管腔内の治療部位では、バルーンを膨張させることによってステントが拡張される。その後、バルーンが収縮されて、カテーテルがステントおよび管腔から引き出され、それにより、治療部位にステントが残されてもよい。自己拡張型ステントの場合、ステントは、引き込み可能なシースを介してカテーテルに固定されてもよい。ステントが治療部位にあるとき、シースが引き出されてもよく、それにより、ステントが自己拡張できる。
【0005】
ステントは、多くの基本的な機能要件を満たすことができなければならない。ステントは、それが展開後に血管の壁を支持するときにステントに課される構造的な負荷、例えば径方向圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントは、適切な径方向強度を有さなければならない。展開後、ステントは、それに作用するようになる様々な力にもかかわらず、その耐用年数の全体にわたってそのサイズおよび形状を適切に維持しなければならない。特に、ステントは、これらの力にもかかわらず、所望の治療時間にわたって血管を所定の直径に適切に維持しなければならない。治療時間は、血管壁が作り変えられるために必要な時間に対応し得る。その治療時間後、ステントは、所望の直径を維持するために血管にとってもはや不要となる。
【0006】
径方向圧縮力に耐えることができるステントの能力である径方向強度は、ステントの径方向降伏強度と、ステントの周方向にわたる径方向剛性とに関連する。ステントの「径方向降伏強度」または「径方向強度」は、(この出願の目的のため)これを超えればステント直径がステントの無負荷直径まで戻らなくなる、すなわち、ステントの回復不可能な変形が存在する降伏応力状態をもたらす圧縮負荷として理解されてもよい。径方向降伏強度を超えると、ステントが更に激しく降伏することが予期され、また、大きな変形を引き起こすのに最小限の力だけで済む。
【0007】
径方向降伏強度を超える前であっても、径方向圧縮後にステントに永久的変形が存在する場合があるが、ステントのある場所におけるこの永久変形の度合いは、血管を径方向で支持できるステントの全体の能力に大きな影響を及ぼすほど激しくはない。したがって、ある場合において、当技術分野は、「径方向降伏強度」を最大径方向負荷と見なす場合があり、この最大径方向負荷を超えると、スキャフォールド剛性が劇的に変化する。「径方向降伏強度」単位は、時として、力を長さで割ったものであり、これは単位長さ当たりの径方向降伏強度の表現である。したがって単位長さ当たりの径方向降伏強度、例えばFN/mmにおいて、径方向負荷、すなわち、この値を超えると2つの異なる長さL1、L2を有するステントにおける剛性のかなりの変化をもたらす。径方向負荷は、それぞれ積F×L1およびF×L2となる。しかしながら、値Fは両方のケースで同じであり、そのため、都合の良い表現を使用して、ステントの長さとは無関係な径方向降伏強度を認識できる。一般に、剛性が失われるポイントを特定する径方向力は、ステント長さが変化するときに単位長さ当たりで大きく変化しない。
【0008】
冠状動脈に埋め込まれるステントは、主に、血液が鼓動する心臓へ圧送されかつ血液が鼓動する心臓から圧送される際の血管の周期的な収縮および拡張に起因する径方向負荷、一般的には本質的に周期的な負荷に晒される。しかしながら、抹消血管、または、冠状動脈外の血管、例えば腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、腎動脈、および、鎖骨下動脈に埋め込まれるステントは、径方向力および圧縮負荷または締め付け(pinching)負荷の両方に耐えることができなければならない。これらのステントタイプは、身体の表面に近い血管に埋め込まれる。これらのステントは、身体の表面に近いため、圧縮負荷または締め付け負荷に対して特に脆く、そのため、ステントが部分的にあるいは完全に押し潰れる可能性があり、それにより、血管内での流体流れが妨げられる。
【0009】
径方向負荷に制限される冠動脈ステントと比較して、末梢血管ステントは、Duerig、Tolomeo、Wholey、Overview of superelastic stent Design、Min Invas Ther & Allied Technol 9(3/4)、pp.235−246(2000)and Stoeckel、Pelton、Duerig、Self−Expanding Nitinol Stents−Material and Design Considerations、European Radiology(2003)に記載されるように、締め付け負荷または圧縮負荷と径方向負荷との間のかなりの差異を考慮に入れなければならない。また、ステントの対応する圧縮剛性特性および径方向剛性特性も劇的に変化し得る。したがって、特定の度合いの径方向剛性を有するステントは、一般的に言って、該ステントによって所有される締め付け剛性の度合いも示さない。2つの剛性特性は同じではなくあるいは更には類似してもいない。
【0010】
大腿動脈内に埋め込まれる末梢血管ステントにおいて予期される断面圧縮の大きさは、高齢患者の動脈では、大腿動脈の上部、中間部、および、下部で5.8+/−7%、6.5+/−4.9%、および、5.1+/−6.4%程度になると推定され、また、若い患者では、2.5+/−7.7%、−0.8+/−9.4%、および、−1.5+/−10.5%になると推定された。末梢血管ステントにおける他の考慮すべき事項は、ステントが強度/剛性の機械損失を伴うことなく耐えることができる曲げおよび軸方向圧縮の度合いである。冠動脈ステントと比較して、末梢血管ステントは、通常、一例として、表在大腿動脈中に埋め込まれるときに約36〜40mmの長さを有する。したがって、ステントは、破損することなく軸方向圧縮負荷および曲げ負荷に耐えるのに十分に柔軟でなければならない。予期される曲げおよび軸方向圧縮の大きさは、Nikanorov、Alexander、MD et al.、Assessment of self−expanding Nitinol stent deformation after chronic implantation into the superficial femoral arteryにおいて研究されて報告された。
【0011】
今まで、最も一般的に使用されるタイプの末梢血管ステントは、ニチノールなどの超弾性材料から形成される自己拡張型ステントである。このタイプの材料は、圧縮負荷や長手方向の曲げなどの急激な変形後にその当初の形状まで戻ることができることで知られている。しかしながら、この様々な自己拡張型ステントは品質が望ましくない。最も顕著なものとして、超弾性材料の高い弾力性は、ステントによって支持される血管に作用する「慢性的な外向きの力(COF)」と一般に呼ばれるものをもたらす。COFに起因する合併症は、Schwartz、Lewis B.et al.Does Stent Placement have a learning curve:what mistakes do we as operators have to make and how can they be avoided?、Abbott Laboratories; Abbott Park、IL.、USAに記載されている。自己拡張型ステントによって血管に作用するCOFは、自己拡張型ステントによって治療される病変の高い度合いの再狭窄の主な要因であると考えられる。薬剤溶出自己拡張型ステントから送達される抗増殖薬剤であってもステントのCOFに起因する再狭窄を軽減できないことが分かった。
【0012】
血管を支持するためにバルーンによって塑性変形されるステントは、この欠点に見舞われない。確かに、バルーン拡張型ステントは、超弾性材料から形成される自己拡張型ステントとは対照的に、外向きの残留力を血管に対して及ぼすことなく血管を支持するのに望ましい直径まで展開できるという望ましい品質を有する。しかしながら、従来技術は、塑性変形されたステントが、いったん末梢動脈内で押し潰され、締め付けられ、あるいは、圧縮されると、そのままとなり、血管を永久的に遮ると結論付けてきた。したがって、従来技術は、塑性変形されたステントが、望ましくない状態を患者に対してもたらすため、末梢血管を治療するために使用されるべきでないと結論付けてきた。
【0013】
例えば米国特許出願公開第2010/0004735号明細書に記載されているように、高分子スキャフォールドは、生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、または、生体浸食性の高分子から形成される。生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、生体溶解性、または、生体浸食性という用語は、分解する、吸収する、再吸収する、または、埋め込み部位から離れるように浸食する材料またはステントの特性を指す。米国特許出願公開第2010/0004735号明細書に記載される高分子スキャフォールドは、金属ステントとは対照的に、限られた期間のみにわたって身体内にとどまるようになっている。スキャフォールドは、生体分解性または生体浸食性高分子から形成される。多くの治療用途では、体内でのステントの存在は、例えば血管開通性を維持するおよび/または薬剤送達というその意図される機能が達成されるまで限られた時間にわたって必要となり得る。また、生体分解性のスキャフォールドは、金属ステントに比べて解剖学的管腔の治癒を高めることができ、それにより、後期血栓症の発生率の低下につながる可能性があると考えられる。これらのケースでは、血管内でのプロテーゼの存在が限られた継続時間にわたるように、金属ステントではなく、高分子スキャフォールドを使用して、特に生体浸食性の高分子スキャフォールドを使用して血管を治療することが望ましい。しかしながら、高分子スキャフォールドを開発する際には克服すべき多くの課題がある。
【0014】
当技術分野は、クリンプ力やバルーン拡張力などの外的負荷に晒される際にその構造的完全性および/または形状を保持できる高分子スキャフォールドの能力に影響を及ぼす様々な要因を認識する。これらの相互作用は複雑であり、作用のメカニズムは完全に理解されていない。当技術分野によれば、塑性変形によって展開状態まで拡張されるタイプの高分子生体吸収性スキャフォールドを同様に機能する金属スキャフォールドから区別する特徴は、多く、そして、重要である。確かに、金属製のスキャフォールドの挙動を予測するために使用される許容された分析的または経験的な方法/モデルのうちの幾つかは、不適切ではないにしろ、バルーン拡張型スキャフォールドの高分子耐負荷構造の非常に非線形な時間に依存する挙動を確実にかつ一貫して予測するための方法/モデルとして信頼できないところがある。該方法は、一般に、スキャフォールドを体内に埋め込むあるいは経験的データを予測する/予期するために必要とされる許容できる程度の確実性を与えることができない。
【0015】
また、医用器具に関連するバルーン、例えばスキャフォールド展開および/または血管形成のための非順応性バルーンの製造における最先端の技術は、高分子材料がストラットによって相互に接続されるリングの網状体の塑性変形により生体内の管腔を支持するために使用される際にどのように振る舞うことができるのかに関して限られた情報しか提供しないと認識される。要するに、バルーンが膨張されて管腔を支持しているときに、負荷が掛けられる前の膜の機械的特徴に最も似ている膨張された薄壁バルーン構造の機械的特徴を向上させるように工夫される方法は、展開された高分子スキャフォールドの挙動への見識を、たとえあったとしても僅かしか与えない。1つの違いは、例えば、高分子スキャフォールドでは破壊または亀裂が生じ易いことである。当技術分野は、機械的な問題があまりにも異なっており、したがって、ある種の材料の類似性を共有するにもかかわらず、有益な見識を与えることができないと認識する。せいぜい、バルーン製造技術は、バルーン拡張型の生体吸収性高分子スキャフォールドの特性を向上させようとする者に対して一般的な指針を与えるにすぎない。
【0016】
高分子スキャフォールドとして使用するために考えられた高分子材料、例えば、ポリ(L−ラクチド)(「PLLA」)、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLGA」)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)、または、10%未満のD−ラクチドを伴うポリ(L−ラクチド−コ−D−ラクチド)(「PLLA−コ−PDLA」)、および、PLLD/PDLAステレオコンプレックスは、ステントを形成するために使用される金属材料との比較により、以下の何らかの方法で説明されてもよい。適した高分子は重量に対する強度の比率が低く、そのため、等価な機械的特性を金属のそれに対して与えるために、より多くの材料が必要とされる。したがって、ステントが所望の半径で管腔壁を支持するために必要な強度を有するために、ステントを更に厚くかつ更に幅広くしなければならない。また、そのような高分子から形成されるスキャフォールドは、脆くなり易く、あるいは、限られた破壊靱性を有する。材料に固有の異方性特性および速度に依存する非弾性特性(材料の強度/剛性は、材料が変形される速度に応じて異なる)は、高分子、特にPLLAまたはPLGAなどの生体吸収性高分子と協働して、この複雑さの度合いを増す。
【0017】
したがって、一般に懸案事項を生じない、あるいは、材料の平均的な機械特性の予期しない変化に注意深い配慮を要しない金属ステントで行なわれる処理ステップ、および、金属ステントに対してなされる設計変更は、同様の負荷条件下にある高分子の機械的特性の非線形な、時として予測できない性質に起因して、高分子スキャフォールドに適用できない場合がある。それは、時として、より一般的に特定の状態が1つの要因に起因するのかあるいは他の要因に起因するのかどうか−例えば欠陥だったかどうかにかかわらず、製造プロセスの1つ以上のステップ、あるいは、スキャフォールド製造後に行なわれるプロセスにおける1つ以上のステップ、例えばクリンプの結果を予測することが可能になる前であっても広範囲に及ぶ検証に取り組む必要があるケースである。結果として、製造プロセス、製造後プロセスの変更、または、スキャフォールドパターン設計の比較的軽微な変更は、一般的に言って、高分子の代わりに金属材料が使用された場合よりも徹底的に吟味されなければならない。したがって、異なる高分子スキャフォールド形状の中からその改良のために選択する際には、生産的でない経路を除いて、より生産的な経路に導くためのツールとして利用できる推論、理論、または、系統的発見方法は、金属ステントにおいて変更を成す場合よりもかなり少ない。
【0018】
したがって、本発明者等は、等方性の延性金属材料が使用されたときのステント検証または実現可能性に関して当技術分野で既に許容された推論が高分子スキャフォールドにとって適切でないと認識する。高分子スキャフォールドパターンの変更は、管腔を支持するその展開状態におけるスキャフォールドの剛性または管腔被覆率に影響を与えるだけでなく、スキャフォールドがクリンプされあるいは展開されているときに破壊が生じる性向にも影響を与える場合がある。これは、金属ステントと比べて、一般に、変更されたスキャフォールドパターンが不利な結果をもたらし得ないかどうかあるいは処理ステップ(チューブ形成、レーザ切断、クリンプなど)の大きな変更を必要とし得ないかどうかに関してなされ得る仮定が存在しないことを意味する。簡単に言えば、ステント製造プロセスを簡略化する金属の非常に有益な固有の特性(一般的には、変形速度または負荷方向に対して不変の応力/歪み特性、および、材料の延性)により、変更されたステントパターンおよび/または処理ステップと、新たなパターンを伴いかつ生体内に埋め込まれる際に不具合を伴わないステントを確実に製造できるようにする能力との間で推論を更に容易に引き出すことができる。
【0019】
塑性変形される高分子スキャフォールドのストラットおよびリングのパターンの変更は、クリンプされるときおよびその後にバルーンにより展開されるときのいずれにおいても、残念ながら、金属ステントの場合と同じあるいは同様の程度まで予測できない。確かに、高分子スキャフォールド製造ステップでは、代わりにパターンが金属チューブから形成された場合に何ら変更を必要としなかったパターン変更の結果として予期されない問題が生じ得ると認識される。金属ステントパターンの変更とは対照的に、高分子スキャフォールドパターンの変更は、製造ステップまたは製造後処理、例えばクリンプおよび滅菌において他の修正を必要とする場合がある。
【0020】
前述した要件を満たすことに加えて、スキャフォールドを放射線不透過性にするあるいはx線透視下で見えるようにすることが望ましい。正確な配置は、スキャフォールドの送達のリアルタイムな視覚化によって容易化される。心臓科医またはインターベンショナル・ラジオロジストは、患者の脈管構造を通じて送達カテーテルを追跡し、病変部位にスキャフォールドを正確に配置できる。これは、一般に、蛍光透視または同様のX線視覚化法によって達成される。スキャフォールドをX線透視下で見えるようにするためには、スキャフォールドが周辺組織よりも多くのX線を吸収しなければならない。スキャフォールドにおけるX線不透過性材料がその直接的な視覚化を可能にしてもよい。しかしながら、生体分解性高分子スキャフォールド(および、一般に炭素、水素、酸素、および、窒素から成る高分子)の重大な欠点は、それらが放射線不透過性を伴わない放射線透過性であるという点である。生体分解性高分子は、身体組織に類似するx線吸収性を有し易い。この問題に対処する1つの方法は、X線不透過性マーカをスキャフォールドの構造要素に取り付けることである。X線不透過性マーカは、マーカが構造要素に固定されるように構造要素内に配置することができる。しかしながら、高分子ステントにおけるステントマーカの使用は、多くの難問を伴う。1つの難問は、マーカの挿入の困難性に関連する。これらの困難性および関連する困難性は米国特許出願公開第2007/0156230明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
末梢血管を治療するためのプロテーゼであって、バルーン拡張型ステントの望ましい品質を有し、(自己拡張型ステントの場合と同様に)外向きの残留力を血管に及ぼさないと同時に、一般に冠状動脈スキャフォールドでは受けない末梢血管内で予期される他の負荷事象に加えて締め付け負荷または圧縮負荷から末梢血管内で復元できる十分な弾力性を有するプロテーゼを開発する必要がある。また、末梢血管を支持するために必要とされる最小径方向強度および剛性、小さい交差形状、および、血管内での限られた存在を少なくともプロテーゼが有することができるようにそのような高分子スキャフォールドを製造することも必要である。また、標準的な撮像技術を使用してその係留中に容易に監視されかつ歩留まりの高い製造が可能なスキャフォールドの必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、50%圧縮負荷後に高い圧縮復元可能性、例えば少なくとも約90−95%の圧縮復元可能性を含む前述したニーズに対処するのに適した高分子スキャフォールドを提供する。スキャフォールドは高分子チューブから切断されて、バルーンまでクリンプされる。したがって、本発明は、チューブから切断されて末梢血管スキャフォールドとして使用するのに適するバルーン拡張型の塑性変形スキャフォールドを提供する。このようにすると、本発明を実施することにより自己拡張型ステントの欠点を除去することができる。
【0023】
今まで、当技術分野は、末梢血管の支持および処置のために金属または合金に依存してきた。前述したように、金属ステントは埋め込まれると体内に永久にとどまるが、これは望ましくない。したがって、閉塞血管を処置した後に溶解する材料から形成されるスキャフォールドが金属ステントよりも好ましい。しかしながら、高分子は金属よりもかなり柔軟である。高分子が金属の代替物としての役目を果たす場合には、新たな設計手法が必要とされる。
【0024】
高分子スキャフォールドにおいては、大きな径方向力、小さいクリンプ形状、および、圧縮復元が必要とされる。これらのニーズを満たすように材料を改質できない場合には、ストラットのスキャフォールド網状体の設計変更が必要とされる。径方向降伏強さを高めるための幾つかの既知の手法が存在する。1つの手法は壁厚を増大させることであり、他の手法はストラット幅を増大させることである。しかしながら、これらの変更は、クリンプ状態で器具の大きな形状をもたらす。したがって、器具の小さなクリンプ形状および大きい剛性および強度は、必要であるが、これまで当技術分野において扱われていない。
【0025】
言うまでもなく、本明細書中に開示される高分子スキャフォールドの態様は、末梢血管で用いるバルーン拡張型ステントまたはスキャフォールドの適合性に関して当技術分野においてこれまでになされた結論と相反する。自己拡張ステントに関する問題は知られている。したがって、代替物が求められる。しかしながら、従来の見識は、自己拡張ステントとは対照的に、十分な径方向の強度および剛性を有するバルーン拡張ステントが、特に高い曲げ力および/または圧縮力を埋め込みプロテーゼに与える血管において適した代替物ではないというものである。
【0026】
本発明によれば、望ましい径方向の剛性および強度、破壊靱性、および、目標送達直径までクリンプされ得る能力を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、3つの競合する設計属性、すなわち、径方向強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性を適切に釣り合わせる。
【0027】
明細書中には、これらの競合する必要性を効果的に釣り合わせることができ、それにより、慢性的な外向きの力を受けるプロテーゼに代わるものを与えるスキャフォールドの実施形態が開示されている。本開示から分かるように、少なくとも以下の必要性に対処できるスキャフォールドの特徴をより良く理解するために、様々な高分子スキャフォールドの組み合わせが製造されて検査された。
所望の最小径方向剛性および強度、反跳(recoil)、展開能力、並びに、クリンプ形状を犠牲にしないスキャフォールドの圧縮復元可能性;
展開時の急激な反跳 − バルーンによる展開の30分以内の直径減少の大きさ;
送達/展開形状 − すなわち、スキャフォールドがクリンプ中に構造的完全性を維持しつつサイズを減少できる大きさ;
生体内径方向降伏強さ、および、径方向剛性;
バルーンによる拡張時およびクリンプ時、または、血管内への埋め込まれて曲げ負荷、軸方向圧縮負荷、および、径方向圧縮負荷の組み合わせに晒される時の亀裂形成/伝搬/破壊;
バルーンによる拡張時のスキャフォールドリングの展開の不均一性;および、
締め付け/圧縮剛性。
【0028】
末梢血管に埋め込まれたスキャフォールドの生体内動物試験を含んだこれらの研究に基づいて、本発明は、復元可能性を含む所望の特性を示す高分子スキャフォールドを特徴付ける以下の関係を与える。
壁厚に対する外径の比率;
ストラット幅に対する外径の比率;
締め付け剛性に対する径方向剛性の比率;
スキャフォールド直径に対する締め付け剛性の比率;
スキャフォールド直径に対する径方向剛性の比率;
ストラットまたはリンクの幅に対するその厚さの比率;
ストラット慣性モーメントに対するクリンプ前スキャフォールド直径の比率。
【0029】
前記必要性を満たすスキャフォールドの機械的特性を特徴付ける更なる関係が本開示から推測されてもよい。
【0030】
本発明の一態様によれば、圧縮復元性と良好な径方向強度および剛性を有する高分子スキャフォールドは、材料特性間および/またはスキャフォールド寸法間の以下の関係のうちの1つ以上を有する。言うまでもなく、これらの関係は、本明細書中に開示されるように、また、本開示の全体にわたって、臨床目的を達成するのに比類なく適する圧縮復元可能なスキャフォールドのために必要とされるスキャフォールドの重要な特徴を明らかにするスキャフォールド構造特性、材料、および、寸法の間のこれまで知られていない関係を含む。したがって、本発明は、血管を支持するために必要とされる所望の剛性および強度特性を有する圧縮復元可能なスキャフォールドをもたらすために、特定の関係、例えば、1つ以上の更なるスキャフォールド寸法との組み合わせで使用される無次元数、例えば膨張直径、アスペクト比、クラウン角度、壁厚の特定を含む。
【0031】
本発明の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドのリングを形成するストラットは、約0.8〜1.4のアスペクト比(AR)を有する。アスペクト比(AR)は、厚さに対する断面幅の比率として規定される。したがって、0.0116の幅および0.011の壁厚を有するストラットにおいては、ARが1.05である。
【0032】
本発明の他の態様によれば、リンクがスキャフォールドのリングを接続する。リンクのARは約0.4〜0.9であってもよい。
【0033】
本発明の他の態様によれば、リンクおよびストラットの両方のARは約0.9〜1.1または約1であってもよい。
【0034】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドがバルーンカテーテルの送達バルーンまでクリンプされる。バルーンは、クリンプ前のスキャフォールドの直径よりも小さい最大拡張直径を有する。スキャフォールドは、7〜10mm、または、より狭くは7〜8mmのクリンプ前直径を有するとともに、50%圧縮からの少なくとも80%の復元可能性を保持しつつ所望の締め付け強度を有する。
【0035】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、少なくとも0.5N/mmの所望の締め付け剛性、少なくとも0.3N/mmの径方向強度、および、少なくとも0.008”または0.008”〜0.012”の壁厚を有する。スキャフォールドは、少なくとも約30%圧縮後にその直径の少なくとも80%を復元できる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、0.008”〜0.014”、あるいは、更に狭くは0.008”〜0.011”の壁厚を有する9mmのスキャフォールド(クリンプ前直径)は、50%の圧縮復元可能性を保ちつつ所望の締め付け剛性を与える。より一般的には、壁厚に対するクリンプ前直径またはチューブ直径の比率が約30〜60または約20〜45であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。また、幾つかの実施形態では、壁厚に対する膨張直径の比率が約25〜50または約20〜35であると見出された。
【0037】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.6〜1.8N/mm2である。
【0038】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.08〜0.18N/mm3である。
【0039】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、径方向剛性に対する締め付け剛性の比率が約4〜1、3〜1、または、より狭くは約2〜1であり、壁厚に対する締め付け剛性の比率が約10〜70、または、より狭くは20〜50、あるいは、更に狭くは約25〜50であり、また、締め付け剛性に対するスキャフォールド膨張直径の比率が約15〜60、または、より狭くは約20〜40である。
【0040】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、9個または8個のクラウンを備えるリングを有する。9クラウンパターンおよび7〜9mmの外径において、クラウン角度は115°未満であり、より好ましくは、クラウン角度は105°〜95°である。8クラウンパターンおよび7〜9mmの外径においては、クラウン角度が約110°未満である。
【0041】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、約0.3N/mmよりも大きいあるいは約0.32〜0.68N/mmの径方向強度、および、約0.5N/mmよりも大きいあるいは約0.54N/mm〜1.2N/mmの径方向剛性を有する。スキャフォールドは、約0.008”〜0.014”の壁厚を有してもよく、また、6.5mm非順応性バルーンによって約2mmクリンプ形状から展開され、あるいはバルーンカテーテル上での約2mmの交差形状から約6.5mm〜7mmの直径まで展開されるように構成されてもよい。スキャフォールドストラットおよび/またはリンク要素は、1.0以上のARを有してもよい。
【0042】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その直径の50%まで締め付けられた後にその直径の80%を超えて復元し、また、締め付け状態は1〜5分間にわたって維持される。
【0043】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その直径の25%まで締め付けられた後にその直径の90%を超えて復元し、また、締め付け状態は1〜5分間にわたって維持される。
【0044】
本発明の他の態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、接続リンクの外周に配置されてスキャフォールドの隣接するリングから離間される一対のマーカを含むマーカ構造を含み、この場合、クリンプ形状はマーカを伴ってもあるいは伴わなくても同じとなるようになっている。あるいは、本発明の他の態様によれば、放射線不透過性箔がスキャフォールドのリンクの周囲に巻回されて所定位置に保持される。
【0045】
本発明の他の態様によれば、約0.008”〜0.014”の壁厚と約7mm〜10mmの外径とを有する高分子スキャフォールドが前述の必要性を満たすことができた。
【0046】
本発明の他の態様において、圧縮復元可能なスキャフォールドは、7mm、8mm、および、9mmの外径から2mmの外径までクリンプされるとともに、高分子、特にPLLAなどの脆い高分子がスキャフォールド構造を形成するために使用される際に典型的な懸案対象であるストラットの破壊および/または過度な亀裂を伴うことなく展開された。
【0047】
スキャフォールドは、それがその送達バルーンまでクリンプされる前のスキャフォールドの直径を意味するクリンプ前直径(SDPC)と、膨張直径(SD1)とを有する。スキャフォールドは、バルーンカテーテルまでクリンプされて、身体内の血管に送達されるようになっている。スキャフォールドが埋め込まれるようになっている平均血管直径はVDである。SD1はVDよりも約1.2倍大きい。開示の目的のため、VDは約5mm〜10mmの範囲をとることができ、また、SDPCは約6〜12mmの範囲をとることができる。本発明の他の態様によれば、
1.1×(VD)≦SDPC≦1.7×(VD) (式1)
1.1×(SDI)×(1.2)−1≦SDPC≦1.7×(SDI)×(1.2)−1 (式2)
である。
【0048】
式1、2を満たすスキャフォールドは、有利な径方向剛性、締め付け剛性、許容できる反跳、径方向強度および/または交差形状を有しつつ、少なくとも25%圧縮後に少なくとも90%の復元を成す圧縮復元可能なスキャフォールドをもたらすことができる。好ましい実施形態では、スキャフォールドがPLLAから形成される。式1、2における部分不等式はおおよその範囲を示そうとしている。
【0049】
本発明に係る高分子スキャフォールドは、大腿動脈、膝窩動脈、脛骨動脈、陰部動脈、上腕動脈、頸動脈、頸静脈、腹部動脈、および、静脈の状態を治療するために使用されてもよいと考えられる。
【0050】
本発明の他の態様では、スキャフォールドのための対称なクローズドセル(閉じられた升目)が、展開均一性を向上させるとともに、圧縮復元可能性を有するスキャフォールドにおける破壊問題を減少させる。
【0051】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型医用器具は、高分子チューブから形成され、
バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも33%まで圧縮された後にその直径の約90%を超えるレベルに達し、スキャフォールドは0.3N/mmよりも大きい径方向剛性を有する。
【0052】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型医用器具は、バルーンにより展開されるときに拡張直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールド(クリンプスキャフォールドともいう)を含み、スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも75%まで圧縮された後にその直径の90を超えて回復でき、スキャフォールドは、
約0.3N/mmよりも大きい径方向剛性、
クリンプスキャフォールドの直径よりも300〜400%大きいクリンプ前直径を有するクリンプ前のスキャフォールドの径方向強度、締め付け強度、締め付け剛性、および、破壊靱性、
を備える。
【0053】
本発明の他の態様において、径方向に拡張可能なステントは、PLLAチューブから形成されるバルーン拡張型スキャフォールドを含み、
スキャフォールドがストラットの径方向に拡張可能な複数の波状円筒リングを含み、ストラットの波状リングがクラウンを備え、ストラットの隣接するリングが長手方向リンクにより接続され、1つのリングがその外周にわたって9個以下のクラウンと3本のリンクとを有し、任意のクラウンの角度が115°未満であり、
スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、
スキャフォールドが少なくとも約0.008”の壁厚を有する。
【0054】
本発明の他の態様において、末梢血管に埋め込み可能な医用器具は、バルーンにより拡張されるときに直径を有するスキャフォールドを形成するクリンプスキャフォールドを含み、
スキャフォールドは、直径の少なくとも67%まで圧縮された後に直径の90%を超えて回復し、
スキャフォールドがPLLAから形成され、
スキャフォールドは、壁厚に対する直径の比率が約30〜60であり、
スキャフォールドがストラットとリンクとを有し、ストラットおよび/またはリンクは、厚さに対する幅の比率が約0.8〜1.4であり、
スキャフォールドが約0.3N/mm以上の径方向剛性を有する。
【0055】
本発明の一態様によれば、破壊靱性を高めおよび/またはスキャフォールドの送達直径を減少させるようになっているスキャフォールドのための改良されたクラウン設計が存在する。小さい形状の制限を克服しかつPLGAのPLLAなどの脆い高分子を使用して埋め込むことができる既存のスキャフォールドパターンの設計変更は、スキャフォールドのリングを形成するストラットをブリッジするクラウンの内側半径のサイズをかなり減少させることが分かった。例えば、一実施形態において、8mmのクリンプ前直径を有するスキャフォールドは非順応性バルーンまでクリンプさせることができ、その場合、クリンプ形状は約2mmである。この例では、膨張直径が約6.5mmである。
【0056】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、ストラットが互いにぶつかり始めるポイントまであるいはそれよりも下方までクリンプさせることができる。スキャフォールドは、その理論最小形状に関して規定されてもよい。本発明の一態様によれば、圧縮復元可能性を有する高分子スキャフォールドは、後にバルーンにより展開されるときにその特性に悪影響を及ぼすことなくその理論最小形状まであるいはそれよりも下方までクリンプさせることができる。本発明の一態様に係るクラウンの永久的な変形を伴うことなく理論最小形状または直径に達しあるいはそれを超えて(すなわち、この形状未満)もよい。クリンプは、高分子のガラス転移温度に近い温度で行なわれてもよい。最終クリンプ直径に達すると、クリンプされたスキャフォールドは、最小形状に保たれて、形状を設定するために数分間にわたってとどめられる。提案された考えは、一般的なステント構造から逸脱せず、クラウンの内側の最小半径を実現することによりクリンプ中のクラウンの内側での変形量を減少させるようになっている。体外試験データおよびSEM画像は、本発明の態様が実務レベルに下げられたときに亀裂の改善、すなわち、クリンプ中および拡張後の亀裂形成または伝搬が少ないことを示している。
【0057】
本発明の他の態様において、所望の送達直径までクリンプされ得る末梢血管に埋め込み可能なスキャフォールドは、スキャフォールドにおけるリング構造に作用する負荷を低減するように変えられてもよい。例えば、スキャフォールドは、末梢動脈が径方向圧縮負荷および締め付け負荷に加えて、曲げおよび/または軸方向負荷を与えるときにリングに印加される負荷を低減するようにリンク構造が変更されてもよい。変更は、リング構造ではなくリンクにおいて予め定められた破壊または亀裂伝搬を与えること、例えばスキャフォールドが血管内で過度な歪みを呈するときあるいは疲れ損失をもたらす周期的な負荷を受けるときにリング構造において亀裂が形成するのを回避するために更なるヒンジ点をリンクに導入することであってもよい。
【0058】
本開示の他の態様では、クローズドセルによって形成されるリングを有するスキャフォールドパターンが存在する。リングのそれぞれのクローズドセルは、クローズドセルの長手方向に離間されて周方向に延びるストラット部分を接続するリンク要素を共有する。これらのクローズドセルリングのそれぞれは、クローズドセルリングを接続する構造の曲げ剛性を低下させるために減少された曲げ慣性モーメント(MOI)を有する接続リンクによって互いに接続される。あるいは、接続リンクは、例えば高歪み領域の近傍に形状の急激な変化を形成することにより、予め定められた破壊点を含むことができる。
【0059】
本発明の他の態様において、前述した必要性のうちの1つ以上を満たす圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約33%まで圧縮されるときに約90%を超える圧縮復元可能性を有し、その開始直径の約33%まで圧縮されるときに約90%を超える圧縮復元可能性を有し、付随的な(例えば1分未満の)圧縮事象後にその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有し、および/または、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約25%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、長い圧縮継続時間(例えば、約1分〜5分、あるいは、約5分よりも長い時間)にわたってその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有する。
【0060】
本発明の他の態様において、圧縮復元性を有しかつバルーンまでクリンプされるときに約300〜400%の直径減少を有する高分子スキャフォールドは、0よりも実質的に大きい0付近の内側半径を形成するクラウンを有する。
【0061】
本発明の他の態様では、スキャフォールドのための対称なクローズドセルが、展開均一性を向上させるとともに、圧縮復元可能性を有するスキャフォールドにおける破壊問題を減らす。
【0062】
本発明の他の態様において、身体の末梢血管内に埋め込み可能な医用器具は、高分子チューブから形成され、
バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも約75%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する。
【0063】
本発明の他の態様によれば、身体の末梢血管内に埋め込まれるための医用器具は、高分子チューブから形成されて、
バルーンまでクリンプされるスキャフォールドを含み、
スキャフォールドが相互接続要素の網状体を有し、
スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張状態に拡張されるときに拡張直径を有し、スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達し、クリンプされたスキャフォールドは、クリンプされたスキャフォールドにおける理論最小直径にほぼ等しいあるいはそれを下回るクリンプ直径を有する。
【0064】
本発明の他の態様によれば、医用器具は、バルーンまでクリンプされるとともに、バルーンにより拡張されるときに拡張直径を有する高分子スキャフォールドを備え、クリンプされた前記スキャフォールドは、2つの直交軸周りに対称な複数のクローズドセルを含む相互接続要素のパターンを有し、スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えて回復できる。
【0065】
本発明の他の態様によれば、末梢動脈に埋め込むための医用器具を形成する方法は、円筒状の高分子チューブを径方向に拡張するステップと、約0インチの内側半径を有するクラウンを形成することを含むチューブからスキャフォールドを形成するステップと、スキャフォールドをバルーンカテーテルまでクリンプするステップとを含む。
【0066】
この明細書中で言及される全ての刊行物および特許出願は、参照することにより、あたかもそれぞれの個々の刊行物または特許出願が参照することにより組み入れられるように具体的にかつ個別に示されたかのように、また、あたかもそれぞれの前記個々の刊行物または特許出願が任意の図を含めて十分に説明されたかのように同じ程度まで本願に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】変形された高分子チューブの斜視図である。チューブはスキャフォールドに形成される。
【図2】スキャフォールドの第1の実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図3】スキャフォールド構造の部分斜視図である。
【図4】スキャフォールドの第2の実施形態に係るスキャフォールドパターン部分平面図である。
【図5A】図4の断面VA−VAでとられたスキャフォールドパターンの一部の平面図である。
【図5B】図2の断面VB−VBでとられたスキャフォールドパターンの一部の平面図である。
【図6A】本開示の態様に係るスキャフォールド特徴の例を示す表である。
【図6B】本開示の態様に係るスキャフォールド特徴の例を示す表である。
【図7A】拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7B】拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7C】第1の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示す。
【図7D】第1の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示
【図7E】別の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示している。
【図7F】別の実施形態に係るスキャフォールドにおけるその拡張状態およびクリンプ状態のスキャフォールドクラウン形成を示している。
【図8A】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8B】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8C】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8D】スキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。クラウンは約0.00025インチの内側半径を有する。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8F】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図8G】図8B、図8C、図8Dにおけるスキャフォールドクラウンの内側半径よりもかなり大きい内側半径を有するスキャフォールドクラウンの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真は、スキャフォールドがバルーンによって拡張された後に撮影された。
【図9A】リングを接続するリンクに形成される放射線不透過性マーカ構造を含むスキャフォールドの第1の実施形態を示している。拡張形状を示している。
【図9B】リングを接続するリンクに形成される放射線不透過性マーカ構造を含むスキャフォールドの第1の実施形態を示している。クリンプ形状におけるスキャフォールドリングの折り畳まれたストラットに対する放射線不透過性マーカの位置を示している。
【図10A】リングを接続するリンク上に配置される放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態を示している。拡張形状を示している。
【図10B】リングを接続するリンク上に配置される放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態を示している。クリンプ形状におけるスキャフォールドリングの折り畳まれたストラットに対する放射線不透過性マーカの位置を示している。
【図11A】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11B】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11C】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。マーカ材料のストリップにおける場所を描いている。
【図11D】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。マーカ材料のストリップにおける場所を描いている。
【図11E】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。円筒状マーカにおける場所の一例を描いている。
【図11F】放射線不透過性マーカを含むスキャフォールドの別の実施形態である。これらの実施形態において、放射線不透過性マーカは、リングを接続するリンクではなく、クラウンまたはその近傍に配置される。この例では、端部リングでクラウンを補強するために使用される材料によって放射線不透過性が与えられる。したがって、本実施形態は、端部リングで視認性を高める一方で、端部リングの補強も行なう。
【図12A】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドのその非変形(無負荷)状態および締め付け負荷に晒されるときの変形状態(仮想線で描かれる)の断面を示している。
【図12B】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドが締め付け負荷に晒されるときの圧縮復元可能性に対する壁厚の影響を示すための異なる厚さの等価な半円筒シェルのモデルである。
【図12C】スキャフォールドにおける圧縮復元可能性と壁厚との間の関係を説明する図である。スキャフォールドが締め付け負荷に晒されるときの圧縮復元可能性に対する壁厚の影響を示すための異なる厚さの等価な半円筒シェルのモデルである。
【図13】50%圧縮後のスキャフォールドにおける圧縮復元性を示すプロットである。プロットは、短い時間、1分、および、5分にわたる50%での圧縮後に24時間にわたって復元されるパーセンテージを示している。
【図14A】リングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第1の実施形態を含むスキャフォールドの代わりの実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図14B】リングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第1の実施形態を含むスキャフォールドの代わりの実施形態に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図14C】スキャフォールドのリングを接続する脆弱なあるいは柔軟なリンク要素の第2の実施形態である。
【図14D】リングを接続するリンクの脆弱部分の代わりの実施形態を示している。非対称な脆弱リンク部分を示している。
【図14E】リンクのための破壊点をボイドに形成するためにボイドがリンクに形成されるリンク構造の一例を示している。
【図14F】リングを接続するリンクの脆弱部分の代わりの実施形態を示している。対称な脆弱リンク部分を示している。
【図15】リング構造がクラウン間で延びる湾曲ストラットを有するスキャフォールドにおける代わりのリング構造に係るスキャフォールドパターンの部分平面図である。
【図16】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図17】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図18】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図19】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図20】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図21】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図22】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図23】埋め込み後の30、90、180日における埋め込みスキャフォールドに関する第1の動物研究の結果を示すプロットである。スキャフォールド性能は、同じ動物内に埋め込まれる自己拡張型金属ステントと比較される。
【図24】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【図25】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【図26】異なる壁厚を有するスキャフォールドの性能を比較する第2の動物研究の結果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
開示を以下のように進める。最初に、後の開示の過程にわたって使用されてもよい用語の規定について説明する。まず、変形された高分子チューブを前駆体から形成するためのプロセスの実施形態についてである。開示によれば、圧縮復元可能なバルーン拡張型スキャフォールドは、破壊靱性を含むスキャフォールドの機械的特性を高めるようになっているプロセスにより形成されるチューブ(図1)から切断される。次に、幾つかの実施形態に係るスキャフォールドパターンについて述べる。スキャフォールドパターンの例に関し、その説明において、高分子スキャフォールドの剛性、強度、クリンプ、および、展開において重要な役割を果たすと考えられるスキャフォールドの態様、および、それらが耐力高分子構造の圧縮復元可能性に関連する他の特性について言及する。本明細書中には、特に同様のストラットパターンを有する同等の末梢血管金属ステントの態様と比較すると正反対の、ある場合には、驚くべき予期しないスキャフォールドの態様が含まれる。最後に、本発明の実施形態の典型例および観察結果の説明並びに克服課題を含めて、体外試験結果および生体内試験結果について説明する。これらの例では、本発明の態様の更なる認識、すなわち、所望の径方向の強度特性および剛性特性を有しかつバルーンカテーテルを介した血管を通じた送達に適する直径までクリンプされ得る圧縮復元可能なバルーン拡張型高分子スキャフォールドを得ることができる。
【0069】
この開示の目的のため、以下の用語および定義が適用される。
【0070】
「膨張直径(inflated diameter)」または「拡張直径(expanded diameter)」とは、スキャフォールドを血管内に埋め込むためにスキャフォールドの支持バルーンが膨張されてスキャフォールドがそのクリンプ形態から拡張されるときにスキャフォールドが達成する最大直径のことである。膨張直径とは、公称バルーン直径を超える拡張後直径のことであってもよい。例えば、6.5mm半順応PEBAXバルーンは約7.4mmの拡張後直径を有する。スキャフォールド直径は、バルーン圧力によってその膨張直径を達成した後、バルーンが除去された後に血管の壁によって与えられる反跳効果および/または圧縮力に起因して、ある程度まで直径が減少する。例えば、表6Bの特性を有するV59スキャフォールドの拡張に言及すると、6.5mmPEBAXバルーン上に配置されて該バルーンが血管外で拡張後状態まで拡張されると、スキャフォールド内径は、急激な反跳が生じる前後でそれぞれ約7.4mmおよび約(1−0.955)×(7.4mm)となる。この開示の目的のため、膨張直径は平均血管直径の約1.2倍になる場合があり、また、末梢血管サイズは一般に約4〜10mmの範囲である。
【0071】
「理論最小直径(theoretical minimum diameter)」は、ストラットのその形状、長さ、厚さ、および、幅に基づくスキャフォールドにおける最小直径を意味する。「理論最小直径」は、バルーン拡張型プロテーゼのように後に展開させることができかつ適切に機能できるスキャフォールドまたはステントにおける最小クリンプ形状に関して規定されない。むしろ、それは、直径の均一な減少後に器具が占め得る空間の形状または最小容積により規定される定義にすぎない。式として、「理論最小直径」(Dmin)は以下のように表わすことができる。
Dmin=(ΣSwi+ΣCrj+ΣLwk)×(π)−1+2×WT (式3)
ここで、上記の量はスキャフォールドの断面スライスから取得される。
ΣSwi(i=1...n)は、幅Swiを有するn個のリングストラットの総和である。
ΣCrj(j=1...m)は、半径Crjを有するm個のクラウン内側半径(×2)の総和である。
ΣLwk(k=1...p)は、幅Lwkを有するp個のリンクの総和である。
WTはスキャフォールドの壁厚である。
【0072】
式3は、折り畳まれたストラット対、例えば図22Bのストラット420、422における幅がクラウン410の近傍で測定されようがストラット中間幅であろうが同じであると仮定する。クラウンがより多く形成され、それにより、そこで幅がリングストラット中間幅よりも大きくなると、Swiがクラウンでの幅によって測定される。また、ストラット間の最小空間は、隣接するクラウン(または谷部)の内径の2倍、すなわち、Crjによって規定される。
【0073】
図21のスキャフォールド寸法において、クラウン幅はストラット中間幅よりも大きい。したがって、式3を用いると、Dminは、[16×(0.013)+12×(0.0005)+4×(0.0115)]×(π)−1+2×(0.011)=0.1048”(インチ)すなわち2.662mm(クラウンを通る断面で計算される最小直径)となる。代わりに断面がストラット中間幅(0.013ではなく0.0116)でとられた場合には、式3が0.0976”すなわち2.479mmを与える。
【0074】
なお、式3は、ストラットがほぼ正方形の断面を有することを前提とする。これは、図21のスキャフォールドにおける場合である(クラウンでのストラット断面寸法が0.011×0.013)。台形断面を伴うストラットを有するスキャフォールド、例えば、外径に対する壁厚の比率が図1の場合よりもかなり高くなるように小さい直径から切断されるスキャフォールドにおいて、Dminにおける更に正確な近似値は(ΣSwi+ΣCrj+ΣLwk)×(π)−1となる。これは、ストラットの厚さを越えて延びる表面が互いに当接する前に外面におけるストラットの縁同士がDminで当接するからである。
【0075】
ガラス転移温度(以下、「Tg」と称する)は、高分子のアモルファス領域が大気圧で脆弱なガラス質状態から固体変形可能状態または延性状態に変化する温度である。すなわち、Tgは、高分子の鎖で部分運動が始まる温度である。所定の高分子のTgは、加熱速度に依存し得るものであり、高分子の熱履歴によって影響され得る。また、高分子の化学的構造は、高分子鎖の移動性に影響を与えることにより、ガラス転移に大きく影響を及ぼす。
【0076】
「応力」とは、対象材料中の面内の小領域を通じて作用する力の場合のように単位面積当たりの力のことである。応力は、それぞれ垂直応力および剪断応力と呼ばれる、面に対して垂直および平行な成分に分けることができる。引張応力は、例えば、対象材料の拡張をもたらす(長さを増大させる)応力の垂直成分である。また、圧縮応力は、対象材料の圧縮をもたらす(長さを減少させる)応力の垂直成分である。
【0077】
「歪み」は、所定の応力または負荷で材料に生じる拡張または圧縮の大きさのことである。歪みは、当初の長さの割合またはパーセンテージとして、すなわち、長さの変化を当初の長さで割った値として表わされてもよい。したがって、歪みは、拡張の場合にはプラスであり、圧縮の場合にはマイナスである。
【0078】
「弾性率」は、材料に印加される単位面積当たりの応力または力の成分を、印加力によってもたらされる印加力の軸に沿う歪みで割った比率として規定されてもよい。例えば、材料は、引張弾性率および圧縮弾性率の両方を有する。
【0079】
「靱性」または「破壊靱性」は、破壊前に吸収されるエネルギーの量、あるいは、同等に、材料を破壊するために必要とされる仕事量である。靱性の1つの指標は、ゼロ歪みから破断時の歪みまでの応力−歪み曲線下の面積である。応力は材料に作用する引張力に比例し、また、歪みはその長さに比例する。その結果、曲線下の面積は、高分子が破壊する前に伸長する距離にわたる力の積分に比例する。この積分はサンプルを破壊するために必要な仕事(エネルギー)である。靭性は、サンプルがその破壊前に吸収できるエネルギーの指標である。靭性と強度との間には違いがある。強いが頑丈ではない材料は脆弱であると言われる。脆性材料は強いが、破壊前にあまり変形することができない。
【0080】
本明細書中で使用される用語「軸方向」および「長手方向」は、置き換え可能に使用され、ステントの中心軸または管状構造の中心軸と平行なあるいは略平行な方向、配向、または、ラインを指す。用語「周方向」とは、ステントまたは管状構造の外周に沿う方向のことである。用語「径方向」とは、ステントの中心軸または管状構造の中心軸に対して垂直または略垂直でかつ周方向の特性、すなわち、径方向強度を表わすために時として使用される方向、配向、または、ラインのことである。
【0081】
用語「圧縮復元(crush recovery)」は、スキャフォールドが締め付け負荷または圧縮負荷からどのように復元するかを表わすために使用され、一方、用語「圧縮抵抗(crush resistance)」は、スキャフォールドの永久変形を引き起こすために必要とされる力を表わすために使用される。良好な圧縮復元性を有さないスキャフォールドまたはステントは、圧縮力の除去後にその当初の直径まで実質的に戻らない。前述したように、所望の径方向力を有するスキャフォールドまたはステントは、許容できない圧縮復元を有し得る。また、所望の圧縮復元を有するスキャフォールドまたはステントは、許容できない径方向力を有し得る。
【0082】
図2に示される高分子スキャフォールドはポリ(L−ラクチド)(「PLLA」)チューブから形成される。このPLLAチューブを形成するためのプロセスは、米国特許出願第12/558,105号明細書(整理番号62571.382)に記載されるプロセスであってもよい。以下に記載されるように所望のスキャフォールド直径、厚さ、および、材料特性を有する図1のチューブを形成するために「変形される」前駆体について言及する。スキャフォールドのための開始チューブにおいて所望の特性をもたらすためにチューブが変形される前、あるいは、幾つかの例では拡張される前に、前駆体が形成される。前駆体は、その後にダイを通じて押し出される高分子の溶融温度を超えて加熱される未加工PLLA樹脂材料で始まる押出プロセスによって形成されてもよい。その後、一例では、拡張されたPLLAチューブを形成するための拡張プロセスは、PLLAガラス転移温度(すなわち、60〜70℃)を超えるが溶融温度(165〜175℃)を下回る温度、例えば約110〜120℃までPLLA前駆体を加熱することを含む。
【0083】
前駆体チューブはブロー成形プロセスによって径方向および軸方向に変形される。この場合、変形はチューブの長手方向軸に沿って所定の長手方向速度で徐々に生じる。後述するように、変形は、チューブが図2のスキャフォールドに形成される前にチューブの機械的特性を改善する。チューブ変形プロセスは、高分子鎖を径方向および/または二軸方向に配向するようになっている。再アライメントを引き起こす配向または変形は、変形プロセス中に材料結晶化度および結晶形成のタイプに影響を与えるべく、処理パラメータ、例えば圧力、熱(すなわち、温度)、変形速度の正確な選択にしたがって行なわれる。
【0084】
別の例において、チューブは、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLGA」)、ポリカプロラクトン(「PCL」)、これらの単量体のいずれかを組み合わせる任意の半結晶共重合体、または、これらの高分子の任意の混合物から形成されてもよい。スキャフォールドのための材料選択は、多くの末梢血管場所、特に手足付近に配置される末梢血管場所と関連付けられる複雑な負荷環境を考慮に入れるべきである。
【0085】
大腿動脈は、様々な力が器具を同時に圧縮し、ねじり、伸長させ、あるいは、短くするため、脈管インプラントに対して動的な環境を与える。力の印加は、点荷重と分布荷重との間で、または、その組み合わせで、あるいは、時間に応じても変化する場合がある。最近の結果は、高結晶質PLLAから形成される生体吸収性のスキャフォールドが、血管に作用する永久的で一定の外向きの径方向力をもたらすことなく圧縮復元を行なうことができることを示した。永久的で一定の外向きの径方向力は、ニチノールの自己拡張型ステントに伴う後期臨床問題の原因となる場合がある。しかしながら、生体吸収性のスキャフォールドに伴う残りの課題は、それらのスキャフォールドを時間に応じて最適に破壊耐性にすること、すなわち、様々な動的負荷環境下でスキャフォールドの疲労寿命または生存性を改善することである。スキャフォールド、特に末梢血管に埋め込まれるスキャフォールドにおいては、破壊靱性を向上させる必要性が引き続いてある。
【0086】
脈管スキャフォールドの破壊抵抗は、形状および材料に依存するだけでなく、製造プロセスおよび展開パラメータにも依存する。したがって、特に、スキャフォールドを均一に拡張させて展開させることができるようにするプロセス、設計、および、送達システムを有する必要がある。不均一な展開の結果として、場合により、スキャフォールドの様々なストラットおよびクラウンが非常に異なる力および動きに晒され、それにより、疲労寿命に悪影響が及ぶ。
【0087】
材料の破壊靭性を特徴付けるのに役立つ有用な無次元数はデボラ数(固有材料減衰時定数と外部印加力の時定数との比)と呼ばれる。デボラ数が高いほど、過渡的な負荷または所定の振幅の疲労負荷の下で破壊するインプラントの予期される可能性が高くなる。
【0088】
幾つかの方法で、すなわち、a)低いTgブロック、例えばブロック共重合体を含むためのバックボーン変更、b)ポリマーブレンド、c)光架橋をバックボーンへ導入することによって、強靱化領域をインプラント設計に導入することができる。
【0089】
PLLAなどのホモポリマーの破壊靱性は、最終的なインプラントの微細構造を制御することによって改善することもできる。%結晶化度、サイズ、および/または、結晶の分布、空間分布、および、結晶領域の勾配や形状などの変数。巨視的形状との組み合わせにおける微細構造制御の組み合わせ、例えば、スキャフォールドパターン、クリンププロセス等は、他のスキャフォールド材料特性、例えば径方向剛性および/または締め付け剛性に大きな悪影響を及ぼすことなく、破壊靭性を向上させる場合がある。
【0090】
エラストマー特性を与えることに代わる手段は、「軟質」層および「硬質」層を有する多層構造の使用である。この場合、1つ以上の軟質層が高Tg材料から形成され、硬質層が高Tg材料を有する。同様の方法で、高低Tg領域は、ブロック共重合体または高分子混合物の使用によって典型的なゴム強靱化形態をもたらすことができる。所定の領域/ブロックのTgを所定のモノマーカらあるいはランダム共重合体のいくつかのモノマーの使用によってもたらすことができる。典型的な低Tg材料は、本開示にしたがって、カプロラクトン、ラクトン誘導体、炭酸塩、ブチルコハク酸エステル、炭酸トリメチレン、ジオキサノン、または、他の既知のモノマーカら形成することができる。使用され得る他の低Tg材料は、分解ではなく溶解によって腎臓をきれいにする材料である。そのような材料としては、本開示にしたがって、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、または、ポリビニルアルコール(PVA)、または、他の既知の高分子を挙げることができる。
【0091】
疲労特性を向上させる代わりの方法は、軸方向柔軟性の導入、および、特にコネクタリンクにおける予め定められた破壊点の使用である。破壊点は、実際の破壊、例えばひび割れや亀裂またはインプラントにおいて分布される小寸法の破壊の前駆体として機能し得る。亀裂またはひび割れの分布またはパターンは、特定の負荷、例えばねじれ、径方向力、引張りなどに晒されるときにスキャフォールドの予期される靱性のうちの1つを決定付けるあるいは知らせる場合がある。言うまでもないが、亀裂形成と結合した負荷環境との間の一般的に非常に非線形な関係に起因して、すなわち、同時に印加されて時間的に変化する曲げ、ねじれ、および、軸方向負荷に起因して、そのような予測方法を全ての状況に適用できない場合がある。
【0092】
疲れ特性を向上させる代わりの方法は、以下で更に詳しく説明するように、軸方向柔軟性の導入、および、予め定められた破壊点、特にコネクタリンクまたはその近傍における破壊点の使用である。
【0093】
約7mmの直径および約200ミクロンの壁厚、より具体的には8mmの直径および280ミクロンの壁厚を有する図1のチューブにおいては、拡張温度が華氏235±5°であり、拡張圧が110±10psiであり、拡張速度が0.68±0.20mm/秒である。
【0094】
高分子チューブが受ける径方向拡張の度合いは、引き起こされる周方向の分子配向および結晶配向の度合い、および、周方向の強度を部分的に特徴付けることができる。径方向拡張の度合いは、RE比=(拡張されたチューブの内径)/(チューブの当初の内径)として規定される径方向拡張(「RE」)比によって定量化される。また、RE比は、RE%=(RE比−1)×100%として規定されるパーセンテージとして表わすこともできる。高分子チューブが受ける軸方向伸長の度合いは、引き起こされる軸方向の分子配向および結晶配向、および、軸方向の強度を部分的に特徴付けることができる。軸方向伸長の度合いは、AE比=(拡張されたチューブの長さ)/(チューブの当初の長さ)として規定される軸方向伸長(「AE」)比によって定量化される。また、AE比は、AE%=(AE比−1)×100%として規定されるパーセンテージとして表わすこともできる。好ましい実施形態では、REが約400%であり、AEが40〜50%である。
【0095】
図1の補強されて強化された円筒状の高分子チューブは、スキャフォールド構造に形成され、一実施形態では、図2に示されるようなパターン200(パターン200は平面図または扁平な図で示される)を形成する複数のストラット230およびリンク234を有する構造に形成され、パターンは、クリンプ前、および、バルーン拡張によって血管内でスキャフォールドがそのクリンプ状態からその展開状態に塑性変形または不可逆変形された後のスキャフォールドにおけるパターンに関する。つまり、図2のパターン200は(図3に三次元空間で部分的に示されるように)管状スキャフォールド構造を表わしており、そのため、軸A−Aがスキャフォールドの中心軸または長手方向軸と平行である。図3は、クリンプ前または展開後の状態のスキャフォールドを示している。図3から分かるように、スキャフォールドは、略管状体を形成するストラットおよびリンクの開放骨格を備える。図1の円筒状の変形チューブは、レーザ切断装置により、好ましくは切断中に冷却剤としてヘリウムガスを使用するピコ秒緑色レーザにより、図2〜図3に描かれるストラットおよびリンクから成るこの開放骨格へ形成されてもよい。
【0096】
適したレーザプロセスの詳細は、米国出願第12/797、950号明細書(整理番号62571.404)において見出すことができる。ヘリウムガスは、レーザの切断経路に隣接するスキャフォールド構造を溶かすあるいは該スキャフォールド構造の特性を変えるのを回避するために必要である。典型的なレーザ加工パラメータが表1に与えられる。
【0097】
表1:約0.008”〜0.014”の壁厚を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドに関するレーザ加工パラメータ
【表1】
【0098】
図2を参照すると、パターン200は、ストラット230によって形成される長手方向に離間されるリング212を含む。リング212は幾つかのリンク234によって隣接するリングに接続され、それぞれのリンクは軸A−Aと平行に延びる。スキャフォールドパターン(パターン200)のこの第1の実施形態では、4つのリンク234が、図2ではその左右にリングを有するリングを示す内部リング212を、2つの隣接するリングのそれぞれに対して接続する。したがって、リング212bは、4つのリンク234によってリング212cに接続されるとともに、4つのリンク234によってリング212aに接続される。リング212dは、図2の左にあるリングのみに接続される端部リングである。
【0099】
リング212は、クラウン207、209、210で接続されるストラット230によって形成される。リンク234は、クラウン209(W−クラウン)およびクラウン210(Y−クラウン)でストラット230と接合される。クラウン207(自由−クラウン)にはリンク234が接続されない。ストラット230は、クラウン中心から一定の角度を成してクラウン207、209、210から延びることが好ましい。すなわち、リング212は、正弦波曲線のパターン200とは対照的に、形状がほぼジグザグである。しかしながら、他の実施形態では、湾曲状のストラットを有するリングが考えられる。このように、この実施形態では、隣接するクラウン207、209/210間の長手方向距離であるリング212の高さは、クラウンで接続する2つのストラット230の長さと、クラウン角度θとから得ることができる。幾つかの実施形態では、リンク234が自由または非接続クラウン、W−クラウン、または、Y−クラウンに接続されるかどうかに応じて、異なるクラウンでの角度θが異なる。
【0100】
リング212のジグザグ変化は、主に、スキャフォールドの外周にわたって(すなわち、図2のB−B方向に沿って)生じる。ストラット212の中心軸は、主に、スキャフォールドの長手方向軸からほぼ同じ径方向距離に位置する。理想的には、リングを形成するストラット間でのほぼ全ての相対的な動きは、クリンプ中および展開中において、径方向ではなく軸方向で生じる。以下で更に詳しく説明するが、高分子スキャフォールドは、多くの場合、位置ずれおよび/または不均一な径方向負荷が加えられることに起因して、この様式で変形しない。
【0101】
リング212は、クリンプ中に小さい直径まで潰すことができ、また、血管内での展開中に大きい直径まで拡張させることができる。開示の一態様によれば、クリンプ前直径(例えば、軸方向および径方向に拡張されたチューブの直径であり、該チューブからスキャフォールドが切断される)は、常に、送達バルーンが膨張時にもたらすことができる最大拡張スキャフォールド直径よりも大きい。一実施形態によれば、クリンプ前直径は、送達バルーンが過度に膨張され、あるいはバルーン−カテーテルのためのその最大使用直径を超えて膨張されるときであっても、スキャフォールド拡張直径よりも大きい。
【0102】
パターン200は、リンク237によって形成される一対の横方向に離間される穴のそれぞれで放射線不透過性材料を受けるように形成される構造を有する4つのリンク237(それぞれの端部に2つ、図2には一方の端部だけが示される)を含む。これらのリンクは、クリンプ中にストラットをリンク上に折り重ねるのを妨げないように構成される。これは、以下で更に詳しく説明するように、最大でほぼDminの直径までスキャフォールドをクリンプできるようにするために、あるいは、スキャフォールドがクリンプ時に放射線不透過性マーカ保持構造のために利用できる空間を実質的に有さないようにするために必要である。
【0103】
スキャフォールド構造の第2の実施形態は、図4に示されるパターン300を有する。パターン200と同様に、パターン300は、ストラット330によって形成される長手方向に離間されるリング312を含む。リング312は幾つかのリンク334によって隣接するリングに接続され、各リンクは軸A−Aと平行に延びる。図2に関連するリング212、ストラット230、リンク234、および、クラウン207、209、210と関連付けられる構造の先の説明は、第2の実施形態では4つではなく3つのストラット334だけがそれぞれ隣り合うリングの対を接続することを除き、第2の実施形態の対応するリング312、ストラット330、リンク334、および、クラウン307、309、310にも適用される。したがって、第2の実施形態において、リング312bは、3つのリンク234だけによってリング312cに接続されるとともに、3つのリンク334だけによってリング312aに接続される。リンク237と同様の放射線不透過性マーカを受けるように形成されるリンクは、リング312cとリング312dとの間に含まれてもよい。
【0104】
図5Aおよび図5Bは、各パターン300、200と関連付けられるクローズドセル要素の繰り返しパターンの態様をそれぞれ描いている。図5Aは、仮想ボックスVAによって境界付けられるパターン300の一部を示し、また、図5Bは、仮想ボックスVBによって境界付けられるパターン200の一部を示す。これらの図にはセル304およびセル204がそれぞれ示される。図5A、5Bでは、垂直基準軸が軸B−Bおよび長手方向軸A−Aによって示される。パターン200では、リング212のそれぞれの対によって4つのセル204が形成される。例えば、4つのセル204は、リング212b、212cと、このリング対同士を接続するリンク234とによって形成され、他の4つのセル204は、リング212a、212bと、このリング対同士を接続するリンクとによって形成され、その他も同様である。一方、パターン300では、3つのセル304がリング対とそれらの接続リンクとによって形成される。
【0105】
図5Aを参照すると、セル304の空間336、336aは、図示の長手方向に離間されるリング312b、312c部分と、リング312b、312cを接続する周方向に離間される平行なリンク334a、334cとによって境界付けられる。リンク334b、334dは、セル304を図3の左右に隣接するリングにそれぞれ接続する。リンク334bはW−クラウン309でセル304に接続する。リンク334dはY−クラウン310でセル304に接続する。「W−クラウン」とは、ストラット330とリンク336との間で延びるクラウン310の角度が鈍角(90°よりも大きい)であるクラウンのことである。「Y−クラウン」とは、ストラット330とリンク336との間で延びるクラウン309の角度が鋭角(90°よりも小さい)であるクラウンのことである。Y−クラウンおよびW−クラウンに関する同じ定義がセル204にも適用される。セル304においては8個の接続または自由クラウン307が存在し、これらのクラウンは、クラウンで接続されるリンク334を欠く8個のクラウンとして理解されてもよい。セル304においては、Y−クラウンとW−クラウンとの間に1つあるいは3つの自由クラウンが存在する。
【0106】
図5Aのセル304の更なる態様は、それぞれのクラウン307、309、310における角度を含む。一般的には互いに等しくないこれらの角度(例えば、パターン300を有するスキャフォールドの「V2」および「V23」実施形態に関しては図21を参照)は、図5Aでは、それぞれがクラウン307、309、310と関連付けられる角度366、367、368として特定される。パターン300を有するスキャフォールドにおいては、ストラット330がストラット幅361とストラット長さ364とを有し、クラウン307、309、310がクラウン幅362を有し、また、リンク334がリンク幅363を有する。それぞれのリング312はリング高さ365を有する。クラウンにおける半径は一般に互いに等しくない。クラウンの半径は、図5Aでは、半径369、370、371、372、373、374として特定される。
【0107】
セル304はW−Vクローズドセル要素として考えられてもよい。図6Aでは、「V」部分が文字「V」に似ている斜線領域336aを示す。残りの斜線が付されていない部分336、すなわち、「W」部分は、文字「W」に似ている。
【0108】
図5Bを参照すると、セル204の空間236は、図示のように長手方向に離間されるリング212b、212cの部分と、これらのリングを接続する周方向に離間される平行なリンク234a、234cとによって境界付けられる。リンク234b、234dは、セル204を図2の左右に隣接するリングにそれぞれ接続する。リンク234bはW−クラウン209でセル236に接続する。リンク234dはY−クラウン210でセル236に接続する。セル204においては4つのクラウン207が存在し、これらのクラウンは、クラウンで接続されるリンク234を欠く4つクラウンとして理解されてもよい。セル204においては、それぞれのY−クラウンとW−クラウンとの間に1つの自由クラウンだけが存在する。
【0109】
図5Bのセル204の更なる態様は、それぞれのクラウン207、209、210における角度を含む。一般的には互いに等しくないこれらの角度(例えば、パターン200を有するスキャフォールドの「V59」実施形態に関しては図6Bを参照)は、図5Bでは、それぞれがクラウン207、209、210と関連付けられる角度267、269、268として特定される。パターン200を有するスキャフォールドにおいては、ストラット230がストラット幅261とストラット長さ266とを有し、クラウン207、209、210がクラウン幅270を有し、また、リンク234がリンク幅261を有する。それぞれのリング212はリング高さ265を有する。クラウンにおける半径は一般に互いに等しくない。クラウンの半径は、図5Aでは、内側半径262および外側半径263として特定される。
【0110】
セル204はW−クローズドセル要素として考えられてもよい。セル204によって境界付けられる空間236は文字「W」に似ている。
【0111】
図5Aと図5Bとを比較すると、Wセル204が軸B−B、A−Aに関して対称であり、一方、W−Vセル304がこれらの軸の両方に関して非対称であるのが分かる。Wセル204は、リンク234間に1つのクラウン207しか有さないことを特徴とする。したがって、Y−クラウンまたはW−クラウンは、常に、パターン200のそれぞれのクローズドセルごとに、各クラウン207間にある。この意味では、パターン200は、それぞれがリンク234によって支持されないクラウンを1つしか有さないクローズドセルパターンを繰り返していると理解されてもよい。一方、W−Vセル304は、W−クラウンとY−クラウンとの間に3つの支持されないクラウン307を有する。図5Aから分かるように、リンク334dの左側に3つの支持されていないクラウン307が存在し、また、リンク334bの右側に3つの支持されていないクラウン307が存在する。
【0112】
パターン200を有するスキャフォールドの機械的挙動とパターン300を有するスキャフォールドの機械的挙動とは以下の点が異なる。これらの違いは、後述する他の違いと共に、生体内試験を含む図6A〜図6Bのスキャフォールド間の比較において観察された。ある点において、これらの試験は、例えば従来の見識が従来の金属ステントまたは冠状動脈スキャフォールドによりもたらされるときに、予期されずかつ従来の見識に反した本発明に係るスキャフォールドの機械的態様を実証した。したがって、特定の設計選択においては、臨床、製品歩留まり、および/または、送達プロファイルの要件によって決定されようとなかろうと、以下の特徴が留意されなければならない。
【0113】
一般に、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、望ましい径方向の剛性、強度、および、破壊靱性を有し、目標送達直径まで、例えば少なくとも約Dminに至るまでクリンプされ得るとともに、強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性の3つの競合する設計属性を釣り合わせる。
【0114】
生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさとは、送達直径に至るまでスキャフォールドをクリンプできる能力のことである。W−セル204を形成するようにクラウンを接続するリングストラット230は、反管腔側の面に接する軸(軸A−A)を中心とする回転が更に抑制さえる。W−VセルのV部分の場合、クラウンは、接続リンク336の数の減少に起因して、特定の形状下で軸A−Aを中心にねじれ易い場合がある。実際には、リング部分が「反転する」可能性があり、それにより、回転し、あるいは、座屈の結果として面外に撓む(「面外」とは、スキャフォールドの弓形の円筒状の面の外側の撓みのことであることに留意されたい。図5Aを参照すると、「面外」は、この図の表面に対して垂直にストラットが撓むことを意味する)。図5Bの場合のようにクラウンまたは谷部のそれぞれにリンク234が存在する場合には、クラウンが座屈しあるいは反転する任意の傾向が減少される。これは、リングストラットがリンク236によって更に抑制されるからである。本質的に、リンクは、リングにわたる負荷をより均一に釣り合わせる役目を果たす。
【0115】
米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に更に詳しく記載されて図示されるように、パターン300にしたって構成されるスキャフォールドにおける「反転(flipping)」現象はクリンプ中に観察された。W−Vセル304は、隣接するクラウンまたは谷部の過度のねじれを抑制するために、クラウン307で隣接リンク334を欠いている。本質的に、リンク334間に2つのクラウン307が存在する場合、リングのV部分の反転または座屈を防止する拘束は、個々のリングストラット330の座屈強度、すなわち、ねじれにおける高分子ストラットの強度および剛性に依存する。しかしながら、1つのリンク234がそれぞれの隣接するクラウン/谷部に接続される場合(図5B)には、接続されるリンク234によって加えられる曲げ剛性に起因して、クラウン207での面外撓みが更に抑制され、それにより、隣接するクラウン207でのねじれが抑制される。
【0116】
それに対応して、パターン200にしたがったスキャフォールドは、同様に構成されるパターン300にしたがったスキャフォールドよりも剛性が高い。パターン200にしたがったスキャフォールドは、軸方向および長手方向の両方の曲げにおいて剛性が高い。これは、より多くのリンク236が使用されるからである。しかしながら、高い剛性が望ましくない場合がある。剛性が高くなると、剛性のより低いスキャフォールドにわたって大きな亀裂が形成される可能性がある。例えば、更なるリンクによって付加される剛性は、特にスキャフォールドが曲げ(リングが互いに対して移動する)と径方向圧縮および/または締め付け(圧縮)との組み合わせに晒される場合には、更なるリンク234により互いに接続されるリングに対して更に大きな応力をもたらす可能性がある。リンク234の存在は、リングの剛性を更に大きくすることに加えて、更なる負荷経路をリングにもたらす。
【0117】
生体内条件は、パターン200にしたがったスキャフォールドに有利に働く可能性があるが、パターン300にしたがったスキャフォールドは、送達直径に至るまで更に容易にクリンプされ得る。また、他のファクタもスキャフォールドをクリンプできる能力に影響を及ぼす。本開示によれば、クリンプ前のスキャフォールドにおける約115°未満のクラウン角度は、(1つのケースでは6.5mmの膨張直径に対して)更に高いクラウン角度を有するスキャフォールドよりもあまり破壊の問題や関連する展開の問題(例えば、リングストラットの不均一な折り畳み/拡開)を引き起こし得ないことが分かった。スキャフォールドは、約7.4mmまで膨張され得るバルーンまでクリンプされる。したがって、バルーンが過度に膨張されると、スキャフォールドが最大で約7mmの膨張直径を達成する。本開示に係るバルーンカテーテル−スキャフォールドアセンブリにおいて、バルーンにおける最大膨張直径はクリンプ前のスキャフォールド直径以下である。前述したように、スキャフォールドにおける最大膨張直径はクリンプ前のスキャフォールド直径よりも小さいことが好ましい。
【0118】
望ましいクリンプ形状を有する圧縮復元可能な高分子スキャフォールドを設計する過程中に、8mm直径でスキャフォールドを形成する際には、2つの理由により、スキャフォールドを所望のクリンプ形状にクリンプすること、例えば、スキャフォールドを8mm直径から約2mm形状にクリンプすることが難しいことが分かった。第1に、350〜400%直径減少要件を課すことにより、高分子材料は、この大きな直径減少に晒されるときにスキャフォールドによって受けられる歪みレベルに単に起因して、亀裂形成および亀裂伝搬を更に生じ易かった。この懸念は、剛性を調整することによって、例えばストラット角度、壁厚、および/または、クラウンの数を減少させることによって対処された。また、チューブ(図1)を形成するために使用されるプロセスステップは、前述したように、亀裂形成および亀裂伝搬に対するスキャフォールドの抵抗を高めるのに役立つことが分かった。
【0119】
第2に、亀裂形成を制限するようにスキャフォールド寸法が調整された場合であっても、スキャフォールドのための空間をクリンプ形状の範囲内に制限するという問題が存在した。クリンプされるスキャフォールドと関連付けられる材料の質量に起因して、所望のクリンプ形状へのリングの圧縮に利用できる空間は、受け入れられない降伏応力または破壊をもたらさなければ得られなかった。したがって、亀裂問題または展開問題を伴うことなく350〜400%直径減少が達成できた場合であっても、スキャフォールドパターンは、スキャフォールド構造が可能とする関節の範囲を超えなければ更なる減少を可能にしない。
【0120】
本開示の他の態様によれば、スキャフォールドの破壊靱性を高めるおよび/または送達直径を減少させるようになっているスキャフォールドのための改良されたクラウン構造が存在する。形状減少限界を克服し、かつPLGAのPLLAのような脆性高分子を使用して実施され得る既存のスキャフォールドパターンへの設計変更が、クラウン/谷部を形成するストラットをブリッジするクラウンまたは谷部の内側半径のサイズをかなり減少させることが分かった。
【0121】
図7Aおよび図7Bは、クラウン410近傍の一対のストラット420、422を示している。クリンプ前状態では、ストラット420、422がクラウン角度φだけ離間されるとともに、クラウンが内側半径raを伴って形成される。これはクラウンにとって典型的な構造である。内側半径は、クラウンでの応力集中を回避するように選択される。技術が教示したように、クラウンなどのヒンジ点で形状の劇的な変化が存在すると、クラウンにわたる曲げにおける慣性モーメントが不連続となるため、亀裂または降伏がヒンジ点で形成される可能性が更に高まる(それにより、径方向強度に影響が及ぶ)。
【0122】
金属ステントの場合、クリンプ前の角度φは、ステントが展開されるときの角度よりも小さい。小径のステントを形成することにより、ステントを小さな形状まで更に容易にクリンプできる。内側半径の存在に起因して、径方向剛性を失うことなく、展開時に角度φを超えることができる。しかしながら、この半径が非常に小さくかつ展開時のストラット角度がφを超える場合には、内側半径での応力集中に起因して、降伏または他の問題が発現する機会が高まる。金属の延性および弾力性に起因して、金属から形成されるステントを図7Bに示されるよりも更に小さくクリンプすることもできる。ストラット420、422が互いに接触してもよい。すなわち、Sが2×raよりも小さいが、ステントは、過度なクリンプ状態にもかかわらず、依然として復元してその径方向の剛性を維持できる。
【0123】
しかしながら、高分子スキャフォールドにおいては、距離S(図7B)を一般に半径raにおいて許容されるよりも小さくすべきでないことが分かった。すなわち、Sは2ra以上である。高分子スキャフォールドの場合、ストラット420、422が互いに接近されれば、すなわち、Sが2×ra未満になれば、スキャフォールドが展開される際に材料の脆性が破壊問題をもたらす可能性があり得る。したがって、スキャフォールドは、半径において許容できる距離を超えてクリンプされれば、その径方向剛性を維持できない場合がある。図8A、図8F、図8Gとして含まれる走査型電子顕微鏡(SEM)写真は、図7Bの距離Sが2×ra未満のときのクラウンでの破壊を示している。これらの写真から分かるように、Wクラウン、自由クラウンおよびYクラウンではかなりの材料破壊がある。
【0124】
ストラット420、422間の距離S(図7B)を減少させる目的で、本発明者等は、当技術分野により与えられるアドバイスにもかかわらず、半径raを可能な限り小さくすることを決めた。驚いたことに、径方向強度の大きな目立った再び生じる、あるいはひどく高い損失を伴うことなく、スキャフォールドがクリンプ状態から拡張状態まで復元できることが分かった。図8B、図8C、図8Dとして与えられるSEMは、クリンプ後に半径が減少してその後にバルーンにより拡張したクラウン/谷部を示している。これらの例において、クラウン内側半径は、切断工具(前述した緑色光ピコ秒レーザ)が形成できたと同程度に小さく形成された。図8A、図8F、図8Gと図8B、図8C、図8Dとを比較すれば分かるように、小さい半径を有するスキャフォールドは幾つかのボイドを生成したが、亀裂伝搬は存在しない。構造的な完全性が維持された。これらの写真の展開されたスキャフォールドは良好な径方向剛性を維持した。
【0125】
図7Cおよび図7Dは、これらの予期しない結果をもたらしたクラウン形成の実施形態を示している。ここに描かれるクラウン形成の小さい半径を有するタイプのWセルの一例が図5Bおよび図6Bに示される。半径rbは約0.00025インチであり、これはレーザによって形成され得る最小半径に対応する。0.00025インチ半径は、目標半径としてあるいは半径サイズの限界として考えられないが、それはこの実施形態にとって望ましい結果をもたらした。むしろ、小さい形状サイズを得るために、半径は可能な限りゼロに近くてもよいと考えられる。したがって、当業者であれば分かるように、実施形態における半径は、本開示にしたがって本発明を実施するために、この半径よりも大きいあるいはこの半径よりも小さい約0.00025(切断工具に応じて)となり得る。例えば、クリンプサイズを望み通りに減少させるように半径が選択されてもよいと考えられる。
【0126】
ほぼゼロの内側半径は、開示の目的のため、クラウン構造を形成する工具において可能な最小半径を意味する。幾つかの実施形態に係る内側半径は、距離Sがほぼゼロまで減少できるようにする半径を意味する。すなわち、図7Dに示されるように、ストラット同士が隣接しおよび/または互いに接触する(S’がほぼゼロまたはゼロである)。
【0127】
本発明に係るスキャフォールドをどのようにして強度損失を伴わずに理論最小半径まで減少した後に拡張できるのかに関する、特定の理論に縛られるのを望むことなく、膨張直径よりも大きい開始直径の選択が有利な結果に役立つと考えられる。金属ステントがその膨張直径よりも小さい直径から形成されて、その小さい直径がより小さいクリンプ形状を促進するべく選択されてもよい先の例とは対照的に、好ましい実施形態に係る高分子スキャフォールドは、バルーンカテーテル−スキャフォールドアセンブリにおける最大膨張直径よりも大きい開始直径から形成される(大きい開始直径は、後述するように急激な反跳を減らすため、および/または、図1のチューブにおけるチューブ処理ステップで前述したように展開状態での径方向強度特性を高めるために好ましい場合がある)。このように、クリンプ前ストラット角度は、スキャフォールドが展開されるときの最大クラウン/ストラット角度よりも大きいことが好ましい。つまり、バルーンがスキャフォールドをクリンプ状態から展開状態に拡張させるときには、決して図7Cのクラウン角度(クリンプ前角度)を超えない。圧縮復元可能な高分子スキャフォールドの特徴、すなわち、展開クラウン角度よりも大きいクリンプ前クラウン角度は、従来技術の教示内容に反して、最小内側半径がウラウン形成のために使用されたときにSEM写真における高分子スキャフォールドがどのように径方向強度を保持するのかに関する手掛かりを与えると考えられる。血管により負荷が掛けられる際のスキャフォールドの拡張ではなく圧縮は、ボイドの存在にもかかわらず、更なる脆弱化をもたらさないと考えられる。クラウンがそのクリンプ前形状(図7C)に対して圧縮変形のみを受けると、内側半径近傍の潜在的に脆弱化された領域が圧縮応力のみに晒され、そのため、クラウンが引き裂かれることがなく、すなわち、亀裂伝搬を引き起こさない。
【0128】
米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に詳しく記載されるスキャフォールドのクリンプは、高分子のガラス転移温度よりも低いがガラス転移温度付近の温度まで高分子材料を加熱することを含む。一実施形態において、クリンプ中のスキャフォールドの温度は、PLLAにおけるガラス転移温度よりも約5〜10°低い温度まで上昇される。最終クリンプ直径までクリンプされると、最終ドウェル期間にわたってクリンプジョーが最終クリンプ直径で保持される。圧縮復元を成す高分子スキャフォールドをクリンプするこの方法は、クリンプジョーが解放されるときの反跳を減らすために有益である。しかしながら、内側半径を小さくする本開示の態様に関して他の予期しない結果が見出された。ドウェル期間中に、高分子スキャフォールドのクリンプ形状を理論最小形状よりも小さい形状まで小さくできることが分かった。
【0129】
図6Bのスキャフォールドに関して先に与えられた例から、Dminにおける値は0.1048”すなわち2.662mmである。米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に記載されかつ先に要約されたクリンプ手順にしたがってこのスキャフォールドをクリンプすると、スキャフォールドを0.079”すなわち2.0066mmのクリンプ形状まで小さくできることが分かった。そのため、このスキャフォールドにおいて、クリンプ形状はDmin未満であった。この形状により、0.085”外径の保護シースをスキャフォールド上にわたって配置できる。薬剤コーティングがスキャフォールド上にわたって配置された際には、シースを伴うスキャフォールドの形状が0.092”であった。このスキャフォールドにおいては、径方向強度の範囲が0.45〜0.65N/mmであり、径方向剛性の範囲が1.00〜1.20N/mmであり、圧縮復元可能性が約90%(50%圧縮)であった。
【0130】
ドウェル期間中の材料の圧縮に起因してDmin未満の小さい形状が得られたと考えられる。本質的に、高い温度でドウェル期間中にクリンプジョーによって課される圧力により、リングを形成するストラットが一緒に圧縮されてクリンプスキャフォールド形状まで更に小さくなる。これらの実施形態によれば、その理論最小形状よりも小さい形状を成すクリンプされたスキャフォールドは、生体内でうまく展開されて検査された。このスキャフォールドは、50%の直径減少後の約90%を上回る望ましい圧縮復元に加えて、望ましい径方向剛性特性を有した。
【0131】
この開示の他の態様において、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドのためのストラットおよびクラウンの形成は、図7Aに示されるクラウン形成を成すスキャフォールドにおけるクリンプ形状よりも小さいクリンプ形状を達成する目的で、図7Eに描かれる形状を成すように形成される。これらの実施形態によれば、クラウンが図示のように半径rcに形成される。このスキャフォールドがクリンプされると、ストラットを互いに接近させることができ、それにより、これらのストラットを離間させる距離がほぼゼロ(S”がほぼゼロまたはゼロである)になる。図7Cの実施形態とは異なり、半径rcは、ストラットの端部とクラウンの端部との間に穴または拡大領域を形成することにより、何らかの有限のあるいはより大きな半径にされる。その内面に沿って内側半径を形成するクラウンにおける厚さt’cは、ストラット幅より小さくてもよい(図7Cおよび図16の例では、クラウン厚さがストラット幅より大きくてもよい)。これにより、クリンプ形状を大きくすることなく更に大きな内側半径をクラウンで使用できる。
【0132】
これらの実施形態において、図7E〜図7Fに描かれるクラウン形成を成すスキャフォールドは、「鍵穴」クラウン形成と称される。この名は、内壁面により形成される鍵穴スロットまたは開口を示す図7Fを参照することにより更に説明しなくても理解できる。クリンプ形状では、クラウン近傍のストラットが互いに接近される一方で、半径rcを有する穴または開口がクラウンでほぼ維持される。距離S”は、「鍵穴」クラウン形成においては半径rcの2倍よりも小さい。
【0133】
パターン300、200を具現化するスキャフォールドの例が図6A〜図6Bに与えられる(0.008インチ壁厚を有するV2実施形態、0.008インチおよび0.014インチの壁厚を有するV23実施形態、および、0.011インチ壁厚を有するV59実施形態と称される)。図5A〜図5Bの様々なセル属性のための特定の値が与えられる。
【0134】
8mmのクリンプ前直径を有するスキャフォールドV59(パターン200)は、非順応性バルーンまでクリンプされ得る。この場合、クリンプ形状は約2mmである。この例では、膨張直径が約6.5mmである。クリンプ前直径7、9をそれぞれ有するスキャフォールドV2、V23は、非順応性バルーンにより約6.5mmまで拡張される。V2、V23スキャフォールドは約0.092インチ(2.3mm)の直径までクリンプさせることができる。
【0135】
本開示によれば、スキャフォールドのストラットのアスペクト比(AR)が約0.8〜1.4であってもよく、リンクのARが約0.4〜0.9であってもよく、あるいは、リンクおよびストラットの両方のARが約0.9〜1.1または約1であってもよいことが分かった。アスペクト比(AR)は厚さに対する幅の比率として規定される。したがって、0.0116の幅および0.011の壁厚を有するストラットに対しては、ARは1.05である。
【0136】
本開示によれば、圧縮復元可能性を有するバルーン拡張型の高分子スキャフォールドは、約0.3N/mmよりも大きい径方向強度または約0.32〜0.68N/mmの径方向強度を有するとともに、約0.5N/mmよりも大きい径方向剛性または約0.54〜1.2N/mmの径方向剛性を有する。本開示によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、約0.008”〜0.014”の壁厚を有するスキャフォールドにおいてこれらの範囲の剛性および強度を有するとともに、約2mmクリンプ形状から6.5mm非順応性バルーンによって展開されるように構成され、あるいは、バルーンカテーテル上の約2mmの交差形状から約6.5mm〜7mmの直径に展開されるように構成される。
【0137】
PLLAなどの生体分解性高分子(および、一般に炭素、水素、酸素、窒素から成る高分子)が、放射線不透過性を伴わず、放射線透過性である。スキャフォールドは放射線不透過性でありあるいはX線透視下で見えることが望ましく、それにより、スキャフォールド本体、好ましくは端部リングをリアルタイムに視覚化することで、血管内での正確な配置を容易に行なえる。心臓科医師またはインターベンショナル・ラジオロジストは、一般に、患者の脈管構造を通じて送達カテーテルを追跡し、蛍光透視または同様のX線視覚化法を使用して、病変部位にスキャフォールドを正確に配置する。スキャフォールドをX線透視下で見えるようにするためには、スキャフォールドが周辺組織よりも多くのX線を吸収しなければならない。スキャフォールドにおけるX線不透過性材料がその直接的な視覚化を可能にしてもよい。これらの材料を生体分解性高分子スキャフォールドと共に含ませる1つの方法は、例えば米国特許出願第11/325,973号明細書(整理番号62571.45)に記載される技術を使用してX線不透過性マーカをスキャフォールドの構造要素に取り付けることである。しかしながら、他のステントまたはスキャフォールドとは異なり、本開示に係る圧縮復元可能性を有する生体分解性、生体吸収性、生体再吸収性、または、生体内分解性の末梢血管に埋め込まれるスキャフォールドは、公知技術で適切に扱われない特別な要件を有する。
【0138】
最小クリンプ直径、例えばDminを増大させることなくマーカ保持材料(マーカ構造)の近傍で所望の剛性特性を維持するという満たされない必要性が存在する。マーカ保持材料は、特に300〜400%の直径減少を有するスキャフォールドの場合に、あるいは更には、開始クリンプ前直径から送達直径にクリンプされる際に、および/または、目標送達直径が最大でもほぼスキャフォールドの理論最小直径(Dmin)となる場合に、送達カテーテル上のクリンプされたスキャフォールドにおいて必要とされる交差形状または送達直径を得るために利用できる非常に限られた空間を妨げてはならない。クリンプ中に所望の送達直径を得るためには、例えば300〜400%以上の直径減少を達成できるためには、マーカ材料(リンクに負荷がかけられるとき)がスキャフォールドのリングを形成するストラットの折り畳みを妨げてはならないことが分かった。しかしながら、この必要性を径方向剛性への影響を考慮することなく扱うと、マーカ構造の近傍で許容できない剛性損失が存在することが分かった。
【0139】
図9Aおよび図9Bを参照すると、パターン200に係るスキャフォールドの部分が示されている。図9Aは、放射線不透過性材料500(マーカ500)を保持するリンク237が配置されるスキャフォールドの部分を示している。図9Bは、クリンプ形状で構成されるときのスキャフォールドのこの同じ部分を示している。リング212b、212c、212d、212fはそれぞれ、クリンプリング212b’、212c’、212d’、212f’として、それらの圧縮された折り畳みあるいはコンパクト形状で示されている。リング212のそれぞれが同じ径方向剛性特性を有する(リンク接続は無視する)ことができるように、一対のマーカ500がリングストラット230上ではなくリンク237上に配置されるのが好ましい。他の実施形態では、適した受け入れ部をリング構造に形成することにより、マーカ500がリング212上に配置されてもよい。
【0140】
図9Bから分かるように、クリンプされたスキャフォールドにおいて最小直径、例えばほぼ少なくとも理論最小クリンプ直径(Dmin)を維持するために、マーカ構造の存在が折り畳まれたストラット230間の距離に影響を与えないことが好ましい。この結果を得るため、リンク237の長さは、300〜400%以上の直径減少を達成するために必要に応じてストラット230の折り畳みを制限することを妨げることなく、マーカを支持しない他のリンク234の長さL1を超えて増大(L237=L1+L2)されてもよい(長さL2は、おおよそ、マーカ構造(デポ(depot)502および一対のマーカ500)を受け入れるために必要とされる長さである)。一方、厳格なクリンプ直径要件を有さない、あるいはスキャフォールドの構造要素間に最小空間を有さないステントまたはスキャフォールドは、マーカ500を保持するために折り畳みストラットの下側にサイズが大きいリング接続リンクを有してもよい。これは、クリンプ形状でマーカ構造のために利用できる空間が残存するからである。
【0141】
デポ502は、スキャフォールドがチューブから切断されるときに形成されてもよい。デポ502は、マーカ500球、例えば白金球の直径よりも僅かに小さいサイズの穴を備え、それにより、球を穴内に配置して、薬剤高分子コーティングがスキャフォールド上にわたって塗布されるときに穴に球を固定することができる。薬剤高分子コーティングは、デポ502の穴内にマーカ500を保持する接着剤またはバリアとしての役目を果たすことができる。
【0142】
本開示の一態様において、適切な照明を達成するために必要なマーカ500を形成する球の直径は、高分子スキャフォールドの壁厚(235、図3)よりも小さい。したがって、球が穴内に配置された後に、コーティングがその上に塗布されてもよい。球直径がほぼ壁厚235以下であるため、平坦な形状を得るために球の再形成または成形は不要である。したがって、マーカを塗布するプロセスが簡略化される。
【0143】
しかしながら、図9の実施形態に係る最小クリンプ直径を維持するためにマーカ構造を有するリンクの長さが増大されると、隣接するリングの組み合わされた径方向剛性特性が低下される。これは、それらのリングが更に離間されるからである。特に端部リング(それがたった1つの隣接リングのみに接続されるため、本質的に剛性が低い)に関してこの剛性損失を最小限に抑えるため、マーカ構造がリング212d、212f間ではなくリング212c、212f間に配置される。また、マーカ構造は、マーカ対500が長手方向(軸A−A)ではなく垂直軸B−Bに沿って方向付けられるデポ502a、502bに置かれるように配置される。軸B−Bに沿ってデポ502a、502bを配置することにより、マーカ500が長手方向に配置される場合よりも長さL2が短くなるのが好ましく、それにより、隣接リング212c、212f(リンク237の長さの増大によってもたらされる)、および端部リング212dの組み合わされた径方向剛性の望ましくない損失が最小になる。
【0144】
高分子スキャフォールドにおけるマーカの他の実施形態によれば、パターン200に係るスキャフォールドは、クリンプ要件に合うために必要とされる増大された長さとマーカ構造とを有するリンク237を欠いてもよい。代わりに図10Aおよび図10Bを参照すると、放射線不透過性材料シート504、例えば0.025”長さおよび0.004”厚さの金、白金、または、イリジウムの箔が、リンク234の周囲に巻き付けられて、例えばスキャフォールド上に堆積される薬剤高分子コーティングにより所定位置に保持される。箔の厚さは無視できるため、あるいは、クリンプ中の材料圧縮により、スキャフォールドは、折り畳みストラット230間のマーカ504の存在にもかかわらず、少なくともほぼDminクリンプ直径を維持できる場合がある。これらの実施形態によれば、箔がスキャフォールド機能に影響を及ぼさないため−リンク長さは他のリンク224とほぼ同じであってもよい−、箔は、好ましくは、血管内のスキャフォールド端部の更に容易な識別を促すためにスキャフォールドの端部の更に近傍に配置されてもよい。例えば、マーカ504がリング212dをリング212fに接続するリンクに配置されてもよい。これは、剛性特性がマーカ504の存在によって影響されないからである。
【0145】
図11A〜図11Eに描かれる高分子スキャフォールドにおけるマーカの他の実施形態によれば、パターン200に係るスキャフォールドは、放射線不透過性マーカを保持するためにリング構造が変更される。図11A〜図11Eに示されるようにマーカ材料を端部リング212dのクラウン207上またはその近傍に配置することにより、血管内の端部リングの位置を更に容易に突き止めることができる(マーカが端部リングに配置されているため)。図11A、図11B、図11Eに描かれる実施形態によれば、1つ以上の円筒形状のマーカ511、516、531がそれぞれ、クラウン207に配置されてもよく(図11A、図11B)、あるいは、図11Eの場合のようにクラウン207の近傍に配置されてもよい。図11C、図11Dの実施形態によれば、放射線不透過性材料の1つ以上のストリップ521、526がクラウンの近傍に配置され(図11C)あるいはクラウンの周囲に配置される(図11D)。
【0146】
単一のマーカ511は、図11Aの場合では、クラウン207に形成される穴512内に受けられてもよく、あるいは、図11Bに示されるようにクラウン207から延びるアイレット519により設けられる穴内に受けられてもよい。後者の場合には、アイレットがクラウン207から破断するのを回避するため、延在部519を形成する材料の延性または破壊靱性を向上させることが必要な場合がある。このアイレットに関する強度/剛性要件は存在しないため、クラウンの剛性に影響を与えることなく更に高い破壊耐性を有するように材料を局所的に変えることが実用的な場合がある。例えば、靱性は、局所的な熱処理、局所的な可塑化、または、局所的なコーティング塗布によって得ることができる。局所的な熱処理は、ポリマーブレンドまたはブロック共重合体がスキャフォールドの骨格に使用される場合に特に有益である。図11Eは、ストラット532に形成される3つの穴に受けられる3つの放射線不透過性断片531を示しており、ストラット532は、穴534の存在に起因するストラット230の強度損失に対応するべく肉厚に形成されている。
【0147】
図11Cおよび図11Dは、リング212bに形成されるスロット522、528にそれぞれ受けられる放射線不透過性材料のストリップ526、521の例を示している。ストリップ521はストラット524内に配置されてもよく、あるいは、ストリップ526は、クラウンの視認性を高めるためにクラウン207の周囲に配置されてもよい。これらの設計選択は、このクラウンの曲げ剛性への影響も考慮に入れるべきであり、これは図11Aの実施形態にも当てはまる。スロット522、528は、クラウンでの曲げ剛性への影響を最小にするために、ストラットおよび/またはクラウンの中立軸と一致することが好ましい。
【0148】
他の実施形態において、ストリップ521、526は、生体再吸収可能な材料中に分散された放射線不透過性粒子、例えば60%タングステン粒子から成る材料から形成されてもよい。この実施形態は、スキャフォールドが生体分解された後に血管内に放射性不透過性材料を分散させるという利点を有する。
【0149】
他の実施形態において、スキャフォールドは、金属ばね要素がクラウン内に挿入されることにより、(リンクの長さの増大に起因して)端部リングでの実質的な径方向の強度または剛性を失うことなく、例えば図9A〜図9Bに示されるようにマーカを受け入れるために長くされた端部リング接続リンクを有してもよい。したがって、この実施形態によれば、マーカ要素が存在する。
【0150】
他の実施形態では、金属ばねまたは複合金属−高分子ばねが、より高い視認性を与えるとともに端部リングを補強するという二重の役割を果たしてもよい。図11Fを参照すると、端部リング312B’がその一方側を形成する場合の非対称セル304’の変形形状が示されている。自由クラウン307、Y−クラウン309、および、W−クラウン310には、該クラウンに埋め込まれる弓形の補強要素またはばね460が存在する。部材460のための材料は、クラウンで付加される強度/剛性に加えて、これらの材料が放射線不透過性であることから体内に埋め込まれる際のスキャフォールドの端部の視認性を更に高めるために、例えば、鉄、マグネシウム、タングステンであってもよくあるいはこれらを含んでもよい。ストラットの中立軸に対する部材460の位置は、例えばクラウンの外端に最も近いその縁部に最も近接してもよく、例えば、リングが圧縮下にあるときのストラットにわたる最終的な引張応力が主に部材460の存在に起因して増大されるようにクラウンの内側半径から最も離れてもよい。部材460は、より高い視認性を与えるとともに更なる径方向の強度および剛性を端部リングに与えるという二重の役目を果たすために、端部リングのそれぞれのクラウンに配置されるのが好ましい(さもなければ、端部リングは、1つの隣接するリングのみに接続されているため、径方向剛性が内部リング構造よりも小さくなる)。
【0151】
設計プロセス
前述したように、課題は、大マーカに言えば、3つの競合する設計ドライバ、すなわち、径方向強度/剛性対靱性、生体内性能対血管部位への送達のためのコンパクトさ、および、圧縮復元対径方向強度/剛性の間の適切な釣り合いを達成するものとして述べられてもよい。
【0152】
パターン200または300を有する実施形態は、本明細書中に開示されるパラメータの特定の組み合わせによる、あるいは開示に照らして容易に再現可能な望ましい結果をもたらすことが分かった。ガイドとして使用するために適切な圧縮復元を成す既知の先行バルーン拡張型ステントが存在しなかったことが分かる(確かに、当技術分野は、末梢血管ステントのためのそのような開発経路を阻害してきた)。したがって、様々な高分子スキャフォールドの組み合わせが製造されてベースにされ、また、以下の目的を達成するのに最も適した関係を理解するために以下の特性が評価された。
【0153】
所望の最小径方向剛性および強度、反跳、展開能力、並びに、クリンプ形状の犠牲を伴わないスキャフォールドの圧縮復元可能性;
展開時の急激な反跳 − バルーンによる展開の30分以内の直径減少の大きさ;
送達/展開形状 − すなわち、スキャフォールドがクリンプ中に構造的完全性を維持しつつサイズを減少できる大きさ;
生体内径方向降伏強さ、および、径方向剛性;
バルーンによる拡張時およびクリンプ時、または、血管内への埋め込まれて曲げ負荷、軸方向圧縮負荷、および、径方向圧縮負荷の組み合わせに晒される時の亀裂形成/伝搬/破壊;
バルーンによる拡張時のスキャフォールドリングの展開の不均一性;および、
締め付け/圧縮剛性。
【0154】
これらの項目については前述した。以下は、開示される実施形態の態様の更なる見識を得るために、本開示に係るスキャフォールドの挙動に関する更なる例および結論を与える。
【0155】
パターン300(図4)に類似するパターンを伴って形成されるスキャフォールドは良好な大きさの圧縮復元可能性を有したが、このスキャフォールドの他の特性は、バルーン拡張後の材料の記憶に起因して理想的ではなかった。最初に6.5mmチューブから形成されてほぼ同じ直径まで展開されたスキャフォールドは、急激な反跳問題を有した−6.5mへの展開後に、スキャフォールドが約5.8mm直径まで跳ね返った。また、スキャフォールドは、スキャフォールドリングの不規則な拡張などの問題も展開中に呈した。
【0156】
設計上の問題を解決しようとする1つの試みが以下の態様で始まった。スキャフォールドの特性は、所望の圧縮復元可能性を維持しつつ、剛性、強度、構造的完全性、展開・反跳問題に対処するように変更された。最終的に、スキャフォールドは、50%締め付け変形後の良好な圧縮復元特性を維持しつつ所望の一連のスキャフォールド特性を有して(本開示にしたがって)設計された。50%締め付け変形後の良好な圧縮復元特性とは、その非変形高さの50%にほぼ等しい高さまでスキャフォールドを押圧する圧縮負荷を掛けた後にスキャフォールドの外径を十分に、例えば約90〜95%まで復元できるスキャフォールドの能力のことである。
【0157】
締め付け剛性(径方向剛性に対立するものとして)は、スキャフォールドの壁厚の変化に最も影響されあるいは最も敏感である。壁厚が増大するにつれて、締め付け剛性が高まる。また、スキャフォールドの圧縮復元可能性は、印加される負荷に応じて最も外側に撓む領域にもたらされる応力により最も影響される。後述するように、壁厚が増大されるにつれ、スキャフォールドの外側に撓んだ端部における歪みエネルギーの集中の高まりに起因して圧縮復元可能性が低下する。したがって、圧縮復元可能なスキャフォールドにおける設計では、締め付け剛性を増大させるための壁厚と、締め付け剛性の増大に起因する圧縮復元可能性の低下とを釣り合わせなければならない。同様に、径方向剛性は壁厚の変化によってあまり影響されない(締め付け中においては、負荷の大部分が面外ではなく面内負荷であるため)が、圧縮復元可能性に影響を及ぼすように壁厚が変えられる場合には、径方向剛性を考慮に入れなければならない。壁厚が変化すると、径方向剛性が変化する。
【0158】
図12A、図12B、図12Cに描かれる図は、壁厚と圧縮復元可能性との間の関係を説明し易くするために与えられる。図12Aは、スキャフォールドがその非変形(無負荷)状態と締め付け負荷に晒される変形状態(仮想線で描かれる)とにあるスキャフォールドの断面を示している。「S」および「S’」によって示されるスキャフォールドの端部は、最も高い歪みエネルギーの領域を示している。言うまでもなく、これはスキャフォールドが締め付け負荷を受けているときのこれらの領域の高度な湾曲によってもたらされる。スキャフォールドが復元しない場合、あるいは、締め付け負荷(F)からのスキャフォールドの復元が低下する場合、それは、これらの領域で材料が降伏してしまっているためであり、そのため、元の圧縮前の直径へ復元するのは不可能であり、あるいは、そのような復元が低下される。図12Aにおける大きさが等しい反対方向の圧縮力Fは、スキャフォールドの高さを、その非変形高さ、すなわち、スキャフォールド直径から、δによって示される変形高さに撓ませる。圧縮力Fが印加されているときに最も高い歪みエネルギーを含むスキャフォールドの領域は、仮想線で示される変形形状における対称軸の近傍にある。以下の説明では、スキャフォールド領域S、S’における負荷反応または材料応力/歪み状態が歪みエネルギーに関して表わされる。
【0159】
図12Bおよび図12Cは、スキャフォールドが異なる壁厚を有するときの領域Sにおける歪みエネルギーへの影響を示すべく意図された負荷下の構造の簡略化されたモデルである。本質的に、モデルは、ばね定数Kを有するばねに関して領域Sにおける線形応力−歪み表示を構成するために図12Aの変形形状の対称性を利用しようと試みる。したがって、スキャフォールド特性は、円弧10/20(輪またはリングの1/2)または端部で支持される半円筒シェルとしてモデリングされる。円弧は、強制的な変位δが加えられるときには下方(Y方向)へ移動できず、これは図12Aの対称性に起因して境界条件として許容できると考えられる。x方向の動きは、ばね定数Kを有するばねによって抑制される。図12Cの半球円弧10は厚さt1を有し、図12Bの半球円弧20は厚さt2>>t1を有する。
【0160】
図12B、図12Cにおいて締め付け負荷が加えられるにつれて、円弧10、20が(仮想線で示されるように)変形される。これは、図12Aの場合と同様に円弧10/20のそれらの中心でのほぼデルタ(δ)の量の強制変位によってモデリングされる。しかしながら、円弧10は、強制変位が加えられるときにはその曲率に関して円弧20よりも小さく変形する。これは、その曲げ剛性が円弧20よりも高いからである。円弧10では曲率があまり変化されないため、強制変位によりもたらされる%程度の歪みエネルギーが端部のばねによって支えられる。この場合、ばね力がSでの外側への動きを抑制している。円弧20においては、より多くの%歪みエネルギーが円弧で支えられる。これは、端部で動きを抑制するばねとは対照的に、より大きな曲率変化が意図されるからである。
【0161】
結果として、所定の印加力の場合、端部での%歪みエネルギーは円弧10においてより大きい。これは、円弧10の曲げ剛性が円弧20よりも大きいからである。これがばねの変位によって描かれている(x2>x1)。円弧20を抑制するばねにおける%歪みエネルギー(すなわち、1/2K(x2)2/(円弧20の全歪みエネルギー)×100)は、ばねを抑制する円弧10の%歪みエネルギー(すなわち、1/2K(x1)2/(円弧10の全歪みエネルギー)×100)よりも大きい。したがって、この例から、壁厚と圧縮復元可能性との間の関係に関する基本的評価を得ることができる。
【0162】
好ましい実施形態では、9mmのスキャフォールドクリンプ前直径の場合、0.008”〜0.014”、あるいは、更に狭くは0.008”〜0.011”の壁厚が、50%の圧縮復元可能性を保ちつつ所望の締め付け剛性を与えることが分かった。より一般的には、壁厚に対するクリンプ前直径またはチューブ直径の比率が約30〜60または約20〜45であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。また、幾つかの実施形態では、壁厚に対する膨張直径の比率が約25〜50または約20〜35であると、満足な締め付け強度および径方向強度を呈しつつ50%圧縮復元可能性が得られることが分かった。
【0163】
また、締め付け剛性を高めるための壁厚の増大は、所望のクリンプ形状を維持するために制限されてもよい。壁厚が増大されるにつれて、クリンプされたスキャフォールドの最小形状が増大し得る。したがって、壁厚は、先に説明したようにそれが圧縮復元可能性に対して及ぼし得る悪影響およびクリンプ形状の望ましくない増大の両方によって制限される場合があることが分かった。
【0164】
試験
異なる機械的特性を測定してステントの特性とスキャフォールドの特性との間で比較を行なう目的でスキャフォールドおよびステントに対して行なわれる様々な試験の結果が以下に与えられる。試験で使用されたステントは、Cordis(特許商標)S.M.A.R.T.(特許商標)CONTROL(特許商標)Lliac自己拡張スント(8×40mm)(「コントロールステント」)、Igaki−Tamai(「Igaki−Tamai stent」)によるREMEDYステント(6×40mm)、および、Omnilink Eliteステント(6×40mm)であった。
【0165】
スキャフォールドV2、V23、V59に関して表2〜表5に与えられるデータは、表6A、表6Bに挙げられる特性を有するスキャフォールドに関するものである。スキャフォールドは、米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)の段落[0071]〜[0091]に記載されるプロセスと同様のプロセスを使用して、送達バルーンまでクリンプされた後、それらの膨張直径まで拡張された。
【0166】
表2〜表6に与えられるデータは、スキャフォールドおよびステントがそれらの送達バルーンによって拡張された後のスキャフォールド特性およびステント特性を示している。以下の表2〜表5で報告される各試験においては、特に他の点が述べられていなければ、統計値が平均値である。
【0167】
表1、表2は、他のタイプのステントと比較される様々なスキャフォールドにおける圧縮復元のパーセンテージを示すデータを与える。スキャフォールドおよびステントは、表に示されるそれぞれの量だけステントおよびスキャフォールドを圧縮または締め付けるために一緒に移動される一対の対向する平坦な金属プレートを使用して圧縮された。試験は20℃で行なわれた。
【0168】
表2は、V2、V23、V59スキャフォールドの圧縮復元可能性とIgaki−TamaiステントおよびOmnilink Elite(6mm外径および40mm長さ)バルーン拡張型ステントの圧縮復元可能性とを比較している。圧縮期間は短かった(ほぼ0秒)。
【0169】
表2:20℃で平坦プレート試験を使用したおおよその圧縮復元(圧縮後12時間を経て測定された開始直径のパーセンテージとして)
【表2】
【0170】
結果から分かるように、Omnilink Elite冠動脈ステントと比べると、V2、V23、V59の圧縮復元間には劇的な違いが存在する。最良の結果は、V23(0.008”壁厚)およびV59スキャフォールドにより、Igaki−Tamaiステントと比較したこれらのスキャフォールドの径方向の強度特性および剛性特性を考慮に入れると達成される(表5参照)。
【0171】
表3は、50%圧縮後の0.008”壁厚を有するV23スキャフォールド(図6A)における圧縮復元挙動を比較している。データは、開始直径の50%での短い(ほぼ0秒)圧縮後、1分の圧縮後、および、5分の圧縮後におけるV23スキャフォールドのパーセント圧縮復元を示している。
【0172】
表3:20℃で平坦プレート試験を使用したV23(0.008”壁厚)のおおよその圧縮復元(圧縮後24時間を経て測定された開始直径のパーセンテージとして)
【表3】
【0173】
図13は、その開始直径の50%まで圧縮された際のV59スキャフォールドにおける平坦プレート除去後の24時間にわたる圧縮復元特性を示している。0秒、1分、および、5分の圧縮継続時間後のスキャフォールドの復元に対応する3つのプロットが示されている。スキャフォールド直径は、平坦プレートが取り除かれた後の24時間に至るまでの異なる時間点で測定された。これらのプロットから分かるように、復元の大部分は、平坦プレートが取り除かれた後の約5分以内で起こっている。したがって、本開示にしたがって構成されるスキャフォールドにおいては、約90%圧縮復元が長い圧縮期間にわたって、例えば10分、1/2時間、または、1時間にわたって可能であると考えられる。
【0174】
締め付け力または圧縮力が短期間(図13では「0秒保持時間(50%)」により示される)のみにわたって加えられると、試験は、その内径の約95〜99%までの回復を示す。力が1分間または5分間にわたって保持されると、試験は、復元可能性が少ないことを示す。図13の例では、スキャフォールドがその内径の約90%まで復元することが分かった。ほぼ同じである1分および5分の時間は、負荷状態にあるときに塑性歪みあるいは復元不可能な歪みに屈する粘弾性材料の任意の効果が殆ど生じたことを示唆する。
【0175】
本開示によれば、圧縮復元可能な高分子スキャフォールド(適切な強度特性および剛性特性、例えば以下の表4におけるスキャフォールドの剛性特性および強度特性を有する)は、その開始直径の約33%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、付随的な(例えば1分未満の)圧縮事象後にその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有し、また、圧縮復元可能な高分子スキャフォールドは、その開始直径の約25%まで圧縮されるときには約90%よりも大きい圧縮復元可能性を有するとともに、長い圧縮継続時間(例えば、約1分〜5分、あるいは、約5分よりも長い時間)にわたってその開始直径の約50%まで圧縮されるときには約80%よりも大きい圧縮復元可能性を有する。
【0176】
急激な反跳問題が観察された。一例において、スキャフォールドは、0.008”壁厚を有する7mm変形チューブから形成された。スキャフォールドが6.5mmまでバルーン展開された場合には、スキャフォールドが約5.8mmまで跳ね返った。この問題に対処するため、スキャフォールドは、8mm、9mm、10mmのより長いチューブから形成された。意図される膨張直径に対してクリンプ前直径が大きいと、6.5mmまで展開されるときに反跳を殆ど呈さないことが分かった。変形チューブが作られたときに形成される材料の記憶が急激な反跳を低減すると考えられる。
【0177】
7.4mm膨張直径を有するスキャフォールドにおける例えば10mmの開始チューブ直径は例えば8mmチューブよりも小さい反跳を呈するが、このより大きな直径サイズは、大きなチューブサイズの使用を妨げる他の問題をもたらした。大きい直径に起因して、実行不可能でなければ、約2mmの所望のクリンプ直径までクリンプしている最中に直径を減らすことが難しくなった。材料が更に多く、直径減少が更に大きいため、直径を減らすために利用できる空間が少ない。したがって、開始直径が閾値を超えると、所望のクリンプ形状を維持することが実現不可能になる。反跳が少なくかつ約2mmのクリンプ形状を依然として得ることができるという点において9mmチューブサイズが許容できる結果をもたらすことが分かった。
【0178】
過度な開始直径は、展開中に他の問題をもたらす可能性がある。第1に、開始直径からクリンプ直径への直径減少が非常に大きい場合には、それに対応して、スキャフォールドのヒンジ要素、クラウン、または、谷部における局部応力が増大する。高分子材料は脆弱化し易いため、応力レベルが必要以上に大きくなると、ストラットにひびが入りあるいはストラットが破壊する懸念がある。直径9mmの開始直径のスキャフォールド(他のスキャフォールド直径と組み合わせて)は、過度な亀裂または破壊を伴うことなく、2mmまで減少された後に7.4mm膨張直径まで拡張され得ることが分かった。
【0179】
表4は、図6A、図6BのV2、V23、V59スキャフォールドで観察される急激な反跳を比較している。
【0180】
表4:急激な反跳比較
【表4】
【0181】
前述したように、金属ステントとは異なり、高分子スキャフォールドにおける設計は、クリンプ中および血管内で膨張されるときの両方においてその破壊靱性を考慮に入れなければならない。抹消動脈内に配置されるスキャフォールドにおいては、スキャフォールドにより受けられる締め付け力または圧縮力に加えて、スキャフォールドが皮膚の表面に近くおよび/またはその場所が身体の付属器内またはその近傍にあることから、直面される負荷のタイプが、一般に、曲げ負荷および軸方向負荷に関して冠動脈ステントよりも激しい。これについては、例えば、Nikanorov、Alexander、M.D.et al.、Assessment of self−expanding Nitinol stent deformation after chronic implantation into the superficial femoral arteryを参照されたい。
【0182】
当技術分野において知られるように、高い径方向剛性特性および強度特性を有するように設計されたスキャフォールドは、一般的に言うと、構造的完全性を維持するために必要とされる破壊靱性も呈さない。適切な破壊靱性を伴う末梢埋め込み高分子スキャフォールドを有する必要性は、スキャフォールドのストラットおよびリンクであるいはこれらの間で比較的高い度合いの歪みを維持する必要性、および、疲れ破壊に帰する繰り返しの周期的な負荷事象を所定期間にわたって維持する必要性の両方に帰する。
【0183】
スキャフォールドを形成するチューブの前述した製造方法は、スキャフォールド材料の固有の破壊靱性を高めようとしている。しかしながら、リンクにおけるスキャフォールドの剛性を低下させることによって、あるいは、更なるヒンジ部またはクラウン要素をリングに加えることによってスキャフォールド内での破壊または亀裂伝搬の事例を減らすため、更なる手段が使用されてもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、破壊または亀裂がスキャフォールドの更に重大な領域に伝搬しないように、予め定められた破壊点をスキャフォールドに形成することができる。幾つかの例が与えられる。
【0184】
前述したように、末梢血管に埋め込まれる高分子スキャフォールドは、一般的に言うと、径方向圧縮負荷、締め付けあるいは圧縮負荷、曲げ負荷、および、軸方向圧縮負荷の組み合わせに晒される。試験結果は、亀裂の大部分が、末梢血管に埋め込まれる高分子スキャフォールドにおいてリングを接続するリンクではなく、リングを形成するストラットで生じ得ることを示している。確かに、体外データは、スキャフォールドが末梢血管内に埋め込まれるときに周期的な径方向負荷、曲げ負荷、および、軸方向負荷に完全に耐え抜くことができることを示唆する場合があるが、スキャフォールドが生体内で末梢血管において軸方向負荷、曲げ負荷、および、径方向負荷の組み合わせに晒される場合には、それにもかかわらず、許容できない亀裂形成、破壊、または、径方向強度の著しい脆弱化が存在する。
【0185】
このことを考慮に入れて、スキャフォールドパターンの別の実施形態は、スキャフォールドの径方向の強度または剛性に大きな影響を与えることなく曲げおよび軸方向圧縮においてスキャフォールドを脆弱化させるあるいは更に柔軟にしようとする。リングを接続するリンクを更に柔軟にすることにより、スキャフォールドが曲げあるいは軸方向圧縮に晒されるとき、リングが互いに軸方向に位置合わせされないとき、例えば、スキャフォールドが湾曲した血管内に位置するときなどに生じる1つのリングとそれに隣り合うリングとの間の相対的な動きは、隣り合うリング同士の間に高い負荷をもたらさない。これは、リンクが、負荷を一方のリングから他方のリングに直接に伝えるのではなく、リング間の相対的な動きに応じてより撓み易いからである。
【0186】
パターン200の別の実施形態を参照すると、スキャフォールドは、図14Aおよび図14Bに描かれるパターンにしたがって構成される。パターン400は、曲げおよび軸方向圧縮(または引張り)においてスキャフォールドにより高い柔軟性をもたらすようにリング212を接続するリンク434/440が変更されている点を除き、パターン200と同様である。図14Bを参照すると、リンク434は、リングのY−クラウンに最も近い曲げにおける第1の慣性モーメント(MOI1)を有する第1の部分435と、隣接するリングのW−クラウンに最も近い曲げにおける第2の慣性モーメント(MOI2)を有する第2の部分438とを含む。ここで、MOI1<MOI2である。また、実際に曲げ剛性を更に減らすためのヒンジまたは関節を形成するために、部分435にはU形状部分436が形成される。U形状部分436は、リング212が図14Bで時計回りに回転するときに開放する。したがって、リンクは、ヒンジ436a周りの曲げ剛性が非常に低いため、時計回りの曲げにおいて非常に柔軟である。反時計回りの回転に関しては、U形状部分の端部同士が当接し、それにより、実際にヒンジ436aの効果が打ち消される。
【0187】
スキャフォールドの時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方において等しく柔軟なスキャフォールドを構成するため、U形状部分434は、リンクのMOI部分の減少のみによって、例えば図14BのU形状部分436をMOIが減少された直線部分と置き換えることによって高い柔軟性が与えられるように除去されてもよい。交互に位置する逆U−リンク440bとU−リンク440aとを示す図14Aには別の案が描かれている。スキャフォールドが時計回りの曲げモーメントに晒される(すなわち、リング212dがリング212eに対して図14Aの下方に移動される)と、U−リンク440aのU形状部分がヒンジ点として作用する。「U」は、隣接するリング212間の相対的な動きに応じて開放し、一方、逆U−リンク440bは、逆「U」の端部同士が接触するため、本質的に直線部として機能する。同様に、スキャフォールドが反時計回りの曲げモーメントに晒される(すなわち、リング212dがリング212eに対して図14Aの上方に移動される)と、逆U−リンク440bの逆U形状部分がヒンジ点として作用する。逆「U」は、隣接するリング212間の相対的な動きに応じて開放し、一方、U−リンク440aは、スキャフォールドが撓む際に「U」の端部同士が接触するため、本質的に直線部として機能する。
【0188】
他の実施形態では、各リング間の距離を増大することによって、あるいは1つおきのリング間の距離を増大することによってMOIの減少が達成されてもよい。例えば、図2のリング212a、212b間の距離が増大されてもよい(一方、リング212c、212b間の距離は同じままである)。この例では、リング212a、212bを接続するリンクは、リング212b、212cを接続するリンクと同じMOIを有することができるが、前者のリンクは、その長さが後者のリンクよりも長いため、曲げにおいて剛性が低い。
【0189】
他の代わりの手段において、パターン400は、図14Cに描かれるように、対向する「U」形状部分または「S」部分を有するリンク442を含む。Sリンク442は、図14Bでは1つだったが、リンク442の部分435が2つのヒンジ点444a、444bを有することを除き、前述同様にNOI1、MOI2を有する。この構成により、リンク442は、時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方における曲げ柔軟性を高めるためのヒンジ点を有する。したがって、リンク442を有するパターン400においては、時計回りの曲げおよび反時計回りの曲げの両方においてより高い曲げ柔軟性を得るために同じリンク442があらゆる場所で使用されてもよい。
【0190】
図14D〜図14Fは、Y−クラウンとW−クラウンとを接続してこれらの間で延びるリンク442の更なる実施形態を示している。これらの例は、パターンがチューブから切断されるようにリンクを成形することによって、あるいはスキャフォールドがチューブから切断された後にリンクを修正することによって可変MOIを有するリンクを示している。
【0191】
図14Dおよび図14Fは、接続クラウンに隣接して配置される領域よりも小さいMOIを有する領域を有するように形成されるリンク450、454をそれぞれ示している。リンク450の場合、小さいMOIを有する領域451は、クラウンに隣接する領域における曲げの中立軸「X」からオフセットされ、あるいは中立軸「X」の周りで非対称である。リンク454の場合、領域455は、クラウンに隣接する領域における中立軸の周りで対称である。領域451、452におけるこの対称性/非対称性コントラストは、クラウンにおける対称軸に関して説明されてもよい。つまり、図から容易に特定され得るY−クラウン(210)またはW−クラウン(209)における対称軸「X」に関して、領域451はX軸の周りで非対称であり、一方、リンク454のネック領域455は、クラウン軸と見なされてもよいこの軸の周りで対称である。
【0192】
図14Eは、リンク452に2つの湾曲ボイド453a、453bを形成するためにリンクの端部間の材料が除去される例を示している。これらの実施形態は、前述した「S」リンクと同様の様式で機能してもよい。この実施形態によれば、予め定められた破壊点(リングが機能しなくなる前に機能しなくなる)がボイド453a、453b間にある。ボイド453a、453bを形成する材料は、軸X周りの対称性を保持するためにほぼ同じであってもよく、あるいは、図14Dの場合と同様に対称軸をこの軸と同一直線上にさせないように異なるサイズであってもよい。ボイドサイズの選択は、リングに対する所望の破壊特性に基づくとともに、前述したように時計回り方向および反時計回り方向での曲げにおいて小さいリンク剛性を有することが好ましいかどうかに基づく。
【0193】
他の実施形態では、リングのストラットを変更することにより、より大きな疲れ靱性および/または破壊靱性が得られてもよい。図15を参照すると、リング450がクラウン451で接続される湾曲ストラット452によって形成される点を除いてパターン300に類似するパターンが示されている。この例では、ストラット452が1つの正弦波周期に近似する形状を有する。図4の直線ストラットを正弦波ストラットと置き換えることにより、本質的に更なるヒンジ点がリングに形成される。
【0194】
図14A〜図14Cに関連して説明した変更されるリンク要素の数は、スキャフォールドのリングを接続するために使用されるリンクの5−100%であってもよい。前述したUリンクまたはSリンクは、各リング間に配置されてもよく、あるいは、1つおきのリング対間に配置されてもよい。また、リンクは、それらのMOIをUリンクまたはSリンクを伴うことなく減少させることによって変更されてもよい。更に、1つ以上の接続リンクを除去できる。接続リンクが少ない場合、例えば3〜4個の場合、スキャフォールドは、一般に、小さい曲げ剛性および軸方向剛性を有さなければならない(スキャフォールドの他の全てが変更されないことを前提とする)。しかしながら、前述したように、スキャフォールドのそのような変化における性能、再現可能性、品質制御、および、生産力への終端間または全体の影響は、残念ながら、金属ステントの場合と同様に予測するのが容易ではない。
【0195】
開示の他の態様においては、スキャフォールドパターンがクローズドセルによって形成されるリングを有する。リングのそれぞれのクローズドセルは、クローズドセルの長手方向に離間して周方向に延びるストラット部分を接続するリンク要素を共有する。これらのクローズドセルリングのそれぞれは、接続リンク、例えばクローズドセルリングを接続する構造の曲げ剛性を低下させるために小さい曲げ慣性モーメント(MOI)を有するリンク434、442、450、452または454によって相互に接続される。あるいは、接続リンクは、例えば高歪み領域の近傍に形状の急激な変化を形成することにより、予め定められた破壊点を含むことができる。図14Aを再び参照すると、図示のスキャフォールドパターンは、それぞれのクローズドセルリングに接続されるリンク440aを有する。それぞれのクローズドセル204ごとに、互いに同一直線上にある第1および第2の接続リンクが存在する。第1のリンクはクラウンに隣接して配置されるMOI1を有し、また、第2のリンクは、図14Aに示されるパターンを生成するためにクラウンの先端に配置されるMOI2を有する。あるいは、クローズドセルリングを接続するリンクは、相互に接続されるクローズドセルリングから等距離に配置されるMOI1を有してもよい。
【0196】
本開示の更なる態様によれば、予め定められた破壊点をリングを接続するリンクに含むスキャフォールドが存在する。破壊点は、リングを接続するリンクでの亀裂形成によってリング間負荷を甦らせるようになっている。予め定められた亀裂場所を含むことによってリンクを通じた十分な亀裂伝搬が存在する(負荷は亀裂にわたって伝わることができない)ときにクラウンに作用する負荷が減少されあるいは排除されるため、特に疲れ負荷に関して生体内負荷が設計を超える場合には、リンク、例えばリンク450、452を犠牲にしてリング構造の完全性を維持することができる。本開示のこの態様によれば、リンクは、高歪み領域の近傍に小さいMOIを有するとともに、急激な形状変化、例えば約90°のミッドスパンを含む。スキャフォールドにおけるこれらの予め定められた破壊点は、前述したようにクローズドセルリング間であるいはそれぞれのリングストラット間で延びてもよい。
【0197】
また、亀裂/破壊問題は、スキャフォールドの不規則なクリンプおよび/または展開の結果としても観察される。不規則な展開は、スキャフォールドが血管のための均一な径方向支持を行なうことができないという観点からだけでなく、生体内で強度および/または剛性の損失をもたらす亀裂伝搬、破壊、および、構造の降伏の観点からも問題がある。不規則な展開の例としては、クラウンがそれらの設計角度を超えて拡張されること、極端な場合には、展開またはクリンプ中にクランプが反転するあるいは座屈することが挙げられる。これらの問題はクリンププロセス中および展開中に観察された。そのような例は、米国特許出願第12/861,719号明細書(整理番号62571.448)に更に詳しく記載されている。
【0198】
パターン300は、パターン200よりも多くのこれらのタイプの問題を生じ易い場合がある。該パターンのリンクは、パターン200と比較して、W−Vクローズドセル304のVセグメントを形成するリングストラットのための支持を殆ど行なわない。w形状のクローズドセル204は、その対称性に起因して、反転などの不規則を伴うことなくうまく展開できたと考えられる。W−Vセル304に固有の非対称な負荷は、クリンプ中または展開中に座屈問題を生じ易かった。しかしながら、これらの想定し得る問題は、それらが生じる場合には、クリンププロセスに対して変更を加えることにより対処されてもよい。
【0199】
例えば、7mmの直径と非対称なクローズドセル(パターン300)とを有するスキャフォールドは、ストラットの反転が何ら観察されることなくクリンプ後に展開された。9mm直径の第2のスキャフォールドは、その後、バルーンまでクリンプされて展開された。このスキャフォールドは7mmスキャフォールドと同じパターン300を有した。ストラットまたはクラウンの角度は、直径の増大によってもたらされる径方向剛性の変化を補償するため、直径の比率分だけ、すなわち、9/7倍だけ増大された。しかしながら、9mmスキャフォールドがクリンプされると、スキャフォールドストラットに反転が生じた(主に、W−VクローズドセルのV領域で)。この問題を是正するため、Wクローズドセル(パターン200)が検査された。この修正は、反転されたストラットの事例を減らすのに役立った。驚いたことに、W−Vクローズドセルパターンを有する同等の金属ステントに関して同じ不規則なクリンプ/展開問題が観察されなかった。したがって、反転問題(特に)は高分子スキャフォールドに特有の現象であると判断された。
【0200】
反転現象を避けるため、反転現象が金属ステントで生じる場合には、ストラットの面外(弓形の反管腔側表面の外側)撓みを防止するためにストラットの慣性モーメントを調整することを考慮してもよい。しかしながら、前述したように、高分子材料は金属材料では存在しない制約または限界をもたらす。ストラットの曲げ慣性特性を変えることによるストラットの望ましくない動きを最小限に抑える場合には、一般的に言って、高分子ストラットが同様の金属ストラットよりも厚くおよび/または幅広くなければならないことに留意する必要がある。このことは、隣接するストラットと既に高い壁厚との間で利用できる空間が金属の対応物よりも少ないことを意味する。この空間問題は、展開サイズまたは展開サイズよりも大きいチューブから高分子スキャフォールドを形成する実施形態においては更に悪化される。金属ステントの場合と同様に、同じ血管部位への通過のためには、クリンプ中にスキャフォールドの直径が減少されることが望ましい。したがって、クリンプされたスキャフォールドにおける送達プロファイルは、金属ステントとほぼ同じでなければならない。
【0201】
金属ステントは、展開直径とクリンプ直径との間にあるチューブから切断されてもよい。したがって、ストラット間の間隔が更に大きく、また、ステントがバルーン上で更に容易に圧縮される。これは、クリンプ前のステントがクリンプ直径に更に近い直径を有するからである。一方、高分子スキャフォールドは、展開状態に等しいあるいはそれよりも大きい直径のチューブから切断されてもよい。これにより、より多くの材料が高分子スキャフォールドにおける送達プロファイルに密集されなければならない。したがって、高分子スキャフォールドには、クリンププロファイルおよび開始チューブ直径によって決定される更に多くの制限が課され、それにより、ストラット幅またはストラット厚に関する設計オプションが制限される。
【0202】
血管支持プロテーゼにおける良く知られた設計要件は、ステントであろうとスキャフォールドであろうと、血管の収縮によって与えられる予期される生体内径方向力を含む管腔壁の径方向内側への力に起因して所望の管腔直径を維持できるその能力である。図6A〜図6Bの例を参照すると、スキャフォールドの径方向剛性および径方向強度は、ストラットの幅、クラウン半径および角度、クラウンと谷部との間で延びるリングストラットの長さ、クラウンの数、および、スキャフォールドの壁厚(厚さ235、図3)によって影響される。後者のパラメータ(壁厚)は、前述したように締め付け剛性に影響を与える。したがって、設計プロセス中、このパラメータは、締め付け剛性および圧縮復元可能性に影響を及ぼすように変えられるが、それは径方向剛性にも影響を与える。径方向剛性に影響を与えるため、前述したパラメータのうちの1つ以上(クラウン角度、クラウン半径、リングストラット長さ、クラウン数、および、ストラット幅)が径方向剛性を増大または減少させるべく変えられてもよい。
【0203】
一例を挙げると、開始チューブ直径を8mm、9mm、または、おそらく更には10mmまで増大させることにより7mmスキャフォールドの反跳問題を克服できることが分かった場合には、スキャフォールドパターン直径の対応する変化への最初の近似は、リングストラット長さ、クラウン角度、および、リンクなどの特性を、直径の比率分だけ、例えば外径を7mmから8mmへ増大させるときには8/7だけ増大させることを伴った。しかしながら、この大マーカな近似は、圧縮復元可能性などの他の所望の特性を保つのに不十分であることが分かった。したがって、更なる改良が必要とされた。
【0204】
径方向剛性と前述のパラメータとの間の関係は良く知られている。しかしながら、たとえ現在の技術で知られている場合であって、これらの剛性−変化パラメータと、バルーン拡張型ステントの圧縮復元可能性との間の関係、ましてやバルーン拡張型スキャフォールドとの関係については良く知られていない。したがって、設計プロセスは、これらの関連するスキャフォールド特性を圧縮復元可能性にかなりの悪影響を及ぼすことなく改善できるかどうかを決定するために剛性パラメータが変えられた場合には、径方向剛性、締め付け剛性、および、圧縮復元可能性の間での持続的な比較または評価を必要とした(クリンプ中および展開中に変化が降伏問題または破壊問題ももたらさなかったと仮定する)。
【0205】
これらのパラメータを変えて剛性に影響を与えると、9クラウンスキャフォールドおよび8クラウンスキャフォールドにおいて以下の観察がなされた。9クラウンパターンおよび7〜9mm外径においては、115°を超える角度が、高い径方向剛性をもたらす一方で、展開時に破壊問題を呈するとともに、圧縮復元可能性の不満足な減少も呈した。許容できる結果をもたらすことが分かったストラットまたはクラウンの角度は約105°〜95°であった。8クラウンスキャフォールドにおいては、115°よりも小さい角度がクラウンにとって好ましかった。8クラウンスキャフォールドにおいては、角度がほぼ110°を下回る。一般的に言うと、クラウンが多くなればなるほど、スキャフォールドが径方向で更に柔軟になり、クラウン角度が大きくなればなるほど、スキャフォールドの径方向の柔軟性が低くなる。
【0206】
コントロールステント、Igaki−Tamaiステント、および、Absoluteステント(8.5mm外径、36m長)と共にV2、V23、V59構成スキャフォールド(図6A〜図6Bにまとめられた特性を有する)の電子ビーム殺菌後に平均径方向強度値(N/mm)と径方向剛性値(N/mm)との間で比較が行なわれた。表5は結果をまとめている。
【0207】
表5:径方向の強度および剛性の比較
【表5】
【0208】
V2、V23、V59は、Igaki−Tamaiステントよりもかなり優れた強度値および剛性値を有した。0.014”のV23が最も高い径方向剛性を有した。V2、V23、V59の強度値および剛性値は自己拡張型ステントに匹敵した。
【0209】
また、本開示に係るスキャフォールドの締め付け剛性間でも比較が行なわれた。値は、3つのサンプルに基づくN/mmの単位の平均値を表わす。剛性値は、20℃で平坦プレート試験を使用して、スキャフォールドをその開始直径、例えば拡張直径または膨張直径の1/2、すなわち、50%まで圧縮するために必要とされる測定力から計算された。
【0210】
表6:締め付け剛性
【表6】
【0211】
本開示の一態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、径方向剛性に対する締め付け剛性の比率が約4〜1、3〜1、または、より狭くは約2〜1であり、壁厚に対する締め付け剛性の比率が約10〜70、または、より狭くは20〜50、あるいは、更に狭くは約25〜50であり、また、締め付け剛性に対するスキャフォールド膨張直径の比率が約15〜60、または、より狭くは約20〜40である。
【0212】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.6〜1.8N/mm2である。
【0213】
本開示の他の態様によれば、圧縮復元可能なスキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の望ましい比率が0.08〜0.18N/mm3である。
【0214】
動物研究
図6A〜図6Bに記載されるスキャフォールドに関して2つの動物研究(「研究1」および「研究2」)が行なわれた。スキャフォールドは、高分子スキャフォールドの有効性を評価するために、28日、90日、および、180日にわたって健康な豚モデルの大腿動脈中に埋め込まれた。
【0215】
研究1:V2と、8mm外径および40mm長さを有するCordis(特許商標)S.M.A.R.T.(特許商標)CONTROL(特許商標)Lliac自己拡張スント(以下、「コントロールステント」)とを比較する。研究で調査された埋め込まれたV2およびコントロールステントの特徴のうちの1つは、埋め込み後28日、90日、180日における健康な動脈に対する埋め込みプロテーゼの慢性的な外向きの力によって引き起こされる効果の度合いおよび関連する合併症である。
【0216】
研究2:V23−008とV23−014とを比較して、壁厚がスキャフォールド性能に対して与えた影響、主に、管腔面積の損失、スキャフォールド面積、および、新生内膜厚の成長を決定する。
【0217】
研究の過程にわたって、埋め込まれたプロテーゼは、豚による様々な度合いの腰伸長および曲げに晒され、これにより、腰および膝の最大曲げ中に、埋め込みスキャフォールドおよびコントロールステントに約10〜12%曲げおよび約13〜18%軸方向圧縮が課されると考えられる。
【0218】
図16は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を使用して測定されたコントロールステントおよびスキャフォールドにおける動脈の平均最小管腔直径(MLD)を示すプロットである。測定値は、28日、90日、および、180日後に取得された。28日後、スキャフォールド平均MLDは約3.6mm(15サンプル)であり、一方、コントロールステント平均MLDは約4.7mm(13サンプル)であった。90日後、スキャフォールド平均MLDは約4.4mm(7サンプル)であり、また、コントロールステント平均MLDは約3.6mm(5サンプル)であった。180日後、スキャフォールド平均MLDは約4.4mm(9サンプル)であり、また、コントロールステント平均MLDは約4.0mm(7サンプル)であった。28、90、180日後のコントロールステントにおける平均MLDの変化は、スキャフォールドにおける平均MLDの変化よりもかなり大きかった。
【0219】
図17は、28、90、180日後の平均新生内膜厚(OCTにより測定された)を示している。28日では、平均コントロールステント新生内膜厚が約0.4mm(15サンプル)であり、一方、平均スキャフォールド新生内膜厚は約0.2mm未満(13サンプル)であった。90日では、コントロールステントにおける平均新生内膜厚が約0.43(7サンプル)まで増大し、一方、スキャフォールドにおける平均新生内膜厚は約0.1mm(5サンプル)まで減少した。180日では、コントロールステントの平均新生内膜厚が0.55mmまで増大し、一方、スキャフォールド平均新生内膜厚は約0.19mmまで増大した。28、90、180日では、コントロールステントにおける新生内膜厚の変化は、スキャフォールドにおけるよりもかなり高かった。なお、PLLAスキャフォールドは組織成長を低下させるために薬剤コーティングを含んだが、コントロールステントは同様の薬剤コーティングを有さなかったことに注意したい。
【0220】
図18は、OCTを使用して28、90、180日後に測定された狭窄の大きさを示している。28日後、狭窄の大きさは、コントロールステントおよびスキャフォールドにおいてそれぞれ約22%および18%であった。90日後、コントロールステントにおける狭窄の大きさは約25%まで増大し、一方、スキャフォールドの狭窄は約5%まで減少した。180日後、コントロールステントにおける狭窄の大きさは約25%にとどまり、一方、スキャフォールドの狭窄は約4%まで減少した。28、90、180日後、コントロールステントにおける狭窄の変化はスキャフォールドよりもかなり大きかった。
【0221】
図19は、埋め込み後180日で取得された、埋め込まれたスキャフォールドおよびコントロールステントのそれぞれの血管造影画像を示している。暗領域は、プロテーゼが埋め込まれた管腔のサイズを示す。これらの画像から分かるように、コントロールステントの近傍の管腔はかなり狭かった。図16、図17、図18における新生内膜厚の増大、MLDの減少、および、コントロールステントの近傍の狭窄の増大はそれぞれ、自己拡張型コントロールステントによって動脈に課される慢性的な外向きの力のしるしであると考えられる。
【0222】
図20および図21は、QVA測定技術(医師により一般に使用される)を使用した28、90、180日におけるプロットを示している。図20は、コントロールステントおよびスキャフォールドにおける平均・変化後期損失(埋め込み後の管腔直径の損失)を描いている。図21は、コントロールステントおよびスキャフォールドにおけるMLDに関する平均および変化を示している。
【0223】
図22および図23はそれぞれ、コントロールステントおよびV2スキャフォールドにおける組織形態計測による組織形態計測的な面積狭窄および新生内膜肥厚の28日および90日におけるプロットである。これらのプロットはいずれも、面積狭窄および新生内膜成長の安定したあまり好ましくない増大を示し、一方、スキャフォールドにおける面積狭窄および新生内膜成長は、ほぼ一定しており、コントロールステントよりも少なかった。
【0224】
図24は、28日後および90日後の0.008”壁厚を有するV23(「V23/008」)と0.014”壁厚を有するV23(「V23/014」)とを最小管腔面積および最小スキャフォールド面積に関して比較している。最小管腔面積および最小スキャフォールド面積はいずれも0.014”壁厚を有するV23において高かった。図25は、28日後および90日後における管腔面積損失を示している。0.014”壁厚を有するV23は、0.008”壁厚を有するV23よりも管腔面積損失が小さかった。また、0.014”壁厚を有するV23においては、サンプル間であまり変化がなかった。図26は、0.008”壁厚を有するV23と0.014”壁厚を有するV23との間の平均新生内膜厚を示している。0.014”壁厚が埋め込まれたときには、スキャフォールドの管腔表面上で組織成長が殆ど見られなかった。
【0225】
コントロールステントとV2スキャフォールドとを比較する30、90、180日動物研究は、スキャフォールドがコントロールステントと比べて慢性的な外向きの力と関連付けられる問題を殆ど呈さないことを示唆する。0.008”壁厚スキャフォールドと0.014”壁厚スキャフォールドとを比較する30、90日研究は、スキャフォールドに関してより大きな壁厚が使用される場合には、スキャフォールド直径、管腔直径の損失が小さく、新生内膜成長が殆どないであろうことを示唆する。
【0226】
本発明の特定の実施形態を図示して説明してきたが、当業者であれば分かるように、この発明のその広い態様から逸脱することなく変更および改良をなすことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、この発明の思想および範囲内に入るそのような変更および改良の全てをそれらの範囲内に包含するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型の医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドが、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドが、その拡張直径の少なくとも33%まで圧縮された後にその直径の約90%を超えるレベルに達し、
前記スキャフォールドが0.3N/mmよりも大きい径方向剛性を有する、医用器具。
【請求項2】
前記相互接続要素がストラットとリンクとを備え、前記ストラットまたは前記リンクの壁厚に対する幅のアスペクト比(AR)が0.4〜1.4である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項3】
前記スキャフォールドがストラットによって形成されるリングを有し、1つのリングには9個以下のクラウンが存在し、3本のリンクがこのリングを隣接するリングに接続し、
製造したままの状態において、前記スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、前記スキャフォールドの前記リングにおけるクラウン角度が90〜115°であり、前記スキャフォールドが少なくとも0.008インチの壁厚を有する、請求項1に記載の医用器具。
【請求項4】
前記スキャフォールドが前記ストラットによって形成される非対称なクローズドセルを含み、前記クローズドセルが前記スキャフォールドの長手方向曲げ軸および該曲げ軸に対して垂直な長手方向軸の両方に関して非対称である、請求項2に記載の医用器具。
【請求項5】
前記スキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の比率が約0.08〜0.18N/mm3である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項6】
前記スキャフォールドのクリンプ前直径が前記拡張直径よりも大きく、前記スキャフォールドの前記拡張直径からの急激な反跳が約5%未満である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項7】
前記スキャフォールドは、リングを接続するリンクに配置される放射線不透過性マーカを更に含み、
前記マーカが前記リンクに形成されるデポに保持され、
前記スキャフォールドのクリンプ状態における前記リングと前記リンクとの間の空間が前記デポの長さあるいは幅よりも実質的に小さく、
クリンプ状態では前記デポが隣接するリング間に配置され、それにより、前記スキャフォールドがマーカを伴ってあるいは伴うことなく同じクリンプ形状を達成できる、請求項1に記載の医用器具。
【請求項8】
PLLAチューブから形成されるバルーン拡張型のスキャフォールドを備える、径方向に拡張可能なステントであって
前記スキャフォールドがストラットにより形成される複数の径方向に拡張可能な波状リングを含み、前記ストラットの波状リングがクラウンを備え、隣接する前記リングが長手方向リンクにより接続され、1つのリングがその外周にわたって9個以下のクラウンと3本のリンクとを有し、任意の前記クラウンの角度が115°未満であり、
前記スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、
前記スキャフォールドが少なくとも約0.008”の壁厚を有する、ステント。
【請求項9】
バルーンにより拡張されるときに直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールドを備える、末梢に埋め込み可能な医用器具であって、
前記スキャフォールドが、前記直径の少なくとも67%まで圧縮された後に前記直径の90%を超えて回復し、
前記スキャフォールドがPLLAから形成され、
前記スキャフォールドは、壁厚に対する直径の比率が約30〜60であり、
前記スキャフォールドがストラットとリンクとを有し、前記ストラットおよび/または前記リンクは、厚さに対する幅の比率が約0.8〜1.4であり、
前記スキャフォールドが約0.3N/mm以上の径方向剛性を有する、医用器具。
【請求項10】
高分子が、PLLA、または、PLLAとPLLAよりも低いTgを有する高分子との混合物、または、ブロック共重合体、または、異なる層の材料に関して異なるTg値を有する多層構造体である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項11】
前記ブロック共重合体または前記混合物がPEG(ポリエチレングリコール)を伴うPLLAである、請求項1に記載の医用器具。
【請求項12】
前記スキャフォールドがカーフ幅を有するレーザによって高分子チューブから切断され、前記相互接続要素がリングを形成するストラットを含み、前記リングがクラウンを形成し、
前記クラウンの内側半径が前記レーザのカーフ幅にほぼ等しい、請求項1に記載の医用器具。
【請求項13】
前記相互接続要素がリンクによって互いに接続されるリングを含み、前記リンクは、曲げにおける第1の慣性モーメント(MOI)を規定する実質的に脆弱な第1の部分と、第2のMOIを有する第2の部分とを含み、前記第1のMOIが前記第2のMOIよりも実質的に小さい、請求項1に記載の医用器具。
【請求項14】
身体の末梢血管内に埋め込まれるため医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素の網状体を有し、
前記スキャフォールドが、バルーンによってクリンプ状態から拡張状態に拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドが、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達し、
クリンプされた前記スキャフォールドは、クリンプされた前記スキャフォールドにおける理論最小直径にほぼ等しいあるいはそれを下回るクリンプ直径を有する、医用器具。
【請求項15】
前記理論最小直径がクリンプ前直径よりも少なくとも300%小さい、請求項14に記載の医用器具。
【請求項16】
前記ARが0.4〜0.9であり、前記スキャフォールドの壁厚が0.008インチ〜0.014インチであり、前記スキャフォールドの拡張直径が5mm〜8mmである、請求項2に記載の医用器具。
【請求項17】
前記ARが0.8〜1.4であり、前記スキャフォールドの壁厚が0.008インチ〜0.014インチであり、前記スキャフォールドの拡張直径が5mm〜8mmである、請求項2に記載の医用器具。
【請求項18】
前記ストラットがクラウンを有するリングを形成し、前記リングが長手方向に延びるリンクによって相互に接続され、前記クラウンは、前記スキャフォールドが前記拡張直径を有するときに約90°〜115°の最大クラウン角度を有する、請求項2に記載の医用器具。
【請求項19】
相互に接続されるストラットおよびリンクの網状体が複数のクローズドセルを形成し、前記各クローズドセルは、対向する第2の端部から周方向に離間される第1の端部と、周方向に離間される前記端部間で延びる一対の曲げ要素とを有し、前記各曲げ要素が少なくとも2つのクラウンを形成し、
前記クローズドセルの前記第1および第2の端部が隣接するセルと共有され、
隣接する円筒状のリングが長手方向リンクによって互いに接続され、それにより、1つのリングをその2つの隣接するリングに接続する前記長手方向リンクが互いに一直線上にならないようになっている、請求項3に記載の医用器具。
【請求項20】
前記スキャフォールドは、クラウン、リンクに接続されるクラウン、Y−クラウン、および、W−クラウンを形成するストラットを備える曲げ要素を有する非対称なクローズドセルを含み、複数の非接続クラウンがY−クラウンとW−クラウンとの間に配置される、請求項2に記載の医用器具。
【請求項21】
前記スキャフォールドは、壁厚に対するクリンプ前直径の比率が約30〜60であり、
前記スキャフォールドが一対の隣接するリングを有するように形成され、前記リング対が3つ以下のクローズドセルを形成し、
前記スキャフォールドがPLLAチューブから形成される、請求項5に記載の医用器具。
【請求項22】
前記スキャフォールドが約0.008インチ〜0.014インチの壁厚を有する、請求項21に記載の医用器具。
【請求項23】
バルーンによって展開されるときに拡張直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールドを備える、バルーン拡張型の医用器具であって、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも75%まで圧縮された後にその直径の90%を超えて回復でき、
前記スキャフォールドは、
約0.3N/mmよりも大きい径方向剛性と、
前記クリンプされたスキャフォールドの直径よりも300〜400%大きいクリンプ前直径を有するクリンプ前のスキャフォールドの径方向強度、締め付け強度、締め付け剛性、および、破壊靱性と、
を備える、医用器具。
【請求項24】
前記クリンプ前のスキャフォールドが径方向に拡張されたPLLAチューブから形成される、請求項6に記載の医用器具。
【請求項25】
前記スキャフォールドの端部リングを内部リングに接続するリンク上に配置される放射線不透過性の箔を更に含む、請求項23に記載の医用器具。
【請求項26】
前記スキャフォールドの端部リングのクラウンまたはその近傍に配置される放射線不透過性マーカを更に含む、請求項23に記載の医用器具。
【請求項27】
身体の末梢血管内に埋め込み可能な医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも約75%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、医用器具。
【請求項28】
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、請求項1に記載の医用器具。
【請求項29】
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約67%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、請求項27に記載の医用器具。
【請求項30】
前記スキャフォールドのパターンが複数のクラウンを有する対称なクローズドセルを含み、前記クラウンのうちのいずれかが、前記スキャフォールドが前記拡張直径を有するときに約90°〜115°の最大クラウン角度を有する、請求項29に記載の医用器具。
【請求項31】
クラウンが約0インチの内側半径を有する、請求項27に記載の医用器具。
【請求項32】
前記スキャフォールドがPLLAチューブから形成される、請求項28に記載の医用器具。
【請求項33】
前記スキャフォールドは、該スキャフォールドの孔軸と平行に延びるリンクによって接続される複数のジグザグ状リングを含む、請求項27に記載の医用器具。
【請求項34】
前記リンクがU形状部分を含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項35】
前記リンクがU形状および逆U形状リンクを含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項36】
前記リンクがS形状リンクを含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項37】
前記リンクは、第1の端部がリングのY−クラウンに接続されるとともに、第2の端部が前記リングのW−クラウンに接続され、第1のMOIを有する断面が前記Y−クラウンに最も近い、請求項36に記載の医用器具。
【請求項38】
バルーンまでクリンプされるとともに、バルーンにより拡張されるときに拡張直径を有する高分子のスキャフォールドを備える医用器具であって、
前記クリンプされたスキャフォールドは、2つの直交軸周りに対称な複数のクローズドセルを含む相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えて回復できる、医用器具。
【請求項39】
前記クリンプされたスキャフォールドは、
レーザを使用してクリンプ前のスキャフォールドに形成される径方向に拡張される高分子チューブを備える材料特性を有し、
前記クリンプ前のスキャフォールドは、前記クリンプされたスキャフォールドの直径よりも少なくとも300%大きい直径を有し、
前記相互接続要素のパターンが複数のリングを備え、
1つのリングが4本以下の直線状の接続リンクによって隣接するリングに接続される、請求項36に記載の医用器具。
【請求項40】
末梢動脈に埋め込むための医用器具を形成する方法であって、
円筒状の高分子チューブを径方向に拡張するステップと、
約0インチの内側半径を有するクラウンを形成することを含む前記チューブからスキャフォールドを形成するステップと、
前記スキャフォールドをバルーンカテーテルまでクリンプするステップと、
を備える方法。
【請求項41】
前記スキャフォールドにおける理論最小直径よりも小さい直径まで前記スキャフォールドをクリンプするステップを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記スキャフォールドがPLLAから形成される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記スキャフォールドは、拡張されたチューブのほぼガラス転移温度よりも5°〜10°低い温度でクリンプされる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記相互接続要素がパターンを形成し、前記パターンは、
複数のリングであって、それぞれのリングが複数のクローズドセルにより形成され、前記各セルが第1および第2の長手方向に離間される曲げ要素間で延びる第1および第2の長手方向要素を含む、複数のリングと、
隣接する前記リングを接続するとともに、その慣性モーメント(MOI)が前記長手方向要素のMOIよりも実質的に小さい接続リンクと、
を備える請求項27に記載の医用器具。
【請求項45】
前記クローズドセルが2つの直交軸のそれぞれの周りで対称である、請求項44に記載の医用器具。
【請求項46】
前記相互接続要素がパターンを形成し、前記パターンは、
それぞれが前記スキャフォールドの外周にわたって延びる複数のクローズドセルにより形成される複数のリングと、
隣接する前記リングを接続する接続リンクであって、該接続リンクがボイドを形成する領域を含み、前記ボイドを形成する構造が、前記スキャフォールドが末梢血管内で繰り返しの曲げに晒されるときに1つのリングのクラウンで破壊が生じる前に前記接続リンクを形成する高分子材料の破壊を含むようになっている、接続リンクと、
を備える、請求項27に記載の医用器具。
【請求項47】
前記スキャフォールドは、拡張直径が約6mm以上であり、壁厚が約0.008インチよりも大きく、径方向強度が約0.3N/mmよりも大きく、径方向剛性が約0.5N/mm以上である、請求項27に記載の医用器具。
【請求項1】
身体の末梢血管内に埋め込まれるためのバルーン拡張型の医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドが、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドが、その拡張直径の少なくとも33%まで圧縮された後にその直径の約90%を超えるレベルに達し、
前記スキャフォールドが0.3N/mmよりも大きい径方向剛性を有する、医用器具。
【請求項2】
前記相互接続要素がストラットとリンクとを備え、前記ストラットまたは前記リンクの壁厚に対する幅のアスペクト比(AR)が0.4〜1.4である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項3】
前記スキャフォールドがストラットによって形成されるリングを有し、1つのリングには9個以下のクラウンが存在し、3本のリンクがこのリングを隣接するリングに接続し、
製造したままの状態において、前記スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、前記スキャフォールドの前記リングにおけるクラウン角度が90〜115°であり、前記スキャフォールドが少なくとも0.008インチの壁厚を有する、請求項1に記載の医用器具。
【請求項4】
前記スキャフォールドが前記ストラットによって形成される非対称なクローズドセルを含み、前記クローズドセルが前記スキャフォールドの長手方向曲げ軸および該曲げ軸に対して垂直な長手方向軸の両方に関して非対称である、請求項2に記載の医用器具。
【請求項5】
前記スキャフォールドは、壁厚×チューブ直径に対する締め付け剛性の比率が約0.08〜0.18N/mm3である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項6】
前記スキャフォールドのクリンプ前直径が前記拡張直径よりも大きく、前記スキャフォールドの前記拡張直径からの急激な反跳が約5%未満である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項7】
前記スキャフォールドは、リングを接続するリンクに配置される放射線不透過性マーカを更に含み、
前記マーカが前記リンクに形成されるデポに保持され、
前記スキャフォールドのクリンプ状態における前記リングと前記リンクとの間の空間が前記デポの長さあるいは幅よりも実質的に小さく、
クリンプ状態では前記デポが隣接するリング間に配置され、それにより、前記スキャフォールドがマーカを伴ってあるいは伴うことなく同じクリンプ形状を達成できる、請求項1に記載の医用器具。
【請求項8】
PLLAチューブから形成されるバルーン拡張型のスキャフォールドを備える、径方向に拡張可能なステントであって
前記スキャフォールドがストラットにより形成される複数の径方向に拡張可能な波状リングを含み、前記ストラットの波状リングがクラウンを備え、隣接する前記リングが長手方向リンクにより接続され、1つのリングがその外周にわたって9個以下のクラウンと3本のリンクとを有し、任意の前記クラウンの角度が115°未満であり、
前記スキャフォールドが8〜10mmの外径を有し、
前記スキャフォールドが少なくとも約0.008”の壁厚を有する、ステント。
【請求項9】
バルーンにより拡張されるときに直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールドを備える、末梢に埋め込み可能な医用器具であって、
前記スキャフォールドが、前記直径の少なくとも67%まで圧縮された後に前記直径の90%を超えて回復し、
前記スキャフォールドがPLLAから形成され、
前記スキャフォールドは、壁厚に対する直径の比率が約30〜60であり、
前記スキャフォールドがストラットとリンクとを有し、前記ストラットおよび/または前記リンクは、厚さに対する幅の比率が約0.8〜1.4であり、
前記スキャフォールドが約0.3N/mm以上の径方向剛性を有する、医用器具。
【請求項10】
高分子が、PLLA、または、PLLAとPLLAよりも低いTgを有する高分子との混合物、または、ブロック共重合体、または、異なる層の材料に関して異なるTg値を有する多層構造体である、請求項1に記載の医用器具。
【請求項11】
前記ブロック共重合体または前記混合物がPEG(ポリエチレングリコール)を伴うPLLAである、請求項1に記載の医用器具。
【請求項12】
前記スキャフォールドがカーフ幅を有するレーザによって高分子チューブから切断され、前記相互接続要素がリングを形成するストラットを含み、前記リングがクラウンを形成し、
前記クラウンの内側半径が前記レーザのカーフ幅にほぼ等しい、請求項1に記載の医用器具。
【請求項13】
前記相互接続要素がリンクによって互いに接続されるリングを含み、前記リンクは、曲げにおける第1の慣性モーメント(MOI)を規定する実質的に脆弱な第1の部分と、第2のMOIを有する第2の部分とを含み、前記第1のMOIが前記第2のMOIよりも実質的に小さい、請求項1に記載の医用器具。
【請求項14】
身体の末梢血管内に埋め込まれるため医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素の網状体を有し、
前記スキャフォールドが、バルーンによってクリンプ状態から拡張状態に拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドが、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達し、
クリンプされた前記スキャフォールドは、クリンプされた前記スキャフォールドにおける理論最小直径にほぼ等しいあるいはそれを下回るクリンプ直径を有する、医用器具。
【請求項15】
前記理論最小直径がクリンプ前直径よりも少なくとも300%小さい、請求項14に記載の医用器具。
【請求項16】
前記ARが0.4〜0.9であり、前記スキャフォールドの壁厚が0.008インチ〜0.014インチであり、前記スキャフォールドの拡張直径が5mm〜8mmである、請求項2に記載の医用器具。
【請求項17】
前記ARが0.8〜1.4であり、前記スキャフォールドの壁厚が0.008インチ〜0.014インチであり、前記スキャフォールドの拡張直径が5mm〜8mmである、請求項2に記載の医用器具。
【請求項18】
前記ストラットがクラウンを有するリングを形成し、前記リングが長手方向に延びるリンクによって相互に接続され、前記クラウンは、前記スキャフォールドが前記拡張直径を有するときに約90°〜115°の最大クラウン角度を有する、請求項2に記載の医用器具。
【請求項19】
相互に接続されるストラットおよびリンクの網状体が複数のクローズドセルを形成し、前記各クローズドセルは、対向する第2の端部から周方向に離間される第1の端部と、周方向に離間される前記端部間で延びる一対の曲げ要素とを有し、前記各曲げ要素が少なくとも2つのクラウンを形成し、
前記クローズドセルの前記第1および第2の端部が隣接するセルと共有され、
隣接する円筒状のリングが長手方向リンクによって互いに接続され、それにより、1つのリングをその2つの隣接するリングに接続する前記長手方向リンクが互いに一直線上にならないようになっている、請求項3に記載の医用器具。
【請求項20】
前記スキャフォールドは、クラウン、リンクに接続されるクラウン、Y−クラウン、および、W−クラウンを形成するストラットを備える曲げ要素を有する非対称なクローズドセルを含み、複数の非接続クラウンがY−クラウンとW−クラウンとの間に配置される、請求項2に記載の医用器具。
【請求項21】
前記スキャフォールドは、壁厚に対するクリンプ前直径の比率が約30〜60であり、
前記スキャフォールドが一対の隣接するリングを有するように形成され、前記リング対が3つ以下のクローズドセルを形成し、
前記スキャフォールドがPLLAチューブから形成される、請求項5に記載の医用器具。
【請求項22】
前記スキャフォールドが約0.008インチ〜0.014インチの壁厚を有する、請求項21に記載の医用器具。
【請求項23】
バルーンによって展開されるときに拡張直径を有するスキャフォールドを形成する、クリンプされたスキャフォールドを備える、バルーン拡張型の医用器具であって、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも75%まで圧縮された後にその直径の90%を超えて回復でき、
前記スキャフォールドは、
約0.3N/mmよりも大きい径方向剛性と、
前記クリンプされたスキャフォールドの直径よりも300〜400%大きいクリンプ前直径を有するクリンプ前のスキャフォールドの径方向強度、締め付け強度、締め付け剛性、および、破壊靱性と、
を備える、医用器具。
【請求項24】
前記クリンプ前のスキャフォールドが径方向に拡張されたPLLAチューブから形成される、請求項6に記載の医用器具。
【請求項25】
前記スキャフォールドの端部リングを内部リングに接続するリンク上に配置される放射線不透過性の箔を更に含む、請求項23に記載の医用器具。
【請求項26】
前記スキャフォールドの端部リングのクラウンまたはその近傍に配置される放射線不透過性マーカを更に含む、請求項23に記載の医用器具。
【請求項27】
身体の末梢血管内に埋め込み可能な医用器具であって、
高分子チューブから形成されるスキャフォールドであり、バルーンまでクリンプされるように構成されるスキャフォールドを備え、
前記スキャフォールドが相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドは、バルーンによってクリンプ状態から拡張されるときに拡張直径を有し、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の少なくとも約75%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、医用器具。
【請求項28】
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、請求項1に記載の医用器具。
【請求項29】
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約67%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えるレベルに達する、請求項27に記載の医用器具。
【請求項30】
前記スキャフォールドのパターンが複数のクラウンを有する対称なクローズドセルを含み、前記クラウンのうちのいずれかが、前記スキャフォールドが前記拡張直径を有するときに約90°〜115°の最大クラウン角度を有する、請求項29に記載の医用器具。
【請求項31】
クラウンが約0インチの内側半径を有する、請求項27に記載の医用器具。
【請求項32】
前記スキャフォールドがPLLAチューブから形成される、請求項28に記載の医用器具。
【請求項33】
前記スキャフォールドは、該スキャフォールドの孔軸と平行に延びるリンクによって接続される複数のジグザグ状リングを含む、請求項27に記載の医用器具。
【請求項34】
前記リンクがU形状部分を含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項35】
前記リンクがU形状および逆U形状リンクを含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項36】
前記リンクがS形状リンクを含む、請求項33に記載の医用器具。
【請求項37】
前記リンクは、第1の端部がリングのY−クラウンに接続されるとともに、第2の端部が前記リングのW−クラウンに接続され、第1のMOIを有する断面が前記Y−クラウンに最も近い、請求項36に記載の医用器具。
【請求項38】
バルーンまでクリンプされるとともに、バルーンにより拡張されるときに拡張直径を有する高分子のスキャフォールドを備える医用器具であって、
前記クリンプされたスキャフォールドは、2つの直交軸周りに対称な複数のクローズドセルを含む相互接続要素のパターンを有し、
前記スキャフォールドは、その拡張直径の約50%まで圧縮された後にその拡張直径の約80%を超えて回復できる、医用器具。
【請求項39】
前記クリンプされたスキャフォールドは、
レーザを使用してクリンプ前のスキャフォールドに形成される径方向に拡張される高分子チューブを備える材料特性を有し、
前記クリンプ前のスキャフォールドは、前記クリンプされたスキャフォールドの直径よりも少なくとも300%大きい直径を有し、
前記相互接続要素のパターンが複数のリングを備え、
1つのリングが4本以下の直線状の接続リンクによって隣接するリングに接続される、請求項36に記載の医用器具。
【請求項40】
末梢動脈に埋め込むための医用器具を形成する方法であって、
円筒状の高分子チューブを径方向に拡張するステップと、
約0インチの内側半径を有するクラウンを形成することを含む前記チューブからスキャフォールドを形成するステップと、
前記スキャフォールドをバルーンカテーテルまでクリンプするステップと、
を備える方法。
【請求項41】
前記スキャフォールドにおける理論最小直径よりも小さい直径まで前記スキャフォールドをクリンプするステップを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記スキャフォールドがPLLAから形成される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記スキャフォールドは、拡張されたチューブのほぼガラス転移温度よりも5°〜10°低い温度でクリンプされる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記相互接続要素がパターンを形成し、前記パターンは、
複数のリングであって、それぞれのリングが複数のクローズドセルにより形成され、前記各セルが第1および第2の長手方向に離間される曲げ要素間で延びる第1および第2の長手方向要素を含む、複数のリングと、
隣接する前記リングを接続するとともに、その慣性モーメント(MOI)が前記長手方向要素のMOIよりも実質的に小さい接続リンクと、
を備える請求項27に記載の医用器具。
【請求項45】
前記クローズドセルが2つの直交軸のそれぞれの周りで対称である、請求項44に記載の医用器具。
【請求項46】
前記相互接続要素がパターンを形成し、前記パターンは、
それぞれが前記スキャフォールドの外周にわたって延びる複数のクローズドセルにより形成される複数のリングと、
隣接する前記リングを接続する接続リンクであって、該接続リンクがボイドを形成する領域を含み、前記ボイドを形成する構造が、前記スキャフォールドが末梢血管内で繰り返しの曲げに晒されるときに1つのリングのクラウンで破壊が生じる前に前記接続リンクを形成する高分子材料の破壊を含むようになっている、接続リンクと、
を備える、請求項27に記載の医用器具。
【請求項47】
前記スキャフォールドは、拡張直径が約6mm以上であり、壁厚が約0.008インチよりも大きく、径方向強度が約0.3N/mmよりも大きく、径方向剛性が約0.5N/mm以上である、請求項27に記載の医用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6a】
【図6b】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B−12C】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6a】
【図6b】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
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【図8F】
【図8G】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
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【図11B】
【図11C】
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【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B−12C】
【図13】
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【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−517913(P2013−517913A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551349(P2012−551349)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/023036
【国際公開番号】WO2011/094621
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/023036
【国際公開番号】WO2011/094621
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】
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