説明

圧縮機のエネルギー回収システム

【課題】圧縮機としての機能を損なうことなく、圧縮機から排出される圧縮ガスの排出エネルギー回収により、圧縮機のトータル効率を向上させる。
【解決手段】ガスの圧縮過程において不要な熱エネルギーを水との熱交換によって、圧縮ガスを冷却するクーラーまたはアフタークーラーを備えた圧縮機において、水による冷却と異なる、別の循環システムとして水よりも低沸点の液相作動媒体を気相作動媒体に相変換させる蒸発器と、外部から供給される冷却媒体との熱交換によって前記蒸発器から送出される圧縮ガスを冷却する冷却器と、前記蒸発器から送出される気相作動媒体によって回転駆動されて電力を発生するタービン発電機と、前記冷却媒体との熱交換によって前記タービン発電機から送出される気相作動媒体を液相作動媒体に相変換させる凝縮器と、前記凝縮器から送出される液相作動媒体を前記蒸発器へ圧送する循環ポンプとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機における効率改善のためのエネルギー回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、圧縮機は圧縮工程で熱が発生して圧縮ガスが高温状態となる。そのため、従来では、圧縮機から排出される高温の圧縮ガスをクーラーに導入し、クーラー内で冷却水等の冷却媒体と圧縮ガスとの熱交換を行うことにより圧縮ガスを冷却し、冷却後の圧縮ガスをクーラー外へ廃棄することが一般的である。
下記特許文献1には、圧縮機から排出される圧縮ガスと冷却水との熱交換によって生じる水蒸気をクーラーから取り出し、この水蒸気を利用して蒸気タービンを駆動させて発電機から電力としてエネルギーを取り出し、再び水蒸気を冷却して水に戻し、再び冷却水として循環することにより、圧縮機の熱エネルギーを回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、圧縮機から排出される圧縮ガスの温度は100〜200°C程度である。そのため、圧縮過程で高温となった圧縮ガスの熱エネルギーを用いて冷却水から水蒸気を発生させるシステムの場合、十分な温度と圧力を持った水蒸気を発生させることができない恐れが考えられる。そのため、蒸気タービンを駆動するシステムへの水蒸気の循環が滞って、再び水蒸気を冷却し、水として冷却水に用いる循環ができなくなり、結果として本来冷却すべき圧縮ガスを十分に冷却することができず、圧縮機としての機能を損なう虞がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、圧縮機としての機能を損なうことなく、圧縮機から排出される圧縮ガスの排出エネルギーから熱回収を行い、そのエネルギーを電気エネルギーとして取り出し、トータルの圧縮機効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、圧縮機のエネルギー回収システムに係る第1の解決手段として、ガスの圧縮過程において不要な熱エネルギーを水との熱交換によって、圧縮ガスを冷却するクーラーまたはアフタークーラーを備えた圧縮機において、水による冷却と異なる、別の循環システムとして水よりも低沸点の液相作動媒体を気相作動媒体に相変換させる蒸発器と、外部から供給される冷却媒体との熱交換によって前記蒸発器から送出される圧縮ガスを冷却する冷却器と、前記蒸発器から送出される気相作動媒体によって回転駆動されて電力を発生するタービン発電機と、前記冷却媒体との熱交換によって前記タービン発電機から送出される気相作動媒体を液相作動媒体に相変換させる凝縮器と、前記凝縮器から送出される液相作動媒体を前記蒸発器へ圧送する循環ポンプとを備える、という手段を採用する。
【0007】
圧縮機のエネルギー回収システムに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記圧縮機が多段圧縮機の場合、前記多段圧縮機における前段の羽根車から後段の羽根車への圧縮ガスの移送経路と、最終段の羽根車から排出される圧縮ガスの排出経路とのそれぞれに、前記蒸発器及び前記冷却器が設けられ、前記循環ポンプから圧送される液相作動媒体は、前記蒸発器のそれぞれに対して並列的に供給され、前記冷却媒体は、前記冷却器のそれぞれと前記凝縮器に対して並列的に供給され、前記蒸発器のそれぞれから送出される気相作動媒体は、前記タービン発電機の入口側で合流する、という手段を採用する。
【0008】
圧縮機のエネルギー回収システムに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、商用交流電力を直流電力に変換して出力する第1電力変換器と、前記第1電力変換器から出力される直流電力をモータ駆動用交流電力に変換して前記圧縮機の主軸を回転させるモータへ出力する第2電力変換器と、前記タービン発電機から出力される交流電力を直流電力に変換して前記第1電力変換器から前記第2電力変換器への直流電力の伝送経路へ出力する第3電力変換器とを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水よりも低沸点の液相作動媒体を低温の圧縮ガスの廃熱を利用して蒸発させて、高圧な(蒸気エネルギーの大きな)気相作動媒体を生成し、この気相作動媒体を利用して、タービンを駆動し、圧縮機の排出エネルギーを電気として回収することで、従来のように、圧縮ガスと冷却水との熱交換によって得られた水蒸気を利用する場合よりもより安定的に圧縮機を駆動しながら、エネルギー回収を行うことができる。
また、エネルギー回収システム(蒸発器、タービン発電機、凝縮器及び循環ポンプ)の稼働を停止させた場合でも、圧縮機から排出される圧縮ガスを冷却器によって冷却することができるので、圧縮機としての機能を損なうことはない。
つまり、本発明によれば、圧縮機としての機能を損なうことなく、圧縮機から排出される圧縮ガスのエネルギー回収による圧縮機の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムAの構成概略図である。
【図2】第2実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムBの構成概略図である。
【図3】第3実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムCの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムAの構成概略図である。この図1に示すように、エネルギー回収システムAは、圧縮機10から排出される低温(100〜200°C程度)の圧縮ガスXの熱を除去する過程でエネルギーを回収して電気に変換するものであり、クーラーユニット1、タービン発電機2、凝縮器3及び循環ポンプ4から構成されている。また、クーラーユニット1は、圧縮ガスXの排出経路に沿って設置された蒸発器1a及び冷却器1bを備えている。
【0012】
蒸発器1aは、圧縮機10から排出される圧縮ガスXと、後述の循環ポンプ4から圧送される液相作動媒体Y1との熱交換によって液相作動媒体Y1を気相作動媒体Y2に相変換させる熱交換器である。ここで、液相作動媒体Y1とは、液体状態の低沸点(少なくとも水よりも低い沸点)の作動媒体(例えばフロンやアンモニア等)である。つまり、圧縮ガスXとの熱交換によって液相作動媒体Y1は容易に蒸発して、大きな蒸気エネルギーを有する気体状態の作動媒体(気相作動媒体Y2)に変化する。なお、この蒸発器1aは、圧縮ガスXとの熱交換によって得られた気相作動媒体Y2をタービン発電機2へ送出すると共に、熱交換後の圧縮ガスXを下流側の冷却器1bへ送出する。
【0013】
冷却器1bは、外部から供給される冷却媒体(例えば冷却水)Zと、蒸発器1aから送出される圧縮ガスXとの熱交換によって圧縮ガスXを冷却する熱交換器である。なお、この冷却器1bは、冷却後の圧縮ガスXを外部に排出すると共に、圧縮ガスXの冷却に使用された冷却媒体Zを不図示の冷却媒体供給源へ返送する。
【0014】
タービン発電機2は、蒸発器1aから送出される気相作動媒体Y2によって回転駆動されて交流電力を発生するものであり、高圧な(蒸気エネルギーの大きな)気相作動媒体Y2によって回転駆動されるタービン2aと、このタービン2aの回転軸に軸結合された交流発電機2bとから構成されている。なお、このタービン発電機2は、タービン2aの駆動に使用された気相作動媒体Y2を凝縮器3へ送出する。
【0015】
凝縮器3は、外部から供給される冷却媒体Zと、タービン発電機2から送出される気相作動媒体Y2との熱交換によって気相作動媒体Y2を液相作動媒体Y1に相変換させる 熱交換器である。つまり、冷却媒体Zとの熱交換によって気相作動媒体Y2は凝縮して、液体状態の作動媒体(液相作動媒体Y1)に再変化する。なお、この凝縮器3は、冷却媒体Zとの熱交換によって得られた液相作動媒体Y1を循環ポンプ4へ送出すると共に、熱交換後の冷却媒体Zを不図示の冷却媒体供給源へ返送する。
循環ポンプ4は、凝縮器3から得られる液相作動媒体Y1を、一定流量で蒸発器1aへ圧送するものである。
【0016】
次に、上記のように構成された第1実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムAの作用効果について説明する。
上記のエネルギー回収システムAにおいて、循環ポンプ4によって液相作動媒体Y1が蒸発器1aに送出されると、この液相作動媒体Y1は蒸発器1aに導入される圧縮ガスXの熱エネルギーによって沸騰蒸発し、これにより高圧の(蒸気エネルギーの大きな)気相作動媒体Y2が生成される。
【0017】
蒸発器1aで生成された気相作動媒体Y2(蒸気)は、タービン発電機2に供給されて膨張しつつタービン発電機2(タービン2a)を駆動し、これによってタービン発電機2(交流発電機2b)で発電が行われる。タービン発電機2を介した気相作動媒体Y2は、凝縮器3で冷却媒体Zによって冷却されることにより凝縮し、液相作動媒体Y1に再度相変換する。凝縮器3によって得られた液相作動媒体Y1は、循環ポンプ4によって加圧されて再び蒸発器1aに向けて送出される。このように、エネルギー回収システムA内で液相作動媒体Y1の蒸発及び凝縮が繰り返されることにより、圧縮機の排出エネルギーを電気に変換し、圧縮機としてのトータル効率の改善が行われる。
【0018】
以上のような第1実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムAによれば、水よりも低沸点の液相作動媒体Y1を低温の圧縮ガスXの熱を利用して蒸発させて、低い圧力で蒸気エネルギーの大きな気相作動媒体Y2を生成し、この気相作動媒体Y2を利用してタービンを駆動するので、従来のように、圧縮ガスと冷却水との熱交換によって得られた水蒸気を利用して発電を行う場合と比較して、圧縮機の機能を損なうことなく、圧縮機の排出エネルギーを回収し、圧縮機のトータル効率を改善することができる。
また、エネルギー回収システム(蒸発器1a、タービン発電機2、凝縮器3及び循環ポンプ4)の稼働を停止させた場合でも、圧縮機10から排出される圧縮ガスXを冷却器1bによって冷却することができるので、圧縮機10としての機能を損なうことはない。
つまり、第1実施形態に係るエネルギー回収システムAによれば、圧縮機10としての機能を損なうことなく、圧縮機10から排出される圧縮ガスXの熱回収による圧縮機10のトータル効率を向上させることが可能となる。
【0019】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、第2実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムシステムBの構成概略図である。この図2に示すように、第2実施形態に係るエネルギー回収システムBは、圧縮機10が多段圧縮機(例えば2段圧縮機)である場合のシステム構成例である。従って、第2実施形態において、第1実施形態と同様の要素には同一符号を付し、以下での説明を省略する。
【0020】
図2に示すように、エネルギー回収システムBでは、圧縮機10における前段(1段目)の羽根車10aから後段(2段目)の羽根車10bへの圧縮ガスXの移送経路と、最終段(ここでは2段目)の羽根車10bから排出される圧縮ガスXの排出経路とのそれぞれに、クーラーユニット1(つまり蒸発器1a及び冷却器1b)が設けられ、循環ポンプ4から圧送される液相作動媒体Y1は、蒸発器1aのそれぞれに対して並列的に供給され、外部供給される冷却媒体Zは、冷却器1bのそれぞれと凝縮器3に対して並列的に供給され、蒸発器1aのそれぞれから送出される気相作動媒体Y2は、タービン発電機2の入口側で合流する構成となっている。
【0021】
このような構成を採用する第2実施形態に係るエネルギー回収システムBでも、第1実施形態と同様に、圧縮機10(多段圧縮機)としての機能を損なうことなく、圧縮機10から排出される圧縮ガスXの熱回収による圧縮機10のトータル効率を向上させることが可能となる。
【0022】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図3は、第3実施形態に係る圧縮機のエネルギー回収システムCの構成概略図である。この図3に示すように、第3実施形態に係るエネルギー回収システムCは、第2実施形態のエネルギー回収システムBの構成に、第1電力変換器5、第2電力変換器6及び第3電力変換器7を追加したものである。従って、第3実施形態において、第2実施形態と同様の要素には同一符号を付し、以下での説明を省略する。
【0023】
第1電力変換器5は、商用交流電力(例えば3相交流電力)P1を直流電力P2に変換して第2電力変換器6へ出力する。第2電力変換器6は、第1電力変換器から出力される直流電力P2をモータ駆動用交流電力P3に変換して、圧縮機10の主軸10cを回転させるモータ10dへ出力する。第3電力変換器7は、タービン発電機2(交流発電機2b)から出力される交流電力P4を直流電力P5に変換して、第1電力変換器5から第2電力変換器6への直流電力P2の伝送経路へ出力する。
つまり、第2電力変換器6は、第1電力変換器から出力される直流電力P2と第3電力変換器7から出力される直流電力P5とが加算されて得られる直流電力からモータ駆動用交流電力P3を生成する。
【0024】
このような構成を採用する第3実施形態に係るエネルギー回収システムCによれば、第2実施形態と同様な効果を得られると共に、圧縮ガスXの熱を利用して得られたエネルギーを直流電力P5として、モータ駆動用交流電力P3の生成に使用することができるので、圧縮機10を回転させるモータ10dの駆動に必要な電力の全てを商用電源から得る必要がなくなり、圧縮機の駆動システムとしての省エネルギー効果を上げることが可能となる。
【0025】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
例えば、上記第2及び第3実施形態では、圧縮機10が2段圧縮機の場合のシステム構成例について説明したが、本発明はこれに限定されず、圧縮機10が3段以上の多段圧縮機であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
A、B、C…エネルギー回収システム、1…クーラーユニット、1a…蒸発器、1b…冷却器、2…タービン発電機、2a…タービン、2b…交流発電機、3…凝縮器、4…循環ポンプ、5…第1電力変換器、6…第2電力変換器、7…第3電力変換器、10…圧縮機、X…圧縮ガス、Y1…液相作動媒体、Y2…気相作動媒体、Z…冷却媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの圧縮過程において不要な熱エネルギーを水との熱交換によって、圧縮ガスを冷却するクーラーまたはアフタークーラーを備えた圧縮機において、
水による冷却と異なる、別の循環システムとして水よりも低沸点の液相作動媒体を気相作動媒体に相変換させる蒸発器と、
外部から供給される冷却媒体との熱交換によって前記蒸発器から送出される圧縮ガスを冷却する冷却器と、
前記蒸発器から送出される気相作動媒体によって回転駆動されて電力を発生するタービン発電機と、
前記冷却媒体との熱交換によって前記タービン発電機から送出される気相作動媒体を液相作動媒体に相変換させる凝縮器と、
前記凝縮器から送出される液相作動媒体を前記蒸発器へ圧送する循環ポンプと、
を備えることを特徴とする圧縮機のエネルギー回収システム。
【請求項2】
前記圧縮機が多段圧縮機の場合、
前記多段圧縮機における前段の羽根車から後段の羽根車への圧縮ガスの移送経路と、最終段の羽根車から排出される圧縮ガスの排出経路とのそれぞれに、前記蒸発器及び前記冷却器が設けられ、
前記循環ポンプから圧送される液相作動媒体は、前記蒸発器のそれぞれに対して並列的に供給され、
前記冷却媒体は、前記冷却器のそれぞれと前記凝縮器に対して並列的に供給され、
前記蒸発器のそれぞれから送出される気相作動媒体は、前記タービン発電機の入口側で合流することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機のエネルギー回収システム。
【請求項3】
商用交流電力を直流電力に変換して出力する第1電力変換器と、
前記第1電力変換器から出力される直流電力をモータ駆動用交流電力に変換して前記圧縮機の主軸を回転させるモータへ出力する第2電力変換器と、
前記タービン発電機から出力される交流電力を直流電力に変換して前記第1電力変換器から前記第2電力変換器への直流電力の伝送経路へ出力する第3電力変換器と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機のエネルギー回収システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−57256(P2013−57256A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194727(P2011−194727)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】